(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】双輪キャスター
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20240326BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60B33/00 S
B60B33/00 F
F16F7/00 D
(21)【出願番号】P 2023111870
(22)【出願日】2023-07-07
【審査請求日】2023-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504305049
【氏名又は名称】株式会社ティーアンドエス
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】斉 真希
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭39-1147(JP,Y1)
【文献】特開2015-77966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0286914(US,A1)
【文献】米国特許第9956822(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00 - 33/08
A61G 5/02
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直軸回りに回転する回転軸部と、この回転軸部の下端から斜め下へ延びる腕部材と、この腕部材の下部に水平に取付けられる車軸と、この車軸の左端に取付けられる左車輪と、前記車軸の右端に取付けられる右車輪とからなる双輪キャスターであって、
前記腕部材は、前記車軸を支持する車軸支持部材と、この車軸支持部材を上下動可能に収納する空洞部と、この空洞部を囲う主リブを備え、
前記車軸支持部材は、御玉杓子形を呈し、頭に相当すると共に前記車軸を通す軸穴を有する車軸受け部と、尾に相当すると共に前記主リブに繋がる片持ちばね部とからなり、
前記空洞部に、圧縮コイルばねを収納するばね収納部を含み、前記圧縮コイルばねで、前記車軸受け部を前記主リブへ押し当てるようにすると共に前記左車輪及び前記右車輪が床面の段差を乗り越えるときの衝撃を前記片持ちばね部の撓みと前記圧縮コイルばねの縮みとにより吸収させるようにしたことを特徴とする双輪キャスター。
【請求項2】
請求項1記載の双輪キャスターであって、
前記空洞部は、前記左車輪及び前記右車輪で隠されていることを特徴とする双輪キャスター。
【請求項3】
請求項2記載の双輪キャスターであって、
前記左車輪及び前記右車輪は、前記片持ちばね部の一部及び前記圧縮コイルばねの一部を覗く窓部を少なくとも1個有していることを特徴とする双輪キャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーツケースに適した双輪キャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
旅行者は、衣類など旅行に必要な品(以下、内容物と言う。)を、スーツケースや鞄や大型バッグ(以下、単にスーツケースと言う。)に詰めて持ち歩く。中型以上のスーツケースは、必然に重くなるため、底にキャスターを備えるものが主流である。キャスターに付属する車輪が床面や路面(以下、床面と言う。)を回転するため、旅行者はスーツケースを横に引くだけで済む。
【0003】
ところで、床面には、貼り付けた点字ブロックや、敷いた絨毯や、敷いたカーペットや、床タイルの継ぎ目や、その他の凹凸が存在する。これらを一括して、本発明では段差と言う。
【0004】
車輪が段差を乗り越えるときに、スーツケースが上下する。この上下動は内容物及びスーツケース自体に衝撃を与える。スーツケース自体及び内容物の保護の観点から、上下動を緩和することが望まれる。
【0005】
そこで、従来、緩衝キャスターが実用化されてきた。緩衝キャスターには、各種の構造が知られている(例えば、特許文献1(
図2、
図6)参照)。
【0006】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8(a)~(d)は従来の緩衝キャスターの基本構成と作用を説明する図である。
図8(a)に示すように、緩衝キャスター100は、スーツケースの底に固定されるベース部材101と、このベース部材101へ鉛直軸102回りに旋回自在に取付けられたフォーク部材103と、このフォーク部材103の下端に水平に渡された車軸104と、この車軸104で支持される車輪105とからなる。
