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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用ダクト装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240326BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20240326BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60H1/00 103P
B60H1/00 102L
F24F13/10 B
F24F13/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021558387
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042751
(87)【国際公開番号】W WO2021100689
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019209227
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-010039(JP,A)
【文献】特開平09-226348(JP,A)
【文献】特開2009-262754(JP,A)
【文献】特開平08-268038(JP,A)
【文献】実開昭56-060608(JP,U)
【文献】特開2005-214541(JP,A)
【文献】特開昭61-036652(JP,A)
【文献】特開平08-244441(JP,A)
【文献】特開平10-309927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
F24F 13/10
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送風路(41)を構成する第1ダクト(42;42A;42B)と、
第2送風路(51)を構成する第2ダクト(52;52A;52B)と、
前記第1ダクト(42;42A;42B)の長手方向に対して交差する第1軸線(CL1)を中心とした円弧状の第1周壁(71;71A)を有しており、前記第1軸線(CL1)を中心に第1回動方向(R1)及び当該第1回動方向(R1)とは反対側の第2回動方向(R2)へ回動する前記第1周壁(71;71A)によって、前記第1送風路(41)を全開放及び全閉鎖することが可能な第1風量調整ドア(70;70A)と、
前記第2ダクト(52;52A;52B)の長手方向に対して交差するとともに前記第1軸線(CL1)に対し平行な第2軸線(CL2)を中心とした円弧状の第2周壁(81 ;81A)を有しており、前記第2軸線(CL2)を中心に前記第1回動方向(R1)及び前記第2回動方向(R2)へ回動する前記第2周壁(81;81A)によって、前記第2送風路(51)を全開放及び全閉鎖することが可能な第2風量調整ドア(80;80A)と、
前記第1風量調整ドア(70;70A)に前記第1回動方向(R1)及び前記第2回動方向(R2)への回動力を付与する駆動源(100)と、
前記第1風量調整ドア(70;70A)に対して、前記第2風量調整ドア(80;80A)が前記第1回動方向(R1)へ回動しようとする方向へ付勢可能に、前記第1風量調整ドア(70;70A)と前記第2風量調整ドア(80;80A)との間に設けられている付勢機構(110;210)と、
前記第1風量調整ドア(70;70A)に対する前記第2風量調整ドア(80;80A)の位置を、予め設定された一定角(θ)に対して前記第1回動方向(R1)へ広がらないように規制する拡開規制部(120)と、
前記第1回動方向(R1)へ回動した前記第2風量調整ドア(80;80A)が当接することで、前記第2送風路(51)に対する前記第2周壁(81;81A)の全開放位置を規定する全開規定部(132)と、
を含み、
前記第1軸線(CL1)に対して、前記第2軸線(CL2)は同心に位置しており、
前記付勢機構(110;210)は、
前記第1軸線(CL1)及び第2軸線(CL2)を中心としたねじりコイルばね(111)と、
前記ねじりコイルばね(111)の巻始め端に有している第1腕部(111b)を、前記第1風量調整ドア(70;70A)に係止する第1係止部(112;212)と、
前記ねじりコイルばね(111)の巻終わり端に有している第2腕部(111c)を、前記第2風量調整ドア(80;80A)に係止する第2係止部(113;213)と、
によって構成されている、ことを特徴とする車両用ダクト装置(30;30A;30B)。
【請求項2】
前記第1ダクト(42;42A;42B)は、前記第1送風路(41)を全開放とする位置にある前記第1周壁(71;71A)を格納することを可能にする、前記第1送風路(41)から外方へ膨出した第1格納室(91)を有し、
前記第2ダクト(52;52A;52B)は、前記第2送風路(51)を全開放とする位置にある前記第2周壁(81;81A)を格納することを可能にする、前記第2送風路(51)から外方へ膨出した第2格納室(92)を有している、
ことを特徴とする請求項に記載の車両用ダクト装置。
【請求項3】
前記第1ダクト(42A;42B)は、前記第1風量調整ドア(70A)の回動方向に屈曲し、
前記第2ダクト(52A;52B)は、前記第2風量調整ドア(80A)の回動方向に屈曲し、
前記第1風量調整ドア(70A)は、前記第1ダクト(42A;42B)の屈曲した部位(Q1)に位置し、
前記第2風量調整ドア(80A)は、前記第2ダクト(52A)の屈曲した部位(Q2)に位置し、
前記第1ダクト(42A;42B)と前記第2ダクト(52A;52B)の、各大きさ(H1,H2)及び各屈曲角(α1,α2)は、円弧状である前記第1周壁(71A)及び前記第2周壁(81A)の、各円弧長さ(L11,L12)が同一となる大きさに設定されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ダクト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の駆動源によって2つの風量調整ドアを開閉駆動する、車両用ダクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両は、外気や内気を取り込んで温度を調節するための、車両用空調装置を備えている。一般的な車両用空調装置は、各乗員の着座位置や着座状態によって、空気の吹き出し風量の調整ができるように、車両用ダクト装置を備える。この車両用ダクト装置は、複数の独立したダクトと、各ダクト内の風量調整ドアとを有している。空調装置の本体部によって温度を調節された空気は、各ダクトを通って車室内に吹き出すことにより、乗員の快適性に寄与する。各風量調整ドアは、各ダクトの送風路を流れる空気の流量を調整することが可能である。
【0003】
例えば、空気を2系統に分配する車両用ダクト装置は、第1送風路を構成する第1ダクトと、第2送風路を構成する第2ダクトと、第1送風路及び第2送風路を流れる空気の風量を個別に調整可能な2つの風量調整ドアと、各風量調整ドアを個別に駆動する2つの駆動源と、を有する。このような車両用ダクト装置によれば、2つの送風路にそれぞれ異なる風量を流すことができるので、乗員が着座しているシートに向かってのみ、送風をすることも可能である。
【0004】
しかし、2つの風量調整ドアを個別に駆動するために、2つの駆動源を備えたのでは、車両の限られたスペースに駆動源を配置するレイアウト上の観点や、車両用空調装置のコストの観点から、改良の余地がある。そこで近年、複数の風量調整ドアを単一の駆動源によって駆動する技術の開発が進められており、例えば、特許文献1に開示される技術がある。
【0005】
特許文献1で知られている車両用ダクト装置は、乗員の主に上半身に調和空気を吹き出すためのベント吹出口(フェイス吹出口ともいう)に関する技術である。ベント吹出口は、左右方向に3つに分割されている。詳しく述べると、この車両用ダクト装置は、1つのモータによって駆動される1つの回転軸と、この回転軸に対して相対回転可能に且つ右分配ダクトと左分配ダクトとにそれぞれ組み込まれている2つの風量調整ドアと、2つの風量調整ドアの互いに逆方向への回動を規制する2つのストッパと、2つの風量調整ドアを各々のストッパに向かって常に付勢する2つのバネと、2つの風量調整ドアを互いに逆方向へ回動させるように回転軸に固定された2つのアームと、を有する。
