(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電装ボックスの接地構造
(51)【国際特許分類】
H02B 1/16 20060101AFI20240326BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240326BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02B1/16
H05K5/02 E
H05K5/04
(21)【出願番号】P 2020201954
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 淳
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-231190(JP,A)
【文献】特開2008-199863(JP,A)
【文献】特開2017-228624(JP,A)
【文献】特開2012-172780(JP,A)
【文献】特開2015-191926(JP,A)
【文献】特開2014-73056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 7/08
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の壁面には、電気部品を収容した電装ボックスが取り付けられており、
前記電装ボックスは、
前記壁面に固定され、前記電気部品が取り付けられたプレート部材と、
前記プレート部材の外周側に設けられた金属製の固定部と、
前記プレート部材と前記固定部とを内側に収容するように設けられ、前記固定部に締結具を用いて固定された金属製のカバー部材と、を有し、
前記プレート部材には、接地経路を介して接地された接地端子台が設けられ、
前記接地端子台と前記固定部とがアース線を介して接続されている、電装ボックスの接地構造。
【請求項2】
前記カバー部材の表面及び裏面はいずれも塗装されており、
前記締結具は、頭部と金属製の軸部とを有し、その軸部が前記カバー部材に設けられた孔部を通じて前記固定部にねじ込まれることで前記カバー部材が前記固定部に固定されており、
前記孔部の内周面には塗装がされておらず、
前記軸部は、前記孔部の内周面に接触した状態で当該孔部に挿通されている、請求項1に記載の電装ボックスの接地構造。
【請求項3】
前記軸部は、その基端側に前記頭部に向けて拡径されたテーパ部を有しており、
前記テーパ部は、その最大径が前記孔部の孔径よりも大きくなっている、請求項2に記載の電装ボックスの接地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装ボックスの接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物には、電気部品を収容した電装ボックスが設けられる場合がある(例えば特許文献1参照)。かかる電装ボックスは、例えば建物内の壁面に取り付けられ、電気部品が取り付けられた金属製のプレート部材と、プレート部材と電気部品とを覆う金属製のカバー部材とを有して構成される。この場合、プレート部材は壁面に固定され、カバー部材は壁面に固定された固定金具に着脱可能に固定される。
【0003】
ここで、上記の電装ボックスでは、カバー部材への漏電が生じた場合を想定して、カバー部材をアース線を介して接地するのが一般的である。この場合、接地構造としては、例えばプレート部材に接地経路を介して接地した接地端子台を設け、その接地端子台とカバー部材とをアース線を介して接続する構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレート部材の接地端子台とカバー部材とをアース線を介して接続する上述の構成では、カバー部材を固定金具に固定する際、まず接地端子台とカバー部材とをアース線により接続し、その接続状態でカバー部材を固定金具に固定することになると考えられる。しかしながら、この場合、アース線によりカバー部材の取り回しが制限されるため、カバー部材の固定作業がしづらくなるおそれがある。