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特許7460334歯車ワークピースのトポロジカル創成研削方法、および歯車ワークピースのトポロジカル創成研削のための制御システムを備える研削機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】歯車ワークピースのトポロジカル創成研削方法、および歯車ワークピースのトポロジカル創成研削のための制御システムを備える研削機械
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/04 20060101AFI20240326BHJP
   B23F 23/00 20060101ALI20240326BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240326BHJP
   B24B 53/053 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B23F5/04
B23F23/00
B24B53/12 Z
B24B53/053
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111113
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020032524
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 820.8
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504269327
【氏名又は名称】クリンゲルンベルク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Klingelnberg GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】オラフ・フォーゲル
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112680(JP,A)
【文献】特表2009-538235(JP,A)
【文献】特開2013-082060(JP,A)
【文献】特開2017-200721(JP,A)
【文献】特開昭61-270020(JP,A)
【文献】特開2013-018089(JP,A)
【文献】特開平10-076424(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183094(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0290730(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12;
B24B 1/00-57/04;
B24C 1/00-11/00;
B24D 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トポロジー修整された研削ウォーム(2)により少なくとも2つの歯車ワークピース(10)を連続的に創成研削するための方法であって、研削ウォーム(2)は、歯車ワークピース(10)上でトポロジー修整された歯面(LF、RF)を研削するための修整されたウォーム領域(5)を備え、当該方法は、
a)第1の歯車ワークピース(10.1)を供給するステップと、
b)第1の歯車ワークピース(10.1)と研削ウォーム(2)との間で相対運動を行うことによって、トポロジカル創成研削操作を実行するステップであって、
相対的送り運動(Se1、Sz1)、
工具回転軸(B)に平行または斜めに生じる相対的軸送り(Sa1)、および
相対的シフト運動
を備えるステップと、
c)第2の歯車ワークピース(10.2)を供給するステップと、
d)第1の歯車ワークピース(10.1)の研削操作と第2の歯車ワークピース(10.2)の研削操作との間に、各研削操作が研削ウォーム(2)のトポロジー修整された領域における異なる領域で実行されるように、工具回転軸(B)に対して実質的に平行または斜めに延びる方向に、各歯車ワークピース(10.1,10.2)の位置に対する研削フォーム(2)の位置を変化させる相対的ジャンプ動作を実行するステップと、
e)第2の歯車ワークピース(10.2)に対してステップb)を繰り返すステップと、
を少なくとも備える、方法。
【請求項2】
相対的ジャンプ動作は、相対的シフト動作および相対的ねじり動作を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工具回転軸(B)に平行な相対変位が生じ、当該相対変位は、トポロジー修整されたねじ領域(5)の幅(bm)より短い経路長(ΔS)によって定義され、当該経路長(ΔS)は、好ましくは幅(bm)の1%未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パラメータ、好ましくは接触密度(EgD)、は、準備方法段階で選択または予め決定され、相対的ジャンプ動作のジャンプ幅(ΔS)は、パラメータから、または接触密度(EgD)から決定される、請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
接触密度(EgD)は、歯車ワークピースの創成研削のために決定される量である、または、
接触密度は、トポロジカル創成研削中に超えるべきでない集積最大量である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の歯車ワークピース(10.1)は、第2の歯車ワークピース(10.2)に対する繰り返しステップb)に先行して実行される相対的ジャンプ動作に起因して、第2の歯車ワークピース(10.2)と幾何学的に異なる、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
