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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蓄冷材容器及び蓄冷材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B65D81/18 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020186865
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2021091478
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019220781
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】角谷 義之
(72)【発明者】
【氏名】入江 祥幸
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-042109(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220843(JP,U)
【文献】特開2012-111534(JP,A)
【文献】特開2003-137359(JP,A)
【文献】特開2006-097984(JP,A)
【文献】特開2001-253437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
F25D 3/00-3/14
B65D 21/00-21/08
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が設けられており、
前記第1の収容部は、前記蓄冷材容器の中心部から外縁部まで延び、
前記第2の収容部は第2厚さの板状をなし、
前記第2厚さが前記第1厚さよりも9~23mm厚い、蓄冷材容器。
【請求項2】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した、又は、前記蓄冷材容器の四隅寄り、かつ、外縁寄りに偏在した、第2の収容部が設けられており、
前記収容領域には、前記収容領域を厚さ方向に挟んで対向する1対の対向壁から互いに近づくように隆起したカップ部の底部同士が連結したリブが設けられている蓄冷材容器。
【請求項3】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が設けられており、
前記蓄冷材容器の相対する2辺部の途中に、対辺方向の内側に凹んだ凹部が形成されている蓄冷材容器。
【請求項4】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が設けられており、
前記収容領域は表裏で略対称形状である蓄冷材容器。
【請求項5】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が設けられている蓄冷材容器(ただし、金属板を含むものを除く。)。
【請求項6】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が設けられており、
前記第2の収容部は4分割されている蓄冷材容器。
【請求項7】
略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、
前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、
前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、
前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅を含む外縁寄り部分に偏在した、又は、前記蓄冷材容器の四隅寄りかつ外縁寄りに偏在した、第2の収容部が設けられており、
前記収容領域の体積に対する前記第2の収容部の体積比が、37.7~52.7%の範囲内である蓄冷材容器。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1の請求項に記載の蓄冷材容器に、前記蓄冷媒体を封入してなる蓄冷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄冷材容器と、蓄冷材容器に蓄冷媒体を収容してなる蓄冷材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蓄冷材容器として、平坦な板状のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-293841号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄冷材の保冷性能を向上させることが可能な蓄冷材容器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、略四角形の板状をなし、蓄冷媒体を収容する扁平な収容領域を内側に有する蓄冷材容器であって、前記収容領域には、第1厚さの板状をなして、前記収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、前記収容領域のうち前記第1厚さ以上となる部分は、前記収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占め、前記収容領域には、前記第1厚さの1.30~3.05倍の厚さであり、前記蓄冷材容器の四隅寄りの各位置を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が設けられている蓄冷材容器である。