【0007】
図8(b)に示すように、フォーク部材103は、鉛直軸102に沿って延びる旋回軸受部106と、この旋回軸受部106の下端から斜め下へ延びる腕部107とからなる。
腕部107には、それの長手軸に沿って瓢箪(ひょうたん)形の空隙部108が設けられ、この空隙部108に振動吸収材109が詰められている。
瓢箪形の空隙部108の略中央下方位置にて、腕部107に車軸104が取付けられる。
【0008】
図8(c)に示すように、無負荷状態では、空隙部108の中央の幅は、W1が維持される。車輪105が床面の段差に乗ると車軸104に上向き力が加わる。すると、空隙部108の下部中央点111が上昇する。空隙部108の上部中央点112は変位しない。
【0009】
結果、
図8(d)に示すように、空隙部108の中央の幅は、W1より小さなW2に変化する。(W1-W2)だけ振動吸収材109が圧縮されるため、振動吸収材109は衝撃を吸収する。同時に、腕部107の一部(空隙部108より下の部分)が弾性変形するため、腕部107でも衝撃を吸収する。
【0010】
車輪105が段差を過ぎて上向き力が消失すると、腕部107は復元して、
図8(c)に戻る。
【0011】
以上により、車輪105が走行する際に衝撃が緩和される緩衝キャスター100が提供される。しかし、この緩衝キャスター100には、次に述べる問題点が存在する。
第1に、
図8(c)、(d)で説明した(W1-W2)が小さい。(W1-W2)が小さいと、大きな段差に対応できない。仮に、(W1-W2)を大きくすると、フォーク部材103が大きくなり、外観性に影響が出ると共に重量増加及びコストアップを招く。
コストアップをすることなく、衝撃吸収性能を高めることが求められる。
【0012】
第2に、長期間使用し段差を乗り越える回数の累積が増大すると、疲労が蓄積し、
図8(d)に示す空隙部108の一端(又は両端)に亀裂113が入る。
対策として、フォーク部材103を厚肉にすると、重量増加及びコストアップを招く。
【0013】
第3に、
図8(b)に示すように、瓢箪形の空隙部108が外から見えるため、外観性が低下する。
【0014】
よって、衝撃吸収性能が高く、さらには外観性の良い緩衝キャスターが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、衝撃吸収性能が高く、さらには外観性の良い緩衝キャスターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、鉛直軸回りに回転する回転軸部と、この回転軸部の下端から斜め下へ延びる腕部材と、この腕部材の下部に水平に取付けられる車軸と、この車軸の左端に取付けられる左車輪と、前記車軸の右端に取付けられる右車輪とからなる双輪キャスターであって、
前記腕部材は、前記車軸を支持する車軸支持部材と、この車軸支持部材を上下動可能に収納する空洞部と、この空洞部を囲う主リブを備え、
前記車軸支持部材は、御玉杓子形を呈し、頭に相当すると共に前記車軸を通す軸穴を有する車軸受け部と、尾に相当すると共に前記主リブに繋がる片持ちばね部とからなり、
前記空洞部に、圧縮コイルばねを収納するばね収納部を含み、前記圧縮コイルばねで、前記車軸受け部を前記主リブへ押し当てるようにすると共に前記左車輪及び前記右車輪が床面の段差を乗り越えるときの衝撃を前記片持ちばね部の撓みと前記圧縮コイルばねの縮みとにより吸収させるようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の双輪キャスターであって、
前記空洞部は、前記左車輪及び前記右車輪で隠されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の双輪キャスターであって、
前記左車輪及び前記右車輪は、前記片持ちばね部の一部及び前記圧縮コイルばねの一部を覗く窓部を少なくとも1個有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明では、片持ちばね部を撓ませることと、圧縮コイルばねを縮めることの2つの作用で、衝撃を吸収する。
従来の瓢箪形の空隙部に比較して、本発明の片持ちばね部は上へ大きく撓ませることができる。結果、本発明により、衝撃吸収性能が高い緩衝キャスターが提供される。
【0021】
請求項2に係る発明では、空洞部は、左車輪及び右車輪で隠されているため、外観性が良好になる。結果、本発明により、衝撃吸収性能が高く且つ外観性の良い緩衝キャスターが提供される。
