(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】フォールディングされたドメインおよびRNA顆粒会合タンパク質ドメインの光制御オリゴマー化および相分離のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240326BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240326BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240326BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240326BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240326BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240326BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240326BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2021548686
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 US2020018758
(87)【国際公開番号】W WO2020172228
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-01-13
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ブラングウィン,クリフォード・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ブラチャ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク,ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】サンダース,デヴィッド・ダブリュー
【審査官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0251497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355977(US,A1)
【文献】Bracha et al., 2018, Cell 175, 1467-1480
【文献】ACS Synth. Biol.,2017年,Vol. 6,pp. 1086-1095,DOI: 10.1021/acssynbio.7b00022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのオプトタンパク質を含むタンパク質システムであって、
各オプトタンパク質が第二の領域に融合した第一の領域を含み、
該少なくとも2つのオプトタンパク質の第一のオプトタンパク質の第一の領域が(i)BLUFドメイン、LOVドメイン、UVR8ドメイン、フィトクロム、またはクリプトクロムを含む第一の光感受性タンパク質、および(ii)自己集合するように設定された1つまたはそれより多いタンパク質を含む、
該少なくとも2つのオプトタンパク質の第二のオプトタンパク質の第一の領域が、(i)該第一の光感受性タンパク質の第一の同族パートナー、および(ii)自己集合するように設定された1つまたはそれより多いタンパク質を含む、そして
該第一のオプトタンパク質の第二の領域、および該第二のオプトタンパク質の第二の領域が、それぞれ、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含む、
自己集合するように設定された1つまたはそれより多いタンパク質がフェリチンを含む、タンパク質システム。
【請求項2】
タンパク質システムが:
第二の領域に融合した第一の領域を含む固定リンカータンパク質であって、固定リンカータンパク質の第一および第二の領域が各々、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、そして固定リンカータンパク質の第一および第二の領域が各々、少なくとも2つのオプトタンパク質のオプトタンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されている、前記固定リンカータンパク質
をさらに含む、請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項3】
タンパク質システムが:
(I)第二の領域に融合した第一の領域を含む代替オプトタンパク質であって、代替オプトタンパク質の第一の領域が第二の光感受性タンパク質の第二の同族パートナーを含み、代替オプトタンパク質の第二の領域が、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、代替オプトタンパク質の第二の領域が少なくとも2つのオプトタンパク質の第一のオプトタンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されている、前記代替オプトタンパク質;ならびに
(II)第二の領域に融合した第一の領域を含む代替コアタンパク質であって、代替コアタンパク質の第一の領域が第二の光感受性タンパク質を含み、そして代替コアタンパク質の第二の領域が、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、代替コアの第二の領域が自己集合するように適応されている、前記代替コアタンパク質
をさらに含む、請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項4】
システムがさらに、2つまたはそれより多いタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)コアタンパク質を含み、各PPIコアタンパク質が第二の領域に融合した第一の領域を含み、PPIコアタンパク質の第一の領域が、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、PPIコアタンパク質の第二の領域が、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、
各PPIコアタンパク質の第一の領域が少なくとも2つのオプトタンパク質のオプトタンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されており、そして各PPI
コアタンパク質の第二の領域が自己集合するように適応されている
、
請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項5】
請求項1記載のタンパク質システムであって、
第三のオプトタンパク質であって、第一の領域が第二の光感受性タンパク質を含み、そして第二の領域が、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含む、前記オプトタンパク質をさらに含み、
第三のオプトタンパク質の第二の領域が、少なくとも2つのオプトタンパク質のオプトタンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されており、そして
少なくとも2つのオプトタンパク質のオプトタンパク質の第一の領域および第三のオプトタンパク質の第一の領域が、光に反応して、少なくとも2つの構成要素のオリゴマーに自己集合するように適応されている、
前記タンパク質システム。
【請求項6】
第一の光感受性タンパク質がフォールディングされたRBDに融合し、そしてフォールディングされたRBDが、RNA認識モチーフ(RRM)、K相同(KH)ドメイン、プミリオ(PUM)ドメイン、ジンクフィンガードメイン、DEADボックスヘリカーゼドメイン、二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)、m6A RNA結合ドメイン(YTHドメイン)、またはコールドショックドメイン(CSD)である、
第一の光感受性タンパク質が変性RBDに融合し、そして変性RBDがアルギニン-グリシン(RG)ドメイン、アルギニン-グリシン-グリシン(RGG)ドメイン、セリン-アルギニン(SR)ドメイン、または塩基性-酸性ジペプチド(BAD)ドメインである、または
第一の光感受性タンパク質が1つまたはそれより多いフォールディングされた、二量体化またはオリゴマー化ドメインを含む非RBDに融合している、
請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項7】
第一の光感受性タンパク質が操作されたタンパク質である、請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項8】
第一の領域が2つのLOV2-ssrAタンパク質を含む、請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項9】
少なくとも2つのオプトタンパク質の少なくとも1つのオプトタンパク質が蛍光タグを含む、請求項1記載のタンパク質システム。
【請求項10】
請求項1のタンパク質システムを発現する細胞株または幹細胞由来細胞であって、タンパク質システムを発現するように適応された1つまたはそれより多くの遺伝子が、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、細菌人工染色体(BAC)、一過性トランスフェクション
、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはCRISPR/Cas9に基づくアプローチを利用して、細胞に送達されており、
前記細胞株または幹細胞由来細胞は、ヒト細胞、酵母細胞、培養ニューロン
、虫(worm)
細胞、ハエ(fly)
細胞、齧歯類
細胞、または霊長類
細胞である、
細胞株または幹細胞由来細胞。
【請求項11】
請求項1記載のタンパク質システムを発現するよう設定された1つまたはそれより多い遺伝子で、細胞をトランスフェクションするように設定された少なくとも1つの発現ベクターを含み、
該タンパク質システムは、前記2つのオプトタンパク質
を含む、発現ベクター系。
【請求項12】
二量体化またはオリゴマー化したタンパク質システムの相挙動を測定するための方法であって:
a. 請求項1記載のタンパク質システムを提供し;
b. 第一の光感受性タンパク質を、少なくとも1つの光波長に曝露することによって、フォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、または二量体化またはオリゴマー化ドメインを含むフォールディングされた非RBDドメインをオリゴマー化し;そして
c. 状態図をマッピングし、相分離、凝縮、または凝集が起こっているかどうかを決定し、
二量体化またはオリゴマー化したタンパク質システムの物質特性、タンパク質濃度、価、またはその組み合わせを測定することによって相挙動を測定する
工程を含む、前記方法。
【請求項13】
タンパク質システムが生存細胞内に位置する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
タンパク質システムが生存または死亡細胞の外に位置する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
オリゴマー化が細胞質リボ核タンパク質(RNP)顆粒のゲル化を促進する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
タンパク質システムが、マルチウェルアレイ/プレートのウェル中にある、請求項12記載の方法であって、1つまたはそれより多い化学剤をウェルに提供する工程をさらに含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、2019年2月19日出願の米国仮出願第62/807459号に優先権を請求し、該出願はその全体が本明細書に援用される。
技術分野
[0002]本開示は、一般に、フォールディングされたドメインの相分離に関し、そしてより具体的には、薬剤に基づくスクリーニング適用の一部としての、フォールディングされたドメインのクラスターの誘導に関する。
【発明の概要】
【0002】
[0003]細胞は、オルガネラと呼ばれる反応中心において、生命に必要な多様な生化学プロセスを区画化する。オルガネラは古典的には、均一な細胞質ゾル溶液から隔離された膜封入区画として描写される。しかし、細胞はまた、その内容物を、膜を欠くオルガネラでも編成する。こうした区画は、真核細胞の核中に特に豊富であり、そしてこれには、リボソーム産生核小体ならびに機能がほとんど理解されていないRNA-タンパク質体(例えばカハール体、スペックル)が含まれる(ZhuおよびBrangwynne、2015)。細胞質において、膜不含区画の存在は、通常、背景特異的であり、ポリソーム分解(すなわちストレス顆粒)(Ivanovら、2018;ProtterおよびParker、2016)、または特異的細胞外シグナルの検出(例えばシグナロソーム、インフラマソーム)(GammonsおよびBienz、2018;WuおよびFuxreiter、2016)の結果として現れる。多くの場合、こうした巨視的集合が、特定の生化学反応を増大させるのか、または不活性隔離中心として受動的に存在するのかは不明確である(ShinおよびBrangwynne、2017)。
【0003】
[0004]近年の研究によって、液体-液体相分離(LLPS)の物理は、これらの構造の集合を説明することが示唆されており、こうした構造は、次第に凝縮体と称されるようになっている(Bananiら、2017;Brangwynneら、2009;ShinおよびBrangwynne、2017)。細胞内LLPSは、優先的な自己会合を通じた自由エネルギー最小化の結果として、飽和タンパク質/核酸濃度で起こる(Brangwynneら、2015)。低複雑性/天然変性領域(intrinsically disordered region)(IDR)または短い「粘着性(sticky)」モチーフを含有するタンパク質間の弱い相互作用は、特定の系において細胞内LLPSを仲介しうる(Elbaum-Garfinkleら、2015;Freyら、2006;Katoら、2012;Molliexら、2015;Murakamiら、2015;Nottら、2015;Patelら、2015)が、これらの付加的「多価」モチーフ反復が、核小体およびストレス顆粒のような一般的な巨視的生物学的凝縮物の形成に必須であるかどうかは不明である。そのようなRNP体において、低特異性RNA結合ドメイン(RBD)を含有するタンパク質は、RNAに基づく架橋を伴う弱い相互作用のため、LLPSには非常に重要である可能性もある(Chongら、2018;Fericら、2016;Leeら、2016;Mitreaら、2018;Nottら、2015;Vernonら、2018)。
【0004】
[0005]多価の弱い相互作用の寄与に関して多数の研究がなされてきたにもかかわらず、多構成要素細胞性凝縮物が、選択的に相分離して、そして特定の基質を補充する一方、他のものを排除することを可能にする、特異的相互作用に関しては、それほど注意が払われてこなかった。必須凝縮物核形成タンパク質は、しばしば、オリゴマー化ドメイン、IDR、および最も一般的なカテゴリーがRBDである基質結合部分を含む、共有されたモジュラー構造を示す(Aokiら、2018;HebertおよびMatera、2000;Kedershaら、2016;Matsukiら、2013;Mitreaら、2018;2016;2014;Tourriereら、2003)。これらのRBDの多くは、特異的RNAモチーフに高アフィニティで結合するよくフォールディングされたRNA認識モチーフ(RRM)、ならびにバルクRNAおよび解離リボソームに低アフィニティで結合する末端RGG領域の両方を特徴とする(Chongら、2018;Mitreaら、2016;Thandapaniら、2013)。例えば、G3BP(ストレス顆粒)、PGL(P顆粒)、およびNPM1(核小体)は、各々、N末端にオリゴマー化ドメイン、そしてC末端に二部分(bi-partite)RBD(フォールディングされたRRM、変性(disordered)RGG)を有する(Aokiら、2018;Kedershaら、2016;Matsukiら、2013;Mitreaら、2014;Tourriereら、2003)。こうしたオリゴマー化ドメインおよびRBDは重要であると考えられているが、定義された物質特性を伴う、凝縮物の相分離へのこれらの相対的な寄与の定量的な理解はされていない。
