(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240326BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240326BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G08G1/16 F
H04R1/10 104Z
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2020118462
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】勇 萌音
(72)【発明者】
【氏名】丹野 慶太
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-77296(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068440(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146309(WO,A1)
【文献】特表2019-529016(JP,A)
【文献】特開2020-67711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
H04R 1/10
G08B 19/00 - 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバーの左右の耳の位置またはその近傍に装着され、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサおよび3軸地磁気センサをそれぞれ含む左右のイヤホンモジュールと、
前記左右のイヤホンモジュールの
各々の3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサおよび3軸地磁気センサからの検出結果に基づき
ドライバーの動きを監視する監視手段と
を有し、
前記監視手段は、ドライバーのロール角の変化が一定期間で繰り替えされたとき、顔の頷きから居眠りと判定し、ドライバーのピッチ角の変化が一定期間で繰り返されたとき、首の傾げから居眠りと判定し、ドライバーのヨー角の変化が一定期間で繰り返されたとき、顔の向きからわき見と判定する、監視装置。
【請求項2】
前記イヤホンモジュールは、ヒアラブルデバイスまたはヒアラブルデバイスの一部である、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記監視手段は、
通信部を介して取得した車両情報に基づきハンドルが正面か否かを判定し、ハンドルが正面であると
判定したときのドライバーの
顔の正面位置を初期姿勢として登録し、
前記初期姿勢に基づきドライバーの居眠りまたはわき見を判定する、請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
監視装置はさらに、
前記ジャイロセンサをキャリブレーションする手段を含み、前記キャリブレーションする手段は、複数の車載スピーカーから出力された測定信号の音声を前記左右のイヤホンモジュールの各々から入力し、当該入力した左右の音声信号の到達時間差に基づきドライバーの顔の向きを検出し、ドライバーの顔の向きが正面であるとき、前記ジャイロセンサ
の積分値をリセットする、請求項1に記載の監視装置。
【請求項5】
監視装置はさらに、前記監視手段の監視結果に基づき警告を出力する出力手段を含む、請求項1に記載の監視装置。
【請求項6】
前記出力手段は、
前記左右のイヤホンモジュールからドライバーを覚醒させるための音声を出力する、請求項5に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置に関し、特に、ヒアラブルデバイスを用いた監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの頭部に装着されたセンサにより検知されたデータと学習データの行動特徴量とを比較して、ユーザーの行動を推定する頭部ウエアラブルデバイスが特許文献1に開示されている。頭部ウエアラブルデバイスは、