また、カバー部材とプレート部材との間にアース線を挟まないよう注意を払いながらカバー部材を固定する必要があるため、その点においても固定作業がしづらいと考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電装ボックスのカバー部材を接地する構成にあって、カバー部材の固定作業を容易とすることができる電装ボックスの接地構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の電装ボックスの接地構造は、建物内の壁面には、電気部品を収容した電装ボックスが取り付けられており、前記電装ボックスは、前記壁面に固定され、前記電気部品が取り付けられたプレート部材と、前記プレート部材の外周側に設けられた金属製の固定部と、前記プレート部材と前記固定部とを内側に収容するように設けられ、前記固定部に締結具を用いて固定された金属製のカバー部材と、を有し、前記プレート部材には、接地経路を介して接地された接地端子台が設けられ、前記接地端子台と前記固定部とがアース線を介して接続されていることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、金属製のカバー部材が金属製の固定部に締結具を用いて固定されているため、カバー部材と固定部とが直接又は締結具を介して電気的に接続される。また、プレート部材には接地経路を介して接地された接地端子台が設けられ、その接地端子台と固定部とがアース線を介して接続されている。この場合、カバー部材が固定部とアース線とを介して接地端子台に電気的に接続されるため、カバー部材を接地端子台を介して接地することが可能となる。かかる構成では、接地端子台とカバー部材とがアース線を介して接続されていないので、カバー部材を固定部に固定する際、アース線によりカバー部材の取り回しが制限されたり、カバー部材とプレート部材との間にアース線を挟んでしまったりといった不都合を回避することができる。そのため、カバー部材の固定作業を容易に行うことが可能となる。
【0009】
第2の発明の電装ボックスの接地構造は、第1の発明において、前記カバー部材の表面及び裏面はいずれも塗装されており、前記締結具は、頭部と金属製の軸部とを有し、その軸部が前記カバー部材に設けられた孔部を通じて前記固定部にねじ込まれることで前記カバー部材が前記固定部に固定されており、前記孔部の内周面には塗装がされておらず、前記軸部は、前記孔部の内周面に接触した状態で当該孔部に挿通されていることを特徴とする。
【0010】
電装ボックスが建物内に設けられる場合、意匠性を考慮してカバー部材の表面に塗装が行われることが考えられる。また、カバー部材は着脱可能とされているため、カバー部材の表面に加え裏面にも塗装が行われる場合が考えられる。このような場合、カバー部材が固定部に固定された状態において、カバー部材と固定部との間に塗膜が介在することになる。そのため、塗膜の有する絶縁性によりカバー部材と固定部とを直接、電気的に接続するのが難しくなる。
【0011】
そこで、第2の発明では、カバー部材の孔部の内周面に塗装を行わないようにし、その孔部の内周面に締結具の軸部を接触させた状態で当該軸部を孔部に挿通するようにしている。この場合、カバー部材の表面と裏面とがともに塗装された構成にあっても、カバー部材と固定部とを軸部を介して電気的に接続することができる。そのため、かかる構成にあっても、カバー部材を固定部と接地端子台とを介して接地することができる。
【0012】
第3の発明の電装ボックスの接地構造は、第2の発明において、前記軸部は、その基端側に前記頭部に向けて拡径されたテーパ部を有しており、前記テーパ部は、その最大径が前記孔部の孔径よりも大きくなっていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、締結具の軸部をカバー部材の孔部を通じて固定部にねじ込むことにより、テーパ部のテーパ面により孔部の開口縁部の角形状を潰し、当該開口縁部にテーパ面に沿った傾斜面を形成することができる。この傾斜面は孔部の内周面の一部とされ、締結具が固定部にねじ込まれた状態では、この傾斜面にテーパ部のテーパ面が面接触される。そのため、軸部を介してカバー部材と固定部とを確実に電気的に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】筐体部を構成する各部材を分解した状態で示す分解斜視図。
【
