(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】センサ制御装置およびセンサ制御装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 3/00 20060101AFI20240326BHJP
G08C 19/02 20060101ALI20240326BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01D3/00 C
G08C19/02 Z
G08C19/00 U
(21)【出願番号】P 2019170137
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富松 智洋
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雄三
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-071336(JP,A)
【文献】特開平11-030530(JP,A)
【文献】米国特許第05805466(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00-3/10
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアナログ信号を出力可能な出力端子を備えたセンサ制御装置であって、
前記出力端子に印加される電圧が予め定められた特定状態となったか否かの判定を行うとともに、前記特定状態になった場合に前記出力端子を介して入力される入力情報を受信して前記入力情報に応じた制御を行う制御部を備え、
前記特定状態は、前記アナログ信号によって変化し得る前記出力端子の電圧の最大値よりも大きい電圧の規定信号が前記出力端子に入力された状態であ
り、
前記制御部は、前記センサ制御装置が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから任意の時間が経過した後かつ一定時間内に前記判定を行う
センサ制御装置。
【請求項2】
前記特定状態は、一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号が前記出力端子に入力された状態であり、
前記パルス信号のハイレベルの電圧が、アナログ信号によって変化し得る前記出力端子の電圧の最大値よりも大きい
請求項1に記載のセンサ制御装置。
【請求項3】
前記アナログ信号を生成する際の補正に用いられる補正データを登録する登録部を有し、
前記制御部は、前記入力情報として前記補正データに用いられる補正情報が入力された場合に、前記補正情報に基づく前記補正データを前記登録部に登録する
請求項1又は請求項2に記載のセンサ制御装置。
【請求項4】
少なくともアナログ信号を出力可能な出力端子と、
情報を登録する登録部と、
少なくとも前記登録部に対する制御を行う制御部と、
を備えたセンサ制御装置の製造方法であって、
前記出力端子に対し、前記センサ制御装置が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから任意の時間が経過した後かつ一定時間内に、外部から特定の電圧を印加することで前記出力端子の電圧を特定状態にする工程と、
前記特定状態にする工程の後、当該センサ制御装置の固有情報を含む情報を前記出力端子を介して前記センサ制御装置へ入力する工程と、
前記入力された情報を前記登録部に登録させるように前記制御部に制御を行わせる工程と、
を含み、
前記特定状態は、前記アナログ信号によって変化し得る前記出力端子の電圧の最大値よりも大きい電圧の規定信号が前記出力端子に入力された状態である
センサ制御装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ制御装置およびセンサ制御装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モード切り替え機能を備えた電子回路の一例が開示されている。特許文献1の電子回路は、各機能回路部と、各機能回路部への入力端子に結合されたラッチ回路群と、ラッチ回路群のそれぞれで作成されるテストモード信号が入力されるテストコントロールブロックと、を備えている。この電子回路は、各機能回路部をテストモードに切り替えるときに、ラッチ回路群のそれぞれのクロック入力、およびテストコントロールブロックに、テスト信号(テスト状態でHレベルになる信号)が入力される。そして、テストコントロールブロックからの信号により、機能ブロック間にある切換スイッチをコントロールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アナログ信号を出力する機能を備えた電子回路では、外部から情報を入力することが要望される場合がある。例えば、外部から何らかのコマンドを入力したり、外部から何らかの補正情報を入力したりすることが望まれる場合、外部情報を入力するための端子が必要となるため、端子数の増大が懸念される。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、アナログ信号の出力を行い得るセンサ制御装置又はその製造方法において外部情報を入力可能とする技術を、端子数の増加を抑えて実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの解決手段であるセンサ制御装置は、