図1に示すように、表示部2a、2b、イヤホンスピーカ3a、3b、撮像レンズ4a、マイク5a、5b、重力加速度センサ6a、ジャイロセンサ6b、振動部7を備えた眼鏡型のヘッドアップディスプレイである。このような頭部ウエアラブルデバイスを用いて、「人と話している」、「食事をしている」、「居眠りをしている」等の行動が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の安全運転への要求が高まっており、その中でドライバーのよそ見や眠気を検知することが重要であると考えられている。このため、ドライバーを監視するための監視システム(DMS:Driver Monitoring System)が車室内に展開されつつある。DMSは、主にカメラを使用してドライバーをモニタリングするため、ドライバーにとっては、常に見られている、監視されている、といった不快を感じることがある。また、ドライバーの行動を検知するためには、デプスカメラやステレオカメラが必要になるが、これらのカメラは高価であり、導入のハードルが高いという課題もある。さらに監視用カメラを車室内に常設することを前提とすると、車室内の環境は過酷であるため、それに対応したスペックがカメラに求められ、これもコスト増の一因となる。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決し、デプスカメラやステレオカメラを用いることなくユーザーの動きを監視することが可能な監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る監視装置は、ユーザーの左右の耳の位置またはその近傍に装着され、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサおよび3軸地磁気センサをそれぞれ含む左右のイヤホンモジュールと、前記左右のイヤホンモジュールの複数のセンサからの検出結果に基づきユーザーの動きを監視する監視手段とを有する。
【0007】
ある実施態様では、前記イヤホンモジュールは、ヒアラブルデバイスまたはヒアラブルデバイスの一部である。ある実施態様では、前記監視手段は、ドライバーの動きを監視し、ハンドルが正面であるときのドライバーの初期姿勢を登録し、当該初期姿勢に基づきユーザーの特定の行動または姿勢を検出する。ある実施態様では、監視装置はさらに、前記ジャイロセンサをキャリブレーションする手段を含み、前記キャリブレーションする手段は、ドライバーが前記初期姿勢にあるとき時前記ジャイロセンサをリセットする。ある実施態様では、前記特定の行動または姿勢は、ドライバーの居眠り、首傾げまたはよそ見である。ある実施態様では、監視装置はさらに、前記監視手段の監視結果に基づき警告を出力する出力手段を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、左右のイヤホンモジュールに含まれる各種3軸センサの検出結果に基づきユーザーの動きを監視するようにしたので、ユーザーの特定の行動または姿勢を精度良く検出することができる。さらに、デプスカメラやステレオカメラを必要としないので、監視装置の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来の頭部ウエアラブルデバイスを示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係るヒアラブルデバイスを用いたヒアラブル監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施例に係るヒアラブル監視装置により検出可能なドライバーの行動を例示する図である。
【
図4】
図3に示すドライバーの行動または姿勢を検出したときの各センサの検出波形を例示する図である。
【
図5A】本発明の実施例に係るヒアラブル監視装置の初期設定および監視動作を説明するフローチャートである。
【
図5B】本発明の実施例に係るヒアラブル監視装置の初期設定および監視動作を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例に係るヒアラブル監視装置のキャリブレーション方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例によるキャリブレーションの具体例を説明する図である。
【
図8】本発明の実施例に係るヒアラブル監視装置のキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の監視装置は、ヒアラブルデバイスを利用してユーザーの動きを監視する。ヒアラブルデバイスは、耳またはその近傍に装着可能なデバイスであり、例えば、音声を聴くことができるイヤホン、ヘッドフォン、ヘッドセット、あるいは
