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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20240326BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/06
A61K8/86
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/89
A61Q19/10
A61Q1/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021034505
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134970
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸奈
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187215(WO,A1)
【文献】特開2014-114273(JP,A)
【文献】特開2019-156753(JP,A)
【文献】特開2000-229814(JP,A)
【文献】特開2002-201355(JP,A)
【文献】特開2003-286125(JP,A)
【文献】特開2004-331617(JP,A)
【文献】特開2015-172044(JP,A)
【文献】特開2018-188370(JP,A)
【文献】特開2021-080210(JP,A)
【文献】特開2022-092870(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011078260(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第111728883(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
Caplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含み、
前記成分(A1)及び前記成分(A2)の合計の含有量が8.0~25.0質量%であり、
前記成分(A1)及び前記成分(A2)の合計に対する前記成分(A1)の質量割合(A1/(A1+A2))が0.45~0.95であり、
前記成分(B)の含有量が20.0~50.0質量%であり、
前記成分(C)の含有量が40.0~60.0質量%であり、
25℃における粘度が2000mPa・s以下である、油中水型乳化化粧料。
成分(A1):グリセリンの平均重合度が5~12である、ジイソステアリン酸ポリグリセリ
成分(A2):グリセリンの平均重合度が5~12である、イソステアリン酸ポリグリセリ
成分(B):炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油剤
成分(C):水
【請求項2】
更に、下記成分(D)を含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
成分(D):イソステアリン酸プロピレングリコール
【請求項3】
前記成分(B)が、炭化水素油及びシリコーン油を含む、請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)が、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油を含む、請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
クレンジング用化粧料である、請求項1~4の何れか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項6】
シート基材と、該シート基材に含浸された請求項1~5の何れか1項に記載の油中水型乳化化粧料とを含む、シート化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮脂等の汚れやメイクアップ化粧料の除去のために、水性化粧料(化粧水等)や、水性化粧料のようなさっぱりとした使用感を目的とした水中油型乳化化粧料が使用されている。しかし、これらのような水を外相とする水性化粧料や水中油型乳化化粧料では、油性マスカラ等の油性メイクアップ化粧料に対して除去力が不十分であった。
【0003】
一方、油性化粧料は、皮脂等の汚れや油性メイクアップ化粧料に対する高い除去力を有するが、除去後のべたつきについて更に洗浄を必要とすることがあった。そのため、べたつきを低減し洗浄を不要とすることを目的として、内相として水性成分を有する油中水型乳化化粧料を用いることが提案されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-286125号公報
【文献】特開2000-229814号公報
【文献】特開2002-201355号公報
【文献】特開2004-331617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4の油中水型乳化化粧料には、高い除去力を有するものの、高粘度であるため、使用後の拭取りの際や、シート化粧料として使用する際に、シート基材への含浸が容易ではないという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、メイクアップ化粧料の除去力に優れ、かつ低粘度である、油中水型乳化化粧料を提供することにある。本発明の目的は、また、上記油中水型乳化化粧料をシート基材に含浸させたシート化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、下記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含み、