【0006】
この車両用ダクト装置は、2つの風量調整ドアの両方が全開放位置(中立位置)にある状態を、基準としている。モータによって、回転軸を時計回りに回すことにより、第1アームによって第1の風量調整ドアのみを閉じ、右分配ダクトの風量調整をすることができる。また、回転軸を反時計回りに回すことにより、第2アームによって第2の風量調整ドアのみを閉じ、左分配ダクトの風量調整をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平5-026532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の車両用ダクト装置では、2つの風量調整ドアを、同時に全閉鎖位置に調整することはできない。車両用ダクト装置は、一般に、右分配ダクトや左分配ダクトの他にも、フロントガラスに向けて送風空気を供給するデフロスト吹出口や、乗員の足元に向けて調和空気を供給するフット吹出口を有する。そして、例えば、ベント吹出口やデフロスト吹出口を遮断して送風空気の通流を禁止する一方、フット吹出口を開放して温風を乗員の足元へ供給する吹出モード(フット吹出モード)の実現が要請される。すなわち、ベント吹出口に連通している右分配ダクトや左分配ダクトに設けられた、2つの風量調整ドアを、同時に全閉鎖位置に調整することを可能として、種々の吹出モードに対応可能であることが求められる。
【0009】
本発明は、車両用ダクト装置において、単一の駆動源によって2つの風量調整ドアを駆動できるとともに、2つの風量調整ドアを全開放位置と全閉鎖位置との両方で、それぞれ同時に調整できる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明によれば、
第1送風路(41)を構成する第1ダクト(42;42A;42B)と、
第2送風路(51)を構成する第2ダクト(52;52A;52B)と、
前記第1ダクト(42;42A;42B)の長手方向に対して交差する第1軸線(CL1)を中心とした円弧状の第1周壁(71;71A)を有しており、前記第1軸線(CL1)を中心に第1回動方向(R1)及び当該第1回動方向(R1)とは反対側の第2回動方向(R2)へ回動する前記第1周壁(71;71A)によって、前記第1送風路(41)を全開放及び全閉鎖することが可能な第1風量調整ドア(70;70A)と、
前記第2ダクト(52;52A;52B)の長手方向に対して交差するとともに前記第1軸線(CL1)に対し平行な第2軸線(CL2)を中心とした円弧状の第2周壁(81;81A)を有しており、前記第2軸線(CL2)を中心に前記第1回動方向(R1)及び前記第2回動方向(R2)へ回動する前記第2周壁(81;81A)によって、前記第2送風路(51)を全開放及び全閉鎖することが可能な第2風量調整ドア(80;80A)と、
前記第1風量調整ドア(70;70A)に前記第1回動方向(R1)及び前記第2回動方向(R2)への回動力を付与する駆動源(100)と、
前記第1風量調整ドア(70;70A)に対して、前記第2風量調整ドア(80;80A)が前記第1回動方向(R1)へ回動しようとする方向へ付勢可能に、前記第1風量調整ドア(70;70A)と前記第2風量調整ドア(80;80A)との間に設けられている付勢機構(110;210)と、
前記第1風量調整ドア(70;70A)に対する前記第2風量調整ドア(80;80A)の位置を、予め設定された一定角(θ)に対して前記第1回動方向(R1)へ広がらないように規制する拡開規制部(120)と、
前記第1回動方向(R1)へ回動した前記第2風量調整ドア(80;80A)が当接することで、前記第2送風路(51)に対する前記第2周壁(81;81A)の全開放位置を規定する全開規定部(132)と、
を含み、
前記第1軸線(CL1)に対して、前記第2軸線(CL2)は同心に位置しており、
前記付勢機構(110;210)は、
前記第1軸線(CL1)及び第2軸線(CL2)を中心としたねじりコイルばね(111)と、
前記ねじりコイルばね(111)の巻始め端に有している第1腕部(111b)を、前記第1風量調整ドア(70;70A)に係止する第1係止部(112;212)と、
前記ねじりコイルばね(111)の巻終わり端に有している第2腕部(111c)を、前記第2風量調整ドア(80;80A)に係止する第2係止部(113;213)と、
によって構成されている、ことを特徴とする車両用ダクト装置(30;30A;30B)が提供される。
【0013】
好ましくは、
前記第1ダクト(42;42A;42B)は、前記第1送風路(41)を全開放とする位置にある前記第1周壁(71;71A)を格納することを可能にする、前記第1送風路(41)から外方へ膨出した第1格納室(91)を有し、
前記第2ダクト(52;52A;52B)は、前記第2送風路(51)を全開放とする位置にある前記第2周壁(81;81A)を格納することを可能にする、前記第2送風路(51)から外方へ膨出した第2格納室(92)を有している。
【0014】
好ましくは、
前記第1ダクト(42A;42B)は、前記第1風量調整ドア(70A)の回動方向に屈曲し、
前記第2ダクト(52A;52B)は、前記第2風量調整ドア(80A)の回動方向に屈曲し、
前記第1風量調整ドア(70A)は、前記第1ダクト(42A;42B)の屈曲した部位(Q1)に位置し、
前記第2風量調整ドア(80A)は、前記第2ダクト(52A)の屈曲した部位(Q2)に位置し、
前記第1ダクト(42A;42B)と前記第2ダクト(52A;52B)の、各大きさ(H1,H2)及び各屈曲角(α1,α2)は、円弧状である前記第1周壁(71A)及び前記第2周壁(81A)の、各円弧長さ(L11,L12)が同一となる大きさに設定されている。
【発明の効果】
【0015】
車両用ダクト装置において、単一の駆動源によって2つの風量調整ドアを駆動できるとともに、2つの風量調整ドアを全開放位置と全閉鎖位置との両方で、それぞれ同時に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1による車両用ダクト装置が搭載された車両を模式的に示した図である。
図2図1に示された車両用ダクト装置の平面図である。
図3図2の3-3線に沿った断面図である。
図4図3に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアと第2風量調整ドアと付勢機構と拡開規制部とを分解した斜視図である。
図5図5(a)は図2の5a-5a線に沿った断面図(拡開規制部を省略)、図5(b)は図2の5b-5b線に沿った断面図(拡開規制部を省略)である。
図6図4に示される第1風量調整ドアと第2風量調整ドアと付勢機構と拡開規制部との関係を第1軸線及び第2軸線に沿って見た構成図である。
図7図5に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアが共に全開放状態のときの作用説明図である。
図8図7に示された第2風量調整ドアが全開放状態を維持するとともに、第1風量調整ドアが反時計回りに回動して全閉鎖状態となったときの作用説明図である。
図9図7に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアが共に時計回りに回動することによって第1風量調整ドアが全開放状態で第2風量調整ドアが全閉鎖状態となったときの作用説明図である。
図10図9に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアが共に更に時計回りに回動して全閉鎖状態となったときの作用説明図である。
図11図6に示された付勢機構の変形例図である。
図12図12(a)は実施例2による車両用ダクト装置の第1風量調整ドア周りを第1軸線に沿った方向から見た断面図(図5(a)の断面位置に相当)、図12(b)は第2風量調整ドア周りを第2軸線に沿った方向から見た断面図(図5(b)の断面位置に相当)である。
図13図12に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアが共に全開放状態のときの作用説明図である。
図14図13に示された第2風量調整ドアが全開放状態を維持するとともに、第1風量調整ドアが時計回りに回動して全閉鎖状態となったときの作用説明図である。
図15図13に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアが共に反時計回りに回動することによって第1風量調整ドアが全開放状態で第2風量調整ドアが全閉鎖状態となったときの作用説明図である。