【0006】
発明の第2態様は、前記第2の収容部は、前記収容領域の平面形状の総面積の20%以上の面積を占める、第1態様に記載の蓄冷材容器である。
【0007】
発明の第3態様は、前記第2の収容部は、前記収容領域において最も厚みが厚い部分を含む、第1態様又は第2態様に記載の蓄冷材容器である。
【0008】
発明の第4態様は、前記収容領域の中心部は、前記第1の収容部に含まれるか、又は、前記第1の収容部に囲まれて前記第1厚さ未満となっている、第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0009】
発明の第5態様は、前記収容領域全体に対する前記第2の収容部の体積の割合は、35~70%である、第1態様から第4態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0010】
発明の第6態様は、前記収容領域全体に対する前記第1の収容部の体積の割合は、30~65%である、第1態様から第5態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0011】
発明の第7態様は、前記第2の収容部の厚さが前記第1厚さの1.75~2.25倍の厚さである、第1態様から第6態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0012】
発明の第8態様は、前記蓄冷材容器は、樹脂製であり、前記蓄冷材容器の肉厚が、0.5~3.0mmである第1態様から第7態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0013】
発明の第9態様は、前記第1の収容部は、前記蓄冷材容器の中心部から外縁部まで延び、前記第2の収容部は第2厚さの板状をなし、前記第2厚さが前記第1厚さよりも9~23mm厚い、第1態様から第8態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0014】
発明の第10態様は、前記蓄冷材容器のうち前記第2の収容部を厚さ方向で覆う部分には、前記蓄冷材容器同士を重ねたときに、それら蓄冷材容器同士で互いに凹凸係合する位置決め係合部が設けられている、第1態様から第9態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0015】
発明の第11態様は、前記位置決め係合部は、前記蓄冷材容器の表裏の一方に突出する係合突部と、前記係合突部と略同じ突出量で前記表裏の他方に突出し、前記蓄冷材容器を他の前記蓄冷材容器に重ねたときに、該他の蓄冷材容器に設けられた係合突部を受容する包囲突部と、を備える、第10態様に記載の蓄冷材容器である。
【0016】
発明の第12態様は、前記蓄冷材容器が略長四角形状をなし、該蓄冷材容器の長手方向の一端部には、該蓄冷材容器の短手方向に延びる長孔形状の手差部が形成されている、第1態様から第11態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0017】
発明の第13態様は、前記第2の収容部は、前記第1の収容部を包囲する枠状に形成されている、第1態様から第12態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0018】
発明の第14態様は、前記蓄冷材容器の中心部に、貫通孔又は凹部が形成されている、第1態様から第13態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0019】
発明の第15態様は、前記蓄冷材容器の相対する2辺部の途中に、対辺方向の内側に凹んだ凹部が形成されている、第1態様から第14態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器である。
【0020】
発明の第16態様は、第1態様から第15態様の何れか1の態様に記載の蓄冷材容器に、前記蓄冷媒体を封入してなる蓄冷材である。
【発明の効果】
【0021】
発明の第1態様及び第16態様では、蓄冷材容器が略四角形の板状をなし、蓄冷材容器の内側に蓄冷媒体が収容される扁平な収容領域が設けられる。収容領域には、第1厚さの板状をなして、収容領域の平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部が設けられ、収容領域のうち第1厚さ以上となる部分は、収容領域の平面形状の総面積の70%以上の面積を占めている。また、収容領域には、第1厚さの1.30~3.05倍の厚さである第2の収容部が設けられている。そして、第1の収容部よりも厚いこの第2の収容部を、蓄冷材容器の四隅寄りの各位置を含む外縁寄り部分に偏在させている。これにより、平坦な板状で収容領域の厚みが均一となった従来の蓄冷材容器を用いた蓄冷材に比べて、同程度の体積の収容領域の場合で比較すると、凍結した蓄冷媒体が蓄冷材容器の外縁部、特に隅寄り部分において融けやすくなることを抑制でき、蓄冷材の保冷性能を向上させることが可能となる。また、その結果、保冷性能を維持しつつ、蓄冷媒体の量を減らすことが可能となるので、蓄冷材の軽量化を図ることが可能となる。
【0022】