図5】固定ボルトの挿通部分を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は給電システムの全体構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、住宅等の建物10には、分電盤11が設けられている。分電盤11には、商用電源(系統電源)から送られるAC100V/200Vの商用電力が引き込み線12を介して供給される。分電盤11に供給される商用電力は、分電盤11から建物10内の複数の回路(分岐回路)に分配供給される。これら複数の回路には、リビング用の回路であるリビング回路15が含まれている。リビング回路15は、照明16、照明SW17及びコンセント18等の電気機器と、これらの電気機器16~18に接続されたユニットケーブル19とを有している。分電盤11とリビング回路15とは給電経路22を介して接続され、その給電経路22を通じて分電盤11からリビング回路15に商用電力が供給される。なお、
図1では便宜上、建物10内の各回路のうち、リビング回路15以外の回路については図示を省略している。
【0017】
建物10には、外部電源装置としての車両23からリビング回路15に給電を行うための外部給電系統が設けられている。これにより、本建物10では、災害等により停電が発生した場合(すなわち商用電力の供給が停止された場合)に、車両23からリビングの電気機器16~18に電力を供給することが可能となっている。なお、車両23からの給電が可能な回路は必ずしもリビング回路15である必要はなく、寝室用の寝室回路等、他の回路であってもよい。
【0018】
車両23は、例えば車載バッテリ24を搭載したプラグインハイブリッド自動車(PHV)からなる。車両23には、その車内にコンセント25が設けられている。コンセント25は車載バッテリ24に電気的に接続され、車載バッテリ24に蓄えられた電力をコンセント25から取り出し可能となっている。コンセント25は、建物に設けられているコンセントと同じAC100V用のコンセントとなっている。
【0019】
車両23は、給電ケーブル27を介して建物10に接続可能となっている。給電ケーブル27は、その両端部に一対のコネクタ27a,27bを有しており、一方のコネクタ27aが車両23のコンセント25に接続され、他方のコネクタ27bが建物10の外壁29に設けられたインレット31に接続されるようになっている。かかる接続状態において、車両23(車載バッテリ24)とインレット31とが給電ケーブル27を介して電気的に接続される。
【0020】
建物10には、インレット31と給電経路22とを接続する接続経路35が設けられている。接続経路35と給電経路22との接続部分には切替スイッチ21が設けられている。切替スイッチ21は、手動操作により、分電盤11とリビング回路15とを接続する第1位置と、インレット31(換言すると接続経路35)とリビング回路15とを接続する第2位置との間で位置切替可能となっている。
【0021】
切替スイッチ21が第1位置にある場合には、分電盤11からリビング回路15に給電経路22を介して商用電力が供給される。切替スイッチ21は通常、第1位置に設定されている。一方、車両23(詳しくはコンセント25)が給電ケーブル27を介して建物10側のインレット31に接続された状態で、切替スイッチ21が第1位置から第2位置に切り替えられると、車両23からAC100Vの電力が給電ケーブル27を介してインレット31に供給され、その供給された電力がインレット31から接続経路35と給電経路22の一部とを介してリビング回路15に供給される。
【0022】
インレット31と切替スイッチ21とを接続する接続経路35上には、車両接続用装置40が設けられている。車両接続用装置40は、車両23からリビング回路15に給電を行う際に地絡や漏電が生じたことを検出するものである。以下では、車両接続用装置40の構成について
図2~
図4に基づき説明する。
図2は、車両接続用装置40の構成を示す正面図である。
図3は、車両接続用装置40の筐体部50を構成する各部材を分解した状態で示す分解斜視図である。
図4は、
図2のA枠内を拡大して示す拡大図である。
【0023】
図2に示すように、車両接続用装置40は、建物10内に設けられた間仕切壁37の壁面37aに取り付けられている。車両接続用装置40は、筐体部50と、その筐体部50に収容された複数の電気部品41~43とを備える。なお、車両接続用装置40が電装ボックスに相当する。
【0024】
複数の電気部品41~43には、地絡検出部41や漏電遮断器42、絶縁トランス43等が含まれている。地絡検出部41は、車両23からリビング回路15への給電時に給電ケーブル27における地絡の発生を検出するものである。また、漏電遮断器42は、車両23からリビング回路15への給電時に漏電が発生した場合に、その漏電を遮断するものである。
【0025】
図2及び
