(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体完全切断のためのレーザービーム照射装置およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/364 20140101AFI20240326BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240326BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B23K26/364
B23K26/082
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2022140895
(22)【出願日】2022-09-05
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】522352731
【氏名又は名称】ゼリン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XELIN Company Limited
【住所又は居所原語表記】228-BHo,21,Baekbeom-ro 31-gil,Mapo-gu,Seoul,04147 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジャンス
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-342760(JP,A)
【文献】特開2012-152823(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0017833(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1423497(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体加工のためのレーザービーム照射装置において、
半導体の加工を遂行するように加工方向にレーザービームを進行させ、前記加工方向とは異なる振動方向に一定の振幅を有するように前記レーザービームを振動させるレーザービーム出力部;および
前記加工方向に進行し前記振動方向に振動するレーザースポットを前記半導体に結像させる集束レンズ;を含
み、
前記レーザービーム出力部は、
1回の加工において第1レーザーを加工方向に沿って前記半導体に出力し、第1レーザーとは入射角度が異なる第2レーザーを加工方向に沿って出力する、
レーザービーム照射装置。
【請求項2】
前記レーザービーム出力部は、
前記半導体を良質の加工品質で切断するための前処理加工を遂行するために、前記第1レーザーを出力する第1レーザービーム出力部;および
前記半導体に切断面を形成する前記第2レーザーを出力する第2レーザービーム出力部;を含むことを特徴とする、請求項
1に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項3】
前記レーザービーム出力部は、
レーザービームを発振して出力するレーザー発振部;および
前記レーザー発振部から照射された前記レーザービームを前記振動方向に振動させるように光学素子を物理的に振動させる振動部;をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項4】
前記レーザー発振部および前記集束レンズは振動なしに固定され、前記光学素子は振動部のモータの駆動力によって単振動することを特徴とする、請求項
3に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項5】
前記光学素子は、水平鏡を含み、
前記モータは、
超音波モータおよび共鳴モータのうち少なくとも一つであることを特徴とする、請求項
4に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項6】
半導体加工のための操作命令を受信する入力部;および
前記操作命令に基づいて、第1モードで、前記モータにサイン波の入力を印加し、第2モードで、前記モータに三角波または矩形波を印加するように振動部を制御する制御部;を含むことを特徴とする、請求項
5に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項7】
前記第1モードは、前記レーザービームの振動速度に優先順位を割り当てた使用者によって選択された使用者モードであり、
前記第2モードは、前記レーザービームの振動幅に優先順位を割り当てた使用者によって選択された使用者モードであることを特徴とする、請求項
6に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項8】
前記光学素子は、それぞれ多数の反射面を有する一対のポリゴン鏡を含み、前記一対のポリゴン鏡はそれぞれ異なる方向に回転することを特徴とする、請求項
3に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項9】
前記半導体は、
半導体基板を含み、
前記集束レンズは、
前記レーザービームが前記半導体の平面から垂直な方向に所定の入射角度を有するように、前記レーザービームを出力することを特徴とする、請求項1に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項10】
前記入射角度は、
実質的に直角(right angle)に一致し、
前記レーザービーム出力部は、
前記半導体基板の線幅で決定された距離に対応するように、前記振動方向の振動幅だけ前記レーザービームを振動させることを特徴とする、請求項
9に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項11】
前記入射角度は、
0度超過および90度未満であり、
前記レーザービーム出力部は、
前記入射角度だけ傾いた前記レーザービームが前記半導体基板に入射する深さだけ加工することを特徴とする、請求項
9に記載のレーザービーム照射装置。
【請求項12】
