(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】締結装置、クサビ部材及び締結装置の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 7/32 20060101AFI20240326BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04G7/32 A
F16B7/04 301J
(21)【出願番号】P 2020095833
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591281862
【氏名又は名称】中井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 周二
(72)【発明者】
【氏名】矢納 ひとみ
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176511(JP,A)
【文献】特開2020-020127(JP,A)
【文献】特開2018-150751(JP,A)
【文献】特開2012-057336(JP,A)
【文献】実公昭48-001085(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/30- 7/34
F16B 2/00- 2/26
F16B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に連結部材を締結するクサビ別体型の締結装置であって、
前記支柱のクサビ受けの上下に配置される
上枠部及び下枠部を有する前記連結部材と、
前記上枠部、前記クサビ受け、及び前記下枠部の順で貫入されることにより、前記支柱に対する締結力を前記連結部材に付与するクサビ部を有するクサビ部材と、を備え、
前記クサビ部材は、
前記クサビ受けの直上において前記クサビ部を直立状態で仮止めした状態で、前記上枠部に対する強制的な通過が許容される仮止め部を有
し、
前記仮止め部は、弾性変形前の下端部間の最大寸法が前記上枠部の内寸法よりも大きい複数の仮止め部材よりなる、
締結装置。
【請求項2】
前記下枠部は、
前記上枠部を通過した前記複数の仮止め部材同士の間隔を拡大させる付勢部を有する請求項
1に記載の締結装置。
【請求項3】
前記クサビ部材は、
前記クサビ部と平行に設けられたガイド部であって、当該クサビ部に先行して前記上枠部及び前記下枠部の順で貫入されるガイド部を更に有する請求項1
又は2に記載の締結装置。
【請求項4】
前記ガイド部の下端部には、抜け止め具の被係合部が形成され、
前記仮止めした状態で、前記被係合部は前記下枠部から下方へ突出している請求項
3に記載の締結装置。
【請求項5】
支柱に連結部材を締結するクサビ別体型の締結装置に用いられるクサビ部材であって、
前記連結部材の上枠部、前記支柱のクサビ受け、及び前記連結部材の下枠部の順で貫入されることにより、前記支柱に対する締結力を前記連結部材に付与するクサビ部と、
前記クサビ受けの直上において前記クサビ部を直立状態で仮止めした状態で、前記上枠部に対する強制的な通過が許容される仮止め部と、
を備え
、
前記仮止め部は、弾性変形前の下端部間の最大寸法が前記上枠部の内寸法よりも大きい複数の仮止め部材よりなる、
クサビ部材。
【請求項6】
支柱に連結部材を締結するクサビ別体型の締結装置の施工方法であって、
前記支柱のクサビ受けの上下に、前記連結部材の
上枠部及び下枠部を配置する第1ステップと、
クサビ部材の仮止め部により、前記クサビ部材のクサビ部を前記クサビ受けの直上において直立状態で仮止めする第2ステップと、
前記仮止め部を前記上枠部に対して強制的に通過させ、前記クサビ部を、前記上枠部、前記クサビ受け、及び前記下枠部の順で貫入することにより、前記支柱に対する締結力を前記連結部材に付与する第3ステップと、を含
み、
前記仮止め部は、弾性変形前の下端部間の最大寸法が前記上枠部の内寸法よりも大きい複数の仮止め部材よりなる、
締結装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結装置、クサビ部材及び締結装置の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設現場に設置される仮設足場は、所定の間隔で配置される複数の支柱と、隣接する一対の支柱の間にそれぞれ架け渡される複数の横架材とにより骨組みが構成され、当該骨組みの所要箇所に足場板を渡すことで形成される。支柱と横架材とを締結する技術は、例えば特許文献1-3に開示されている。
【0003】
特許文献1には、支柱の円周面から突設された筒壁面によって支柱方向の筒部が形成されたくさび受けに対して、連結パイプが固設され前記くさび受けの上下に配置される上側部材及び下側部材とを備え内側には前記くさび受けの筒部と連通する連通部が形成された連結部材を、前記連結部材の連通部とくさび受けの筒部に対して貫通楔着されるくさび部材によって固定する構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、支柱のポケット金具にくさびが緊結される緊結状態において、くさびの抜け止めを図るためのロック部材を備え、当該ロック部材は、抜け止め片と、当該抜け止め片を前壁部に押圧付勢するための板ばねとを備える構造が開示されている。
【0005】
