(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】封止部材形成装置、封止部材形成方法及び紫外線硬化性材料注入装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/00 20060101AFI20240326BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20240326BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20240326BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16J15/00 B
F16J15/00 C
B29C39/10
B29C39/26
F16J15/14 C
(21)【出願番号】P 2017153754
(22)【出願日】2017-08-09
【審査請求日】2020-08-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】浅賀 信行
(72)【発明者】
【氏名】米本 義見
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-230535(JP,A)
【文献】特表2007-500633(JP,A)
【文献】特開2006-346939(JP,A)
【文献】特開2003-154534(JP,A)
【文献】特開2007-294989(JP,A)
【文献】特開2008-275970(JP,A)
【文献】特開2015-201593(JP,A)
【文献】特表2008-529833(JP,A)
【文献】特許第5695102(JP,B2)
【文献】特許第5604054(JP,B2)
【文献】特開2000-263563(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105140832(CN,A)
【文献】特開2001-287229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00-39/24
B29C 39/38-39/44
B29C 43/00-43/34
B29C 43/44-43/48
B29C 43/52-43/58
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止材から基板上に封止部材を形成する封止部材形成装置であって、
第一部分と前記第一部分に作動可能に結合される第二部分とを有する型であって、
前記第一部分は、前記基板を前記型に挿入したり前記型から取り出したりすることができる開位置と前記基板が前記型内に封入された閉位置とに回転可能に遷移するように構成されており、前記第一部分が、前記第一部分の内面に画定された第一キャビティ、前記第一部分の前記内面に画定された第二キャビティ及び前記型の外面から前記第二キャビティへ延在する流路を有し、前記第一キャビティが前記基板の第一側と相補的
で前記基板の前記第一側をその中に収容するように構成された第一形状を有し、前記第二キャビティが前記封止部材と相補的な第二形状を有し、
前記第二キャビティが連続するエンドレスな環状に形成され、前記第一キャビティと前記第二キャビティが互いに連通している、紫外線透過材料で形成された型と、
前記流路と流体連通し、前記流路を通して前記第二キャビティに前記封止材を注入する注入装置と、
前記封止材が前記第二キャビティへ注入されたときに前記型に紫外線を照射して前記封止材を硬化させることにより、前記基板上に前記封止部材を形成する紫外線照射装置と、
を備えることを特徴とする封止部材形成装置。
【請求項2】
前記注入装置は、
前記型の前記流路へ前記封止材を選択的に吐出する吐出装置と、
前記封止材を収納し、前記吐出装置へ前記封止材を供給する材料供給装置と、
前記材料供給装置から前記吐出装置へ前記封止材を移送する移送装置と、
を備えることを特徴とする請求項
1に記載の封止部材形成装置。
【請求項3】
前記移送装置は、圧縮空気を用いて前記封止材を前記吐出装置へ移送するように構成されていることを特徴とする請求項
2に記載の封止部材形成装置。
【請求項4】
前記移送装置は、ポンプを有することを特徴とする請求項
2に記載の封止部材形成装置。
【請求項5】
前記注入装置は、前記材料供給装置を前記吐出装置へ流体接続するホースを備え、
前記移送装置は、前記ホースを介して前記材料供給装置から前記吐出装置へ前記封止材を移送するように構成されていることを特徴とする請求項
2乃至
4のいずれか一項に記載の封止部材形成装置。
【請求項6】
前記材料供給装置は、前記封止材を収納する材料収納容器を備え、