【0005】
[0006]ストレス顆粒(SG)は、特に興味深い細胞質凝縮物に相当し、該顆粒は、細胞内相分離の一般的な原理を説明するための重要なモデルとして出現してきた(Ivanovら、2018;Kedershaら、1999;ProtterおよびParker、2016)。SGは、ミクロンサイズで液体様のRNA-タンパク質集合体であり、哺乳動物細胞において、翻訳抑止およびそれに続くポリソーム分解に反応して形成される(Kedershaら、1999;2016;2002;Kroschwaldら、2015;Molliexら、2015;Wheelerら、2016;Wippichら、2013)。SG集合は、RBP、リボソームサブユニット、およびRNAと相互作用するネットワークを伴う(Bounedjahら、2014;Kedershaら、2016;Markmillerら、2018;Younら、2018)。この相互作用のリッチなネットワークにもかかわらず、以前の研究は、SG凝縮に必須であるようであり(Kedershaら、2016;Matsukiら、2013)、そして上述のカノニカルなモジュラー構築を特徴とする(Tourriereら、2003)、単一タンパク質、G3BPの重要性を過小評価してきた。しかし、G3BPがSG生合成を制御する機構、およびそのモジュラー構築の生物物理的役割は、ほとんど理解されていないままである(Kedershaら、2016;Matsukiら、2013;Panasら、2015;Schulteら、2016;Solomonら、2007;Wuら、2016)。
【0006】
[0007]SGおよび他の凝縮物に関する以前の研究を妨げていた重要な障害は、特定の凝縮物核形成タンパク質に関する、ユニークな相互作用モジュールの相対的役割をin vivoで定量的に探査するツールが欠けていることであった。
【0007】
概要
[0008]相分離/凝縮は、一般的に、相互作用する生体分子の連結されたネットワークの形成を必要とする。開示するシステムおよび方法は、光活性化に際して相分離を活性化するが、潜在的なタンパク質-タンパク質またはタンパク質-RNA相互作用が起こっている場合のみに活性化する構築物を、当業者が操作することを可能にする。これは次に、連結された相互作用ネットワークが欠如しているために相分離/凝縮が起こらない条件を見出すことによって、前記相互作用を破壊する条件に関してスクリーニングすることを可能にする。
【0008】
[0009]細胞内凝縮物を読み出し情報として利用して、生体分子相互作用、例えばオリゴマー化、タンパク質-タンパク質相互作用、およびRNA結合を定量的に調べる、オプトジェネティックツールを提供するシステムおよび方法を開示する。フォールディングされたドメインの弱く架橋された複合体またはハブを用いて、液体-液体相分離の相境界を越えてもよい。これらのハブは、例えば、小分子ライブラリー、または生理学的タンパク質/基質由来の分子、例えば複合体の価数を減少させ、そしてそれによって、会合したタンパク質-RNAネットワークの相分離を仲介する能力を抑制するUSP10によって破壊されてもよい。
【0009】
[0010]本開示の第一の側面は、薬剤に基づくスクリーニング適用の一部として用いてもよいタンパク質システムに関する。該タンパク質システムは、1つまたはそれより多い第一の融合タンパク質を必要とし、第一の融合タンパク質には各々、第二の領域に融合した第一の領域が含まれる。第一の領域は、少なくとも1つの光感受性タンパク質または光感受性タンパク質の同族(cognate)パートナーを含み、一方、第二の領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含む。
【0010】
[0011]随意に、第一の融合タンパク質の第一の領域に、第一の光感受性タンパク質の第一の同族パートナーが含まれる場合、システムには、やはり第二の領域に融合した第一の領域を含む、第二の融合タンパク質が含まれてもよい。第二の融合タンパク質の第一の領域には、第一の光感受性タンパク質が含まれる(適切な光条件下で、第一の融合タンパク質が、第二の融合タンパク質に連結されることを可能にする)。第二の融合タンパク質の第二の領域には、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせが含まれ、ここで、第二の融合タンパク質の第二の領域は、他の第二の融合タンパク質が近傍にある場合、自己集合が可能である(例えばホモ型およびヘテロ型相互作用を含めて、二量体、三量体、五量体、n量体相互作用を通じて)。
【0011】
[0012]さらに、こうしたシステムには、第三および第四の融合タンパク質も含まれてもよく、ここで、第二および第四の融合タンパク質は、コア構造に自己集合し、そして第一および第三の融合タンパク質は、互いに相互作用し、そしてそれぞれ第二および第四の融合タンパク質にオプトジェネティック的に付着可能であるように設定されている。第三の融合タンパク質には、第二の領域に融合した第一の領域が含まれる。第三の融合タンパク質の第一の領域は、第二の光感受性タンパク質の同族パートナーを含み、そして第三の融合タンパク質の第二の領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、ここで第三の融合タンパク質の第二の領域は、第一の融合タンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されている。第四の融合タンパク質には、第二の領域に融合した第一の領域が含まれ、第四の融合タンパク質の第一の領域は、第二の光感受性タンパク質を含み、そして第四の融合タンパク質の第二の領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、ここで第四の融合タンパク質の第二の領域は、他の第四の融合タンパク質または他の第二の融合タンパク質のいずれかと自己集合可能である。
【0012】
[0013]あるいは、システムには、2つの領域を共に融合させている第三の融合タンパク質が含まれてもよく、各領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、そして第三の融合タンパク質の2つの領域は各々、第一の融合タンパク質の第二の領域と相互作用するために適応されている。
【0013】
[0014]随意に、第一の融合タンパク質の第一の領域が、第一の光感受性タンパク質を含む場合、システムにはまた、第二の融合タンパク質および2つまたはそれより多い第三の融合タンパク質も含まれてもよい。第二の融合タンパク質には、第二の領域に融合した第一の領域が含まれ、ここで、第二の融合タンパク質の第一の領域は、第一の光感受性タンパク質の同族パートナーを利用し、そして第二の融合タンパク質の第二の領域は、第一の融合タンパク質の第二の領域と同一である。すなわち、第一および第二の融合タンパク質は、一方が光感受性タンパク質を有し、そしてもう一方が光感受性タンパク質の同族パートナーを有する以外、ほぼ同一である。2つまたはそれより多い第三の融合タンパク質には、各々、第二の領域に融合した第一の領域が含まれ、第三の融合タンパク質の2つの領域の各々には、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせが含まれ、第三の融合タンパク質の第二の領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含むが、第一の領域は、第一の融合タンパク質の第二の領域または第二の融合タンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されており、そして第三の融合タンパク質各々の第二の領域は、自己集合するように適応されている。
【0014】
[0015]随意に、第一の融合タンパク質/オプトタンパク質(optoprotein)の第一の領域が、第一の光感受性タンパク質を含む場合、システムは、第二の領域に融合した第一の領域を含む第二の融合タンパク質を利用してもよい。第二の融合タンパク質の第一の領域には第一の光感受性タンパク質が含まれ、そして第二の融合タンパク質の第二の領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせを含み、ここで、第二の融合タンパク質各々の第二の領域は、第一の融合タンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されており、そして第一の融合タンパク質の第一の領域および第二の融合タンパク質の第一の領域は、光に反応して、少なくとも2つの構成要素のオリゴマーに自己集合するように適応されていてもよい。
【0015】
[0016]開示するシステムのいくつかにおいて、光感受性タンパク質は、フォールディングされたRBDに融合され、そしてフォールディングされたRBDは、RNA認識モチーフ(RRM)、K相同(KH)ドメイン、プミリオ(PUM)ドメイン、ジンクフィンガードメイン、DEADボックスヘリカーゼドメイン、二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)、m6A RNA結合ドメイン(YTHドメイン)、またはコールドショックドメイン(CSD)である。開示するシステムのいくつかにおいて、光感受性タンパク質は変性RBDに融合され、そして変性RBDはアルギニン-グリシン(RG)ドメイン、アルギニン-グリシン-グリシン(RGG)ドメイン、セリン-アルギニン(SR)ドメイン、または塩基性-酸性ジペプチド(BAD)ドメイン(例えばRD、RE)である。開示するシステムのいくつかにおいて、光感受性タンパク質は、1つまたはそれより多くのフォールディングされた非RBDに融合される。
【0016】
[0017]開示するシステムのいくつかにおいて、第一の領域はフェリチンを含む。
[0018]随意に、少なくとも1つの光感受性タンパク質は、操作されたタンパク質、例えばLOV2-ssrAである。随意に、少なくとも1つの光感受性タンパク質は、第二のLOV2-ssrAに融合した第一のLOV2-ssrAを含む。
【0017】
[0019]随意に、システム中の融合タンパク質の1つ、例えば第一の融合タンパク質は、蛍光タグを含む。
[0020]本開示の第二の側面は、上述のタンパク質システムを発現する細胞株または幹細胞由来細胞に関する。随意に、タンパク質システムを発現するように設定された1つまたはそれより多い遺伝子を、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、細菌人工染色体(BAC)、一過性トランスフェクション(例えばリポソームまたはDNAプラスミド導入のための専有(proprietary)配合物)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはCRISPR/Cas9に基づくアプローチを利用して、細胞に送達した。随意に、細胞は、ヒト細胞、酵母細胞、培養ニューロン、または虫(worm)、ハエ(fly)、齧歯類、または霊長類モデルである。
【0018】
[0021]本開示の第三の側面は、請求項1記載のタンパク質システムを発現するよう設定された1つまたはそれより多くの遺伝子で細胞をトランスフェクションするように設定された少なくとも1つの発現ベクターを含む、発現ベクター系に関する。随意に、発現ベクター系には、第一の融合タンパク質を発現可能である遺伝子を含む第一のプラスミドが含まれる。
【0019】
[0022]本開示の第四の側面は、天然または操作された多構成要素膜不含オルガネラ/凝縮物の相挙動(すなわち、飽和濃度、完全バイノーダル相境界(full binodal phase boundary)等を含む、濃度依存性状態図)を測定するための方法に関する。該方法には、上述のタンパク質システムを提供し、光感受性タンパク質を、少なくとも1つの光波長に曝露することによって、フォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、またはフォールディングされた非RBDドメインをオリゴマー化し、そして状態図をマッピングし、相分離、凝縮、または凝集が起こっているかどうかを決定し、凝縮物物質特性、タンパク質濃度、価、またはその組み合わせを測定することによって相挙動を測定する工程が含まれる。
【0020】
[0023]随意に、方法は、タンパク質システムが生存細胞内に、あるいは生存(または死んだ)細胞外にある場合であってもよい。随意に、タンパク質システムは、マルチウェルアレイ(またはプレート)中のウェル中にある。随意に、オリゴマー化は細胞質リボ核タンパク質(RNP)顆粒のゲル化を促進する。
【0021】
[0024]随意に、方法にはまた、1つまたはそれより多い化学剤をウェルに提供する工程も含まれる。
[0025]随意に、方法にはまた、遺伝子ノックダウン(例えばCRISPR KO、CRISPRi、siRNA、shRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド)または遺伝子上方制御(例えばCRISPRaまたはDNAプラスミドに基づく過剰発現)に基づく遺伝子スクリーニングの利用も含まれる。
【0022】
[0026]随意に、方法にはまた、遺伝子ノックダウンに基づく遺伝子スクリーニング、上方制御に基づく遺伝子スクリーニング、ウェルへの1つまたはそれより多い化学剤の添加、またはその組み合わせが有する影響を、測定された相挙動に基づいて決定する工程も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[0027]
図1Aは、本開示にしたがった第一の融合タンパク質の単純化された態様であり、融合タンパク質の第一および第二の領域を強調している。[0028]
図1Bは、本開示にしたがった第一の融合タンパク質の単純化された別の態様であり、融合タンパク質の第一および第二の領域を強調している。[0029]
図1Cは、第一の融合タンパク質の単一のタイプが自己集合可能である態様を例示する、単純化された図である。
【
図2】[0030]
図2は、本開示にしたがった第二の融合タンパク質の単純化された態様である。
【
図3】[0031]
図3は、第二の融合タンパク質が自己集合し、そして第一の融合タンパク質が、特定の光波長下で、自己集合コアに付着可能である態様を例示する、単純化された図である。
【
図4】[0032]
図4は、本開示にしたがった第五の融合タンパク質の単純化された態様である。
【
図5】[0033]
図5は、第二の融合タンパク質が自己集合し、第一の融合タンパク質が、特定の光波長下で、第二の融合タンパク質に付着可能であり、そして第三の融合タンパク質が第二の融合タンパク質と相互作用する態様を例示する、単純化された図である。
【
図6】[0034]
図6は、本開示にしたがった第三の融合タンパク質の単純化された態様である。
【
図7】[0035]
図7は、本開示にしたがった第四の融合タンパク質の単純化された態様である。
【
図8】[0036]
図8は、第二および第四の融合タンパク質が自己集合し、第一の融合タンパク質が、特定の光波長下で、第二の融合タンパク質に付着可能であり、第三の融合タンパク質が第二の融合タンパク質と相互作用し、そして第三の融合タンパク質が、特定の光波長下で、第四の融合タンパク質に付着可能である態様を例示する、単純化された図である。
【
図9】[0037]
図9は、本開示にしたがった第六の融合タンパク質の単純化された態様である。
【
図10】[0038]
図10は、第六の融合タンパク質が自己集合し、第一の融合タンパク質の1つのタイプが第六の融合タンパク質と相互作用可能であり、第一の融合タンパク質の第二のタイプが、特定の光波長下で、第一の融合タンパク質の第一のタイプに付着可能であり、そして第一の融合タンパク質の第二のタイプが第六の融合タンパク質との相互作用に利用可能である態様を例示する、単純化された図である。