少なくともアナログ信号を出力可能な出力端子を備えたセンサ制御装置であって、
前記出力端子に印加される電圧が予め定められた特定状態となったか否かの判定を行うとともに、前記特定状態になった場合に前記出力端子を介して入力される入力情報を受信して前記入力情報に応じた制御を行う制御部を備える。
【0007】
上記のセンサ制御装置は、出力端子に印加される電圧が予め定められた「特定状態」になっていない場合には、少なくとも出力端子を介してアナログ信号を出力するように動作することができる。一方で、上記のセンサ制御装置は、出力端子に印加される電圧が「特定状態」になった場合には、アナログ信号の出力に用いられる出力端子を入力端子として利用し、出力端子を介して入力される外部情報(入力情報)を受信するように動作することができる。特に、上記センサ制御装置は、特別な専用端子を用いずにアナログ信号の出力に用いられる出力端子を用いて「受信動作に切り替えるか否かの判定」及び「外部情報の入力」を行うことができる。よって、上記センサ制御装置は、アナログ信号の出力と外部情報の入力をいずれも行い得る構成が端子数の増加を抑えた形で実現される。
【0008】
上記のセンサ制御装置において、制御部は、センサ制御装置が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に判定を行ってもよい。
このように構成されたセンサ制御装置は、電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に「出力端子に印加される電圧が特定状態となったか否か」、即ち、「受信モードの切り替えるべき条件が成立したか否か」を判定することができる。このセンサ制御装置は、電源オン状態に切り替わってから一定時間内の出力端子の状態を監視することで効率的に条件判定を行うことができる。しかも、出力端子に印加される電圧が特定状態になることを常時判定する方法よりも、電源オン状態に切り替わってからの一定時間内に絞って特定状態になることを判定する方法のほうが、意図せずに偶然に特定状態になってしまうリスクを抑えることができる。よって、受信モードに切り替えるべきタイミングで正確に受信モードに切り替えることができる。
【0009】
上記のセンサ制御装置において、特定状態は、アナログ信号によって変化し得る出力端子の電圧の最大値よりも大きい電圧の規定信号が出力端子に入力された状態であってもよい。
このセンサ制御装置は、規定信号の電圧が相対的に高く設定されるため、アナログ信号を出力するモードのときに出力端子に印加されるアナログ信号が規定信号と誤判定されにくくなる。つまり、アナログ信号が規定信号と誤認識されて意図しないタイミングで受信モードに切り替えられてしまうことを防ぐことができ、受信モードに切り替えるべきタイミングで正確に受信モードに切り替えることができる。
【0010】
上記のセンサ制御装置において、特定状態は、一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号が出力端子に入力された状態であってもよい。
このセンサ制御装置は、受信モードに切り替えるか否かを判定するため規則的な規定信号(一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号)を用いるため、突発的なノイズによって規定信号が発生するリスクを抑えることができる。よって、意図しないタイミングで受信モードに切り替えられてしまうことを防ぐことができ、受信モードに切り替えるべきタイミングで正確に受信モードに切り替えることができる。
【0011】
上記のセンサ制御装置において、アナログ信号を生成する際の補正に用いられる補正データを登録する登録部を有していてもよい。制御部は、入力情報として補正データに用いられる補正情報が入力された場合に、補正情報に基づく補正データを登録部に登録してもよい。
このセンサ制御装置は、補正データを登録部に登録することで、登録部に登録された補正データを用いてアナログ信号を生成する際に補正を行うことができる。そして、センサ制御装置は、補正データに用いられる補正情報が入力されることで、補正情報を受信して補正情報に基づく補正データを登録部に登録する。そのため、特別な専用端子を用いずに補正情報を受信することができ、端子数の増加を抑えて補正情報に基づく補正データを登録部に登録することができる。
【0012】
本発明の一つの解決手段であるセンサ制御装置の製造方法は、
前記出力端子を介してアナログ信号を出力する出力部と、
情報を登録する登録部と、
少なくとも前記登録部に対する制御を行う制御部と、
を備えたセンサ制御装置の製造方法であって、
前記出力端子に対し、外部から特定の電圧を印加することで前記出力端子の電圧を特定状態にする工程と、
前記特定状態にする工程の後、当該センサ制御装置の固有情報を含む情報を前記出力端子を介して前記センサ制御装置へ入力する工程と、