半導体加工のためのレーザービーム照射装置の動作方法において、
被照射体を量産品質で切断するための前処理加工を遂行するために第1レーザービームを出力する段階;
前記第1レーザービームに基づいた前処理加工を遂行した経路に沿って被照射体を切断するための第2レーザービームを出力する段階;および
前記第1レーザービームを加工方向に鉛直となる角度で出力し、前記第2レーザービームとは異なって振動させず、前記第2レーザービームを加工方向に鉛直に第1角度を有するように出力し、前記加工方向に前記第2レーザービームを振動させる段階をさらに含む、動作方法。
【請求項13】
前記第1レーザービームは、前記第2レーザービームより低い波長であることを特徴とする、請求項
12に記載の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術的思想は半導体完全切断のためのレーザービーム照射装置およびその動作方法に関し、詳しくは、半導体素子の光学的損傷を防止するためのレーザービーム照射装置およびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業の飛躍的な発展および使用者の要求により、電子機器はさらに小型化、高集積化および大面積化されている。これに伴い、電子機器に含まれる半導体素子の大きさがナノメートル単位の微細領域に進入しているのが実情である。
【0003】
本開示に関連した半導体加工方法としては、切断加工の一種として大面積ウェハを複数のチップに切断および分離するダイシング(dicing)加工、ウェハの厚さを薄くするグラインディング(grinding)工程、そして導電性配線を形成させるための溝を作るグルービング(grooving)工程が含まれる。
【0004】
ダイシング加工と関連して、微細ダイヤモンドで形成された薄い切断ブレードによる基板切断方式のブレードダイシング(blade dicing)が利用される。しかし、切断ブレードによる基板切断過程の場合、基板の表面や裏面にチッピングが発生し、このチッピングによって分割されたチップの性能を低下させ得る。
【0005】
さらに他のダイシング加工において、局部的な領域にレーザー光を集中させて切断のための内部亀裂を形成させるステルスダイシング(stealth dicing)が用いられる。しかし、ステルスダイシングのレーザー光は極度に高いピークパワーを有するため、内部亀裂を形成させる過程で半導体表面の亀裂も引き起こし得、これに伴い、チップの性能が低下し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の技術的思想が解決しようとする課題は、レーザー集光による熱エネルギーの蓄積を低くするためにレーザービームを振動させることによってチップ性能を改善できる、半導体加工のためのレーザービーム照射装置およびその動作方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するために、本開示の技術的思想の一側面に係る半導体加工のためのレーザービーム照射装置において、半導体の加工を遂行するように加工方向にレーザービームを進行させ、前記加工方向とは異なる振動方向に一定の振幅を有するように前記レーザービームを振動させるレーザービーム出力部および前記加工方向に進行し前記振動方向に振動する前記レーザースポットを前記半導体に結像させる集束レンズを含むことができる。
【0008】
また、前記レーザービーム出力部は、1回の加工において第1レーザーを加工方向に沿って前記半導体に出力し、第1レーザーとは入射角度が異なる第2レーザーを加工方向に沿って出力することができる。
【0009】
また、前記レーザービーム出力部は、前記半導体を良質の加工品質で切断するための前処理加工を遂行するために、前記第1レーザーを出力する第1レーザービーム出力部および前記半導体に切断面を形成する前記第2レーザーを出力する第2レーザービーム出力部を含むことができる。
【0010】
一方、前記レーザービーム出力部は、レーザービームを発振して出力するレーザー発振部および前記レーザー発振部から照射された前記レーザービームを前記振動方向に振動させるように光学素子を物理的に振動させる振動部をさらに含むことができる。
【0011】
また、前記レーザー発振部および前記集束レンズは振動なしに固定され、前記光学素子は振動部のモータの駆動力によって単振動することができる。
【0012】
また、前記光学素子は、水平鏡を含み、前記モータは、超音波モータおよび共鳴モータのうち少なくとも一つであり得る。
【0013】
また、半導体加工のための操作命令を受信する入力部および前記操作命令に基づいて、第1モードで、前記モータにサイン波の入力を印加し、第2モードで、前記モータに三角波または矩形波を印加するように振動部を制御する制御部を含むことができる。
【0014】
また、前記第1モードは、前記レーザービームの振動速度に優先順位を割り当てた使用者によって選択された使用者モードであり、前記第2モードは、前記レーザービームの振動幅に優先順位を割り当てた使用者によって選択された使用者モードであり得る。
【0015】
一方、前記光学素子は、それぞれ多数の反射面を有する一対のポリゴン鏡を含み、前記一対のポリゴン鏡はそれぞれ異なる方向に回転することができる。
【0016】
前記半導体は半導体基板を含み、前記集束レンズは前記レーザービームが前記半導体の平面から垂直な方向に所定の入射角度を有するように、前記レーザービームを出力することができる。
【0017】
前記入射角度は、実質的に直角(right angle)に一致し、前記レーザービーム出力部は、前記半導体基板の線幅で決定された距離に対応するように、前記振動方向の振動幅だけ前記レーザービームを振動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の例示的な実施例によると、ステルスダイシングとは異なって、局部的な小さい面積に熱エネルギーを蓄積させずにレーザービームを振動させることによって熱エネルギーを分散させることによって、半導体素材の破壊および変形を防止することができる。
【0019】
本開示の例示的な実施例によると、先行レーザーによる前処理加工を通じて、被照射体およびこれを利用した量産結果物の品質確保を達成することができ、後行レーザーによる完全切断で量産品質を達成することができる。