【
図11】[0039]
図11は、第一の融合タンパク質の異なるタイプが自己集合可能である態様を例示する、単純化された図である。
【
図12】[0040]
図12は、本出願の根底にある概念であるグラフ理論由来の概念が、ネットワークに基づく細胞凝縮のための機械的フレームワークをどのように提供するかを示す例示である;「価」(v)は「粒子」と会合する相互作用部位の数を記載し(1~6で示される)、これは細胞において、個々のタンパク質またはタンパク質複合体であり(「キャップ」は、v=1の粒子を指し;「ブリッジ」はv=2であり;「ノード」はi>>2である)、そして集合複合体は、個々の粒子間の連結から生じ、各々は、それ自体の価(示す通り)を特徴とする。より大きな複合体との相互作用を欠く粒子は「バイスタンダー」である(v=0)。孤立状態で見られる場合(例えばRBP複合体、RNA不含)、複合体は、さらなる連結性のために利用可能な部位(例えばRNA結合ドメイン)の数を反映する全体の価(ここではv=6)を特徴とする。G3BP仲介性SG(下部)の背景において、ストレスを受けていない細胞では、G3BP結合のために曝露されるmRNAの量は、典型的には低く(リボソーム占有率が高い);亜ヒ酸ストレス誘導性ポリソーム分解後、mRNAが曝露され、そしてG3BPノードの高いRBD価によって、ネットワーク凝縮が仲介される。
【
図13】[0041]
図13は、G3BPのフォールディングされたドメイン(NTF2)を用いて、記載する技術によって予測される内因性タンパク質相互作用パートナーを検証する、GFPタグ化G3BPドメイン欠失共免疫沈降からのウェスタンブロットであり、レジェンドは、G3BP1、G3BP2AおよびG3BP2B(1301、1302、1303)で同様に見られるような、G3BP(1300)の多様なドメインを示す:オリゴマー化ドメイン(NTF2(二量体化):1~141(1310));2つのIDRドメイン(IDR1(酸性)(142~224)(1320)およびIDR2(Pリッチ)(225~334)(1330))ならびに2つのRBDドメイン(RRMドメイン(334~409)(1340)およびRGGドメイン(410~466)(1350)(異なるアイソフォームが同じドメイン編成を有するが、異なるアミノ酸指定を有すると認識される))。NTF2ドメインの欠失(1305)は、G3BP KOにおいて、USP10、CAPRIN1、およびUBAP2LへのGFP-G3BPのストレス非依存性高アフィニティ結合を無効にする(RNアーゼ、ビーズのRIPA洗浄)。3回の独立の実験に由来する代表的なウェスタンブロット。
【
図14】[0042]
図14Aは、G3BP(1400)における関心対象の5つのドメインの単純化された描写である:オリゴマー化ドメイン(NTF2(二量体化):1~141(1401));2つのIDRドメイン(IDR1(酸性)(142~224)(1402)およびIDR2(Pリッチ)(225~334)(1403))ならびに2つのRBDドメイン(RRMドメイン(334~409)(1404)およびRGGドメイン(410~466)(1405))。[0043]
図14Bは、sspB-ANTF2(1450)の単純化された描写であり、ここで、G3BP(1400)のNTF2ドメイン(1401)は、sspB(1451)で置換されているが、その他は不変のままである。[0044]
図14Cは、二量体化ドメイン(NTF2)相互作用タンパク質のスクリーニング用であり、そしてその凝縮を調節する、4つのドメインを含有するタンパク質(1460)の単純化された描写である:オリゴマー化ドメイン(NTF2(二量体化):1~141(1401));2つのIDRドメイン(IDR1(酸性)(142~224)(1402)およびIDR2(Pリッチ)(225~334)(1403))ならびにsspB(1451)。
【
図15】[0045]
図15Aは、コア価、コア濃度、および基質(RNA)利用可能性の間の相互作用を明らかにする細胞内状態図であり、ここで、非反応システムに関して、計算された最適相閾値を示し、システムは、
図14Bと同じsspB構築物を用い、そして実験はヒトU20S細胞中で行われる。[0046]
図15Bは、コア価、コア濃度、および基質(RNA)利用可能性の間の相互作用を明らかにする細胞内状態図であり、ここで、亜ヒ酸塩で処理した(利用可能なRNAが増加する)システムに関して、計算された最適相閾値を示し、システムは、
図14Bと同じsspB構築物を用い、そして実験はヒトU20S細胞中で行われる。[0047]
図15Cは、コア価、コア濃度、および基質利用可能性の間の相互作用を明らかにする細胞内状態図であり、ここで、亜ヒ酸塩およびシクロヘキシミド(亜ヒ酸誘導性RNA増加をブロッキングする)で処理したシステムに関して、計算された最適相閾値を示し、システムは、
図14Bと同じsspB構築物を用い、そして実験はヒトU20S細胞中で行われる。計算された最適相閾値は、非処理細胞のもの(
図15A)とほぼ同一である。[0048]
図15Dは、アクチノマイシンD(RNA転写をブロッキングすることによって、利用可能なRNAを減少させる)で処理した、
図14Bと同じsspB構築物を用いたシステムに関する細胞内状態図であり、アクチノマイシンDの添加が、ヒトU20S細胞において行われた実験において、SGの形成を妨害したことを明らかにする。
【
図16】[0049]
図16Aは、コア価およびコア濃度の間の相互作用を明らかにする細胞内状態図であり、ここで、計算された最適相閾値を示し、システムは、
図14Cと同じsspB構築物(すなわち、NTF2タンパク質-タンパク質相互作用ドメインを特徴とするが、RBDを欠く)を用い、そして実験はヒトU20S細胞中で行われる。[0050]
図16Bは、コア価、コア濃度、およびRNA結合相互作用のネットワークを保持する、対照NTF2相互作用性RNA結合タンパク質(CAPRINI-miRFP670)の過剰発現の間の相互作用を明らかにする細胞内状態図であり、ここで、計算された最適相閾値を示し、システムは、
図14Cと同じsspB構築物を用い、そして実験はヒトU20S細胞中で行われる。計算された最適相閾値は、蛍光タンパク質を発現しない細胞のもの(
図16A)と類似である。[0051]
図16Cは、コア価、コア濃度、およびRNA結合タンパク質相互作用のネットワークを遊離させ、そして相分離を阻害する、NTF2相互作用タンパク質(USP10-miRFP670)の過剰発現の間の相互作用を明らかにする細胞内状態図であり、ここで、計算された最適相閾値を示し、システムは、
図14Cと同じsspB構築物を用い、そして実験はヒトU20S細胞中で行われる。
【
図17】[0052]
図17は、ネットワーク連結性がどのようにPボディに付着したタンパク質複合体およびRNA形成ストレス顆粒を生じるかの例示(下部)を含めて、本開示における技術によって明らかにされた組成的に重複するストレス顆粒およびPボディタンパク質構成要素のいくつかを図示する。
【
図18】[0053]
図18は、本出願に列挙する技術に関して、融合タンパク質濃度、価、および相境界を決定するため、U20S細胞において、GFPおよびmCherry細胞質濃度を概算するために用いた、蛍光相関分光法(FCS)検量線である。予期される内因性結合パートナーを欠き、モノマー状態と予期され、そしてタグとして一般的に使用されるため、iLID-GFPおよびmCherry-sspBを較正に用いた(本明細書において、LOV2-SsrAは、ときに、iLIDと称されうることに留意されたい)。
【
図19】[0054]
図19は、スクリーニング法の態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0055]本開示は、特に薬剤に基づくスクリーニング適用のための、フォールディングされたドメインおよびRNA顆粒会合タンパク質ドメインの光制御オリゴマー化および相分離のためのシステムおよび方法に関する。
【0025】
[0056]システムは、多数のタイプの融合タンパク質を伴ってもよく、これらのいずれかまたはすべてが蛍光タンパク質を含有してもよい。これらの融合タンパク質は、特定の光波長で照射された際、ともに働いて、オリゴマー化し、そしてともにネットワーク形成するように設定される。このオリゴマー化およびネットワーク形成(またはそれらの欠如)は、特定の相挙動を生じ、これを多様な条件および環境下(例えば多様な化学的または生物学的剤の添加時)で監視して、どのような条件または環境下で相挙動が修飾されうるかを決定してもよい。
【0026】
[0057]システムのもっとも単純な型が、
図1A~1Cを参照するとわかる。
図1Aおよび1Bを参照すると、システムは、時に「オプトタンパク質」と称される1つまたはそれより多い第一の融合タンパク質(100、101)を必要とし、そして典型的には、これらの第一の融合タンパク質を複数必要とする。第一の融合タンパク質各々(100、101)は、第二の領域(120)に融合した第一の領域(110)を含む。
【0027】
[0058]第一の領域(110)は、少なくとも1つの光感受性タンパク質(115)または光感受性タンパク質の同族パートナー(116)を含む。これらの光感受性タンパク質(115)または同族パートナー(116)は、当業者に知られる任意の光感受性タンパク質または同族パートナーであってもよく、天然または操作されたタンパク質、例えばBLUFドメイン(例えばbPAC)、フィトクロム(例えばPhy-PIFまたはBphP1-PpsR2)、クリプトクロム(例えばLARIAT、LITE、OPTOSTIM、クリプトクロム2およびCIB1)、LOVドメイン(例えばBACCS、LAD、LITEZ、iLID[LOV2-SsrA]/SspB、pDawn、およびpDusk)、蛍光タンパク質ドメイン(例えばDronpaに基づくシステムおよびPhoC1)、およびUVR8ドメイン(例えばUVR8)が含まれる。1つの好ましい態様において、第一の融合タンパク質(100)は、単一のLOV2-SsrAタンパク質を用いる。別の態様において、第一の融合タンパク質(100)は2つのLOV2-SsrAタンパク質を用いる。
【0028】
[0059]単純化された図でわかるように、同族パートナー(116)は、光感受性タンパク質が、少なくとも1つの光波長で照射された際、光感受性タンパク質と連結し、そして該タンパク質に付着するように適応されている。例えば、iLIDシステムを用いて、LOV2-SsrA(光感受性タンパク質)およびSspB(その同族パートナー)が細胞内で可動性である(すなわち、互いに相互作用可能な位置にある)場合、LOV2-SsrAは、最終的に、およそ450nmの波長を有する光で照射された場合にのみ、SspBに付着するが、次いで、こうした光に照射されていない場合には離れるであろう。
【0029】
[0060]第一の領域(110)は、随意に、自己集合するように設定されている領域であってもよい。例えば、いくつかの態様において、領域は、ホモ型およびヘテロ型相互作用を含めて、二量体、三量体、五量体、n量体相互作用を通じて、自己集合を助長することが知られる1つまたはそれより多いタンパク質を含む。いくつかの態様において、領域はフェリチンを含み、フェリチンは、各々、24の同一のサブユニットを含む、空洞のカゴのような構造に自己集合することが知られるタンパク質ファミリーである。
【0030】
[0061]第二の領域(120)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(125)を含む。フォールディングされたRBDには、限定されるわけではないが、RNA認識モチーフ(RRM)、K相同(KH)ドメイン、プミリオ(PUM)ドメイン、ジンクフィンガードメイン、DEADボックスヘリカーゼドメイン、二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)、m6A RNA結合ドメイン(YTHドメイン)、またはコールドショックドメイン(CSD)が含まれてもよい。変性RBDには、限定されるわけではないが、アルギニン-グリシン(RG)ドメイン、アルギニン-グリシン-グリシン(RGG)ドメイン、セリン-アルギニン(SR)ドメイン、または塩基性-酸性ジペプチド(BAD)ドメイン(例えばRD、RE)が含まれてもよい。フォールディングされた非RBDは、限定されるわけではないが、二量体化またはオリゴマー化ドメイン(例えばG3BP NTF2、NPM1オリゴマー化ドメイン、HSF1三量体化ドメイン、DCPIA三量体化ドメイン等)であってもよく、これらはしばしば、生理学的生物学的凝縮物(例えばストレス顆粒、核小体、核ストレス体、Pボディ等)の形成に必須である。オリゴマー化または基質結合(例えばRNA結合)ドメインの既有知識なしに、全長タンパク質を用いてもよい。
【0031】
[0062]第一の融合タンパク質(100、101)が蛍光タンパク質を含有する場合、これは第一の領域(110)または第二の領域(120)のいずれに存在してもよいが、好ましくは、第一の領域中に存在する。
【0032】
[0063]
図1Cを参照すると、システムのこの基本型(150)が、多数の第一の融合タンパク質(100、101)の第一の領域(110)の間の相互作用のため、(関与する特定の光感受性タンパク質に基づいて)あらかじめ決定された光波長での照射に際して、自己集合可能であることがわかる。図からわかるように、
図1Cにおけるシステムは、第一の融合タンパク質の異種クラスターを有し、ここでは、第一の融合タンパク質の第一のタイプ(100)とともに別のタイプ(101)の両方を含めて示される。他の態様において、システムは均一なクラスターを形成してもよい。
【0033】
[0064]第一の融合タンパク質(100、101)が、適切な光波長で照射された際に自己集合しない場合、より複雑なシステムが必要である。
[0065]
図2および3を参照すると、第一のオプションは、時に「コアタンパク質」と称される、第二の融合タンパク質(200)を導入することである。第二の融合タンパク質(200)にもまた、第二の領域(220)と融合した第一の領域(210)が含まれる。第一の領域(210)には、光感受性タンパク質(215)が含まれる。第二の領域(220)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(225)を含み、第二の融合タンパク質の第二の領域は、ホモ型およびヘテロ型相互作用を含めて、二量体、三量体、五量体、またはn量体相互作用を通じて、自己集合するように適応されている。いくつかの態様において、領域はフェリチンを含み、フェリチンは、各々、24の同一のサブユニットを含む、空洞のカゴのような構造に自己集合することが知られるタンパク質ファミリーである。
【0034】
[0066]
図3は、第一(101)および第二(200)の融合タンパク質を含むシステム(250)を例示する。複数の第二の融合タンパク質/コアタンパク質(200)が、融合タンパク質が相互作用することを可能にするシステム中にある場合、第二の融合タンパク質/コアタンパク質(200)の光感受性タンパク質(215)は、第一の融合タンパク質/オプトタンパク質(101)上に存在する光感受性タンパク質の同族パートナー(116)に付着可能である。
【0035】
[0067]
図4~5を参照すると、第二のオプションは、第三の融合タンパク質(300)を導入することによって、第一のオプション上に構築されるものである。第三の融合タンパク質は、時に「固定リンカー」と称される。該リンカーは、
図3におけるものと同様のシステムの型を連結して、有意により多い相互作用およびより大きなネットワークを可能にしうる。第三の融合タンパク質(300)は、ともに融合した少なくとも2つの領域、第一および第二の領域(310、320)を含む。第三の融合タンパク質に関しては、各領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(315、325)を含み、そして第三の融合タンパク質の第一および第二の領域の各々(310、320)は、第一の融合タンパク質の第二の領域と相互作用するように適応されている。
【0036】
[0068]
