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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】不織布の製造方法及び不織布の製造装置
(51)【国際特許分類】
   D06C 23/04 20060101AFI20240326BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240326BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240326BHJP
   D04H 13/00 20060101ALI20240326BHJP
   D06C 7/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
D06C23/04 Z
A61F13/15 352
A61F13/511 100
D04H13/00
D06C7/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020001050
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021110052
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正洋
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014876(JP,A)
【文献】特公昭49-020245(JP,B1)
【文献】特開2011-226010(JP,A)
【文献】特開2014-034145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06C 3/00-29/00
D04H 1/00-18/04
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ロールと押し込みネットとの間に、繊維ウェブ又は原料不織布を繊維材料として供給して凹凸賦形する不織布の製造方法であって、
前記支持ロールは、凸部と凹部とが該支持ロールの軸方向に沿って交互に配された凹凸面を表面に有し、
前記押し込みネットが、前記軸方向に平行な幅方向と、該幅方向に直交する長手方向とを有し、
前記押し込みネットには、前記凸部が遊挿される被遊挿部と前記凹部に遊挿される押し込み部とが、前記幅方向及び前記長手方向に沿って交互に配され、
前記押し込みネットが前記幅方向に複数に分割され、
前記凹凸面と前記押し込みネットとを、前記支持ロールの回転に合わせて遊挿させ、
前記遊挿の際に、前記凹凸面と前記押し込みネットとの間に前記繊維材料を介在させる、不織布の製造方法。
【請求項2】
前記支持ロールが加熱される加熱工程を有する、請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記繊維材料が前記繊維ウェブであり、
前記遊挿を行って前記繊維ウェブを凹凸賦形した後、前記加熱工程により、前記支持ロールの凹凸形状に沿わされた前記繊維ウェブの繊維同士を融着する、請求項2記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記支持ロールの凹凸面と前記押し込みネットとを遊挿したまま、前記繊維ウェブの繊維同士を融着する、請求項3記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記繊維材料が前記原料不織布であり、
前記加熱工程により、前記支持ロール上に配された前記原料不織布の繊維融着力を弱めた後、前記遊挿を行って前記原料不織布を凹凸賦形する、請求項2記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程が、前記繊維材料を支持した前記支持ロールに向けて熱風を吹き付ける工程である、請求項2~5のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
支持ロールと押し込みネットとの間に、繊維ウェブ又は原料不織布を繊維材料として供給して凹凸賦形する不織布の製造装置であって、
前記支持ロールは、凸部と凹部とが該支持ロールの軸方向に沿って交互に配された凹凸面を表面に有し、
前記押し込みネットが、前記軸方向に平行な幅方向と、該幅方向に直交する長手方向とを有し、
前記押し込みネットには、前記凸部が遊挿される被遊挿部と前記凹部に遊挿される押し込み部とが、前記幅方向及び前記長手方向に沿って交互に配され、