図3に示すように、筐体部50は、各電気部品41~43が取り付けられたプレート部材51と、プレート部材51と各電気部品41~43とを覆うように設けられたカバー部材52と、カバー部材52を固定するための固定金具53とを備える。なお、固定金具53が固定部に相当する。
【0026】
プレート部材51は、鋼板により矩形形状に形成され、間仕切壁37の壁面37aに固定されている。プレート部材51は、壁面37aと平行な取付面51aを有し、その取付面51aに電気部品41~43が取り付けられている。プレート部材51は、取付面51aを挟んだ上下両側においてそれぞれ壁面37a側に段曲げされている。その段曲げにより形成された鉛直板部は壁面37aに固定された固定板部51bとなっている。固定板部51bは、プレート部材51の上縁部及び下縁部に沿ってそれぞれ延びており、ビス56により複数箇所で固定されている。
【0027】
図2~
図4に示すように、プレート部材51には、その(正面視における)四隅に矩形に切り欠かれた切り欠き部54が形成されている。詳しくは、各固定板部51bの両端部がそれぞれ除去されることにより、プレート部材51の四隅に切り欠き部54が形成されている。
【0028】
各切り欠き部54には、固定金具53が設けられている。固定金具53は、鋼板によりL字状に形成され、いわゆるL字アングルとされている。固定金具53は、互いに直角をなす一対の板部53a,53bを有している。これら各板部53a,53bのうち、一方の板部53aはビス57により間仕切壁37の壁面37aに固定され、他方の板部53bは板部53aから壁面37aとは反対側に延びている。板部53bは、その外面を上下方向における反プレート部材51側に向けて配置され、同方向においてプレート部材51よりも外側に位置している。
【0029】
固定金具53は、正面視にて矩形形状をなしている。固定金具53は、正面視における互いに直角をなす2辺をそれぞれ切り欠き部54を形成している互いに直角をなす2辺に合わせた状態で配置されている。これにより、固定金具53を壁面37aにビス57で固定する際には、固定金具53の上記2辺を切り欠き部54の上記2辺に合わせることで、固定金具53の位置出しをすることが可能となっている。
【0030】
カバー部材52は、鋼板により四角箱状に形成されている。カバー部材52は、その一面が開放されており、その開放部を間仕切壁37の側に向けて設けられている。カバー部材52は、その内側にプレート部材51と各電気部品41~43と各固定金具53とを収容しており、その収容状態で各固定金具53にそれぞれ固定されている。
【0031】
カバー部材52は、各固定金具53の板部53bに固定ボルト58により固定されている。固定ボルト58は、手回し可能なつまみボルトからなり、樹脂製のつまみ部58aと、外周面にねじ溝が形成された金属製の軸部58bとを有する。これにより、カバー部材52は各固定金具53に着脱可能に固定されている。詳しくは、固定ボルト58は、その軸部58bがカバー部材52に形成された孔部61を通じて、固定金具53の板部53bに形成されたねじ孔部62にねじ込まれている(
図5も参照)。なお、固定ボルト58が締結具に相当し、つまみ部58aが頭部に相当する。
【0032】
ところで、車両接続用装置40において漏電が発生した場合、漏れ出た電流がカバー部材52にも流れるおそれがある。そこで、本実施形態では、かかるカバー部材52への漏電を想定して、カバー部材52を接地経路を介して接地している。そこで、以下では、その接地構造について説明する。
【0033】
カバー部材52の表面及び裏面は着色塗料により塗装されている。詳しくは、カバー部材52の表面全域及び裏面全域が着色塗料により塗装されている。これにより、カバー部材52の表面及び裏面にはそれぞれ塗膜が形成されている。なお、この塗膜は絶縁性を有している。
【0034】
一方、カバー部材52の孔部61の内周面には塗装がされていない。つまり、カバー部材52において孔部61の内周面は塗装がされていない未塗装面となっている。かかる未塗装面は、例えばカバー部材52の全面を着色塗料により塗装した後、孔部61の加工を行うことにより得られる。また、孔部61に丸棒等を挿入して孔部61を塞いだ状態でカバー部材52を全面塗装することによっても得られる。
【0035】
カバー部材52の孔部61には、上述したように、固定ボルト58の軸部58bが挿通されている。
図5は、その固定ボルト58の挿通部分を拡大して示す断面図となっている。