前記材料収納容器は、前記材料供給装置に着脱可能に装着されるカートリッジであることを特徴とする請求項
2乃至
5のいずれか一項に記載の封止部材形成装置。
【請求項7】
前記封止材へ気体を混合して硬化性発泡体を生成する発泡体生成装置を更に備えることを特徴とする請求項
2乃至
6のいずれか一項に記載の封止部材形成装置。
【請求項8】
前記吐出装置を前記型の前記流路へ流体連通したり離間したりするように前記吐出装置を選択的に移動させる移動装置を更に備えることを特徴とする請求項
2乃至
7のいずれか一項に記載の封止部材形成装置。
【請求項9】
前記封止材は、シリコーンゴム、ポリアクリレート、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートであることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の封止部材形成装置。
【請求項10】
前記紫外線照射装置は、紫外線ランプまたはLEDであることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の封止部材形成装置。
【請求項11】
基板上に封止部材を形成する方法であって、
型の
第一部分が、前記基板を前記型に挿入したり前記型から取り出したりすることができる開位置にある間に、前記第一部分の内面に画定された第一キャビティ内に、前記基板の第一側を収納する工程と、
前記型の前記第一部分を、前記開位置から前記基板が前記型内に封入された閉位置へ回転可能に遷移させる工程と、
前記型の前記第一部分の内面に画定された第二キャビティ
が連続するエンドレスな環状に形成され、前記第一キャビティと前記第二キャビティが互いに連通しており、封止材を前記第二キャビティ内へ、前記型の外面から前記第二キャビティへ延在する流路を通して注入する工程と、
前記封止部材が前記基板上に形成されるように前記封止材を硬化させるために前記型に紫外線を照射する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記基板の前記第一側を収納する工程は、前記第一側と反対の前記基板の第二側を前記型の第二部分の第三キャビティ内に収納する工程を含むことを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記型から注入装置との接続を解除する工程を更に含み、
前記注入装置は、前記型の前記流路へ前記封止材を選択的に注入するように構成されていることを特徴とする請求項
11又は
12に記載の方法。
【請求項14】
前記解除する工程の後で前記照射する工程の前に、前記第二キャビティ内の前記封止材の圧力を保持する工程を備えることを特徴とする請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記型は、第一型であり、
前記方法は、更に、
前記第一型を前記注入装置から離すように移動させる工程と、
第二型を前記注入装置へ向けて移動させる工程と、
前記注入装置が前記第二型の第二キャビティ及び流路と流体連通するように前記注入装置を前記第二型に接続する工程と、
を備えることを特徴とする請求項
13又は
14に記載の方法。
【請求項16】
前記封止材へ気体を混合して硬化性発泡体を生成する工程を更に備えることを特徴とする請求項
13乃至
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記注入装置は、前記型の前記流路へ前記封止材を選択的に吐出する吐出装置と、前記封止材を収納し、前記吐出装置へ前記封止材を供給する材料供給装置と、を備え、
前記方法は、更に、
ポンプを用いて前記材料供給装置から前記吐出装置へ前記封止材を移送する工程を備えることを特徴とする請求項
13乃至
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記注入装置は、前記型の前記流路へ前記封止材を選択的に吐出する吐出装置と、前記封止材を収納し、前記吐出装置へ前記封止材を供給する材料供給装置と、を備え、
前記方法は、更に、
圧縮空気を用いて前記材料供給装置から前記吐出装置へ前記封止材を移送する工程を備えることを特徴とする請求項
13乃至
16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品に封止部材を形成する封止部材形成装置および封止部材形成方法並びに紫外線硬化性材料注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、携帯電話、スマートフォン、事務機などの様々な機械において、部品と部品との間に気密性や液密性を与えるために封止部材(シール)が用いられている。封止部材としては、固定された部品間に気密性や液密性を与える固定用封止部材としてのガスケットや、相対移動する部品間に気密性や液密性を与える運動用封止部材としてのパッキンがある。
