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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】窓開口部の閉鎖具
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240326BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240326BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
H02J7/00 P
B60K1/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020172857
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064232
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】内藤 智士
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128113(JP,A)
【文献】特開平11-155221(JP,A)
【文献】特開2013-056646(JP,A)
【文献】実開昭60-175713(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 3/22 - 3/40
B60J 1/00 - 1/20
B60K 1/00 - 16/00
B60R 11/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内に設けられ、車載バッテリの電力を車外の給電先へ供給するための給電ケーブルを接続可能な接続口と、
車両の内外を連通する窓開口部を囲んで設けられるとともに、前記窓開口部の上方に配置される部分が上枠部分とされている窓枠部と、
昇降することにより前記窓開口部を開閉する窓ガラスと、を備える車両に用いられるもので、
前記窓ガラスが前記窓開口部の上側の一部を開口させる中間位置にある場合に、その開口した開口領域を閉鎖すべく前記車両に取り付けられる窓開口部の閉鎖具であって、
長尺状をなすとともに、前記開口領域を挟んで上下に対向する前記窓ガラスの上縁部及び前記上枠部分との間において前記上縁部に沿って配置されることで前記開口領域を閉鎖する閉鎖部を備え、
前記閉鎖部は、前記閉鎖する状態において前記上縁部が挿入されかつ前記閉鎖部の長手方向に延びる溝部を有し、その溝部に前記上縁部が挿入された状態で当該上縁部と前記上枠部分との間に挟まれることにより取り付けられ、
前記閉鎖部には、前記車両の内外に延びる前記給電ケーブルを挿通可能なケーブル挿通部が設けられていることを特徴とする窓開口部の閉鎖具。
【請求項2】
前記上枠部分には、前記窓ガラスが全閉位置にある場合に前記窓ガラスの前記上縁部が入り込む溝状の入り込み部が設けられ、
前記閉鎖部には、当該閉鎖部が前記上縁部と前記上枠部分との間に挟まれた状態において、前記入り込み部に挿入される挿入部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の窓開口部の閉鎖具。
【請求項3】
前記閉鎖部は、前記窓ガラスの上縁部に沿って配置される際に当該上縁部に沿って曲げ変形可能なように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窓開口部の閉鎖具。
【請求項4】
前記閉鎖部には、前記給電ケーブルが内部に挿通されることで当該給電ケーブルを保護する筒状の保護部材が設けられ、
前記保護部材の内部が前記ケーブル挿通部となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の窓開口部の閉鎖具。
【請求項5】
前記給電ケーブルと前記保護部材の内周面との隙間を塞ぐ環状の防水部材を備えることを特徴とする請求項4に記載の窓開口部の閉鎖具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載バッテリの電力を車外の給電先へ供給するための給電ケーブルを接続可能な接続口を車内に備える車両に用いられるもので、その車両の窓開口部を閉鎖する閉鎖具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、電気自動車やハイブリッド自動車が実用化されており、それらの自動車に搭載された車載バッテリを用いて、自動車側から建物側に電力を供給する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。この技術では、自動車側と建物側とを給電ケーブルを介して接続し、その接続状態で自動車側から建物側に給電ケーブルを通じて電力を供給するようになっている。これによれば、建物で停電が生じた場合でも、自動車側から建物側に電力を供給することで、建物内の電気機器を作動させることが可能となる。