図1に示すような眼鏡タイプの頭部ウエアラブルデバイスである。本発明の監視装置は、ある実施態様では、車両のドライバーの動きを監視し、ドライバーの特定の行動または姿勢(例えば、居眠り、よそ見、スマホ操作、頷き、首傾げ等)を検出し、検出内容に応じた警告等を行う。
【実施例】
【0011】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図2(A)は、本発明の実施例に係るヒアラブル監視装置の構成を示すブロック図である。ヒアラブル監視装置100は、ヒアラブルデバイスを用いた監視装置であり、ここでは、ヒアラブルデバイスは、ドライバーの左右の耳に装着可能なワイヤレスタイプのイヤホンまたはヘッドセットである。
【0012】
ヒアラブル監視装置100は、左イヤホンモジュール110L、右イヤホンモジュール110R、制御部120、通信部130、および入力部140とを含んで構成される。ヒアラブル監視装置100は、図示しないバッテリーからの電力を用いて動作する。
【0013】
左イヤホンモジュール110Lは、
図2(B)に示すように、XYZ方向の加速度を検出する3軸加速度センサ150L、XYZ方向の角速度を検出する3軸ジャイロセンサ160L、XYZ方向の方位を検出する3軸地磁気センサ170L、音声信号を可聴音に変換して出力する音声出力部180Lを含む。右イヤホンモジュール110Rも同様に、XYZ方向の加速度を検出する3軸加速度センサ150R、XYZ方向の角速度を検出する3軸ジャイロセンサ160R、XYZ方向の方位を検出する3軸地磁気センサ170R、音声信号を可聴音に変換して出力する音声出力部180Rとを含む。
【0014】
制御部120は、ヒアラブル監視装置100の全体の動作を制御する。具体的には、制御部120は、ヒアラブルデバイスの通常の機能を実施するための音声信号の信号処理や通信制御に加えて、本実施例では、ドライバーの動きを監視し、ドライバーの特定の行動または姿勢の検出等を行う。制御部120は、ハードウエアおよび/またはソフトウエアを用いて構成され、例えば、ROM/RAM等を含むマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、信号処理プロセッサ、メモリ等を含み、さらにROM/RAM等に記憶されたプログラム等を含む。制御部120および通信部130は、左イヤホンモジュール110Lおよび/または右イヤホンモジュール110L内に内蔵されてもよいし、あるいはこれらとは個のハウジングまたは筐体に内蔵され、左右のイヤホンモジュール110L/110Rに有線または無線で接続されるようにしてもよい。
【0015】
通信部130は、外部機器との間で無線または有線によるデータ通信を可能にする。通信部130は、例えば、ブルートゥースやWi-Fiなどに代表される近距離無線モジュールを含む。ヒアラブル監視装置100は、通信部130を介して、例えば、車載装置200、スマートフォン210、車両状態システム220などに接続することができる。車載装置200は、例えば、ナビゲーション機能、オーディオ・ビデオ再生機能、テレビ・ラジオ放送受信機能などを備えた電子装置である。車両状態システム220は、車両の走行に関する車両情報(例えば、ハンドル舵角、速度など)を提供することができる。
【0016】
ある態様では、ヒアラブル監視装置100は、通信部130を介して車載装置200やスマートフォン210で再生されたオーディオ信号を受信し、受信したオーディオ信号の音声が左右のイヤホンモジュール110L/110Rの音声出力部170L、170Rから出力される。入力部140は、ユーザーからの入力を受け取り、例えば、音声出力部180L、180Rから出力される音声のボリュームを調整するための入力を受け取る。
【0017】
ヒアラブルデバイスは、左右のイヤホンモジュール110L/110Rに、独立の3軸加速度センサ150L/150R、3軸ジャイロセンサ160L/160R、3軸地磁気センサ170L/170Rを2基備える。このため、ヒアラブルデバイスの装着状態を継続する限り、左右の位置関係がほぼ一定であるため、左右の2基の9軸センサの連動した動作によりドライバーの頭の向きや傾きを正確に検出することが可能である。
【0018】
図3は、本実施例のヒアラブル監視装置100によって検出されるドライバーの典型的な行動または姿勢を例示している。
図3(A)は、ドライバーDがヒアラブル監視装置100を頭部または耳近傍に装着した初期状態を示している。初期状態では、座席に着座中のドライバーDの自然な顔の向き(正面を向いているときの姿勢)が記憶される。
【0019】
図3(E)は、ドライバーDの行動または姿勢を検出するときに用いるロール(Roll)角、ピッチ(Pitch)角、ヨー(Yaw)角を表している。ロール角はドライバーDの前後の軸の回りの回転角、ピッチ角は左右の軸の回りの回転角、ヨー角は上下の軸の回りの回転角である。