上記成分(A1)及び上記成分(A2)の合計の含有量が8.0~25.0質量%であり、
上記成分(A1)及び上記成分(A2)の合計に対する上記成分(A1)の質量割合(A1/(A1+A2))が0.45~0.95であり、
上記成分(B)の含有量が20.0~50.0質量%であり、
上記成分(C)の含有量が40.0~60.0質量%であり、
25℃における粘度が2000mPa・s以下である、油中水型乳化化粧料を提供する。
成分(A1):グリセリンの平均重合度が5~12である、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル及びジオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル
成分(A2):グリセリンの平均重合度が5~12である、イソステアリン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル及びオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル
成分(B):炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油剤
成分(C):水
【0008】
上記油中水型乳化化粧料は、更に、下記成分(D)を含むことが好ましい。
成分(D):イソステアリン酸プロピレングリコール
【0009】
上記成分(B)は、炭化水素油及びシリコーン油を含むことが好ましい。
【0010】
上記成分(B)は、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油を含むことが好ましい。
【0011】
上記油中水型乳化化粧料は、クレンジング用化粧料として用いてもよい。
【0012】
本発明は、また、シート基材と、該シート基材に含浸された上記油中水型乳化化粧料とを含む、シート化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の油中水型乳化化粧料では、上記構成を有することにより、優れた除去力と低粘度であることを実現する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[油中水型乳化化粧料]
本発明の油中水型乳化化粧料は、グリセリンの平均重合度が5~12である、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル及びジオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステルと;グリセリンの平均重合度が5~12である、イソステアリン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル及びオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステルと;炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油剤と;水とを必須の構成成分として含有する。本発明の油中水型乳化化粧料は、更に、イソステアリン酸プロピレングリコールを含有することが好ましい。なお、本明細書においては、上記「グリセリンの平均重合度が5~12である、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル及びジオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「成分(A1)」;上記「グリセリンの平均重合度が5~12である、イソステアリン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル及びオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「成分(A2)」;上記「炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油剤」を「成分(B)」;上記「水」を「成分(C)」;上記「イソステアリン酸プロピレングリコール」を「成分(D)」と称する場合がある。本発明の油中水型乳化化粧料は、上記成分(A1)~(D)以外の成分(その他の成分)を含有してもよい。成分(A1)、(A2)、(B)及び(D)やその他の成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし2種以上を用いてもよい。
【0015】
<成分(A1)及び成分(A2)>
本発明の油中水型乳化化粧料に使用する成分(A1)は、ポリグリセリン部分のグリセリンの平均重合度が5~12である、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル及びジオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンジ脂肪酸エステル)である。
【0016】
上記成分(A1)のポリグリセリン部分のグリセリンの平均重合度は、乳化安定性の観点から、5~12であり、好ましくは6~11、より好ましくは7~10である。
【0017】
本発明の油中水型乳化化粧料に使用する成分(A2)は、ポリグリセリン部分のグリセリンの平均重合度が5~12である、イソステアリン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル及びオレイン酸ポリグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル)である。
【0018】
上記成分(A2)のポリグリセリン部分のグリセリンの平均重合度は、乳化安定性の観点から、5~12であり、好ましくは6~11、より好ましくは7~10である。
