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特許7460151ロータリーダンパ及び自動車用ブレーキペダル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ及び自動車用ブレーキペダル
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20240326BHJP
   F16F 9/18 20060101ALI20240326BHJP
   F16H 25/12 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16F9/14 A
F16F9/18
F16H25/12 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020215730
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101261
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 良太
(72)【発明者】
【氏名】瀧中 宣明
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-182770(JP,A)
【文献】特開平06-033966(JP,A)
【文献】国際公開第2011/039922(WO,A1)
【文献】特開平08-270703(JP,A)
【文献】実開平06-081852(JP,U)
【文献】特開平05-229411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00 - 9/58
F16H 25/12
A47K 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー、前記シリンダーの内部に形成される油室、前記油室を第1室及び第2室に二分するピストン、前記油室に充填されるオイル、前記ピストンに形成される前記オイルの第1流路、第1室に設けられるローター、前記ピストンと前記ローターの間に介在し、前記シリンダー又は前記ローターの回転運動を前記ピストンの直線運動に変換する変換手段、第2室に設けられ、前記変換手段を前記ローターに常に接触させるために、前記変換手段を付勢する弾性部材、及び前記変換手段と前記弾性部材の間に介在し、前記ピストンの動きを止めるストッパーを備え、前記ピストンが前記変換手段と前記ストッパーの間で可動であり、第2室のオイルが前記ピストンによって加圧されるときに、第1流路が前記変換手段によって閉鎖されるロータリーダンパ。
【請求項2】
前記変換手段が第1室に開口する凹部及び前記凹部に開口する前記オイルの第2流路を備える請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパ及びロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ローターの回転運動をピストンの直線運動に変換する機構を備えたロータリーダンパを開示している。このロータリーダンパは、ピストンの移動方向によって減衰力が変化する一方向性ダンパであり、ピストンが一方向に移動するときに、ピストンが逆方向に移動するときよりも大きい減衰力を発生させるためのバルブを備えている。したがって、このロータリーダンパを製造するためには、最適なバルブの設計、製造及び組み付けが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-182770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、バルブのない一方向性ダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、シリンダー、前記シリンダーの内部に形成される油室、前記油室を第1室及び第2室に二分するピストン、前記油室に充填されるオイル、前記ピストンに形成される前記オイルの第1流路、第1室に設けられるローター、前記ピストンと前記ローターの間に介在し、前記シリンダー又は前記ローターの回転運動を前記ピストンの直線運動に変換する変換手段、第2室に設けられ、前記変換手段を前記ローターに常時接触させるために前記変換手段を付勢する弾性部材、及び前記変換手段と前記弾性部材の間に介在し、前記ピストンの動きを止めるストッパーを備え、前記ピストンが前記変換手段と前記ストッパーの間で可動であり、第2室のオイルが前記ピストンによって加圧されるときに第1流路が前記変換手段によって閉鎖されるロータリーダンパ及びそのようなロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダルを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ピストンが一方向に移動し、第2室のオイルがピストンによって加圧されるときに第1流路が変換手段によって閉鎖されるため、減衰力が発生する。一方、ピストンが逆方向へ移動するときは、ピストンが変換手段とストッパーの間で可動であるため、第1流路が開放される。したがって、このときに発生する減衰力は、ピストンが一方向へ移動するときよりも小さい。よって、本発明によれば、バルブのない一方向性ダンパを提供すること及びそのようなロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダルを提供することが可能であり、また、バルブに起因する製品不良を無くすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例に係るブレーキペダルの側面図である。
図2図2は、実施例で採用したロータリーダンパの縦断面図である。
図3図3は、実施例で採用したシリンダーの平面図である。
図4図4は、図3のA-A部断面図である。
図5図5は、実施例で採用したピストンの平面図である。
図6図6は、図5のA-A部断面図である。
図7図7は、実施例で採用したローターの平面図である。
