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特許7460270プロテクタおよびワイヤハーネスの配索方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】プロテクタおよびワイヤハーネスの配索方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240326BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02G3/04 087
B60R16/02 623V
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019237536
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106478
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】澤井 裕也
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213378(JP,A)
【文献】実開昭63-131516(JP,U)
【文献】実開平01-166415(JP,U)
【文献】特開平06-165341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの電線を保護するプロテクタであって、
矩形状の底板、前記底板の長手方向に沿った一端縁から立ち上がる第1側壁および前記底板の長手方向に沿った他端縁から立ち上がる第2側壁を有し、前記底板上で前記第1側壁と前記第2側壁とに挟まれる空間が電線収容空間であり、前記第1側壁の先端縁と前記第2側壁の先端縁との間が前記電線収容空間を前記底板側と反対側に開放する開口であり、前記電線が前記開口を通して前記電線収容空間に収容されるベースと、
前記開口を開閉するカバーと、を含み、
前記底板には、前記ワイヤハーネスのアッセンブリの際に前記電線の保持に使用される電線保持治具が有する棒状部をそれぞれ挿通可能な2つの挿通孔が貫通して形成され、
前記カバーは、前記開口を閉じたときに前記挿通孔に対して前記挿通孔の中心線の方向に対向する切れ目で分割されており、
2つの前記挿通孔は、前記底板上で前記第1側壁と前記第2側壁とに挟まれ、かつ、前記切れ目から前記中心線の方向に露出する位置において、前記第1側壁と前記第2側壁との対向方向に並べて前記底板の端に設けられている、プロテクタ。
【請求項2】
前記底板には、前記カバーの分割部分が並ぶ方向の一方側の端縁から前記一方側に延出する延出部が形成されている、請求項1に記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの電線を保護するプロテクタおよびワイヤハーネスの配索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、電装品への電力供給や信号伝達のためのワイヤハーネスが配索される。他部材との干渉からワイヤハーネスの電線の保護を図る必要がある箇所などでは、電線が樹脂製のプロテクタに挿通される。
【0003】
ワイヤハーネスの組み立て(アッセンブリ)には、組立図板(布線板)が用いられる。組立図板には、プロテクタ固定治具および複数の電線保持治具が配設されている。プロテクタ固定治具は、組立図板にプロテクタを固定するための治具であり、プロテクタの形状に応じて専用設計されている。プロテクタは、電線を受け入れる開口が形成されたベースと、ベースの開口を開閉するカバーとを備えている。電線保持治具は、組立図板に立設されており、組立図板に対して垂直に延びる垂直部と、垂直部の先端に略U字状に形成されたU字状部とを一体に有している。
【0004】
複数の電線が各電線保持治具のU字状部に順に通される。プロテクタは、2つの電線保持治具の間に配置されており、その2つの電線保持治具の間において、複数の電線がプロテクタのベース内に開口を介して収容される。そして、複数の電線が結束バンドなどでプロテクタのベースに纏めて固定された後、プロテクタのカバーが閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-207924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、プロテクタ固定治具は、プロテクタの専用設計品であるため、プロテクタの形状が変更される度に新規に設計する必要がある。そのため、プロテクタ固定治具は、多くの種類のワイヤハーネスに汎用される電線保持治具と比較して高価である。