【0003】
予め形成された装着部に装着する封止部材としてOリングがある。部品の形状に合わせて部品に貼り付けられる封止部材として、フォームテープが用いられる。また、液状のシール材を部品面にビードとして塗布して部品同士を貼り合わせる現場施工型ガスケット塗布(Formed In Place Gasket、以下、FIPGという)が行われている。さらにまた、より高性能な2Kシリコーン材料によるLIM(Liquid Injection Molding)成形による部品へのガスケット形成も増加してきている。LIM成形においては、射出成形により熱可塑性材料で部品を製造し、別工程で部品上に加熱硬化性材料(シリコーン樹脂等)のガスケットを成形する方法が一般的に使用されている。そして、近年、両者を同時に行う複合成形機も開発されている。
【0004】
特許文献1は、下金型に形成されたキャビティ内に部品を配置し、部品の環状溝の底部に接着剤を塗布し、ガスケットを形成するためのキャビティを有する上金型を下金型に型締めし、上金型のキャビティ内へ未加硫ゴム材を注入し、金型を保圧状態に保って金型を加熱することによりゴム材を加硫するとともに接着剤を硬化させて、ゴム製のガスケットが一体になった部品を製造する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、部品へのOリングの装着やフォームテープの貼り付けは、自動化が困難であるので、手作業による労働集約型作業となり高コストであるという問題がある。FIPGは、自動化が可能であるが、塗布されるビードの高さや形状を制御することが困難であるため、部品に形成される封止部材の寸法精度が低いという問題がある。LIM成形は、特殊成形機を用いるので設備が高価であるという問題がある。また、特許文献1に記載の方法は、金型を加熱するので、熱に弱い部品に適用することが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、任意の断面形状を有する封止部材を基板上に寸法精度よく形成できる封止部材形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する為に本発明の一実施例による、封止材から基板上に封止部材を形成する封止部材形成装置は、
第一部分と前記第一部分に作動可能に結合される第二部分とを有する型であって、前記第一部分は、前記基板を前記型に挿入したり前記型から取り出したりすることができる開位置と前記基板が前記型内に封入された閉位置とに回転可能に遷移するように構成されており、前記第一部分が、前記第一部分の内面に画定された第一キャビティ、前記第一部分の前記内面に画定された第二キャビティ及び前記型の外面から前記第二キャビティへ延在する流路を有し、前記第一キャビティが前記基板の第一側と相補的で前記基板の前記第一側をその中に収容するように構成された第一形状を有し、前記第二キャビティが前記封止部材と相補的な第二形状を有し、前記第二キャビティが連続するエンドレスな環状に形成され、前記第一キャビティと前記第二キャビティが互いに連通している、紫外線透過材料で形成された型と、
前記流路と流体連通し、前記流路を通して前記第二キャビティに前記封止材を注入する注入装置と、
前記封止材が前記第二キャビティへ注入されたときに前記型に紫外線を照射して前記封止材を硬化させることにより、前記基板上に前記封止部材を形成する紫外線照射装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、任意の断面形状を有する封止部材を基板上に寸法精度よく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図10】封止部材の自動化された形成工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
(封止部材形成装置)
図1は、封止部材形成装置1を示す図である。封止部材形成装置1は、自動車、携帯電話、スマートフォン、事務機などの様々な機械の部品上に封止部材(シール)を形成する。封止部材は、部品と部品との間に配置されて、部品と部品との間に気密性や液密性を与える詰め物(シール材)である。封止部材は、固定された部品間に気密性や液密性を与える固定用封止部材としてのガスケットであってもよいし、相対移動する部品間に気密性や液密性を与える運動用封止部材としてのパッキンであってもよい。封止部材形成装置1は、塗布装置(紫外線硬化性材料注入装置)10と、型20とを備える。塗布装置10は、封止材供給装置(紫外線硬化性材料供給装置)11と、吐出装置(吐出ガン、吐出ヘッド)12と、封止材供給装置11から吐出装置12へ封止材を移送する移送部材としてのホース13とを備える。