相対的ジャンプ動作は、工具1回転あたりのシフト経路の一部に対応する経路長によって定義される、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
研削ウォーム(2)を受けるとともに工具回転軸(B)の周りで研削ウォーム(2)を回転駆動させるためのスピンドル(1)と、一連の歯車ワークピース(10.1、10.2)の1つの歯車ワークピースを受けるとともに当該歯車ワークピースを回転駆動させるためのワークピーススピンドル(3)と、ドレッサ(4)を受けるとともにドレッサ(4)を回転駆動させるためのドレッシング装置(112)と、研削ウォーム(2)と一連の歯車ワークピース(10.1、10.2)の1つの歯車ワークピースとの間でトポロジカル創成研削の目的のために相対運動を行うように設計され、かつ研削ウォーム(2)とドレッシングのためのドレッサ(4)との間で相対運動を行うように設計された複数のNC制御軸と、を有する研削機械(100)であって、
研削機械(100)は、研削機械(100)に接続される又は接続可能な制御装置(110)を備え、
制御装置(110)は、一連の歯車ワークピース(10.1、10.2)の第1の歯車ワークピース(10.1)のトポロジカル創成研削の後、かつ一連の歯車ワークピース(10.1、10.2)の第2の歯車ワークピース(10.2)の創成研削に先行して、各歯車ワークピース(10.1、10.2)の創成研削が研削ウォーム(2)のトポロジー修整された領域における異なる領域で実行されるように、ワークピーススピンドル(3)と研削ウォーム(2)との間で、各歯車ワークピース(10.1,10.2)の位置に対する研削フォーム(2)の位置を変化させる相対的ジャンプ動作が実行可能で、かつ当該ジャンプ動作が実質的に工具回転軸(B)に平行または斜めに延びる方向であるように、研削機械(100)に接続される又は接続可能である、研削機械(100)。
【請求項9】
ユーザがパラメータ、好ましくは接触密度(EgD)、を選択または入力することを可能とするユーザ入力手段(30、SM)を備え、相対的ジャンプ動作は、当該パラメータまたは接触密度(EgD)に基づいて実行される、請求項8に記載の研削機械(100)。
【請求項10】
ユーザが相対的ジャンプ動作のジャンプ幅(ΔS)を選択または入力することを可能とするユーザ入力手段(30、SM)を備える、請求項8に記載の研削機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、複数の歯車ワークピースのトポロジカル創成研削のための方法である。特に、マルチドレッシング可能な(multi-dressable)研削ウォームを有するトポロジカル創成研削のための装置および方法に関する。本発明の対象はまた、歯車ワークピースのトポロジカル創成研削のための制御システムを有する研削機械にも関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、例示的な研削機械100の要素を示す。この図において、本質的な要素のみがラベル付けされている。すなわち、研削工具2を有する工具スピンドル1と、ワークピース10を有するワークピーススピンドル3である。加えて、この図はワークピース10の創成研削のために使用可能な軸のいくつかを示す。ここでは3つの直線軸X、YおよびZが含まれる。さらに、研削工具2を回転可能な回転軸Bがある。研削工具2を有する工具スピンドル1は、ワークピース10のねじれ角に即した研削工具2のピッチを得るために、旋回軸Aの周りに旋回可能である。さらに、ワークピース10を回転可能にするために、回転軸C(ワークピース軸とも称される)がある。図1は、研削工具2でワークピース10を創成研削可能にするために、全ての一連の協調的な直線、回転及び旋回運動が必要であることを示している。
【0003】
前述のような研削機械100の経済性に影響する要因の1つは、研削工具2の実用寿命である。研削工具2は、ここでは研削ウォームの形式で示される。工具2が早く摩耗するほど、工具2で加工できるワークピース10は少なくなる。従って、研削ウォーム2を可能な限り経済的に使うための様々な方法がある。
【0004】
とりわけ、様々なシフト方法が使用される。連続的シフト(斜めシフトとも称される場合がある)は、研削ウォーム2をワークピース10に対してシフトするために、研削機械100がZ軸に平行に連続的シフト運動を実行するプロセスである。このシフトの形態によれば、新しい又は十分に切削可能な、研削ウォーム2の砥粒を使用することが保証される。シフトは、歯車ワークピースの幾何学的精度を確保するだけでなく、歯面における熱損傷も大幅に防ぐ。
【0005】
非連続的シフト方法もあり、それは例えば、研削ウォーム2が粗削りのための領域と、仕上げのための領域とで異なる領域に分割されることに基づくシフト方法である。
【0006】
ワークピース10の各々を加工した後に、その都度シフトが行われるシフト方法もある。例えば、次のワークピースを加工するために、研削ウォーム2の別の領域を使用できるようにするシフト方法がある。
【0007】
図5Aにおいて、研削ウォーム2の歯面(ウォーム歯面)6の展開図が、非常に概略化された形式で、拡大表示において示されている。展開図において、理論上の接触線tKlが概略形で示され、当該接触線は、4つのワークピース10.1-10.4の従来の研削から生じる。4つのワークピース10.1-10.4に関する接触線tKlは、長破線、実線、点線、および短破線の一連の曲線によって、概略的に表現されている。これら一連の曲線の各々は、異なるワークピース10.1-10.4に割り当てられる。4つのワークピース10.1-10.4の各々に対するシフトによって、新しいまたは十分に切削可能な、研削ウォーム2の砥粒を有する領域が使用されることがわかる。図5Aに示される接触線tKlは、辺長h0(歯の高さ)とl0*(基準らせん長)を有する長方形上の回転線(rolling lines)である。
【0008】
