(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】体内挿入管セット
(51)【国際特許分類】
A61M 16/04 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
(21)【出願番号】P 2020095422
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真弘
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-500414(JP,A)
【文献】特表2007-533331(JP,A)
【文献】特開平11-130156(JP,A)
【文献】特開2008-104757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ本体と、潤滑剤が塗布される部分である被塗布部とを有する体内挿入管と、 前記体内挿入管を収容する包装袋とを備える体内挿入管セットであって、
前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で潤滑剤を前記被塗布部に供給する潤滑剤供給部を備え
、
前記体内挿入管は、人間又は動物の気管又は食道に挿入される、
体内挿入管セット。
【請求項2】
前記体内挿入管は、膨張可能なカフを備える、
請求項1に記載の体内挿入管セット。
【請求項3】
前記潤滑剤が収容されている潤滑剤収容袋を更に備え、
前記潤滑剤収容袋は、前記包装袋内に収容され、かつ、前記被塗布部に隣接して配置されており、
前記潤滑剤供給部には、前記潤滑剤収容袋が含まれる、
請求項1
又は2に記載の体内挿入管セット。
【請求項4】
前記潤滑剤収容袋は前記包装袋に固定されている、
請求項
3に記載の体内挿入管セット。
【請求項5】
前記潤滑剤収容袋の強度は、前記包装袋の強度よりも低い、
請求項
3に記載の体内挿入管セット。
【請求項6】
前記包装袋は、前記被塗布部に隣接して配置された弁部を備え、
前記弁部は、前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給針を抜き差し可能に構成されており、 前記潤滑剤供給部には、前記弁部が含まれる、
請求項1
又は2に記載の体内挿入管セット。
【請求項7】
前記包装袋は、前記被塗布部に隣接して配置された雌ねじ部を備え、
前記雌ねじ部は、前記潤滑剤の容器に備えられている雄ねじ部と螺合可能に構成されており、
前記潤滑剤供給部には、前記雌ねじ部が含まれる、
請求項1
又は2に記載の体内挿入管セット。
【請求項8】
前記雌ねじ部は、前記潤滑剤の容器の前記雄ねじ部と螺合する前に前記包装袋の内部を滅菌状態に維持するシール部を備える、
請求項
7に記載の体内挿入管セット。
【請求項9】
前記シール部はフィルム状に構成されており、
前記雌ねじ部が前記潤滑剤の容器の前記雄ねじ部と螺合することによって、前記シール部は破断する、
請求項
8に記載の体内挿入管セット。
【請求項10】
前記包装袋は、
前記体内挿入管を収容する第1区画と、
前記潤滑剤を収容する第2区画と、
前記第1区画と前記第2区画との間に配置された境界壁部とを備え、
前記境界壁部は、前記被塗布部に隣接して配置されており、
前記潤滑剤供給部には、前記第2区画と前記境界壁部とが含まれる、
請求項1
又は2に記載の体内挿入管セット。
【請求項11】
前記第2区画が加圧されることによって、前記境界壁部は破断する、
請求項
10に記載の体内挿入管セット。
【請求項12】
前記体内挿入管は、
前記被塗布部としての
前記カフと、
前記カフを膨張させるために用いられるパイロットバルーンとを備え、
前記包装袋は、
前記カフが前記包装袋に収容されている状態で前記カフを膨張させる空気を前記パイロットバルーンに供給するために用いられる接続部を備える、
請求項
2に記載の体内挿入管セット。
【請求項13】
前記体内挿入管に挿入されていない状態で前記包装袋に収容されたスタイレットを更に備え、
前記潤滑剤供給部は、前記体内挿入管と前記スタイレットとが前記包装袋内に収容されている状態で、前記潤滑剤を前記被塗布部と前記スタイレットとに供給する、
請求項1
又は2に記載の体内挿入管セット。
【請求項14】
前記体内挿入管が、前記包装袋の一方の端部から取り出され、前記スタイレットが、前記包装袋の他方の端部から取り出される、
請求項
13に記載の体内挿入管セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内挿入管セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、膨張可能なカフを有する気管チューブと、カフを膨張させる可撓性膨張線とを備える気管用チューブアセンブリが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の
図1に記載された技術では、使用前の気管用チューブアセンブリが、シート状の気体透過性紙とシート状の可撓性プラスチックとによって構成されたパッケージ(包装袋)に収容されている。
ところで、特許文献1の
図1に記載された技術では、パッケージを構成するシート状の気体透過性紙とシート状の可撓性プラスチックとが、縁部においてシールされている。そのため、気管用チューブアセンブリの使用者は、気管用チューブアセンブリをパッケージから取り出さなければ、潤滑剤をカフに塗布することができない。
【0003】