図16図15に示された第1風量調整ドアと第2風量調整ドアが共に更に時計回りに回動して全閉鎖状態となったときの作用説明図である。
図17図17(a)は実施例2の変形例(第3の変形構成)による車両用ダクト装置の第1風量調整ドア周りを第1軸線に沿った方向から見た断面図(図12(a)の断面位置に相当)、図17(b)は第2風量調整ドア周りを第2軸線に沿った方向から見た断面図(図12(b)の断面位置に相当)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例1>
【0018】
図1図10を参照しつつ、実施例1の車両用ダクト装置30を説明する。図1に示されるように、乗用自動車等の車両10は、車室11内の空気の温度を調節(調和)する車両用空調装置20を搭載している。この車両用空調装置20は、図示しない上流側ブロアから送風された空気の温度を調節(調和)して複数の吹出口から車室11内に供給することが可能な空調装置本体部21と、この空調装置本体部21において温度が調節された(温度が調和された)空気を吸引し下流側へ送る下流側ブロア22と、この下流側ブロア22の吐出口22aに接続され後部座席12に向かって延びる車両用ダクト装置30(以下、「ダクト装置30」と略記する。)と、を有する。
【0019】
空調装置本体部21によって温度が調節された空気の一部は、下流側ブロア22及びダクト装置30により、後部座席12に向かって送られる。なお、空調装置本体部21及び下流側ブロア22は、周知のものを採用することができる。
【0020】
図2に示されるように、ダクト装置30は車両前後方向に長い。この実施例1において、ダクト装置30の長手方向は、車両10(図1参照)の前後方向に沿っており、前後方向と長手方向は、同じ方向を指す。
【0021】
図2及び図3に示されるように、ダクト装置30は、第1送風路41を構成する第1ダクト42と、第2送風路51を構成する第2ダクト52と、第1送風路41を全開放及び全閉鎖することが可能な第1風量調整ドア70と、第2送風路51を全開放及び全閉鎖することが可能な第2風量調整ドア80と、を有する。
【0022】
第1ダクト42と第2ダクト52とは、車両10(図1参照)の車幅中央に位置するとともに、下流側ブロア22の吐出口22aから車両10の後方へ、概ね水平に延びている。
【0023】
第1ダクト42のなかの、下流側ブロア22の吐出口22aに接続される部分を上流部42aといい、この上流部42aに対して第1風量調整ドア70よりも下流側の部分を下流部42bということにする。下流側ブロア22の吐出口22aから吐出された空気は、第1ダクト42の上流部42aから下流部42bへ向かって流れる。
【0024】
また、第2ダクト52のなかの、下流側ブロア22の吐出口22aに接続される部分を上流部52aといい、この上流部52aに対して第2風量調整ドア80よりも下流側の部分を下流部52bということにする。下流側ブロア22の吐出口22aから吐出された空気は、第2ダクト52の上流部52aから下流部52bへ向かって流れる。
【0025】
これらの第1ダクト42と第2ダクト52は、互いに車幅方向に並列に配置され、且つ一体に構成されている。ダクト装置30を車両10の後側から見て、第1ダクト42は右側に位置し、第2ダクト52は左側に位置している。第1送風路41を通過した空気は、後部座席12(図1参照)の右側部分へ向かって吹き出す。第2送風路51を通過した空気は、後部座席12の左側部分へ向かって吹き出す。
【0026】
より具体的に説明すると、図3に示されるように、第1ダクト42と第2ダクト52とは、例えば、第1ダクト半体61と第2ダクト半体62と区画壁部63との組み合わせ構造によって、一体に構成される。第1ダクト半体61と第2ダクト半体62とは、車両10の車幅方向に互いに向かい合って開口した略U字状の部材である。第1ダクト半体61の開口端と第2ダクト半体62の開口端との間は、縦板状の区画壁部63によって区画されている。
【0027】
第1ダクト半体61は、U字の底板に相当する縦板状の第1側板61aと、この第1側板61aの上端から第2ダクト半体62の開口端へ向かって延びる横板状の第1上板61bと、第1側板61aの下端から第2ダクト半体62の開口端へ向かって延びる横板状の第1下板61cと、からなる。
【0028】
第2ダクト半体62は、U字の底板に相当する縦板状の第2側板62aと、この第2側板62aの上端から第1ダクト半体61の開口端へ向かって延びる横板状の第2上板62bと、第2側板62aの下端から第1ダクト半体61の開口端へ向かって延びる横板状の第2下板62cと、からなる。
【0029】
この結果、第1ダクト半体61と区画壁部63によって、断面矩形状の第1ダクト42が構成される。第2ダクト半体62と区画壁部63によって、断面矩形状の第2ダクト52が構成される。第1送風路41は、第1ダクト42の内部空間である。第2送風路51は、第2ダクト52の内部空間である。
【0030】
第1ダクト42の長手方向に対して交差する直線CL1のことを、「第1軸線CL1」という。第2ダクト52の長手方向に対して交差するとともに、第1軸線CL1に対し平行な直線CL2のことを、「第2軸線CL2」という。第1軸線CL1と第2軸線CL2は、例えば車幅方向へ延びた水平線である。好ましくは、第2軸線CL2は、第1軸線CL1に対して同心に位置している。
【0031】
図3図5に示されるように、第1風量調整ドア70及び第2風量調整ドア80は、それぞれ円弧状の周壁71,81が回動する、いわゆるロータリドアによって構成されている。これらの風量調整ドア70,80は、風量調整ダンパともいう。
【0032】
第1風量調整ドア70は、1つの第1周壁71と2つの第1側壁72,73とからなる、一体品である。第1周壁71は、第1軸線CL1を中心とする円弧状(曲面状)の板によって構成されている。この第1周壁71は、第1軸線CL1を中心に第1回動方向R1と第2回動方向R2へ回動することによって、第1送風路41を全開放及び全閉鎖することが可能であるとともに、第1送風路41を流れる空気の風量を調整することが可能である。
【0033】
ここで、実施例1において、第1回動方向R1と第2回動方向R2を、次のように定義する。図5(a)に示されるように、第1送風路41を流れる空気の流れ方向の上流を右とし、第1ダクト42を第1軸線CL1方向から見たときに、反時計回り方向R1のことを、「第1回動方向R1」という。第1回動方向R1に対して、反対方向R2のことを「第2回動方向R2」という。
【0034】
2つの第1側壁72,73は、第1周壁71のなかの、第1軸線CL1に沿った軸方向両側に一体に有している、平板状の部材である。例えば、これら2つの第1側壁72,73は、第1軸線CL1に沿う方向から見て、略扇形(circular sector)に形成されている。これら2つの第1側壁72,73のなかの、第1ダクト半体61の第1側板61a寄りに位置している第1側壁72は、第1軸線CL1を中心とした第1軸74を有している。この第1軸74は、第1側板61aに設けられている第1軸受75によって回動可能に支持されている。2つの第1側壁72,73のなかの、もう1つの第1側壁73は、第1軸線CL1を中心とした円盤状のボス部76(boss portion)を有している。このボス部76は、第1軸74と対向する面とは反対側の面から窪んだ凹部76aと、この凹部76aの底を貫通した軸孔76bと、を有する。凹部76aと軸孔76bとは、共に第1軸線CL1を中心としている。
【0035】
第2風量調整ドア80は、1つの第2周壁81と2つの第2側壁82,83とからなる、一体品である。第2周壁81は、第2軸線CL2を中心とする円弧状(曲面状)の板によって構成されている。この第2周壁81は、第2軸線CL2を中心に第1回動方向R1と第2回動方向R2へ回動することによって、第2送風路51を全開放及び全閉鎖することが可能であるとともに、第2送風路51を流れる空気の風量を調整することが可能である。
【0036】
2つの第2側壁82,83は、第2周壁81のなかの、第2軸線CL2に沿った軸方向両側に一体に有している、平板状の部材である。例えば、これら2つの第2側壁82,83は、第2軸線CL2に沿う方向から見て、略扇形に形成されている。これら2つの第2側壁82,83のなかの、第2ダクト半体62の第2側板62a寄りに位置している第2側壁82は、第2軸線CL2を中心とした第2軸84を有している。この第2軸84は、第2側板62aに設けられている第2軸受85によって回動可能に支持されている。2つの第2側壁82,83のなかの、もう1つの第2側壁83は、第2軸線CL2を中心とした第3軸86を有している。
