(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】エピスルフィド化合物組成物および光学材料
(51)【国際特許分類】
C07D 331/02 20060101AFI20240326BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20240326BHJP
C07C 321/14 20060101ALI20240326BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20240326BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240326BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20240326BHJP
G02B 1/04 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C07D331/02
C07C265/14
C07C321/14
C07D409/12
C08G18/08 038
C08G18/38 076
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2022157201
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】202210228281.0
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522386758
【氏名又は名称】益豊新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(72)【発明者】
【氏名】丁 宗旺
(72)【発明者】
【氏名】張 建林
(72)【発明者】
【氏名】曹 飛羽
(72)【発明者】
【氏名】曹 帥
(72)【発明者】
【氏名】張 金国
(72)【発明者】
【氏名】易 先君
(72)【発明者】
【氏名】劉 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲けい▼ 瑩瑩
(72)【発明者】
【氏名】高 云龍
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0113612(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0021781(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 331/02
C08G 18/08
C08G 18/38
C07C 265/14
C07C 321/14
C07D 409/12
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(a)、化合物(b)、化合物(c)を含
み、
【化1】
(式中、xは1~2の整数を表す。)
前記化合物(b)と化合物(a)の質量比は、0.03~0.15:1であり、前記化合物(c)と化合物(a)との質量比は、0.01~0.20:1であることを特徴とするエピスルフィド化合物組成物。
【請求項2】
前記化合物(b)と化合物(a)の質量比は、0.03~0.08:1である、請求項
1に記載のエピスルフィド化合物組成物。
【請求項3】
前記化合物(c)と化合物(a)との質量比は、0.03~0.15:1である、請求項1または2に記載のエピスルフィド化合物組成物。
【請求項4】
イソシアネート、ポリチオール、触媒、および請求項1に記載のエピスルフィド化合物組成物を含む、ことを特徴とする光学材料組成物。
【請求項5】
重量部で、エピスルフィド化合物組成物は55~90部であり、イソシアネートは1~20部であり、ポリチオールは1~20部であり、触媒は0.01~5部である、請求項
4に記載の光学材料組成物。
【請求項6】
重量部で、エピスルフィド化合物組成物は80~90部であり、イソシアネートは3~10部であり、ポリチオールは3~10部であり、触媒は0.01~1部である、請求項
4または
5に記載の光学材料組成物。
【請求項7】
前記光学材料組成物において、前記ポリチオールは、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2’-チオビス(エタンチオール)、1,6-ジメルカプトヘキサン、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-プロピル-1-チオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチオオクタン、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロピルジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロピル-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパノール)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパノール)ジスルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパンから選択される1種または複数種である、請求項
4に記載の光学材料組成物。
【請求項8】
前記光学材料組成物において、前記イソシアネートは、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから選択される1種または複数種である、請求項
4に記載の光学材料組成物。
【請求項9】
前記光学材料組成物において、前記触媒がイミダゾール類およびホスフィン類から選択される、請求項