【0020】
本開示の例示的な実施例によると、レンズによって調節されるレーザースポットの直径を利用して加工パラメータ(例えば、線幅)を容易に決定することによって半導体の加工を精巧に遂行でき、不良率を下げて歩留まりを上昇させることができる。
【0021】
本開示の例示的な実施例によると、半導体を加工する過程で発生する噴出物(例えば、粉塵、パーティクル(particle)、デブリ(debris))を振動するレーザービームが汲み出すことによって工程歩留まりを上昇させることができる。
【0022】
本開示の例示的な実施例によると、振動するレーザービームの入射角度を鋭角、直角または鈍角に調節することによって、生産者のニーズに合うカスタマイズされた結果物を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置を説明するための概念図である。
【
図2a】本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10の加工方法を説明するためのものである。
【
図2b】本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10の加工方法を説明するためのものである。
【
図3】従来のブレードダイシングとステルスダイシングを説明するためのものである。
【
図4】本開示の例示的な実施例に係るレーザービームの振動方法を説明するためのものである。
【
図5】本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置の振動方法、集束レンズおよび加工方法を説明するためのものである。
【
図6】本開示の例示的な実施例に係る振動方法のうち鏡振動を説明するためのものである。
【
図7】本開示の例示的な実施例に係る振動方法のうちポリゴン振動を説明するためのものである。
【
図8】本開示の例示的な実施例に係る振動方法のうち光源振動を説明するためのものである。
【
図9】本開示の例示的な実施例に係る集束レンズを説明するためのものである。
【
図10】本開示の例示的な実施例に係る加工方法の決定による振動方向および加工方向を説明するためのものである。
【
図11】本開示の例示的な実施例に係る加工方向および入射角度を説明するためのものである。
【
図12】本開示の例示的な実施例に係る半導体加工結果による品質を比較例とともに説明するための電子顕微鏡映像である。
【
図13】本開示の例示的な実施例に係る半導体加工結果による品質を比較例とともに説明するための電子顕微鏡映像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10を説明するための概念図である。
【0026】
図1を参照すると、レーザービーム照射装置10は入力部100、制御部200、レーザービーム出力部300および集束レンズ400を含むことができる。レーザービーム出力部300はレーザー発振部310、振動部320および光学素子330をさらに含むことができる。
【0027】
レーザービーム照射装置10は、レーザービームを出力することによってレーザースポットLSを被照射体STに結像させることができる。
【0028】
被照射体STは半導体基板およびウェハを含むことができる。説明の便宜上、以下で被照射体STは半導体、半導体基板または半導体ウェハとともに説明することができる。この場合、基板はレーザービームの熱エネルギーによって多様な方法で加工され得、前記多様な方法は、レーザービーム照射装置10は大面積ウェハを複数のチップに切断および分離するダイシング(dicing)加工、ウェハの厚さを薄くするグラインディング(grinding)加工、そして導電性配線を形成させるための溝を作るグルービング(grooving)加工を含むことができる。
【0029】
また、被照射体STは半導体膜(例えば、酸化膜)を含むことができる。例えば、レーザービーム照射装置10は半導体膜をアニーリング(annealing)することができる。
【0030】
以下で「加工」とは、レーザービーム照射装置10のレーザービームによって被照射体STに物理的変形を引き起こす工程(process)を意味し得、前述した例示に本開示の技術的思想が制限されるものではない。
【0031】
本開示の例示的な実施例によると、レーザービーム照射装置10はレーザースポットLSにより集光された熱エネルギーの蓄積を低くするためにレーザービームを振動させることができる。
【0032】
具体的には、レーザービーム照射装置10は被照射体STの加工を遂行するように加工方向にレーザービームを進行させることができる。これと共に、レーザービーム照射装置10は加工方向とは異なる振動方向に一定の振幅(加工振幅)を有するようにレーザービームを振動させることができる。これにより、第1レーザースポットLS1の熱エネルギーの過度な蓄積によって被照射体STが変形される前に、第2レーザースポットLS2で振動することによって被照射体STの不良率を下げることができる。
【0033】
一方、
図3で後述するように、レーザービーム照射装置10は加工方向と同一の振動方向に、一定の振幅を有するようにレーザービームを振動させることができる。加工方向と同一の振動方向を有するレーザービームによって、レーザービーム照射装置10は被照射体STを加工する過程で発生する噴出物(例えば、粉塵、パーティクル(particle)、デブリ(debris))を振動するレーザーに基づいて加工領域の外に汲み出すか片づけることができる。これにより、噴出物による歩留まりの低下を防止することができる。
【0034】
入力部100は使用者の操作命令を受信することができる。一例として、操作命令は使用者が被照射体STに掘りつけられる線幅を決定する命令を含むことができ、他の一例として、操作命令は被照射体STを加工する速度を制御する命令を含むことができる。
【0035】
入力部100は、第1モードおよび第2モードのうち一つを使用者によって選択され得る。第1モードとは、レーザービームの振動速度に優先順位を割り当てた使用者モードであり得、第2モードとは、レーザービームの振動幅に優先順位を割り当てた使用者モードであり得る。第1モードおよび第2モードでの加工方法は制御部200とともに後述することにする。