発明の第2態様では、第2の収容部が収容領域の平面形状の総面積の20%以上の面積を占めるので、蓄冷材の保冷性能をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
発明の第3態様では、蓄冷材容器の四隅寄りの各位置を含む外縁寄り部分に偏在した第2の収容部が、収容領域において最も厚い部分を含むので、蓄冷材容器のうち第2の収容部が設けられた外縁部で蓄冷媒体が融け易くなることをさらに抑制可能となり、蓄冷材の保冷性能をさらに向上させることが可能となる。
【0024】
発明の第4態様では、収容領域の中心部が、第1の収容部に含まれるか、又は、第1の収容部に囲まれて第1厚さ未満となっている。従って、収容領域において蓄冷媒体が凍結しにくい中心部付近の蓄冷媒体を凍結させ易くすることが可能となる。
【0025】
発明の第5態様では、収容領域全体に対する第2の収容部の体積の割合を35~70%とすることで、同程度の体積の収容領域を有する従来の蓄冷材容器に比べて、蓄冷材の保冷性能をより向上させることが可能となる。また、その結果、保冷性能を維持しながら、蓄冷媒体の量をより減らすことが可能となるので、蓄冷材の軽量化を一層図ることが可能となる。
【0026】
発明の第6態様では、収容領域全体に対する第1の収容部の体積の割合を30~65%とすることで、同程度の体積の収容領域を有する従来の蓄冷材容器に比べて、蓄冷材の保冷性能をより向上させることが可能となる。また、その結果、保冷性能を維持しながら、蓄冷媒体の量をより減らすことが可能となるので、蓄冷材の軽量化を一層図ることが可能となる。
【0027】
発明の第7態様では、第2の収容部の厚さが、第1の収容部の厚さの1.75~2.25倍であるので、蓄冷材の保冷性能のさらなる向上が可能となる。
【0028】
発明の第8態様では、樹脂製の蓄冷材容器の肉厚が、0.5~3mmとなっているので、蓄冷媒体を蓄冷材容器に収容した蓄冷材の保冷性能を高めることが可能となると共に、強度や成形性の良好な蓄冷材容器を得ることが可能となる。
【0029】
発明の第9態様では、第1の収容部が、蓄冷材容器の中心部から外縁部まで延びている。従って、蓄冷媒体を収容した蓄冷材容器同士を厚さ方向に重ねたときに、厚さ方向で隣合う蓄冷材容器の第1の収容部同士の間に隙間を形成することが可能となる。これにより、蓄冷媒体を凍結させる際に、上記隙間に冷気を通し易くなるので、蓄冷材の凍結を速くすることが可能となる。また、本発明によれば、第1と第2の収容部の厚さの差が、9~23mmとなっているので、蓄冷材容器同士を厚さ方向に重ねた場合に、第1の収容部同士の間に指を挿入可能な隙間を設けることが可能となる。これにより、第1の収容部を挟んで蓄冷材容器を容易に把持することが可能となる。
【0030】
発明の第10態様では、蓄冷材容器同士を重ねたときに、位置決め係合部によって蓄冷材容器同士を容易に位置決めすることができる。発明の第11態様のように、位置決め係合部を、蓄冷材容器の表裏の面に設けられた突部で構成することで、位置決め係合部を突部と凹部とで構成する場合に比べて、蓄冷材容器の載置を安定化させることが可能となる。さらに、係合突部と包囲突部の突出量を略同じとすることで、蓄冷材容器の載置をより安定化させることが可能となる。
【0031】
発明の第12態様では、蓄冷材容器の長手方向の一端部に長孔形状の手差部が設けられるので、手差部に指を入れて蓄冷材容器を把持することができる。
【0032】
第2の収容部は、蓄冷材容器の外縁部において、蓄冷材容器の隅部にのみ設けられてもよいし、第1の収容部を包囲する枠状をなしていてもよい(発明の第13態様)。
【0033】
発明の第14態様では、蓄冷材容器の中心部に、貫通孔又は凹部が形成されているので、蓄冷材容器の中心部付近の蓄冷媒体の凍結時間を短縮させることが可能となる。
【0034】
発明の第15態様では、蓄冷材容器の相対する2辺部の途中に、対辺方向の内側に凹んだ凹部が形成されているので、その対辺方向に蓄冷材容器を隣接させたときに、蓄冷材容器同士の間に隙間が設けられることとなる。従って、このような配置で蓄冷材の蓄冷媒体を凍結させる場合、上記隙間に冷気を通すことができるので、蓄冷媒体を凍結させ易くすることができる。また、上記隙間が指を挿入可能な大きさとなるように上記凹部を形成すれば、例えば蓄冷媒体の凍結後に蓄冷材を把持する際等に、上記隙間に指を入れることで、蓄冷材を把持し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本開示の第1実施形態に係る蓄冷材容器を備えた蓄冷材の平面図
図2】蓄冷材のA-A断面図
図3】蓄冷材のB-B断面図
図4】(A)短手方向に見たときの蓄冷材容器の側面図、(B)手差部側から長手方向に見たときの蓄冷材容器の側面図、(C)封入口側から長手方向に見たときの蓄冷材容器の側面図
図5】蓄冷材容器のC-C断面図
図6】短手方向に隣接した蓄冷材容器同士の平面図
図7】(A)厚さ方向に重なった蓄冷材の側面図、(B)蓄冷材容器同士の互いに係合した係合突部と包囲突部の長手方向から見た側断面図
図8】各実験例の(A)蓄冷材容器の収容領域の平面図、(B)蓄冷材容器の収容領域の側面図、(C)蓄冷材容器を用いた蓄冷材の試験の結果を示すテーブル
図9】(A)試験ボックスの側断面図、(B)試験ボックスの平断面図、(C)表面の温度測定位置を示す蓄冷材の平面図
図10】(A)蓄冷材容器の収容領域の平面図、(B)蓄冷材容器の収容領域の側面図、(C)蓄冷材容器の平面図
図11】(A)蓄冷材容器の収容領域の平面図、(B)蓄冷材容器の収容領域の側面図、(C)蓄冷材容器の収容領域の平面図、(D)蓄冷材容器の収容領域の側面図