特許文献3には、横材の一端に設けられ、くさびと、くさびを収容可能な収容部とを有する係止具が開示されている。特許文献3において、横材と支柱とを連結するには、まず支柱に設けられている鍔部(くさび受け)の挿入孔へ係止具を差し込み、次に係止具のくさびを上から打ち込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3216562号
【文献】特開2020-2753号公報
【文献】特開2016-196782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、建設現場の人手不足等の問題から、未熟な作業員でも容易に施工できる仮設足場用の締結装置が求められている。また、仮設足場の締結装置は、支柱と横架材とを締結する締結動作と、支柱から横架材を取り外す解除動作とを繰り返し行うため、耐久性が高く繰り返し使用できることが求められている。
【0008】
ここで、締結装置としては、横架材又は横架材の一端に設けられている連結部材と、クサビ部材とが別体として設けられている「クサビ別体型」の締結装置(例えば、特許文献1)と、横架材又は横架材の一端に設けられている連結部材に、クサビ部材が一体的に装着されている「クサビ一体型」の締結装置(例えば、特許文献2、3)とに分けられる。
【0009】
クサビ別体型の締結装置は、締結動作と解除動作との繰り返しにより消耗しやすいクサビ部材が、連結部材等とは別体として用意されているため、繰り返しの使用により摩耗、変形したクサビ部材を交換しやすいというメリットがある。しかしながら、クサビ別体型の締結装置では、締結動作の際、連結部材をクサビ受けにはめ込む工程と、連結部材の連通部及びクサビ受けの筒部にクサビ部材を挿入する工程と、挿入されているクサビ部材を打ち込むことで連結部材及びクサビ受けに対してクサビ部材を貫通楔着させる工程とを行う必要があり、後述のクサビ一体型の締結装置の締結動作と比べて工程が多いというデメリットがある。
【0010】
クサビ一体型の締結装置は、締結動作の際、クサビ受けの挿入孔へ係止具を差し込む工程と、次に係止具に含まれるクサビ部材を上から打ち込む工程とを行う。すなわち、クサビ一体型の締結装置の場合、クサビ別体型の締結装置における最初の2工程を、1工程に集約することができ、少ない工数で締結動作を行えるというメリットがある。しかしながら、クサビ一体型の締結装置は、消耗しやすいクサビ部材が、連結部材及び横架材と一体となっているため、繰り返しの使用によりクサビ部材が摩耗、変形した場合、クサビ部材のみならず連結部材及び横架材までも交換する必要が生じる。このため、クサビ部材のみを交換すればよいクサビ別体型の締結装置と比べ、クサビ一体型の締結装置は交換に掛かる費用が高くなるというデメリットがある。
【0011】
以上のように、従来の締結装置は、交換費用を抑えるためにクサビ部材を別体とすると、工程数が多くなることで作業効率が悪化し、作業効率を良くするためにクサビ部材を一体とすると、交換費用がかさむというように、費用効率と作業効率の両方を改善することができなかった。
【0012】
そこで、本発明は、クサビ別体型の締結装置において、作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明に係る仮設足場用の締結装置は、支柱に連結部材を締結するクサビ別体型の締結装置であって、前記支柱のクサビ受けの上下に配置される上下枠部を有する前記連結部材と、前記上枠部、前記クサビ受け、及び前記下枠部の順で貫入されることにより、前記支柱に対する締結力を前記連結部材に付与するクサビ部を有するクサビ部材と、を備え、前記クサビ部材は、前記クサビ受けの直上において前記クサビ部を直立状態で仮止めした状態で、前記上枠部に対する強制的な通過が許容される仮止め部を有する締結装置である。
【0014】
本発明によれば、仮止め部が、クサビ受けの直上においてクサビ部を直立状態で仮止めし、この状態で上枠部に対する強制的な通過が許容される。このため、仮止めされたクサビ部材を打撃などで下方に落とし込めば、クサビ部がクサビ受けに確実に貫入する。従って、作業員は、連結部材の内部に隠れたクサビ受けに対して、クサビ部を簡便かつ確実に差し込むことできるため、作業効率を向上することができる。
【0015】
(2) 好ましくは、前記仮止め部は、弾性変形前の下端部間の最大寸法が前記上枠部の内寸法よりも大きい複数のバネ部材よりなる。このように構成することで、複数のバネ部材が上枠部につっかえることで、クサビ部をより安定的に仮止めすることができる。
【0016】
(3) 好ましくは、前記下枠部は、前記上枠部を通過した前記複数のバネ部材同士の間隔を拡大させる付勢部を有する。このように構成することで、仮止め部がへたることを抑制することができ、クサビ部材の耐久性を向上することができる。これにより、クサビ部材の交換頻度を少なくすることができ、締結装置の費用効率を改善することができる。
【0017】
(4) 好ましくは、前記クサビ部材は、前記クサビ部と平行に設けられたガイド部であって、当該クサビ部に先行して前記上枠部及び前記下枠部の順で貫入されるガイド部を更に有する。このように構成することで、下枠部に対するクサビ部材の平面位置を規定することができ、クサビ受けにクサビ部をより簡便かつ確実に差し込むことできる。
【0018】
(5) 好ましくは、前記ガイド部の下端部には、抜け止め具の被係合部が形成され、前記仮止めした状態で、前記被係合部は前記下枠部から下方へ突出している。このように構成することで、仮止めした状態で被係合部へ抜け止め具を係合することができる。
【0019】