前記入力された情報を前記登録部に登録させるように前記制御部に制御を行わせる工程と、
を含む。
【0013】
上記のセンサ制御装置の製造方法では、アナログ信号の出力に用いられる出力端子の電圧が予め定められた特定状態になった場合に、出力端子を介して外部情報(入力情報)を入力し、外部情報(入力情報)の入力に応じて固有情報を登録することができる。つまり、上記の製造方法では、特別な専用端子を用いずに、アナログ信号の出力に用いられる出力端子を用いて「受信動作に切り替えるか否かの判定」及び「登録部に登録させるための固有情報の入力」を行うことができる。よって、アナログ信号の出力を行い得るセンサ制御装置の製造方法において、工程中にセンサ制御装置に対して外部情報を入力し得る技術を、センサ制御装置の端子数の増加を抑えて実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、アナログ信号の出力と外部情報の入力をいずれも行い得る技術を、端子数の増加を抑えて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態におけるセンサ、およびセンサ制御装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【
図2】
図1のセンサ制御装置の構成を例示する回路図である。
【
図3】
図1のセンサ制御装置におけるモード切替制御の流れを示すフローチャート。
【
図4】
図1のセンサ制御装置における補正データの登録制御の流れを示すフローチャート。
【
図5】
図1のセンサ制御装置において検出される電源電圧と入力電圧の時間変化を例示する説明図である。
【
図6】
図1のセンサ制御装置に出力端子を介して入力される入力電圧の時間変化を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
1-1.センサ制御装置の構成
図1に示す第1実施形態のセンサ制御装置10は、センサ素子50から出力される信号(検出信号)をアナログ信号に変換して、出力端子12を介して出力する。出力端子12は、アナログ信号を出力可能な端子である。このセンサ制御装置10は、出力端子12に印加される電圧が後述する特定状態になった場合に、出力端子12を介して入力される入力情報に含まれる補正データを登録部21に登録する。そして、センサ制御装置10は、センサ素子50から出力される信号を補正データに基づいて補正し、アナログ信号として出力端子12を介して出力する。
【0017】
センサ制御装置10は、
図1に示すように、制御部20と、出力部30と、入力回路40と、を備えている。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有するMCU(Micro Control Unit、マイクロコンピュータ)により構成されている。制御部20は、登録部21の機能を有し、アナログ信号を生成する際の補正に用いられる補正データを登録する。
【0018】
出力部30は、
図1に示すように、制御部20と出力端子12との間に設けられている。出力部30は、出力端子12を介してアナログ信号を出力する。出力部30は、制御部20から出力される信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換し、出力端子12を介して外部に出力する。出力部30は、
図2に示すように、デジタルアナログ変換回路31を備えている。デジタルアナログ変換回路31は、例えば、制御部20とSPI(Serial Peripheral Interface)通信を行う。デジタルアナログ変換回路31と出力端子12との間には、抵抗33が設けられている。
【0019】
入力回路40は、
図1に示すように、制御部20と出力端子12との間に設けられている。入力回路40は、外部から出力端子12を介して信号(シリアル信号)が入力され、その信号を変換して制御部20に出力する回路である。入力回路40は、
図2に示すように、ツェナーダイオード41と、トランジスタ42と、抵抗43と、ダイオード44と、抵抗45と、抵抗46と、を備えている。トランジスタ42は、NPN型のバイポーラトランジスタとして構成されている。ツェナーダイオード41は、出力端子12とトランジスタ42との間に設けられている。ツェナーダイオード41のカソードは、出力端子12、コンデンサ16の一方の電極、および抵抗33の一端に電気的に接続されている。ツェナーダイオード41のカソード、出力端子12、コンデンサ16の一方の電極、および抵抗33の一端は、同電位である。コンデンサ16の他方の電極はグラウンドに電気的に接続されており、グラウンド電位となっている。
【0020】
抵抗43は、ツェナーダイオード41とトランジスタ42との間に設けられている。抵抗43の一端は、ツェナーダイオード41のアノードに電気的に接続されている。抵抗43の一端とツェナーダイオード41のアノードは、同電位である。抵抗43の他端は、トランジスタ42のベース、ダイオード44のカソード、および抵抗45の一端に電気的に接続されている。抵抗43の他端、トランジスタ42のベース、ダイオード44のカソード、および抵抗45の一端は、同電位である。ダイオード44のアノード、および抵抗45の他端は、グラウンドに電気的に接続されており、グラウンド電位となっている。