4に記載の光学材料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピスルフィド化合物および光学材料に関し、具体的にエピスルフィド化合物組成物およびその光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学樹脂技術の発展に伴い、光学樹脂レンズの屈折率のさらなる向上が、今後のレンズ開発の目標となっている。超高屈折率樹脂レンズの原料に用いられる硫黄含有化合物としては、特に多環硫黄化合物及びその配合技術が開発されている。
【0003】
しかし、エピスルフィド化合物に含まれるエポキシ基化合物は活性が高く、保存中にエピスルフィド化合物が自己重合しやすく、製品の変質を引き起こす。また、エピスルフィド化合物が重合硬化する際、重合速度が速すぎて重合反応を暴走させることがあり、これは重合応用過程において大きな危険であり、且つ巨大な損失をもたらす恐れがある。樹脂レンズの応用の面においても、重合反応の速度が速すぎると、レンズの屈折度が高くなり、樹脂レンズの不合格率が高くなる。第二に、エピスルフィド化合物中のアリル基化合物の含有量は、重合速度に影響し、ポリマーの耐熱性に深刻な影響を与える。
【0004】
保存安定性や重合速度などの問題を改善したことは多くの特許で報告され、例えば、特許CN107250124B及び日本特許特開2005-272418は、安定性を向上させるためにハロゲン基を有するエポキシ化合物を添加することが記載されているが、しかしながら、得られた光学材料硬化物は白濁現象を発生させ、光学材料の透過率が低下し、光学材料の品質に影響を与える。
【発明の概要】
【0005】
従来技術の問題点に鑑み、本発明は、エピスルフィド化合物の貯蔵安定性を向上させ、光学材料の製造工程における重合速度及び光学材料の耐熱性を制御することができるエピスルフィド化合物組成物およびその光学材料を提供する。この組成物は、レンズ、プリズム、光ファイバー、フィルターなどの光学材料に極めて好適であり、特にレンズの光学材料用組成物に好適である。
【0006】
本発明により提供されるエピスルフィド化合物組成物は、化合物(a)、化合物(b)、化合物(c)を含み、その構造式は以下のとおりであり、
【化1】
式中、xは1~2の整数を表す。
【0007】
本発明のエピスルフィド化合物組成物において、化合物(b)と化合物(a)の質量比は0.01~0.15:1、好ましくは0.03~0.08:1であり、化合物(c)と化合物(a)の質量比は0.01~0.20:1、好ましくは0.03~0.15:1である。さらにイソシアネート、ポリチオール、触媒、および本発明により提供される上記エピスルフィド化合物組成物を含む光学材料組成物となる。
【0008】
前記光学材料組成物は、重量部で、エピスルフィド化合物組成物は55~90部であり、イソシアネートは1~20部であり、ポリチオールは1~20部であり、触媒は0.01~5部である。好ましくは、エピスルフィド化合物組成物80~90部、イソシアネート3~10部、ポリチオール3~10部、触媒0.01~1部である。
【0009】
前記光学材料組成物において、ポリチオールは、従来の技術であってもよく、特に、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2’-チオビス(エタンチオール)、1,6-ジメルカプトヘキサン、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-プロピル-1-チオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチオオクタン、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロピルジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロピル-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパノール)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパノール)ジスルフィドおよび1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパンから選択される1種または複数種である。より好ましくは、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィドである。
【0010】
前記光学材料組成物において、イソシアネートは、従来技術であってもよく、好ましくはノルボルナンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから選ばれる1種または複数種であり、より好ましくはイソホロンジイソシアネートである。
【0011】
前記光学材料組成物において、触媒は、従来の技術であってもよく、好ましくはイミダゾール類、ホスフィン類などのうちの1種である。
【0012】
そ本発明の効果は以下のとおりである。
まず、本発明が提供するエピスルフィド化合物組成物において、化合物(a)、化合物(b)および化合物(c)の組成物は、一定量のエポキシ基およびアリル基を同時に含有し、エピスルフィド化合物の貯蔵安定性を向上させ、光学材料の製造プロセスにおける重合速度を制御し、光学材料の耐熱性を向上させることができる。特に、化合物(a)、化合物(b)および化合物(c)の組成が本願で規定される比率の範囲内にある場合、エピスルフィド化合物の貯蔵安定性の改善はより優れた効果が得られ、また、光学材料製造プロセスにおける重合速度の制御や光学材料の耐熱性の向上はより効果的になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上記の内容は、実施例の形で特定の実施を通じて以下にさらに詳細に説明されるが、本発明の上記の主題の範囲が以下に限定されることを意味するものではない。本発明の上記の内容に基づいて実現される技術はすべて本発明の範囲に属し、特別な説明を除き、以下の実施形態においては、すべて従来技術を用いて完成される。