【0037】
この第3軸86は、第2風量調整ドア80の第2側壁82に一体に設けられた大径の基部86aと、この基部86aから第1風量調整ドア70のボス部76へ向かって延びた中間部86bと、この中間部86bからボス部76を貫通するように延びた先端部86cとからなる。中間部86bは、基部86aよりも小径である。先端部86cは、中間部86bよりも小径である。なお、基部86aと中間部86bと先端部86cは、全て同径であってもよい。
【0038】
基部86aは、区画壁部63に設けられている第3軸受87によって回動可能に支持されている。中間部86bは、ボス部76の凹部76aの内部に位置している。先端部86cは、ボス部76の軸孔76bに対して、貫通し且つ相対回転が可能に嵌合している。この結果、ボス部76は第3軸86を介し、第3軸受87によって回動可能に支持されている。以上の説明から明らかなように、第1風量調整ドア70は、第1軸線CL1を中心に第1回動方向R1及び第2回動方向R2へ回動可能に、第1ダクト42によって支持されている。第2風量調整ドア80は、第2軸線CL2を中心に第1回動方向R1及び第2回動方向R2へ回動可能に、第2ダクト52によって支持されている。
【0039】
図5(a)に示されるように、第1ダクト42は、第1送風路41から外方へ膨出した第1格納室91を有している。この第1格納室91は、第1ダクト42の上流部42aと下流部42bとの間に位置した空間であって、第1軸線CL1を中心とする円弧状に膨出している。このような構成の第1格納室91は、第1送風路41を全開放とする位置にある第1周壁71を、格納することを可能にしている。
【0040】
同様に、図5(b)に示されるように、第2ダクト52は、第2送風路51から外方へ膨出した第2格納室92を有している。この第2格納室92は、第2ダクト52の上流部52aと下流部52bとの間に位置した空間であって、第2軸線CL2を中心とする円弧状に膨出している。このような構成の第2格納室92は、第2送風路51を全開放とする位置にある第2周壁81を、格納することを可能にしている。
【0041】
詳しく述べると、第1ダクト42と第2ダクト52の、それぞれの形状と大きさは、互いに同一である。例えば、図5(a)及び図5(b)に示されるように、第1ダクト42及び第2ダクト52を各軸線CL1,CL2方向から見たときに、第1ダクト42の内側の高さH1(第1送風路41の高さH1)と、第2ダクト52の内側の高さH2(第2送風路51の高さH2)とは、同一である。
【0042】
第1軸線CL1を中心とした、第1周壁71の半径r1と、第2軸線CL2を中心とした第2周壁81の半径r2とは、同一である。各周壁71,81の半径r1,r2の2倍の寸法は、各ダクト42,52の内側の高さ方向の寸法H1,H2よりも大きい。各軸線CL1,CL2を中心とした、第1格納室91及び第2格納室92の径は、各周壁71,81の半径r1,r2の2倍よりも、若干大きく設定されている。各格納室91,92を構成する内周面91a,92aと、各周壁71,81の外周面71a,81aとの間には、各周壁71,81が回動可能に、微小な隙間δ1,δ2を有している。第1周壁71の外周面71aの円弧長さL1は、第2周壁81の外周面81aの円弧長さL2よりも小さい。
【0043】
第1格納室91及び第2格納室92の説明をまとめると、次の通りである。全閉鎖位置にある第1周壁71や第2周壁81は、各送風路41,51の全面を閉鎖することが可能な大きさであることが、好ましい。その大きさに設定された各周壁71,81は、全閉鎖位置から全開放位置へ変位したときに、各ダクト42,52の内面に当たってしまう。
【0044】
これに対して実施例1では、全開放位置にある各周壁71,81を、それぞれの格納室91,92に格納するようにした。従って、各送風路41,51を全面的に閉鎖することが可能な大きさの、各周壁71,81であるにもかかわらず、全閉鎖位置から全開放位置へ変位したときに、各ダクト42,52の内面に当たることはない。各ダクト42,52を全閉鎖位置から全開放位置へ確実に変位させることができる。
【0045】
さらにダクト装置30は、図3及び図4に示されるように、駆動源100と付勢機構110と拡開規制部120と全閉鎖規定部131と全開規定部132とを有している。
【0046】
図3に示されるように、駆動源100は、第1風量調整ドア70に、第1回動方向R1及び第2回動方向R2への回動力を付与する。この駆動源100は、例えば第1ダクト42の側部に設けられたステッピングモータ等のアクチュエータによって構成され、乗員の操作や設定温度等に基づいて制御部101(図2参照)から送られた電気信号に基づいて作動する。より具体的には、第1風量調整ドア70の第1軸74は、駆動源100の駆動軸(図示せず)に連結されている。
【0047】
図3及び図4に示されるように、付勢機構110は、第1風量調整ドア70の回動に対して、第2風量調整ドア80を追従可能に、且つ、第1風量調整ドア70に対して、第2風量調整ドア80が第1回動方向R1へ回動しようとする方向へ付勢可能に、第1風量調整ドア70と第2風量調整ドア80との間に設けられている。
【0048】
この付勢機構110は、例えば、ねじりコイルばね111(付勢部材111)と第1係止部112と第2係止部113とによって構成される。
【0049】
なお、付勢機構110についての説明の理解を容易にするために、図3及び図4に示されるねじりコイルばね111の一部を、図5(a),5(b)及び図6ではモディファイして表してある。但し、ねじりコイルばね111を、図5(a),5(b)及び図6に示される構成にすることは可能である。
【0050】
ねじりコイルばね111は、第1軸線CL1及び第2軸線CL2を中心としたコイル111aを有している。このコイル111aは、中間部86bに巻かれているとともに、この中間部86bと共にボス部76の凹部76aに収納されている。このねじりコイルばね111は、巻始め端に第1腕部111bを有するとともに、巻終わり端に第2腕部111cを有している。第1腕部111bは、第1軸線CL1に沿いつつボス部76へ向かって延びている。第2腕部111cは、第2軸線CL2に沿いつつ基部86aへ向かって延びている。
【0051】
第1係止部112は、ねじりコイルばね111の第1腕部111bを第1風量調整ドア70に係止している。例えば、第1係止部112は、第1軸線CL1に沿ってボス部76に形成された貫通孔により構成され、この貫通孔によって第1腕部111bを係止する。
【0052】
第2係止部113は、ねじりコイルばね111の第2腕部111cを第2風量調整ドア80に係止している。例えば、第2係止部113は、第2軸線CL2に沿って基部86aに形成された貫通孔により構成され、この貫通孔によって第2腕部111cを係止する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、各腕部111b,111cは、各風量調整ドア70,80に対して、第1回動方向R1及び第2回動方向R2の両方向へ追従するように係止されている。ねじりコイルばね111(付勢部材111)は、第1風量調整ドア70を第2回動方向R2に進もうとするように、且つ、第2風量調整ドア80を第1回動方向R1に進もうとするように付勢している。このため、第1風量調整ドア70に対し、第2風量調整ドア80を第1回動方向R1へ確実に付勢することができるとともに、第1風量調整ドア70の回動に対する、第2風量調整ドア80の追従性を高めることができる。
【0054】
ねじりコイルばね111の各腕部111b,111cを、各風量調整ドア70,80に有している第1係止部112と第2係止部113とに、係止するだけの、極めて簡単な構成によって、付勢機構110を構成することができる。
【0055】
図3図4及び図6に示されるように、拡開規制部120は、第1風量調整ドア70に対する第2風量調整ドア80の位置(角度)を、予め設定された一定の開き角θ(一定角θ)に対して第1回動方向R1へ広がらないように規制する。なお、図5(a),(b)では、拡開規制部120を省略してある。
【0056】
この拡開規制部120は、例えば、第1凸部121と第2凸部122とによって構成される。第1凸部121は、ボス部76のなかの、第1軸74側を向いた端面76cから、この第1軸74側へ向かって突出している。第2凸部122は、第3軸86の先端部86cの外周面から、径外方へ向かって突出している。詳しく述べると、第3軸86の先端部86cは、ボス部76の端面76aよりも第1軸74側へ向かって延びており、その延びた部分に第2凸部122を有する。