【0019】
本発明の油中水型乳化化粧料中の、上記成分(A1)及び上記成分(A2)の合計の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、8.0~25.0質量%であり、好ましくは9.0~15.0質量%、より好ましくは10.0~12.0質量%である。上記成分(A1)及び上記成分(A2)の合計の含有量が8.0質量%以上であると、低粘度で安定な乳化状態が得られやすく、25.0質量%以下であると、べたつきを低減し使用感が良好となりやすい。
【0020】
上記成分(A1)及び上記成分(A1)の合計に対する上記成分(A1)の質量割合(A1/(A1+A2))は、油中水型の安定した乳化状態を形成する観点から、0.45~0.95であり、好ましくは0.50~0.90、より好ましくは0.50~0.80である。
【0021】
<成分(B)>
本発明の油中水型乳化化粧料に使用する成分(B)は、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油から選択される少なくとも1種の油剤である。上記成分(B)は、油中水型乳化状態を形成する油性成分である。上記炭化水素油は炭化水素油系メイクアップ化粧料の除去に特に効果を発揮し、上記シリコーン油はシリコーン油系メイクアップ化粧料の除去に特に効果を発揮する。そして、上記エステル油は肌なじみがよくべたつきが少ない。
【0022】
上記成分(B)の、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて25℃で測定された粘度は、1500mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1000mPa・s以下である。粘度の下限は、通常、10mPa・sである。上記成分(B)の粘度が1500mPa・s以下であると、油中水型乳化化粧料が低粘度になりやすい。
【0023】
上記成分(B)は、上記炭化水素油及び上記シリコーン油を含むことが好ましく、上記炭化水素油、上記シリコーン油及び上記エステル油を含むことがより好ましい。
【0024】
上記成分(B)は、25℃で液状であることが好ましい。
【0025】
上記炭化水素油の具体例としては、αオレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン、イソヘキサデカン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ミネラルオイル等が挙げられる。中でも、炭化水素油系のメイクアップ化粧料が除去されやすくなる観点から、ミネラルオイル、イソドデカンが好ましい。
【0026】
上記炭化水素油の本発明の油中水型乳化化粧料中の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、10.0~25.0質量%が好ましく、より好ましくは12.0~15.0質量%である。上記炭化水素油の含有量が10.0質量%以上であると、炭化水素油系のメイクアップ化粧料に対する除去力が得られやすく、25.0質量%以下であると、乳化安定性がより一層良好となりやすい。
【0027】
上記シリコーン油の具体例としては、メチルポリシロキサン(ジメチコン)、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール等が挙げられる。中でも、シリコーン油系のメイクアップ化粧料が除去されやすくなる観点から、ジメチコン、デカメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0028】
上記シリコーン油の本発明の油中水型乳化化粧料中の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、10.0~25.0質量%が好ましく、より好ましくは12.0~15.0質量%である。上記シリコーン油の含有量が10.0質量%以上であると、シリコーン油系のメイクアップ化粧料に対する除去力が得られやすく、25.0質量%以下であると、乳化安定性がより一層良好となりやすい。
【0029】
上記エステル油の具体例としては、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリオクタノイン、トリエチルヘキサノイン)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、アジピン酸ジイソプロピル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、パルミチン酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。中でも、メイク汚れとのなじみがよくべたつきが少なくなりやすい観点から、ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0030】
上記エステル油の本発明の油中水型乳化化粧料中の含有量は、油中水型乳化化粧料を低粘度にする観点から、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、10.0質量%以下(例えば、0~10.0質量%)が好ましく、より好ましくは1.0~9.0質量%である。
【0031】
上記成分(B)の本発明の油中水型乳化化粧料中の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、20.0~50.0質量%であり、好ましくは25.0~45.0質量%である。上記成分(B)の含有量が20.0質量%以上であると、メイクアップ化粧料に対する除去力が得られやすく、50.0質量%以下であると、乳化安定性がより一層良好となりやすい。