ホース13は、封止材供給装置11と吐出装置12とを接続する。封止部材形成装置1は、吐出装置12を移動させる移動装置14を備える。吐出装置12は、型20の注入口21へ接続および離間するように移動装置14により移動可能である。ホース13は、移動装置14による吐出装置12の移動を容易にするように可撓性を有する。型20は、紫外線透過性樹脂で形成されている。封止部材形成装置1は、型20へ紫外線を照射する紫外線照射装置17を有する。なお、塗布装置10は、封止材を収容し、手動で封止材を吐出する手動ハンドガンであってもよい。手動ハンドガンは、封止材を収容する円筒状容器と、円筒状容器内を往復移動可能なピストンと、ピストンに取り付けられたロッドと、ロッドを駆動するトリガーとを有する。使用者がトリガーを引くとロッドを介してピストンを移動させ、手動ハンドガンから型20の注入口21へ封止材を吐出する。
【0013】
封止部材形成装置1は、可撓性のホース13と、吐出装置12を移動させる移動装置14を有しているので、既存の機械部品の一連の製造ラインの途中に容易に組み込み(インライン)可能である。可撓性のホース13と、移動可能な吐出装置12とを使用することにより、複数の部品50上に封止部材51を連続的に形成する構成の自動化が容易になる。型20は、移動可能な型台25上に配置されている。型台25は、移動装置34により移動される。制御装置29は、封止材供給装置11、吐出装置12、移動装置14、紫外線照射装置17および移動装置34を制御する。
【0014】
図2は、別の封止部材形成装置31を示す図である。封止部材形成装置31は、封止部材形成装置1の変形例である。封止部材形成装置31は、ホース13を有していない点で封止部材形成装置1と異なる。封止部材形成装置31の塗布装置(紫外線硬化性材料注入装置)30は、封止材供給装置11と、吐出装置12とを備え、吐出装置12は、ホース無しに封止材供給装置11に直接接続されている。なお、吐出装置12は、ブロックやマニホールドを介して封止材供給装置11に接続されていてもよい。封止部材形成装置31は、型20を移動させる移動装置34を備える。型20は、型20の注入口21が吐出装置12へ接続および離間するように移動装置34により移動可能である。型20は、移動可能な型台25上に配置されている。型台25は、移動装置34により移動される。制御装置29は、封止材供給装置11、吐出装置12、紫外線照射装置17および移動装置34を制御する。なお、移動装置34により型20を移動させて注入口21を吐出装置12へ接続および離間させるものに限らず、吐出装置12と注入口21が接続および離間するように塗布装置30と型20とを相対移動させる移動装置を設けてもよい。
【0015】
(封止材供給装置)
図3は、封止材供給装置11の第一例を示すブロック図である。第一例の封止材供給装置11は、封止材としての紫外線硬化性材料を収納するカートリッジ(紫外線硬化性材料収納容器)15を着脱可能に装着する装着部16を有する。紫外線硬化性材料は、紫外線照射装置17から照射される紫外線のエネルギーにより短時間で硬化する材料である。紫外線硬化性材料は、例えば、紫外線硬化性樹脂である。紫外線硬化性樹脂は、シリコーンゴム、ポリアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどがある。紫外線硬化性材料は、液体であるとよい。第一例の封止材供給装置11は、カートリッジ(封止材供給源)15内の紫外線硬化性材料を加圧して押出すための加圧器18と、カートリッジ15から押出された紫外線硬化性材料を吐出装置12へ移送する移送装置としてのポンプ19とを有する。加圧器18は、カートリッジ15内に圧縮空気を送り込むことによりカートリッジ15内の紫外線硬化性材料を加圧してポンプ19へ送ってもよいし、電動アクチュエータで駆動されるピストンによりカートリッジ15内の紫外線硬化性材料を加圧してポンプ19へ送ってもよい。加圧器18は、必ずしも封止材供給装置11に設けられている必要はなく、工場設備内のコンプレッサーにより生成した圧縮空気を、チューブ等を通じてカートリッジ15内へ供給する構造であってもよい。ポンプ19は、非容積ポンプ、容積ポンプ又は特殊ポンプであってもよい。
【0016】
第一例においては、封止材供給装置11にポンプ19が設けられているが、必ずしもポンプ19は、必要ではない。封止材供給装置11から吐出装置12へ紫外線硬化性材料を移送する移送装置としては、ポンプ19無しに加圧器18からの圧縮空気の圧力のみでカートリッジ15内の紫外線硬化性材料を吐出装置12へ送る構成であってもよい。
【0017】
また、第一例においては、加圧器18が設けられているがカートリッジ15内の紫外線硬化性材料は、必ずしも圧縮空気で送り出される必要はなく、加圧器18を設けていなくてもよい。ポンプ19のみでカートリッジ15内の紫外線硬化性材料を吐出装置12へ圧送してもよい。