前記押し込みネットが前記幅方向に複数に分割され
前記凹凸面と前記押し込みネットとを、前記支持ロールの回転に合わせて遊挿させる、不織布の製造装置。
【請求項8】
前記支持ロールを加熱する加熱装置を有する、請求項7記載の不織布の製造装置。
【請求項9】
前記加熱装置が、前記繊維材料を支持した前記支持ロールに向けて熱風を吹き付けるものである、請求項8記載の不織布の製造装置。
【請求項10】
前記押し込みネットよりも下流側に、前記支持ロールの外周面と接する平滑ロールを有し、該平滑ロールが加熱機構を備える、請求項7~9のいずれか1項に記載の不織布の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造方法及び不織布の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、その液透過性や肌触りの良さから、吸収性物品の構成部材として用いられることが多い。吸収性物品に用いられる不織布についてこれまで物性等を改良する技術が提案されてきた。
例えば、特許文献1には、不織布の柔らかさや滑らかさを改良する装置として、上下一対の延伸ロールを備えた賦形装置が記載されている。上方の延伸ロールには、凸稜が、ロール幅方向に一定間隔で、かつロール外周面に沿って相互に平行に複数設けられている。隣り合う凸稜との間には凹溝が配されている。下方の延伸ロールには、その外周面に、凹溝と噛み合うように設けられた複数のピンを備えている。これらのピンはロール幅方向に対しては、上方の延伸ロールの凸稜に対して接触しないように、一定間隔で配設され、外周面に沿って一定間隔でほぼ直線的に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の賦形装置のように、対向配置された凹凸部材の互いの凸部を相手の凹部に遊挿させて繊維材料に凹凸賦形を行う場合、凸部同士の接触を防止することが必要となる。凸部同士を接触させずに凹部への遊挿を好適に行うことにより、繊維材料(繊維ウェブや不織布等)の凹凸賦形を良好に実施にでき、繊維材料の不測の損傷(穴あきや切れ)を防ぐことができる。
しかし、凸部同士の接触は、凹凸部材の幅方向の位置ズレによって生じることがある。凹凸部材の幅方向においては凸部間の空間が僅か数ミリメートル単位の狭いものであることが多く、凹凸賦形加工の最中に上記の位置ズレが生じるとその修正が難しい。同様の問題は、凹凸部材とネットとを対向させて凹凸賦形を行う場合にも起こり得る。特に、凹凸部材とネットとは異なる構造を有するものであり、構造に加えて素材も異なると、上記の位置ズレが一層生じやすくなる。
そのため、凹凸部材とネットとを用いた賦形加工において、凹凸部材又はネットの幅方向の位置をミリメートル単位で高精度に制御することが求められる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、凹凸賦形を行う際に、対向する凹凸部材とネットとの遊挿を好適に実行させることができる不織布の製造方法及び不織布の製造装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持ロールと押し込みネットとの間に繊維材料を供給して凹凸賦形する不織布の製造方法であって、前記支持ロールは、凸部と凹部とが該支持ロールの軸方向に沿って交互に配された凹凸面を表面に有し、前記押し込みネットが、前記軸方向に平行な幅方向と、該幅方向に直交する長手方向とを有し、前記押し込みネットには、前記凸部が遊挿される被遊挿部と前記凹部に遊挿される押し込み部とが、前記幅方向及び前記長手方向に沿って交互に配され、前記押し込みネットが前記幅方向に複数に分割され、前記凹凸面と前記押し込みネットとを、前記支持ロールの回転に合わせて遊挿させ、前記遊挿の際に、前記凹凸面と前記押し込みネットとの間に前記繊維材料を介在させる、不織布の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、支持ロールと押し込みネットとの間に繊維材料を供給して凹凸賦形する不織布の製造装置であって、前記支持ロールは、凸部と凹部とが該支持ロールの軸方向に沿って交互に配された凹凸面を表面に有し、前記押し込みネットが、前記軸方向に平行な幅方向と、該幅方向に直交する長手方向とを有し、前記押し込みネットには、前記凸部が遊挿される被遊挿部と前記凹部に遊挿される押し込み部とが、前記幅方向及び前記長手方向に沿って交互に配され、前記押し込みネットが前記幅方向に複数に分割されている、不織布の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の不織布の製造方法及び不織布の製造装置によれば、凹凸賦形を行う際に、対向する凹凸部材とネットとの遊挿を好適に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の不織布の製造装置の好ましい一実施形態を模式的に示した断面図である。