【0022】
請求項3に係る発明では、左車輪及び右車輪は、片持ちばね部及び圧縮コイルばねを覗く窓部を少なくとも1個有している。万一、片持ちばね部と圧縮コイルばねとの両方又は一方がへたったときに、左車輪又は右車輪を外すことなく、片持ちばね部と圧縮コイルばねの状態を目視し、対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る双輪キャスターの正面図である。
【
図3】
図2の3-3矢視図であり、腕部材の側面図である。
【
図4】(a)、(b)は腕部材の作用説明図である。
【
図5】(a)は比較例1を説明する図、(b)は比較例2を説明する図である。
【
図7】(a)、(b)は、双輪キャスターの変更例を説明する図である。
【
図8】(a)~(d)は、従来の緩衝キャスターの基本構成と作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0025】
[双輪キャスター]
図1に示すように、双輪キャスター10は、スーツケースの底に取付けられるベース部材11と、このベース部材11に鉛直軸12a回りに回転可能に取付けられる回転軸部12と、この回転軸部12の下端から下へ延びる腕部材20と、この腕部材20の下部に取付けられる車軸(
図2、符号13)と、この車軸の左端に取付けられる左車輪14及び車軸の右端に取付けられる右車輪15とからなる。
【0026】
図2に示すように、腕部材20と、車軸13と、左車輪14と、右車輪15とが主要部材となる。なお、車軸13は一端に頭部16を有し、先端にクリップ17が取付けられ、左車輪14及び右車輪15を外れないように保持する。ただし、車軸13の構造は適宜変更して差し支えない。
【0027】
また、左車輪14と腕部材20の間に穴開き円板18を介在させ、回転する左車輪14で腕部材20のボス34が摩耗しないように対策を講じる。同様に、右車輪15と腕部材20の間に穴開き円板18を介在させる。
【0028】
[腕部材]
図3に示すように、鉛直軸12aに沿って延びる回転軸部12の下端から斜め下へ腕部材20が延びている。この腕部材20は、空洞部21を有するブロックである。このブロックは、樹脂成形品又は軽金属成形品が好ましい。
腕部材20は、空洞部21を囲う主リブ22と、この主リブ22に接する複数個の肉抜き部23と、これらの肉抜き部23を囲う副リブ24と、主リブ22から空洞部21へ延びる車軸支持部材30とからなる。
【0029】
[車軸支持部材]
図3に示すように、車軸支持部材30は、いわゆる御玉杓子(おたまじゃくし)形を呈し、頭に相当する車軸受け部31と、尾に相当する片持ちばね部32とからなり、片持ちばね部32の先端が主リブ22に繋がっている。車軸受け部31は車軸(
図2、符号13)を通す軸穴33及びこの軸穴33を囲うボス34を有する。
【0030】
片持ちばね部32は、好ましくは、実施例のように、車軸受け部31側に対して先端(主リブ22に繋がる側)の高さ寸法を小さくする。すなわち、尾のように付け根に対して先端を細くする。この構造の利点は次の通りである。
片持ちばね部32を、同じ曲率で全体的に曲げるのではなく、先端近傍を大きく曲げる。
【0031】
このことにより、左車輪14(及び右車輪15)が段差に乗ったときに、車軸受け部31が上方へ素早く移動する。段差を過ぎると、車軸受け部31が下方へ素早く移動する。
尾の太さが一定であるよりも、尾が先細り形状であれば、段差に対する追従性が良くなり、結果、衝撃がより効果的に緩和される。
【0032】
ただし、尾の先端の応力が最大となることに加えて、尾の先端の断面積が小さいため、ここでの応力が最大になる。長期間の使用後に、車軸支持部材30が傷むことは想定される。この場合、損傷部位は尾の先端に集中する。
この集中する部位、すなわち、尾(片持ちばね部32)の先端を、後述の
図6で説明する窓部19で監視するようにすることが望ましい。クラックが認められるなどの不具合を発見することができれば、大事に至る前に修理等の手当を講じることができるからである。
【0033】
図4(a)に示すように、片持ちばね部32は、腕部材20の中心軸20aに、ほぼ平行に延びている。
【0034】
図3に示すように、空洞部21は図面表裏方向に貫通しているが、複数個の肉抜き部23は図面表裏方向に非貫通である。しかし、複数個の肉抜き部23の存在により、腕部材20は、十分に軽量となる。
【0035】
空洞部21は、圧縮コイルばね40を収納するばね収納部25を有する。このばね収納部25に臨む部位において、主リブ22に上部ばね座26が一体形成されている。