【0036】
一方、入力部100は使用者の操作命令を受信して制御部200に伝達できる装置(例えば、キーボード)、ソフトウェア(入力ユーザインターフェース)で具現され得る。または入力部100は運営体制(operating system、O/S)の入力インターフェースであり得る。これに制限されず、入力部100は多様な方式のハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェア方式の入力手段を含むことができる。
【0037】
制御部200はレーザー発振部310を制御するために発振信号SOを出力することができる。
【0038】
レーザー発振部310は半導体装置または半導体部品であるか、これに含まれる構成である被照射体STを加工できるすべての種類の発振装置を含むことができる。例えば、レーザー発振部310は数百ワット出力のレーザーから数百キロワット出力のレーザーを含むことができる。発振信号SOはレーザー発振部310の全般的な動作を制御することができる。
【0039】
制御部200は振動部320を制御するために振動信号SVを出力することができる。振動信号SVは振動幅、振動速度および入力波形に関する情報を含むことができる。例えば、振動部320は共鳴モータを含むことができる。以下において共鳴モータとは、振動子が共鳴して振動する駆動装置を意味し得、ガルボモータ(galvo motor)より高い振動数を有することができる。
【0040】
制御部200は、第1モードおよび第2モードを含む複数の使用者モードに基づいて互いに異なる入力波形を振動部320に印加することができる。ここで、入力波形とは、モータを駆動させるために印加される電気的信号の波形を含むことができる。
【0041】
制御部200は、操作命令に基づいて第1モードで振動部320のモータにサイン波(sine wave)の入力を印加する振動信号SVを出力することができる。サイン波の入力が印加されたモータはレーザービームの振動速度を最大化させることができる。すなわち、振動幅の正確性は第2モードに比べて低くなるが、レーザービームが振動できる最大の振動速度(振動数)がさらに増加し得る。
【0042】
また、制御部200は、操作命令に基づいて第2モードで振動部320のモータに三角波または矩形波を印加するように振動信号SVを出力することができる。三角波または矩形波の入力が印加されたモータは振動幅を精密に決定することができる。すなわち、振動速度は第1モードに比べて低くなるが、ターゲットとする振動幅にさらに近い幅でレーザービームは振動することができる。
【0043】
レーザービーム出力部300は、レーザービームを発振して出力するレーザー発振部310を含むことができる。レーザー発振部310は発振されたレーザーを光学素子330に出力することによって被照射体STを加工することができる。振動部320は、レーザー発振部310から照射されたレーザービームを振動方向に振動させるように光学素子330を振動させることができる。集束レンズ400に入力されるレーザービームを振動させるためである。
【0044】
一例として、照射されるレーザービームは単一の線(single ray)であり得、他の例として、レーザービーム照射装置10は複数のレーザービームが出力されてもよい。複数のレーザービームが出力される場合、レーザー発振部310は複数のレーザービームを出力するための複数の発振モジュールを含むことができる。
【0045】
レーザービームを振動させる過程で、レーザービーム出力部300の一部の構成のみが振動することができる。換言すると、レーザー発振部310および集束レンズ400は振動なしに固定され、光学素子330は振動部320のモータの駆動力によって単振動することができる。レーザー発振部310および集束レンズ400が振動することに比べて被照射体STの加工を精密に遂行することができ、熱の蓄積を防止することができる。
【0046】
振動部320は光学素子330の振動幅と振動速度を決定することができる。例えば、振動部320のモータは光学素子330と機械的に直接的または間接的に連結され得る。光学素子330はレーザー発振部310から出力されたレーザービームを集束レンズ400に出力するので、振動部320は光学素子330を制御することによってレーザービームの振動幅と振動速度を決定することができる。
【0047】
光学素子330は鏡を含むことができる。すなわち、光学素子330はレーザー発振部310から出力されたレーザービームを反射させて集束レンズ400に出力することができる。振動部320は超音波モータおよび共鳴モータのうち少なくとも一つであり得る。電磁力による一般的なモータでは被照射体STに加えられる熱エネルギーの過度な蓄積を防止するための本開示の技術的思想を達成できないためである。
【0048】
集束レンズ400は、レーザービームが被照射体STの平面から垂直な方向に所定の入射角度を有するようにレーザービームを出力することができる。所定の入射角度は0度(zero degree)以上90度以下であり得る。
【0049】
集束レンズ400は対物レンズ、短焦点レンズまたはF-thetaレンズであり得る。集束レンズ400は対物レンズ、短焦点レンズおよびF-thetaレンズのうち、加工方法および使用者の要求に応じて一つ選択され得る。これについては後述することにする。
【0050】
本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10は、加工方向とは異なる振動方向にはやく振動することによって加工品質および速度を高めることができる。これに比べ、従来の技術は加工品質および速度が低下する短所があった。
【0051】
図2aおよび
図2bは、本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10の加工方法を説明するためのものである。
【0052】
図2aおよび
図2bを参照すると、レーザービーム照射装置10は第1レーザービーム出力部300aおよび第2レーザービーム出力部300bを含むことができ、それぞれは
