(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ワーク接合システムおよびワーク接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B23K20/12 C
(21)【出願番号】P 2020134676
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信博
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-020388(JP,A)
【文献】特開昭62-083914(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085453(WO,A1)
【文献】実開昭51-001528(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
B23K 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のワークの対向する両端面を摩擦圧接により接合する摩擦圧接装置と、
該摩擦圧接装置に装着される一対の前記ワークが配置されるワークエリアを挟む両側のうち一方側の搬送エリアから前記ワークエリアに一対の前記ワークを搬入出可能な搬送装置と、
前記搬送エリアを避けるように、前記両側のうち他方側の非搬送エリアに配置される加工装置とを備え、
該加工装置が、
摩擦圧接前に前記非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、前記両端面の少なくともいずれかを加工する第1の加工ツールと、
摩擦圧接後に前記非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、一対の前記ワークの少なくともいずれかの外周面を加工する第2の加工ツールとを備える、ワーク接合システム。
【請求項2】
前記摩擦圧接装置が、
一方の前記ワークを回転不能に保持可能な第1の保持装置と、
他方の前記ワークを回転可能に保持可能な第2の保持装置とを備え、
前記第1の加工ツールが、前記第1の保持装置により静止させた一方の前記ワークに対する位置を変えながら一方の前記ワークの端面を切削する第1の切削ツールを備え、
前記第2の加工ツールが、前記第2の保持装置により他方の前記ワークを通じて回転させた一対の前記ワークの前記外周面を切削する第2の切削ツールを備える、請求項1に記載のワーク接合システム。
【請求項3】
一対の前記ワークのそれぞれが、円管状部を備え、
前記両端面のそれぞれが、前記円管状部の管軸方向の端部に形成された円環状の端面であり、
前記外周面が、前記円管状部の前記管軸方向の断面視が円形状の外周面である、請求項1または請求項2に記載のワーク接合システム。
【請求項4】
前記第1の加工ツールが、前記第2の加工ツールとしての機能を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワーク接合システム。
【請求項5】
一対のワークの対向させた両端面を摩擦圧接により接合するためのワークエリアを挟む両側のうち一方側の搬送エリアから前記ワークエリアに一対の前記ワークを搬入することと、
前記両側のうち他方側の非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、前記ワークの前記両端面の少なくともいずれかを一次加工することと、
前記両端面を摩擦圧接により接合することと、
前記非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、一対の前記ワークの少なくともいずれかの外周面を二次加工することと、
前記ワークエリアから前記搬送エリアに一対の前記ワークを搬出することとを含む、ワーク接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク接合システムおよびワーク接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転チャックにより把持した柱状のワークと固定クランプ装置によって把持した柱状のワークの接合面同士を押し付けながら、回転チャックを回転させることにより両ワークを接合する摩擦圧接装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摩擦圧接装置によって一対のワークを接合する場合、摩擦圧接装置へのワークの搬入出およびワークに対する加工を含む一連のプロセスを効率よく実施することが求められる。本発明は、摩擦圧接装置へのワークの搬入出およびワークに対する加工を含む一連のプロセスにおける作業性を向上させることができるワーク接合システムおよびワーク接合方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、一対のワークの対向する両端面を摩擦圧接により接合する摩擦圧接装置と、該摩擦圧接装置に装着される一対の前記ワークが配置されるワークエリアを挟む両側のうち一方側の搬送エリアから前記ワークエリアに一対の前記ワークを搬入出可能な搬送装置と、前記搬送エリアを避けるように、前記両側のうち他方側の非搬送エリアに配置される加工装置とを備え、前記加工装置が、摩擦圧接前に前記非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、前記両端面の少なくともいずれかを加工する第1の加工ツールと、摩擦圧接後に前記非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、一対の前記ワークの少なくともいずれかの外周面を加工する第2の加工ツールとを備える、ワーク接合システムである。