【0057】
図4に示されるように、軸孔76bは、第2凸部122が通過可能に貫通した通過溝76dを有している。このため、第3軸86の先端部86cが軸孔76bを貫通した際に、第2凸部122は通過溝76dを通過することが可能である。第2凸部122を通過溝76dから通過させた後に、第3軸86を回すことによって、第2凸部122はボス部76の端面76cに掛け止まる。このように、拡開規制部120の第2凸部122は、抜け防止用のストッパを兼ねている。
【0058】
図6に示されるように、第2凸部122は、第1軸線CL1を中心とする第1凸部121の回転軌跡に位置している。しかも、第2凸部122は、第1凸部121に対して第2回動方向R2に隣接(図の右隣りに隣接)している。つまり、第1凸部121の回転軌跡において、この第1凸部121に対する第2凸部122の位置は、第1風量調整ドア70に対する第2風量調整ドア80の相対的な一定角θの状態から、第2風量調整ドア80が第1回動方向R1へ広がらないように規制可能な位置に設定されている。さらに、この第2凸部122は、第1凸部121と通過溝76dとの間に位置している。
【0059】
付勢機構110と拡開規制部120とは、次の手順によって組み立てることができる。先ず、図4に示されるように、第3軸86にコイル111aを通す。次に、各係止部112,113に各腕部111b,111cを差し込みつつ、軸孔76b及び通過溝76dに第3軸86及び第2凸部122を貫通させる。すると、ねじりコイルばね111の付勢力により、第3軸86及び第2凸部122は、軸孔76b及び通過溝76dに対して、第1回動方向R1へ回る。この結果、図6に示されるように、第2凸部122は第1凸部121に接するとともに、ねじりコイルばね111の付勢力によって、この接した状態を維持する。これで、組み立て作業が完了する。
【0060】
このように、付勢機構110及び拡開規制部120を、容易に且つ確実に組み立てることができる。しかも、第2凸部122が第1凸部121に接した状態を、付勢機構110の付勢力(ねじりコイルばね111の付勢力)によって、確実に維持することができる。第1凸部121と第2凸部122との間に、ガタツキが発生することはない。この結果、拡開規制部120は、第1風量調整ドア70に対する第2風量調整ドア80の位置を、一定の開き角θよりも第1回動方向R1へ広がらないように、正確に且つ確実に規制することができる。
【0061】
図3及び図5(a)に示されるように、全閉鎖規定部131は、第2回動方向R2へ回動した第1風量調整ドア70が当接することで、第1送風路41に対する第1周壁71の全閉鎖位置を規定する。この全閉鎖規定部131は、第1ダクト42に有している。例えば、この全閉鎖規定部131は、第1ダクト半体61の第1側板61aから、第1軸線CL1に沿って第1格納室91へ延びた、丸棒等のバーから成るストッパによって構成される。
【0062】
図3及び図5(b)に示されるように、全開規定部132は、第1回動方向R1へ回動した第2風量調整ドア80が当接することで、第2送風路51に対する第2周壁81の全開放位置を規定する。この全開規定部132は第2ダクト52に有している。例えば、この全開規定部132は、第2ダクト半体62の第2側板62aから、第2軸線CL2に沿って第2格納室92へ延びた、丸棒等のバーから成るストッパによって構成される。
【0063】
次に、実施例1のダクト装置30の作用を、図7図10を参照しつつ説明する。
【0064】
図7(a)~(d)は、第1風量調整ドア70と第2風量調整ドア80が共に全開放状態のときの作用説明図であり、図5(a),(b)及び図6に対応している。
【0065】
図7(a)は、全開放状態にある第1風量調整ドア70と全閉鎖規定部131との関係を示しており、図5(a)に対応する。駆動源100(図3参照)は、第1風量調整ドア70の全開放位置を維持している。全開放状態にある第1周壁71は、第1格納室91の下部における上流側近くに位置している。
【0066】
図7(b)は、全開放状態にある第2風量調整ドア80と全開規定部132との関係を示しており、図5(b)に対応する。全開放状態にある第2周壁81は、第2格納室92の上部中央に位置しており、これ以上の第1回動方向R1への回動を、全開規定部132によって規制されている。
【0067】
図7(c)は、第1風量調整ドア70と第2風量調整ドア80が共に全開放状態のときの、付勢機構110の状態を示しており、図6に対応する。付勢機構110は、中立位置にあり、第1風量調整ドア70に対して第2風量調整ドア80を第1回動方向R1へ付勢している。
【0068】
図7(d)は、第1風量調整ドア70と第2風量調整ドア80が共に全開放状態のときの、拡開規制部120の状態を示しており、図6に対応する。拡開規制部120は、第1風量調整ドア70に対して第2風量調整ドア80がこれ以上第1回動方向R1へ広がらないように規制している。つまり、第2凸部122が第1凸部121に接している。このため、第2風量調整ドア80は、第1回動方向R1へ付勢されているものの、全開放状態を維持している。
【0069】
このように、第1周壁71と第2周壁81の両方が全開放位置にあるときに、第2風量調整ドア80は、全開規定部132によって全開放位置を規定される。しかも、第2風量調整ドア80は、第1風量調整ドア70に対して開放する第1回動方向R1へ、付勢機構110によって付勢されている。各風量調整ドア70,80が、全て全開放状態なので、第1送風路41及び第2送風路51の流路面積は、共に最大となる。このため、第1送風路41及び第2送風路51を流れる空気の流量を、最大とすることができ、短時間で車室11内(図1参照)を冷却することができる。
【0070】
その後、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70を第1回動方向R1(図反時計回り方向)へ回動することによって、第1送風路41は次第に閉鎖され、最終的に全閉鎖される。その結果を図8(a)~(d)に示す。
【0071】
図8(a)に示されるように、第1周壁71は第1送風路41の上流側を全閉鎖する。図8(b)に示されるように、第2周壁81は、第1回動方向R1への回動を、全開規定部132によって規制されている。このため、図8(c)に示されるように、第1風量調整ドア70の第1係止部112に係止されている第1腕部111bは、第1風量調整ドア70と共に第1回動方向R1へ回動する。この結果、付勢機構110の付勢力は増大する。この場合、第1周壁71の全閉鎖位置は、第1送風路41を全閉鎖できればよく、多少の変動は許容される。第1周壁71の全閉鎖位置が多少変動した場合であっても、第2周壁81は付勢機構110の付勢力によって、全開規定部132に押し付けられることにより、全開放位置を維持することができる。図8(d)に示されるように、第1凸部121は、第1風量調整ドア70と共に第1回動方向R1へ回動して、第2凸部122から離れる。
【0072】
このように、全開放位置にある第1風量調整ドア70が、駆動源100(図3参照)から第1回動方向R1への回動力を付与されることにより、第1周壁71は、第2周壁81に近づく第1回動方向R1へ回る。第1周壁71によって、第1送風路41を流れる空気の風量を調整することができる。第2周壁81は、全開規定部132に規制されて、そのまま全開放位置を維持する。つまり、第2風量調整ドア80の第2周壁81の全開放状態を維持することによって、第2送風路51を流れる空気の最大流量を維持しつつ、第1風量調整ドア70の第1周壁71が第1回動方向R1へ回ることによって、第1送風路41を流れる空気の風量を調整することができる。
【0073】
さらに第1風量調整ドア70が、第1回動方向R1へ所定の角度だけ回ることによって、第1周壁71は第1送風路41を全閉鎖する。第2周壁81は、全開規定部132に規制されて、そのまま全開放位置を維持する。
【0074】
一方、前記図7(a)~(d)に示されるように、第1周壁71と第2周壁81の両方が全開放位置にあるときに、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70を第2回動方向R2(図時計回り方向)へ回動した場合には、次のようになる。
【0075】