また、従来から、気管挿管に用いられる気管挿管用部材と、気管挿管用部材を収容する収納バッグとを備える気管挿管セットが知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2の
図1、
図3および
図4に記載された技術では、使用前の気管挿管用部材が、収納バッグに収容されている。
特許文献2の
図1、
図3および
図4に記載された技術においても、収納バッグの縁部が、溶着、接着等の接続手段によって密着させられている。そのため、気管挿管用部材の使用者は、気管挿管用部材を収納バッグから取り出さなければ、潤滑剤をカフに塗布することができない。
【0004】
気管用チューブアセンブリをパッケージから取り出した後、あるいは、気管挿管用部材を収納バッグから取り出した後に潤滑剤をカフに塗布する作業は、例えば狭い場所で気管挿管を迅速に行うことが要求される救急救命士にとって、非常に煩雑な作業である。従って、気管用チューブアセンブリのパッケージ、あるいは、気管挿管用部材の収納バッグの改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-79468号公報
【文献】特開2008-206568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題点に鑑み、本発明は、潤滑剤が塗布された状態で体内挿入管を包装袋から取り出すことができる体内挿入管セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、チューブ本体と、潤滑剤が塗布される部分である被塗布部とを有する体内挿入管と、前記体内挿入管を収容する包装袋とを備える体内挿入管セットであって、前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で潤滑剤を前記被塗布部に供給する潤滑剤供給部を備える、体内挿入管セットである。
【0008】
本発明の一態様の体内挿入管セットは、前記潤滑剤が収容されている潤滑剤収容袋を更に備え、前記潤滑剤収容袋は、前記包装袋内に収容され、かつ、前記被塗布部に隣接して配置されており、前記潤滑剤供給部には、前記潤滑剤収容袋が含まれてもよい。
【0009】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記潤滑剤収容袋は前記包装袋に固定されていてもよい。
【0010】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記潤滑剤収容袋の強度は、前記包装袋の強度よりも低くてもよい。
【0011】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記包装袋は、前記被塗布部に隣接して配置された弁部を備え、前記弁部は、前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給針を抜き差し可能に構成されており、前記潤滑剤供給部には、前記弁部が含まれてもよい。
【0012】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記包装袋は、前記被塗布部に隣接して配置された雌ねじ部を備え、前記雌ねじ部は、前記潤滑剤の容器に備えられている雄ねじ部と螺合可能に構成されており、前記潤滑剤供給部には、前記雌ねじ部が含まれてもよい。
【0013】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記雌ねじ部は、前記潤滑剤の容器の前記雄ねじ部と螺合する前に前記包装袋の内部を滅菌状態に維持するシール部を備えてもよい。
【0014】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記シール部はフィルム状に構成されており、前記雌ねじ部が前記潤滑剤の容器の前記雄ねじ部と螺合することによって、前記シール部は破断してもよい。
【0015】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記包装袋は、前記体内挿入管を収容する第1区画と、前記潤滑剤を収容する第2区画と、前記第1区画と前記第2区画との間に配置された境界壁部とを備え、前記境界壁部は、前記被塗布部に隣接して配置されており、前記潤滑剤供給部には、前記第2区画と前記境界壁部とが含まれてもよい。
【0016】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記第2区画が加圧されることによって、前記境界壁部は破断してもよい。
【0017】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記体内挿入管は、前記被塗布部としてのカフと、前記カフを膨張させるために用いられるパイロットバルーンとを備え、前記包装袋は、前記カフが前記包装袋に収容されている状態で前記カフを膨張させる空気を前記パイロットバルーンに供給するために用いられる接続部を備えてもよい。
【0018】
本発明の一態様の体内挿入管セットは、前記体内挿入管に挿入されていない状態で前記包装袋に収容されたスタイレットを更に備え、前記潤滑剤供給部は、前記体内挿入管と前記スタイレットとが前記包装袋内に収容されている状態で、前記潤滑剤を前記被塗布部と前記スタイレットとに供給してもよい。