【0018】
図4は、封止材供給装置11の第二例を示すブロック図である。第二例の封止材供給装置11は、第一例のカートリッジ15を着脱可能に装着する装着部16の代わりに、封止材としての紫外線硬化性材料を収容するホッパー(紫外線硬化性材料収納容器)26を有する。ホッパー(封止材供給源)26に収容される紫外線硬化性材料は、例えば、液体又はペレット状の固体であってもよい。ホッパー26に収容される紫外線硬化性材料が固体である場合、第二例の封止材供給装置11は、固体の紫外線硬化性材料を溶融させるために紫外線硬化性材料を加熱する加熱器27を有するとよい。封止材供給装置11は、ホッパー26から供給された紫外線硬化性材料を吐出装置12へ圧送するポンプ19を有する。第二例の封止材供給装置11によれば、封止材として、加熱して塗布するタイプのポリアクリレート材料を使用することもできる。
【0019】
図5は、封止材供給装置11の第三例を示すブロック図である。第三例の封止材供給装置11は、第二例のホッパー26の代わりに、封止材としての紫外線硬化性材料を収容する圧力容器(プレッシャーポット)(紫外線硬化性材料収納容器)36を有する。圧力容器36は、開閉可能な蓋37により密閉される。圧力容器36は、圧縮空気供給源39から電磁弁38を介して供給される圧縮空気により加圧される。圧縮空気供給源39は、工場設備内のコンプレッサーであってもよい。なお、圧縮空気の代わりに、窒素や希ガスなどの圧縮気体を用いてもよい。圧縮気体の供給源は、ガスボンベであってもよい。圧力容器36に収容される紫外線硬化性材料は、例えば、液体又はペレット状の固体であってもよい。圧力容器36に収容される紫外線硬化性材料が固体である場合、第三例の封止材供給装置11は、固体の紫外線硬化性材料を溶融させるために紫外線硬化性材料を加熱する加熱器27を有するとよい。封止材供給装置11は、圧力容器36から供給された紫外線硬化性材料を吐出装置12へ圧送するポンプ19を有する。第三例においては、封止材供給装置11にポンプ19が設けられているが、必ずしもポンプ19は、必要ではない。封止材供給装置11から吐出装置12へ紫外線硬化性材料を移送する移送装置としては、ポンプ19無しに圧縮空気供給源39からの圧縮空気の圧力のみで圧力容器36内の紫外線硬化性材料を吐出装置12へ送る構成であってもよい。第三例の封止材供給装置11によれば、封止材として、加熱して塗布するタイプのポリアクリレート材料を使用することもできる。
【0020】
図6は、封止材供給装置11の第四例を示すブロック図である。第四例の封止材供給装置11は、
図3に示す第一例の封止材供給装置11に、フォームステーション40を設けたものである。フォームステーション40は、封止材に気体(乾燥空気や二酸化炭素気体などの気体、窒素気体などの不活性ガス)を混合して発泡性封止材(発泡性紫外線硬化性材料)を生成する。発泡性封止材は、封止材に溶解した気体が発泡を開始する臨界圧力またはそれ以上の圧力に維持されている限りにおいて混合物の状態(液体状態)を維持する。発泡性封止材は、大気圧にさらされると、気体が小さい泡の形で封止材から発生して発泡体を形成し、泡が拡大して体積を膨張させる。発泡性封止材を用いることにより、部品50に発泡体の封止部材51を形成することができる。発泡体の封止部材51は、変形が容易であり、部品間の密封性を向上することができる。
【0021】
発泡性紫外線硬化性材料生成装置としてのフォームステーション40は、第一歯車ポンプ41と、第二歯車ポンプ42と、気体供給源43と、混合器44とからなる。第一歯車ポンプ41は、カートリッジ15から封止材を第二歯車ポンプ42へ圧送する。気体供給源43は、第一歯車ポンプ41と第二歯車ポンプ42との間で封止材へ気体を導入する。第一歯車ポンプ41と第二歯車ポンプ42との流量に差を設けることにより、気体供給源43からの気体は封止材へ導入される。混合器44は、第二歯車ポンプ42から気体が導入された封止材を受け取り、封止材に気体を混合して発泡性封止材にする。混合器44からの発泡性封止材は、ポンプ19により吐出装置12へ供給される。
【0022】
フォームステーション40により生成された発泡性封止材で封止部材51を形成することにより、封止部材51の形状の誤差を発泡体の変形により吸収することができる。フォームステーション40を設けることにより、封止材として、シリコーンゴムだけでなくポリアクリレート材料も用いることができる。
【0023】
図7は、封止材供給装置11の第五例を示すブロック図である。第五例の封止材供給装置11は、
図4に示す第二例の封止材供給装置11に、フォームステーション40を設けたものである。フォームステーション40は、