【0003】
自動車には、給電ケーブルの接続口が車内に設けられているものがある。かかる自動車では、自動車から建物に電力を供給する際、車内の接続口に給電ケーブルを接続し、その接続した給電ケーブルを車外に引き出す必要がある。例えば、ドアの窓ガラスを開いて給電ケーブルを車外に引き出す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-9521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、窓ガラスを開いて給電ケーブルを車外に引き出す場合、天候によっては雨や風等が車内に入り込むおそれがある。そうすると、建物への給電中に車内が雨によって濡らされる等の不都合が生じるおそれがある。
【0006】
また、自動車から建物に給電を行う場合だけでなく、自動車から屋外に設けられた電気機器等に給電を行う場合にも、窓を開けて給電ケーブルを車外に引き出す必要があるため、上述した不都合が同様に生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車内の接続口に接続した給電ケーブルを通じて車両から車外の給電先に給電を行う際に、雨等が車内に入り込むのを抑制することができる窓開口部の閉鎖具を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の窓開口部の閉鎖具は、車内に設けられ、車載バッテリの電力を車外の給電先へ供給するための給電ケーブルを接続可能な接続口と、車両の内外を連通する窓開口部を囲んで設けられるとともに、前記窓開口部の上方に配置される部分が上枠部分とされている窓枠部と、昇降することにより前記窓開口部を開閉する窓ガラスと、を備える車両に用いられるもので、前記窓ガラスが前記窓開口部の上側の一部を開口させる中間位置にある場合に、その開口した開口領域を閉鎖すべく前記車両に取り付けられる窓開口部の閉鎖具であって、長尺状をなすとともに、前記開口領域を挟んで上下に対向する前記窓ガラスの上縁部及び前記上枠部分との間において前記上縁部に沿って配置されることで前記開口領域を閉鎖する閉鎖部を備え、前記閉鎖部は、前記閉鎖する状態において前記上縁部が挿入される溝部を有し、その溝部に前記上縁部が挿入された状態で当該上縁部と前記上枠部分との間に挟まれることにより取り付けられ、前記閉鎖部には、前記車両の内外に延びる前記給電ケーブルを挿通可能なケーブル挿通部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車両の窓ガラスが窓開口部の一部を開口する中間位置にある場合に、その開口する開口領域を閉鎖具により閉鎖することができる。閉鎖具は、長尺状の閉鎖部を備え、その閉鎖部が窓ガラスの上縁部と上枠部分との間で当該上縁部に沿って配置されることで開口領域が閉鎖される。閉鎖部は、上記閉鎖状態で、窓ガラスの上縁部が挿入される溝部を有し、その溝部に上縁部が挿入された状態で当該上縁部と上枠部分との間に挟まれることにより取り付けられる。この取り付けは、例えば窓ガラスの上縁部を溝部に挿入した状態で窓ガラスを上昇させることで、閉鎖部を窓ガラスの上縁部と上枠部分との間で挟むことにより行う。
【0010】
また、閉鎖部にはケーブル挿通部が設けられているため、車内の接続口に給電ケーブルを接続した状態で、給電ケーブルをケーブル挿通部を通じて車外に引き出すことができる。そのため、開口領域を閉鎖しながら、給電ケーブルを通じて車外の給電先に車載バッテリの電力を供給することができる。これにより、給電ケーブルを通じて車両から車外の給電先に給電を行う際に、雨等が車内に入り込むのを抑制することができる。
【0011】
第2の発明の窓開口部の閉鎖具は、第1の発明において、前記上枠部分には、前記窓ガラスが全閉位置にある場合に前記窓ガラスの前記上縁部が入り込む溝状の入り込み部が設けられ、前記閉鎖部には、当該閉鎖部が前記上縁部と前記上枠部分との間に挟まれた状態において、前記入り込み部に挿入される挿入部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、閉鎖部が窓ガラスの上縁部と上枠部分との間に挟まれて取り付けられる際、閉鎖部に設けられた挿入部が上枠部分の入り込み部に挿入される。この場合、閉鎖部が上下両側において上枠部分と窓ガラスとにそれぞれ係合されるため、閉鎖部の取り外しを困難にすることができる。そのため、不審者により閉鎖部を取り外され開口領域より車内に手を入れられる等の事態が生じるのを抑制することができる。これにより、車外の給電先に給電を行うにあたり、車両の防犯性確保を図ることができる。