【0006】
本態様によれば、一対のワークが、搬送エリアからワークエリアに搬入されて摩擦圧接装置に装着され、摩擦圧接装置による摩擦圧接前に、一対のワークの対向する両端面の少なくともいずれかが、加工装置の第1の加工ツールにより加工される。また、摩擦圧接後の一対のワークの少なくともいずれかの外周面が第2の加工ツールにより加工されるので、摩擦接合後のワークの外周面を摩擦圧接装置に装着したままの状態で仕上げることができる。さらに、加工装置が、ワークエリアを挟んで搬送エリアの反対側の非搬送エリアに配置されているため、一対のワークが、加工装置の配置されていない搬送エリアからワークエリアに搬入出される。これにより、摩擦圧接装置への一対のワークの装着作業および接合後のワークの取り外し作業を含むワークの搬入出作業を加工装置に邪魔されることなく容易に行うことができる。また、加工装置の各ツールが、摩擦圧接前後に非搬送エリアからワークエリアにアクセスすることで、ワークの端面加工および外周面加工を行うことができるため、ワークに対する加工作業をワークの搬入出作業に邪魔されることなく容易に行うことができる。
【0007】
このように、ワークエリアを挟む両側のうち、一方側を搬送エリア、他方側を非搬送エリアとして使い分けることで、ワークの搬入出作業およびワークに対する加工作業の両方の作業性を向上させることができる。したがって、摩擦圧接装置へのワークの搬入出およびワークに対する加工を含む一連のプロセスを効率よく実施することができる。
【0008】
上記態様においては、前記摩擦圧接装置が、一方の前記ワークを回転不能に保持可能な第1の保持装置と、他方の前記ワークを回転可能に保持可能な第2の保持装置とを備え、前記第1の加工ツールが、前記第1の保持装置により静止させた一方の前記ワークに対する位置を変えながら一方の前記ワークの端面を切削する第1の切削ツールを備え、前記第2の加工ツールが、前記第2の保持装置により他方の前記ワークを通じて回転させた一対の前記ワークの前記外周面を切削する第2の切削ツールを備えていてもよい。
【0009】
これにより、第1の保持装置に回転不能に保持された一方のワークの端面が、第1の加工ツールの第1の切削ツールにより切削される。第1の切削ツールがその位置を変えながら切削するので、第1の保持装置により静止状態に保持されている一方のワークの端面を精度よく加工することができる。また、第2の保持装置により保持された他方のワークを通じて回転させた一対のワークの外周面が、第2の切削ツールにより切削される。第2の保持装置により保持された状態の他方のワークを回転させることにより、摩擦接合後の一対のワークを回転させることができるので、第2の切削ツールは切刃等の切削部を第2の保持装置の回転中心軸に近接させる方向に移動させることにより、外周面を容易に加工することができる。
【0010】
また、上記態様においては、一対の前記ワークのそれぞれが、円管状部を備え、前記両端面のそれぞれが、前記円管状部の管軸方向の端部に形成された円環状の端面であり、前記外周面が、前記円管状部の前記管軸方向の断面視が円形状の外周面であってもよい。これにより、一対のワークの円管状部の円環状の端面を相互に対向させて、いずれかのワークを円管状部の管軸周りに回転させつつ密着させることにより、容易に摩擦圧接することができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記第1の加工ツールが、前記第2の加工ツールとしての機能を含んでいてもよい。これにより、第1の加工ツールと第2の加工ツールとを一体化して、構成を簡易にし、加工装置の小型化を図ることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様は、一対のワークの対向させた両端面を摩擦圧接により接合するためのワークエリアを挟む両側のうち一方側の搬送エリアから前記ワークエリアに一対の前記ワークを搬入することと、前記両側のうち他方側の非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、前記ワークの前記両端面の少なくともいずれかを一次加工することと、前記両端面を摩擦圧接により接合することと、前記非搬送エリアから前記ワークエリアにアクセスし、一対の前記ワークの少なくともいずれかの外周面を二次加工することと、前記ワークエリアから前記搬送エリアに一対の前記ワークを搬出することとを含む、ワーク接合方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワーク接合システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図1のワーク接合システムにより接合される第1ワークが一対の支持部材によって支持された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1のワーク接合システムのA-A矢視図である。