【0007】
また、一部の電線がプロテクタのベースから浮き上がり、カバーを閉じる際に、その浮き上がった電線をベースとカバーとの間に噛み込むおそれがある。この電線の噛み込みを防止するため、電線がテープで束ねられる場合があるが、その場合、テープの追加および工数の増加に伴い、ワイヤハーネスのアッセンブリに要するコストが増大する。
【0008】
本発明の目的は、ワイヤハーネスのアッセンブリに要するコストの低減を図ることができるプロテクタ、およびそのプロテクタが電線に装着されたワイヤハーネスの配索方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るプロテクタは、ワイヤハーネスの電線を保護するプロテクタであって、底面上に電線収容空間および電線収容空間を底面側と反対側に開放する開口が設けられ、電線が開口を通して電線収容空間に収容されるベースと、開口を開閉するカバーとを含み、底面には、ワイヤハーネスのアッセンブリの際に電線の保持に使用される電線保持治具が有する棒状部を挿通可能な挿通孔が貫通して形成され、カバーは、開口を閉じたときに挿通孔に対して挿通孔の中心線の方向に対向する切れ目で分割されている。
【0010】
この構成によれば、ワイヤハーネスを構成する電線は、ベースの電線収容空間に開口を通して収容される。ワイヤハーネスのアッセンブリには、通常、電線保持治具が立設された組立図板が用いられる。電線保持治具は、種々のワイヤハーネスの電線の保持に汎用されるものであり、棒状部を有している。ベースの底面には、電線保持治具の棒状部を挿通可能な挿通孔が貫通して形成されている。その挿通孔に組立図板に立設された電線保持治具の棒状部を挿通させることにより、ベースを組立図板に対して位置決めすることができる。したがって、プロテクタを組立図板に対して固定(位置決め)するための専用の治具が不要となり、ワイヤハーネスのアッセンブリに要するコストを低減させることができる。
【0011】
また、ベースの開口を開閉するカバーは、開口を閉じたときに挿通孔に対して挿通孔の中心線の方向に対向する切れ目を有し、その切れ目で分割されている。そのため、電線保持治具の棒状部の長さがプロテクタのベースの高さを超えていても、カバーを閉じることができる。そして、棒状部の長さが長く、電線が棒状部を越えることが抑制されるので、カバーが閉じられるときに、ベースとカバーとの間に電線が噛み込まれることを抑制できる。そのため、一部の電線がベースから浮き上がることを防止するために、電線をテープで束ねる必要がなく、テープの追加および工数の増加によるコストの増大を回避することができる。その結果、ワイヤハーネスのアッセンブリに要するコストをさらに低減させることができる。
【0012】
底面には、カバーの分割部分が並ぶ方向の一方側の端縁から当該一方側に延出する延出部が形成されていてもよい。
【0013】
この構成では、タイバンド(結束バンド)などの結束具で電線と延出部とを纏めて結束することにより、電線に対してプロテクタを固定できる。
【0014】
本発明の他の局面に係るワイヤハーネスの配索方法は、底面上に電線収容空間および電線収容空間を底面側と反対側に開放する開口が設けられたベースと、開口を開閉するカバーとを含み、底面に、ワイヤハーネスのアッセンブリの際に電線の保持に使用される電線保持治具が有する棒状部を挿通可能な挿通孔が貫通して形成され、カバーは、開口を閉じたときに挿通孔に対して挿通孔の中心線の方向に対向する切れ目で分割されているプロテクタが用意されて、ワイヤハーネスの電線が開口を通して電線収容空間に収容されて、カバーが閉じられることにより、プロテクタが電線に装着されたワイヤハーネスを配索する方法であって、車両に備えられるパネルに突設されたボスを挿通孔に挿通させた後、プロテクタをパネルに締結具で締結する。
【0015】
この方法によれば、プロテクタが配線に装着されたワイヤハーネスを車両に備えられるパネルに容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワイヤハーネスのアッセンブリに要するコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るプロテクタが電線に装着されたワイヤハーネスの斜視図である。
図2】プロテクタの斜視図である。
図3】プロテクタの平面図である。
図4】ワイヤハーネスのアッセンブリの途中の状態を示す斜視図であり、カバーが開かれた状態を示す。
図5】ワイヤハーネスのアッセンブリの途中の状態を示す斜視図であり、カバーが閉じられた状態を示す。