図8図8は、実施例で採用したローターの正面図である。
図9図9は、実施例で採用したローターの底面図である。
図10図10は、実施例で採用した変換手段の平面図である。
図11図11は、図10のA-A部断面図である。
図12図12は、図10のB-B部断面図である。
図13図13は、実施例で採用したストッパーの平面図である。
図14図14は、実施例で採用したストッパーの正面図である。
図15図15は、実施例で採用したロータリーダンパの動作を説明するための縦断面図である。
図16図16は、図15のA部拡大図である。
図17図17は、実施例で採用したロータリーダンパの動作を説明するための縦断面図である。
図18図18は、図17のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る自動車用ブレーキペダルは、自動車の停止状態を維持するパーキングブレーキのブレーキペダル及び自動車の走行速度を減速するブレーキのブレーキペダル(以下、減速用ブレーキペダルという。)の両方を含む。また、本発明に係るロータリーダンパは、自動車用ブレーキペダルだけでなく、様々な物品に適用可能である。
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例
【0010】
実施例に係る自動車用ブレーキペダルは、減速用ブレーキペダルである。図1に示したように、この自動車用ブレーキペダルは、アーム10、シャフト(図示せず)、ブラケット20、パッド30、付勢手段(図示せず)、アームストッパー(図示せず)及びロータリーダンパ40を備えている。
【0011】
アーム10は、付勢手段によって、後方に回転するように付勢されている。アーム10は、アーム10の下端部に連結されたパッド30を足で踏むことによって、ブラケット20に支持されたシャフトを中心として前方に回転する。前方に回転したアーム10は、パッド30から足を離す又は踏力が低下することによって、シャフトを中心として後方に回転する。
【0012】
シャフトは、アーム10の上端部に連結されている。
【0013】
アームストッパーは、アーム10の後方への回転を所定位置で停止させるために設置されている。後方へ回転するアーム10は、アームストッパーに衝突することによって停止する。
【0014】
ロータリーダンパ40は、アーム10及びシャフトに連結されている。
【0015】
図2に示したように、実施例で採用したロータリーダンパ40は、シリンダー41、ピストン42、オイル、ローター43、変換手段44、ストッパー45、弾性部材46及び蓋47を備えている。
【0016】
図1及び図2に示したように、シリンダー41は、アーム10に連結されるフランジ41aを有している。図3及び図4に示したように、シリンダー41の内部には、油室41bが形成されている。油室41bの周壁には、案内溝41cが形成されている。油室41bの一端側には、油室41bの内径よりも大きい内径を有する第1穴41d及び第1穴41dの内径よりも大きい内径を有する第2穴41eが形成されている。油室41bの他端側は、シリンダー41の端壁41fで塞がれている。端壁41fの中央には、凸部41gが形成されている。
【0017】
図2に示したように、油室41bは、ピストン42によって第1室41hと第2室41iに二分されている。オイルは、油室41b(第1室41h及び第2室41i)に充填されている。
【0018】
図5及び図6に示したように、ピストン42は、円筒形の周壁42a、周壁42aの一端に設けられる端壁42b、端壁42bの中央に形成される孔部42c及び孔部42cの周りに形成される溝42dを有している。溝42dは、オイルの第1流路として機能するものである。
【0019】
図7図8及び図9に示したように、ローター43は、円板状の大径部43a、大径部43aの外径よりも小さい外径を有する小径部43b、大径部43aから突出する軸部43c及び大径部43aから突出し、かつ軸部43cの周りに形成されるカム43dを有している。ローター43は、シャフトと嵌合する第1穴43e及びシリンダー41の凸部41gと嵌合する第2穴43fを有している。
【0020】
図2に示したように、ローター43の大径部43aは、シリンダー41に形成された第1穴41dの底面に支持されている。ローター43の軸部43cは、第2穴43fをシリンダー41の凸部41gに嵌合させることによって凸部41gに支持されている。ローター43は、シリンダー41の中で回転できるように設置されるが、実施例では、ローター43が非回転部材であるシャフトに連結されるため、使用時にローター43は回転しない。実施例では、ローター43に代えてアーム10に連結されるシリンダー41がローター43の周りで回転する。
【0021】
変換手段44は、ピストン42とローター43の間に介在し、シリンダー41又はローター43の回転運動をピストン42の直線運動に変換する手段である。図10図11及び図12に示したように、変換手段44は、大径部44a、大径部44aの外径より小さい外径を有する第1小径部44b、大径部44aと第1小径部44bの間に形成され、大径部44aの外径より小さく、第1小径部44bの外径より大きい外径を有する第2小径部44c、大径部44aの外周面から突出する突起44d、大径部44aに形成される凹部44e、凹部44eの中に形成されるカム受け面44f、凹部44eの底壁を貫通する第1孔部44g及び大径部44aの端面から第1小径部44bの端面に亘って変換手段44を貫通する第2孔部44hを有している。第1孔部44gは、オイルの第2流路として機能するものである。
【0022】
図2に示したように、突起44dは、油室41bの周壁に形成された案内溝41cに嵌め込まれ、それにより、変換手段44は、シリンダー41と一緒に回転するようになっている。変換手段44に形成された凹部44eは、第1室41hに開口している。
【0023】
図13及び図14に示したように、ストッパー45は、中央に孔部45aを有する円板である。ストッパー45の一面には、ストッパー45とピストン42が接触したときに、両者の間にオイルの流路を形成する役割を果たす突起45bが形成されている。図2に示したように、ストッパー45の孔部45aには、変換手段44の第1小径部44bが挿入され、それにより、ストッパー45は、変換手段44と弾性部材46の間に介在するように配置されている。