図2図1に示した製造装置の支持ロール表面の好ましい一例を示した部分斜視図である。
図3図2に示した支持ロールの部分断面図である。
図4】押し込みネットと支持ロールとを一部噛み合わせた状態の一例を模式的に示した斜視図である。
図5】支持ロールの凸部及び凹部と押し込みネットとの配置関係を示した部分断面図である。
図6】押し込みネットの好ましい一例(第一実施形態)を示した概略正面図である。
図7】押し込みネットの別の好ましい一例(第二実施形態)を示した概略正面図である。
図8】(A)は押し込みネットの別の好ましい一例(第三実施形態)を示した概略正面図であり、(B)は該一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の不織布の製造方法を実施する製造装置について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の不織布の製造装置1は、対向配置された支持ロール10と押し込みネット21とを有する。支持ロール10と押し込みネット21との間に繊維材料(図示せず)を供給して凹凸賦形する。ここで言う「繊維材料」とは、繊維の集合体でシート状にされたものを言い、例えば不織布や繊維ウェブを含む。「不織布」とは、繊維の集合体における繊維同士が、その交点において結合されているものや、繊維同士の交絡によって容易には分離しないようになったものを言う。例えば、繊維同士がその交点において熱融着や接着剤により結合されているもの(サーマルボンド不織布やレジンボンド不織布等)や、水流の圧力により繊維同士を交絡させているもの(スパンレース不織布等)を含む。「繊維ウェブ」とは、繊維の集合体における繊維同士が結合される前の状態の物を言い、いわば不織布化する前の素材である。
【0012】
支持ロール10は、凸部11と凹部12とが該支持ロール10の軸方向X1に沿って交互に配された凹凸面を、表面10Sに有する。凹部12の底部表面が、支持ロール10の表面10Sである。これにより、支持ロール10は、表面10S上に軸方向X1に沿って凹凸面を有する凹凸部材である。
また、支持ロール10の表面10Sが有する凹凸面は、該支持ロール10の軸方向X1だけでなく、周方向Y1にも沿って交互に配されたものであることが好ましい。すなわち、図2及び3に示すように、凸部11が支持ロール10の表面10Sの軸方向X1及び周方向Y1に等間隔で配され、凹部12が各凸部11の周りを縦横に囲んで支持ロール10の表面10Sに格子状に連続した形態で配されていることが好ましい。
【0013】
支持ロール10は、ドラム形状であってもよい。ドラム形状とは、中空の円筒形態を意味する。
【0014】
支持ロール10は、凸部11の間に、表面10Sから裏面に貫通する複数の開孔(図示せず)を有することが好ましい。開孔があることにより、風が支持ロール10を吹き抜けやすく、繊維材料が乱れたり飛散したりすることを抑制することができる。これにより繊維材料のムラを抑えて均質化でき、繊維材料の硬化を抑えた賦形を可能にする。また、風が支持ロール10を吹き抜けることによって、繊維材料を凸部11の頂部から支持ロール10に至るまで押し込みやすく、高さのある凹凸形状をより明確にして効率よく賦形することができる。更に、凸部11の壁面に沿った繊維材料の配向性が、風の吹き抜けによってより顕著になる。これにより嵩高く柔らかな肌触りの不織布を効率よく製造することができる。
【0015】
凸部11の壁面は、全て支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることが好ましい。凸部11の壁面が表面10Sに対して垂直である支持ロール10を用いることによって、従来よりも嵩高く柔らかい不織布の製造が可能となる。