【0021】
トランジスタ42のコレクタは、抵抗46の一端と、制御部20の入力端子25と、に電気的に接続されている。トランジスタ42のコレクタと、抵抗46の一端と、制御部20の入力端子25は、同電位である。抵抗46の他端は、電源に電気的に接続されており、所定の電源電圧Vccが印加される。制御部20の入力端子25には、トランジスタ42のコレクタと抵抗46の一端の接続部分の電圧に応じた信号が入力される。トランジスタ42のエミッタは、グラウンドに電気的に接続されており、グラウンド電位となっている。
【0022】
センサ制御装置10は、
図2に示すように、出力端子12からアナログ信号が出力される際の基準電位となる端子14が設けられている。端子14は、グラウンドに電気的に接続され、グラウンド電位となる。センサ制御装置10は、出力端子12および端子14に図示しない外部装置(例えば、登録部21に書き込み可能な情報を出力可能な装置)が接続され、後述する通信モード時に、この外部装置と通信可能になっている。この外部装置は、後述する補正情報(
図6のステップS22の説明を参照)を出力するようになっている。
【0023】
1-2.センサ素子の構成
センサ素子50は、被測定ガス(例えば、内燃機関の排気ガス)中の特定ガス(例えば、酸素)の濃度を検出するガスセンサである。センサ素子50は、固体電解質体および一対の電極を有するセルを少なくとも1つ備えている。例えば、センサ素子50は、酸素濃度検出セルと、酸素ポンプセルと、を備えた公知の2セル式のセンサ素子である。センサ素子50は、被測定ガス中の酸素濃度に応じて変化する検出信号(電圧信号)をセンサ制御装置10に対して出力する。
【0024】
1-3.センサ制御装置のモード切替制御
図3のフローチャートを用いて、センサ制御装置10のモード切替制御について説明する。制御部20は、例えば、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替えられたことを条件としてモード切替制御を開始する。「センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替えられたこと」とは、具体的には、センサ制御装置10に対して電源電圧Vccが供給されていない状態から電源電圧Vccが供給された状態に変化したことを指す。制御部20は、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に、出力端子12に印加される電圧が特定状態となったか否かを判定する。ここで、出力端子12に印加される電圧が特定状態になるとは、センサ制御装置10を後述する監視モードから通信モードに切り替えるための規定信号が外部から出力端子12に入力された状態である。具体的には、出力端子12において予め定められた電圧変化が生じた状態を「特定状態」とする。
【0025】
アナログ出力モードは、センサ制御装置10が出力端子12を介してアナログ信号を出力するように機能するモードである。本構成では、ツェナーダイオード41の降伏電圧は、アナログ出力モードのときに出力部30から出力されるアナログ信号の電圧値よりも高く、通信モードのときに出力端子12を介して外部から入力される信号の電圧値よりも低くなっている。例えば、ツェナーダイオード41の降伏電圧が例えば6.8Vである場合、制御部20から出力されるアナログ信号によって変化し得る出力端子12の電圧範囲が0~5Vであれば、ツェナーダイオード41で降伏が生じず、入力回路40から制御部20に信号が出力されることがない。通信モードは、センサ制御装置10が、出力端子12を通信端子(入力端子)として外部装置から入力情報を受信可能となるように機能するモードである。なお、センサ制御装置10は、電源オフ状態から電源オン状態に切り替えられた段階において、規定信号を受信可能なモード(監視モード)となるように設定されている。
【0026】
制御部20は、まず、ステップS11で、規定信号の監視を開始し、出力端子12を介して入力される規定信号を受信可能な状態(監視モード)となる。例えば、
図5に示すように、時刻T1で電源オフ状態から電源オン状態に切り替わった場合、時刻T1から10ms経過した後の時刻T2から規定信号の監視を開始する。時刻T1から時刻T2までの時間は、例えば、制御部20が初期化する時間である。
【0027】
制御部20は、続くステップS12で、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内(例えば1秒以内)に、出力端子12を介して規定信号が入力されたか否か判断する。規定信号は、例えば、出力端子12に接続される外部装置から出力される信号である。ここで、規定信号は、制御部20から出力されるアナログ信号によって変化し得る出力端子12の電圧範囲の最大値よりも大きい電圧の信号を含む信号である。例えば、制御部20から出力されるアナログ信号によって変化し得る出力端子12の電圧範囲が0~5Vである場合、規定信号は、