図1で前述したレーザービーム出力部300に対応し得る。一方、レーザービーム照射装置10は第1集束レンズ400aおよび第2集束レンズ400bを含むことができ、それぞれは
図1で前述した集束レンズ400に対応し得る。
【0053】
本開示の例示的な実施例によると、レーザービーム照射装置10は1回の加工において第1レーザーを加工方向に沿って被照射体STに出力し、第1レーザーとは入射角度が異なる第2レーザーを加工方向に沿って出力することができる。
【0054】
本開示の例示的な実施例によると、第2レーザービーム出力部300bは被照射体STを切断するための第2レーザーを出力することができる。例えば、第2レーザーは被照射体STに切断面を形成することができる。第1レーザービーム出力部300aは、被照射体STを量産品質で切断するための前処理加工を遂行するために第1レーザーを出力することができる。ここで、量産品質とは、加工主体が達成しようとするターゲット品質を指称し得、例えば、断面均一度、切断速度、切断大きさおよび線幅などを含むことができる。また、例えば被照射STがウェハである場合、第1レーザービーム出力部300aは半導体表面の化合物を除去するための目的で第1レーザーを出力することができる。
【0055】
本開示の例示的な実施例によると、第1レーザービーム出力部300aが前処理加工を遂行した経路に沿って第2レーザービーム出力部300bは第2レーザーを出力することができる。すなわち、第1レーザービーム出力部300aにより加工が準備された領域を、第2レーザービーム出力部300bが被照射体STを加工(例えば、切断)することができる。このような意味で、第1レーザーは先行レーザーと指称され得、第2レーザーは後行レーザーと指称され得る。
【0056】
本開示の例示的な実施例によると、第1レーザービーム出力部300aは第2レーザービーム出力部300bより低い波長のレーザーを出力することができる。実験によると、第1レーザービーム出力部300aは515nm以上532nm以下の波長を有するか、266nm以上355nm以下の波長を有する第1レーザービームを出力する場合、被照射体STの表面を突出なしに改質させることができる。これは、金属、セラミックおよび化合物などの半導体ウェハ表面にある物質が前述した波長の第1レーザービームを容易に吸収する素材であるためである。
【0057】
本開示の例示的な実施例によると、第1レーザービーム出力部300aは第2レーザービーム出力部300bより強度(intensity)が高いが平均出力は低いこともある。実験によると、第1レーザービーム出力部300aが出力する先行レーザーの平均出力が高い場合、被照射体STを過度な深さで加工し得る。これは、第2レーザービーム出力部300bが実際に加工(例えば、切断)を遂行するにおいて、加工品質を確保するのに妨害となり得るためである。したがって、第1レーザー(すなわち、先行レーザー)は第2レーザー(すなわち、後行レーザー)より強度は高いが平均出力は低いこともある。
【0058】
図2aを参照すると、第1レーザービーム出力部300aは被照射体STの鉛直方向に被照射体STに第1レーザーを出力することができ、第2レーザービーム出力部300bは加工方向に対して第1角度を有するように第2レーザーを出力することができる。ここで、第1角度θaは90度を超過し180度未満であり得る。
【0059】
また、第1レーザービーム出力部300aは振動運動なしに加工方向に沿って被照射体STの鉛直方向で第1レーザーを出力することができ、第2レーザービーム出力部300bは加工方向に振動する第2レーザーを出力することができる。
【0060】
図2bを参照すると、第1レーザービーム出力部300aは加工方向に対して第2角度θbを有するように第1レーザーを出力することができる。ここで、第2角度θbは0度を超過し90度未満であり得る。レーザービームに敏感で脆弱な被照射体STの場合、鋭角の入射角度で第1レーザーを出力することによって第2レーザービーム出力部300bが被照射体STを加工する品質をより高めることができる。また、鉛直方向の入射角度を有する第1レーザーと比較して、鋭角の入射角度を有する第1レーザーはさらに高い出力で被照射体STに出力されてもターゲット加工品質を獲得することができる。したがって、より多くのエネルギーで一度に表面除去および深さ加工をさらに容易に遂行できる。
【0061】
また、
図2aで前述したこととは異なり、第1レーザービーム出力部300aは振動運動すなわち、加工方向に沿って振動する第1レーザーを出力することができる。例えば、第1レーザーに振動を与える場合、厚い素材の被照射体STを加工するときに、切断加工を第1レーザーおよび第2レーザーを共に利用して遂行するという点でさらに効果的で迅速な加工(例えば、切断)を遂行できる。しかし、これに制限されはせず、第1レーザービーム出力部300aは第2角度θbを有しながらも、振動しない第1レーザーを出力することができる。
【0062】
図2aおよび
図2bを参照すると、先行レーザー(すなわち、第1レーザー)および後行レーザー(すなわち、第2レーザー)の連続的な切断動作を通じて、被照射体ST(例えば、半導体ウェハ)の完全切断(full cutting)を達成することができる。換言すると、従来には単一レーザーで被照射体の完全切断を試みる場合、過度なレーザービームの出力によって量産品質を達成することができなかった(例えば、
図12の(a)および
図13の(a))。しかし、本開示の例示的な実施例によると、先行レーザーによる前処理加工を通じて、被照射体STおよびこれを利用した量産結果物の品質確保が達成でき、後行レーザーによる完全切断で量産品質を達成することができる。また、先行レーザーおよび後行レーザーを利用することによって、それぞれのレーザーの出力を下げることができるため被照射体STの熱蓄積を防止でき、被照射体STの素材変形を防止することができる。
【0063】
図3は、従来のブレードダイシングとステルスダイシングを説明するためのものである。
【0064】
図3の(a)を参照すると、ブレードダイシング装置は微細ダイヤモンドで形成された薄い切断ブレードを速く回転させる。すなわち、ブレードダイシング装置は切断ブレードに形成された鋸刃を利用して対象体をカッティングする。
【0065】