【0019】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記体内挿入管が、前記包装袋の一方の端部から取り出され、前記スタイレットが、前記包装袋の他方の端部から取り出されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、潤滑剤が塗布された状態で体内挿入管を包装袋から取り出すことができる体内挿入管セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の体内挿入管セットの構成の一例を示す図である。
【
図2】包装袋に収容される前における体内挿入管などの一例を示す図である。
【
図3】第2実施形態の体内挿入管セットの構成の一例などを示す図である。
【
図4】第3実施形態の体内挿入管セットの構成の一例などを示す図である。
【
図5】第3実施形態の体内挿入管セットに供給される潤滑剤の容器の一例を示す図である。
【
図6】第4実施形態の体内挿入管セットの構成の一例などを示す図である。
【
図7】第5実施形態の体内挿入管セットの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の体内挿入管セットの実施形態について説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示す図である。詳細には、
図1は体内挿入管11が包装袋14に収容されている状態における体内挿入管セット1を示す図である。
図2は包装袋14に収容される前における体内挿入管11などの一例を示す図である。詳細には、
図2(A)は包装袋14に収容される前における体内挿入管11を示しており、
図2(B)は包装袋14に収容される前における潤滑剤収容袋12を示している。
図1および
図2に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13と、包装袋14とを備えている。
体内挿入管11は、人間または動物の例えば気管、食道、大腸などの器官に挿入される管である。体内挿入管11は、チューブ本体11Aと、潤滑剤13が塗布される部分である被塗布部(例えばカフ11B)とを備えている。チューブ本体11Aは、管状の部分であり、例えば体内挿入管11が気管挿管に用いられる場合に気管への換気を行う部分である。
チューブ本体11Aは、先端部11A1と、基端部11A2とを備えている。先端部11A1は、体内挿入管11の使用時に人間または動物の例えば気管、食道、大腸などの器官に挿入される部分である。基端部11A2は、体内挿入管11の使用時に例えば気管、食道、大腸などの器官に挿入されることなく、人間または動物の体外に配置される(残される)部分である。
カフ11Bは、チューブ本体11Aの外周面と器官の内壁面との間のシールなどを行う部分である。カフ11Bは膨張可能に構成されている。カフ11Bの理解を容易にするために、
図2(A)には、膨張させられた状態のカフ11Bが示されている。実際には、
図1に示すようにカフ11Bが膨張させられていない状態で、体内挿入管11は、包装袋14に収容される。
潤滑剤収容袋12は、潤滑剤13を収容する袋である。潤滑剤13は、例えばK-Y(登録商標)ゼリーなどのような、公知の任意の医療用潤滑剤である。
包装袋14は、滅菌された状態で体内挿入管11などを包装する袋である。
【0024】
図1に示す体内挿入管セット1では、潤滑剤収容袋12(
図2(B)参照)が、包装袋14内に収容されている。また、潤滑剤収容袋12が、例えば溶着などのような公知の任意の手法によって、包装袋14に固定されている。詳細には、
図1に示すように、潤滑剤13を収容する潤滑剤収容袋12が、体内挿入管11のカフ11Bに隣接して配置されている。また、潤滑剤収容袋12の強度が、包装袋14の強度よりも低い値に設定されている。
図1に示す例では、体内挿入管セット1の使用時に、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者によって、潤滑剤収容袋12が加圧される。その結果、潤滑剤収容袋12が破れ、潤滑剤収容袋12に収容されていた潤滑剤13が、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に塗布される。
一方、潤滑剤収容袋12が加圧されても、体内挿入管11および潤滑剤収容袋12を収容している包装袋14は破れない。その結果、包装袋14の内側において潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態になる。
そのため、
図1に示す例では、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者は、潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態で体内挿入管11を包装袋14から取り出すことができる。
【0025】
換言すれば、
図1に示す体内挿入管セット1は、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態で潤滑剤13をカフ11B(被塗布部)に供給する潤滑剤供給部1Aを備えている。潤滑剤供給部1Aには、包装袋14内に収容されている潤滑剤収容袋12が含まれる。
【0026】
図1および
図2に示す例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えており、潤滑剤13がカフ11Bに塗布される(つまり、カフ11Bが、「被塗布部」である)。