図5を参照すると、提示するシステムの1つの好ましい態様は、相分離が起こるために相互作用するように適応されている内因性タンパク質の添加を必要とする、二量体化またはより高次のオリゴマー化ドメインである。例えば、G3BP NTF2(二量体化ドメイン)の例において、こうした内因性タンパク質UBAP2Lであり、これは、G3BP二量体の間のさらなるネットワーク形成および凝縮を可能にする。ノックアウト、またはNTF2ドメインの同じ結合ポケットでの相互作用に関して競合するタンパク質USP10の過剰発現を通じて、細胞から該タンパク質を除去すると、相分離が妨げられる。
図16A~16Cを比較することによって、これがわかる。
図16Cは、USP10がG3BP NTF2の凝縮物の形成を防止可能であることを例示する。類似の競合タンパク質-タンパク質相互作用が、他の生物学的凝縮物、例えばDDX6依存性Pボディの形成において役割を果たす可能性がある。これらのタイプの相互作用を破壊する小分子は、類似の影響を有し、すなわち相分離を防止するかまたはある場合には増進するであろう。
【0037】
[0069]
図5を参照すると、このシステム(350)は、
図3に示すものと類似であるが、第三の融合タンパク質(300)が添加されていることがわかり、第一の融合タンパク質(101)の第二の領域(125)が第三の融合タンパク質(300)の第一の領域(315)と相互作用することが示される。理解を容易にするために、これらの相互作用領域は、ともに適合可能であるように模式的に示され、そしてまた、「+」または「-」記号とともに示される。理解されるように、第三の融合タンパク質は、少なくとも2つの第一の融合タンパク質を連結し、システムが多様な自己集合コアを連結することを可能にし、そしてしたがって、大規模な相分離/凝縮を促進すると予期される。拡張された連結は、5つの融合タンパク質を必要とし、第二の融合タンパク質(200)が第一の融合タンパク質(101)につながり、これが固定リンカー(300)につながり、次いでリンカーが別の第一の融合タンパク質(101)につながり、これが次に、別の第二の融合タンパク質(200)につながる。これらのシステムにおいて、多様な融合タンパク質間の連結および相互作用は同時に起こらない可能性があるが、付着の順序は比較的重要ではない。
【0038】
[0070]
図6~8を参照すると、第三のオプションは、第三および第四の融合タンパク質(400、500)を含めることにより、「タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)リンカー」と称されうるものを導入することによって、第一のオプション上に構築されるものである。これは、第一の融合タンパク質の変型に、「固定リンカー」の概念を取り込むことによって、第二のオプション中に見られる拡張連結を、5つの融合タンパク質から4つに短縮するが、システム(450)は、ここで、1つのみではなく、2つの異なる融合タンパク質を導入することを必要とする。
【0039】
[0071]
図6および8を参照すると、第三の融合タンパク質(400)は、第一の融合タンパク質(101)のサブセットと見なされてもよく、そしてしたがって、時に「別のオプトタンパク質」と称される。第三の融合タンパク質(400)は、第二の領域(420)に融合した第一の領域(410)を含み、第三の融合タンパク質(400)の第一の領域(410)は、第二の光感受性タンパク質の第二の同族パートナー(415)を含む。第二の光感受性タンパク質は、第一の融合タンパク質/オプトタンパク質と同じ光感受性タンパク質(115)であってもよく、またはそうでなくてもよい。すなわち、第三の融合タンパク質(400)は、第一の融合タンパク質(101)が結合するものと同じ光感受性タンパク質に結合するよう意図されてもよく、またはそのようにされていなくてもよい。
【0040】
[0072]第三の融合タンパク質(400)の第二の領域(420)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(425)を含む。第三の融合タンパク質(400)の第二の領域(420)は、第一の融合タンパク質(100)の第二の領域(120)と相互作用するように適応されている。
図8で見られるように、第三の融合タンパク質(400)の1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(425)は、第一の融合タンパク質の1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(125)と相互作用する。
【0041】
[0073]
図7および8を参照すると、第四の融合タンパク質(500)は、第二の融合タンパク質(200)のサブセットと見なされてもよく、そしてしたがって、時に「別のコアタンパク質」と称される。第四の融合タンパク質(500)は、第二の領域(520)に融合した第一の領域(510)を含む。第四の融合タンパク質(500)の第一の領域(510)は、第二の光感受性タンパク質(515)を含み、この光感受性タンパク質に、第三の融合タンパク質(400)中に存在する同族パートナー(415)または「別のオプトタンパク質」が結合するであろう(例えば
図8を参照されたい)。第四の融合タンパク質(500)の第二の領域(520)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(525)を含み、そして第二の融合タンパク質(200)と同様、自己集合するように適応されている。
図8に見られるように、第二(200)および第四(500)の融合タンパク質は、自己集合しうる。自己集合は、異種として示される(第二および第四の融合タンパク質の両方が相互作用し、そしてともに集合する)が、均一な自己集合もまたあってもよい。
【0042】
[0074]
図9および10を参照すると、別の代替オプションが見られる。このオプションは、第一のタンパク質の2つの型を用いて、「オプトリンカー」と称されうるものを形成し、このリンカーは次いで、タンパク質-タンパク質相互作用を通じて修飾コアタンパク質(「PPIコア」)に結合可能である。したがって、タンパク質システム(650)は、少なくとも2つの第一の融合タンパク質(100、101)からなる。「オプトリンカー」中の第一の融合タンパク質(100)の一方は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(125)に融合した、光感受性タンパク質(115)を含む。「オプトリンカー」中のもう一方の第一の融合タンパク質(101)は、同じ1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(125)に融合した、光感受性タンパク質の同族パートナー(116)を含む。正しい光波長で照射されると、これらの2つの融合タンパク質は結合し、2つの修飾コアタンパク質(600)を連結可能である連結を形成する。システムは、一般的に、2つまたはそれより多い修飾コアタンパク質(600)を有するであろう。
【0043】
[0075]修飾コアタンパク質(600)は、第二の領域(620)に融合した第一の領域(610)を含む第二の融合タンパク質である。第二の融合タンパク質(600)の第一の領域(610)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(615)を含む。この第一の領域(610)は、第一の融合タンパク質の第二の領域(125)と相互作用するように適応されている。第二の融合タンパク質(600)の第二の領域(620)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(625)を含む。この第二の領域(620)は自己集合するように適応されている。
【0044】
[0076]さらに別の代替は、
図11を参照するとわかる。ここで、システム(750)は、第一の融合タンパク質の2つの変型を含有することがわかる。1つの変型(100)は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(125)を含む第二の領域に融合した第一の領域(110)を含み、第一の領域は第一の光感受性タンパク質を含む。第二の変型(700)、または「オプトタンパク質変型」は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(725)を含む第二の領域(720、未表示)に融合した第一の領域(710)を含む。1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(725)を含む第二の領域は、1つまたはそれより多いフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、フォールディングされた非RBDドメイン、またはその組み合わせ(125)を含む第一の融合タンパク質(100)の第二の領域(120)と相互作用するように適応されている。第二の変型(700)の第一の領域(710)は、同じ第一の光感受性タンパク質を含み、そして両方の変型(100、700)の第一の領域は、光に反応して少なくとも2つの構成要素の1つのオリゴマーに自己集合するように適応されている。したがって、2つの変型間のタンパク質-タンパク質相互作用を通じて連結された多数の自己集合コアがどのように存在するかを想定することが可能である。
【0045】
[0077]本開示の第二の側面は、上述のタンパク質システムの1つを発現する細胞株または幹細胞由来細胞に関する。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞、酵母細胞、培養ニューロン、または虫、ハエ、齧歯類、または霊長類モデルである。いくつかの態様において、タンパク質システムを発現するよう設定される1つまたはそれより多い遺伝子は、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、細菌人工染色体(BAC)、一過性トランスフェクション(例えばリポソームまたはDNAプラスミド導入のための専有配合物)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはCRISPR/Cas9に基づくアプローチを利用して、細胞に送達される。
【0046】
[0078]本開示の第三の側面は、上述のタンパク質システムの1つを発現するよう設定された1つまたはそれより多くの遺伝子で細胞をトランスフェクションするように設定された少なくとも1つの発現ベクターを含む、発現ベクター系に関する。いくつかの態様において、発現ベクター系は、第一の融合タンパク質を発現可能な遺伝子を含む第一のプラスミドを含む。
【0047】
[0079]本開示の第四の側面は、天然または操作された多構成要素凝縮物の相挙動を測定するための方法に関する。
[0080]方法はまず、上述のタンパク質システムの1つを提供する必要がある。システムは、生存細胞内、あるいは死亡細胞内または死亡細胞外に存在してもよい。いくつかの態様において、システムは、マルチウェルアレイ(プレート)中のウェル中に存在する。
【0048】
[0081]次いで、方法は、光感受性タンパク質を少なくとも1つの光波長に曝露することによって、タンパク質システムにおいて、融合タンパク質のフォールディングされたRNA結合ドメイン(RBD)、変性RBD、またはフォールディングされた非RBDドメインをオリゴマー化することを必要とする。例えば、LOV2-SsrAをFTH1に融合させると、LOV2-SsrA分子によってコーティングされた24量体フェリチン「コア」は、自発的に自己集合する。細胞内でSspB(その同族パートナー)とともに存在し、そして可動性である(すなわち互いに相互作用可能な位置にある)場合、LOV2-SsrAは、最終的に、およそ450nmの波長を有する光で照射された場合にのみ、SspBに付着するが、次いで、こうした光に照射されていない場合には離れるであろう。2つの構成要素の相対濃度を変化させることによって(細胞における蛍光タンパク質濃度を決定するために用いられる較正方法論に関しては、
図18を参照されたい)、オリゴマー化状態(価)を変化させてもよく(0~24)、そして細胞内状態図を定量化してもよく、これは化合物または遺伝学に基づくスクリーニング適用に受け入れられる。相分離/凝縮は、一般的に、相互作用する生体分子の連結されたネットワークの形成を必要とする。開示されるシステムおよび方法は、光活性化に際して相分離を活性化するが、潜在的なタンパク質-タンパク質またはタンパク質-RNA相互作用が生じている場合のみに活性化する構築物を、当業者が操作することを可能にする。これは次に、相互作用の連結されたネットワークの喪失により、相分離/凝縮が起こらない条件を発見することによって、前記相互作用を破壊する条件に関してスクリーニングすることを可能にする。これは、
図14Cおよび
図16A~16Cを参照するとわかる。
【0049】
[0082]システムはここで、「NTF2コアレット(Corelet)」と称されるものを使用する。コアは、iLID分子によってコーティングされた24量体フェリチン複合体で構成され(すなわちこれらは上述の第二の融合タンパク質または「コアタンパク質」と類似であり)、これは、青色光刺激されたsspB-iLID相互作用によって仲介されるオリゴマー化プラットフォームとして働き、ここで、sspB-iLIDが、G3BPのIDR領域およびフォールディングされたNTF2に融合する(すなわち、一般的に、上述の第一の融合タンパク質または「オプトタンパク質」にマッピングする)。2つの種の相対濃度を変化させることによって、オリゴマー化状態を、0~24の間で変化させてもよい。
【0050】
[0083]
図16A~16Cにおけるシステムは、NTF2コアレット発現U20S細胞を利用する。対照は
図16Aに見られ、ここで、NTF2コアレットは、関心対象以外の他のタンパク質とも同時発現されていない。NTF2コアレットが、タンパク質およびRNA相互作用のネットワークを保持するNTF2相互作用タンパク質であるCAPRINI-miRFP670(
図16Bを参照されたい)と同時発現される場合、相境界は類似である。しかし、NTF2コアレットが、さらなるタンパク質-タンパク質相互作用およびRNA結合能を欠き、そしてしたがって相互作用のネットワークを遊離させるUSP10-miRFP670(
図16Cを参照されたい)と同時発現される場合、凝縮物は形成されない。すなわち、CAPRIN1とは異なり、USP10は、NTF2コアレットの相分離を遮断する。
【0051】
[0084]いくつかの態様において、オリゴマー化は、細胞質リボ核タンパク質(RNP)顆粒のゲル化を促進する。
[0085]方法は次いで、相挙動の測定を必要とする。これは、状態図をマッピングし(相境界のマッピングからなってもよい)、相分離、凝縮、または凝集が起きているかどうかを決定し、凝縮物材料特性、タンパク質濃度、価、またはそのいくつかの組み合わせを測定することによって、行われてもよい。
【0052】
[0086]いくつかの態様において、方法はまた、1つまたはそれより多い化学的または生物学的剤をウェルに提供する工程を伴ってもよい。いくつかの態様において、方法はまた、遺伝子ノックダウン(例えばCRISPR KO、CRISPRi、siRNA、shRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド)または遺伝子上方制御(例えばCRISPRaまたはDNAプラスミドに基づく過剰発現)に基づく遺伝子スクリーニングの利用も伴ってもよい。
【0053】
[0087]好ましい態様において、方法にはさらに、遺伝子ノックダウンに基づく遺伝子スクリーニング、上方制御に基づく遺伝子スクリーニング、ウェルへの1つまたはそれより多い化学剤の添加、あるいはその組み合わせが有する影響を、測定された相挙動に基づいて決定する工程も含まれる。すなわち、既知のスクリーニング技術を用いて、相挙動における変化に基づき、影響を決定する。例えば、USP10発現は、必須のタンパク質-タンパク質相互作用ネットワークを遊離させることによって、光に誘導されたG3BP NTF2オリゴマーの凝縮を防止し;この結合ポケットをターゲティングする化合物は同様に作用するであろう。類似の凝縮物会合タンパク質(例えばNPM1、DCPIA、HSF1等)のホモ型およびヘテロ型オリゴマー化を破壊する化合物に基づく類似のアプローチが可能である。あるいは、凝縮に必須のRBD-RNA相互作用を防止する化合物を同定することも可能である(
図15Dを参照されたい)。
【0054】
[0088]方法の態様は、