図6に示すように、15Vの電圧の信号を含む信号とすることができる。具体的には、
図6に示すように、規定信号は、一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号とすることができる。
図6の例では、規定信号は、ハイレベルの時間およびローレベルの時間がともに10msであり、ハイレベルの電圧が15Vであり、ローレベルの電圧が0Vであるパルス信号となっている。
図6に示す規定信号は、5つのオンパルス(ハイレベル信号)が所定間隔おきに断続的に続く信号である。
図6で示す規定信号においてハイレベル信号が出力端子12に印加された場合、ツェナーダイオード41が降伏してトランジスタ42がオンして、入力端子25にオン信号(ハイレベル信号)が入力される。規定信号においてローレベル信号が出力端子12に印加された場合、ツェナーダイオード41が降伏せずトランジスタ42がオフして、入力端子25にオフ信号(ローレベル信号)が入力される。制御部20は、入力端子25に入力されるオン信号とオフ信号に基づいて
図6の規定信号が入力されたか否かを判断する。
【0028】
制御部20は、ステップS12において、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に規定信号が入力された(出力端子12に印加される電圧が特定状態となった)と判断した場合、S12でYesに進みステップS13の処理を行う。ステップS13において、制御部20は、センサ制御装置10を通信モードに切り替える。制御部20は、通信モードになると、出力端子12を介して外部装置から入力情報を受信可能となる。これにより、制御部20は、後述する補正データの登録制御が可能になる。ステップS13が行われると、制御部20は、
図3のモード切替制御を終了する。制御部20は、センサ制御装置10を通信モードに切り替えた場合、通信モードを終了条件が成立するまで維持する。終了条件は、通信モードに切り替わってから一定時間が経過したことであってもよく、電源オフ状態に切り替わることでもよい。
【0029】
このように、制御部20は、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に出力端子12に印加される電圧が特定状態となったか否かを判定し、一定時間内に特定状態となった場合に、後述する補正データの登録制御(入力情報を受信して入力情報に応じた制御)を行う。また、特定状態は、アナログ信号によって変化し得る出力端子12の電圧範囲の最大値よりも大きい電圧の信号を含む規定信号が出力端子12に入力されることで生じる状態であり、制御部20は、出力端子12に規定信号が入力された場合に、後述する補正データの登録制御(入力情報を受信して入力情報に応じた制御)を行う。また、特定状態は、一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号が出力端子12に入力されることで生じる状態であり、制御部20は、出力端子12にパルス信号が入力された場合に、後述する補正データの登録制御(受信した入力情報に応じた制御)を行う。
【0030】
一方で、ステップS12で、制御部20は、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に、規定信号が入力されていない(出力端子12に印加される電圧が特定状態となっていない)と判断する場合、Noに進みステップS14を行う。ステップS14では、制御部20は、センサ制御装置10を予め設定されたアナログ出力モードに切り替える。ステップS14が行われると、制御部20は、
図3のモード切替制御を終了する。
【0031】
1-4.センサ制御装置の補正データの登録制御
図4のフローチャートを用いて、センサ制御装置10の補正データの登録制御について説明する。制御部20は、
図3のモード切替制御で通信モードに切り替えられた場合、
図4の補正データの登録制御を行う。制御部20は、出力端子12に印加される電圧が特定状態となり且つ入力情報として補正データに用いられる補正情報が入力された場合に、補正情報を受信して補正情報に基づく補正データを登録部21に登録する。制御部20は、まず、ステップS21で、補正情報が出力端子12を介して入力されたか否か判断する。補正情報は、例えば、制御部20に対して登録部21に補正データを登録させる指令(コマンド)情報と、補正データと、を含む情報である。補正情報は、アナログ出力モードのときに出力端子12から出力され得る最大電圧より高い電圧のハイレベル信号と、0V程度のローレベル信号の組み合わせであるシリアル信号として出力端子12に入力される。
【0032】
ステップS21で、制御部20は、補正情報が出力端子12を介して入力されたと判断する場合、Yesに進みステップS22を行う。ステップS22では、制御部20は、登録部21に補正データを登録する。これにより、制御部20は、登録部21に登録された補正データを、出力端子12を介して出力するアナログ信号を生成する際の補正に用いることができる。例えば、補正データは、センサ素子50から制御部20に出力される電圧信号を補正するための演算に用いられる補正係数(補正倍率)である。制御部20は、検出信号に含まれる検出電圧の値に補正データを乗じて変更された信号を、出力部30に出力する。これにより、複数のセンサ素子50の間で特性にばらつきがある場合でも、各センサ素子50に対して適当な補正データをセンサ制御装置10に登録することで、各センサ素子50からセンサ制御装置10を介して出力されるアナログ信号を適切に評価し易くなる。ステップS22が行われると、制御部20は、