【0020】
図3(B)に示すように、ドライバーDのロール角やピッチ角に大きな変化があれば、頷きや首の傾げを検出することができる。頷きや首の傾げは、眠いときのコックリ動作と近似するものであり、それ故、居眠りと判定することができる。
【0021】
図3(C)に示すように、ドライバーDのピッチ角に大きな変化があれば、頷きを検出することができる。頷きは、スマートフォンの操作等に近似するものであり、運転中の不適切な動きと判定することができる。
【0022】
図3(D)に示すように、ドライバーDのヨー角に大きな変化があれば、顔の向きを検出することができる。ヨー角が大きく変化し、その状態が一定時間継続した場合(一定時間、ヨー角が変化しない場合)には、顔は進行方向を見ていないよそ見と判定することができる。
【0023】
図4は、ドライバーDが頷き、首傾げ、よそ見の行動をしたときの各3軸センサの出力波形を例示している。3軸センサのX軸は、
図3(E)のドライバーDの前後の軸、Y軸は左右の軸、Z軸はドライバーDの上下の軸にそれぞれ対応する。
【0024】
初期状態では、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサの出力波形は概ね平坦であり変化がない。ドライバーDが頷いたとき、加速度センサは、頷く方向、つまりZ軸に大きく変化する加速度を検出し、地磁気センサは、加速度センサとは逆方向にZ軸の方位の変化を検出する。また、ジャイロセンサは、Y軸に大きく変化する角速度、つまりピッチ角の大きな変化を検出する。地磁気センサは、頷く方向、つまりZ軸に大きく変化する方位を検出する。
【0025】
ドライバーDが首を傾げたとき、加速度センサは、傾げた方向、つまりY軸に大きく変化する加速度を検出する。ジャイロセンサは、Z軸に大きく変化する角速度、つまりロール角の大きな変化を検出する。地磁気センサは、首傾げの方向、つまりY軸に大きく変化する方位を検出する。
【0026】
ドライバーDがよそ見をしたとき、加速度センサは、よそ見をする方向、つまりZ軸の加速度の大きな変化を検出する。また、ジャイロセンサは、加速度センサと同じタイミングでX軸に大きく変化する角速度、つまりヨー角の大きな変化を検出する。地磁気センサは、よそ見の方向に変化する方位を検出する。
【0027】
なお、
図4に示す波形は、左右のイヤホンモジュール110L/110Rの一方イヤホンモジュールの3軸センサの出力波形を例示しているが、左右のイヤホンモジュール110L/110Rのそれぞれの3軸センサの出力波形は、互いに相関関係を表す。制御部120は、左右のイヤホンモジュール110L、110Rのそれぞれのセンサの出力波形を利用することで、より正確にドライバーの動きまたは姿勢を検出することが可能になる。
【0028】
制御部120は、左右のイヤホンモジュール110L/110Rの加速度センサ150L/150R、3軸ジャイロセンサ160L/160R、3軸地磁気センサ170L/170Rの検出結果(出力波形)を受け取り、これに基づきドライバーDの動きを監視し、その間にドライバーDの特定の行動または姿勢(例えば、居眠り、スマホ操作、頷き、首傾げ、よそ見など)を検出する。制御部120は、ドライバーDの居眠り、スマホ操作、よそ見等を検出した場合には、検出内容に応じた警告を発する。例えば、制御部120は、左右のイヤホンモジュール110L/110Rの音声出力部180L/180RからドライバーDに警報を出力したり、あるいは通信部130を介して車載装置200から警告を出力させる。車載装置200は、例えば、車載スピーカから注意喚起の音声を出力したり、あるいは振動部材を介してドライバーDを覚醒させる。
【0029】
次に、ヒアラブル監視装置100の初期状態の設定方法および監視動作について
図5A、
図5Bのフローを参照して説明する。制御部120は、ヒアラブルデバイスによる監視を行うとき、予め用意されたプログラムを実行することで初期状態の設定を実施する。制御部120は、車両のACC電源がオンされると(S100)、通信部130を介して車両状態システム220から車両情報を取得し、当該車両情報に基づきアクセルが踏まれたか否かを判定し(S110)、アクセルが踏まれた場合、ハンドルが正面であるか否かを判定する(S120)。制御部120は、ハンドルが正面であれば、このときのドライバーの姿勢を初期状態と判定し、ドライバーDの顔の正面位置を決定し、顔の正面位置をメモリ等に登録する(S140)。ハンドルが曲がっている場合には(S130)、ハンドルが正面に戻ったとき、顔の正面位置を登録する。