【0013】
第3の発明の窓開口部の閉鎖具は、第1又は第2の発明において、前記閉鎖部は、前記窓ガラスの上縁部に沿って配置される際に当該上縁部に沿って曲げ変形可能なように形成されていることを特徴とする。
【0014】
車両の窓ガラスは、その上縁部の少なくとも一部が曲線形状とされているものが多い。また、上縁部の曲線形状は車両の種類によって様々である。その点、本発明では、閉鎖部が窓ガラスの上縁部に沿って曲げ変形可能とされているため、閉鎖部を上縁部の形状に合わせて曲げ変形することができる。これにより、上縁部の曲線形状にかかわらず閉鎖部により開口領域を閉鎖できるため、閉鎖具の汎用性を高めることができる。
【0015】
第4の発明の窓開口部の閉鎖具は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記閉鎖部には、前記給電ケーブルが内部に挿通されることで当該給電ケーブルを保護する筒状の保護部材が設けられ、前記保護部材の内部が前記ケーブル挿通部となっていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、筒状の保護部材の内部に給電ケーブルが挿通されるため、閉鎖部が窓ガラスの上縁部と上枠部分との間に挟まれて取り付けられる際、給電ケーブルに過大な力が加わるのを抑制することができる。そのため、給電ケーブルに損傷が生じるのを抑制することができる。
【0017】
第5の発明の窓開口部の閉鎖具は、第4の発明において、前記給電ケーブルと前記保護部材の内周面との隙間を塞ぐ環状の防水部材を備えることを特徴とする。
【0018】
保護部材の内側に給電ケーブルを挿通する構成では、閉鎖部が窓ガラスの上縁部と上枠部分との間に挟まれて取り付けられる際、保護部材が圧縮することがないため、保護部材と給電ケーブルとの間に隙間が生じることが考えられる。そこで、本発明では、上記の隙間を塞ぐ環状の防水部材を設け、それにより、当該隙間を通じて水が車内に入り込むのを抑制している。当該隙間より水が入り込むと、その水が給電ケーブルを伝って接続口に達することが想定される。そのため、この部分の防水を図ることは意義が大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両から建物へ給電ケーブルを通じて給電を行う給電システムを示す図。
図2】(a)がドアを示す正面図であり、(b)が(a)のA-A線断面図である。
図3】(a)がドアの窓開口部に閉鎖具が取り付けられた状態を示す正面図であり、(b)が(a)のB-B線断面図である。
図4】(a)が閉鎖具を示す正面図であり、(b)が(a)のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、車両から建物へ給電ケーブルを通じて給電を行う給電システムを示す図である。
【0021】
図1に示すように、車両11は、車載バッテリ12を搭載した電動車両からなる。車両11は、例えばプラグインハイブリット自動車(PHV)又は電気自動車(EV)からなる。車両11は、車載バッテリ12に蓄えられた電力を外部に供給する外部給電機能を有している。
【0022】
車内には、接続口としてのコンセント13が設けられている、コンセント13は、車載バッテリ12と電気的に接続されている。コンセント13は、建物に設けられているコンセントと同じAC100V用のコンセントとなっている。これにより、コンセント13に電気機器の電源コードを接続することで、車載バッテリ12から電気機器に電力を供給可能となっている。
【0023】
コンセント13には、車外給電用の給電ケーブル16を接続可能となっている。本実施形態では、車外の給電先として、建物20を想定している。給電ケーブル16は、ケーブル部16aと、ケーブル部16aの両端部に設けられた一対のコネクタ16b,16cとを有している。ケーブル部16aは、その断面が円形状とされている。
【0024】
各コネクタ16b,16cのうち、一方のコネクタ16bは車両11のコンセント13に接続可能となっており、他方のコネクタ16cは建物20の外壁21に設けられたインレット22に接続可能となっている。コネクタ16bを車両11のコンセント13に接続し、コネクタ16cを建物20のインレット22に接続すると、車両11(詳しくは車載バッテリ12)とインレット22とが給電ケーブル16を介して電気的に接続される。