図4の補正データの登録制御を終了する。
【0033】
一方で、ステップS21で、制御部20は、補正情報が出力端子12を介して入力されていないと判断する場合、Noに進み、
図4の補正データの登録制御を終了する。
【0034】
1-5.センサ制御装置の製造方法
次に、センサ制御装置10の製造方法について説明する。なお、以下では、センサ制御装置10の製造工程の一部について説明する。まず、制御部20を、出力端子12に印加される電圧が予め定められた特定状態になった場合に出力端子12を介して入力される入力情報を受信して入力情報に応じた制御を行うように構成する。すなわち、制御部20を、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に、センサ制御装置10を監視モードから通信モードに切り替えるための規定信号が出力端子12に入力された状態である場合に、監視モードから通信モードに切り替えるように構成する。また、制御部20を、通信モードである場合に、入力された入力情報(後述する固有情報を含む情報)に基づいて、登録部21に補正データを登録するように構成する。
【0035】
制御部20を構成する工程の後、出力端子12に印加される電圧を特定状態にする工程を行う。すなわち、制御部20に、規定信号の監視を行わせ(
図5のステップS11)、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に、出力端子12を介して規定信号を入力する。これにより、センサ制御装置10を監視モードから通信モードに切り替える(
図5のステップS12,S13)。
【0036】
出力端子12に印加される電圧を特定状態にする工程の後、センサ制御装置10の固有情報を含む入力情報を出力端子12を介して入力する工程を行う。固有情報は、例えば、上述した補正情報、製造番号、製品のロッド番号などである。外部装置から入力情報を出力端子12を介して制御部20に入力する(
図6のステップS21)。
【0037】
出力端子12に入力情報を入力する工程に応じて制御部20に入力情報を受信させ、固有情報を登録部21に登録させるように制御部20に制御を行わせる工程を行う。すなわち、制御部20は、登録部21に補正データを登録する(
図6のステップS22)。このようにして、センサ制御装置10が製造される。
【0038】
1-6.効果
上述したセンサ制御装置10は、出力端子12に印加される電圧が「特定状態」になっていない場合には、少なくとも出力端子12を介してアナログ信号を出力するように動作することができる。一方で、上述のセンサ制御装置10は、出力端子12に印加される電圧が「特定状態」になった場合には、アナログ信号の出力に用いられる出力端子12を入力端子として利用し、出力端子12を介して入力される外部情報(入力情報)を受信するように動作することができる。特に、上述したセンサ制御装置10は、特別な専用端子を用いずにアナログ信号の出力に用いられる出力端子12を用いて「受信動作に切り替えるか否かの判定」及び「外部情報の入力」を行うことができる。よって、上述したセンサ制御装置10は、アナログ信号の出力と外部情報の入力をいずれも行い得る構成が端子数の増加を抑えた形で実現される。
【0039】
上述したセンサ制御装置10において、制御部20は、センサ制御装置10が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に判定を行う。
このように構成されたセンサ制御装置10は、電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから一定時間内に「出力端子12に印加される電圧が特定状態となったか否か」、即ち、「受信モードの切り替えるべき条件が成立したか否か」を判定することができる。このセンサ制御装置10は、電源オン状態に切り替わってから一定時間内の出力端子12の状態を監視することで効率的に条件判定を行うことができる。しかも、出力端子12に印加される電圧が特定状態になることを常時判定する方法よりも、電源オン状態に切り替わってからの一定時間内に絞って特定状態になることを判定する方法のほうが、意図せずに偶然に特定状態になってしまうリスクを抑えることができる。よって、受信モードに切り替えるべきタイミングで正確に受信モードに切り替えることができる。
【0040】
上述したセンサ制御装置10において、特定状態は、アナログ信号によって変化し得る出力端子12の電圧の最大値よりも大きい電圧の信号を含む規定信号が出力端子12に入力されることで生じる状態である。