図19を参照するとわかる。ここでは、方法(1900)は、適切な細胞(1910)を提供することによって始まる。これらの細胞を次いで、プラスミド、レンチウイルス等を通じて、望ましいシステムに適した融合タンパク質でトランスフェクションし(1920)、安定細胞株(1930)を導く。
【0055】
[0089]安定細胞株由来の細胞を、マルチウェルプレート(例えば96または384ウェルプレート)(1940)に導入してもよい。
[0090]この時点で、次いで、1つまたはそれより多いスクリーニング構成要素を、1つまたはそれより多いウェルに導入してもよい(1950)。スクリーニング構成要素は、化学的スクリーニング構成要素(例えば小分子ライブラリー由来の化合物)、遺伝子スクリーニング構成要素(例えばノックダウン、ノックアウト、過剰発現等)、またはそのいくつかの組み合わせであってもよい。典型的には、この時点で、スクリーニング構成要素がウェル(単数または複数)中の細胞と相互作用することを可能にする間、ある程度の遅延がある。
【0056】
[0091]次いで、システムにおいて利用される特定の光感受性タンパク質に基づいて、適切な光波長でこれらを照射することによって、1つまたはそれより多いウェルを活性化する。この活性化は任意の時間続いてもよいが、好ましくは30分またはそれ未満、より好ましくは20分またはそれ未満、そしてさらにより好ましくは10分またはそれ未満、起こる。照射は、レーザー、発光ダイオード(LED)アレイ、LEDランプ、または適切な光波長を生じるための任意のこうした方法論を用いて送達されてもよい。
【0057】
[0092]ユーザーが、任意の適切な固定技術(例えばパラホルムアルデヒド、メタノール、エタノール等)を用いて細胞を固定しようと望む場合、活性化後に細胞を固定してもよい(1970)。
【0058】
[0093]生存または死亡細胞を用いて、次いで、ユーザーは既知の顕微鏡技術(例えば共焦点、広視野、超解像等)を通じて、細胞の画像を捕捉してもよい(1980)。いくつかの態様において、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を迅速顕微鏡画像化と組み合わせた、当業者に知られる商業的に入手可能な装置を用いて、生存細胞をソーティングしながら、これらの画像を捕捉してもよい。
【0059】
[0094]画像が捕捉されたら、画像を分析してもよい(1990)。これは、例えば、凝縮の度合いを決定するか、濃度を決定する(例えば測定された強度を検量線に比較することによって。
図18を参照されたい)か、または相境界を決定する工程を伴ってもよい。
【0060】
[0095]理論およびパッチ状コロイド(patchy colloid)(Bianchiら、2011)での実験から、相互作用する粒子が動的に連結されたネットワークに相分離するシステムに関して、各粒子は、その価、vを定義する、他の粒子と結合可能である十分な数の部位を持たなければならないことが知られており(
図1M):ここで、「粒子」(またはグラフ理論における「頂点(vertex)」)は、個々のタンパク質またはRNA分子、あるいは安定な生体分子複合体に相当してもよい。一般的に言って、相分離のためにはv>2が必要であり、価がより高ければ、相分離はより迅速に促進される。合成的に融合したG3BP二量体複合体の場合、2つの曝露されたRBDによって与えられる2つのありうる相互作用界面しかなく、そしてしたがって、合成G3BP二量体は、2の全体価(すなわち2つのRBD-RNA界面)を有する;本発明者らは、v=2粒子を「ブリッジ」と称し、該粒子は、ネットワークの異なる部分を連結可能であるが、それ自体で、空間に広がる相互作用ネットワークを形成することは不可能である(
図12を参照されたい)。
【0061】
[0096]G3BPのNTF2ドメインが、一般的な二量体化ドメインによって置換不能であることを考慮すると、ブリッジ(v=2)に相当するよりも、G3BP二量体は何らかの形でv≧3の粒子を体現しているはずであると推論されうる。v≧3の物体は、「ノード」と称される(
図12を参照されたい)。天然G3BP二量体の場合、こうした価は、2つのRBDに加えて、NTF2ドメインとの少なくとも1つのヘテロ型タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)によって達成されるであろう。そうであれば、NTF2は、さらなるノードに連結されて、SG凝縮に必要な価を増幅する、相互作用プラットフォームとして働きうる。
【0062】
[0097]G3BPに基づく複合体の全体価を増加させうるSGタンパク質に関してスクリーニングするため、コアを通じてシステムを増進させることによって、NTF2の二量体化能を利用してもよい。NTF2二量体は、コア間に安定なホモ型ブリッジ(架橋)を生成し、そしてヘテロ型NTF2相互作用ブリッジ/ノードは、価を増やすことによって、分配し、そして成長を授与して、顕微鏡によるこうしたタンパク質の同定を可能にすると仮定された。
【0063】
[0098]一団のGFPタグ化SGマーカータンパク質(N=20)およびPボディタンパク質(N=3)のうち、8つのSGタンパク質(USP10、UBAP2L、CAPRIN1、FMR1、FXR1、NUFIP2、G3BP1、G3BP2A)のみが、光誘導されたG3BP ARBDコアレットに強く局在した。別のタンパク質、FUS由来の自己会合IDRより形成される凝縮物がFUS ANLSしか補充しないため、これらのタンパク質は、NTF2相互作用に特異的である。
【0064】
[0099]コアレットNTF2相互作用アッセイの結果と一致して、USP10、CAPRIN1、およびUBAP2LのG3BP仲介性共免疫沈降(co-IP)はすべて、NTF2ドメインを必要とし、そして相互作用は、RNアーゼ処理およびストリンジェントな洗浄工程の後でも保持される(
図13)。
【0065】
[0100]これらの同定されたタンパク質は、G3BP相互作用ブリッジまたはノードとして働き、USP10以外のすべてがRBDを特徴とすることを考慮すると、SG凝縮のための全体価の要件に寄与することも可能である。USP10、CAPRIN1、NUFIP2、FXR1/FXR2/FMR1(3KO)、またはFXR1/FXR2/FMR1/NUFIP2(4KO)のノックアウトは、SG形成に影響がなく、これらの構成要素が全体価の増幅に限定された役割しか持たないことが示唆された。さらに、三重KO(G3BP1/G3BP2/USP10、G3BP1/G3BP2/CAPRIN1)が、G3BP1/2二重KOと比較して、レスキューのために実質的に異なる量のG3BPを必要としないため、亜ヒ酸誘発相閾値は、USP10またはCAPRIN1の内因性レベルによって有意には調節されなかった。対照的に、UBAP2/2L二重KO細胞は、減少したサイズのSGを示し、これは、少数の細胞のみにおいて形成され;これらのデータは、UBAP2Lがさらなる非常に重要なノードとして作用しうる可能性を示唆する。これに関する裏付けは、G3BP中のミスセンス突然変異(S38F)の偶然の発見から来ており、該突然変異は、WT G3BPレスキュー閾値よりも>10倍高いレベルで発現された場合であっても、G3BP KO細胞におけるストレス顆粒形成をレスキューする能力を抑制することが見出された。G3BP S38Fは、ホモ二量体化およびUSP10結合能を保持し、そしてWT G3BPによって形成されるストレス顆粒内に強く分配される。しかし、CAPRIN1およびUBAP2Lと高アフィニティ複合体を形成することは不可能であり、突然変異がG3BPをv>3ノードからv=2ブリッジに変化させ、もはやUBAP2Lからさらなる全体価をもたらすことが不可能であることが示唆される。逆に、以前記載された、USP10またはCAPIN1に結合不能であるが、SG形成をレスキューするG3BP F33W変異体は、UBAP2Lとの会合を通じてノード同一性を保持し、そしてレスキューに関して、WTと類似の閾値濃度を示す。上記知見を総合すると、これらのデータは、G3BP二量体が、SG凝縮におけるその本質的な役割を満たすために、UBAP2Lに結合するノードとして働くはずであるという強い証拠を提供する。
【0066】
[0101]高い価のG3BP RBDノードは、付着したPボディとともにストレス顆粒を形成するために十分である
[0102]該データは、十分に高い価であるRBD複合体が、ストレス顆粒形成に必要であるようであるが、このモデルの厳しい試験および凝縮に関する最小価の決定は、合成細胞内再構成アプローチを必要とした。ストレス顆粒形成に関する、RBD価および閾値タンパク質複合体濃度の間の関係を定量的に調べるため、以前記載されたコアレットシステム(コアは、iLID分子でコーティングされた24量体フェリチン複合体で構成され、これは青色光刺激されたsspB-iLID相互作用によって仲介されるオリゴマー化プラットフォームとして働き、sspB-iLIDがG3BPのIDR領域およびRBDに融合する)を利用して、価および濃度依存性状態図を定量的にマッピングしてもよい。
【0067】
[0103]
図14Aは、G3BPにおける関心対象の5つのドメインを示す(1400):G3BPの価増幅二量体化ドメイン(NTF2)を合成価増幅sspBノードで置換すると(
図14A、14B)、非ストレス細胞は、凝縮を促進するために、非常に高い度合いのオリゴマー化を必要とする(0.15μMコアで、~24の価)(
図15Aを参照されたい)。しかし、亜ヒ酸処理に際して、凝縮ははるかにより低い濃度および価(0.15pMコアで、~8の価)で起こり(
図15Bを参照されたい)、そして生じた顆粒は非ストレス細胞に比較して、有意により大きい。この価依存性相分離は迅速に(数秒以内に)起こり、そして活性化時間(5対60分)に関わりなく、完全に可逆性であり、多価RNA結合接触が、ストレス顆粒の形成および維持の両方に必須であることを示す。さらに、これらの凝縮物は、曝露されたRNAの流入に対する依存性、カノニカルSGタンパク質およびポリアデニル化mRNAの補充、Pボディの付着、および内部構成要素の動的再編成での液体様融合を含めて、内因性SGの特性を模倣することが見出されている。これらの構造は、オプトSG(オプトジェネティックなストレス顆粒)と称される。
【0068】
[0104]亜ヒ酸処理後のANTF2コアレット・オプトSG相閾値におけるシフトは、青色光活性化および脱活性化の連続5分間サイクルに曝露された細胞において、劇的に視覚化された。亜ヒ酸処理は、時間および価に依存する方式で、オプトSGのde novo集合を誘発し、集合したオプトSGは、WT細胞におけるSG集合と一致して、時間規模構成要素で、進行性により大きくなる。オプトSG状態図における亜ヒ酸促進シフトは、ポリソーム分解を遮断し、その後、翻訳を抑止するシクロヘキシミドでの前処理によって無効にされる(
図15Cを参照されたい)。さらに、アクチノマイシンDによって誘導されるRNA産生の長期阻害は、オプトSGの形成を防止する(
図15Dを参照されたい)。RNAに結合する能力を欠く対照自己会合IDR(FUS IDR)の場合に相閾値の類似のシフトが存在しないため、オプトSG集合におけるこれらの薬剤依存性変化は、コアレットシステムのアーチファクトではない。
【0069】
[0105]これらのデータは、光誘発されたオプトSGの形成が、ポリソーム分解によって非常に増進されることを示し、ポリソーム分解は、非常に高い価を持つ核酸に基づくノード(すなわちRNA結合タンパク質用の結合部位またはブリッジ)として働くであろうRNAを、周囲の細胞質にあふれ出させると予期される。どのG3BPドメインがオプトSG凝縮に必須であるかを調べるため、G3BP ANTF2の反復一部切除(truncation)をsspBに融合させ、そしてコアレットシステムにおいて、光に対するその反応を調べた。SGに分配されないことと一致して、G3BP IDR1、IDR2、およびIDR1/2コアレットが、薬剤処理に関わりなく、相分離を引き起こさないため、G3BPの変性リンカーは有意な自己相互作用に関与しないようである。対照的に、すべての試験したSGマーカーを含有するポリA+オプトSGは、IDR2-RBD(RRMおよびRGG)または単にRBDを含有するコアレットによって集合される。さらに、コアレットシステムは、GFPタグ化一部切除変異体の発現と関連する非常に重要な特徴を反復する。
【0070】
[0106]第一に、ANTF2/AIDR2(すなわち局所静電反発力によって、RNA結合能を有効に欠く、GFP-G3BP1 AIDR2の類似体)は、試験したすべての条件下で、顆粒を形成するのに失敗する。第二に、ANTF2/AIDR1は、GFP-AIDR1と類似の、より不規則な顆粒を形成する。第三に、RBDのみのコアレットに関する相閾値は、レスキューに必要なGFPタグ化AIDR1/2発現がより高濃度であることと一致して、ANTF2(すなわちIDR1/2含有)と比較して、右にシフトする。第四に、ANTF2コアレットに比較して、すべてのANTF2/AIDR1コアレットは、同様にSGタンパク質およびポリA+ RNAを補充し、そして亜ヒ酸処理後、連続明暗サイクルに際して、増進されてそして可逆的な相分離を示す。最後に、内因性ストレス顆粒と同様、すべてのG3BPオプトSGは、DDX6陽性Pボディを含む多相構造を形成し;重要なことに、これは、各場合で、高い価のG3BPコアレットは、Pボディ相互作用ネットワークを伴う十分に好ましくない相互作用を与え、相非混和性を生じさせることを示唆する。しかし、GFPタグ化G3BP変異体とは異なり、オプトSG形成は、RBDのRRMおよびRGGセグメント両方を必要とし、これは、緊密に並置されたコアの立体障害を反映しうる。
【0071】
[0107]付着したPボディを含むストレス顆粒は、高い価のRBDノードと関連するデフォルトの凝縮物である
[0108]高い価のG3BP RBDノードは、ポリソーム分解後、ストレス顆粒形成を誘導するのに十分である(が二量体性ブリッジはそうではない)が、これがG3BPのユニークな特徴であるのか、またはG3BP NTF2と相互作用するRNA結合ノードに一般的であるのかは明らかでない。本発明者らは、こうしたNTF2会合RBPが、本質的で付加的なRNA結合価を多タンパク質複合体に与えるならば、個々のRBDに連結された合成高価ノードは、孤立状態のオプトSGに核形成する(すなわちG3BP RBDコアレットを模倣する)と推論した。これを試験するため、コアレットシステムを利用してCAPRIN1およびUBAP2LのRBDをオリゴマー化し、そして非処理および亜ヒ酸曝露細胞の両方において、状態図をマッピングした。驚くべきことに、各々、単一RGG領域しか含有しなかったにも関わらず、その相閾値は、G3BP RBD(1つのRRMおよび1つのRGG)に比較して、より低い濃度およびコアレット価に向かってシフトし、mRNP凝縮を促進する傾向が増進されたことを示し;GFPタグ化キメラG3BPタンパク質を用いたSGレスキュー実験は、こうしたRBDが、類似の増進された傾向を伴って、G3BP RBDに対して置換しうることを示すため、これらの結果はコアレットシステムのアーチファクトではない。さらに、各場合で、亜ヒ酸誘導性ポリソーム分解は、相閾値のシフトならびに可逆性ポリA+オプトSGの成長を引き起こし、これはSGの15のマーカー群に関して明確である。再び、これらのRBDコアレット仲介性オプトSGは各々、Pボディに付着し、CARPIN1およびUBAP2L RBDが単独で、Pボディ相に非混和性を与えるために十分であることが示唆される。相閾値における亜ヒ酸誘導性シフトは、G3BP RBDに比較して相対的に小さいことが注目され、これは、別個のRBDが、損なわれていないポリソームに比較して、分解されたポリソーム基質に結合する能力に対して、ストレスが異なる影響を有するか、または特定のRBDが相分離に寄与する本質的な自己相互作用を特徴としうることを示唆しうる。RNA枯渇(アクチノマイシンD)が相分離を抑止するため、後者の可能性は、芳香族リッチCAPRIN1 RGGに関しては排除された。さらに、スクランブル化されたCAPRINT RGG領域が相分離を妨げるため、RGG仲介性凝縮は、単に、アルギニン残基の高い存在量によって与えられる純陽性電荷によるものではない。UBAP2Lと安定に会合する二量体RBPである、FXR1のRBD(2つのKHおよび1つのRGG)もまた、予期されたSGマーカーおよび付着するPボディを伴う、ストレス制御された可逆性のポリA+オプトSGの集合が可能である。コアレットシステムに配置されたより多数のRBD群に基づいて、高いRBD価の合成ノードは、これらがSGまたはPボディタンパク質と会合しているか、あるいはG3BP IDRに連結されているかどうかにかかわらず、ポリA+ SGに核形成するために十分である。にもかかわらず、PPIブリッジにおいてPボディタンパク質と結合する能力を保持する全長Pボディタンパク質(DCPIA)コアレットがさらなるPボディマーカー群を補充するが、SGタンパク質はそうではないため、異なるコアレットは、別の凝縮物形成相互作用ネットワークに差し込まれる可能性もある。さらに、凝縮物タンパク質組成、Pボディ付着、および相対相閾値は、RNA結合モチーフのタイプまたは数によっては決定されない。したがって、非混和性PボディにカップリングしたポリA+、SG様凝縮物は、多価RBDノードの「デフォルト」のオプションであり、そして凝縮物特異性は、特定のタンパク質-タンパク質相互作用ノードのネットワーク連結性によって決定づけられるようである。