【0025】
建物20において、インレット22は給電経路23を介して建物20内の各電気機器Eと接続されている。そのため、車両11とインレット22とが給電ケーブル16を介して電気的に接続されると、車両11と建物20内の各電気機器Eとが給電ケーブル16及び給電経路23を介して電気的に接続される。これにより、車両11(車載バッテリ12)から建物20内の各電気機器Eに給電ケーブル16と給電経路23を通じて電力を供給可能となっている。なお、電気機器Eには、照明機器や空調機器、コンセント等が含まれる。
【0026】
ところで、車両11から建物20に給電ケーブル16を通じて電力を供給する際には、車内のコンセント13に接続した給電ケーブル16を車外に引き出す必要がある。この場合、例えば車両11のドア25に設けられた窓ガラス27を開いて給電ケーブル16を車外に引き出す必要がある。しかしながら、給電ケーブル16を車外に引き出して建物20への給電を行う場合、天候によっては雨や風等が窓ガラス27を開いた部分から入り込むおそれがある。
【0027】
そこで、本実施形態では、このような点に鑑み、給電ケーブル16を車外に引き出した状態で、窓ガラス27の開いた部分を閉鎖することができる閉鎖具30を車両11に取り付けるようにしている。以下では、かかる閉鎖具30の構成について説明する。また、以下では、まず閉鎖具30が取り付けられるドア25周辺の構成について図2に基づき説明し、その後閉鎖具30の構成について説明する。なお、図2は、(a)がドア25を示す正面図であり、(b)が(a)のA-A線断面図である。
【0028】
図2(a)及び(b)に示すように、車両11のドア25には、車両11の内外を連通する窓開口部26と、窓開口部26を開閉する窓ガラス27とが設けられている。窓ガラス27は昇降可能に設けられ、昇降することにより窓開口部26を開閉する。窓ガラス27は、窓開口部26を全閉する全閉位置と、窓開口部26を全開する全開位置との間で開閉可能とされている。全閉位置では、窓ガラス27の上縁部27aが最も上側に位置し、全開位置では、窓ガラス27の上縁部27aが最も下側に位置する。窓ガラス27は、モータ等の駆動部によって開閉駆動される。車内には窓ガラス27を開閉操作する操作部が設けられ、その操作部の操作に基づき窓ガラス27が開閉駆動される。
【0029】
ドア25は、窓開口部26を囲んで設けられる窓枠部28を有している。窓枠部28は、窓開口部26の上方に設けられる上枠部分28aと、窓開口部26の前方及び後方にそれぞれ設けられる一対の縦枠部分28bとを有している。窓枠部28においてその内側には、シール部材29が設けられている。シール部材29は、窓ガラス27の外周部をシールするドアガラスランからなり、上枠部分28aと各縦枠部分28bとに跨って延びている。また、シール部材29は、EPDM等のゴム材料により形成されている。
【0030】
シール部材29は、その断面が略コ字状をなす本体部35を有する。本体部35の内側には、本体部35により囲まれた溝状の溝状空間36が形成されている。溝状空間36は窓開口部26側に開放されている。また、本体部35において溝状空間36を挟んだ両側の壁部35aには、それら壁部35aから溝状空間36側に延びる一対のリップ35bが設けられている。
【0031】
シール部材29の溝状空間36には、窓ガラス27の周縁部が入り込んでいる。窓ガラス27の周縁部は、溝状空間36に入り込んだ状態でシール部材29ひいては窓枠部28に保持されている。また、窓ガラス27の周縁部は、溝状空間36において一対のリップ35bにより表裏両側から挟まれている。
【0032】
窓ガラス27が全閉位置にある場合には、窓ガラス27の上縁部27aが上枠部分28aの溝状空間36に入り込む(図2(b)の二点鎖線参照)。この場合、この上枠部分28aの溝状空間36が入り込み部に相当する。上枠部分28aの溝状空間36は下方に開放されており、以下においては溝状空間36aという。
【0033】
続いて、閉鎖具30について図3及び図4に基づいて説明する。図3は、(a)がドア25の窓開口部26に閉鎖具30が取り付けられた状態を示す正面図であり、(b)が(a)のB-B線断面図である。また、図4は、(a)が閉鎖具30を示す正面図であり、(b)が(a)のC-C線断面図である。
【0034】
図3(a)及び(b)に示すように、窓ガラス27が全閉位置と全開位置との間の中間位置にある場合には、窓開口部26の上側の一部だけが開口された状態となる。この場合、その開口された領域は、窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間に形成された開口領域Kとされる(図2(a)及び(b)参照)。この開口領域Kは、窓ガラス27の上縁部27aの全域に亘って延びており、その上下寸法が前後方向全域に亘って略一定とされる。