「凸部11の壁面が全て支持ロール10の表面10Sに対して垂直である」とは、壁面のどの位置においても支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることを言う。例えば、凸部11が角柱のように角のある柱体である場合は、壁面を構成する角に挟まれた各面がいずれも支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることを言う。凸部11が円柱のように角が無い柱体である場合は、壁面を構成する曲面のいずれの地点の面においても支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることを言う。
「支持ロール10の表面10Sに対して垂直である」とは、支持ロール10の表面10Sを基準にして壁面の立設する方向が垂直であることを言う。例えば図3に示すように、支持ロール10の表面10Sが外側に凸にした円弧状の湾曲面である場合は、支持ロール10の側面視した端面において、壁面の支持ロール10側の根元から頂部側までの外形線と、凸部11の幅中心地点Pにおける表面10Sの円弧に対する接線Jとがなす角度θが垂直であることを言う。本発明においては、壁面は、凸部11のどの位置における断面又は側面視した端面についても全て、下記に定義する「垂直」の状態にあることが好ましい。
「垂直」とは、支持ロール10の表面10Sに対して88°以上92°以下であることを言い、好ましくは89°以上、より好ましくは89.5°以上であり、また、好ましくは91°以下、より好ましくは90.5°以下である。
支持ロール10の表面10Sに対する壁面の角度は、株式会社東京精密製MICURAを用いて測定することができる。測定する壁面に直交する方向の凹部12の開孔以外の点5ヶ所から支持ロール10の表面10S(平面又は曲面)の位置を測定し、さらに、壁面の高さ方向の点3ヶ所から壁面の位置を測定し、両者の位置関係から角度を導く。
【0016】
凸部11の高さは、クッション性を向上させる観点から凸部11の最大径の1.5倍以上であることが好ましく、クッション性をより向上させる観点から凸部11の最大径の2倍以上がより好ましく、クッション性を更に向上させる観点から凸部11の最大径の3倍以上が更に好ましい。
また、凸部11の高さは、賦形後の形状を安定させる観点から凸部11の最大径の10倍以下であることが好ましく、賦形後の形状をより安定させる観点から凸部11の最大径の9倍以下であることがより好ましく、賦形後の形状を更に安定させる観点から凸部11の最大径の8倍以下であることが更に好ましい。
なお、凸部11についての「最大径」とは、支持ロール10の表面10Sの軸方向X1及び周方向Y1における、凸部11の最大の長さを言う。
【0017】
凸部11の頂部は、粗面化されていることが好ましい。これによって、繊維に対する引っ掛け性を高くして頂部に残る繊維量を好適に高め、繊維材料に対する押し込みの際に繊維が部分的に薄くなることを抑制することができる。また、粗面化により斑の少ない不織布を製造することができる。粗面化は、頂部のみの一部に施されていてもよく、頂部のみの全体に施されていてもよく、頂部から壁面の上部の一部にまで施されていてもよい。繊維に対する引っ掛け性と壁面への繊維の沿いやすさを考慮すると、頂部の全体が粗面化されていることが好ましく、頂部の縁まで粗面化されていることがより好ましい。また、不織布化後の引き剥がし易さを考慮すると、頂部のみが粗面化され、壁面は粗面化されていないことが好ましい。
頂部を粗面化する方法としては、サンドブラスト加工等、この種の支持ロール10に対して施す種々の方法を用いることができる。
【0018】
また、図示はしないが、凸部11の頂部の縁(頂部と壁面との接続部分の角)には、丸みを付けることが好ましい。丸みがあることで、後述の押し込み部22を凸部11,11間(凹部12)に挿入しやすくなる。
【0019】
押し込みネット21は、支持ロール10の軸方向X1と平行な幅方向X2と、幅方向X2に直交する長手方向Y2とを有する。該押し込みネット21には、前述の凸部11が遊挿される被遊挿部23と、前述の凹部12に遊挿される押し込み部22とが、該幅方向X2及び該長手方向Y2に沿って交互に配されている。これにより、押し込み部22は格子状に配されて、被遊挿部23の空間を囲んでいる。格子状の押し込み部22は、長手方向Y2に延出する押し込み部221と、幅方向X2に延出する押し込み部222とを有する。
「遊挿」とは、遊びを持たせて挿入されることを意味する。押し込みネット21の被遊挿部23に対しては、支持ロール10の凸部11が隙間を残しながら挿入される。押し込みネット21の押し込み部22は、支持ロール10の凹部12に対して隙間を残しながら挿入される。この隙間部分に繊維材料が介在される。
【0020】