【0032】
<成分(C)>
本発明の油中水型乳化化粧料に使用する成分(C)としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、温泉水、深層水等が挙げられる。
【0033】
上記成分(C)の本発明の油中水型乳化化粧料中の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、40.0~60.0質量%であり、好ましくは45.0~55.0質量%である。上記成分(C)の含有量が40.0質量%以上であると、乳化安定性がより一層良好となりやすく、60.0質量%以下であると、メイクアップ化粧料に対する除去力が得られやすい。
【0034】
<成分(D)>
本発明の油中水型乳化化粧料は、上記成分(D)としてイソステアリン酸プロピレングリコールを配合することによって、乳化状態の安定性を高めることができる。
【0035】
上記成分(D)の上記油中水型乳化化粧料中の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、0.1~3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~2.0質量%である。上記成分(D)の含有量が上記範囲であると、安定な乳化状態が得られやすくなる。
【0036】
<その他の成分>
上記その他の成分しては、例えば、エタノール等の低級アルコール;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖増粘剤等の増粘剤;保湿剤;殺菌剤;パール化剤;スクラブ剤;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤(キレート剤);皮膜形成性高分子化合物;粉体;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;酸;アルカリ等が挙げられる。上記その他の成分の本発明の油中水型乳化化粧料中の合計の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、10.0質量%以下が好ましく、より好ましくは5.0質量%以下である。下限は、通常、0.0001質量%である。
【0037】
本発明の油中水型乳化化粧料は、防腐性や速乾性を付与するなどの観点から、エタノールを含んでいてもよい。上記エタノールの本発明の油中水型乳化化粧料中の含有量は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%に対して、10.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましい。下限は0質量%であり、好ましくは2.0質量%である。
【0038】
本発明の油中水型乳化化粧料の、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて25℃で測定された粘度は、2000mPa・s以下であり、好ましくは1500mPa・s以下であり、さらに好ましくは1000mPa・s以下である。上記粘度は、特に限定されないが、通常、10mPa・s以上である。本発明の油中水型乳化化粧料の粘度が2000mPa・s以下であると、シート基材に対する含浸や使用後の拭取りが容易になりやすい。
【0039】
本発明の油中水型乳化化粧料は、常法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、公知の方法、具体的には、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミル等で攪拌し、乳化する方法が挙げられる。
【0040】
本発明の油中水型乳化化粧料は、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨等として、皮脂等の汚れやメイクアップ化粧料を除去するため、例えば、顔(額、目元、目じり、頬、口元等)、身体(腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中等)等に対して用いられる。中でも、顔に対して用いられることが好ましい。
【0041】
本発明の油中水型乳化化粧料は、油性のメイクアップ化粧料の除去を目的として使用されるクレンジング用化粧料であることが好ましい。
【0042】
本発明の油中水型乳化化粧料は、皮脂等の汚れやメイクアップ化粧料の除去力に優れながら使用後のべたつきが抑制され、容易に拭き取ることができる。また、安定な油中水型の乳化状態を形成しながら低粘度であるためシート基材に容易に含浸できる。そのため、コットン等のシートに含浸させて拭き取りながらメイクアップ化粧料等の汚れを除去する方法や、メイクアップ化粧料等の汚れを除去したい部位に塗布して馴染ませた後にコットン等のシートを用いて拭き取りながら除去する方法等に使用するクレンジング用化粧料として好適に使用することができる。
【0043】
[シート化粧料]
本発明のシート化粧料は、シート基材と、上記シート基材に含浸された本発明の油中水型乳化化粧料とを含む。本発明のシート化粧料は、また、上記シート基材及び本発明の油中水型乳化化粧料以外の構成成分を含んでいてもよい。本発明のシート化粧料は、顔用のクレンジングシートであることが好ましい。
【0044】
上記シート基材は、本発明の油中水型乳化化粧料が含浸できるシート状の支持体である。上記シート基材としては、例えば、織布、不織等が挙げられる。上記シート基材は、積層体(積層シート)であってよく、例えば、織布の積層体、不織布の積層体、織布と不織布の積層体等であってもよい。上記シート基材は、使用感、加工のしやすさ等の観点から、不織布を含むシート基材であることが好ましく、より好ましくは不織布である。
【0045】