図9(a)に示されるように、第1風量調整ドア70の第1周壁71は第2回動方向R2へ回動して、第1格納室91の下部における下流側近くまで変位する。この段階では、第1周壁71は全開放位置にある。図9(d)に示されるように、拡開規制部120は変位する。つまり、第1凸部121は、第1風量調整ドア70と共に第2回動方向R2へ回動することによって、第2凸部122を第2回動方向R2へ回動させる。この結果、図9(b)に示されるように、第2風量調整ドア80は第2回動方向R2へ回動する。
【0076】
第2風量調整ドア80の第2周壁81のなかの、第2回動方向R2の先端は、第2送風路51のなかの、上流側且つ下側まで変位して、第2送風路51の上流側を全閉鎖する。第1風量調整ドア70に対する第2風量調整ドア80の開き角θ(図6参照)は、変わらない。このため、図9(c)に示されるように、第1腕部111bと第2腕部111cとの開き角が変わらないので、付勢機構110の付勢力は変わらない。
【0077】
このように、第1風量調整ドア70の第1周壁71の全開放状態を維持することによって、第1送風路41を流れる空気の最大流量を維持しつつ、第2風量調整ドア80の第2周壁81が第2の方向R2へ回ることによって、第2送風路51を流れる空気の風量を調整することができる。
【0078】
その後、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70を第2回動方向R2(図時計回り方向)へ更に回動した場合には、次のようになる。
【0079】
図10(a)に示されるように、第1風量調整ドア70の第1周壁71は第2回動方向R2へ更に回動して、第1送風路41の下流側を全閉鎖する。この状態で、第1風量調整ドア70の第1周壁71は、第2回動方向R2への更なる回動を、全閉鎖規定部131によって規制される。図10(d)に示されるように、拡開規制部120は変位する。つまり、第1凸部121は、第1風量調整ドア70と共に第2回動方向R2へ回動することによって、第2凸部122を第2回動方向R2へ回動させる。この結果、図10(b)に示されるように、全閉鎖している第2風量調整ドア80は第2回動方向R2へ、更に回動する。しかし、第2周壁81は、第2送風路51の上流側を全閉鎖状態に維持し続ける。
【0080】
第1風量調整ドア70に対する第2風量調整ドア80の開き角θ(図6参照)は、変わらない。このため、図10(c)に示されるように、第1腕部111bと第2腕部111cとの開き角が変わらないので、付勢機構110の付勢力は変わらない。
【0081】
このように、第2風量調整ドア80の第2周壁81の全閉鎖状態を維持しつつ、第1風量調整ドア70の第1周壁71が第2の方向R2へ回ることによって、第1送風路41を流れる空気の風量を調整することができる。
【0082】
第1風量調整ドア70及び第2風量調整ドア80が、前記図9(a)~(d)に示される状態や、前記図10(a)~(d)に示される状態にあるときに、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70を第1回動方向R1へ戻した場合には、次のようになる。
【0083】
例えば、第1風量調整ドア70及び第2風量調整ドア80が、前記図10(a)に示される状態にあるときに、第1風量調整ドア70が第1回動方向R1へ戻ると、図10(d)に示される第1凸部121は、第1風量調整ドア70と共に第1回動方向R1へ回動して、第2凸部122から離れようとする。
【0084】
このときには、図10(c)に示されるように、第1風量調整ドア70の第1係止部112に係止されている第1腕部111bは、第1風量調整ドア70と共に第1回動方向R1へ回動する。第2風量調整ドア80の第2係止部113に係止されている第2腕部111cには、第1腕部111bからコイル111aを介して、第1回動方向R1への回動力が作用する。第2腕部111cが第1回動方向R1へ回動することによって、第2風量調整ドア80は第1回動方向R1へ回動する。つまり、第2風量調整ドア80は、付勢機構110の作用により、第1風量調整ドア70に対して追従する。この結果、第1風量調整ドア70及び第2風量調整ドア80は、前記図7(a)~(d)に示される状態に復帰することができる。そして、第1風量調整ドア70の第1凸部121は、第2風量調整ドア80の第2凸部122からは離れない。
【0085】
以上の説明から明らかなように、第1周壁71の円弧長さL1及び第2周壁81の円弧長さL2は、次の4条件を全て満足する大きさに設定される。
第1条件は、図7(a),(b)に示されるように、第1周壁71と第2周壁81が共に全開放状態となること。
第2条件は、図8(a),(b)に示されるように、第1周壁71が全閉鎖状態で且つ第2周壁81が全開放状態となること。
第3条件は、図9(a),(b)に示されるように、第1周壁71が全開放状態で且つ第2周壁81が全閉鎖状態となること。
第4条件は、図10(a),(b)に示されるように、第1周壁71と第2周壁81が共に全閉鎖状態となること。
【0086】
以上の説明をまとめると、図3及び図5に示されるように、実施例1の車両用ダクト装置30は、単一の駆動源100によって2つの風量調整ドア70,80を駆動できるとともに、両方の風量調整ドア70,80を全開放位置(図7(a),(b)参照)と全閉鎖位置(図10(a),(b)参照)との両方に調整することができる。しかも、2つの風量調整ドア70,80のいずれか一方を全開放状態に維持しつつ、他方によって風量の調整を行うことができる。
【0087】
なお、図6に示される付勢機構110において、第1係止部112は、第1風量調整ドア70に対して第1腕部111bを各回動方向R1,R2に係止可能な構成であればよい。同様に、第2係止部113は、第2風量調整ドア80に対して第2腕部111cを各回動方向R1,R2に係止可能な構成であればよい。例えば、図11に示される変形例の付勢機構210は、第1係止部212及び第2係止部213を、それぞれ凸部によって構成している。
【0088】
次に、図12図16を参照しつつ、実施例2の車両用ダクト装置30Aを説明する。
<実施例2>
【0089】
図12(a)は、実施例2による車両用ダクト装置30Aの第1風量調整ドア70A周りを第1軸線CL1に沿った方向から見た断面構成を示し、上記図5(a)の断面位置に相当する。
図12(b)は、実施例2による車両用ダクト装置30Aの第2風量調整ドア80A周りを第2軸線CL2に沿った方向から見た断面構成を示し、上記図5(b)の断面位置に相当する。
【0090】
図5(a),(b)に示される実施例1に対し、実施例2の車両用ダクト装置30Aは、次の2点を変更している(図12(a)及び図12(b)参照)。
第1の変更点は、実施例1の第1ダクト42及び第2ダクト52を、屈曲した第1ダクト42A及び第2ダクト52Aに変更したことである。
第2の変更点は、前記第1ダクト42A及び第2ダクト52Aの変更に合わせて、実施例1の第1風量調整ドア70及び第2風量調整ドア80を、第1風量調整ドア70A及び第2風量調整ドア80Aに変更したことである。
その他の基本的な構成については、上記実施例1による車両用ダクト装置30と共通する。実施例1による車両用ダクト装置30と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0091】
実施例2の車両用ダクト装置30Aの特徴は、第1ダクト42A及び第2ダクト52Aを屈曲した構成とすることによって、第1風量調整ドア70Aの第1周壁71Aの円弧長さL11と、第2風量調整ドア80Aの第2周壁81Aの円弧長さL12とを、同じ大きさに設定可能としたことである。以下、実施例2の車両用ダクト装置30A(以下、「ダクト装置30A」と略記する。)について、詳しく説明する。
【0092】
図12(a)に示されるように、第1ダクト42Aは、第1風量調整ドア70Aの回動方向R1,R2に屈曲している。第1ダクト42Aの屈曲した部位Q1(第1屈曲点Q1)は、第1軸線CL1に位置している。より詳しく述べると、この第1ダクト42Aを第1軸線CL1に沿った方向から見て、上流部42aと下流部42bとは、互いに第1屈曲角α1だけ屈曲している。
【0093】
一例を挙げると、下流側ブロア22の吐出口22aに接続される上流部42aは、下流部42bに対して上り傾斜となるように、屈曲している。これは、次のように言い換えることができる。下流部42bの中心線C1は、第1軸線CL1を通っている。上流部42aの中心線C2は、第1軸線CL1を交点とし、下流部42bの中心線C1に対して下方を向いている。
【0094】