図6に示す第四例の封止材供給装置11のフォームステーション40と同様であるので、説明を省略する。第五例の封止材供給装置11によれば、封止材として、加熱して発泡させるポリアクリレートガスケット材料を使用することもできる。
【0024】
図8は、封止材供給装置11の第六例を示すブロック図である。第六例の封止材供給装置11は、
図5に示す第三例の封止材供給装置11に、フォームステーション40を設けたものである。フォームステーション40は、
図6に示す第四例の封止材供給装置11のフォームステーション40と同様であるので、説明を省略する。第六例の封止材供給装置11によれば、封止材として、加熱して発泡させるポリアクリレートガスケット材料を使用することもできる。
【0025】
(型)
図9は、型20の説明図である。
図9(a)は、型20を開いた状態を示す図である。型20は、上型22と、下型23とからなる。部品50は、携帯電話、スマートフォン、事務機などの様々な機械の部品である。
図9において、部品50は、板状の基板で示されているが、部品50は、様々な形状を有する。部品50の上側に封止部材が形成される。下型23は、部品50の封止部材が形成される上側と反対の下側を保持する。下型23は、部品50を保持するために、部品50の下側の形状と相補的な形状の下側キャビティ23aが形成されているとよい。しかし、下型23は、部品50を保持できればよいので、下側キャビティ23aの無い、例えば、プラテンのような平らな保持台であってもよい。
【0026】
上型22は、部品50の上側(封止部材が形成される領域を含む部分)の形状と相補的な形状の第一上側キャビティ(第一キャビティ)22aと、封止部材を形成するための第二上側キャビティ(第二キャビティ)22bとが形成されている。第一上側キャビティ22aと第二上側キャビティ22bは、連通している。第二上側キャビティ22bは、流路22cを介して注入口21に連通している。第二上側キャビティ22bは、連続するエンドレスな環状に形成されているとよい。第二上側キャビティ22bの断面形状を様々な形に形成することにより、断面が様々なアスペクト比を有する封止部材が形成される。上型22および下型23は、紫外線透過材料で作られている。しかし、下型23は、必ずしも紫外線透過材料で作られている必要は無い。紫外線透過材料としては、ガラスや紫外線透過型アクリル樹脂がある。ガラスは、加工が困難であるので、紫外線透過型アクリル樹脂で型20を形成するとよい。切削加工により紫外線透過型アクリル樹脂の型20を製造する場合、型20の表面で紫外線が反射されることを防止するために、型20の表面に磨き加工を施す。一方、金型を用いて紫外線透過型アクリル樹脂の型20を製造する場合、型20の表面の磨き加工を省略することができる。紫外線透過型アクリル樹脂の型20は、紫外線を照射されることにより劣化しやすい。しかし、金型を用いて紫外線透過型アクリル樹脂の型20を製造することにより、同じ型20を複数個製造することができる。よって、紫外線照射により劣化した型20を新しいものと容易に交換することができる。
【0027】
部品50は、下型23の下側キャビティ23aに保持される。
図9(b)は、下型23の下側キャビティ23aに保持された部品50を示す図である。上型22が閉じられると、部品50の上側部分は、上型22の第一上側キャビティ22a内に収納される。
図9(c)は、上型22が閉じられた型20を示す図である。塗布装置10の吐出装置12から上型22の注入口21へ封止材を吐出する。封止材は、注入口21から流路22cを通って第二上側キャビティ22bへ注入される。紫外線照射装置17により型20へ紫外線を照射することにより、封止材は、端時間で硬化する。上型22を開け、型20から部品50を取り出す。
図9(d)は、上型22を開け、型20から取り出された部品50を示す図である。部品50の上には、封止部材51が形成される。封止部材51は、部品50と他の部品との間に配置されて、ガスケットまたはパッキンとして機能する。
【0028】
封止部材51は、部品50に容易に引き剥がせないように強固に固着されていてもよい。あるいは、封止部材51は、人の手で引っ張れば剥がれる程度の接着力で部品50に付着していてもよい。封止部材51は、少なくとも、部品50を他の部品に組み付けるときに部品50から外れない程度に部品50に付着していればよい。
【0029】
(封止部材の形成工程)
図10は、封止部材51の自動化された形成工程を示す図である。型20は、型台25上に配置されている。型台25は、移動装置34により左右方向に移動可能である。
図10(a)に示すように、上型22が開かれる。
図10(b)に示すように、下型23上に部品50を配置する。
図10(c)に示すように、上型22を閉じ、型台25を矢印で示す右方向へ移動する。
図10(d)に示すように、移動装置14により吐出装置12を下げて、吐出装置12のノズルを上型22の注入口21に接続する。吐出装置12から封止材を型20内へ注入する。紫外線照射装置17により型20へ紫外線を照射する。同時に、右隣の型20の上型22を開き、下型23上に部品50を配置する。