図6】プロテクタの斜視図であり、プロテクタが車両のパネルに取り付けられた状態を示す。
図7】プロテクタを車両のパネルに取り付ける構造の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
<ワイヤハーネス>
図1は、本発明の一実施形態に係るプロテクタ3が電線2に装着されたワイヤハーネス1の斜視図である。
【0020】
自動車などの車両には、電装品への電力供給や信号伝達のためのワイヤハーネス1が配索される。ワイヤハーネス1は、複数の電線2を束ねたものであり、電線2の末端には、コネクタなどが設けられている。また、他部材との干渉から電線2の保護を図る必要がある箇所などでは、電線2にプロテクタ3が装着される。
【0021】
<プロテクタ>
図2は、プロテクタ3の斜視図である。図3は、プロテクタ3の平面図である。
【0022】
プロテクタ3は、合成樹脂で一体に成形された樹脂成形品であり、ベース11およびカバー12を備えている。
【0023】
ベース11は、図1および図2に示されるように、断面略コ字状をなし、電線2が延在する方向に長く延びている。具体的には、ベース11は、略矩形状の底板(底面)21と、底板21の長手方向(以下、単に「長手方向」という。)に沿った一端縁から立ち上がる第1側壁22と、底板21の長手方向に沿った他端縁から立ち上がり、第1側壁22と平行をなして対向する第2側壁23とを有している。底板21上で第1側壁22と第2側壁23とに挟まれる空間は、電線2が収容される電線収容空間24であり、第1側壁22の先端縁と第2側壁23の先端縁との間を開口25として、その開口25により底板21側と反対側に開放されている。また、電線収容空間24は、長手方向の両側にも開放されている。
【0024】
底板21には、図3に示されるように、長手方向の略中央部に、2つの挿通孔26が第1側壁22と第2側壁23との対向方向である幅方向(以下、単に「幅方向」という。)に並べて端に形成されている。2つの挿通孔26は、底板21を貫通し、後述する電線保持治具41の棒状部44(図4参照)を挿通可能なサイズを有している。そして、2つの挿通孔26の間には、電線保持治具41における2つの棒状部44の間の距離に応じた間隔が空けられている。
【0025】
また、底板21には、長手方向の一方側の端縁から一方側に延出する延出部27が一体に形成されている。延出部27は、底板21と同じ厚みで幅方向の寸法が底板21よりも小さい四角板状をなし、第1側壁22側に片寄せて設けられている。
【0026】
第1側壁22の上端部の外面には、2つの係止枠28が形成されている。各係止枠28は、第1側壁22の外面から突出し、長手方向および高さ方向の両方と直交する高さ方向(以下、単に「高さ方向」という。)の両側に開放される四角枠状をなしている。
【0027】
また、第1側壁22の外面には、ボルト挿通枠29が形成されている。ボルト挿通枠29は、第1側壁22の外面から突出し、高さ方向の両側に開放される四角枠状をなしている。
【0028】
カバー12は、長手方向に2分割されている。カバー12の各分割部分31,32は、矩形板状をなし、ベース11の第2側壁23の先端縁(ヒンジ部)に接続されて、その先端縁を中心に回動可能に設けられている。各分割部分31,32は、回動により、ベース11の開口25を開閉する。各分割部分31,32の先端部は、開口25を開放する状態でベース11の第1側壁22の先端縁から離間し、開口25を閉鎖する状態で第1側壁22の先端縁に合わさる。分割部分31,32の間には、切れ目33が生じており、その切れ目33は、各分割部分31,32が開口25を閉鎖する状態で、ベース11の底板21の2つの挿通孔26と高さ方向に対向する。
【0029】
各分割部分31,32には、係止爪34が一体に形成されている。係止爪34は、ベース11の係止枠28に対応した位置に設けられ、各分割部分31,32の先端縁から各分割部分31,32の厚さ方向と直交する方向に延び、その厚さ方向の各分割部分31,32の内面側に屈曲している。係止爪34の先端部は、各分割部分31,32の先端縁側と反対側に突出し、先細りとなる断面楔状(断面三角形状)をなしている。
【0030】
<ワイヤハーネスのアッセンブリ>
図4および図5は、ワイヤハーネス1のアッセンブリの途中の状態(それぞれカバー12が開かれた状態およびカバー12が閉じられた状態)を示す斜視図である。
【0031】