図5に示すように、固定ボルト58の軸部58bは、その基端側にテーパ部64を有している。テーパ部64は、つまみ部58aの側に向かうにつれ外径が大きくなるようにテーパ状に形成されている。このため、テーパ部64の外径は、テーパ部64のつまみ部58a側の端部(換言すると、軸部58bの基端部)にて最大となっている。また、このテーパ部64の最大外径D1は孔部61の孔径D2よりも大きくなっている。そのため、固定ボルト58の軸部58bが孔部61を通じて固定金具53のねじ孔部62にねじ込まれた状態では、テーパ部64のテーパ面が孔部61の開口縁部において当該孔部61の内周面に接触されている。これにより、カバー部材52は軸部58bを介して固定金具53と電気的に接続されている。
【0036】
また、詳しくは、固定ボルト58が固定金具53のねじ孔部62にねじ込まれると、テーパ部64のテーパ面により孔部61の開口縁部(換言すると、孔部61の内周面とカバー部材52の表面との間の境界部)の角形状が潰れ、当該開口縁部にテーパ面に沿った傾斜面69が形成される。そのため、固定ボルト58がねじ孔部62にねじ込まれた状態では、孔部61の内周面の一部が傾斜面69とされ、その傾斜面69にテーパ部64のテーパ面が面接触されている。
【0037】
プレート部材51の取付面51aには、接地端子台65が取り付けられている。接地端子台65には、アース線66の一端がビス67により固定されている。アース線66の他端はビス68により固定金具53の板部53aに固定されている。これにより、固定金具53と接地端子台65とがアース線66を介して電気的に接続されている。なお、アース線66が、特許請求の範囲に記載の「アース線」に相当する。
【0038】
接地端子台65には、アース線71の一端がビス72により固定されている。アース線71の他端側は、プレート部材51に設けられた配線孔73を通じて筐体部50の外部(裏側)に引き出されており、その後、間仕切壁37の壁内を通じて分電盤11へと延びている。アース線71の他端部は分電盤11に設けられた接地端子に接続されている(
図1参照)。接地端子はアース線74を介して接地されている。この場合、各アース線71,74により接地経路75が構成され、その接地経路75を介して接地端子台65が接地されている。これにより、カバー部材52は、固定金具53と接地端子台65とを介して接地されている。
【0039】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0040】
カバー部材52を固定金具53に固定ボルト58により固定し、その固定ボルト58を介してカバー部材52を固定金具53に電気的に接続した。また、プレート部材51に、接地経路75を介して接地された接地端子台65を設け、その接地端子台65と固定金具53とをアース線66を介して接続した。この場合、カバー部材52が固定金具53とアース線66とを介して接地端子台65に電気的に接続されるため、カバー部材52を接地端子台65を介して接地することが可能となる。
【0041】
かかる構成では、プレート部材51の接地端子台65とカバー部材52とがアース線を介して接続されていないため、カバー部材52を固定金具53に固定する際、アース線によりカバー部材52の取り回しが制限されたり、カバー部材52とプレート部材51との間にアース線を挟んでしまったりといった不都合を回避することができる。そのため、カバー部材52の固定作業を容易に行うことが可能となる。
【0042】
また、接地端子台65とカバー部材52とがアース線を介して接続されている場合には、カバー部材52の固定作業時に誤ってカバー部材52を落下させてしまうと、それに伴いアース線が断線してしまうおそれがある。その点、上記の構成によれば、こうした断線を招くことを回避できるため、その点においても有利な構成であるといえる。
【0043】
カバー部材52の表面を塗装したことで、建物10内の壁面37aに車両接続用装置40が取り付けられる構成にあって、意匠性が損なわれるのを抑制することができる。また、カバー部材52の裏面にも塗装を行ったことで、カバー部材52の取り外し時における意匠性低減についても抑制することができる。ここで、カバー部材52の表面及び裏面が塗装された構成では、カバー部材52を固定金具53に固定した際にカバー部材52の裏面と固定金具53との間に塗膜が介在することになる。このため、塗膜の有する絶縁性によりカバー部材52と固定金具53とを直接、電気的に接続するのが難しくなる。
【0044】