図12(b)に示されるように、第2ダクト52Aは、第2風量調整ドア80Aの回動方向R1,R2に屈曲している。第2ダクト52Aの屈曲した部位Q2(第2屈曲点Q2)は、第2軸線CL2に位置している。より詳しく述べると、この第2ダクト52Aを第2軸線CL2に沿った方向から見て、上流部52aと下流部52bとは、互いに第2屈曲角α2だけ屈曲している。この第2屈曲角α2は、第1屈曲角α1と同じ角度に設定されている。
【0095】
一例を挙げると、下流側ブロア22の吐出口22aに接続される上流部52aは、下流部52bに対して上り傾斜となるように、屈曲している。これは、次のように言い換えることができる。下流部52bの中心線C1は、第2軸線CL2を通っている。上流部52aの中心線C2は、第2軸線CL2を交点とし、下流部52bの中心線C1に対して下方を向いている。
【0096】
実施例1と同様に、第1軸線CL1を中心とする第1格納室91は、上流部42aと下流部42bとを接続している。また、第2軸線CL2を中心とする第2格納室92は、上流部52aと下流部52bとを接続している。
【0097】
第1風量調整ドア70Aは、回動の中心が、第1ダクト42Aの屈曲した部位Q1(第1軸線CL1)に位置している。第2風量調整ドア80Aは、回動の中心が、第2ダクト52Aの屈曲した部位Q2(第2軸線CL2)に位置している。
【0098】
さらに、第1風量調整ドア70Aと第2風量調整ドア80Aとは、図5(a),(b)に示される実施例1の第1風量調整ドア70と第2風量調整ドア80とに対して、逆向きに配置している。つまり、第1風量調整ドア70Aは、下流部42bの中心線C1に対して上向きに配置されている。第2風量調整ドア80Aは、下流部52bの中心線C1に対して下向きに配置されている。第1風量調整ドア70A及びと第2風量調整ドア80Aの、第1回動方向R1と第2回動方向R2の向きについては、実施例1と同じである。
【0099】
上記実施例1と同様に、第1ダクト42Aと第2ダクト52Aの、それぞれの形状と大きさは、互いに同一である。例えば、図12(a),(b)に示されるように、第1ダクト42A及び第2ダクト52Aを各軸線CL1,CL2方向から見たときに、第1ダクト42Aの内側の高さH1(第1送風路41の高さH1)と、第2ダクト52Aの内側の高さH2(第2送風路51の高さH2)とは、同一である。
【0100】
第1周壁71Aの外周面71Aaの円弧長さはL11である。第2周壁81Aの外周面81Aaの円弧長さはL12である。第1ダクト42Aと第2ダクト52Aの、各大きさH1,H2(高さH1,H2)及び各屈曲角α1,α2は、それぞれ円弧状である第1周壁71A及び第2周壁81Aの、各円弧長さL11,L12が同一となる大きさに設定されている。
【0101】
次に、実施例2のダクト装置30Aの作用を、図13図16を参照しつつ説明する。
【0102】
図13(a)~(d)は、第1風量調整ドア70Aと第2風量調整ドア80Aが共に全開放状態のときの作用説明図であり、図12(a),(b)及び図6に対応している。
【0103】
図13(a)は、全開放状態にある第1風量調整ドア70Aと全閉鎖規定部131との関係を示しており、図12(a)に対応する。駆動源100(図3参照)は、第1風量調整ドア70Aの全開放位置を維持している。全開放状態にある第1周壁71は、第1格納室91の上部中央に位置している。
【0104】
図13(b)は、全開放状態にある第2風量調整ドア80Aと全開規定部132との関係を示しており、図12(b)に対応する。全開放状態にあるの第2周壁81Aは、第2格納室92の下部中央に位置しており、これ以上の第1回動方向R1への回動を、全開規定部132によって規制されている。
【0105】
図13(c)は、第1風量調整ドア70Aと第2風量調整ドア80Aが共に全開放状態のときの、付勢機構110の状態を示しており、図12(a),(b)に対応する。付勢機構110は、中立位置にあり、第1風量調整ドア70Aに対して第2風量調整ドア80Aを第1回動方向R1へ付勢している。
【0106】
図13(d)は、第1風量調整ドア70Aと第2風量調整ドア80Aが共に全開放状態のときの、拡開規制部120の状態を示している。拡開規制部120は、第1風量調整ドア70に対して第2風量調整ドア80Aがこれ以上第1回動方向R1へ広がらないように規制している。このため、第2風量調整ドア80Aは、全開放状態を維持している。
【0107】
その後、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70Aを第1回動方向R1(図反時計回り方向)へ回動することによって、第1送風路41は全閉鎖される。その結果を図14(a)~(d)に示す。
【0108】
図14(a)に示されるように、第1周壁71Aは第1送風路41の下流側を全閉鎖する。図14(b)に示されるように、第2周壁81Aは、第1回動方向R1への回動を、全開規定部132によって規制されている。このため、図14(c)に示されるように、第1風量調整ドア70Aの第1係止部112に係止されている第1腕部111bは、第1風量調整ドア70Aと共に第1回動方向R1へ回動する。図14(d)に示されるように、第1凸部121は、第1風量調整ドア70Aと共に第1回動方向R1へ回動して、第2凸部122から離れる。
【0109】
一方、図13(a)~(d)に示されるように、第1周壁71Aと第2周壁81Aの両方が全開放位置にあるときに、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70Aを第2回動方向R2(図時計回り方向)へ回動した場合には、次のようになる。
【0110】
図15(a)に示されるように、第1周壁71Aは第2回動方向R2へ回動して、第1格納室91の上部における上流側近くまで変位する。この段階では、第1周壁71Aは全開放位置にある。図15(d)に示されるように、拡開規制部120は変位する。つまり、第1凸部121は、第1風量調整ドア70Aと共に第2回動方向R2へ回動することによって、第2凸部122を第2回動方向R2へ回動させる。この結果、図15(b)に示されるように、第2風量調整ドア80Aは第2回動方向R2へ回動する。第2周壁81Aのなかの、第2回動方向R2の先端は、第2送風路51のなかの、下流側且つ上側まで変位して、第2送風路51の下流側を全閉鎖する。図15(c)に示されるように、第1腕部111bと第2腕部111cとの開き角は、変わらない。
【0111】
その後、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70Aを第2回動方向R2(図時計回り方向)へ更に回動した場合には、次のようになる。
【0112】
図16(a)に示されるように、第1周壁71Aは第2回動方向R2へ更に回動して、第1送風路41の上流側を全閉鎖する。この状態で、第1周壁71Aは、第2回動方向R2への更なる回動を、全閉鎖規定部131によって規制される。図16(d)に示されるように、拡開規制部120は変位する。つまり、第1凸部121は、第1風量調整ドア70Aと共に第2回動方向R2へ回動することによって、第2凸部122を第2回動方向R2へ回動させる。この結果、図16(b)に示されるように、全閉鎖している第2風量調整ドア80Aは第2回動方向R2へ、更に回動する。しかし、第2周壁81Aは、第2送風路51の上流側を全閉鎖状態に維持し続ける。図16(c)に示されるように、第1腕部111bと第2腕部111cとの開き角は、変わらない。
【0113】
第1風量調整ドア70A及び第2風量調整ドア80Aが、図15(a)~(d)に示される状態や、図16(a)~(d)に示される状態にあるときに、駆動源100(図3参照)が第1風量調整ドア70Aを第1回動方向R1へ戻した場合には、次のようになる。
【0114】
例えば、第1風量調整ドア70A及び第2風量調整ドア80Aが、図16(a)に示される状態にあるときに、第1風量調整ドア70Aが第1回動方向R1へ戻ると、図16(d)に示される第1凸部121は、第1風量調整ドア70Aと共に第1回動方向R1へ回動して、第2凸部122から離れようとする。
【0115】
このときには、図16(c)に示されるように、第1風量調整ドア70Aの第1係止部112に係止されている第1腕部111bは、第1風量調整ドア70Aと共に第1回動方向R1へ回動する。第2風量調整ドア80Aの第2係止部113に係止されている第2腕部111cには、第1腕部111bからコイル111aを介して、第1回動方向R1への回動力が作用する。第2腕部111cが第1回動方向R1へ回動することによって、図16(b)に示されるように、第2風量調整ドア80Aは第1回動方向R1へ回動する。つまり、第2風量調整ドア80Aは、付勢機構110の作用により、第1風量調整ドア70Aに対して追従する。この結果、第1風量調整ドア70A及び第2風量調整ドア80Aは、図13(a),(b)に示される状態に復帰することができる。そして、第1風量調整ドア70の第1凸部121は、第2風量調整ドア80の第2凸部122からは離れない。