ワイヤハーネス1のアッセンブリには、組立図板(図示せず)が用いられる。組立図板には、多数の電線保持治具41が立設されている。電線保持治具41は、ワイヤハーネス1を含む種々のワイヤハーネスのアッセンブリに汎用される汎用治具である。電線保持治具41は、組立図板に垂直に挿通される垂直部42と、垂直部42の先端に接続されて、垂直部42と直交する方向に延びる接続部43と、接続部43の両端部から垂直部42と反対側に互いに平行をなして延びる棒状部44とを備えている。
【0032】
ワイヤハーネス1を構成する電線2は、組立図板上の電線保持治具41を所定の順序で経由して引き回される。電線保持治具41を経由する電線2は、2つの棒状部44の間を通されて、接続部43に支持される。電線2の一部にプロテクタ3が装着される場合、その電線2の一部(以下、「プロテクタ装着部分」という。)が架け渡される2つの電線保持治具41A,41Bの間に、プロテクタ3が配置される。2つの電線保持治具41A,41Bの間には、別の電線保持治具41Cが立設されている。プロテクタ3は、ベース11の2つの挿通孔26に電線保持治具41Cの2つの棒状部44が挿通されることにより、組立図板に対して位置決めされ、その位置からの組立図板の表面に沿う方向の変位が規制される。
【0033】
その状態において、電線2が電線保持治具41の2つの棒状部44の間に通されていく。このとき、図4に示されるように、プロテクタ3のカバー12の各分割部分31,32が開かれており、電線2のプロテクタ装着部分は、プロテクタ3のベース11の開口25を通されて、ベース11の電線収容空間24に収容される。そして、プロテクタ3が装着される全ての電線2のプロテクタ装着部分が電線収容空間24に収容されると、電線収容空間24から長手方向の一方側に引き出されている電線2がタイバンドなどの結束具45(図1参照)で延出部27と纏めて結束される。これにより、プロテクタ3が電線2に対して固定される。その後、図5に示されるように、プロテクタ3のカバー12の各分割部分31,32が閉じられることにより、電線2へのプロテクタ3の装着が完了する。
【0034】
ワイヤハーネス1の完成後、電線2が電線保持治具41の2つの棒状部44の間から抜かれ、プロテクタ3が挿通孔26に挿通されている電線保持治具41Cの2つの棒状部44から抜かれることにより、ワイヤハーネス1が組立図板から取り外される。
【0035】
<ワイヤハーネスの配索>
図6は、プロテクタ3の斜視図であり、プロテクタ3が車両のパネル51に取り付けられた状態を示す。
【0036】
電線2にプロテクタ3が装着されたワイヤハーネス1は、車両に配索される。車両には、たとえば、バックドアを構成する内側パネルおよび外側パネルや運転席と助手席との間のフロントフロアパネルなどのパネル51が備えられている。ワイヤハーネス1が配索されるパネル51には、ボス52が突設されている。ボス52は、プロテクタ3のベース11の挿通孔26に挿通可能なサイズの扁平な円柱状をなしている。
【0037】
ワイヤハーネス1の配索時には、プロテクタ3のベース11の挿通孔26にボス52が挿通される。そして、ベース11のボルト挿通枠29にボルト53が上方から挿通されて、そのボルト53がパネル51に形成されているボルト穴(図示せず)にねじ込まれることにより、プロテクタ3がパネル51に固定される。
【0038】
<作用効果>
以上のように、ワイヤハーネス1を構成する電線2は、ベース11の電線収容空間24に開口25を通して収容される。ワイヤハーネス1のアッセンブリには、通常、電線保持治具41が立設された組立図板が用いられる。電線保持治具41は、種々のワイヤハーネスの電線の保持に汎用される汎用治具であり、2つの棒状部44を有している。ベース11の底板21には、電線保持治具41の2つの棒状部44を個々に挿通可能な挿通孔26が貫通して形成されている。その挿通孔26に組立図板に立設された電線保持治具41の2つの棒状部44を挿通させることにより、ベース11を組立図板に対して位置決めすることができる。したがって、プロテクタ3を組立図板に対して固定(位置決め)するための専用の治具が不要となり、ワイヤハーネス1のアッセンブリに要するコストを低減させることができる。
【0039】
また、ベース11の開口25を開閉するカバー12は、開口25を閉じたときに挿通孔26に対して高さ方向、つまり挿通孔26の中心線の方向に対向する切れ目33を有し、その切れ目33で分割されている。そのため、電線保持治具41の2つの棒状部44の長さがプロテクタ3のベース11の高さを超えていても、カバー12を閉じることができる。そして、2つの棒状部44の長さが長く、2つの棒状部44の間に通された電線2が棒状部44を越えることが抑制されるので、カバー12が閉じられるときに、ベース11とカバー12との間に電線2が噛み込まれることを抑制できる。そのため、一部の電線2がベース11から浮き上がることを防止するために、電線2をテープで束ねる必要がなく、テープの追加および工数の増加によるコストの増大を回避することができる。その結果、ワイヤハーネス1のアッセンブリに要するコストをさらに低減させることができる。