このセンサ制御装置10は、規定信号の電圧が相対的に高く設定されるため、アナログ信号を出力するモードのときに出力端子12に印加されるアナログ信号が規定信号と誤判定されにくくなる。つまり、アナログ信号が規定信号と誤認識されて意図しないタイミングで受信モードに切り替えられてしまうことを防ぐことができ、受信モードに切り替えるべきタイミングで正確に受信モードに切り替えることができる。
【0041】
上述したセンサ制御装置10において、特定状態は、一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号が出力端子12に入力されることで生じる状態である。 このセンサ制御装置10は、受信モードに切り替えるか否かを判定するため規則的な規定信号(一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号)を用いるため、突発的なノイズによって規定信号が発生するリスクを抑えることができる。よって、意図しないタイミングで受信モードに切り替えられてしまうことを防ぐことができ、受信モードに切り替えるべきタイミングで正確に受信モードに切り替えることができる。
【0042】
上述したセンサ制御装置10において、アナログ信号を生成する際の補正に用いられる補正データを登録する登録部21を有している。制御部20は、入力情報として補正データに用いられる補正情報が入力された場合に、補正情報に基づく補正データを登録部21に登録する。
このセンサ制御装置10は、補正データを登録部21に登録することで、登録部21に登録された補正データを用いてアナログ信号を生成する際に補正を行うことができる。そして、センサ制御装置10は、補正データに用いられる補正情報が入力されることで、補正情報を受信して補正情報に基づく補正データを登録部21に登録する。そのため、特別な専用端子を用いずに補正情報を受信することができ、端子数の増加を抑えて補正情報に基づく補正データを登録部に登録することができる。
【0043】
上述したセンサ制御装置10の製造方法は、出力端子12を介してアナログ信号を出力する出力部30と、情報を登録する登録部21と、少なくとも登録部21に対する制御を行う制御部20と、を備えたセンサ制御装置10の製造方法である。センサ制御装置10の製造方法は、特定状態にする工程の後、当該センサ制御装置10の固有情報を含む情報を出力端子12を介してセンサ制御装置10へ入力する工程と、前記入力された情報を登録部21に登録させるように制御部20に制御を行わせる工程と、を含む。
【0044】
上述したセンサ制御装置10の製造方法では、アナログ信号の出力に用いられる出力端子12に印加される電圧が予め定められた特定状態になった場合に、出力端子12を介して外部情報(入力情報)を入力し、外部情報(入力情報)の入力に応じて固有情報を登録することができる。つまり、上記の製造方法では、特別な専用端子を用いずに、アナログ信号の出力に用いられる出力端子12を用いて「受信動作に切り替えるか否かの判定」及び「登録部21に登録させるための固有情報の入力」を行うことができる。よって、アナログ信号の出力を行い得るセンサ制御装置10の製造方法において、工程中にセンサ制御装置10に対して外部情報を入力し得る技術を、センサ制御装置10の端子数の増加を抑えて実現することができる。
【0045】
2.他の実施形態
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
第1実施形態の説明では、規定信号として、一定の周期且つ一定のパルス幅のパルス信号を例示したが、その他の構成の信号であってもよい。例えば、規定信号は、ハイレベルの電圧が5V(制御部20から出力されるアナログ信号によって変化し得る出力端子12の電圧の最大値)より大きい1つのパルスであってもよい。なお、規定信号は、パルス幅が任意の大きさであってもよく、任意の数のパルスが所定間隔おきに断続的に続く信号であってもよい。
【0047】
第1実施形態の説明では、制御部20は、ステップS11で、時刻T1で電源オフ状態から電源オン状態に切り替わった場合、時刻T1から10ms経過した後の時刻T2から規定信号の監視を開始したが、時刻T1から時刻T2までの時間は任意の時間とすることができる。
【0048】
第1実施形態の説明では、センサ制御装置10において、出力端子12および端子14に接続された外部装置との通信方法を特に限定していないが、外部装置とLIN(Local Interconnect Network)通信を行う構成であってもよい。
【0049】
第1実施形態の説明では、センサ素子50が出力する検出信号として、被測定ガス中の酸素濃度に応じて変化する電圧信号(検出電圧)を例示したが、センサ素子50の抵抗値に応じて変化する抵抗値検出信号であってもよい。センサ素子50の抵抗値は、センサ素子50の温度によって変化する特性(温度特性)を有するため、抵抗値検出信号がセンサ素子50の温度を判定するために利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10…センサ制御装置
12…出力端子
14…端子
16…コンデンサ
20…制御部
21…登録部
25…入力端子
30…出力部
31…デジタルアナログ変換回路
33,43,45,46…抵抗
40…入力回路
41…ツェナーダイオード
42…トランジスタ
44…ダイオード
50…センサ素子