【0014】
実施例及び比較例におけるエピスルフィド化合物の安定性の評価、光学材料の重合速度の評価及び光学材料の耐熱性の評価方法は以下のとおりである。
【0015】
1. 安定性評価
保存評価条件:室温25℃、湿度30%で30日間放置した。
安定性評価方法:ガスクロマトグラフィーを用いて分析し、エピスルフィド化合物(a)の含有量の変化を追跡する。含有量低下(0,3%]は「優れ」と記し、含有量低下(3%,8%]は、「良好」と記し、含有量低下(8%,100%]は「劣る」と記す。
【0016】
2. 重合率の評価
重合速度は、1回の硬化過程でプレポリマーが完全に流動性を失う時の累積時間で評価する。
【0017】
3. 耐熱性評価
光学材料を厚さ3mmの試験片に作製し、試験坩堝に入れ、10℃/分の速度で加熱し、得られた試験曲線に基づいて光学材料のガラス転移温度(Tg)を測定し、測定で得られたTgを評価する。使用される検出装置はMETTLER-DSC3型である。
【0018】
以下の実施例及び比較例において、上記化合物(a)、(b)及び(c)は、構造式においてx=1の場合、それぞれ化合物(a1)、化合物(b1)及び化合物(c1)と呼び、x=2の場合、それぞれ化合物(a2)、化合物(b2)、化合物(c2)と呼ぶ。
【0019】
(参考例1)
化合物(a1)、化合物(b1)および化合物(c1)を含み、化合物(b1)と化合物(a1)の質量比は0.01:1であり、化合物(c1)と化合物(a1)の質量比は0.01:1であることを特徴とするビス(β-エピチオプロピル)スルフィド組成物。
【0020】
上記エピスルフィド化合物組成物を用いて光学材料を製造した。そのうち、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド組成物87質量部、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド7質量部、イソホロンジイソシアネート5質量部、触媒テトラブチルホスホニウムブロマイド0.07質量部を加え、均一に混合した。次に、真空脱気し、金型に流し込み、一次硬化プログラムは20℃で2時間保温し、20~55℃で12時間、55~80℃で3時間、80℃で2時間保温し、80~60℃で1時間であった。100℃で二次硬化させた。
【0021】
(参考例2及び実施例3~10)
エピスルフィド化合物組成物は、化合物(a1)、化合物(b1)、化合物(c1)を含み、化合物(b1)と化合物(a1)の質量比、および化合物(c1)と化合物(a1)の質量比は、表1に示される割合で使用された。光学材料の製造方法は参考例1と全く同じである。
【0022】
(実施例11)
ビス(β-エピチオプロピル)ジスルフィド組成物であって、化合物(a2)、化合物(b2)、化合物(c2)を含み、化合物(b2)と化合物(a2)の質量比が0.05:1であり、化合物(c2)対化合物(a2)は0.05:1である。
【0023】
上記エピスルフィド化合物組成物を用いて光学材料を調製した。ここでは、前記ビス(β-エピチオプロピル)ジスルフィド組成物87質量部、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド7質量部、イソホロンジイソシアネート5質量部、触媒のテトラブチルホスホニウムブロマイド0.07質量部を加え、均一に混合した。次に、真空脱気し、金型に流し込み、一次硬化プログラムは20℃で2時間保温し、20~55℃で12時間、55~80℃で3時間、80℃で2時間保温し、80~60℃で1時間であった。100℃で二次硬化させた。
【0024】
(実施例12)
化合物(a2)、化合物(b2)および化合物(c2)を含むエピスルフィド化合物組成物であって、化合物(b2)と化合物(a2)の質量比および化合物(c2)と化合物(a2)の質量比は、表1に示す割合で使用し、光学材料の調製方法は実施例11と全く同様である。
【0025】
(比較例1)
ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド組成物は、化合物(a1)と化合物(c1)とを含み、化合物(c1)と化合物(a1)との質量比は0.10:1である。上記エピスルフィド化合物組成物を用いて光学材料を調製し、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド組成物87質量部、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド7質量部、イソホロンジイソシアネート5質量部、触媒テトラブチルホスホニウムブロマイド0.07質量部を加え、よく混合した。次に、真空脱気し、金型に流し込み、一次硬化プログラムは20℃で2時間保温し、20~55℃で12時間、55~80℃で3時間、80℃で2時間保温し、80~60℃で1時間であった。100℃で二次硬化させた。
【0026】
(比較例2~3)
エピスルフィド化合物組成物において、化合物(b1)と化合物(a1)の質量比、および化合物(c1)と化合物(a1)の質量比は、表1に示す割合で用い、光学材料の製造方法は、比較例1と全く同じであった。
【0027】
<評価結果>
表1の評価結果から、さらに本願のチオール化合物組成物は、先行技術よりも良好な安定性を有し、重合速度をより良好に制御し、光学材料の耐熱性を改善できることが確認された。
【表1】
【0028】
以上、開示された実施形態について説明したことにより、当業者は本発明を実施または利用することができる。これらの実施形態に対する様々な変更が当業者には明らかであり、本明細書で定義された一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態で実施することが可能である。したがって、本発明は、本明細書に示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理および新規の特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。