(6) 本発明に係るクサビ部材は、支柱に連結部材を締結するクサビ別体型の締結装置に用いられるクサビ部材であって、前記連結部材の上枠部、前記支柱のクサビ受け、及び前記連結部材の下枠部の順で貫入されることにより、前記支柱に対する締結力を前記連結部材に付与するクサビ部と、前記クサビ受けの直上において前記クサビ部を直立状態で仮止めした状態で、前記上枠部に対する強制的な通過が許容される仮止め部と、備えるクサビ部材である。
【0020】
本発明によれば、仮止め部が、クサビ受けの直上においてクサビ部を直立状態で仮止めし、この状態で上枠部に対する強制的な通過が許容される。このため、仮止めされたクサビ部材を打撃などで下方に落とし込めば、クサビ部がクサビ受けに確実に貫入する。従って、作業員は、連結部材の内部に隠れたクサビ受けに対して、クサビ部を簡便かつ確実に差し込むことできるため、作業効率を向上することができる。
【0021】
(7)本発明に係る締結装置の施工方法は、支柱に連結部材を締結するクサビ別体型の締結装置の施工方法であって、前記支柱のクサビ受けの上下に、前記連結部材の上下枠部を配置する第1ステップと、クサビ部材の仮止め部により、前記クサビ部材のクサビ部を前記クサビ受けの直上において直立状態で仮止めする第2ステップと、前記仮止め部を前記上枠部に対して強制的に通過させ、前記クサビ部を、前記上枠部、前記クサビ受け、及び前記下枠部の順で貫入することにより、前記支柱に対する締結力を前記連結部材に付与する第3ステップと、を含む締結装置の施工方法である。
【0022】
本発明によれば、仮止め部が、クサビ受けの直上においてクサビ部を直立状態で仮止めし、この状態で上枠部に対する強制的な通過が許容される。このため、仮止めされたクサビ部材を打撃などで下方に落とし込めば、クサビ部がクサビ受けに確実に貫入する。従って、作業員は、連結部材の内部に隠れたクサビ受けに対して、クサビ部を簡便かつ確実に差し込むことできるため、作業効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、クサビ別体型の締結装置において、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る仮設足場用の締結装置の説明図である。
【
図4】実施形態に係る連結部材を斜め上から見下ろした斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る締結方法の各工程を示す説明図である。
【
図9】初期状態における締結装置の様子を示す説明図である。
【
図10】締結状態における締結装置の様子を示す説明図である。
【
図11】締結装置の各状態における仮止め部の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
<締結装置の全体構成>
図1は、実施形態に係る仮設足場用の締結装置の説明図である。仮設足場は、複数の支柱4と、複数の横架材5と、複数の締結装置1とを有する。
図1では、仮設足場のうち、締結装置1により1本の支柱4に1本の横架材5が締結される部分を拡大して示している。また、
図1では、支柱4と横架材5との締結が解除されている状態を示している。
【0027】
支柱4は、所定間隔おきに複数本配置されている金属製のパイプである。以下、支柱4の延びる方向を、「支柱方向」と称する。本実施形態において、支柱方向は、鉛直方向と一致する。以降の説明において、鉛直方向下側を支柱方向の「一方側」とし、鉛直方向上側を支柱方向の「他方側」とする。支柱4の周囲には、複数のクサビ受け41が設けられている。クサビ受け41には、それぞれ支柱方向に貫通する4個の筒部41aが形成されている。
【0028】
横架材5は、一対の支柱4の間に架け渡される金属製のパイプである。以下、横架材5の延びる方向を、「横架材方向」と称する。本実施形態において、横架材方向は、水平方向と一致する。なお、横架材5が一対の支柱4の間に斜めに架け渡される場合、横架材方向は、水平方向から傾斜した方向となる。
【0029】
締結装置1は、クサビ部材2と連結部材3とを備え、支柱4と横架材5とを締結する装置である。連結部材3は、横架材5の端部51に溶接により固定されている。クサビ部材2は、連結部材3及び横架材5とは別体として設けられている。すなわち、本実施形態に係る締結装置1は、クサビ別体型の締結装置である。
【0030】
<クサビ部材の構成>
図2、
図3は、クサビ部材2の説明図である。具体的には、
図2(a)はクサビ部材2の側面図であり、
図2(b)は
図2(a)の矢印IIBから見たクサビ部材2の平面図であり、
図3(a)は
図2(a)の矢印IIIAから見たクサビ部材2の正面図であり、
図3(b)は
図2(a)の矢印IIIBから見たクサビ部材2の背面図である。以下、
図1から
図3を適宜参照して、クサビ部材2について説明する。
【0031】
図1を参照する。クサビ部材2は、クサビ部21と、ガイド部22と、仮止め部23と、頭部27とを有する。クサビ部材2は、例えば鋳造により形成されている単一の鋳鉄である。以下説明するクサビ部21、ガイド部22、仮止め部23及び頭部27は、説明のために設けた各部位の名称であり、これらの部位は継ぎ目なく一体的に形成されている。
【0032】
クサビ部21は、支柱方向に長尺であり、支柱方向の一方側の端部21aに近づくにつれて先細る形状を有する。横架材方向の一方側に位置し、クサビ部21の支柱4側に向けられる面21bは、支柱方向に直線状に形成されている。また、横架材方向の他方側に位置し、クサビ部21の支柱4とは反対側(横架材5側)に向けられる面21cは、支柱方向他方側から端部21aに向かって傾斜状に形成されている。