押し込みネット21において、前述の通り、格子状の押し込み部22に囲まれた部分が被遊挿部23となる。被遊挿部23は桝目状に配置されている。格子状の押し込み部22は、支持ロール10の軸方向X1及び周方向Y1に配した格子状の凹部12に対して遊挿されるように、押し込みネット21の軸方向X2及び長手方向Y2に配される。各被遊挿部23は、支持ロール10の凸部11が遊挿されるように配される。
【0021】
本実施形態においては、押し込みネット21の長手方向Y2に沿って、支持ロール10の凹凸面と押し込みネット21とを、支持ロール10の回転に合わせて遊挿させる。これにより、複数の押し込みネット21は、図4に示すように、幅方向X2に並べられた状態で長手方向Y2に沿って支持ロール10の凹凸面の周方向Y1に遊挿されていく。遊挿の際には、支持ロール10の凹凸面と押し込みネット21との間に繊維材料を介在させる。なお、図4では、押し込みネット21を構成する押し込み部22を太線で示し、簡略化してある。
押し込みネット21において、押し込み部22及び被遊挿部23は、支持ロール10の周方向Y1における凹部12及び凸部11の全てに対応させて配されていてもよく、一部にのみ対応させて配されていてもよい。例えば、支持ロール10の周方向Y1における凹部12の一部に対して、押し込みネット21の押し込み部22が配されないことがあってもよい。
【0022】
押し込みネット21は、幅方向X2に複数に分割されている。これにより、押し込みネット21は、幅方向X2の位置が制御可能な可動性を有する。この可動性は、幅方向X2に隣り合う押し込みネット21,21同士が、互いに連結しない部分を有することで生じる。すなわち、互いの押し込みネット21,21がそれぞれの幅方向X2の動きを拘束しないことで生じる。各押し込みネット21が互いに独立して、支持ロール10の凹凸の配置に合わせて可動し得る。
例えば、図1及び4では押し込みネット21は幅方向X2に4つに分割されているため、4つの押し込みネット21は幅方向X2に個別に移動できる。その結果、移動や熱膨張が生じた支持ロール10の軸方向X1の全長に対して、押し込みネット21を4つに細分化して幅方向X2の位置をより高程度に制御できる。具体的には、支持ロール10の熱膨張が軸方向X1において不均一に生じても、その不均一な熱膨張に応じて、押し込みネット21毎の幅方向X2の可動性で位置制御が可能になる。
また、幅方向X2に分割した複数の押し込みネット21の幅全体は、支持ロール10の凹凸面の軸方向X1の全長と一致することが好ましい。すなわち、支持ロール10の凹凸面の軸方向X1端部まで、押し込みネット21による繊維材料の押し込みが行われることが好ましい。
【0023】
支持ロール10の凸部11及び凹部12と押し込みネット21の押し込み部22との配置関係は、例えば図5のように示される。支持ロール10の凸部11,11間(凹部12)の幅D0に対して、幅Wの押し込み部22が遊挿される。このとき、押し込み部22の一方の側面と凸部11の側面との間隔D1及び押し込み部22の他方の側面と凸部11の側面との間隔D2がクリアランスとなる。これら間隔D0、幅W及び公差許容量D1,D2はいずれもミリメートル単位の寸法である。例えば、凸部11,11間の幅D0が4mmで、押し込み部22の幅Wが2mmとすると、クリアランスは片側1mmである。この僅か1mmの余裕の中で押し込み部22を遊挿させる必要がある。これを支持ロール10及び押し込みネット21の幅全体(例えば2~4m)に亘って均等に位置制御することが好ましい。
これに対し、本実施形態の不織布の製造装置は、上記のような位置制御を凹凸賦形の最中に押し込みネット21単位で実行できる。特に、支持ロール10が軸方向X1に長くなればなるほど、凸部11及び押し込み部22の位置制御の効果が高くなる。例えば、部材の幅2~4m(2000mm~4000mm)に亘って凸部11及び押し込み部22をクリアランス1mm程度で遊挿させる位置制御が、本実施形態では可能となる。
【0024】
押し込みネット21は、押し込み部22,22同士の交差部分の変形性が高い。そのため、押し込みネット21は、幅方向X2の可動性に加えて、幅方向X2及び長手方向Y2に柔軟性を有する。この柔軟性と前述の幅方向X2の可動性とが相俟って、押し込みネット21の位置制御を製造装置1の運転中にタイミング良く瞬時に行うことができる。更に、製造装置1の停止時における支持ロール10の部分的な熱膨張等、凹凸面の急激な位置ズレに対しては、押し込みネット21の柔軟性により、機械流れ方向(MD、Machine Direction)上流の押し込みネット21(図4の領域R)が噛み合い部分(図4の領域Q)に引っ張られることで対応できる。