【0072】
[0109]タンパク質-タンパク質相互作用ノード間の競合は、多相凝縮をエンコードする
[0110]会合するRBDが合成高価型であることがSGを引き起こすために十分であるため、UBAP2L/FXRまたはCAPRIN1/FXR複合体は、個々のタンパク質がG3BPノード(例えばネットワーク中心性)を模倣可能であり、そして類似のレベルで発現されているならば、G3BP KOを相殺しうる。G3BPとは異なり、CAPRIN1は、比較的高レベルでもレスキューせず、該タンパク質が、SGネットワークにおいて、主にRNA結合ブリッジとして作用することを示唆する。逆に、UBAP2LまたはFXR1の穏やかな過剰発現(<1μM)は、G3BPの非存在下で、ポリA+ SGの形成に十分であり、2つのタンパク質は、SG凝縮のための十分なRBDネットワーク価に関与するSGノードとして作用することが示唆される。G3BPの場合から想起して、自己会合ドメインが、ノード同一性に必要な価(v>3)を与えると仮定された。以前の研究は、こうしたドメイン(二量体化)がFXR1に関して存在すると示していたが、UBAP2Lに関する自己会合界面はいまだに同定されていなかった。
【0073】
[0111]内部対照としてCAPRIN1(予期されるブリッジ)由来の断片を用いて、FUS IDR(弱い自己会合)またはNTF2様(二量体化)特性を持つUBAP2L領域に関して、断片スキャンコアレットスクリーニングを行った。試験した13の断片のうち、UBAP2L 781~1087は、ストレス非依存性ポリA陰性小滴を形成する際にユニークであり、この特性は、この芳香族含有FUS様領域をさらに一部切除しても保存された。コアレットドメインスクリーニングアプローチの予測力は、同定されたC末端がG3BP非依存性SG形成においてUBAP2Lの役割に必須である(すなわち欠失により、UBAP2Lはノードからブリッジになる)点で明らかである。同定された自己会合ドメインを含めて非常に保存されているにもかかわらず、UBAP2Lは、そのオルソログUBAP2と高アフィニティ複合体を形成しない。UBAP2/2L二重KO表現型の観点でこれを考慮すると、該領域は、別個の高アフィニティ複合体(例えばFXR1/UBAP2L、UBAP2L/G3BP)においてUBAP2/2Lタンパク質間で弱い自己会合を形成し、したがって、SG凝縮のための本質的な価増倍因子(multipler)として作用すると推測される。FXR1およびG3BPの両方を含有する高アフィニティUBAP2L複合体は、まれであるかまたは存在しないため、本発明者らは、G3BPおよびFXRノードが、連結ノードUBAP2Lの限定された量に関して競合し、そして内因性SGにおいては、相対化学量論がその混合分布に非常に重要であると仮定した。これと一致して、FXR1の異所性の過剰発現は、多相SGを引き起こし、存続SGにおけるG3BP1に対するSTED顕微鏡検査によって、慣用的な顕微鏡では見えない微小異種性が示されるため、これは、内因性システムにおいて役割を果たす可能性がある。逆に、UBAP2Lは、G3BPを含む単一相SGを形成する。3つのタンパク質すべての同時発現は、一定レベルのUBAP2Lでは、FXR1およびG3BPノードの間の化学量論は、単一または多相区画が生じるかどうかを決定するために必須であり:相対的に高いFXR1は、両方の相に存在するUBP2LのG3BPからの分離を引き起こし;逆に高いG3BPは、3つのタンパク質すべての単相を生じる。したがって、連結ノード(UBAP2L)の限定された供給に対する、非隣接ノード(G3BP、FXR1)の間の競合は、ネットワークが絡み合って単一の混和相を形成する度合いを決定するようである。予期せぬことに、本発明者らは、FXR1およびUBAP2Lの両方が、G3BP KO細胞において、小さなストレス非依存性顆粒に核形成し、これがストレス後に融合してそして成長することを観察した。
【0074】
[0112]細胞は最大の中心性を持つSGノードを欠くため、これらのG3BP非依存性凝縮物が、内因性SGよりも、異なるPPIネットワークに結びつけられると仮定された。実際、UBAP2L凝縮物は、SGおよびPボディタンパク質の両方を含有し、これは、UBAP2Lの必須(Ayacheら、2015;Ohnら、2008)PボディノードDDX6との高アフィニティ会合から生じる可能性がある。興味深いことに、DDX6は、SGに弱く補充される一方、EDC3およびDCPIAは遠ざけられ、これは、2つの非混和性ネットワークの1つに関する相対的な優先性を反映する。
【0075】
[0113]これらの研究および過去の研究は、連結性に関して重複するノードの連続体、例えばG3BPおよびFXR1対UBAP2Lを裏付ける(この一連の実験によって裏付けられる相互作用ネットワークの図解要約に関しては、
図17を参照されたい)。本発明者らは、こうしたノードに基づく競合が、広範囲のPボディおよびSGネットワークの再構築を引き起こし、これが相混和性の規模に関して観察可能であると仮定した。
【0076】
[0114]これを試験するため、中心SGおよびPボディノードを、G3BP KO細胞において、対で発現させ、ストレス後の多相パターン形成を調べた。ノード間のネットワーク距離に応じて、2つのタンパク質は、混和性であるか、多相であるか、または別個の凝縮物として存在することが観察された。単一相を形成する隣接ノード(例えばG3BPおよびUBAP2L、EDC3およびDCPIA)とは対照的に、遠く離れたノード(例えばG3BPおよびDCPIA)の上方制御は、PボディからSGを切り離す。こうした研究が、競合するPPIネットワークが別個の多相凝縮物をコードするために十分であることを示唆する一方、ネットワーク基質相互作用が補助的な役割を果たす度合いは不明確である。好ましくない相互作用を持つPPIネットワークが、SG/PB分離の主な仲介因子であるならば、本発明者らは、同じ基質優先性を共有する分断されたネットワークであっても非混和性であると予測する。これを試験する理想的なモデルは、内因性SGに対して同一の特性を持つ凝縮物をコードするが、NTF2ドメインが失われていることによって、PPI連結性を欠く、合成G3BP/UBAP2L RBDノードである。
【0077】
[0115]原理の証明として、G3BP RBDオプトSGは、ストレス誘導性UBAP2L凝縮物の表面に形成され、そして成熟中、多相特性を保持する。非活性化に際して、オプトSGは溶解し、そして表面張力の消失が、UBAP2L相の個々の点への消散を導く。
【0078】
[0116]多相凝縮物は、G3BP/UBAP2L会合RBDノードおよびそのFL対応物に関する同時発現ペア群に渡って同様に観察される;特に、UBAP2L RBDコアレットが、FL UBAP2Lとの顕著な多相凝縮物をどのように形成するかが注目されるが、こうした多相挙動はFL G3BP1と同時発現されたG3BP RBDコアレットでは、回折限界スケールで、より明らかでない。NTF2コアレットを用いた同一の実験では、普遍的に単相構造が生じるため、より短いネットワーク距離、すなわち直接タンパク質-タンパク質相互作用が混和性を促進する一方、より長いネットワーク距離、すなわちRNA中間物を通じた結合が多相挙動を促進すると結論付けられうる。
【0079】
[0117]方法の詳細
[0118]プラスミド構築
[0119]示されない限り(例えばpHRレンチウイルスベクター、SFFVプロモーター)、すべてのレンチウイルスDNAプラスミドはFM5レンチウイルスベクターを用い、該プラスミドはユビキチンCプロモーターを特徴とする。関心対象の本発明者らのタンパク質をコードするDNA断片を、Phusion(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼ(NEB)とともにPCRによって増幅した。PCRに用いたオリゴヌクレオチドは、IDTによって合成された。In-Fusion HDクローニングキット(Clonetech)を用いて、望ましい直線化されたベクター内にPCR増幅断片を挿入し、これは、ハイスループットのクローニングを可能にするため、標準化されたリンカーおよび重複を特徴とした。挿入物の両端から配列決定する、GENEWIZ配列決定によって、クローニング産物を確認した。すべてのsspB-mCherryタグ化DNA構築物に関して、2回目に、独立の研究者によって、配列決定が正しいことが確認された。2つの別個の研究室によって生成された、2つの異なる完全に配列決定されたDNA構築物(FM5-mGFP-G3BP1 S38FおよびpcDNA4 t/о-GFP-G3BP1 S38F)を用いて、G3BP S38F突然変異体に関連するストレス顆粒(SG)レスキュー欠陥を確認した。
【0080】
[0120]細胞培養
[0121]1%ストレプトマイシンおよびペニシリンを補充し、10%FBS(Atlanta Biological)を含むDMEM(GIBCO)中で細胞を培養し、そして加湿インキュベーター中、37℃および5%CO2で維持した。試験したすべての細胞株は、マイコプラズマ検査で陰性を示した。HEK293およびHEK293T細胞は、Marc Diamond研究室(UT Southwestern)から厚意により寄贈された。HeLa細胞をATCCから得た。U20S細胞およびU20S G3BP1/2 KO細胞は以前記載された(Kedershaら、2016)。このノックアウト細胞株は、引用論文において詳細に特徴づけられ、そして多数の独立の研究室が、ストレス顆粒形成に対する耐性を検証している(私信)。G3BP1/2 KO(以後、G3BP KOと記載する)は、ウェスタンブロットによって内部検証された。
【0081】
[0122]レンチウイルス生成およびレンチウイルス形質導入
[0123]G3BPノックアウトの光誘導性sspB-/iLID-ANTF2二量体仲介性レスキューを除いて、レンチウイルスで安定形質導入した細胞を用いて、すべての生存細胞画像化実験を行った(一過性トランスフェクションを参照されたい)。プラスミドを、ヘルパープラスミドVSVGおよびPSP(Marc Diamond研究室、UT Southwesternより)とともに、LipofectamineTM-3000(Invitrogen)で、HEK293T細胞内にトランスフェクションすることによって、所望の構築物を含有するレンチウイルスを産生した。トランスフェクション2~3日後にウイルスを収集し、そしてWT U20S、G3BP KO U20S、またはWT HEK293細胞を感染させるために用いた。96ウェルプレート中でレンチウイルス形質導入を行った。低集密度の細胞にレンチウイルスを適用した3日後、安定維持のために細胞を継代するか、または生存細胞顕微鏡検査のため、96ウェルのフィブロネクチンコーティングしたガラス底プレートに直接移した。非コアレット実験に関しては、安定細胞を、8日を超える日数に渡って少なくとも3回継代した後に生存細胞画像化実験に用いて、関心対象の融合タンパク質を致死レベルで発現する細胞を除去した。すべての実験において、90%+の細胞は、ある濃度範囲(典型的には<5μM;概算濃度を適切なように示す)の関心対象のタンパク質の発現を特徴とした。この特定のプロトコルは、液体に基づく一過性トランスフェクションで起こりうる、融合タンパク質のアーチファクトの傾向がある濃度を回避するために設計された。
【0082】
[0124]一過性トランスフェクション
[0125]他の実験とは異なり(上記を参照されたい)、一過性トランスフェクションを用いて、G3BPノックアウトの光誘導性ANTF2二量体仲介性レスキューを行った。レンチウイルスに基づく形質導入を用いて欠陥をレスキューする最初の試み(データ未提示)は、個々の融合タンパク質が高濃度(すなわちmCherry-sspB-G3BP ANTF2およびmGFP-iLID-G3BP ANTF2の両方に関して>5μM)に到達できなかったため、失敗した。したがって、G3BP1/2 KO U20S細胞を含有する96ウェルプレートの個々のウェルを、製造者の推奨にしたがって、LipofectamineTM-3000(Invitrogen)を用い、mCherry-sspB-G3BP ANTF2およびmGFP-iLID-G3BP ANTF2の両方でトランスフェクションした。24時間後、細胞質全体で拡散して発現された両方の融合タンパク質を特徴とする細胞が観察された。最終濃度400pMで亜ヒ酸塩を添加した。1時間後、細胞を画像化した。3回の生物学的複製実験を行った。両方の構成要素が非常に高濃度(各々、>10pM)であるまれな細胞では、青色光活性化の時間に関わらず、ストレス顆粒が観察された。これらの濃度での二量体に基づくレスキューの光非依存性は、iLID-sspBに関して測定された4.3pMのin vitro暗所状態Kdと一致する(Guntasら、2015)。こうした濃度で、iLIDおよびsspBは、暗所で強く会合すると予期される。iLID-sspBに関するin vitro明所状態Kdは、0.2pM(または「コア」測定に関しては~10nM。状態図データ収集を参照されたい)であり、これがアッセイの下限と設定される。
【0083】
[0126]生存細胞共焦点顕微鏡検査
[0127]フィブロネクチンコーティングした96ウェル・ガラス底プレート(Cellvis)上で細胞を画像化した。1.4の開口数の60x油浸レンズを用いて、Nikon A1レーザー走査型共焦点顕微鏡上で、共焦点画像を撮影した。顕微鏡ステージには、細胞を37℃および5%CO2に維持するためにインキュベーターが装備された。mCherry、mGFP(GFP)、EYFP、およびmiRFP670(iRFP)でタグ付けされたタンパク質は、それぞれ、560、488、488、および640nmレーザーで画像化された。上記詳細は、STED超解像および広視野顕微鏡画像を除いて、文書中のすべての画像化データに当てはまる。詳細に関しては以下を参照されたい。
【0084】
[0128]誘導放出抑制(STED)超解像度顕微鏡検査
[0129]単一チャネルSTED画像に関しては、Imspectorにおいて利用可能な「カスタム軸」オプションを用い、STED出力を増加させながら、連続画像セット(各細胞株は、ブリーチングアーチファクトに関して管理するため、STEDレーザーを伴いそして伴わずに同時に画像化された)を撮影した。二重チャネルSTED画像に関しては、第一のmGFP STED出力を0%STED出力に設定し、第二の画像中で起こるmiRFP画像ブリーチングを回避して、mGFP(+/-STED)およびmiRFP(+/-STED)を画像化して、各細胞株で2つの連続画像セットを撮影した(再び、Imspectorにおいて利用可能な「カスタム軸」オプションを用いた)。
【0085】
[0130]広視野顕微鏡検査
[0131]いくつかの画像に関して、GFP-UBAP2Lを安定して発現するG3BP KOまたはUBAP2L KO U20S細胞を、カバーガラス上で増殖させ、示した時点で400μM亜ヒ酸塩でストレスを与え、そしてPBS中の4%パラホルムアルデヒドを用いて15分間固定した後、氷冷メタノール中で5分間、後固定/透過処理した。5%ウマ血清/PBS中で細胞をブロッキングし、そして揺動しながら1時間、ブロッキング緩衝液中で、一次および二次インキュベーションを行った。PBSで洗浄した後、細胞をポリビニルマウンティング媒体中でマウントし、そして視覚化した。63x Plan Apo対物レンズ(NA 1.4)を備えたNikon Eclipse E800顕微鏡を用いて画像を捕捉し、そして水銀ランプならびにDAPI(UV-2A 360/40;420LP)、Cy2(FITC HQ 480/40;535/50)、Cy3(Cy 3HQ 545/30;610/75)、およびCy5(Cy 5HQ 620/60;700/75)用の標準フィルターを用いて照射した。製造者のソフトウェアとともにSPOT Pursuitデジタルカメラ(Diagnostics Instruments)を用いて画像を捕捉し、そして生のTIFファイルをAdobe Photoshop CS3内にインポートした。明るさおよびコントラストの同一の調整を、所定の実験においてすべての画像に適用した。