【0035】
閉鎖具30は、窓ガラス27が中間位置にある場合に、開口領域Kを閉鎖すべく取り付けられるものである。図4(a)及び(b)に示すように、閉鎖具30は、直線状に延びる長尺状の閉鎖部31を備える。閉鎖部31は、その横断面(詳しくは長さ方向と直交する断面)の形状が略長方形状とされている。この場合、閉鎖部31の横断面における長辺方向が閉鎖部31の幅方向とされ、閉鎖部31の横断面における短辺方向が閉鎖部31の厚み方向とされている。また、閉鎖部31の長さ方向の一端側は、開口領域Kの形状に合わせて斜めにカットされている。
【0036】
閉鎖部31において上記幅方向を向く(短辺側の)各面31a,31bのうち一方の面31aには溝部33が形成され、他方の面31bには突出部34が形成されている。溝部33と突出部34とはいずれも閉鎖部31の長さ方向に延びており、詳しくは閉鎖部31の長さ方向全域に亘って連続して延びている。また、溝部33と突出部34とはいずれも閉鎖部31の厚み方向における中央部に配置されている。そのため、溝部33と突出部34とは上記厚み方向において同じ位置に配置されている。また、溝部33の幅と突出部34の幅とは略同じとされている。なお、突出部34が挿入部に相当する。
【0037】
閉鎖部31は、弾性を有するゴム材料により形成されている。閉鎖部31は、長さ方向に対して交差する方向に曲げ変形可能(撓み変形可能)とされている。詳しくは、閉鎖部31は、少なくとも溝部33と突出部34とが並ぶ並び方向(換言すると幅方向)に曲げ変形可能とされ、特に溝部33側に曲げ変形可能とされている(図4(a)の二点鎖線参照)。
【0038】
閉鎖部31には、円筒状の保護部材37が設けられている。保護部材37は、金属製の筒体からなり、閉鎖部31を厚み方向に貫通する貫通孔38に挿入されている。保護部材37は、その挿入状態で閉鎖部31に接着材等により固定されている。また、保護部材37は、閉鎖部31の長さ方向の一方寄りに配置されている。
【0039】
保護部材37の内部は給電ケーブル16を挿通するケーブル挿通部39となっている。ケーブル挿通部39には給電ケーブル16(詳しくはケーブル部16a)が挿通されている。これにより、給電ケーブル16は保護部材37によって保護されている。また、ケーブル挿通部39に給電ケーブル16が挿通されていることにより、閉鎖具30は給電ケーブル16に一体に設けられている。この場合、閉鎖具30と給電ケーブル16とにより閉鎖具30付きの給電ケーブル16が構成されている。
【0040】
保護部材37の内側には、円環状の防水部材41が設けられている。防水部材41は、保護部材37の一端部に配置され、例えばゴム材料により形成されている。防水部材41は、保護部材37の内周面に形成された円環状の凹部42に嵌め込まれており、その状態で一部が保護部材37の内周面よりも突出した状態となっている。防水部材41の内側には給電ケーブル16(詳しくはケーブル部16a)が挿通されている。これにより、給電ケーブル16の外周部と保護部材37の内周面との隙間が防水部材41により塞がれている。また、給電ケーブル16は、防水部材41の内側に挿通された状態で、その挿通方向及び保護部材37の周方向にそれぞれ変位可能とされている。
【0041】
続いて、閉鎖具30がドア25の開口領域Kに取り付けられる際の取付構成について説明する。
【0042】
図3(a)及び(b)に示すように、閉鎖具30は、その閉鎖部31が窓ガラス27の上縁部27aとドア25の上枠部分28aとの間において当該上縁部27aに沿って延びるように配置される。この場合、窓ガラス27の上縁部27aの一部は曲線形状となっているため、閉鎖部31は上縁部27aの曲線形状に沿って曲げ変形された状態で配置される。また、閉鎖部31は、溝部33が下側、突出部34が上側となる向きで配置される。その配置状態では、閉鎖部31の厚み方向が車両11の内外方向と同じ方向となる。
【0043】
閉鎖部31は、上記の配置状態で窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間に挟まれた状態とされる。そして、閉鎖部31は、それら両者27a,28aにより挟まれることで開口領域Kに取り付けられる。閉鎖部31が開口領域Kに取り付けられた状態では、開口領域Kの全域(又は略全域)が閉鎖部31により閉鎖される。
【0044】
閉鎖部31の取付状態では、溝部33に窓ガラス27の上縁部27aが下方から挿入され、突出部34が上枠部分28aの溝状空間36aに下方から挿入される。これにより、閉鎖部31は、その上下両側において上枠部分28aと窓ガラス27とにそれぞれ係合され、その係合により厚み方向への変位、つまりは車両11の内外方向への変位が規制される。