また、図4に示すように、熱膨張等で支持ロール10の凹凸面で位置ズレが生じても、前述の位置制御に伴い凹凸面に噛み合った押し込み部22(図4の領域Q)に引っ張られ、MD方向上流で繋がる押し込みネット21(図4の領域R)の位置が修正される。
【0025】
押し込み部22を構成する線材の素材には、種々のものを用いることができる。例えば樹脂からなる単繊維であってもよい。また、耐熱性の素材であることが好ましく、180℃以上の耐熱性を有するものがより好ましい。具体的には、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、炭素繊維、等から選ばれる1又は複数の素材からなることが好ましい。ガラス繊維を素材とするものの具体例としては、FGF-410-30(商品名、中興化成工業株式会社製)が挙げられる。
素材がどのようなものであっても、線状の素材が解けたり毛羽だったりしないよう、線材表面に樹脂コーティング等を施して、加工対象の繊維材料が絡まないようにすることが好ましい。素材として、ステンレスのような金属を用いることも可能である。
いずれの素材を用いても、線材は1本の線から構成されていなくてもよく、細い線を束ねて所望の太さとしたものでもよい。
【0026】
押し込みネット21は、各押し込みネット21への細分化による可動性と、ネット自身の柔軟性とにより、支持ロール10と遊挿し合うことができる。特に、押し込みネット21,21間が切り離されていることで、遊挿をより的確に行うことができる。
【0027】
本実施形態の不織布の製造装置1においては、前述の通り、支持ロール10の凹凸面の移動や熱膨張があっても、それに合わせて押し込みネット21の幅方向X2及び長手方向Y2の位置が修正制御される。これにより、凸部11に対する被遊挿部23の位置が修正され、凸部11の被遊挿部23への遊挿が好適に実行できる。同時に、凹部12に対する押し込み部22の位置が修正され、凹部12への押し込み部22の遊挿が好適に実行できる。その結果、繊維材料への凹凸賦形を良好に実施することができる。また、繊維材料の不測の損傷(穴あきや切れ)を防ぐことができる。すなわち、品質の良い凹凸賦形された不織布を効率的に製造することができる。
【0028】
本実施形態の不織布の製造方法は、上記の不織布の製造装置1を用いて行われる。より具体的には、次のように実施することができる。
まず、支持ロール10をMD方向に回転させながら、軸方向X1に並べた複数の押し込みネット21と、支持ロール10との間に繊維材料を供給する。支持ロール10と押し込みネット21との間において前述の遊挿を行って、繊維材料の凹凸賦形を行う。遊挿は、幅方向X2に並べられた押し込みネット21全体で、長手方向Y2に沿って行われ、繊維材料の凹凸賦形を連続的に行う。その際、凸部11と押し込み部22との接触があると、押し込みネット21の幅方向X2及び長手方向Y2の位置が修正される。これにより、凹凸賦形加工の最中に製造装置1の運転を停止させることなく、前述の遊挿を好適に実行でき、繊維材料の凹凸賦形を良好に連続的に行うことができる。結果、品質の良い凹凸賦形された不織布を歩留り良く効率的に連続生産することができる。
その際、支持ロール10との噛み合い部分で、押し込みネット21は支持ロール10の回転によって引っ張られ、所定の速度でMD方向に移動する。このように押し込みネット21を駆動させることで、複数の押し込みネット21のMD方向の移動速度を同期させることができる。これにより、押し込みネット21を駆動させる機構を省略することができる。
【0029】
本実施形態の不織布の製造方法において用いる繊維材料は、凹凸賦形され得る種々のものを特に制限なく用いることができる。例えば、前述した不織布や繊維ウェブ等が挙げられる。ここで言う不織布は、凹凸賦形される前のシート状の原料不織布である。原料不織布としては、不織布の分野で通常用いられる種々のものを特に制限なく採用でき、通常用いられる種々の方法によって製造することができる。繊維ウェブは、繊維同士が交点において結合がされていないシート状の繊維集合体であり、通常用いられる種々の方法によって製造することができる。例えばカーディング法等が挙げられる。繊維ウェブの場合、凹凸賦形後に繊維同士を交点において結合する工程を実施する。この結合する工程では、通常用いられる種々の方法を採用でき、例えば、化学的結合、物理的結合、熱による結合(融着)、機械的結合等が挙げられる。熱による結合の場合、繊維ウェブに熱可塑性繊維が含まれていることが好ましい。
【0030】