他の例(例えば体内挿入管11が経鼻式の体内挿入管である例)では、体内挿入管11がカフ11Bを備えていなくてもよい。この例では、潤滑剤13が、チューブ本体11Aのうちの先端部11A1から少し離れた部分(被塗布部)に塗布される。つまり、チューブ本体11Aのうちの、潤滑剤13がチューブ本体11Aの先端部11A1の穴を塞ぐおそれがない部分が、被塗布部として機能する。
【0027】
図1および
図2に示す例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていない。
他の例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていてもよい。スタイレットが包装袋14に収容される第1例では、スタイレットが、体内挿入管11に挿入された状態で、包装袋14に収容される。
スタイレットが包装袋14に収容される第2例では、スタイレットが、体内挿入管11に挿入されていない状態で、包装袋14に収容される。この例では、潤滑剤収容袋12が破れ、潤滑剤収容袋12に収容されていた潤滑剤13が、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に塗布される時に、潤滑剤収容袋12に収容されていた潤滑剤13が、スタイレットにも塗布される。すなわち、潤滑剤供給部1Aは、体内挿入管11とスタイレットとが包装袋14内に収容されている状態で、潤滑剤13をカフ11B(被塗布部)とスタイレットとに供給する。
この例では、体内挿入管11が、包装袋14の一方の端部(
図1の右側の端部)から取り出され、スタイレットは、包装袋14の他方の端部(
図1の左側の端部、つまり、潤滑剤収容袋12に近い側の端部)から取り出される。そのため、スタイレットの全体に潤滑剤13を塗布することができる。好ましくは、包装袋14に収容されるスタイレットとして、例えばFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などの低摩擦性材料によって形成されたスタイレットが用いられる。
【0028】
[第2実施形態]
以下、本発明の体内挿入管セットの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の体内挿入管セット1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の体内挿入管セット1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様の効果を奏することができる。
【0029】
図3は第2実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例などを示す図である。詳細には、
図3(A)は第2実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示しており、
図3(B)は
図3(A)中の弁部14Bを拡大して示した部品図である。
上述したように、
図1および
図2に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13と、包装袋14とを備えている。一方、
図3に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、包装袋14とを備えており、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13とを備えていない。
図3に示す例では、
図1および
図2に示す例と同様に、包装袋14が、滅菌された状態で体内挿入管11を包装する袋である。
図3に示す例では、包装袋14が、本体部14Aと、弁部14Bとを備えている。本体部14Aは、体内挿入管11を包装する袋状の部分である。弁部14Bは、潤滑剤13を供給する潤滑剤供給針(図示せず)を抜き差し可能に構成されている。弁部14Bは、例えば溶着などの公知の任意の手法によって、包装袋14の本体部14Aに固定されている。
【0030】
図3に示す体内挿入管セット1では、包装袋14の弁部14Bが、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に隣接して配置されている。
図3に示す例では、体内挿入管セット1の使用時に、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者によって、潤滑剤供給針が、包装袋14の弁部14Bに差し込まれる。更に、潤滑剤13が、潤滑剤供給針から包装袋14の本体部14Aの内部に供給され、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に塗布される。
一方、潤滑剤13が、潤滑剤供給針から包装袋14の本体部14Aの内部に供給されても、体内挿入管11を収容している包装袋14は破れない。また、包装袋14の本体部14Aの内部に供給された潤滑剤13が、弁部14Bを介して包装袋14の外側に流出することもない。その結果、包装袋14の内側において潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態になる。
そのため、
図3に示す例では、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者は、潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態で体内挿入管11を包装袋14から取り出すことができる。