【0086】
[0132]コアレット活性化
[0133]示す融合タンパク質を安定に発現しているG3BP KO細胞の活性化前および活性化後の画像を、iLID-mGFPタグ化フェリチンコアとの光誘導性二量体化を誘発することなく、sspB構成要素を視覚化するためにのみ、mCherry(560)チャネルで捕捉した。1%レーザー出力を用いて、488レーザーで細胞を活性化して、iLIDおよびsspBの二量体化を引き起こした。Nyquistズームで、120x120μm2(1024x1024ピクセル)の領域に関して、6秒のフレーム間隔を用いて、mCherryおよびmGFPチャネルを同時に画像化することによって、細胞の活性化を達成した。状態図データ収集もまた参照されたい。
【0087】
[0134]フォトブリーチング後の蛍光回復(FRAP)
[0135]示す融合タンパク質を安定発現するG3BP KO細胞をまず、488レーザーに5分間、一貫して曝露することによって、広く活性化した(すなわちiLID-sspB二量体化)。次いで、~1pm2領域中、高出力の560レーザーで、光活性化凝縮物をブリーチして、凝縮物のmCherry-sspB構成要素の大部分をクエンチした。mCherryおよびmGFPチャネルの両方を6秒間のフレーム間隔で画像化しながら、蛍光回復を監視した。ブリーチングに対して管理するため、非FRAP化小滴に基づいて蛍光を標準化し、そしてプロット目的のため、蛍光強度を最初の画像に比較した。ポリソームを解離させるための亜ヒ酸塩での細胞処理。亜ヒ酸ナトリウムを400μMの濃度で細胞培地に添加することによって細胞を処理し、この濃度は、ポリソーム分解のための飽和濃度を超えている(Kedershaら、2016)。明暗サイクリング実験(以下を参照されたい)を行う以外は、亜ヒ酸処理後、50分~2時間の間で(典型的には1時間)画像を捕捉した。60~120分間の間で、レスキュー、相閾値シフト、SG阻害に関して相違は観察されなかった。SG数/サイズは、典型的には45分までにピークとなり、そして1~2時間の時間ウィンドウを選択し、したがって、薬剤は最大効果に到達した。細胞は、典型的には処理後~6時間で死に始め、したがって毒性/致死性の混同を回避するため、示す1~2時間の時間枠を用いた。シクロヘキシミドを最終濃度100pg/mLで添加する前処理によってポリソーム分解を阻害した(G3BP KO細胞は、示す蛍光融合タンパク質を発現する)。インキュベーション30分後、亜ヒ酸を400μMの濃度で添加した。1時間後、ストレス顆粒の形成に関して細胞を評価する(GFP-G3BPレスキュー)か、または活性化サイクルを行った(コアレット)。
【0088】
[0136]転写を阻害するためのアクチノマイシンDでの細胞処理
[0137]5pg/mLの濃度でDMSO中に溶解したアクチノマイシンDを用いて、示すコアレットを発現するG3BP KO細胞を処理した。アクチノマイシンD処理の12~18時間後、画像を撮影し、これは、核小体が明視野観察でもはや現れず、そしてmRNAの大部分が分解すると予期される時間間隔であった。DMSOの最終濃度は0.5%であった。亜ヒ酸を加えたアクチノマイシンD実験に関して、アクチノマイシンD処理の~12時間後に400μM濃度で亜ヒ酸を添加し、そして続いて、細胞を1~2時間画像化した。定性的な観察によって、示す濃度のアクチノマイシンDの適用は、処理の~30~36時間後に致死性であると示唆された。薬剤による広範囲の致死性を伴わずに、処理からの時間を最大にするために(すなわち可能な限り多く細胞中のRNAを減少させるために)時点を選択した。
【0089】
[0138]状態図データ収集
[0139]細胞内状態図のための正確な相閾値境界を決定するため、分析する細胞は、十分なコア濃度および価をサンプリングするため、sspB-mCherryおよびiLID-mGFP化学量論に関して高い可変性を特徴としなければならない。両方の構成要素に関して、広い濃度範囲を達成するため、アレイ化レンチウイルスアプローチを用いて、96ウェルプレート(Cellvis)中で、G3BP KO細胞を形質導入した。このプロトコルにおいて、横列は2~60pL iLID-GFP-Feレンチウイルスで多様であり;縦列は、2~60pL mCherry-sspB-オープンリーディングフレーム(ORF)/ORF-mCherry-sspBレンチウイルスであった。G3BP KO細胞をアレイ化レンチウイルスに直接プレーティングして、プラスチック支持体への続く付着に際して、~25%集密度を達成した。72時間後、集密時に、個々のコアレット条件と関連した16のウェルすべてを、PBSで洗浄し、トリプシン処理し、新鮮な培地でクエンチし、そして合わせて、したがって、非常に多様なiLID対sspB比の多様な細胞集団であることを確実にした。フィブロネクチンコーティングしたガラス底96ウェルプレート(Cellvis)上に1:8希釈係数で細胞をプレーティングして、そして48時間後、60~90%集密度で画像化した。
【0090】
[0140]状態図の生成に向けて収集したすべてのデータに関して、標準化画像化プロトコルを用いて、顕微鏡設定の改変に関連する混乱を回避した。蛍光相関分光法(FCS)に基づく較正(蛍光対絶対濃度)に関して、同一の画像化設定を用いた(定量化および統計分析を参照されたい)。特に、秒あたり0.5フレームのスキャン速度、1024x1024ピクセルフレーム、および1.75x Nyquistズーム(63x油浸レンズ)を用いて画像を収集した。レーザー出力(1%488および100%546)、強度、およびゲインは一定に保った。すべてのタイムラプスは長さ5分間であり、そしてフレーム獲得間の6秒間間隔を特徴とした。最後のフレーム後、4つのさらなるフレームに関してはレーザー強度を低下させ、その後、より高い相対レーザー強度で4つの最終画像を獲得した。
【0091】
[0141]広いダイナミックレンジを達成するため(例えば、より高いシグナル対ノイズを特徴とする、より低濃度の細胞の十分な解像度を達成するため)、そして高密度の例外的に明るい点を引き起こすコアレットの場合、ピクセル飽和を回避するため、このプロトコルを選択した。この標準化プロトコルを用いて、各5分間の獲得は、状態図に(平均して)10のデータポイントを付加することが可能であった。したがって、この研究において用いられる平均状態図は、20~30視野の収集、または~2時間のデータ獲得時間を必要とした。典型的には、個々の状態図は、3~5の実験(すなわち異なる日の異なるレンチウイルス形質導入)の経過に渡って収集されたデータからコンパイルされた。しかし、特定の状態図は、有意により多くの実験からのデータを特徴とした(例えば、品質管理を確実にする、研究全体に渡る薬剤処理の効果に関する陽性対照として用いられる条件である、G3BP ANTF2コアレット)。
【0092】
[0142]研究期間全体で、薬剤反応、薬剤有効性、または蛍光強度測定に関して、体系的な変化の徴候はなかった。分析用の細胞を選択する際、完全に活性化された細胞(すなわち全細胞が視野内にある)のみを考慮して、局所活性化および拡散性捕捉に関する潜在的なアーチファクトを回避した(Brachaら、2018)。第一のフレーム(すなわち関心対象のsspBタグ化タンパク質への、コア上のiLIDの青色光仲介性二量体化の前)、および均一な蛍光を特徴とする細胞質領域(すなわち小胞体のような膜結合オルガネラが低密度である領域)における関心対象の4.5x4.5pm平方領域(ROI)の手動画像セグメント化を用いて、細胞に関する平均mCherryおよびmGFP蛍光強度を決定した。次いで、前述のFCS検量線(
図18)を用いて、mCherryおよびmGFP濃度を決定した。mGFP濃度を24(フェリチン複合体または「コア」あたりのサブユニット)で割り、コア濃度を決定した。mCherry値をコア値で割ることによって、個々の細胞に関して、価を決定した。
【0093】
[0143]これは、てこの原理(lever rule)に基づく非常に正確な測定である-「一構成要素」システム(すなわち、最小限の内因性タンパク質、核酸を特徴とするFUS IDRコアレット)では、最初の、希釈した、および凝縮された相の間での価の一貫性が信頼性を持って観察される。関心対象の細胞におけるコアレット仲介性相分離に関するバイナリー決定は、手動で決定された。状態図の続く自動化生成に用いたデータセットおよび状態図はコード化され、そして別個の個人に送られた。
【0094】
[0144]薬剤処理後のサイクリング実験
[0145]軽微な変化を加えて、状態図データ収集に記載するように、サイクリング実験を行った。示すsspB/iLIDコアレットを発現するG3BP KO細胞を亜ヒ酸塩(または示す薬剤)で処理した後、データ獲得を直ちに開始した。大部分の実験に関しては、5分間の活性化タイムラプスを各サイクルに関して獲得し、直後に脱活性化のための5分間のタイムラプスが続いた。本発明者らは、コアレットシステムにおける多様なタンパク質の研究に基づいて、この脱活性化時間が、完全な可逆性のために必要であるもの(すなわち典型的には30~60秒)をはるかに超えていることを決定した。示すサイクリングパラメータを6~8回反復した。特定の実験において、その代わり、10分間の活性化タイムラプスの直後に、脱活性化のための5分間のタイムラプスが続いた。これを4回反復した。間隔は、6秒間で一定に維持された。標準的なコア濃度(0.25μM)および所望の価に基づいて、代表的な細胞/視野をデータ分析のために選択した。
【0095】
[0146]G3BPレスキュー競合、およびストレス顆粒阻害実験
[0147]G3BPレスキュー競合実験のため、状態図データ収集において記載したものと同一のアレイ化レンチウイルスアプローチを用いた(すなわち、2~60pL G3BPmCherryおよび2~60pL mGFP-ORF、96ウェルプレートのアレイ化4ウェルx4ウェル、総数16ウェル)。G3BP KO細胞をレンチウイルス内にプレーティングし、次いで合わせ、そして72時間後に継代した。
【0096】
[0148]形質導入5日後に生存細胞共焦点顕微鏡検査を行った。各条件に関して(関心対象のGFPタグ化タンパク質)、多数の技術的複製(視野)を伴い、別個の3日に、4回の別個の実験(各実験=1ウェル/亜ヒ酸処理)を行った。亜ヒ酸処理の1~2時間後、生存共焦点画像化を行った。状態図に関するものと同様に、mCherryおよびmGFP濃度を決定し、そしてストレス顆粒非存在または存在の手動スコア付けを行った。類似のプロトコルを用いて、競合の非存在下でのレスキューを評価した。
【0097】
[0149]ストレス顆粒阻害実験に関して、YBX1-mCherry(SGマーカー)を安定発現するWT U20S細胞を、25%集密で96ウェルプレートにプレーティングし、そして示すmGFPタグ化タンパク質の2~60μLのレンチウイルスを、アレイ化形式で形質導入した。3日後、細胞を洗浄し、トリプシン処理し、合わせ、そして継代した。この3日後、細胞をフィブロネクチンでコーティングした96ウェルプレート上に継代した。2日後(すなわち、レンチウイルス形質導入の8日後)、細胞が60~80%集密の際、生存細胞共焦点画像化を行った。亜ヒ酸処理の1~2時間後の間に画像を撮影した。実験あたり、多数の技術的複製(すなわち視野)を伴い、別個の2日に、各条件に関して、3~4回の独立の実験を行った。mGFPタグ化タンパク質の濃度を決定し、SG形成をバイナリー方式で評価し、そしてすべてのデータをコード化し、次いで、定量的分析のため、別個の個人に送った。
【0098】
[0150]ストレス顆粒分配
[0151]ストレス顆粒分配実験に関して、mGFP-CAPRIN1またはmCherry-CAPRIN1を安定発現するWT U20S細胞を、25%集密で96ウェルプレートにプレーティングし、そして30pLの示すmCherryタグ化レンチウイルス(mGFP-CAPRIN1)またはmGFPタグ化レンチウイルス(mCherry-CAPRIN1細胞)のいずれかを形質導入した。3日後、細胞を洗浄し、トリプシン処理し、ビンに入れ(binning)、そしてフィブロネクチンコーティングした96ウェルプレート上に継代した。2日後、細胞が60~80%集密の際、画像化を行った。亜ヒ酸処理の1~2時間後の間に画像を撮影した。各条件に関して3回の独立の実験を行った。
【0099】
[0152]共局在コアレット研究は、「状態図データ収集」と類似のプロトコルにしたがったが、示すGFPタグ化タンパク質を安定発現するG3BP KO細胞に対して、2つのレンチウイルスの同時形質導入(典型的なGFPタグ化型の代わりに、非蛍光iLID-Feで)を用いて行った。感染72時間後、1:8の希釈係数で、フィブロネクチンコーティングしたガラス底96ウェルプレート(Cellvis)上に継代した。48時間後、亜ヒ酸塩(400μM)で処理した。1時間後、加湿インキュベーターからプレートを取り出し、そして青色LED光発光装置(Invitrogen SafeImager 2.0)に10分間乗せて、コアレットを活性化した。直ちに、4パーセントPFAで10分間固定した。PBSで2回洗浄し、そして氷冷70%メタノールで10分間透過処理した。PBSでさらに2回洗浄し、次いで4℃で一晩置いた。翌日、固定細胞共焦点顕微鏡検査を行って、示すGFPタグ化SG/PBタンパク質とオプトSGの共局在を調べた。
【0100】
[0153]RNA蛍光in situ組織化学
[0154]示す細胞を4パーセントPFAで10分間固定した。PBSで2回洗浄し、氷冷70%エタノールで透過処理し、そして-4℃で一晩置いた。エタノールを洗浄緩衝液A(Stellaris)で置換し、そして室温で5分間インキュベーションした。5pMの5’-Cy5-オリゴd(T)20(Gene Link)を含有するハイブリダイゼーション緩衝液(Stellaris)で置換し、そして暗所で16時間インキュベーションして、ポリアデニル化mRNAを探査した。洗浄緩衝液Aにトランスファーし、37℃で30分置き、次いで洗浄緩衝液Bで置換し、室温でさらに5分間インキュベーションした。PBSで3回洗浄し、そして画像化した。
【0101】
[0155]G3BP1/2レベルおよびノックアウトヒト細胞を評価するためのウェスタンブロット
[0156]6ウェルプレート由来のU20S WT、U20S G3BP1/2 KO、HEK293、またはHeLa細胞を洗浄し、トリプシン処理し、培地でクエンチし、そして500xgで5分間遠心分離した。細胞ペレットをPBSで洗浄し、そしてフラッシュ凍結した。溶解直前に、細胞を氷上で融解し、そして150μL 2xNuage(登録商標)LDS試料緩衝液/還元剤中に再懸濁し、超音波処理し、そして100℃で5分間煮沸した。50ngの以下の組換えタンパク質を、陽性対照としての細胞溶解物とともに用いた:G3BP1(Novus、NBP1-50925-50UG)、G3BP2(Novus、NBP1-78843-100UG)。
【0102】
[0157]試料をNuPAGE(登録商標)Novex 10% Bis-Trisゲル上で泳動し、そして製造者のプロトコルの通りに、PVDFプレカットブロッティング膜にトランスファーした。TBST(5mM Tris-HCl、pH7.5、15mM NaCl、1%Tween-20)中の5%NFDM中で揺動しながら4℃で一晩、膜をブロッキングした。揺動しながら4℃で一晩、ブロッキング溶液中の以下の一次抗体で膜を探査した:G3BP1(マウスモノクローナル、AbCam ab86135、1:300)、G3BP2(ウサギポリクローナル、Abeam ab86135、1:5000)、ベータアクチン(ウサギポリクローナル、AbCam ab8227、1:10,000)。翌日、膜を多数回洗浄し、そして次いで揺動しながら室温で30分間、ブロッキング溶液中の以下の二次抗体とインキュベーションした:ペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson、115-035-062、1:10,000)、ペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Jackson、115-035-144、1:10,000)。続いて、多数回の洗浄を行った後、製造者の指示にしたがって、SuperSignalTM West Pico PLUS化学発光基質を用いて、膜を現像した。