本実施形態の不織布の製造方法においては、繊維材料を凹凸賦形する支持ロール10が加熱される加熱工程を有することが好ましい。すなわち、不織布の製造装置1において、支持ロール10を加熱する加熱装置(図示せず)を有することが好ましい。支持ロール10に対する加熱によって、支持ロール10に支持された繊維材料も同時に加熱され、より効率的に凹凸賦形された不織布を製造することができる。なお、繊維材料が支持ロール10に支持されるとは、支持ロール10上に単に載置された状態から、凹凸賦形されて支持ロール10の凹凸形状に沿わされた状態までを広く含む意味である。
【0031】
支持ロール10に対する加熱工程がある場合、具体的には次のような処理がなされる。
例えば、繊維材料が繊維ウェブの場合、まず、支持ロール10上に繊維ウェブを載置して回転させながら押し込みネット21を押し付けて、前述の遊挿を行って繊維ウェブを凹凸賦形する。凹凸賦形した繊維ウェブは支持ロール10の凹凸形状に沿わされる。次いで、前記加熱工程により、支持ロール10の凹凸面と押し込みネット21とを遊挿したまま、支持ロールの凹凸形状に沿わされた繊維ウェブの繊維同士を融着する。これにより、支持ロール10によって、繊維ウェブの凹凸形状が安定的に保持された状態でそのまま不織布化され、凹凸賦形された不織布をより効率的に製造することができる。
また、例えば、繊維材料が不織布(原料不織布)の場合、まず、支持ロール10上に不織布を載置して回転させながら、該不織布に対し賦形直前に加熱処理を行う。これによって不織布の融着している繊維同士の融着力を緩和することができる。繊維融着力を弱めた後、支持ロール10上に不織布を載置しさらに回転させながら押し込みネット21を押し付けて、前述の遊挿を行って不織布を凹凸賦形する。これにより、不織布(原料不織布)に対する加熱と凹凸賦形とを支持ロール10上で連続的に行って、凹凸賦形された不織布をより効率的に製造することができる。
【0032】
いずれの場合においても、上記の加熱工程は、繊維材料を支持した支持ロール10に向けて熱風を吹き付ける工程であることが好ましい。すなわち、前述の不織布の製造装置1が有する加熱装置は、繊維材料を支持した支持ロール10に向けて熱風を吹き付ける位置に配されることが好ましい。熱風を吹き付けることにより、繊維材料において、熱風が貫通し、厚み方向に比較的均等に加熱される。上記の熱風の温度、風速等は、いずれも、繊維材料の繊維の種類、目付け等によって適宜選択される。また熱風には、扱いやすさやコスト面から空気を加熱して用いることが好ましい。
【0033】
このような加熱工程がある場合、支持ロール10は加熱されて熱膨張し、軸方向X1に並ぶ凸部11同士の間隔が延ばされることがある。この場合、従来の賦形装置では、凹凸賦形時に押し込み部22と凸部11が強く接触して遊挿が妨げられ、不織布の製造が止まることがある。
しかし、本実施形態の不織布の製造装置1及び製造方法は、押し込み部22と凸部11とが強く接触しないよう、押し込みネット21はその柔軟性と可動性との作用により移動できる。これにより、前述の遊挿を好適に実行でき、繊維材料の凹凸賦形を良好に連続的に行うことができる。
特に、支持ロール10を加熱しながら何らかの原因で運転を一時停止しなければならない状況において、連続生産への復帰を早めることができ、凹凸賦形された不織布の効率的な連続生産にとってより効果的である。それは、加熱工程を伴う凹凸賦形における従来の問題を本実施形態の不織布の製造装置及び製造方法が解決し得ることによる。
すなわち、凹凸賦形を一旦停止する場合、加熱装置はその性質上一時停止が難しく、回転が止まった支持ロール10の一部が熱風に晒されることとなる。この場合、支持ロール10内で熱膨張の程度が異なる部分が生じ、凸部10と押し込み部22との間の位置ズレの程度も異なる。このような状況では、従来の賦形装置では支持ロール10の熱膨張の寸法の差異が一定以内に収まるまで支持ロール10と押し込みネット21との間における前述の遊挿を外さざるを得ない。この場合、従来は適切な運転再開までに時間がかかり、製造上のロスが生じる。
これに対し、本実施形態の不織布の製造装置1及び製造方法は、押し込みネット21の位置制御により、位置ズレに対応して、運転再開までの時間を短縮することができる。これにより、凹凸賦形された不織布の連続生産効率を高めることができる。
【0034】