上記不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布等が挙げられる。
【0046】
上記織布や上記不織布を構成する繊維としては、例えば、天然繊維、合成繊維、半天然繊維等が挙げられる。上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンター等が挙げられる。上記合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維等が挙げられる。上記半天然繊維としては、レーヨン、アセテート等が挙げられる。上記織布や上記不織布は、上記繊維を1種のみを用いた、あるいは2種以上を用いて得られたものであってよく、また、上記繊維を2種以上併用した混紡繊維を用いて得られたものであってもよい。
【0047】
上記シート基材は、エンボス加工処理が施されていてもよい。上記エンボス加工処理としては、特に限定されず、例えば、裏面を押し上げて浮かす(したがって裏面は凹む)方式や、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式等が挙げられる。
【0048】
上記シート基材の目付は、肌を拭く際にシート基材が丸まらず使用感に優れ、単位面積あたりの本発明の油中水型乳化化粧料の含有量が多くなる観点から、20~300g/m2が好ましく、より好ましくは30~150g/m2である。
【0049】
上記シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。また、上記シート基材は市販品を用いることもできる。
【0050】
本発明のシート化粧料における、上記シート基材に含浸された本発明の油中水型乳化化粧料の含有量は、上記シート基材100質量部に対して、100~1000質量部が好ましく、より好ましくは150~700質量部である。
【0051】
本発明のシート化粧料の形状はシート状である。これにより、皮膚(肌)を拭く使用形態での使用性に優れ、携帯性にも優れる。シートの平面形状としては、例えば、多角形(四角形(正方形、長方形等)、三角形等)、円形、楕円形、半円形、三日月形、樽形、鼓形、キャラクターの形状等が挙げられる。中でも、生産性、使用性や梱包性の観点から、四角形が好ましい。また、本発明のシート化粧料には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部等の成型が施されていてもよい。本発明のシート化粧料のシートの片面の表面積は、使用性、携帯性、包装性等の観点から、10~400cm2が好ましく、より好ましくは30~100cm2である。
【0052】
本発明のシート化粧料は、乾燥防止、外出時の携帯性、使用時の取り扱い性等の観点から、包装容器に収納されることが好ましい。本発明のシート化粧料は1枚ごとに個別包装されていてもよいし、生産コスト、生産効率等の観点から、複数枚の本発明のシート化粧料が同一包装容器内に収納されていてもよい。1つの包装容器に収納される本発明のシート化粧料の枚数は、特に限定されないが、1~50枚(/1包装容器)が好ましい。本発明のシート化粧料は、二つ折り、三つ折り、四つ折り等に折り畳んで包装容器に収納されていることが好ましい。
【0053】
上記包装容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器等が挙げられる。上記包装容器は、本発明の油中水型乳化化粧料の揮発を抑制できるものが好ましい。上記包装容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン(LLDPE等)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアミド(ナイロン等)等のプラスチックフィルム、アルミ箔やこれらの積層体から形成された包装体(例えば、袋状の包装体)等を挙げることができる。上記プラスチックフィルムは、アルミニウム蒸着、アルミナ蒸着、シリカ蒸着等が施されていてもよい。
【0054】
本発明のシート化粧料は、上記シート基材に本発明の油中水型乳化化粧料を含浸させることにより製造することができる。すなわち、本発明のシート化粧料の製造方法としては、例えば、折り畳まれた状態の上記シート基材に本発明の油中水型乳化化粧料を注入し含浸させる方法、上記シート基材に本発明の油中水型乳化化粧料をスプレーする方法、印刷法を用いて上記シート基材に本発明の油中水型乳化化粧料を含浸させる方法、本発明の油中水型乳化化粧料中にシート基材を浸す方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の油中水型乳化化粧料では、界面活性剤として、特定のポリグリセリンジ脂肪酸エステルと特定のポリグリセリンモノ脂肪酸エステルとを、特定の質量割合で併用することを特徴としている。これにより、極めて安定な油中水型の乳化状態を形成しうる。一般的には、界面活性剤のみで安定した油中水型の乳化状態を形成することは困難なため、油相の粘度を高めることによって乳化状態を安定化するところ、本発明においては、低粘度であっても安定した油中水型乳化化粧料を形成できる。これにより、クレンジング特性(メイクアップの除去性)に優れる油中水型乳化化粧料の、拭き取り時のコットン等への含浸性が良好であり、使用性に優れる。また、シート化粧料とする場合には生産性が向上する。
【実施例
【0056】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の含有量は、各成分の含有量(すなわち、各原料中の有効成分の含有量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。
【0057】
実施例及び比較例で用いた各成分は、以下の通りである。
【0058】