図12】(A)蓄冷材容器の収容領域の平面図、(B)蓄冷材容器の収容領域の側面図、(C)蓄冷材容器の収容領域の平面図、(D)蓄冷材容器の収容領域の側面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
図1及び図2に示されるように、本開示の第1実施形態に係る蓄冷材容器10(以下、単に容器10という。)は、平面視略長四角形の板状をなし、内部に蓄冷液11(特許請求の範囲に記載の「蓄冷媒体」に相当する。)を収容する扁平な収容領域Rを有する。容器10は、例えば、樹脂のブロー成型品であり、熱伝導性を有する。そして、容器10に蓄冷液11を封入してなる蓄冷材100は、蓄冷液11を凍結させた状態で使用される。なお、容器10は、透明又は半透明となっていて、蓄冷液11の凍結の有無を外側から視認可能となっている。また、容器10の一短辺部には、蓄冷液11の封入口11Kが設けられ、封入口11Kは、例えばキャップ等で閉塞される。なお、蓄冷材100には、蓄冷液11の代わりにゲル状の蓄冷媒体が収容されてもよい。また、容器10は、平面視略正方形の板状であってもよい。
【0037】
容器10の肉厚(容器10において収容領域Rを包囲する部分の肉厚)は、0.5~3mmとなっていることが好ましい。これにより、蓄冷材100の保冷性能を高めることが可能となる。また、容器10の肉厚が、0.5mm以上であると、容器10の強度が確保し易くなる。容器10の肉厚が、3mm以下であると、ブロー成形での成形が容易となる。
【0038】
図2及び図3に示されるように、本実施形態の容器10の収容領域Rには、収容領域Rの厚さが異なる複数の収容部が設けられている。具体的には、図5に示されるように、収容領域Rには、容器10の中心部(即ち、収容領域Rの中心部)を含む第1の収容部20Aと、容器10の外縁寄り部分に偏在した第2の収容部20とが設けられている。
【0039】
図5に示されるように、第1の収容部20Aは、板状をなし、本実施形態では、収容領域Rにおいて厚さ方向から見たときに面積が最も大きい部分(平面形状の面積が最も大きい部分)となっている。具体的には、第1の収容部20Aの平面形状の面積は、収容領域R全体の平面形状の総面積の40~80%となっている。また、第1の収容部20Aは、第2の収容部20よりも薄くなっている(即ち、第2の収容部20は、第1の収容部20Aよりも厚くなっている)。なお、本実施形態では、上述のように、収容領域Rの中心部が第1の収容部20Aに含まれるが、収容領域Rの中心部は、第1の収容部20Aに囲まれて第1厚さ未満となっていてもよく、この場合、例えば、収容領域Rの中心部に貫通孔(例えば後述のリブ16が収容される貫通孔等)又は凹部が設けられていてもよい。
【0040】
図2及び図3に示されるように、第2の収容部20には、板状をなし、収容領域Rのうち最も厚い最厚収容部20Bが設けられている。最厚収容部20Bは、容器10の外縁部に偏在していて、本実施形態では、容器10の四隅部(4つの隅部15)にそれぞれ設けられている(図1及び図5参照)。なお、各最厚収容部20Bは、容器10の長手方向に長くなった略長四角形状をなしている。
【0041】
図5に示されるように、第2の収容部20には、容器10の両短辺部に設けられた板状の短辺収容部20Cも設けられている。短辺収容部20Cは、第1の収容部20Aと最厚収容部20Bとの間の厚さになっている(図3参照)。詳細には、短辺収容部20Cは、容器10の短手方向に長くなっていると共に、容器10の短辺部における2つの隅部15の最厚収容部20B同士を連絡している。
【0042】
なお、本実施形態では、収容領域Rのうち第2の収容部20以外の部分は、ほとんどが第1の収容部20Aとなっており、第1の収容部20Aの厚さである第1厚さは、容器の基準厚みとなっている。第1の収容部20Aは、収容領域Rの両長辺部まで、収容領域Rの中心部から延在している。
【0043】
図1及び図3に示されるように、容器10のうち一方の短辺部(長手方向の一端部)には、容器10を厚さ方向に貫通し、容器10の短手方向に延びる長孔形状の手差部13が形成されている。従って、手差部13に指を入れて容器10を把持することができる。なお、手差部13は、容器10の一方の短辺部において、両隅部15の最厚収容部20Bとそれらの間の短辺収容部20Cとにまたがって形成されている。
【0044】
本実施形態では、容器10の厚さ方向から見たときに、第1の収容部20Aが収容領域Rの総面積(平面形状の総面積)の40~80%の面積を占めていると共に、最厚収容部20Bの合計面積が収容領域Rの総面積の20%以上を占めている(即ち、第2の収容部20の合計面積も20%以上を占めている)。また、本実施形態では、第1の収容部20Aと第2の収容部20とが、合計で収容領域Rの平面形状の総面積の70~100%を占めていて、該総面積の80~100%を占めていることが好ましく、90~100%を占めていることがさらに好ましい。なお、容器10の厚さ方向から見たときの収容領域R、各収容部20A,20(20B,20C)の面積には、収容領域Rの貫通孔の面積は含まれない(例えば後述のリブ16の面積は含まれない)。
【0045】