【0045】
閉鎖部31が開口領域Kに取り付けられた状態では、給電ケーブル16がケーブル挿通部39を通じて車両11の内外に跨って配置される。この場合、給電ケーブル16のコネクタ16bが車内に配置され、コネクタ16cが車外に配置される。これにより、コネクタ16bを車内のコンセント13に接続し、コネクタ16cを建物20のインレット22に接続することで、開口領域Kを閉鎖しながらも給電ケーブル16を介して車両11と建物20とを接続することが可能となる。
【0046】
続いて、閉鎖具30を開口領域Kに取り付ける際の作業内容について説明する。
【0047】
上述したように、閉鎖具30は給電ケーブル16と予め一体とされている。そのため、閉鎖具30は、給電ケーブル16とともに、閉鎖具30付きの給電ケーブル16として市場に流通されるようになっている。閉鎖具30は、大きさの異なる種々の窓開口部26に使用できるよう、市場流通時には閉鎖部31の長さ寸法が予め長めに設定されている。以下、閉鎖部31の長さ寸法が長めに設定された市場流通時の閉鎖具30を、開口領域Kに取り付けられる際の閉鎖具30と区別するため、閉鎖具30Aという。
【0048】
閉鎖具30を開口領域Kに取り付ける際には、まず開口領域Kの長さに合わせて閉鎖具30A(閉鎖部31)の長さ方向の一端側をカッター等を用いてカットする。また、開口領域Kの形状に合わせて閉鎖具30Aの長さ方向の一端側を斜めにカットする。これにより、開口領域Kの大きさ及び形状に合った閉鎖具30(閉鎖部31)が形成される。
【0049】
次に、窓ガラス27を中間位置に位置させた状態で、閉鎖部31を窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間に配置する。この配置に際しては、閉鎖部31を窓ガラス27の上縁部27aに沿って曲げ変形させながら、閉鎖部31の溝部33に窓ガラス27の上縁部27aを挿入する。なお、この配置の際には、窓ガラス27の位置(中間位置)を閉鎖具30が取り付けられる際の位置よりも少し下方にしておく。
【0050】
次に、窓ガラス27を上昇させることにより、閉鎖部31を窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間で挟み込む。この際、閉鎖部31の突出部34が上枠部分28aの溝状空間36aに入り込み、その状態で閉鎖部31が窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間に挟まれる。これにより、閉鎖部31ひいては閉鎖具30が開口領域Kに取り付けられる。
【0051】
その後、給電ケーブル16のコネクタ16bを車内のコンセント13に接続し、コネクタ16cを建物20のインレット22に接続する。これにより、給電ケーブル16を介して車両11から建物20への給電が可能となる。
【0052】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
閉鎖具30において、長尺状の閉鎖部31が、(開口領域Kを挟んで上下に対向する)窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間で当該上縁部27aに沿って配置されることで開口領域Kが閉鎖される。閉鎖部31は、上記閉鎖状態で、窓ガラス27の上縁部27aが挿入される溝部33を有し、その溝部33に上縁部27aが挿入された状態で当該上縁部27aと上枠部分28aとの間に挟まれることにより取り付けられる。
【0054】
また、閉鎖部31にはケーブル挿通部39が設けられている。この場合、車内のコンセント13に給電ケーブル16を接続した状態で、給電ケーブル16をケーブル挿通部39を通じて車外に引き出すことができる。そのため、開口領域Kを閉鎖しながら、給電ケーブル16を通じて建物20に車載バッテリ12の電力を供給することができる。これにより、給電ケーブル16を通じて車両11から建物20に給電を行う際、雨等が車内に入り込むのを抑制することができる。
【0055】
閉鎖部31が窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間に挟まれて取り付けられる際、閉鎖部31に設けられた突出部34が上枠部分28aの溝状空間36aに挿入されるようにした。この場合、閉鎖部31が上下両側において上枠部分28aと窓ガラス27とにそれぞれ係合されるため、閉鎖部31の取り外しを困難にすることができる。そのため、不審者により閉鎖部31を取り外され開口領域Kより車内に手を入れられる等の事態が生じるのを抑制できる。これにより、車両11から建物20に給電ケーブル16を通じて給電を行うにあたり、車両11の防犯性確保を図ることができる。