さらに、本実施形態の不織布の製造装置1は、押し込みネット21よりも下流側に、支持ロール10の外周面と接する平滑ロール(図示せず)を有してもよい。該平滑ロールは、支持ロール10の表面10Sが加熱される加熱機構を備えることが好ましい。これにより、凹凸賦形された不織布を支持ロール10の凹凸形状に沿わせたまま、平滑ロールによって他の繊維材料を的確に熱融着接合することができる。すなわち、平滑ロールによる熱融着接合において、不織布の凹凸賦形された形状を支持ロール10が好適に保持し、良好な凹凸形状を有する2層構造の積層不織布を製造することができる。加えて、凹凸賦形された不織布は、支持ロール10の凸部11に支持された部分で他の繊維材料と熱融着接合されるので、不要な熱融着接合を抑えて、不織布の柔らかさを保持しやすくすることができる。
上記工程では、支持ロール10から押し込みネット21を外した後に、他の繊維材料を不織布に積層させることが好ましい。積層前に予め遊挿を外しておくことで、押し込みネット21が積層不織布の内部に埋もれることを防止できる。
なお、「下流側」とは、製造装置におけるMD方向において、ある地点よりも後側の位置を意味する。製造方法について言えば、MD方向において、ある工程よりも後側を意味する。また、「平滑ロール」とは、対向する支持ロール10の凸部11及び凹部12との間で遊挿を可能にするような凹凸が無く、凸部11に対して均一に押圧を可能にする程度にロール周面が平坦であることを意味する。
【0035】
次に、押し込みネット21の好ましい具体例(第一実施形態~第三実施形態)について、図6~8を参照して説明する。
【0036】
第一実施形態は、図6に示すように、押し込みネット21が支持ロール10の凸部11の1つ分の間隔を空けて、幅方向X2に複数配されている。こうすることで、押し込みネット21,21同士を幅方向X2に重ねることなく、前述の遊挿を行うことができる。
第一実施形態では、押し込みネット21,21間に押し込み部22が存在しないため、押し込みネット21,21間では繊維材料の押し込みは行われない。その結果、製造される不織布の表面に、畝のような紋様を作り出すことができる。
【0037】
第二実施形態の押し込みネット21では、図7に示すように、幅方向X2に延出する押し込み部222が、長手方向Y2に延出する押し込み部221の幅方向X2の端から突出している。こうすることで、押し込みネット21,21同士の間隔を小さくすることができ、幅方向X2において均一に繊維材料の押し込みを行いやすくなる。その結果、表面がより均質な不織布を製造することができる。
第二実施形態においても、第一実施形態と同様に、押し込みネット21,21同士を幅方向X2に重ねることなく遊挿を行うことができる。また、第二実施形態では、押し込み部221の突出の長さや構造を適宜変えることにより、押し込みネット21,21間での繊維材料の押し込みパターンを変えることができ、独特な紋様を表面に有する不織布を製造することができる。
【0038】
第三実施形態は、図8(A)に示すように、押し込みネット21が間隔を空けることなく、幅方向X2に複数配されている。こうすることで、幅方向X2全域に亘って繊維材料の押し込みを行うことができる。
第三実施形態では、押し込みネット21,21の幅方向X2の端部同士が重なるため、1つの凹部12に対して2本の押し込み部22が遊挿する部分がある。故に、図8(B)に示すように、押し込みネット21,21同士は互い違いに重なることとなる。その結果、製造される不織布の凹凸形状に、高さ(厚み)の差異を作り出すことができる。
【0039】
本発明の不織布の製造装置及び製造方法によって製造される凹凸賦形された不織布は、様々な物品の構成部材に適用できる。適用できる物品としては、例えば、吸収性物品、清掃用品、フィルター材料等が挙げられる。
吸収性物品は、典型的には、表面シートと、裏面シートと、それら両シートに挟まれた吸収体とを有する。表面シートは典型的には液透過性である。裏面シートは、典型的には液難透過性であるが、液透過性であってもよい。吸収体は、液を固定する役割を担い、典型的にはパルプと高吸収性ポリマーを有する。
上記の不織布を吸収性物品に用いる場合には、表面シートに適用することが好ましい。表面シートとして配すると、肌触りの良いものとなり好ましい。なお、吸収性物品としては、例えば、おむつ、生理用ナプキン、尿とりパッド、パンティライナー等、体に装着して体液を吸収する機能を備える種々のものを含む。
【符号の説明】
【0040】
1 製造装置
10 支持ロール
10S 支持ロールの表面
11 凸部
12 凹部
21 押し込みネット
22 押し込み部
221 長手方向に延出する押し込み部
222 幅方向に延出する押し込み部
23 被遊挿部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8