第2の収容部20の厚さは、第1の収容部20Aの厚さ(第1厚さ)の1.30~3.05倍となっている。保冷性能の観点から、第2の収容部20の厚さは、第1厚さの1.75~2.25倍であることがより好ましく、第1厚さの1.80~2.25倍であることがさらに好ましい。また、収容領域Rのうち第1の収容部20Aの厚さ(第1厚さ)以上となる部分は、収容領域Rの平面形状の総面積の70%以上の面積を占めていて、該総面積の80%以上の面積を占めていることが好ましく、90%以上の面積を占めていることがさらに好ましい。なお、図2及び図3に示す例では、例えば、第1の収容部20Aの厚さは、13mmであり、最厚収容部20Bの厚さ(第2厚さ)は、28mmであり、短辺収容部20Cの厚さは、18mmとなっている。
【0046】
容器10では、保冷性能の観点から、収容領域R全体に対する第2の収容部20の合計の体積の割合が、35~70%となっていることが好ましく、35~65%となっていることがより好ましい。また、保冷性能の観点から、収容領域R全体に対する第1の収容部20Aの体積の割合は、30~65%となっていることが好ましく、35~65%となっていることがより好ましい。
【0047】
図1及び図5に示されるように、容器10の両方の長辺部の途中位置には、対辺方向の内側(本実施形態では、短手方向の内側)に凹んだ外縁凹部14が形成され、この外縁凹部14により、容器10の第1の収容部20Aの短手方向の幅が狭くなっている。これにより、収容領域Rでは、容器10の隅部15に配置された第2の収容部20(最厚収容部20B)が、短手方向で第1の収容部20Aよりも張り出した形状となっている。詳細には、容器10の短手方向では、外縁凹部14により隅部15が相対的に張り出すことで、容器10の短手方向の長さ(容器10の幅)が、短辺部で最大幅となっている。一方、容器10の長手方向中央部における短手方向の幅(第1の収容部20Aが設けられている部分の幅)は、外縁凹部14が設けられることで最小幅となっている。このように、外縁凹部14により、容器10の長手方向の途中部分が狭幅となることで、隅部15が短手方向外側に張り出すこととなるので、凍結した蓄冷液11が、隅部15において融けやすくなることを一層抑制可能となる。これにより、容器10の長手方向での保冷性能をより均一化することが可能となると共に、保冷性能の向上が可能となることで蓄冷液11を減らして軽量化を図ることも可能となる。なお、外縁凹部14は、容器10の厚さ方向から見て、短手方向の内側に向かうにつれて狭くなる台形状をなしている。また、外縁凹部14は、容器10の短辺部に設けられていてもよい。
【0048】
図6に示されるように、容器10を短手方向に隣接配置すると、容器10同士の隣接する長辺部同士の間に外縁凹部14により隙間S1が設けられる。従って、このような配置で蓄冷材100の蓄冷液11を凍結させる場合、上記隙間に冷気を通すことができるので、蓄冷液11を凍結させ易くすることができる。また、上記隙間が指を挿入可能な大きさとなるように外縁凹部14を形成すれば、蓄冷液11の凍結後に蓄冷材100を把持する際に、上記隙間に指を入れることで、蓄冷材100を把持し易くなる。外縁凹部14の深さは、5~30mmであることが好ましい。外縁凹部14の深さは、5mm以上であると、蓄冷液11を凍結させる際に隙間S1に冷気を通しやすくなり、蓄冷液11の凍結を特に速くすることができる。また、外縁凹部14の深さが30mm以下であると、蓄冷材100を短手方向に隣接させて使用する際に、隙間S1付近の保冷効果の低下を特に抑えることが可能となる。
【0049】
本実施形態では、収容領域Rは、容器10の表裏で略対称形状となっている。即ち、第2の収容部20は、第1の収容部20Aに対して、表裏で略対称的に厚くなっている。また、容器10における各収容部同士の境目には、段差部19が形成されている。詳細には、段差部19は、容器10の厚さ方向に対して傾斜するように収容領域Rの厚さを変化させてなる。
【0050】
なお、板状の第1の収容部20Aは、厳密に均一な厚さの部分のみから構成されていなくてもよく、一定範囲内の厚さの部分から構成されていてもよい。その場合、それら厚さの平均値を第1の収容部20Aの厚さ(第1厚さ)とすればよい。なお、この場合、その平均値に対して例えば±10%の範囲内の厚さの部分を、同一の収容部20Aに含めることとすればよい。具体的には、第1の収容部20Aは、上記範囲内で、凹凸、傾斜部等を含んでもよい。また、最厚収容部20Bと短辺収容部20Cは、板状でなくてもよい。
【0051】
なお、図1に示されるように、容器10には、第1の収容部20Aを貫通する複数のリブ16が形成されている。詳細には、図3に示されるように、リブ16は、容器10のうち収容領域Rを厚さ方向に挟んで対向する1対の対向壁17から互いに近づくように隆起したカップ部18の底部同士が連結した形状となっている。このリブ16が設けられることで、蓄冷液11が膨張した場合でも、容器10が対向壁17同士が遠ざかるように膨むことを抑制でき、容器10が破裂することが抑制される。また、カップ部18は、厚さ方向で内側から外側に向けて開口している。従って、蓄冷材100では、カップ部18の開口からカップ部18内に冷気を進入させることができ、容器10の中心部付近の蓄冷液11を凍結させ易くすることが可能となる。
【0052】
また、容器10の中心部には、手差部13のような厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよいし、容器10の表面又は裏面に開口する凹部が設けられていてもよい(例えばカップ部18が設けられて、カップ部18の内側部分で上記凹部が形成されてもよい)。このような貫通孔又は凹部を設けることで、収容領域Rの中心部に、貫通孔を形成するか又は第1の収容部20Aよりも薄い部分を形成することが可能となり、蓄冷液11の凍結時間を短縮させることが可能となる。