【0030】
次に、制御部120は、左右のイヤホンモジュール110L/110Rの各3軸センサからの出力に基づきドライバーDの動きを監視する。制御部120は、ロール角に閾値以上の変化が生じ(S150)、その変化が長い時間継続する場合には、ドライバーDに姿勢を正すような警告を与える(S170)。警告の方法は、例えば、イヤホンの音声出力部180L/180Rから音声を出力させてもいし、車載装置200から音声や画像による出力を行うようにしてもよい。ロールの変化が長い時間継続はしないが一定期間で繰り返される場合には(S180)、制御部120は、居眠りのコックリ動作と判定し、つまり眠気を検知したことをドライバーDや同乗者に警告する(S190)。この場合、例えば、イヤホンから大音量を出力させたり、車載装置200を介してドライバーの座席を振動させたりして、ドライバーDを覚醒させる。
【0031】
また、制御部120は、ピッチ角に閾値以上の変化が生じ(S200)、その変化が長い時間継続する場合には、ドライバーDに姿勢を正すよう警告を与える(S220)。一方、ピッチ角の変化が長い時間継続はしないが一定期間で繰り返される場合には(S230)、制御部120は、居眠りのコックリ動作と判定し、つまり眠気を検知したことをドライバーDや同乗者に警告する(S240)。
【0032】
さらに制御部120は、ヨー角に閾値以上の変化が生じ(S250)、その変化が長い時間継続する場合には、ドライバーDに姿勢を正すよう警告を与える(S270)。一方、ヨー角の変化が長い時間継続はしないが一定期間で繰り返される場合には(S280)、制御部120は、わき見と判定し、前方注意を促す警告をドライバーDや同乗者に与える(S290)。
【0033】
次に、本実施例のヒアラブル監視装置100のキャリブレーションについて説明する。ジャイロセンサ160L/160Rを用いることで、車室内でのドライバーの顔の向きを検出することが可能になるが、ジャイロセンサが持つ特有の性質により、積分値が誤差を蓄積してしまう。そのため、少しずつヨー角の検出にずれを生じさせる問題がある。これを解消するため、一定間隔でジャイロセンサをリセット(積分値を0にする)する。
【0034】
ジャイロセンサのリセットは、車載装置200と連携して行われる。
図6(A)に示すように、既知の車載スピーカ300L、300Rの位置と、既知の座席310の位置(設定済み)に対して、車載スピーカ300L、300Rから既知の測定信号の音声を出力させ、測定信号の到達時間差を利用してヒアラブルデバイスの位置を特定し、顔の向きを検出する。ドライバーDは、
図6(B)に示すように両耳にヒアラブルデバイスを装着しており、両耳間で音声を受け取るまでの時間差から位置が特定される。左右のイヤホンモジュール110L/110Rが両耳に搭載された場合、その中心がドライバーの頭部の回転軸Cであるため、動きの中心をより正確に求めることができる。
【0035】
図7(A)は、顔の向きよる測定信号の音の到達距離/到達時間の違いを示している。ドライバーが正面を向いているときの音の到達時間(tL/tR)と比較して、tLが大きくtRが小さい場合には、ドライバーが左を向いていると判定することができ、他方、tLが小さくtRが大きい場合には、ドライバーが右を向いていると判定することができる。
図7(B)は、座席の位置による測定信号の音の到達距離/到達時間の違いを示している。ドライバーが正面を向いている状態で座席が前後しても、測定信号の音の到達時間差の比は変わらない。このため、座席が前後した場合でも顔向きの検出が可能である。
【0036】
音の到達時間(tL/tR)と顔の向きとの関係に関し、予め適切な値を学習させておくことで、学習データと測定信号の音の到達時間差とを比較することによりドライバーがどの方向を向いているのかをより正確に把握することができる。そして、ドライバーが正面を向いたと判定することができたとき、ジャイロセンサをリセットする。
【0037】
ジャイロセンサのキャリブレーションを実施する場合、ヒアラブル監視装置100の左右のイヤホンモジュール110L/110Rは、測定信号の音声を入力するためマイクロホン(音声入力部)をそれぞれ備える必要がある。左右のマイクロホンは、測定信号の音声を電気信号に変換し、変換した電気信号を制御部120に提供し、制御部120は、左右のマイクロホンから得られた音声信号に基づき音声の到達時間差を算出し、上記した学習データを参照してドライバーの顔の向きを判定する。
【0038】