【0031】
換言すれば、
図3に示す体内挿入管セット1は、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態で潤滑剤13をカフ11B(被塗布部)に供給する潤滑剤供給部1Aを備えている。潤滑剤供給部1Aには、包装袋14の弁部14Bが含まれる。
【0032】
図3に示す例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えており、潤滑剤13がカフ11Bに塗布されるが、他の例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えていなくてもよい。この例では、潤滑剤13が、チューブ本体11Aのうちの先端部11A1から少し離れた部分(被塗布部)に塗布される。
【0033】
図3に示す例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていないが、他の例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていてもよい。
【0034】
[第3実施形態]
以下、本発明の体内挿入管セットの第3実施形態について説明する。
第3実施形態の体内挿入管セット1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様に構成されている。従って、第3実施形態の体内挿入管セット1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様の効果を奏することができる。
【0035】
図4は第3実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例などを示す図である。詳細には、
図4(A)は第3実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示しており、
図4(B)は
図4(A)中の雌ねじ部14Cを拡大して示した部品図(断面図)である。
図5は第3実施形態の体内挿入管セット1に供給される潤滑剤13の容器Cの一例を示す図である。詳細には、
図5(A)は容器Cの全体を示しており、
図5(B)は容器Cの蓋C2が取り外された状態における容器Cの本体部C1の雄ねじ部C11を示している。
上述したように、
図1および
図2に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13と、包装袋14とを備えている。一方、
図4および
図5に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、包装袋14とを備えており、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13とを備えていない。
図4および
図5に示す例では、
図1および
図2に示す例と同様に、包装袋14が、滅菌された状態で体内挿入管11を包装する袋である。
図4および
図5に示す例では、包装袋14が、本体部14Aと、雌ねじ部14Cとを備えている。
図3に示す例と同様に、本体部14Aは、体内挿入管11を包装する袋状の部分である。
図4および
図5に示す例では、雌ねじ部14Cが、潤滑剤13の容器Cの本体部C1に備えられている雄ねじ部C11と螺合可能に構成されている。雌ねじ部14Cは、例えば溶着などの公知の任意の手法によって、包装袋14の本体部14Aに固定されている。また、雌ねじ部14Cは、フィルム状に構成されたシール部14C1を備えている。
シール部14C1は、雌ねじ部14Cが潤滑剤13の容器Cの雄ねじ部C11と螺合する前に包装袋14の本体部14Aの内部を滅菌状態に維持する。また、シール部14C1は、雌ねじ部14Cが潤滑剤13の容器Cの雄ねじ部C11と螺合することによって破断するように構成されている。
【0036】
図4および
図5に示す体内挿入管セット1では、包装袋14の雌ねじ部14Cが、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に隣接して配置されている。
図4および
図5に示す例では、体内挿入管セット1の使用時に、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者によって、潤滑剤13の容器Cの雄ねじ部C11が雌ねじ部14Cと螺合させられる。更に、容器C内の潤滑剤13が、包装袋14の本体部14Aの内部に供給され、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に塗布される。
一方、容器C内の潤滑剤13が、包装袋14の本体部14Aの内部に供給されても、体内挿入管11を収容している包装袋14は破れない。その結果、包装袋14の内側において潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態になる。
そのため、
図4および
図5に示す例では、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者は、潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態で体内挿入管11を包装袋14から取り出すことができる。
【0037】
換言すれば、