図10(e)に示すように、移動装置14により吐出装置12を上げる。左側の型20は、冷却中である。右側の型20の上型22が閉じられる。型台25は、矢印で示す左方向へ移動される。
図10(f)に示すように、左側の型20の上型22を開ける。部品50上に封止部材51が形成されている。封止部材51が形成された部品50を取り出し、新たな部品50を下型23上に配置する。右側の型20には、吐出装置12から封止材を注入する。このようにして、複数の部品50に連続して封止部材51を形成することができる。可撓性のホース13と移動可能な吐出装置12とを使用することにより、複数の部品50上に封止部材51を連続的に形成する構成の自動化を容易に行うことができる。
【0030】
なお、上型22と下型23を上下逆さに配置してもよい。その場合、上向きに配置された第一上側キャビティ22aに部品50を配置し、部品50を保持部材としての下型23により保持する。吐出装置12は、下向きに配置された注入口21に接続され下から上へ向かって封止材を注入する。このようにしても、同様に、部品50に封止部材51を形成することができる。
【0031】
本実施例において、紫外線照射装置17は、紫外線ランプから出射される紫外線で型20の全体を照射する。紫外線ランプとしては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、エキシマ蛍光ランプなどを用いることができる。しかし、紫外線照射装置17は、紫外線ランプの代わりに、又は、紫外線ランプとともにLEDタイプの光源を有し、LEDタイプの光源を型20の上を走査するように移動させてもよい。また、紫外線照射装置17は、封止部材51の形状に沿って移動するように構成されてもよい。
【0032】
本実施例による封止部材形成装置1又は31は、部品50の既存の製造ラインに組み込まれて、複数の部品50に連続的に封止部材51を形成する自動化が可能である。封止部材を形成するための第二上側キャビティ22bを成形することにより、封止部材51の断面形状のアスペクト比を任意に設定でき、封止部材51の自在な形状を得ることができる。封止部材51の形状の自由度を高め且つ形状を精度よく形成することができる。紫外線硬化性材料は、短時間の紫外線照射で硬化するので、熱に弱い部品にも、本発明を適用して封止部材を形成することができる。
【0033】
吐出装置12は、小型化することができるので、型20の注入口21の設計上の位置の自由度が高まる。吐出装置12から注入口21へ封止材を注入した後の保圧工程は、注入口(ゲート)21にストップバルブを組み込むことにより封止材の圧力を保持してもよい。または、下型23の側から紫外線を照射して注入口(ゲート)21近傍の紫外線硬化性材料を硬化させることにより封止材の圧力を保持してもよい。あるいは、型20に移動コマを設け、移動コマにより流路22cを塞ぐことにより封止材の圧力を保持してもよい。
【0034】
本実施例によれば、自動化が容易な封止部材形成装置、封止部材形成方法及び紫外線硬化性材料注入装置を提供することができる。また、本実施例によれば、任意の断面形状を有する封止部材を部品上に寸法精度よく形成できる封止部材形成装置、封止部材形成方法及び紫外線硬化性材料注入装置を提供することができる。また、本実施例によれば、熱に弱い部品上に封止部材を形成することができる封止部材形成装置、封止部材形成方法及び紫外線硬化性材料注入装置を提供することができる。
【0035】
ポンプ19は、紫外線硬化性材料を定量的に送り出す定量ポンプであってもよい。しかし、必ずしも定量性が求められるものではなく、型20へ紫外線硬化性材料を注入するときの圧力を制御する圧力ポンプであってもよい。圧力ポンプによれば、型20の第二上側キャビティ22bが紫外線硬化性材料で充満されると自動的に紫外線硬化性材料の注入が止まる。よって、ポンプ19は、定量ポンプであっても圧力ポンプであってもよい。
【0036】
本実施例においては、カートリッジ15又はホッパー26から吐出装置12へ紫外線硬化性材料を移送する移送装置としては、ポンプ19を用いている。しかし、ポンプ19の代わりに気体圧で紫外線硬化性材料を移送する構造であってもよい。
【0037】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0038】
1、31・・・封止部材形成装置
10、30・・・塗布装置(紫外線硬化性材料注入装置)
17・・・紫外線照射装置
20・・・型
21・・・注入口
22・・・上型
22a・・・第一上側キャビティ(第一キャビティ)
22b・・・第二上側キャビティ(第二キャビティ)
22c・・・流路
50・・・部品
51・・・封止部材