この過程で、切断ブレードは対象体(例えば、基板)を切断する過程でブレードが位置した基板の表面または裏面の切断面を不規則にはがすことができる。また、対象体がはがされる過程で基板にチッピングが発生する可能性がある。これは、ダイシングが完了して分割されたチップの性能を低下させる主要要因となり得る。
【0066】
しかし、レーザービームを照射する方式は強い出力のレーザービームを局部的な部分に照射するので前記のような性能低下の要因が発生しない。
【0067】
反面、
図3の(b)を参照すると、ステルスダイシング装置は対象体の局部的な領域にレーザー光を集中させて切断のための内部亀裂を形成させることができる。一定のパターンで形成された亀裂に沿って対象体は分離され得る。分離される過程で、亀裂と隣接した領域の切断面は不規則な切断面が形成され得る。また、ステルスダイシングのレーザー光は極度に高いピークパワーを有するため半導体表面に所望しない亀裂がさらに発生し得、これに伴い、チップの性能が低下し得る。
【0068】
しかし、本開示の例示的な実施例によると、レーザービームを利用して被照射体STをすべて切断するのでステルスダイシングに比べて別途にはがす過程を経る必要がなく、これに伴い、性能低下要因を除去することができる。また、ステルスダイシングのように高いピークパワーを有しても、ステルスダイシングに比べて特定領域にレーザーが留まる時間を振動によって画期的に減らすことができるため、熱エネルギーの蓄積による被照射体STの変形を防止することができる。
【0069】
図4は、本開示の例示的な実施例に係るレーザービームの振動方法を説明するためのものである。以下では、
図4の(a)~(c)の順に沿って時系列的に説明される。
【0070】
図4の(a)~(c)を参照すると、レーザービーム照射装置10はレーザービームLB3を振動させることによって集束レンズ400の互いに異なる位置にレーザービームLB3を出力することができる。説明の便宜上第1局面、第2局面および第3局面でのレーザービームLB31~LB33に互いに異なる参照符号を記載したが、同一のレーザー発振部310から出力された一つのレーザービームであり得る。ただし、これに制限されはせず、レーザービームLB31~LB33は互いに異なる発振部によるレーザービームであってもよい。
【0071】
時系列的に説明すると、レーザービーム照射装置10は最初に集束レンズ400の縁領域にレーザービームLB31を出力する。その後、振動によってレーザービーム照射装置10は集束レンズ400の中央領域にレーザービームLB32を出力する。この後、振動によってレーザービーム照射装置10は第1局面での縁部領域と反対側の縁領域にレーザービームLB33を出力する。
【0072】
レーザービーム照射装置10は被照射体STの互いに異なる領域a1~a3それぞれにレーザースポットLSを結像させることができる。レーザービーム照射装置10はx軸方向に大きく離隔しないつつ、y軸方向に振動距離(加工幅、線幅)だけ離隔した領域a1~a3それぞれを加工することができる。ここで、振動距離は、導電体の線幅に対応し得る。すなわち、レーザービーム照射装置10はy軸方向に線幅だけ振動することができる。
【0073】
本開示の例示的な実施例によると、レーザービーム照射装置10は予め設定された品質基準による素材変形が発生しない時間の間だけのみ、局部的な領域(例えば、a1)にレーザースポットLSが留まるようにレーザービームLB3を振動させることができる。
【0074】
一例として、制御部200は振動部320が0超過20kHz以下の振動速度のうち少なくとも一つを有するように振動信号SVを伝送することができる。この時、制御部200が1kHzと同一であるか大きな振動速度を有する振動信号SVを出力する場合、振動部320は超音波モータおよび共鳴モータのうち一つで具現され得る。
【0075】
他の一例として、制御部200は振動部320が0超過10MHz以下の振動速度のうち少なくとも一つを有するように振動信号SVを伝送することができる。
【0076】
一実施例によると、レーザービーム照射装置10は被照射体STが第1材料で構成されたウェハであることを入力部100を通じて入力を受け、制御部200は第1振動数を含む振動信号SVを伝送することによって、局部的な領域(例えば、a1)にレーザースポットLSが第1振動数に対応する時間だけ留まるように制御することができる。
【0077】
図5は、本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置の振動方法、集束レンズおよび加工方法を説明するためのものである。
【0078】
本開示の一実施例によると、集束レンズ400を通過した振動するレーザービームLB4により、レーザービーム照射装置10はy軸方向の振動距離だけの幅を有する切断面を形成することができる。すなわち、レーザービーム照射装置10はダイシング工程を遂行できる。
【0079】
本開示の他の実施例によると、レーザービーム照射装置10はy軸方向の振動距離だけの幅を有する溝を形成することができる。すなわち、レーザービーム照射装置10はグルービング工程を遂行できる。
【0080】
本開示のさらに他の実施例によると、レーザービーム照射装置10はレーザービームLB4をy軸方向に大きく振動させることによってグラインディング工程を遂行できる。
【0081】
以下で、
図6~
図8と共にレーザービーム照射装置10の振動方法を説明し、鏡振動、ポリゴン振動および光源振動について説明する。
【0082】
図9とともに集束レンズ400について説明し、対物レンズ、短焦点レンズおよびF-thetaレンズそれぞれの場合について説明する。
【0083】
図6は、本開示の例示的な実施例に係る振動方法のうち鏡振動を説明するためのものである。
【0084】
図6を参照すると、振動部320はモータ321を含むことができ、モータ321は超音波モータおよび共鳴モータのうち少なくとも一つであり得る。また、光学素子330は水平鏡331を含むことができる。
【0085】
本開示の例示的な実施例によると、水平鏡331はモータ321と機械的に連結され、モータ321の駆動力が鏡に伝達され、水平鏡331は単振動することができる。この時、単振動の周波数は、レーザービーム照射装置10が加工方向とは異なる振動方向に振動する振動速度と実質的に同一であり得る。