【0053】
図1及び図4に示されるように、容器10の各隅寄り部分の表裏の面には(具体的には、容器10のうち最厚収容部20Bを厚さ方向で覆う部分には)、位置決め係合部30が形成されている。位置決め係合部30は、対向壁17から突出する係合突部31と包囲突部32とを備える。係合突部31は、略円錐台形状をなしている。包囲突部32は、同軸同径の1対の半円弧状の突部からなる。包囲突部32の突出先端の内径は、係合突部31の突出先端の外径よりも大きくなっている。また、係合突部31と包囲突部32とは、容器10の厚さ方向で重なる位置に配置されて同軸配置されている。また、容器10の各隅寄り部分において、表裏の一方に係合突部31が設けられている場合には、表裏の他方に包囲突部32が設けられるように配置されている。本実施形態では、容器10のうち対角線上に配置される1対の隅部15同士においては、係合突部31、包囲突部32の配置は同じになっていて、残りの1対の隅部15同士とは係合突部31と包囲突部32の表裏の配置が逆になっている。また、容器10の隅部15からの突出量は、係合突部31と包囲突部32とで略同じになっている。なお、容器10は、厚さ方向で両側から見た場合に同形状となっていると共に、短手方向で両側から見た場合にも同形状となっている。
【0054】
図7(A)には、厚さ方向に重なった容器10が示されている。このように、容器10は、他の部分よりも厚い隅部15同士が重ね合わされるようにして整列する。この状態では、隣り合う容器10同士において互いに対向する部分に設けられた係合突部31と包囲突部32とが、凹凸係合する(図7(B))。具体的には、一方の容器10の包囲突部32の内側に他方の容器10の係合突部31が受容されて嵌合する。これにより、それら容器10同士が、厚さ方向と直交する方向でずれることを抑制できる。なお、図1に示されるように、容器10では、対角線上の位置決め係合部30の形状、配置が同じになっているので、容器10の表裏のどちらを隣の容器10に向けて重ねても、隣合う容器10同士において、一方の容器10の係合突部31が他方の容器10の包囲突部32に係合するようになっている。また、本実施形態では、上述のように、係合突部31と包囲突部32との隅部15からの突出量が、略同じになっているので、容器10の表面又は裏面を下にした状態で容器10を載置し易くすることが可能となる。また、位置決め係合部30が各隅寄り部分に設けられるので、容器10の載置の安定化が図られる。
【0055】
本実施形態の容器10では、上述のように、容器10が略四角形の板状をなし、容器10の内部に蓄冷液11が収容される扁平な収容領域Rが設けられる。収容領域Rには、第1厚さの板状をなして、収容領域Rの平面形状の総面積の40~80%の面積を占める第1の収容部20Aが設けられ、収容領域Rのうち第1厚さ以上となる部分は、収容領域Rの平面形状の総面積の70%以上の面積を占めている。また、収容領域Rには、第1厚さの1.30~3.05倍の厚さである第2の収容部20が設けられている。ここで、平板状で表裏の面が平坦となった従来の蓄冷材容器に蓄冷液を封入してなる従来の蓄冷材では、凍結して使用する際に、蓄冷液が、中心部に比べて外縁部(特に隅部)で融け易く、保冷性能が低いという問題があった。これに対し、本実施形態の容器10では、第1の収容部20Aよりも厚い第2の収容部20を、容器10の四隅寄りの各位置を含む外縁寄り部分に偏在させている。これにより、平坦な板状で収容領域Rの厚みが均一となった従来の容器を用いた蓄冷材に対して、同程度の体積の収容領域Rの場合で比較すると、凍結した蓄冷液11が容器10の外縁寄り部分、特に隅寄り部分において融けやすくなることを抑制でき、蓄冷材100の保冷性能を向上させることが可能となる。また、その結果、保冷性能を維持しつつ、蓄冷液11の量を減らすことが可能となり、蓄冷材100の軽量化を図ることも可能となる。第2の収容部20の厚さが、第1厚さの1.30倍未満であると、従来に対して蓄冷材100の保冷性能を向上させ難くなる。また、第2の収容部20の厚さが、第1厚さの3.05倍を超えても、従来に対して蓄冷材100の保冷性能を向上させ難くなる。また、収容領域Rのうち容器10の中心部に、第2の収容部20よりも薄い第1の収容部20Aが配置されるので、容器10内の蓄冷液11を凍結させる際に、容器10の中心部を凍結させ易くすることが可能となる。
【0056】
第2の収容部20の厚さが、第1の収容部20Aの厚さの1.75~2.25倍であると、蓄冷材100の保冷性能をより向上させることが可能となる。さらに、第2の収容部20の厚さが、第1の収容部20Aの厚さの1.80~2.25倍であると、蓄冷材100の保冷性能のさらなる向上が可能となる。また、第1の収容部20Aの平面形状の面積が、収容領域Rの平面形状の総面積に対して40%以上となることで、収容領域Rの体積が同程度の従来の容器を用いる場合に比べて、収容領域Rの中心部付近の蓄冷液11の凍結を速くすることができる。さらに、第1の収容部20Aの平面形状の面積が、収容領域Rの平面形状の総面積に対して80%以下となることで、第2の収容部20よりも薄い第1の収容部20Aの割合が大きくなって蓄冷材100の保冷性能が低くなることを抑えることができる。また、第2の収容部20の平面形状の面積が、収容領域Rの平面形状の総面積の20%以上となることで、容器10の外縁寄り部分、特に隅寄り部分において凍結した蓄冷液11が融けやすくなることを抑制できる。また、収容領域R全体に対する第2の収容部20の合計の体積の割合を35~70%とすることで、蓄冷材100の保冷性能をより向上させることが可能となる。また、収容領域R全体に対する第1の収容部20Aの体積の割合を30~65%とすることによっても、蓄冷材100の保冷性能をより向上させることが可能となる。