【0040】
底板21には、長手方向の一方側の端縁から当該一方側に延出する延出部27が形成されている。そのため、結束具45で電線2と延出部27とを纏めて結束することにより、電線2に対してプロテクタ3を容易に固定することができる。
【0041】
また、車両に備えられるパネル51に突設されたボス52を挿通孔26に挿通させた後、プロテクタ3をパネル51にボルト53で締結することにより、ワイヤハーネス1をパネル51に容易に取り付けることができる。また、ボス52を挿通孔26に挿通させるとき、作業者は切れ目33から挿通孔26を目視確認しながらボス52を挿通孔26に挿通させることができるので、ボス52を挿通孔26に挿通させる作業性がよい。また、挿通孔26は、ボルト(ねじ)のスタッド(ねじ山部)が挿通されることで、作業者がインパクトドライバなどを用いてボルトを締めるときのプロテクタ3の周り止めの機能も果たす。
【0042】
ボス52が挿通されない挿通孔26は、プロテクタ3のベース11内に水(液体)が進入した場合に水抜き穴として機能し、これにより、ベース11内に水が溜まることを抑制でき、電線2が水に浸かることを抑制できる。なお、ボス52が挿通される挿通孔26もボス52と挿通孔26との隙間を設けると、水抜き穴として機能する。
【0043】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0044】
たとえば、前述の実施形態では、プロテクタ3のベース11の底板21に2つの挿通孔26が形成され、これに応じて、プロテクタ3のカバー12が分割部分31,32に2分割されているとした。これに限らず、ベース11の底板21に幅方向に並ぶ2つの挿通孔26を1対として、その2つの挿通孔26の対が長手方向に間隔を空けて複数形成されていてもよい。この場合、カバー12には、閉じられた状態で2つの挿通孔26の各対と高さ方向に対向する位置に、切れ目33が形成されて、その切れ目33により、カバー12が3つ以上に分割されるとよい。
【0045】
また、切れ目33から突出する棒状部44は、2つに限られず、略J字状や略L字状などの形状で1つであってもよい。この場合、切れ目33を突き出る棒状部44が、カバー12の接続されたベース11の第2側壁23とは反対側の挿通孔26から突き出るようにしてもよい。このようにすることで、第2側壁23側はカバー12の閉じ回動により電線が噛みこまれず、第2側壁23とは反対側(第1側壁22側)は切れ目33を突き出る棒状部44によりベースとカバーとの間に電線が噛み込まれることを抑制できる。また、電線保持治具41が有する棒状部44は3つ以上であってもよく、この場合、挿通可能な挿通孔26は幅方向両端の2つに加えてその内側に1つまたは複数設け、挿通孔26は棒状部44に対応する位置に同数以上あればよい。
【0046】
また、パネル51にねじ穴(締結具)を設けてボルト挿通枠29にボルトを挿通させてプロテクタ3がパネル51に固定されるようにしたが、これに限られず、パネル51にねじ穴(締結具)を設けて、パネル51側からボルト61のスタッド(ねじ山部分)を突出させて、そのねじ山(ねじ足)部分に対してボルト挿通枠29を嵌め込むことで、ボルト挿通枠29内に設けられた挟持部62によりねじ山部分が挟持されて、プロテクタ3がパネル51に固定されるようにしてもよい。
【0047】
また、切れ目33からプロテクタ3のベース11内に侵入した水が電線2をつたって電線2のコネクタに行かないように、底板21が挿通孔26に対してプロテクタ3のベース11内に侵入した水を案内する案内形状(たとえば底板21が挿通孔26に傾斜している形状や底板21が挿通孔26に向かう溝を有する形状など)を有していてもよい。また、カバー12は、ベース11の第2側壁23の先端縁(ヒンジ部)に接続されてベース11と一体になっていることに限られず、ベース11と別体であってもよい。
【0048】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:ワイヤハーネス
2:電線
3:プロテクタ
11:ベース
12:カバー
21:底板(底面)
24:電線収容空間
25:開口
26:挿通孔
27:延出部
31,32:分割部分
33:切れ目
41:電線保持治具
44:棒状部
51:パネル
52:ボス
53:ボルト(締結具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7