図8は、キャリブレーションを実施するときの動作フローである。車載装置200は、ヒアラブル監視装置100に接続されたことを通知すると、ヒアラブル監視装置100は、これに応答する通知を行う。次に、車載装置200は、キャリブレーションの開始をヒアラブル監視装置100に通知し、ヒアラブル監視装置100はこれに応答する通知を行う。次に、車載装置は、車載スピーカ300L、300Rから測定信号の音声を出力させる。測定信号は、ユーザーが気づかないようにするため、可聴音以外の周波数であることが望ましい。
【0039】
制御部120は、左右のイヤホンモジュール110L/110Rのマイクロホンで受信した音声信号を受け取り、これを録音し(S300)、左右の耳への音の到達時間差を計算する(S310)。次に、制御部120は、左右のイヤホンモジュール110L/110Rの各センサの検出結果に基づき顔の向きを算出し(S320)、顔の正面が算出されたときジャイロセンサをリセットし、キャリブレーションを完了する(S330)。制御部120は、キャリブレーションが完了すると、その旨を車載装置200に通知する。車載装置200は、タイマー機能を利用し、一定周期でキャリブレーションの実施を繰り返す。
【0040】
このように本実施例によれば、左右の耳位置に装着されたヒアラブルデバイスを利用することで、ドライバーの行動または姿勢を高精度に検出することができ、もし、不適切な行動が検出された場合には、ドライバーや同乗者などに警告を発しそれを是正させることができる。また、ヒアラブルデバイスを利用するため、車載カメラのように車室内に別途機材を導入する必要がないし、ヒアラブルデバイスを装着している同乗者であれば、同様の監視が可能であり、各座席に監視システムを導入する必要がない。さらに、画像認識を利用しないので、AIが不要であり、低コスト化を図ることができる。
【0041】
上記実施例では、ヒアラブル監視装置100がドライバーの動きを監視し、特定の行動または姿勢を検出するようにしたが、これに限らず、ヒアラブル監視装置と連携する他の装置がドライバーの特定の行動または姿勢を検出し、警告を発するようにしてもよい。
図9(A)に示す監視システム400は、ヒアラブル監視装置100と車載装置200とを含み、車載装置200は、ヒアラブル監視装置100からセンサの検出結果を受け取り、ドライバーの居眠り、スマホ操作、よそ見などを検出した場合には、車載スピーカ300L、300Rから警告を発したりする。
【0042】
また、
図9(B)に示す監視システム400Aは、ヒアラブル監視装置100と、車載装置200と、スマートフォン210とを含む。スマートフォン210は、車載装置200と連携するとともに、ヒアラブル監視装置100にも接続される。スマートフォン210は、ヒアラブル監視装置100からセンサの検出結果を受け取り、ドライバーの居眠り、スマホ操作、よそ見などを検出する。スマートフォン210は、居眠りやよそ見等を検出した場合には、スマートフォン210から警告を発したり、あるいは車載装置200を介して警告を発する。また、ヒアラブル監視装置100のジャイロセンサのキャリブレーションを実施する場合、スマートフォン210は、車載装置200を介して車載スピーカ300L/300Rから測定信号の音声を出力させる。
【0043】
また、上記実施例では、左右のイヤホンモジュール110L/110Rの2基の9軸センサを利用してドライバーの動きを監視する例を示したが、必ずしも2基の9軸センサを利用しなくてもドライバーの動きを監視することが可能である。例えば、ドライバーの居眠り(首傾げ)は、左右のいずれか一方の加速度センサとジャイロセンサの出力情報から検出することが可能である。よそ見は、左右のいずれか一方のジャイロセンサの出力情報から検出することが可能である。スマホ操作は、左右のいずれか一方のいずれか一方の加速度センサと地磁気センサの出力情報から検出することが可能である。
【0044】
さらに上記実施例では、車室内のドライバーの動きを監視する例を示したが、これは一例であり、車外のユーザーの動きを監視するものであってもよい。要は、本発明の監視装置は、ヒアラブルデバイスを装着するあらゆるユーザーに適用可能であり、そのような場合、ユーザーのどのような動きまたは行動を監視し検出するかは、ユーザーに応じて適宜決定される。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
100:ヒアラブル監視装置
110L、110R:イヤホンモジュール
120:制御部
130:通信部
140:入力部
150L、150R:3軸加速度センサ
160L、160R:3軸ジャイロセンサ
170L、170R:3軸地磁気センサ
180L、180R:音声出力部