【0033】
図2(a)を参照する。ガイド部22は、クサビ部21の横架材方向他方側に位置する。また、ガイド部22は、支柱方向に長尺であり、クサビ部21と平行に設けられている。ガイド部22の支柱方向の一方側の端部22aは、クサビ部21の端部21aよりも支柱方向一方側に位置する。端部22aには、支柱方向及び横架材方向の両方に対して直交する方向(以下、「幅方向」と称する。)に貫通する貫通孔22bが形成されている。クサビ部材2を連結部材3に締結している締結状態において、貫通孔22bには抜け止めのピン(図示省略)が挿入される。すなわち、本実施形態において貫通孔22bは抜け止め具(抜け止めピン)が係合される「被係合部」として機能する。
【0034】
ガイド部22は、支柱方向他方側において、横架材方向の一方側に湾曲する肩部22cを有する。肩部22cは、横架材方向の一方側において、クサビ部21の面21cと接続している。
【0035】
図3(b)を参照する。仮止め部23は、ガイド部22の横架材方向他方側に位置する。仮止め部23は、支柱方向他方側に向くU字形状(又は、V字形状、コの字形状)を有する部分である。仮止め部23は、第1バネ部材24と、第2バネ部材25と、接続部26とを有する。第1バネ部材24及び第2バネ部材25は、それぞれ支柱方向の一方側に突出している部分である。
【0036】
図3(a)に示すように、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の支柱方向一方側の端部24a及び端部25aは、クサビ部21の端部21aよりも支柱方向他方側に位置する。また、端部24aと端部25aは、支柱方向において同じ位置にあり、幅方向に所定の隙間を空けて離れている。また、
図2(a)に示すように、端部24aはガイド部22と横架材方向に所定の隙間を空けて離れている。端部25aも、端部24aと同様にガイド部22と横架材方向に離れている。
【0037】
図3(a)を参照する。第1バネ部材24の面24bと、第2バネ部材25の面25bは、それぞれ仮止め部23の幅方向外側に位置する面である。第1バネ部材24の面24cと、第2バネ部材25の面25cは、それぞれ仮止め部23の幅方向内側に位置する面であり、面24cと面25cは幅方向に対向している。面24b、24c、25b、25cは、端部24a及び端部25aよりも支柱方向他方側に位置する。
【0038】
接続部26は、支柱方向他方側において、第1バネ部材24と第2バネ部材25とを接続する部分である。
図2(a)に示すように、接続部26は、ガイド部22の肩部22cの横架材方向他方側に接続している。
【0039】
頭部27は、略直方体形状を有する部分であり、クサビ部21の支柱方向他方側に接続している。また、頭部27は、クサビ部材2の各部のうち最も支柱方向他方側に位置する部分である。
図2(a)、(b)に示すように、頭部27は、横架材方向及び幅方向において、クサビ部21よりも大きな幅を有する。頭部27は、クサビ部材2を連結部材3へ打ち込む際に、ハンマ等の工具を当てる部分である。
【0040】
<連結部材の構成>
図4は、本実施形態に係る連結部材3を斜め上から見下ろした斜視図である。
図4では、横架材5と溶接される前の連結部材3を示している。
図5から
図7は、それぞれ連結部材3の説明図である。具体的には、
図5(a)は連結部材3の平面図であり、
図5(b)は連結部材3の底面図であり、
図6(a)は連結部材3の側面図であり、
図6(b)は
図5(a)の矢印VIBにより示す切断線で切断した連結部材3の断面図であり、
図7(a)は
図6(a)の矢印VIIAから見た連結部材3の正面図であり、
図7(b)は
図6(a)の矢印VIIBから見た連結部材3の背面図である。以下、
図4から
図7を適宜参照して、連結部材3について説明する。
【0041】
図4を参照する。連結部材3は、上枠部31と、下枠部32と、接続部33と、小径部34とを有する。連結部材3は、例えば鋳造により形成されている単一の鋳鉄である。以下説明する上枠部31、下枠部32、接続部33及び小径部34は、説明のために設けた各部位の名称であり、これらの部位は継ぎ目なく一体的に形成されている。
【0042】
上枠部31には、支柱方向に貫通する1個の貫通孔31aが形成されている。クサビ部材2を連結部材3に締結する際、貫通孔31aには、クサビ部材2が支柱方向他方側から支柱方向一方側に向かって挿入される。貫通孔31aは、クサビ部21が挿入される領域31a1と、ガイド部22が挿入される領域31a2と、仮止め部23が挿入される領域31a3と、を有する。領域31a1、31a2、31a3は、それぞれ異なる領域であり、この順に横架材方向一方側から他方側へ並んでいる。
【0043】
図5(a)を参照する。
図5(a)、(b)では、支柱4の周面を二点鎖線により示している。上枠部31の横架材方向一方側の面31bは、支柱4の周面と当接している。より具体的には、面31bは幅方向一方側(
図5(a)の上側)において支柱4の周面に沿って湾曲しており、この湾曲部分を支柱4の周面に沿わせた状態で、面31bは支柱4の周面と当接している。
【0044】
図5(b)を参照する。下枠部32には、支柱方向に貫通する2個の貫通孔32a1、32a2が形成されている。クサビ部材2を連結部材3に締結する際、貫通孔32a1にはクサビ部21が、貫通孔32a2にはガイド部22が、それぞれ支柱方向他方側から支柱方向一方側に向かって挿入される。貫通孔32a1、32a2は、それぞれ異なる貫通孔であり、この順に横架材方向一方側から他方側へ並んでいる。