図4に示す体内挿入管セット1は、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態で潤滑剤13をカフ11B(被塗布部)に供給する潤滑剤供給部1Aを備えている。潤滑剤供給部1Aには、包装袋14の雌ねじ部14Cが含まれる。
【0038】
図4に示す例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えており、潤滑剤13がカフ11Bに塗布されるが、他の例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えていなくてもよい。この例では、潤滑剤13が、チューブ本体11Aのうちの先端部11A1から少し離れた部分(被塗布部)に塗布される。
【0039】
図4に示す例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていないが、他の例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていてもよい。
【0040】
[第4実施形態]
以下、本発明の体内挿入管セットの第4実施形態について説明する。
第4実施形態の体内挿入管セット1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様に構成されている。従って、第4実施形態の体内挿入管セット1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
図6は第4実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例などを示す図である。詳細には、
図6(A)は第4実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示しており、
図6(B)は
図6(A)中の境界壁部14Fを拡大して示した部品図である。
上述したように、
図1および
図2に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13と、包装袋14とを備えている。一方、
図6に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、潤滑剤13と、包装袋14とを備えており、潤滑剤13が包装袋14の区画14Eに収容されている。
図6に示す例では、
図1および
図2に示す例と同様に、包装袋14が、滅菌された状態で体内挿入管11を包装する袋である。
図6に示す例では、包装袋14が、区画14Dと、上述した区画14Eと、境界壁部14Fとを備えている。区画14Dは、体内挿入管11を収容する袋状の部分である。区画14Eは、潤滑剤13を収容する袋状の部分である。
境界壁部14Fは、区画14Dと区画14Eとの間に配置された部分である。境界壁部14Fは、包装袋14の一部を溶着することによって形成されている。詳細には、
図6(B)に示すように、境界壁部14Fの溶着幅W1は、包装袋14の他の部分の溶着幅W2よりも小さくされている。その結果、境界壁部14Fは、区画14Eが加圧されることによって破断するように構成されている。
【0042】
図6に示す体内挿入管セット1では、包装袋14の境界壁部14Fが、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に隣接して配置されている。
図6に示す例では、体内挿入管セット1の使用時に、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者によって、潤滑剤13を収容している区画14Eが加圧される。その結果、境界壁部14Fが破断し、区画14E内の潤滑剤13が、包装袋14の区画14D内に供給され、体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に塗布される。
一方、区画14E内の潤滑剤13が、包装袋14の区画14D内に供給されても、体内挿入管11を収容している包装袋14は破れない。その結果、包装袋14の内側において潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態になる。
そのため、
図6に示す例では、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者は、潤滑剤13がカフ11B(被塗布部)に塗布された状態で体内挿入管11を包装袋14から取り出すことができる。
【0043】
換言すれば、
図6に示す体内挿入管セット1は、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態で潤滑剤13をカフ11B(被塗布部)に供給する潤滑剤供給部1Aを備えている。潤滑剤供給部1Aには、包装袋14の区画14Eと境界壁部14Fとが含まれる。
【0044】
図6に示す例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えており、潤滑剤13がカフ11Bに塗布されるが、他の例では、体内挿入管11がカフ11Bを備えていなくてもよい。この例では、潤滑剤13が、チューブ本体11Aのうちの先端部11A1から少し離れた部分(被塗布部)に塗布される。
【0045】
図6に示す例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていないが、他の例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていてもよい。
【0046】
[第5実施形態]