【0024】
弾性部材46は、圧縮の荷重を受けて弾力を発生する部材である。図2に示したように、実施例では、弾性部材46として、コイルの内径が変換手段44の第1小径部44bの外径より大きい圧縮コイルばねが採用されている。弾性部材46のコイルの中には、変換手段44の第1小径部44b及び変換手段44の第2孔部44hに挿入されたローター43の軸部43cが挿入されている。弾性部材46の一端は、シリンダー41の端壁41fに接触し、弾性部材46の他端は、ストッパー45に接触している。
【0025】
ローター43に形成されたカム43dは、変換手段44に形成されたカム受け面44fと接触することによって、変換手段44を上下動させるものである。実施例では、変換手段44をローター43に常に接触させるために、弾性部材46が変換手段44を付勢している。その結果、カム43dは、カム受け面44fに常に接触している。ローター43が回転する場合には、カム43dが回転運動する。しかしながら、実施例では、ローター43が回転しないため、カム43dが回転運動することはない。実施例では、シリンダー41の回転によってカム受け面44fがカム43dに接触しながら回転する。それにより、シリンダー41が一方向へ回転するときは、その回転に従って、変換手段44が上昇し、かつピストン42がシリンダー41の端壁41fから離れる方向へ直線的に移動し、シリンダー41が逆方向へ回転するときは、その回転に従って、変換手段44が下降し、かつピストン42がシリンダー41の端壁41fに接近する方向へ直線的に移動する。
【0026】
図2に示したように、ピストン42の孔部42cには、変換手段44の第2小径部44cが挿入され、それにより、ピストン42は、変換手段44とストッパー45の間で、第2小径部44cに沿って移動できるように配置されている。
【0027】
図2に示したように、蓋47は、シリンダー41に形成された第2穴41eの底面に支持され、シリンダー41の端部をかしめることにより取り付けられている。ローター43の小径部43bには、Oリング48を装着し、それにより、オイルの漏洩を防止している。
【0028】
実施例に係る自動車用ブレーキペダルは、以下のように動作する。すなわち、自動車を減速させるために、足でパッド30を踏むと、アーム10が初期位置から前方へ回転する。アーム10の回転角度は、最大で約40°である。このとき、ロータリーダンパ40のシリンダー41が一方向へ回転し、また、変換手段44が回転しながら上昇する。それにより、第1室41hのオイルが第2室41iに向かって流れる。図15及び図16に示したように、ピストン42は、オイルの流れを受けてシリンダー41の端壁41fに接近する方向へ移動する。ストッパー45は、突起45bの先端がピストン42に衝突することによって、ピストン42の動きを止める。それにより、ピストン42と変換手段44(凹部44eの底壁)の間に隙間が形成され、ピストン42に形成された溝42dが第1室41hと第2室41iを連通させる。すなわち、オイルの第1流路が開放される。第1室41hのオイルは、溝42d(第1流路)を通って第2室41iに流れるため、ロータリーダンパ40が発生する減衰力は小さい。また、実施例では、変換手段44に形成された凹部44eが第1室41hに開口し、かつ変換手段44に形成された第1孔部44g(オイルの第2流路)が凹部44eに開口しているため、減衰力をさらに低下させることができる。したがって、アーム10が前方へ回転するときにアーム10に作用する抵抗を小さくできる。
【0029】
一方、パッド30から足を離す又は踏力が低下すると、アーム10が後方へ回転する。このとき、ロータリーダンパ40のシリンダー41が逆方向へ回転し、また、変換手段44が回転しながら下降する。それにより、第2室41iのオイルが第1室41hに向かって流れる。図17及び図18に示したように、ピストン42は、オイルの流れを受けてシリンダー41の端壁41fから離れる方向へ移動する。ピストン42の端壁42bは、変換手段44(凹部44eの底壁)に衝突し、それにより、ピストン42に形成された溝42d(第1流路)が変換手段44(凹部44eの底壁)によって閉鎖される。すなわち、第2室41iのオイルがピストン42によって加圧されるときに、第1の流路が変換手段44によって閉鎖される。その結果、第2室41iのオイルは、部材間の僅かな隙間(例えば、油室41bの周壁とピストン42の周壁42aとの間隙)を通って第1室41hに流れるため、ロータリーダンパ40が大きな減衰力を発生する。したがって、アーム10が後方へ回転するときにアーム10に作用する抵抗を大きくできる。アーム10は、初期位置に復帰するときにアームストッパー45に衝突するが、ロータリーダンパ40の減衰力によって、衝突時の異音の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0030】
10はアーム、20はブラケット、30はパッド、40はロータリーダンパ、41はシリンダー、41aはフランジ、41bは油室、41cは案内溝、41dはシリンダーの第1穴、41eはシリンダーの第2穴、41fはシリンダーの端壁、41gはシリンダーの凸部、41hは第1室、41iは第2室、42はピストン、42aはピストンの周壁、42bはピストンの端壁、42cはピストンの孔部、42dはピストンの溝、43はローター、43aはローターの大径部、43bはローターの小径部、43cはローターの軸部、43dはカム、43eはローターの第1穴、43fはローターの第2穴、44は変換手段、44aは変換手段の大径部、44bは変換手段の第1小径部、44cは変換手段の第2小径部、44dは変換手段の突起、44eは変換手段の凹部、44fはカム受け面、44gは変換手段の第1孔部、44hは変換手段の第2孔部、45はストッパー、45aはストッパーの孔部、45bはストッパーの突起、46は弾性部材、47は蓋、48はOリングである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
図18