【0045】
下枠部32の横架材方向一方側の面32bは、支柱4の周面と当接している。より具体的には、面32bは幅方向一方側(
図5(b)の下側)において支柱4の周面に沿って湾曲しており、この湾曲部分を支柱4の周面に沿わせた状態で、面32bは支柱4の周面と当接している。
【0046】
図6(b)を参照する。貫通孔32a1は、領域31a1と支柱方向に対向する位置に形成されている。また、貫通孔32a2は、領域31a2と支柱方向に対向する位置に形成されている。下枠部32は、領域31a3と支柱方向に対向する位置において、付勢部35を有する。
【0047】
付勢部35は、
図7(a)に示すように、支柱方向他方側に凸となる形状を有する。付勢部35の横架材方向一方側を向く面は、貫通孔32a2を形成する下枠部32の内周壁と連続している。また、付勢部35の支柱方向他方側を向く面は、後述の貫通孔34aを形成する小径部34の内周壁と連続している。付勢部35の機能については、後述する。
【0048】
図6(a)を参照する。接続部33は、横架材方向他方側において、上枠部31と下枠部32とを接続する部分である。連結部材3の内部空間S1は、上枠部31の支柱方向一方側の面と、下枠部32の支柱方向他方側の面と、接続部33の横架材方向一方側の面とにより形成される空間である。
【0049】
小径部34は、円筒形状を有する部分であり、接続部33の横架材方向他方側に接続する。
図7(b)に示すように、小径部34の外径は、連結部材3のその他の部分(上枠部31、下枠部32及び接続部33)により形成される外径よりも小さい。また、小径部34の外径は、横架材5の内径よりも小さい。このため、横架材5の端部51(
図1)を小径部34の外周に嵌合し、小径部34と端部51とを溶接することで、横架材5の端部51に連結部材3を設けることができる。小径部34には、横架材方向に貫通する貫通孔34aが形成されている。貫通孔34aは、内部空間S1と連結部材3の横架材方向他方側の空間とを連通している。
【0050】
<締結装置の締結方法>
次に、締結装置1による締結方法について、
図8から
図11を適宜参照して説明する。締結装置1は、以下に説明する締結方法を建築現場の作業員が手作業により実行することで締結される。本実施形態に係る締結方法は、嵌合工程(第1ステップ)と、載置工程(第2ステップ)と、締結工程(第3ステップ)とを有する。
【0051】
図8は、本実施形態に係る締結方法の各工程を示す説明図である。具体的には、
図8(a)、(b)、(c)は、それぞれ嵌合工程、載置工程、締結工程における締結装置1、支柱4及び横架材5の側面図である。はじめに、嵌合工程が実行される。嵌合工程では、作業員が横架材5を持ち、横架材5の両方の端部51にそれぞれ設けられている連結部材3を、支柱4のクサビ受け41に嵌合させる。より具体的には、クサビ受け41を連結部材3の内部空間S1に進入させ、クサビ受け41を上枠部31及び下枠部32により支柱方向に挟み込むことで、クサビ受け41の上下に上枠部31及び下枠部32を配置する。以上により、嵌合工程が終了する。
【0052】
クサビ受け41が上枠部31及び下枠部32により挟み込まれている状態になれば、クサビ受け41の支柱方向他方側の面で上枠部31が支持されるため、作業員が横架材5を手放しても
図8(a)に示すように横架材5が一対の支柱4の間に架け渡される状態が維持される。
【0053】
図8(b)を参照する。嵌合工程の後、載置工程が実行される。載置工程では、作業員が連結部材3の上枠部31にクサビ部材2を載置する。次に、下枠部32よりも支柱方向一方側に突出した貫通孔22bに抜け止め用のピン(図示省略)を挿入する。以上により、載置工程が終了する。ここで、載置工程終了時における締結装置1の状態を「初期状態」と称する。
【0054】
初期状態において、クサビ部21は、上枠部31の領域31a1に挿入されている一方で、クサビ受け41の筒部41aには挿入されていない。すなわち、初期状態においてクサビ部21の端部21aは、クサビ受け41よりも支柱方向他方側に位置する。また、クサビ部21は、クサビ受け41の直上において直立している状態となっている。
【0055】
初期状態において、ガイド部22は、上枠部31の領域31a2及び下枠部32の貫通孔32a2に挿入されており、ガイド部22の端部22aは下枠部32よりも支柱方向一方側に突出している。すなわち、初期状態において、ガイド部はクサビ部21に先行して上枠部31及び下枠部32の順に貫入されている。
【0056】
ここで、貫通孔22bは、初期状態において下枠部32よりも支柱方向一方側に突出している端部22aに形成されている。このため、作業員は、片手でクサビ部材2を上枠部31に載置した後、そのままもう片方の手で抜け止めピンを貫通孔22bに挿入することができる。
【0057】
図9は、初期状態における締結装置1の様子を示す説明図である。具体的には、
図9(a)は
図8(b)の矢印IXAにより示す切断線で切断した断面図であり、
図9(b)は
図9(a)の矢印IXBにより示す切断線で切断した断面図である。
図9において断面として示す部分にはハッチングを付す。
【0058】
図9(a)を参照する。初期状態において、第1バネ部材24及び第2バネ部材25は、貫通孔31aの領域31a3を形成する上枠部31の内周壁31c(
図11(a))と当接することで、クサビ部材2を上枠部31に仮止めしている。また、
図9(b)に示すように、初期状態において、クサビ部材2の肩部22cは貫通孔31aよりも支柱方向他方側に位置している。