【
図4】
図1のワーク接合システムのB-B矢視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るワーク接合方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図1のワーク接合システムにワークを搬入する工程を説明する平面図である。
【
図7】
図1のワーク接合システムによる第1ワークの端面の加工を説明する部分的な平面図である。
【
図8】
図1のワーク接合システムによる第2ワークの端面の加工を説明する部分的な平面図である。
【
図9】
図1のワーク接合システムに装着されたワークを摩擦圧接する工程を説明する平面図である。
【
図10】
図1のワーク接合システムによる接合部の外周面の加工を説明する部分的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るワーク接合システム100およびワーク接合方法について、図面を参照して以下に説明する。本実施形態に係るワーク接合システム100は、
図1に示されるように、一対のワークW1,W2を摩擦圧接により接合する摩擦圧接装置1と、搬送エリアに配置される搬送装置20と、非搬送エリアに配置される加工装置30とを備えている。
【0015】
摩擦圧接装置1には、装着される第1ワーク(一方のワーク)W1および第2ワーク(他方のワーク)W2が配置されるワークエリアが設けられる。ワークエリアを、第1ワークW1と第2ワークW2との対向方向Xに交差する方向Zに挟む両側のうち一方側には、第1ワークW1および第2ワークW2をワークエリアに搬入出するための搬送エリアが設けられる。搬送エリアには、搬送装置20が配置されている。搬送装置20は、例えば、第1ワークW1および第2ワークW2を吊り下げて搬送するクレーンである。ワークエリアの他方側には、第1ワークW1および第2ワークW2の搬入出には使用されない非搬送エリアが設けられている。非搬送エリアは、搬送エリアを避けるように設けられている。非搬送エリアには、加工装置30が配置されている。なお、本例では、対向方向Xに交差する方向Zは、対向方向Xに直交する方向である。
【0016】
摩擦圧接装置1は、床面に設置されるベース2と、ベース2上に設置され、第1ワークW1を保持する第1保持装置(第1の保持装置)5と、ベース2上に水平方向に移動可能に設置され、第2ワークW2を保持する第2保持装置(第2の保持装置)3と、ベース2に対して第2保持装置3を直線移動させる直動機構4とを備えている。
【0017】
第1ワークW1を保持する第1保持装置5は、ベース2に固定される第1ベース11と、第1ワークW1と第2ワークW2との対向方向Xを挟む両側に対向して配置された一対の支持部材12と、一対の支持部材12を相互に近づけたり離したりする方向(本例では対向方向Xに直交する方向Z)にそれぞれ駆動するアクチュエータ13とを備えている。アクチュエータ13は、例えば、油圧シリンダである。
【0018】
一対の支持部材12は、
図2に示されるように、それぞれ角柱から半円柱を刳り貫いた形状に形成されるとともに、対向する側面に、第1ワークW1の外径と同等の内径を有する半円形状の支持面12aを有している。したがって、一対の支持部材12が最も近接させられたときに、2つの支持面12aによって第1ワークW1の外径と同等の内径を有する円形状の支持面12bが形成される。これにより、第1保持装置5は、第1ワークW1を静止した状態に保持可能である。
【0019】
本例の摩擦圧接装置1は、鋼管からなる第1ワークW1の端面60aと、鋳鉄製の第2ワークW2の端面50aとを相対回転させながら押し付け、その際に発生する摩擦熱により両端面60a,50aを接合する装置である。
【0020】
本例の第1ワークW1は、管軸X1方向の端部に形成された円管状部60bと、円管状部60bの管軸X1方向の断面視が円形状の外周面60cとを備えている。第1ワークW1の端面60aは、円管状部60bの管軸X1方向の端部に形成された円環状の端面である。また、本例の第2ワークW2は、管軸X2方向の端部に形成された円管状部50bと、円管状部50bの管軸X2方向の断面視が円形状の外周面50cとを備えている。第2ワークW2の端面50aは、円管状部50bの管軸X2方向の端部に形成された円環状の端面である。本例では、円管状部60bの管軸X1方向と、円管状部50bの管軸X2方向とは、接合される際に同一直線上に配置される。
【0021】
第2ワークW2を保持する第2保持装置3は、