そこで、上記の実施形態では、カバー部材52において固定ボルト58の軸部58bが挿通される孔部61の内周面には塗装を行わないようにし、軸部58bを孔部61の内周面に接触させた状態で軸部58bを孔部61に挿通するようにした。この場合、カバー部材52の表面及び裏面がともに塗装された構成にあっても、軸部58bを介してカバー部材52と固定金具53とを電気的に接続することができる。そのため、かかる構成にあっても、カバー部材52を固定金具53と接地端子台65とを介して接地することが可能となる。
【0045】
固定ボルト58の軸部58bの基端側をつまみ部58a側に向けて拡径されたテーパ部64とし、そのテーパ部64の最大外径D1を孔部61の孔径D2よりも大きくした。この場合、固定ボルト58(軸部58b)を孔部61を通じて固定金具53にねじ込むことにより、テーパ部64のテーパ面により孔部61の開口縁部の角形状を潰し、当該開口縁部にテーパ面に沿った傾斜面69を形成することができる。この傾斜面69は孔部61の内周面の一部とされ、固定ボルト58が固定金具53にねじ込まれた状態では、この傾斜面69にテーパ部64のテーパ面が面接触される。そのため、軸部61bを介してカバー部材52と固定金具53とを確実に電気的に接続することが可能となる。
【0046】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、固定ボルト58をカバー部材52の孔部61を通じて固定金具53にねじ込むことにより、テーパ部64のテーパ面により孔部61の開口縁部を潰して傾斜面69を形成したが、かかる傾斜面69を予め孔部61を加工する際に形成してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、固定ボルト58の軸部58bにテーパ部64を設けたが、かかるテーパ部64は必ずしも設ける必要はない。この場合にも、固定ボルト58の軸部58bをカバー部材52の孔部61に挿通する際、軸部58bを孔部61の内周面に接触させることで、カバー部材52と固定金具53とを軸部58bを介して電気的に接続することができる。また、この場合には、軸部58bを孔部61の内周面に接触させ易くするため、孔部61の孔径を軸部58bの外径とほぼ同じ大きさにするのが望ましい。
【0049】
・上記実施形態では、カバー部材52を固定する締結具として、頭部がつまみ部58aとされた手締めの固定ボルト58を用いたが、頭部にドライバーの先端を差し入れる溝部を有するドライバー締めのボルトを用いてもよい。また、ボルト以外に、ビス等、他の締結具を用いてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、カバー部材52の表面及び裏面がそれぞれ塗装されていたが、カバー部材52の裏面が塗装されない場合や、カバー部材52の表面と裏面の両方が塗装されない場合も想定される。それらの場合では、カバー部材52が固定金具53に固定された状態でカバー部材52と固定金具53との間に塗膜が介在しないため、カバー部材52と固定金具53とを直接、電気的に接続することができる。そのため、かかる場合には、例えば、固定ボルト58として、軸部58bが樹脂製とされた樹脂ボルトを用いることが可能となる。
【0051】
・上記実施形態では、固定部としての固定金具53をプレート部材51の外周側にプレート部材51とは別体で設けたが、固定具をプレート部材51の外周側に溶接固定する等してプレート部材51と一体に設けてもよい。
【0052】
・例えば、アース線66を固定金具53に固定するにあたり、固定金具53を壁面37aに固定するビス57を用いてもよい。つまり、ビス57により固定金具53を壁面37aに固定するとともにアース線66を固定金具53に固定するようにしてもよい。この場合、ビスの個数削減を図ることが可能となる。
【0053】
・上記実施形態では、電装ボックスとしての車両接続用装置40に本発明の接地構造を適用したが、その他の壁付けの電装ボックスに本発明の接地構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…建物、37a…壁面、40…電装ボックスとしての車両接続用装置、41…電気部品としての地絡検出部、42…電気部品としての漏電遮断器、50…筐体部、51…プレート部材、52…カバー部材、53…固定部としての固定金具、58…締結具としての固定ボルト、58a…頭部としてのつまみ部、58b…軸部、61…孔部、64…テーパ部、65…接地端子台、66…アース線、75…接地経路。