【0059】
図11は、締結装置1の各状態における仮止め部23の様子を示す説明図である。
図11(a)は、初期状態における仮止め部23の様子を示している。
図11(a)に示すように、幅方向において、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の端部24a、25aの間隔W1は、領域31a3の幅よりも狭い。また、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の外側の面24b、25bの間隔は、領域31a3の幅よりも広い。ここで、面24b、25bの間隔は、第1バネ部材24及び第2バネ部材25が弾性変形する前の端部24a、25a間の最大寸法となる。
【0060】
そして、当該最大寸法は、領域31a3の幅(すなわち、上枠部31の内寸法)よりも広いため、初期状態では、端部24a、25aを含む仮止め部23の支柱方向一方側の一部が領域31a3に進入している状態で、仮止め部23の外側の面24b、25bがそれぞれ領域31a3を形成する内周壁31cと当接している。これにより、仮止め部23の全体は領域31a3に進入せず、仮止め部23の支柱方向他方側の一部(例えば、接続部26)は、上枠部31よりも支柱方向他方側に位置する。すなわち、仮止め部23の外側の面24b、25bが、内周壁31cに「つっかえる」ことにより、クサビ受け41の直上においてクサビ部21を直立状態で仮止めすることができる。
【0061】
図8(c)を参照する。載置工程の後、締結工程が実行される。締結工程では、作業員が工具(例えば、ハンマ)を用いて、クサビ部材2の頭部27を支柱方向一方側へ叩く。これにより、クサビ部21の端部21aは、クサビ受け41の筒部41aと、下枠部32の貫通孔32a1にこの順で貫入され、下枠部32から支柱方向一方側に突出する。この結果、クサビ部材2は、支柱4に対する締結力を連結部材3に付与する。以上により、締結工程が終了する。ここで、締結工程終了時における締結装置1の状態を「締結状態」と称する。
【0062】
図10は、締結状態における締結装置1の様子を示す説明図である。具体的には、
図10(a)は
図8(c)の矢印XAにより示す切断線で切断した断面図であり、
図10(b)は
図10(a)の矢印XBにより示す切断線で切断した断面図である。
図10において断面として示す部分にはハッチングを付す。
【0063】
図10(a)を参照する。締結状態において、第1バネ部材24及び第2バネ部材25は、領域31a3よりも支柱方向一方側に位置し、下枠部32の付勢部35(
図11(c))と当接している。また、
図10(b)に示すように、締結状態において、クサビ部材2の肩部22cは貫通孔31a内に位置している。
【0064】
次に、
図11(b)、(c)を参照して、初期状態から締結状態へ遷移する際の仮止め部23の様子を説明する。
図11(b)は、初期状態から締結状態へ遷移する途中の遷移状態における仮止め部23の様子を示している。
図11(c)は、締結状態における仮止め部23の様子を示している。初期状態にあるクサビ部材2において、頭部27を工具により支柱方向一方側に叩くと、クサビ部材2の全体が支柱方向一方側に強制的に移動する。
【0065】
図11(a)に示すように、仮止め部23は、初期状態において外側の面24b、25bが上枠部31の内周壁31cと当接している。このため、クサビ部材2が支柱方向一方側に強制的に移動すると、
図11(b)に示すように、外側の面24b、25bが内周壁31cと摺接しながら、第1バネ部材24と第2バネ部材25とが近づく方向に弾性変形する。すなわち、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の端部24a、25aの間隔W2が、初期状態における間隔W1(弾性変形前の最大寸法)よりも狭くなる。そして、外側の面24b、25bの間隔が領域31a3の幅よりも狭くなることで、第1バネ部材24及び第2バネ部材25が領域31a3を支柱方向に強制的に通過する。
【0066】
図11(c)を参照する。仮止め部23は、遷移状態において領域31a3を通過した後、下枠部32の付勢部35の位置まで挿入される。具体的には、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の端部24a、25aは、付勢部35の支柱方向他方側の面よりも支柱方向一方側に位置している。そして、付勢部35の側面が、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の内側の面24c、25cに当接することで、第1バネ部材24及び第2バネ部材25をそれぞれ外向きに押圧する。すなわち、締結状態において、付勢部35は、第1バネ部材24と第2バネ部材25をそれぞれ外側へ弾性変形させている。この結果、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の端部24a、25aの間隔W3は、遷移状態における間隔W2よりも広くなる。本実施形態において、間隔W3は、初期状態における間隔W1と等しい。
【0067】
<締結装置の解除方法>
次に、締結状態にある締結装置1の解除方法について説明する。作業員は、はじめにガイド部22の端部22aに装着されている抜け止めピンを外す。次に、工具(例えば、ハンマ)により端部22aを支柱方向一方側から他方側へ叩くことで、クサビ部材2を強制的に支柱方向他方側へ移動させる。これにより、クサビ部21がクサビ受け41の筒部41aから退避し、支柱4と連結部材3との締結が解除される。このとき、仮止め部23は、第1バネ部材24及び第2バネ部材25が近づく方向に弾性変形することで、領域31a3を通過する。