図1に示されるように、第2ベース6と、第2ベース6に設けられ、第2ワークW2を把持する回転チャック7と、回転チャック7を回転駆動するモータ8とを備えている。回転チャック7は、モータ8の作動により、把持した第2ワークW2を、第1ワークW1と第2ワークW2との対向方向X、すなわち水平な回転軸線X周りに回転させることができる。これにより、第2保持装置3は、第1ワークW1を回転可能に保持可能である。
【0022】
第2保持装置3を直線移動させる直動機構4は、ベース2上に設置され、第2ベース6をベース2に対して直線移動可能に支持するガイドレール9と、第2保持装置3をガイドレール9に沿って直線移動させるアクチュエータ10とを備えている。ガイドレール9は、回転チャック7の回転軸線Xと平行に配置されている。これにより、回転チャック7に把持した第2ワークW2をモータ8の作動によって回転軸線X周りに回転させながら、アクチュエータ10の作動によって、回転軸線Xに沿う方向に移動させることができる。アクチュエータ10は、例えば、油圧シリンダである。
【0023】
加工装置30は、
図1および
図3に示されるように、先端に取り付けた切削工具(第1の加工ツール、第2の加工ツール、第1の切削ツール、第2の切削ツール)31を回転駆動するフライス加工機32と、フライス加工機32を3次元的に移動させる加工機移動機構33と、フライス加工機32を鉛直軸線Y周りに回転させる加工機回転機構34とを備えている。切削工具31は、例えば、エンドミルである。
【0024】
フライス加工機32は、モータ35と、モータ35の動力を切削工具31に伝達する動力伝達部(例えば、プーリおよびベルト、あるいはギヤ)36とを備えている。
【0025】
加工機移動機構33は、フライス加工機32をベース2に対して回転軸線Xに平行な水平方向に直線移動させる第1直動機構37と、フライス加工機32を鉛直方向に直線移動させる第2直動機構38と、フライス加工機32を回転軸線Xに直交する方向Zに平行な水平方向に直線移動させる第3直動機構39とを備えている。
【0026】
第1直動機構37は、
図3および
図4に示されるように、ベース2の側面に設置され、直動機構4のガイドレール9と平行に延びる第1軸ガイドレール40と、第1軸ガイドレール40に沿って移動可能な第1軸スライダ41と、第1軸スライダ41を駆動する第1軸モータ42および第1軸ボールねじ43とを備えている。
【0027】
第2直動機構38は、第1軸スライダ41に固定され鉛直方向に延びる第2軸ガイドレール47と、第2軸ガイドレール47に沿って移動可能な第2軸スライダ48と、第2軸スライダ48を駆動する第2軸モータ44および第2軸ボールねじ45と、第2軸スライダ48を鉛直上方に押し上げるバランス用のエアシリンダ46とを備えている。エアシリンダ46によって、第2軸スライダ48およびこれに搭載される第3直動機構39およびフライス加工機32の重量を軽減し、第2軸モータ44の負荷を軽減している。
【0028】
第3直動機構39は、第2軸スライダ48に固定され回転軸線Xに直交する方向Zに平行な水平方向に延びる第3軸ガイドレール50と、第3軸ガイドレール50に沿って移動可能な第3軸スライダ49と、第3軸スライダ49を駆動する第3軸モータ51および図示しないボールねじとを備えている。
【0029】
これら第1~第3直動機構37~39の作動により、フライス加工機32を3次元的に移動させ、
図3に鎖線で囲まれた範囲R(
図1に示すワークエリア)内に切削工具31の先端を配置することができる。したがって、加工装置30を、ワークエリアを挟んで搬送エリアの反対側の非搬送エリアに配置した状態であっても、フライス加工機32の切削工具31を、非搬送エリアからワークエリアにアクセスさせ、第1ワークW1および第2ワークW2を加工することができる。
【0030】
加工機回転機構34は、第3軸スライダ49に設置され、フライス加工機32を搭載する回転テーブル52と、回転テーブル52を鉛直軸線Y周りに回転駆動する回転軸モータ53と、回転軸モータ53の動力を回転テーブル52に伝達する図示しない動力伝達部(例えば、ギヤ)とを備えている。加工機回転機構34の作動により、切削工具31をワークエリア内で鉛直軸線Y周りに回転させることができる。これにより、切削工具31の先端を、第1ワークW1の端面60aに対向する方向、第2ワークW2の端面50aに対向する方向、第1ワークW1および第2ワークW2の外周面50c,60cに対向する方向などに配置することができる。
【0031】
本実施形態に係るワーク接合システム100を用いたワーク接合方法について
図5のフローチャートを参照して以下に説明する。ワーク接合システム100を用いて、鋼管からなる第1ワークW1の端面60aと、鋳鉄製の第2ワークW2の端面50aとを摩擦圧接により接合する場合、まず、
図6に示されるように、搬送装置20を用いて第1ワークW1および/または第2ワークW2を搬送する(
図5に示すステップS1)。
【0032】