(成分(A1)、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル)
・ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10:平均重合度10
【0059】
(成分(A2)、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル)
・イソステアリン酸ポリグリセリル-10:平均重合度10
【0060】
(成分(B)、25℃で液状の油剤)
・ミネラルオイル:炭化水素油、流動パラフィン、商品名「Carnation」、Sonneborn社製
・イソドデカン:炭化水素油、商品名「マルカゾールR」、丸善石油化学株式会社製
・ジメチコン:ジメチルポリシロキサン、25℃における粘度1.5CS
【0061】
(成分(D))
・イソステアリン酸PG:イソステアリン酸プロピレングリコール
【0062】
(その他の水性成分)
・EDTA-2Na:エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩・二水和物
・PEG-400:ポリエチレングリコール20000、平均分子量20000
・パンテノール:パントテニルアルコール
【0063】
(実施例1~8、比較例1~4)
表に記載した各成分を用い、常法に従って、乳化し、乳化組成物を調製した。
【0064】
(評価)
実施例及び比較例で調製した乳化組成物について以下の評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0065】
(1)乳化状態
各実施例及び各比較例の乳化組成物を、ビーカーに入れた水の中に滴下し、分散しなければ油中水型の乳化状態(W/O)、分散すれば水中油型の乳化状態(O/W)と判定した)。
【0066】
(2)粘度
各実施例及び各比較例の乳化組成物について、25℃にてB型粘度計(東機産業株式会社製、型番TVB-10)を用い測定した。
【0067】
(3)安定性
各実施例及び比較例の乳化組成物50gをスクリュー管に充填し、密封した状態で、室温(25℃)で1週間保管した。保管後の各乳化組成物について、下記基準に従って評価した。
【0068】
(判定基準)
〇(良好):分離が認められなかった。
×(不良):分離が認められた。
【0069】
(4)クレンジング力(メイクアップ化粧料の除去力)
市販のウォータープルーフマスカラを人工皮膚(商品名「バイオスキンプレート」、白色、株式会社ビューラックス製)に塗布し、25℃の環境下で3時間放置した後、評価に用いた。実施例及び比較例の各乳化組成物約3gをコットン(目付130g/m2)に含浸させ、上記マスカラを塗布した人工皮膚を10往復擦り、マスカラの除去度合を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
(判定基準)
○(良好):マスカラが完全に除去された。
×(不良):マスカラが残存していた。
【0070】
【表1】
表中、比較例3、4の粘度の「-」は、安定性の評価で分離が認められたことから測定を実施しなかったことを示す。
【0071】
表1に示された結果から、各実施例の乳化組成物は、何れも油中水型乳化状態を示し、低粘度で、優れた安定性とクレンジング力を示した。一方、含有量合計(A1+A2)について本発明の範囲の下限未満となる比較例1では高粘度でクレンジング力に劣るものであり、質量割合(A1/(A1+A2))について本発明の範囲の下限未満となる比較例2では、水中油型乳化状態を示しクレンジング力に劣るものであり、質量割合(A1/(A1+A2))について本発明の範囲の上限超となる比較例3、及び、合計の含有量(A1+A2)について本発明の下限未満となる比較例4では、水中油型乳化状態を示し安定性とクレンジング力に劣るものであった。なお、各実施例の乳化組成物は、「(4)クレンジング力(メイクアップ化粧料の除去力)」の評価において、コットンへの含浸性が良好で、使用性に優れるものであった。
【0072】
さらに、以下に、本発明の油中水型乳化化粧料の処方例を示す。
【0073】
(処方例1)クレンジングミルク
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10 6.0質量%
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 4.0質量%
ミネラルオイル 15.0質量%
ジメチコン 15.0質量%
ミリスチン酸イソプロピル 5.0質量%
イソステアリン酸PG 1.0質量%
エタノール 1.0質量%
EDTA-2Na 0.1質量%
PEG-400 1.0質量%
パンテノール 0.1質量%
酢酸トコフェロール 0.1質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0074】
(処方例2)クレンジングミルク
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10 6.0質量%
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 4.0質量%
ミネラルオイル 10.0質量%
イソドデカン 5.0質量%
ジメチコン 10.0質量%
ミリスチン酸イソプロピル 5.0質量%
イソステアリン酸PG 1.0質量%
EDTA-2Na 0.05質量%
ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム 0.001質量%
トリメチルグリシン 1.0質量%
L-アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム 0.01質量%
酢酸トコフェロール 0.1質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%