【0057】
本実施形態では、第1の収容部20Aが、容器10の中心部から隅部15同士の間の外縁部まで延びている。従って、蓄冷液11を収容した容器10同士を厚さ方向に重ねたときに、隣合う容器10の第1の収容部20A同士の間に隙間を形成することができる。これにより、蓄冷液11を凍結させる際に、上記隙間に冷気を通し易くなるので、蓄冷材100の凍結を速くすることが可能となる。また、本実施形態では、第1の収容部20Aと最厚収容部20Bの厚さの差が、9~23mmとなっている。従って、容器10同士を厚さ方向に重ねた場合に、第1の収容部20A同士の間に指を挿入可能な隙間S2を設けることが可能となる(図7(A)参照)。これにより、長手方向で隅部15同士の間に配置される第1の収容部20Aを挟んで容器10を容易に把持することが可能となる。なお、本実施形態では、対向壁17の肉厚が略均一になっていて、対向壁17の外面における第1の収容部20Aと最厚収容部20Bとの間の段差も、9~23mmとなっている。
【0058】
本実施形態では、容器10同士を重ねたときに、位置決め係合部30によって蓄冷材100同士を容易に位置決めすることができる。さらに、位置決め係合部30を、容器10の表裏の面に設けられた突部で構成し、容器10のうち厚さが同じになった各隅寄り部分に設けることで、位置決め係合部30を突部と凹部とで構成する場合に比べて、容器10の載置を安定化させることが可能となる。さらに、係合突部31と包囲突部32の突出量を略同じとすることで、容器10の載置をより安定化させることが可能となる。
【0059】
なお、容器10では、第2の収容部20が、容器10の四隅寄りの各位置を含む外縁寄り部分に偏在していればよい。このような容器10としては、図1に示す例の他に、例えば、図10に示す収容領域Rを有するものや、図11(A)及び図11(B)に示す収容領域Rを有するものや、図11(C)及び図11(D)に示す収容領域Rを有するものや、図12(A)及び図12(B)に示す収容領域Rを有するものや、図12(C)及び図12(D)に示す収容領域Rを有するもの等が挙げられる。
【0060】
ここで、本開示において、容器10の外縁寄り部分とは、容器10を厚さ方向に見たときに、容器10のうち外縁部を含んだ枠状の部分(図10(C)に二点鎖線で示す太枠線Fよりも外側の部分)のことである。具体的には、図10(C)に示すように、容器10の外縁寄り部分は、容器10の長手方向で容器10の中央L1と外縁との間を二等分する中間位置M1よりも外側の領域と、容器10の短手方向で容器10の中央L2と外縁との間を二等分する中間位置M2よりも外側の領域と、で構成される。また、四隅寄りの各位置とは、容器10の長手方向で中央L1と外縁との間を二等分する中間位置M1よりも外側にあって、かつ、容器10の短手方向で容器10の中央L2と外縁との間を二等分する中間位置M2よりも外側にある、4箇所の隅領域C内の各位置ということである。
【0061】
[確認実験]
以下の各実験例の蓄冷材容器10に対して、蓄冷材容器10に蓄冷液11を収容した蓄冷材100の保冷性能を確認した。
【0062】
1.各実験例の蓄冷材容器及び蓄冷液の構成
<蓄冷材容器>
蓄冷材容器10(容器10)としては、略長四角の板状で、厚さ方向から見たときの収容領域Rが296mm(長さL)×158mm(幅W)の大きさとなったものを用いた。
【0063】
<実験例1~8、10~13>
これらの実験例では、容器10の収容領域Rには、第1の収容部20Aと第2の収容部20(最厚収容部20B)の2つの収容部のみが設けられ(即ち、第1と第2の収容部20A,20の合計体積が、収容領域R全体の体積と同じであり)、第2の収容部20は、四隅部のみに設けられていて、第2の収容部20は直方体状になっている。図8(A)~図8(C)には、収容領域Rのサイズ(即ち、容器10の内寸)が記載されている。具体的には、厚さTaは、各実験例の第1の収容部20Aの厚さであり、厚さTbは、第2の収容部20(最厚収容部20B)の厚さであり、長さLb、幅Wbは、それぞれ第2の収容部20の長さ(容器10の長手方向の長さ)と幅(容器10の短手方向の長さ)である。また、面積Sa、面積Sbは、それぞれ厚さ方向から見たときの第1の収容部20Aの面積、第2の収容部20の面積(合計面積)である。全体面積Sは、厚さ方向から見たときの収容領域Rの総面積であり、Sa/SとSb/Sは、それぞれ全体面積Sに対する面積Sa,Sbの割合を示す。また、体積Va、体積Vbは、それぞれ第1の収容部20Aの体積と第2の収容部20の体積である。全体体積Vは、収容領域R全体の体積であり、Va/VとVb/Vは、全体体積Vに対する体積Va,Vbの割合を示す。なお、容器10の肉厚(樹脂の肉厚)は、1.0mmである。また、図8(C)において、長さの単位はmmであり、面積の単位はmmであり、体積の単位はmmである。
【0064】
<実験例9>
実験例9では、厚さの異なる複数の収容部が設けられておらず(第1の収容部20Aのみが設けられ)、収容領域Rが均一厚さとなっている。
【0065】
なお、実験例1~8が「実施例」に相当し、実験例9~13が、「比較例」に相当する。
【0066】
<蓄冷液>
各実験例で、同じ種類の蓄冷液11を用いた。蓄冷液11の原料の詳細は、以下の通りである。
【0067】
溶媒;水 77重量部
無機塩;塩化ナトリウム 23重量部