図6に示されるように、搬送装置20による第1ワークW1および第2ワークW2の搬送は、搬送エリアからワークエリアにアクセスすることにより行われる。そして、ワークエリアに搬入した第1ワークW1を第1保持装置5の一対の支持部材12により支持させ、第2ワークW2を第2保持装置3の回転チャック7により把持させることにより、摩擦圧接装置1に第1ワークW1および第2ワークW2を装着する(
図5に示すステップS2)。
【0033】
図6に示されるように、長尺の鋼管からなる第1ワークW1は、第1保持装置5の隙間を空けた一対の支持部材12の間に配置した状態で、アクチュエータ13の作動によって一対の支持部材12を近接させることにより、一対の支持部材12の間に挟まれる。また、第2ワークW2は、円管状部50bの中心軸を回転軸線Xに一致させた状態で回転チャック7に把持される。
【0034】
これにより、
図2に示されるように、各支持部材12の支持面12aが第1ワークW1の外周面60cに密着して、第1ワークW1の菅軸X1方向の一部の外周面60cを全周にわたって取り囲む。支持部材12の支持面12aを同径の外周面60cに密着させることにより、第1ワークW1の中心軸が回転チャック7の回転軸線Xに一致する位置に調整される。また、この状態で、端面60aおよびその近傍の外周面60cが部分的に支持部材12から露出させられる。これにより、第1ワークW1と第2ワークW2とが、相互に接合される端面50a,60a同士を、間隔をあけて対向させて位置決めされた状態に、摩擦圧接装置1に装着される。
【0035】
次に、
図7に示されるように、加工装置30を作動させ、非搬送エリアからワークエリアにアクセスして、フライス加工機32により第1ワークW1の端面60aおよび第2ワークW2の端面50aの加工(一次加工)を行う(
図5に示すステップS3)。
図7に示されるように、加工機回転機構34の作動により、切削工具31を第1ワークW1の端面60aに対向させ、フライス加工機32のモータ35の作動により切削工具31を回転駆動しながら、加工機移動機構33の作動によって切削工具31を3次元的に移動させる。これにより、第1保持装置5に支持された状態の第1ワークW1の端面60a全体を精度よく加工することができる。すなわち、第1保持装置5に支持された状態の第1ワークW1の端面60aを加工するので、回転軸線Xに対して垂直(第2ワークW2の端面50aに対して平行)な平面となるように精度よく端面加工をすることができる。
【0036】
第1ワークW1の端面60aの加工に前後して、
図8に示されるように、加工機回転機構34の作動により、切削工具31を第2ワークW2の端面50aに対向させ、フライス加工機32のモータ35の作動により切削工具31を回転駆動しながら、加工機移動機構33の作動によって切削工具31を3次元的に移動させる。これにより、回転チャック7に装着された状態の第2ワークW2の端面50a全体を精度よく加工することができる。すなわち、回転チャック7に装着された状態の第2ワークW2の端面50aを加工するので、回転軸線Xに対して垂直(第1ワークW1の端面60aに対して平行)な平面となるように精度よく端面加工をすることができる。
【0037】
次に、
図9に示されるように、加工機移動機構33を作動させて、第1ワークW1の端面60aと第2ワークW2の端面50aとの間に配置されたフライス加工機32を、ワークエリアから非搬送エリアに退避させた後、第2保持装置3のモータ8を作動させることにより回転チャック7に把持させた第2ワークW2を回転軸線X周りに回転させる。また、これとともに、直動機構4のアクチュエータ10を作動させて、第2ワークW2を第1ワークW1に近接させる。そして、回転している第2ワークW2の端面50aを第1ワークW1の端面60aに押し付ける。これにより、第1ワークW1の端面60aと第2ワークW2の端面50aとの間に発生する摩擦熱により、第1ワークW1と第2ワークW2とを接合することができる(
図5に示すステップS4)。
【0038】
次に、
図10に示されるように、第1ワークW1と第2ワークW2とが摩擦圧接により接合された後、第1保持装置5のアクチュエータ13の作動により一対の支持部材12を相互に離れる方向に移動させ第1ワークW1を解放する。そして、直動機構4のアクチュエータ10の作動により、接合された第1ワークW1および第2ワークW2を第2保持装置3に引き寄せる方向に移動させ、第1ワークW1と第2ワークW2との接合部を切削工具31の動作範囲内に移動させる。
【0039】
次に、非搬送エリアからワークエリアにアクセスさせたフライス加工機32を作動させて切削工具31を回転駆動しつつ、回転チャック7の作動により、第2ワークW2を回転軸線X周りに回転させる。一対のワークW1,W2は摩擦圧接により一体化されているため、第2ワークW2を回転させることにより、一対のワークW1,W2が一体として回転する。これにより、切削工具31によって、第1ワークW1と第2ワークW2との接合部の外周面に形成されたバリを全周にわたって除去し、外周面50c,60cを仕上げること(二次加工)ができる(
図5に示すステップS5)。
【0040】