以下、本発明の体内挿入管セットの第5実施形態について説明する。
第5実施形態の体内挿入管セット1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様に構成されている。従って、第5実施形態の体内挿入管セット1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様の効果を奏することができる。
【0047】
図7は第5実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例などを示す図である。
図7に示す例では、体内挿入管11が、チューブ本体11Aと、潤滑剤13が塗布される部分である被塗布部(例えばカフ11B)と、パイロットバルーン11Cとを備えている。パイロットバルーン11Cは、カフ11Bに空気を注入し、カフ11Bを膨張させるために用いられる。また、パイロットバルーン11Cは、カフ11Bから空気を抜く場合にも用いられる。
図7に示す例では、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者によって、潤滑剤13が体内挿入管11のカフ11B(被塗布部)に塗布される前に、カフ11Bの事前チェック(カフ11Bを事前に膨張させ、機能不良が無いことを確認すること)が行われる。
詳細には、
図7に示す例では、カフ11Bを包装袋14から取り出すことなく、カフ11Bの事前チェックが行われる。
そのことを可能にするために、
図7に示す例では、包装袋14が接続部14Gを備えている。接続部14Gは、カフ11Bが包装袋14に収容されている状態でカフ11Bを膨張させる空気をパイロットバルーン11Cに供給するために用いられる。
カフ11Bの事前チェック時には、シリンジ(図示せず)の先端部が、接続部14Gを介してパイロットバルーン11Cに差し込まれ、パイロットバルーン11Cとシリンジとが接続される。更に、シリンジからパイロットバルーン11Cに供給された空気によって、カフ11Bが膨張させられる。
【0048】
図7に示す例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていないが、他の例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていてもよい。
【0049】
<実施例>
本発明者は、従来の気管挿管チューブと本発明の体内挿入管セットとを用いて、気管挿管の準備にかかる時間を比較する検討を行った。
本発明の体内挿入管セットを用いた場合に、従来の気管挿管チューブを用いた場合よりも、気管挿管の準備にかかる時間を短くすることができ、体内挿入管セット(気管挿管チューブ)の使用者ごとの所要時間のばらつきを小さくすることができた。本発明者が行った検討において、本発明の体内挿入管セットの有効性が明らかになった。
本発明者が行った検討においては、10人の現職(消防職員救急隊)の救命救急士が、従来の気管挿管チューブと本発明の体内挿入管セットとを使用し、気管挿管を行う前の点検操作(カフの破損確認、潤滑剤の塗布など)の開始時点から、体内挿入管11(気管挿管チューブ)を包装袋14(パッケージ)から取り出す時点までの所要時間を測定した。
本発明者が行った検討において比較に用いた統計学的検定は「paired-t test」である。
【0050】
10人の現職(消防職員救急隊)の救命救急士の平均年齢は39.8[歳]であり、性別は男である。
従来の気管挿管チューブの所要時間は81.1[秒]になり、標準偏差は12.4[秒]になった。被検者の95%の人数が56.3~165.9[秒]の間で操作を完了した。
一方、本発明の体内挿入管セットの所要時間は47.0[秒]になり、標準偏差は5.8[秒]になった。被検者の95%の人数が35.4~58.6[秒]の間で操作を完了した。
この結果は、統計学的に有意な差であることを示している。
【0051】
従来の気管挿管チューブと本発明の体内挿入管セットと所要時間の差[秒](95%信頼区間)は、34.1[秒](短くても23.8[秒]、長くても44.4[秒])になった。
【0052】
<適用例>
第1適用例では、第1から第5実施形態の体内挿入管セット1が気管挿管に適用される。詳細には、第1適用例では、体内挿入管11が、気管チューブとして用いられ、体内挿入管11のカフ11Bが、気管内に配置されるカフとして用いられる。
第2適用例では、第1適用例と同様に、第1から第5実施形態の体内挿入管セット1が気管挿管に適用される。詳細には、第2適用例では、体内挿入管11のカフ11Bが、食道カフとして用いられる。
第3適用例では、第1から第5実施形態の体内挿入管セット1が大腸内視鏡検査に適用される。詳細には、第3適用例では、体内挿入管11のカフ11Bが、エンドカフとして用いられる。
第4適用例では、第1から第4実施形態の体内挿入管セット1が気管挿管に適用される。詳細には、第4適用例では、体内挿入管11が、経鼻式の気管チューブとして用いられる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…体内挿入管セット、11…体内挿入管、11A…チューブ本体、11A1…先端部、11A2…基端部、11B…カフ、11C…パイロットバルーン、12…潤滑剤収容袋、13…潤滑剤、14…包装袋、14A…本体部、14B…弁部、14C…雌ねじ部、14C1…シール部、14D…区画、14E…区画、14F…境界壁部、14G…接続部、1A…潤滑剤供給部、C…容器、C1…本体部、C11…雄ねじ部、C2…蓋