車軸受け部31に、下部ばね座35が一体形成されている。
【0036】
上部ばね座26と下部ばね座35の間に圧縮コイルばね40がセットされる。圧縮コイルばね40の中心を通るばね軸41は、上部ばね座26の中心と下部ばね座35の中心と軸穴33の中心を通る。
ばね軸41は、片持ちばね部32の長手軸と概ね90°をなす位置に設けられている。
【0037】
以上の構成からなる腕部材20の作用を、
図4(a)、(b)に基づいて説明する。
図4(a)に示すように、圧縮コイルばね40の反力により、車軸受け部31が主リブ22に押し当てられる。
【0038】
圧縮コイルばね40の設定は任意であるが、スーツケースに所定重さの内容物が詰められているときであっても、車軸受け部31が主リブ22に接しているようにすることが推奨される。所定重さとは、スーツケース一杯分の衣類の重さを指す。
この推奨に従えば、スーツケースを床に置いたとき、及び段差がない床面をスーツケースが横移動するときは、概ね
図4(a)の状態が保たれる。
【0039】
スーツケースが床面の段差に差し掛かると、車軸13に上向き力が加わる。
図4(b)に示すように、片持ちばね部32が上へδだけ撓み、圧縮コイルばね40がδだけ縮む。
片持ちばね部32は、片持ちばねであり、片持ちばね部32のばね常数と撓み量δの積が、反力となる。
圧縮コイルばね40は、ばね常数と縮み量δの積が、反力となる。
【0040】
(片持ちばね部32の反力+圧縮コイルばね40の反力)=上向き力の算式により、上向き力と、(片持ちばね部32の撓みと圧縮コイルばね40の縮みによる反力の和)とが釣り合ったときに、
図4(b)の形態が定まる。
すなわち、段差による衝撃は、片持ちばね部32の撓みと圧縮コイルばね40の縮みとにより、吸収される。
段差を過ぎると、
図4(a)に戻る。
【0041】
[比較例1]
本発明の実施例が、比較例より優れていることを、
図5(a)、(b)に基づいて説明する。
図5(a)は比較例1を示す。比較例1での緩衝キャスター120は、ベース部材121と、このベース部材121に下から取付けられるボルト122と、このボルト122の下端から斜め下へ延びる腕部材123と、この腕部材123の下端に回転自在に取付けられる車輪124とからなり、ベース部材121と腕部材123との間に圧縮コイルばね125が設けられている。
【0042】
床面の段差126に車輪124が乗ると圧縮コイルばね125が縮み、車輪124が段差126を過ぎると元に戻る。
しかし、比較例1の構造では、ボルト122が必然的に長くなり、段差126を越える度にボルト122に曲げが掛かる。曲げに耐えるようにボルト122の外径を増す必要があり、緩衝キャスター120は重くなる。
【0043】
[比較例2]
図5(b)は比較例2を示す。この比較例2ではボルト132が短い。
比較例2での緩衝キャスター130は、ベース部材131と、このベース部材131に下から取付けられるボルト132と、このボルト132の下端から斜め下へ延びる腕部材133と、この腕部材133の下端に回転自在に取付けられる車輪134とからなり、腕部材133にくびれ部135が設けられている。
【0044】
床面の段差136に車輪134が乗るとくびれ部135が変形し、車輪134が段差136を過ぎると元に戻る。ボルト132は短いため、ボルト132の外径は小さくて差し支えないという利点がある。反面、くびれ部135が外から見える場合は、外観性が低下するという欠点がある。
【0045】
ところで、腕部材133は樹脂や軽金属で製造される。樹脂や軽金属は、クリープが不可避的に発生する。クリープとは、物体に一定の荷重を加えることで、時間と共に物体がじわじわと永久変形していく現象を言う。
【0046】
比較例2の構造では、長時間使用後にくびれ部135に永久変形が発生し、元に戻らなくなり、遂にはくびれ部135が破断する。
破断を回避するために、くびれ部135の断面積を大きくすると、変形能が減少し、段差136を越える度に、ベース部材131が上下することとなる。この上下により、スーツケースが上下し、使い勝手が悪くなる。
【0047】
[本発明の利点]
この点、本発明によれば、段差を乗り越えるときは、
図4(b)に示すように、片持ちばね部32の穏やかな撓みにより、スーツケースに及ぼす衝撃が緩和される。
加えて、片持ちばね部32は、上下に撓む性質を有する片持ち梁であるため、車軸13は容易に上方へ変位する。そのため、従来よりも衝撃吸収性能が高い緩衝キャスター10が提供される。
【0048】