最後に、回転チャック7による第2ワークW2の把持を解放し、搬送エリアに配置されている搬送装置20をワークエリアにアクセスさせて、摩擦圧接により接合されたワークW1,W2を一体として吊り上げ、ワークエリアから搬送エリアに搬出する(
図5に示すステップS6)。
【0041】
本実施形態に係るワーク接合システム100においては、
図1に示されるように、加工装置30が、ワークエリアを水平方向に挟む一方側の非搬送エリアのみに配置されている。すなわち、加工装置30のフライス加工機32が、摩擦圧接前後に非搬送エリアからワークエリアにアクセスすることで、ワークW1,W2の端面加工および外周面加工を行うことができ、加工装置30を、ワークエリアを挟んで片側にのみ配置することができる。これにより、ワークエリアを水平方向に挟んだ両側に加工装置30を設ける場合と比較して、搬送エリアとワークエリアとの間における、搬送装置20による第1ワークW1および第2ワークW2の搬入出を加工装置30に邪魔されることなく容易に実施できる。また、搬入時における、一対の支持部材12への第1ワークW1の取付作業や回転チャック7への第2ワークW2の取付作業、搬出時における、接合された第1ワークW1および第2ワークW2の取り外し作業等も容易である。
【0042】
ワーク接合システム100においては、摩擦圧接装置1の一方側には、加工装置30が設けられていない搬送エリアとして、作業者が作業可能な十分な空間が確保されるので、第1ワークW1および第2ワークW2の着脱作業等を容易に実施することができる。その結果、加工装置30の配置されていない搬送エリアをワークW1,W2の搬入出経路としてのみならず、必要に応じて、搬入出、装着および取り外し作業を行う作業者のアクセス経路としても使用することができる。例えば、第1ワークW1が長尺で、第2ワークW2が短尺である場合には、第1ワークW1の搬入および接合後の一対のワークW1,W2の搬出は第1搬送装置20により行い、第2ワークW2の搬入は作業者により行うようにしてもよい。
【0043】
このように、ワーク接合システム100によれば、ワークエリアを挟む両側のうち、一方側を搬送エリア、他方側を非搬送エリアとして使い分けることで、摩擦圧接装置1のワークエリアへの第1ワークW1および第2ワークW2の搬入出および第1ワークW1および第2ワークW2に対する加工を含む一連のプロセスにおける作業性を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、フライス加工機32が、第1ワークW1および第2ワークW2の対向する両端面50a,60aを一次加工する場合を例に挙げて説明したが、これに代えて、第1ワークW1および第2ワークW2の対向する両端面50a,60aの一方のみを一次加工してもよい。また、本実施形態においては、第1ワークW1および第2ワークW2の端面50a,60の一次加工を行う第1の切削ツールと、接合されたワークW1,W2の外周面を二次加工する第2の切削ツールとを共通の切削工具31により加工する例を示したが、これに代えて、第1の切削ツールと第2の切削ツールとを別々に設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、回転チャック7の作動により、回転軸線X周りに回転可能であるため、接合前の第1ワークW1の端面50aおよび接合後の接合部の外周面については、切削工具31を回転駆動するフライス加工機32に代えて、バイトのような静止した工具(第2の切削ツール)を用いて加工してもよい。この場合、加工装置30が、第1ワークW1の端面60aを加工するフライス加工機32と、第2ワークW2の端面50aおよび接合部の外周面を加工するバイトとの両方を備えていてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、加工装置30が、摩擦圧接装置1に対して、回転軸線Xに直交する水平方向の片側のみに配置されている場合を例示したが、これに限定されるものではなく、鉛直上方のみ、斜め上方のみあるいは斜め下方のみに配置されていてもよい。あるいは、第1ワークW1および第2ワークW2が短尺である場合には、加工装置30は、ワークエリアを回転軸線Xに沿う方向に挟む両側の内、一方側のみに配置されていてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、鋼管からなる第1ワークW1と、鋳鉄製の第2ワークW2とを接合する場合を例示したが、第1ワークW1および第2ワークW2の材料は、これに限定されるものではない。また、円管状の第1ワークW1に代えて、円柱状の第1ワークW1を接合することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 摩擦圧接装置、 3 第2保持装置(第2の保持装置)、 5 第1保持装置(第1の保持装置)、 20 搬送装置、 30 加工装置、 31 切削工具(第1の加工ツール、第2の加工ツール、第1の切削ツール、第2の切削ツール)、 32 フライス加工機、 50a,60a 端面、 100 ワーク接合システム、 X 回転軸線、 W1 第1ワーク(ワーク)、 W2 第2ワーク(ワーク)