増粘剤;カルボキシメチルセルロース 2重量部
【0068】
なお、容器10の収容領域Rの全体の体積に対して、収容領域Rに収容された蓄冷液11の体積は、90%である。
【0069】
2.評価方法
<-8℃到達時間>
図9に示されるように、容器10に蓄冷液11を収容してなる蓄冷材100を、常温(23±2℃)下に設置した断熱部材からなる試験ボックス81内に密封し、試験ボックス81内の雰囲気温度が-15℃から-8℃になるまでの時間を測定した(-8℃到達時間は、長い程、蓄冷材100の保冷性能が高いということになる)。詳細には、図9(A)及び図9(B)に示されるように、蓄冷材100を厚さ方向が鉛直方向となるように配置し、蓄冷材100の4つの隅部15のみをそれぞれ下方から4つの断熱部材82で支持して、蓄冷材100の下面(最下面)が試験ボックス81を載置した載置面から120mm浮くようにした。このとき、蓄冷材100は、断熱部材82のみに接触し、試験ボックス81の内面には接触しないようにした。そして、蓄冷材100から下方に20mm離れた高さ位置の(試験ボックス81の載置面から上方に100mm離れた高さ位置)の点A,Bにおける温度を測定した。詳細には、図9(B)に示されるように、点Aは、上記高さ位置において、上方から見たときに、試験ボックス81の中心かつ蓄冷材100の中心と重なる点である。また、点Bは、上記高さ位置において、点Aから試験ボックス81の対角線上で1つの隅部側に80mmずれた点である。なお、試験ボックス81は、EPS(発泡スチロール)製で、内寸が330mm×165mm×190mmで、肉厚が25mmである。
【0070】
なお、蓄冷材100は、試験ボックス81に収容する前に、-35℃で24時間以上完全凍結させておく。また、試験ボックス81には、図9に示す上記の点A,Bの位置に、予め温度センサーを取り付けておき、試験ボックス81は、蓄冷材100の設置前に、断熱部材82を設置した状態で24時間、常温(23±2℃)の雰囲気下に置いておく。
【0071】
-8℃到達時間が、3.0時間以上の場合を◎、2.7時間以上3.0時間未満の場合を〇、2.7時間未満の場合を×、と評価した。
【0072】
<蓄冷材の表面温度の均一性>
上記の-8℃到達時間の試験と同様にして、-35℃で24時間以上完全凍結させた蓄冷材100を試験ボックス81内に配置してから、試験ボックス81内の蓄冷材100の表面温度3点(以下の点C~Eの温度)の最大値と最小値の差ΔTが、2℃を超えるまでの時間を、蓄冷材の表面温度の均一性の評価とした(即ち、この時間が長いほど蓄冷材の表面温度の均一性が高いということになる)。そして、ΔT>2℃になるまでの上記時間(表面温度差>2℃ 到達時間)が、3.5時間以上の場合には◎、3時間以上3.5時間未満の場合には〇、3時間未満の場合には×、と評価した。なお、図9(C)に示されるように、蓄冷材100の表面温度を測定した上記3点は、何れも容器10の上面に位置し、容器10の上面における中心である点Cと、容器10の1つの角から対角線上で40mm内側に(点Cに向かって)ずれた点E、及び、点Eからさらに対角線上で内側に60mm(角から100mm)ずれた点D、である。また、蓄冷材100には、-35℃で24時間以上完全凍結させる前に、図9(C)に示す上記の点C,D,Eの位置に、予め温度センサーを取り付けておく。
【0073】
3.評価結果
図8(C)に示されるように、第1の収容部20Aの厚さTaに対する、第2の収容部20の厚さTbの比である、Tb/Taが、1.30~3.05である実験例1~8の容器10では、-8度到達時間の評価と、蓄冷材の表面温度の均一性の評価との両方で、○以上となり、蓄冷材100の保冷性能の向上が図られることが確認できた。さらに、Tb/Taが、1.80~2.25となった実験例1,2,5,6では、-8℃到達時間が3.2時間以上と非常に良好であった。
【0074】
また、Tb/Taが、1.30~3.05であり、かつ、第1の収容部20Aの体積Vaと収容領域R全体の体積Vとの比であるVa/Vが、30~65%である(即ち、Vb/Vが35~70%である)実験例1~8では、-8℃到達時間の評価と、蓄冷剤の表面温度の均一性の評価との両方で、○以上となった。さらに、Va/Vが45~65%である(即ち、Vb/Vが35~55%である)実験例1~5では、上記2つの評価の両方で◎となり、蓄冷材100の保冷性能の一層の向上が図られることが確認できた。
【0075】
以上のように、本開示の「実施例」に相当する実験例1~8では、収容領域Rの全体が均一の厚さとなった従来の構成である実験例9や、実験例10~13に比べて、蓄冷材100の保冷性能を向上させることが可能となることが確認された。
【0076】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、第2の収容部20が、第1の収容部20Aを包囲する枠状に配置されていてもよい。また、短辺収容部20Cと同様に第1の収容部20Aと最厚収容部20Bの間の厚さとなった収容部が、収容領域Rの長辺部で隅部15同士の間に設けられていてもよい。
【0077】
(2)上記実施形態において、第2の収容部20が隅部15のみに設けられていてもよい。
【0078】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0079】
10 蓄冷材容器
20A 第1の収容部
20B 最厚収容部(第2の収容部)
20C 短辺収容部(第2の収容部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12