また、本発明によれば、殆どの時間(スーツケースが空であるときから所定重さの内容物が詰められているときまで)は、
図4(a)に示すように、圧縮コイルばね40の力で車軸受け部30は主リブ22に押し当てられている。この状態では、片持ちばね部32は撓んでいないため、クリープは起こらない。
【0049】
加えて、
図4(a)において、図面表裏方向の幅(片持ちばね部32の幅)を大きくすることができ、片持ちばね部32での応力を下げることができる。応力が低ければ、疲労による亀裂の発生は起こらない。
結果、本発明の構造により、クリープや亀裂の発生が起こりにくい緩衝キャスター10が提供される。
【0050】
図6に示すように、腕部材20の大部分は、左車輪14及び右車輪15で隠されており、
図3で説明した空洞部21は見えない。結果、外観性が大幅に向上する。
【0051】
内容物に金属製品や本や紙製品が多く含まれると、内容物の重さは所定の重さを越える。この頻度が大きいと、
図3に示す片持ちばね部32や圧縮コイルばね40に、「へたり」が起こる可能性はゼロとは言えない。
【0052】
[窓部]
そこで、好ましくは、
図6に示すように、左車輪14及び右車輪15に、片持ちばね部32の一部や圧縮コイルばね40の一部を覗いて確認することができる窓部19を設ける。窓部19の横寸法は、ばね収納部(
図3、符号25)の幅と同じとする。
【0053】
片持ちばね部32と圧縮コイルばね40の両方又は一方に不具合が疑われるときに、左車輪14又は右車輪15を取り外すことなく、窓部19から覗くことで、状態を調べることができる。
窓部19は、90°ピッチで設けられる4個が望ましい。
第1に、最大90°左車輪14(又は右車輪15)を手で回すことで、
図6に至る。
第2に、
図6において、片持ちばね部32と圧縮コイルばね40の両方を覗くことができる。
第3に、窓部19が等ピッチに配置され、バランスが取れており、意匠性が高まる。
【0054】
[窓部に係る変更例]
図7(a)に示すように、窓部19は、1個であってもよい。
図7(a)から、左車輪14(又は右車輪15)を90°時計回りに回すことで、窓部19を片持ちばね部(
図6、符号32)に合わせることができる。
すなわち、1個の窓部19で、片持ちばね部(
図6、符号32)と圧縮コイルばね40の一方を、選択して覗くことができる。
【0055】
また、
図7(b)に示すように、窓部19は、一対(2個)であってもよい。片持ちばね部32と圧縮コイルばね40の両方を覗くことができる。
ただし、時計で言うと12時と3時の位置に窓部19が設けられているため、バランスが取れているとは言えず、意匠性の点では4個よりは劣る。
また、1個と2個を比較した場合、1個の方が目立ちにくく、意匠性が優れている。
【0056】
すなわち、左車輪14及び右車輪15は、片持ちばね部32の一部及び圧縮コイルばね40の一部を覗く窓部19を少なくとも1個有してれば、片持ちばね部32と圧縮コイルばね40を目視することが可能となり、窓部19の数は、使い勝手と意匠性の両方を考量して、4個、2個又は1個から選択すればよいこととなる。
【0057】
なお、所定の使用回数で片持ちばね部32や圧縮コイルばね40がへたることがなければ、窓部19を無くして、左車輪14又は右車輪15の外観性を高めることは差し支えない。
【0058】
また、本発明の双輪キャスター10は、スーツケースや鞄の底に取付ける他、台車、キャビネット、キャリア又は同等の移動体に取付けることは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の双輪キャスターは、スーツケースに好適である。
【符号の説明】
【0060】
10…双輪キャスター、12…回転軸部、12a…鉛直軸、13…車軸、14…左車輪、15…右車輪、19…窓部、20…腕部材、21…空洞部、22…主リブ、25…ばね収納部、30…車軸支持部材、31…車軸受け部、32…片持ちばね部、33…軸穴、40…圧縮コイルばね、126、136…段差。
【要約】
【課題】衝撃吸収性能が高い緩衝キャスターを提供する。
【解決手段】緩衝キャスターの要部である腕部材(20)は、車軸支持部材(30)と、この車軸支持部材(30)を収納する空洞部(21)と、空洞部(21)を囲う主リブ(22)を備える。車軸支持部材(30)は、御玉杓子形を呈し、頭に相当する車軸受け部(31)と、尾に相当する片持ちばね部(32)とからなる。空洞部(21)にばね収納部(25)を含み、このばね収納部(25)に収納した圧縮コイルばね(40)で、車軸受け部(31)を主リブ(22)へ押し当てるようにした。
【選択図】
図3