【0103】
[0158]免疫沈降
[0159]ほぼ集密な細胞の150mmプレートを、示すように処理し、冷Hanks塩基性塩溶液で洗浄し、そして1mM DTT、プロテアーゼ阻害剤(Roche EDTA不含)、HALTホスファターゼ阻害剤(Pierce)、および20pg/nL RNアーゼAを含有する溶解緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、1mM DTT 0.5%NP-40、10%グリセロール)内に、4℃で掻き取って採取した。細胞を4℃で30分間回転させ、遠心分離(5,000rpmで5分間)によって清澄にし、そして上清を取り除き、次いで、4℃で連続回転しながら、Chromotek-GFP-Trap(登録商標)ビーズ(Allele Biotech)とインキュベーションした。ビーズを5回洗浄し、そしてRNアーゼ処理で、SDS-溶解緩衝液内に直接溶出させるか、または回転しながら4℃で1時間、RIPA緩衝液(50mM TRIS、150mM NaCl、1.0%NP40、0.5%DOC、0.05%SDS)中に抽出した。RIPA緩衝液によって放出された物質を回収し、そして60%アセトンで沈殿させた。RIPA抽出後のビーズは、「高アフィニティ」と示される結合した物質を含有し、これは還元SDS-PAGE溶解緩衝液中で加熱することによって放出された。4~20%Mini-PROTEAN TGXプレキャストゲル(Bio-Rad)上でタンパク質を分離し、そしてTransfer-Blot Turboトランスファーシステム(Bio-Rad)を用いて、ニトロセルロース膜にトランスファーし、そして上述のような標準的方法を用いてブロッティングした。SuperSignal West Pico基質(Thermo Scientific)を用いて、化学発光を検出した。
【0104】
[0160]Cas9欠失細胞株
[0161]各ターゲット配列を対のDNAオリゴ(センス/アンチセンス対)としてIDTから購入し、アニーリングし、そしてpCas-Guide(Origene)内に連結したが、UBAP2は例外であった。プラスミド挿入物を配列決定によって検証し、そしてピューロマイシン耐性をコードするpDonor-D09(Origene)とともに細胞内に同時トランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を、ピューロマイシン(2pg/mL)中の短時間(24時間)選択に供し、そして2日間またはそれより長く回復させた後、示す抗体および免疫蛍光を用いて評価した。限界希釈によって細胞をクローニングし、そして免疫染色およびウェスタンブロッティングの両方を用いてクローンを検証した。単一KO株に関して、親細胞株は、tetリプレッサーを発現するU20Sであった(Kedershaら、2016)。以前特徴づけられた二重(G3BP1/G3BP2)KO細胞(Kedershaら、2016)において、CAPRIN1およびUSP10を個々にノックアウトした。
【0105】
[0162]U20SAFFF細胞株を生成するため、FXR2をまずノックアウトし、クローンを選択し、そして免疫蛍光およびウェスタンブロッティングによって、FXR2タンパク質発現を評価した。次いで、クローン6を、FXR1およびFMR1をターゲティングするガイドRNAで同時トランスフェクションした。類似の方式で、クローンを選択し、そしてスクリーニングし、そして最後に三重ヌル株を得た。すべての遺伝子座を配列決定して、DNA中の欠失を確認した。
【0106】
[0163]UBAP2/UBAP2L二重KOの場合、検証されたUBAP2L単一KO細胞を、96ウェルプレート中、200μLのpCRI8PRv2-UBAP2 gRNA(プール、6つのgRNA)または200pLのpCRISPRv2-非ターゲットgRNA(Shalemら、2014)にプレーティングした。72時間後、集密細胞を洗浄し、トリプシン処理し、そして200pLの同じレンチウイルスを含有する新規ウェル内に継代した。
【0107】
[0164]細胞を3回継代し、そしてKOの成功に関して、UBAP2に対する2つの抗体で検証して調べ、~30パーセントの細胞が非常に低いかまたは検出不能なレベルのUBAP2を特徴とすることが示された(非ターゲット対照において、100%の細胞がLIBAP2染色を示した)。96ウェルから24ウェル、次いで96ウェルの連続継代によって、細胞を1週間に渡って増幅させた。96ウェルで集密に到達したら、細胞を3つの別個の96ウェルプレートに限界希釈で継代し、したがって、各ウェルは、細胞を受け取る~50%の確率を特徴とした。10日後、ウェルの~20~30%でコロニーが見られた。非ターゲット対照に関しては、6つのウェルを採取し、そして継代した;候補UBAP2/2L二重KO、50の別個の株。
【0108】
[0165]さらに~2週間継代しそして増殖させた後、候補KO株(および非ターゲット対照)をフィブロネクチンで覆ったガラス(96ウェルプレート)上にプレーティングした。24時間後、細胞は~60~80%集密であった。細胞を4%PFAで固定し、氷冷メタノールで5分間透過処理し、そして免疫組織化学を行った(抗UBAP2、抗G3BP1)。非ターゲット対照において、大部分の細胞はG3BP陽性ストレス顆粒を特徴としたが、これらは対照条件(すなわち非UBAP2L KO)よりわずかに小さく、この結果は複数の研究室に渡って検証された(データ未提示)。4つの候補UBAP2/2L二重KO株は、免疫蛍光によってUBAP2が検出不能であることを特徴とした。これらの例において、G3BP陽性SGは、~30%の細胞のみに存在し、そしてこれらは、WTまたはUBAP2L単一KOにおけるよりもはるかにサイズが小さかった。UBAP2およびUBAP2Lの二重ノックアウトをウェスタンブロットによって検証した。
【0109】
[0166]Cas9突然変異細胞株の遺伝子型決定
[0167]コード配列におけるすべてのKO細胞株のCas9誘導性突然変異を同定するため、特定のガイド配列によってターゲティングされる領域を取り巻く、入れ子(nested)プライマーセットを用いて、ゲノム増幅を行った。InvitrogenのAccuPrime GCリッチDNAポリメラーゼ(緩衝液A)を用いて、ゲノムDNA PCRを行った。DNAをまず、95℃で3分間変性させた後、95℃で30秒間変性、60℃で30秒間アニーリング、および72℃で1分間伸長の30サイクルを行った。最後の伸長を72℃で10分間行った。PCRアンプリコンを直接配列決定した。多数配列(すなわち多数アレル)の証拠がある場合、Taqポリメラーゼを用いてPCR産物をアデニル化し、そしてPromega pGEM(登録商標)-T Easyベクター内にクローニングし;個々のクローンを得て、そして配列決定した。
【0110】
[0168]二重陽性U20S安定細胞株
[0169]tetリプレッサーを含有する(G3BP1/G3BP2)KO細胞内に、mCherry-G3BP1-C1をトランスフェクションすることによって、mCherry-G3BP1を恒常性に発現するクローン細胞株を作製し、G418(500pg/mL)を用いて選択し、そしてクローニングした。この株を用いて、pcDNA4 t/oベクター(Invitrogen)中、tet誘導性GFPタグ化タンパク質(G3BP1 WT、G3BP1 S38F、G3BP1 F33W、およびUBAP2L WT)を発現する二重陽性細胞を作製し、ゼオシン(Invitrogen、250pg/mL)を用いて選択した。
【0111】
[0170]定量化および統計分析
[0171]蛍光相関分光法
[0172]軽微な修飾を伴い、以前記載されたように(Brachaら、2018)行う蛍光相関分光法(FCS)を用いて、GFPおよびmCherry蛍光値を絶対濃度に変換した。30秒間のFCS測定時間で、示す蛍光融合タンパク質の拡散および濃度に関するデータを得た。
【0112】
[0173]別個にiLID-mGFPおよびmCherry-sspBを発現するU20S G3BP1/2二重KO細胞集団に対して測定を行い、融合タンパク質は、こうした非天然融合タンパク質が単量体であり、そして主要な内因性結合パートナーがないことを特徴とするという仮定に基づいて選択されるよう条件づけられる。油浸対物レンズ(Plan Apo 60X/1.4開口数、Nikon)を備えたNikon A1レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて、画像を撮影した。SymPhoTimeソフトウェア(PicoQuant)を用いて、すべての測定およびデータ分析を行った。
【0113】
[0174]単純拡散に関する自己相関関数は以下の通りである:
【0114】
【0115】
[0175]上記等式中の変数は、以下のように定義される:G(0)は、短時間規模での度合いであり;τはラグタイムであり;τDは半減衰時間であり;そしてκは測定体積の軸方向対径方向(axial to radial)比であり、
【0116】
【0117】
である。ここでωxy=0.19pmであり、そしてκ=5.1であり、これは水中のフルオロフォア色素Alexa 488によって決定される。パラメータτDおよびG(0)は、適合するように最適化され、そして拡散係数
【0118】
【0119】
および分子濃度
【0120】
【0121】
を決定するために用いられる。
[0176]WTおよびG3BP KO U20S細胞におけるmCherryおよびmGFPタグ化融合タンパク質の濃度を定量的に概算するすべての実験に関して、
図18に示す蛍光対濃度の検量線を用いた。こうしたFCS検量線は、こうした概算の正確性を裏付けるいくつかの知見を生じた:
[0177](A)独立に行われるmCherry FCS実験は、<5%異なる濃度概算を生じた(Brachaら、2018)。さらに、前述の研究は、自己触媒性P2Aシステムを用いて、等モル比でmGFPおよびmCherryを同時発現し、GFP濃度を、mCherryに関して決定されたFCS検量線から外挿した。この間接的に外挿された検量線はGFP濃度を予測し、これは本研究で用いた独立に得られた較正および概算から<20%の相違であった。
【0122】
[0178](B)G3BP欠損のレスキューに必要とされるUSP10およびG3BPの間の化学量論を定量化する傾斜は、驚くほど1に近く(~0.98)、これは、そのKdよりはるかに大きい濃度で示される、こうした競合的阻害剤に関する予測値であり、そして異なる強い阻害剤(USP10 NIMx1およびCAPRIN1 1~386)に関するほぼ同等の傾斜によってさらに確認された;
[0179](C)U20S細胞におけるG3BP1/2の濃度は、レスキューのためのG3BP濃度(620nM)(別個の実験において確認された値は、この値の50nM以内であった)およびSG阻害のためのUSP10(1560nM)を添加して、U20S細胞の細胞質における~2180nM G3BP濃度を外挿することによって外挿された。この値は、HeLa細胞において独立に得られた質量分析値(Heinら、2015)とほぼ等しく、そしてウェスタンブロットは、2つの細胞株間で類似のレベルであることを確認する;
[0180](D)mGFP-G3BP1およびG3BP1-mCherryは、非常に類似のSGレスキュー濃度閾値(すなわち、互いの50nM以内)を特徴とする。
【0123】
[0181]画像分析
[0182]手動画像セグメント化(ImageJ)、ImageJにおけるカスタム半自動化ワークフロー、およびMATLAB 2018bの組み合わせを用いて、すべての画像を分析した。すべての実験において、関心対象の領域をImageJ中で選択し、そして前述のFCS較正を用いて、平均細胞質強度を計算した。ストレス顆粒の存在は、サイクリング実験以外の場合、ストレスの非存在下では細胞質における拡散分布を特徴とする、ストレス顆粒のマーカーとの共局在に基づく手動スコア化によって決定された。
【0124】
[0183]手動画像セグメント化
[0184]細胞に関するmCherryおよびmGFPの平均蛍光強度を用いて、会合する融合タンパク質の濃度を概算した。蛍光の均質な分布を特徴とする細胞質領域(すなわち小胞体のような膜結合オルガネラが低密度である領域)における4.5x4.5pm平方ROIを描く手動画像セグメント化を用いることによって、これを決定した。次いで、前述のFCS検量線を用いて、タンパク質濃度を決定した。コアレットを伴わない実験に関して、ストレス顆粒の存在または非存在を手動で注釈付けした。状態図の目的のため、5分間の活性化時間経過(6秒間間隔)後に巨視的な点が形成されるかどうかを評価することによって、相分離を手動で注釈付けした。完全に活性化された細胞のみが、拡散に基づく捕捉に関連する混乱を回避すると見なされた(Brachaら、2018)。
【0125】
[0185]明暗サイクリング実験
[0186]タイムラプス全体で視野中に存続する個々の関心対象領域を手動で選択した。測定されたmCherry強度から標準偏差を計算し、そして最初に撮影したフレームでの標準偏差によって標準化した。
【0126】
[0187]G3BP KO U20S細胞におけるG3BPレスキュー競合データ分析
[0188]以前記載されるように、手動画像セグメント化を通じて各細胞の濃度を決定し、そしてストレス顆粒の非存在または存在を注釈付けた。データから境界を決定するため、デフォルトソルバを用いて、MATLAB統計および機械学習パッケージにおいて、fitcsvm()関数を適用することによって、説明変数として2つの構成要素の濃度を、そして反応変数としてカテゴリー的なストレス顆粒状態を用いて、サポートベクターマシン(SVM)を訓練した。簡潔には、サポートベクターマシンは、境界ポイント(「サポートベクター」)に基づいて、データが線形に分離可能であるという仮定で、線形識別境界を構築する。この2次元の場合、傾斜および切片のパラメータを抽出して、ストレス顆粒形成のための最小G3BP濃度、ならびに関心対象のタンパク質との相互作用の化学量論を計算した。
【0127】
[0189]状態図および臨界価(critical value)の計算
[0190]各状態図に関して、iLID-GFP-FeコアおよびmCherry-sspBタグ化タンパク質両方の平均濃度を計算し、そしてストレス顆粒を持つかまたは持たないかのカテゴリーに割り当てた。自動化および非バイアス方式で、相閾値境界を決定するため、SVMリグレッサーを再び用い、カテゴリー的な反応変数としての相分離された構造の存在下で、説明変数としてのコア濃度およびlog2変換価を用いた。しかし、データは線形に分離可能ではないため、度数2の多項式カーネルを用いて、相閾値の曲率を説明した。次いで、識別境界を計算するため、状態図の50x50グリッドにおけるすべてのポイントで、SVMのスコアを計算し、そしてMATLABのcontourO関数を用いて、0のスコアを持つポイントを連結して、相閾値に相当する輪郭線を引いた。次いで、ゼロスコア輪郭線を線形に解釈することによって、明記するコア濃度での臨界価に関する特定の値を計算した。
【0128】
[0191]WT U20S細胞におけるストレス顆粒集合の阻害のための臨界濃度の概算
各実験に関して、各細胞に関する関心対象のタンパク質濃度を決定し、そしてストレス顆粒の存在をカテゴライズした。細胞がストレス顆粒を有する50パーセントの確率を有する、関心対象のタンパク質濃度として、阻害またはレスキューの臨界濃度を定義した。特に、平方根数規則を用いて、濃度分布をビニングすることによって、確率密度を計算した。各ビン内で、ストレス顆粒を持つ細胞数をそのビンにおける細胞総数で割って、ストレス顆粒を有する確率を計算した。これは単調関数を生じる;次いで、0,5の確率での値を内挿して、阻害またはレスキューの閾値濃度を決定した。各複製に関してこれを反復し、そして複製間の平均の標準誤差を用いて、エラーバーを決定した。