【0068】
<締結装置の作用効果>
以上のように、本実施形態に係る締結装置1は、支柱4に連結部材3を締結するクサビ別体型の締結装置であって、支柱4のクサビ受け41の上下に配置される上下枠部31、32を有する連結部材3と、上枠部31、クサビ受け41及び下枠部31の順で貫入されることにより、支柱4に対する締結力を連結部材3に付与するクサビ部21を有するクサビ部材2と、を備え、クサビ部材2は、クサビ受け41の直上においてクサビ部21を直立状態で仮止めした状態で、上枠部31に対する強制的な通過が許容される仮止め部23を有する。
【0069】
従来(すなわち、仮止め部23が無い状態)において、クサビ部材を上枠部上に保持するためには、ある程度クサビ部材を支柱のクサビ受けに差し込み、クサビ受けによりクサビ部材を支持する必要があった。クサビ受けへのクサビ部材の差し込みは、作業員の手作業により行われる(手差し作業)。しかも、ある程度の力を掛けてクサビ部材を差し込む必要があるため、作業員の負担となっていた。
【0070】
本実施形態に係る締結装置1は、仮止め部23を有することで、クサビ部材2を上枠部31に載置することで、仮止め部23がクサビ部材2を上枠部31上に支持するため、クサビ受け41の直上にクサビ部21を直立状態で仮止めすることができる。このため、作業員によるクサビ受け41へのクサビ部材2の手差し作業が不要となり、作業員の負担を軽減することができる。
【0071】
また、初期状態において、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の2箇所がそれぞれ上枠部31の内周壁31cと当接しているため、クサビ部2をより安定的にクサビ受け41の直上に仮止めすることができる。これにより、締結工程において作業員が頭部27を打ち込む際に狙いを定めやすくなる。
【0072】
また、第1バネ部材24と第2バネ部材25は、初期状態から締結状態への遷移する途中の遷移状態において、第1バネ部材24と第2バネ部材25とが近づく方向に弾性変形することで、領域31a3を通過することができる。しかしながら、締結装置1は、仮設足場に用いられるため、締結動作と解除動作とが繰り返し行われる。このため、仮止め部23は、何ら対策を取らない場合、繰り返し使用されることで「へたり」が生じ、第1バネ部材24と第2バネ部材25とが近づく方向の弾性変形は、そのまま固定化されてしまう。このような状態となると、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の外側の面24b、25bの幅が上枠部31の内周壁31cの幅よりも狭くなり、仮止め部23が内周壁31cに引っかからなくなってしまう。
【0073】
本実施形態に係る締結装置1は、付勢部35を有することで、仮止め部23のへたりを抑制することができる。より具体的には、締結状態において、付勢部35が第1バネ部材24及び第2バネ部材25の内側の面24c、25cとそれぞれ当接して、第1バネ部材24及び第2バネ部材25をそれぞれ外向きに押圧する。これにより、付勢部35は、遷移状態において生じる弾性変形を打ち消す方向に、第1バネ部材24及び第2バネ部材25を弾性変形させる。この結果、第1バネ部材24と第2バネ部材25とが近づく方向の弾性変形が固定化されることを防止することができる。すなわち、付勢部35を設けることで、クサビ部材2の耐久性(例えば、繰り返し使用可能な回数)を向上させることができる。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る締結装置1は、クサビ部材2が連結部材3及び横架材5と別体であるため、クサビ一体型の締結装置と比べて交換費用を改善することができる。しかも、クサビ別体型の従来の締結装置と比べ、仮止め部23を有するためにクサビ部材2の手差し作業が不要となるため、締結装置1によれば作業効率を改善することができる。さらに、付勢部35を有するために仮止め部23がへたることを抑制することができ、クサビ部材2の耐久性が向上されることでクサビ部材2の交換頻度を少なくなるため、締結装置1によれば費用効率を改善することができる。
【0075】
さらに、本実施形態に係る締結装置1は、クサビ部21と平行に設けられたガイド部22であって、当該クサビ部21に先行して上枠部31及び下枠部32の順で貫入されるガイド部22を有する。ガイド部22は、初期状態において下枠部32の貫通孔32a2に貫入されるため、当該ガイド部22により初期状態におけるクサビ部材2の姿勢を所定の姿勢(直立姿勢)に規制することができる。
【0076】
また、ガイド部22は、支柱方向の一方側の端部22aに抜け止めピンを挿入する貫通孔22bが形成され、初期状態において、貫通孔22bを含む端部22aは、下枠部32よりも支柱方向一方側に突出している。このように構成することで、載置工程において、作業員は片方の手でクサビ部材2を上枠部31に載置した後、そのままもう片方の手で抜け止めピンを貫通孔22bに挿入することができる。このため、ガイド部22により、作業効率を改善することができる。
【0077】
また、締結装置1の解除動作の際、ガイド部22の端部22aを叩くことで、クサビ部材2を支柱方向他方側へ強制的に移動させる。ここで、ガイド部22は、クサビ部21よりも支柱4から離れた位置にあるため、端部22aを叩く際に工具が誤って支柱4に衝突することを防止できる。このため、作業員は端部22aを容易に叩くことができ、作業効率を改善することができる。