【0116】
実施例2によれば、第1周壁71A及び第2周壁81Aの、各円弧長さL1,L2を同じ大きさに設定することができる。このため、2つのダクト42A,52Aの各送風路41,51の風量調整をする風量調整ドア70A,80Aを、1種類だけ準備すればよい。車両用ダクト装置30Aのコストダウンを図ることができる。
【0117】
さらに、実施例2による車両用ダクト装置30Aは、上記実施例1の車両用ダクト装置30と同様の効果を発揮することができる。
【0118】
なお、実施例2による車両用ダクト装置30Aは、第1ダクト42A及び第2ダクト52Aが屈曲した構成であればよい。つまり、各ダクト42A,52Aの屈曲方向や各屈曲角α1,α2の大きさは任意である。例えば、次の3つの変形構成や、その組み合わせの構成が考えられる。第1の変形構成は、第1ダクト42Aの屈曲方向と第2ダクト52Aの屈曲方向とが、互いに相違する。第2の変形構成は、第1屈曲角α1と第2屈曲角α2とが、互いに相違する。第3の変形構成は、各格納室91,92へ向かって下がるように傾斜した上流部42a,52aに対して、下流部42b,52bが水平である。
【0119】
図17を参照しつつ、実施例2の上記第3の変形構成の車両用ダクト装置30Bを説明する。
<実施例2の第3の変形構成>
【0120】
図17(a)は、実施例2の第3の変形構成による車両用ダクト装置30Bの第1風量調整ドア70A周りを第1軸線CL1に沿った方向から見た断面構成を示し、上記図12(a)の断面位置に相当する。
図17(b)は、実施例2の第3の変形構成による車両用ダクト装置30Bの第2風量調整ドア80A周りを第2軸線CL2に沿った方向から見た断面構成を示し、上記図12(b)の断面位置に相当する。
【0121】
図12(a),(b)に示される実施例2に対し、実施例2の第3の変形構成の車両用ダクト装置30Bは、次の点を変更している(図17(a)及び図17(b)参照)。この変更点は、実施例2の第1ダクト42A及び第2ダクト52Aを、逆方向へ屈曲した第1ダクト42B及び第2ダクト52Bに変更したことである。その他の基本的な構成については、上記実施例2による車両用ダクト装置30Aと共通する。実施例2による車両用ダクト装置30Aと共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0122】
実施例2の第3の変形構成の車両用ダクト装置30Bは、第1ダクト42B及び第2ダクト52Bを屈曲した構成とすることによって、第1風量調整ドア70Aの第1周壁71Aの円弧長さL11と、第2風量調整ドア80Aの第2周壁81Aの円弧長さL12とを、同じ大きさに設定可能としている。以下、実施例2の第3の変形構成の車両用ダクト装置30B(以下、「ダクト装置30B」と略記する。)について、詳しく説明する。
【0123】
図17(a)に示されるように、第1ダクト42Bは、第1風量調整ドア70Aの回動方向R1,R2に屈曲している。この第1ダクト42Bを第1軸線CL1に沿った方向から見て、上流部42aは、下流部42bに対して下り傾斜となるように、互いに第1屈曲角α1だけ屈曲している。つまり、上流部42aの中心線C2は、第1軸線CL1を交点とし、下流部42bの中心線C1に対して上方を向いている。
【0124】
図17(b)に示されるように、第2ダクト52Bは、第2風量調整ドア80Aの回動方向R1,R2に屈曲している。第2ダクト52Bを第2軸線CL2に沿った方向から見て、上流部52aは、下流部52bに対して下り傾斜となるように、互いに第2屈曲角α2だけ屈曲している。つまり、上流部52aの中心線C2は、第2軸線CL2を交点とし、下流部52bの中心線C1に対して上方を向いている。
【0125】
実施例2の第3の変形構成の第1風量調整ドア70Aと第2風量調整ドア80Aとは、図12(a),(b)に示される実施例2の第1風量調整ドア70Aと第2風量調整ドア80Aとに対して、逆向きに配置している。つまり、図17(a)に示されるように、実施例2の第3の変形構成の第1風量調整ドア70Aは、下流部42bの中心線C1に対して下向きに配置されている。図17(b)に示されるように、実施例2の第3の変形構成の第2風量調整ドア80Aは、下流部52bの中心線C1に対して上向きに配置されている。
【0126】
全閉鎖規定部131は、実施例2とは逆の、第1ダクト42Bの下流部42b側に位置している(実施例1と同様)。全開規定部132は、実施例2とは逆の、第2ダクト52Bの下流部52b側に位置している(実施例1と同様)。
【0127】
実施例2の第3の変形構成による車両用ダクト装置30Bは、上記実施例1~2の車両用ダクト装置30,30Aと同様の効果を発揮することができる。
【0128】
なお、上記各実施例及び変形例は、適宜組み合わせることもできる。
【0129】
また、本発明による車両用ダクト装置30,30A,30Bは、各送風路41,51を並列に3列以上並べたものにも適用することができる。また、本発明は、前部座席(1列目)の座席に送風するためのダクト装置にも適用可能である。つまり、本発明は、後部座席に送風するためのダクト装置には限られない。さらに、座席が3列以上配置される車両においては、第1送風路41の端部を2列目の座席に臨ませ、第2送風路51の端部を3列目の座席に臨ませることもできる。つまり、車両用ダクト装置30,30A,30Bは、左右の座席への送風量を切り替えるのみならず、前後の座席への送風量を切り替えるために用いてもよい。
【0130】
また、本発明による車両用ダクト装置30,30A,30Bは、下流側ブロア22の吐出口22aに接続された構成について説明したが、これに限定されるものではない。つまり、下流側ブロア22の有無にかかわらず、空調装置本体部21に対して直接にまたは間接的に接続された構成であってもよい。
【0131】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、各実施例や変形例に限定されるものではない。
【0132】
第1ダクト42と第2ダクト52とは、一体の構成に限定されるものではなく、別々に分離した構成や、互いに離間した構成であってもよい。
【0133】
第1風量調整ドア70,70Aは第1軸線CL1を中心に回動可能であればよく、また、第2風量調整ドア80,80Aは第2軸線CL2を中心に回動可能であればよい。つまり、軸の有無は任意である。また、各風量調整ドア70,80(70A,80A)を、1つの軸によって独立して回動可能に支持する構成であってもよい。
【0134】
また、拡開規制部120は、第1凸部121と第2凸部122との組み合わせに限定されるものではない。例えば、第1凸部121と第2凸部122のいずれか一方を凹部(溝を含む)によって構成することも可能である。
【0135】
また、全閉鎖規定部131と全開規定部132とは、丸棒等のバーに限定されるものではなく、例えば各ダクト42,52,42A,52Aに設けられた突起であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の車両用ダクト装置30,30A,30Bは、車両用空調装置20に好適である。
【符号の説明】
【0137】
30,30A,30B 車両用ダクト装置
41 第1送風路
42,42A,42B 第1ダクト
51 第2送風路
52,52A,52B 第2ダクト
70,70A 第1風量調整ドア
71,71A 第1周壁
80,80A 第2風量調整ドア
81,81A 第2周壁
91 第1格納室
92 第2格納室
100 駆動源
110 付勢機構
111 ねじりコイルばね
111b 第1腕部
111c 第2腕部
112 第1係止部
113 第2係止部
120 拡開規制部
131 全閉鎖規定部
132 全開規定部
210 変形例の付勢機構
212 変形例の第1係止部
213 変形例の第2係止部
CL1 第1軸線
CL2 第2軸線
H1 第1ダクトの大きさ(高さ)
H2 第2ダクトの大きさ(高さ)
L11 第1周壁の円弧長さ
L12 第2周壁の円弧長さ
R1 第1回動方向
R2 第2回動方向
Q1 第1ダクトの屈曲した部位
Q2 第2ダクトの屈曲した部位
α1 第1屈曲角
α2 第2屈曲角
θ 一定の開き角(一定角)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17