【0086】
本開示の例示的な実施例によると、光学素子330は集束レンズ400と平行な方向に振動することができる。これに伴い、レーザービームは集束レンズ400の中心点を基準として原点対称である地点を往復して振動することができる。
【0087】
本開示の例示的な実施例によると、レーザー発振部310から出力されたレーザーが光学素子330に入射する方向に、光学素子330は振動することができる。この時、光学素子330はレーザー発振部310から出力したレーザーを集束レンズ400に反射させる平面鏡であり得る。
【0088】
本開示の例示的な実施例によると、モータ321は超音波モータおよび共鳴モータのような振動モータであり得る。振動モータは高い振動数をモータ321の内部で発生させて駆動力を生成することができる。高い振動数の駆動力はモータ321の伝達部を通じて、構造的に直接的または間接的に結合された水平鏡331に伝達され得る。
【0089】
好ましくは、モータ321は1kHzと同一であるか大きく、20kHzと同一であるか小さい振動数を発生させることができる。すなわち、超音波モータおよび共鳴モータのうち少なくとも一つは、1kHzと同一であるか大きく、20kHzと同一であるか小さい振動数でレーザービームを振動させることによって、半導体を加工する過程で発生する噴出物(例えば、粉塵、パーティクル(particle)、デブリ(debris))を振動するレーザービームが汲み出すことによって工程歩留まりを上昇させることができる。一般的に使われる線形アクチュエータモータ(Linear actuator motor)は、1KHz未満の低い振動数によって本開示の例示的な実施例に係る効果を達成できないが、1kHzと同一であるか大きく、20kHzと同一であるか小さい振動数でレーザービームが噴出物を汲み出しながらも、被照射体STの熱変形を画期的に減少させることを多数の実験を通じて確認した。
【0090】
図6の(a)を参照すると、第1局面で水平鏡331は地点b1に位置することができる。引き続き、
図6の(b)を参照すると、モータ321の駆動力(振動)により、第2局面で水平鏡331は地点b2を経て地点b3に位置することができる。この後、モータ321の駆動力(振動)により、水平鏡331は地点b3から地点b1に往復運動することができる。
【0091】
すなわち、本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10は、モータ321の駆動力とこれに基づいた水平鏡331の振動を利用して、振動方向に振動するレーザービームを被照射体STに出力することができる。
【0092】
図7は、本開示の例示的な実施例に係る振動方法のうちポリゴン振動を説明するためである。
【0093】
図7を参照すると、光学素子330は一対のポリゴン鏡332を含み、一対のポリゴン鏡332は多数の反射面を有する第1ポリゴン鏡332aおよび第2ポリゴン鏡332bを含むことができる。
【0094】
本開示の例示的な実施例によると、レーザー発振部310は複数の発振モジュールを含むことができる。例えば、レーザー発振部310は第1レーザービームi_aおよび第2レーザービームi_bを含む複数のレーザービームを出力することができる。レーザー発振部310は第1レーザービームi_aを第1ポリゴン鏡332aに出力することができ、第2レーザービームi_bを第2ポリゴン鏡332bに出力することができる。
【0095】
第1ポリゴン鏡332aは第1方向d1_aに回転することができ、第2ポリゴン鏡332bは第1方向d1_aと反対方向である第2方向d1_bに回転することができる。一例として、振動部320は回転モータで具現され得、第1ポリゴン鏡332aおよび第2ポリゴン鏡332bを互いに異なる方向に回転させることができる。他の一例として、振動部320は振動モータで具現され得、第1ポリゴン鏡332aおよび第2ポリゴン鏡332bが互いに相反した位相で振動するように振動部320は駆動力(振動)を複数のポリゴン鏡に出力することができる。
【0096】
本開示の例示的な実施例によると、光学素子330が一対のポリゴン鏡332を含む場合、反射した出力レーザービームo_a、o_bは被照射体STに出力され得る。この時、反射した出力レーザービームo_a、o_bはそれぞれ互いに異なる方向に振動することができる。
【0097】
また、反射した出力レーザービームo_a、o_bはそれぞれ単方向に振動することができる。一例として、第1出力レーザービームo_aは被照射体STの第1地点p1_a、第2地点p2_a、第3地点p3_a、第1地点p1_a、第2地点p2_a…順で振動することができる。第2出力レーザービームo_bは第4地点p1_b、第5地点p2_b、第6地点p3_b、第4地点p1_b、第5地点p2_b…順で振動することができる。すなわち、出力レーザービームo_a、o_bはそれぞれ第3地点p3_aおよび第6地点p3_bに到達すると、第1地点p1_aおよび第4地点p1_bに回帰する。これは、ポリゴンミラーの形状に起因する。
【0098】
すなわち、本開示の例示的な実施例によると、光学素子330が一対のポリゴン鏡332を含む場合、レーザービーム照射装置10は被照射体STに互いに異なる方向に単振動する出力レーザービームo_a、o_bを出力することによって、被照射体STを加工することができる。この時、単振動する方向は被照射体STの加工を進行する進行方向と異なり得る。
【0099】
一方、出力されたレーザービームo_a、o_bは集束レンズ400を通じて被照射体STに出力され得る。
【0100】
図8は、本開示の例示的な実施例に係る振動方法のうち光源振動を説明するためである。
【0101】
図8の(a)および(b)を参照すると、光学素子330は固定式水平鏡333を含むことができる。
【0102】
本開示の例示的な実施例によると、レーザー発振部310は振動部320と機械的に直接的または間接的に連結されて駆動力(振動)を伝達することができる。
図5とは異なり、固定式水平鏡333および集束レンズ400は振動なしに固定され得、レーザー発振部310は振動部320により振動することができる。一例として、レーザー発振部310は地点d1を始点として地点d3まで移動した後、地点d3から地点d1に往復する方式で単振動することができる。