【0078】
<変形例>
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において、実施形態から変更のない部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0079】
<付勢部の変形例>
上記の実施形態では、付勢部35は凸となる形状を有する部分として構成されている。しかしながら、本発明に係る付勢部は第1バネ部材24及び第2バネ部材25の内側に当接することで、第1バネ部材24及び第2バネ部材25をそれぞれ外向きに押圧する機能を有していればよく、凸形状を有していなくてもよい。
【0080】
図12は、変形例に係る連結部材3aの説明図である。具体的には、
図12(a)は連結部材3aの底面図であり、
図12(b)は
図12(a)の矢印XIIBによりにより示す切断線で切断した断面図であり、
図12(c)は締結状態における仮止め部23の様子を示す断面図である。
図12(c)は、本変形例に係る連結部材3aにおいて、
図11(c)と同じ断面を示している。
【0081】
図12(a)を参照する。本変形例に係る連結部材3aの下枠部32には、上記の実施形態と同様の貫通孔32a1、32a2のほかに、2個の貫通孔32a3が形成されている。
図12(b)に示すように、2個の貫通孔32a3は、それぞれ幅方向に離れている状態で、領域31a3の支柱方向一方側に位置している。本変形例に係る付勢部35aは、これら2個の貫通孔32a3により構成されている。
【0082】
図12(c)を参照する。締結状態において、第1バネ部材24は一方の貫通孔32a3に挿入され、第2バネ部材25は他方の貫通孔32a3に挿入される。そして、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の内側の面24c、25cが、それぞれ貫通孔32a3を形成する下枠部32の内周壁と当接することで、第1バネ部材24及び第2バネ部材25が外向きに押圧される。すなわち、締結状態において、付勢部35a(2個の貫通孔32a3)は、第1バネ部材24と第2バネ部材25をそれぞれ外側へ弾性変形させている。この結果、第1バネ部材24及び第2バネ部材25の端部24a、25aの間隔W3は、遷移状態における間隔W2よりも広くなる。
【0083】
本変形例によれば、2個の貫通孔32a3により付勢部35aを構成することができるため、連結部材3を軽量化することができる。このため、連結部材3の材料コストを低減したり、連結部材3が固定された横架材5を持ち運ぶ際の作業員の負担を低減したりすることができる。
【0084】
<仮止め部の変形例>
上記の実施形態において、仮止め部23は2個のバネ部材(第1バネ部材24及び第2バネ部材25)を有する。しかしながら、仮止め部23は、3個以上のバネ部材を有していてもよい。すなわち、仮止め部23は複数のバネ部材を有していればよい。
【0085】
<クサビ部材の変形例>
上記の実施形態に係るクサビ部材2では、クサビ部21と、ガイド部22と、仮止め部23とがこの順に横架材方向に並んでいる。しかしながら、クサビ部21、ガイド部22及び仮止め部23の配置が、上記の実施形態と異なる配置となってもよい。例えば、横架材方向において、クサビ部21とガイド部22の間に仮止め部23が位置する構成であってもよい。また、ガイド部22及び仮止め部23は、クサビ部21の幅方向に位置する構成であってもよい。
【0086】
<クサビ受け及び連結部材の変形例>
上記の実施形態において、支柱4の周面には1個のクサビ受け41が設けられ、連結部材3の上下枠部31、32はクサビ受け41の上下に配置される。しかしながら、支柱4の周面に、支柱方向に所定の間隔で離れている2個のクサビ受け41が設けられてもよい。この場合、連結部材3の上枠部31は、当該2個のクサビ受け41よりも上側に配置される最上枠部と、当該2個のクサビ受け41の間に配置される中間上枠部と、を含んでもよい。また、下枠部32は、当該2個のクサビ受け41よりも下側に配置される。そして、クサビ部材2のクサビ部21は当該連結部材の最上枠部(上枠部の一部)、一方のクサビ受け41、中間上枠部(上枠部の一部)、他方のクサビ受け41、及び下枠部の順で貫入されることにより、支柱4に対する締結力を連結部材3に付与する。
【0087】
<その他>
以上のとおり開示した実施形態及び変形例はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の締結装置は、図示する形態に限られず、本発明の範囲内において他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:締結装置、 2:クサビ部材、 21:クサビ部、 21a:端部、
22:ガイド部、 22a:端部、 22b:貫通孔、 22c:肩部、
23:仮止め部、 24:第1バネ部材、 24a:端部、 25:第2バネ部材、
25a:端部、 26:接続部、 27:頭部、 3:連結部材、 3a:連結部材、
31:上枠部、 31a:貫通孔、 31a1:領域、 31a2:領域、
31a3:領域、 31c:内周壁、 32:下枠部、 32a1:貫通孔、
32a2:貫通孔、 32a3:貫通孔、 33:接続部、 34:小径部、
34a:貫通孔、 35:付勢部、 35a:付勢部、 4:支柱、
41:クサビ受け、 41a:筒部、 5:横架材、 51:端部、 S1:内部空間