【0056】
車両11の窓ガラス27は、上縁部27aの少なくとも一部が曲線形状とされているものが多い。また、上縁部27aの曲線形状は車両の種類によって様々である。その点、閉鎖具30では閉鎖部31が窓ガラス27の上縁部27aに沿って曲げ変形可能とされているため、閉鎖部31を上縁部27aの形状に合わせて曲げ変形することができる。これにより、上縁部27aの曲線形状にかかわらず閉鎖部31により開口領域Kを閉鎖できるため、閉鎖具30の汎用性を高めることができる。
【0057】
筒状の保護部材37の内部に給電ケーブル16が挿通されるため、閉鎖部31が窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間に挟まれて取り付けられる際、給電ケーブル16に過大な力が加わるのを抑制することができる。そのため、給電ケーブル16に損傷が生じるのを抑制することができる。
【0058】
保護部材37の内部には、給電ケーブル16と保護部材37の内周面との隙間を塞ぐ環状の防水部材41が設けられている。これにより、当該隙間を通じて水が車内に入り込むのを抑制することができる。また、当該隙間より水が入り込むと、その水が給電ケーブル16を伝ってコンセント13に達することが想定されるため、この部分の防水を図ることは意義が大きいといえる。
【0059】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0060】
(1)上記実施形態では、閉鎖部31に筒状の保護部材37を設け、その保護部材37の内部に給電ケーブル16を挿通したが、これを変更してもよい。例えば、閉鎖部31に保護部材37を設けず、閉鎖部31に給電ケーブル16を挿通する挿通孔(ケーブル挿通部に相当)を設けてもよい。この場合、閉鎖部31が窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間で挟まれて取り付けられる際、閉鎖部31が上下に圧縮して挿通孔の内周面と給電ケーブル16との隙間を小さくすることが可能となる。そのため、保護部材37に加え防水部材も不具備とすることができ、構成の簡素化を図ることができる。ただ、閉鎖部31の圧縮に伴う給電ケーブル16の損傷を防止する観点からすれば、閉鎖部31に保護部材37を設けるのが望ましい。
【0061】
(2)上記(1)では、閉鎖部31にケーブル挿通部としての挿通孔を設ける場合について説明したが、閉鎖部31にケーブル挿通部として切り欠きを設けてもよい。この場合、給電ケーブル16を閉鎖具30と別体で扱うことが可能となる。
【0062】
(3)上記実施形態では、閉鎖部31に突出部34を設けたが、閉鎖部31に突出部34を設けないようにしてもよい。この場合にも、閉鎖部31を窓ガラス27の上縁部27aと上枠部分28aとの間で挟むことにより取り付けることが可能である。
【0063】
(4)上記実施形態では、閉鎖部31をゴム材料により形成したが、閉鎖部31を柔軟性を有するクッション材により形成してもよい。この場合にも、閉鎖部31を窓ガラス27の上縁部27aの曲線形状に沿って曲げ変形することが可能となる。
【0064】
また、閉鎖部31を硬質樹脂等、曲げ変形不能な材料により形成してもよい。但し、その場合、閉鎖部31を窓開口部26の形状ごとに複数種類用意する必要が生じる。そのため、汎用性の点からすると、閉鎖部31は曲げ変形可能な材料により形成するのがよい。
【0065】
(5)上記実施形態では、保護部材37の一端部に円環状の防水部材41を設けたが、他端部にも防水部材41を設けてもよい。また、保護部材37の全域に亘る円筒状の防水部材を設けてもよい。
【0066】
(6)上記実施形態では、車両11から建物20に給電ケーブル16を介して給電を行う際に閉鎖具30を用いたが、車両11から給電を行う車外の給電先としては建物20以外に、屋外に設置された電気機器等が想定される。そこで、かかる電気機器に車両11から給電ケーブル16を介して給電を行う際に閉鎖具30を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
11…車両、12…車載バッテリ、13…接続口としてのコンセント、16…給電ケーブル、20…給電先としての建物、26…窓開口部、27…窓ガラス、27a…上縁部、28…窓枠部、28a…上枠部分、30…閉鎖具、31…閉鎖部、33…溝部、34…挿入部としての突出部、36a…入り込み部としての溝状空間、37…保護部材、39…ケーブル挿通部、41…防水部材、K…開口領域。
図1
図2
図3
図4