【0103】
本開示の例示的な実施例によると、レーザー発振部310の振動によって、被照射体STは地点a1から地点a3までの振動方向により加工され得る。
【0104】
図9は、本開示の例示的な実施例に係る集束レンズを説明するためのものである。
【0105】
図9の(a)を参照すると、集束レンズ400はf-thetaレンズ401で具現され得、
図9の(b)はアクロマティックレンズ(achromatic lens)402を説明するためのものである。f-thetaレンズ401はアクロマティックレンズ402とは異なって上面湾曲現象が起きないこともある。
【0106】
本開示の例示的な実施例に係るレーザービーム照射装置10はナノスケール単位の半導体加工に使われ得る。アクロマティックレンズ402のように上面湾曲現象が発生する場合、振動幅を微細に調節できないという点で本開示の技術的思想による発明の効果を導き出すことが困難であり得る。これに伴い、レーザービーム照射装置10はf-thetaレンズ401を利用して振動幅を精巧に調節することができる。
【0107】
また、本開示の例示的な実施例に係る集束レンズ400は短焦点レンズ(short focal length lens)、単一レンズ(singlet lens)およびバイコンベックスレンズ(bi-convex lens)を含むことができる。
【0108】
一方、本開示の例示的な実施例に係る集束レンズ400は対物レンズを含むことができる。この時、対物レンズは5倍以上100倍以下の倍率を有することができる。対物レンズは前述したf-thetaレンズ401に比べて微細なレーザースポットLSを形成するのに最適化されている。実験によると、前述したレンズのうち対物レンズを集束レンズ400として具現する場合、レーザースポットLSの直径を最も小さく鮮明に形成することができた。これと関連して、
図9とともに説明することにする。
【0109】
図10は、本開示の例示的な実施例に係る加工方法の決定による振動方向および加工方向を説明するためのものである。
【0110】
図10の(a)を参照すると、レーザービーム照射装置10は横方向に広く振動しながらも加工方向に沿ってレーザービームを出力することができる。
【0111】
これに伴い、レーザービーム照射装置10は被照射体STがウェハで具現される場合、グルービング(grooving)、スクライビンググ(scribing)、リムービング(removing)およびグラインディング(grinding)のうち少なくともいずれか一つの加工を遂行できる。
【0112】
図10の(b)を参照すると、レーザービーム照射装置10は縦方向(鉛直方向)に狭く深く振動しながらも横方向に沿ってレーザービームを出力することができる。
【0113】
これに伴い、レーザービーム照射装置10は被照射体STがウェハで具現される場合、ダイシング(dicing)加工を遂行できる。
【0114】
図11は、本開示の例示的な実施例に係る加工方向および入射角度を説明するためのものである。
【0115】
図11の(a)、(b)および(c)をそれぞれ参照すると、レーザービーム照射装置10は入射角度により正方向加工、直角(鉛直方向)加工および逆方向加工を遂行できる。正方向加工の場合、レーザービーム照射装置10は被照射体STにレーザービームを加工方向に対して鋭角θ1で出力することができる。直角(鉛直方向)加工の場合、レーザービーム照射装置10は被照射体STにレーザービームを加工方向に対して直角θ2で出力することができる。逆方向加工の場合、レーザービーム照射装置10は被照射体STにレーザービームを加工方向に対して鈍角θ3で出力することができる。それぞれの加工方法の用途および効用性は前述したので省略することにする。
【0116】
本開示の例示的な実施例によると、レーザービーム照射装置10はレーザービームの入射角度により被照射体STに浸透する深さが異なり得る。例えば、第1深さだけ食刻をしようとする場合、レーザービーム照射装置10は直角加工を遂行でき、第1深さより浅い第2深さだけ食刻をしようとする場合、レーザービーム照射装置10は正方向加工または逆方向加工を遂行できる。
【0117】
図12および
図13は、本開示の例示的な実施例に係る半導体加工結果による品質を比較例とともに説明するための電子顕微鏡映像である。
【0118】
図12の(a)は比較例により被照射体STをダイシングした断面図であり、
図12の(b)は本開示の例示的な実施例により被照射体STをダイシングした断面図である。
【0119】
比較例によると、表面と断面にいずれも非均質な領域が発生して加工品質が劣化していることを確認することができる。
【0120】
しかし、本開示の例示的な実施例によると、なめらかな断面を確認することができ、表面もレーザーによる裂け現象が発生せず、加工品質が優秀であることを確認することができる。
【0121】
図13の(a)および(b)は、それぞれ比較例および本開示の例示的な実施例により線幅だけ加工した半導体を鉛直方向で撮影したイメージである。
【0122】
比較例によると、振動なしに強いレーザービームを加工方向に照射することによって、レーザーの強い熱によってターゲット領域ではない部分まで被照射体が毀損したことを確認することができる。
【0123】
しかし、本開示の例示的な実施例によると、適切な強度を有するレーザービームを振動方向に振動させながらも加工方向に照射するので、ターゲット領域以外の部分にはレーザーによる毀損を見つけることができない。
【0124】
以上でのように図面と明細書で例示的な実施例が開示された。本明細書で特定の用語を使って実施例を説明したが、これは単に本開示の技術的思想を説明するための目的で使われたものであり、意味の限定や特許請求の範囲に記載された本開示の範囲を制限するために使われたものではない。したがって、本技術分野の通常の知識を有する者であればこれから多様な変形および均等な他の実施例が可能であるという点が理解できるであろう。したがって、本開示の真の技術的保護範囲は添付された特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。