これは、いわゆるトポロジカル創成研削に関する。歯車ワークピース10のトポロジカル創成研削は、トポロジー修整された(topologically modified)少なくとも1つウォーム領域を備える研削ウォーム2を使用する。トポロジー修整されたウォーム領域を有することで、歯車ワークピース10の歯面は、一定の限度内で修正された歯面形状が与えられる。望ましい歯面の形状は、研削ウォームの歯面表面において歪んだ形で予め決定され、研削ウォーム2と、歯面において修整された歯車ワークピース10との間の、精確に制御されたCNC制御相対運動によって、歯面に対応付けられる。
【0009】
歯車ワークピース10のトポロジカル創成研削中に、歯車ワークピース10上で修整された歯面形状を作り出すため、トポロジー修整されたウォーム領域全体が使用される。修整された歯面形状は、例えば修整された圧力角を有する歯面である。
【0010】
研削工具2は、粗削り領域と仕上げ領域とを備えてよい。トポロジー修整されたウォーム領域が仕上げ領域にある場合、仕上げはトポロジー修整されたウォーム領域で行うことができ、一方で粗削りは従来法で前もって行われる。
【0011】
トポロジー修整されたウォーム領域全体を使用するように実行されるシフトに加えて、創成研削中に、研削ストロークも実行される。研削ストロークは、ワークピース10(例えば図1または図2を参照)を全歯幅b2にわたって研削可能とするために必要である。図1に示されるように、直歯歯車10の研削ストロークは、機械100のX軸に平行な研削ウォーム2の直線運動を備える。
【0012】
さらに、研削ウォーム2の歯が、歯車ワークピース10の歯溝に最終深度まで達することを可能とするように、送り込み運動が行われる。送り込み運動は、図1の例において機械100のY軸に平行に生じる。
【0013】
研削ウォームを有するトポロジカル創成研削をさらに最適化する必要がある。とりわけ、研削ウォームの実用寿命を延ばすことは研究の必須の側面である。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、従来のトポロジカル創成研削プロセスよりも効率的なトポロジカル創成研削のための方法を提供することである。
【0015】
本発明の目的はまた、再現性があり高い研削加工の精度を有し、それでもなお高い効率性を有する、歯車のトポロジカル創成研削による加工のための研削機械に用いる制御システムまたはソフトウェアを開発することである。さらに、効率性の改善に寄与する適切な方法が提供される。
【0016】
特に、本発明の目的は、研削工具の最適化された実用寿命を有し、一連のワークピースの研削加工に関して一貫して高い精度を可能にする、平歯車のトポロジカル創成研削のための研削機械を提供することである。
【0017】
対応する本発明の方法は、請求項1の特徴によって特徴づけられる。
【0018】
本発明の方法は、トポロジー修整された研削ウォームを使用して、少なくとも2つの歯車ワークピースを連続的に創成研削するための方法である。研削ウォームは、歯面を研削するためのトポロジー修整されたウォーム領域を備え、当該歯面は、歯車ワークピースにおいてトポロジー修整される。本発明の方法は、
a)第1の歯車ワークピースを供給するステップと、
b)第1の歯車ワークピースと研削ウォームとの間で相対運動を行うことによって、トポロジカル創成研削操作を実行するステップであって、
相対的送り運動、
工具回転軸に平行または斜めに生じる相対的軸送り、および
相対的シフト運動
を備えるステップと、
c)第2の歯車ワークピースを供給するステップと、
d)第2の歯車ワークピースと研削ウォームとの間で、工具回転軸に対して、実質的に平行または斜めに延びる方向の相対的ジャンプ動作を実行するステップと、
e)第2の歯車ワークピースに対してステップb)を繰り返すステップと、
を少なくとも備える。
【0019】
上述の相対的シフト運動は、例えば、工具1回転あたりのシフト経路のように、既知の方法で決定可能である。
【0020】
少なくともいくつかの実施形態において、第1の歯車ワークピースのトポロジカル創成研削操作が、第2の歯車ワークピースのトポロジカル創成研削操作とは、研削ウォームの異なる接触域で始まるように、相対的ジャンプ動作が実行される。
【0021】
少なくともいくつかの実施形態では、相対的ジャンプ動作は、トポロジー修整されたウォーム領域の伸長部(長さ)に対して小さく、相対的ジャンプ動作及びトポロジカル研削操作の実行によってトポロジー修整されたウォーム領域を離れないように、実行される。特に、相対的ジャンプ動作は、工具1回転あたりに使用されるシフト経路と比べて小さい動きに関係する。工具1回転あたりに使用されるシフト経路は、トポロジカル創成研削による機械加工のために予め決定される。
【0022】
少なくともいくつかの実施形態において、相対的ジャンプ動作は、第1の歯車ワークピースに係るトポロジカル創成研削と、第2の歯車ワークピースに係るトポロジカル創成研削との間に、仕上げ加工の過程でのみ実行される。
【0023】
少なくともいくつかの実施形態において、相対的ジャンプ動作は、ジャンプ距離によって定義される。ジャンプ距離は、接触密度から決定される。接触密度は、一定数のワークピースが1つの同じ研削ウォームで製造されるときに、研削ウォームにかかる負荷の分布を特徴付ける尺度である。
【0024】
少なくともいくつかの実施形態において、相対的ジャンプ動作は、一定なジャンプ幅によって定義される。これは、例えば第2の歯車ワークピースに係るトポロジカル創成研削の前に実行されるジャンプ動作は、例えば第10の歯車ワークピースに係るトポロジカル創成研削の前に実行されるジャンプ動作と、同じジャンプ幅を有することを意味する。
【0025】
さらなる好ましい実施形態は、各従属請求項を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明のさらなる詳細と利点は、図面を参照して、実施形態の例によって、以下に説明される。
図1】研削工具でワークピースを研削するように設計された先行技術の研削機械を示す概略斜視図
図2】基本的な用語が本図に基づいて定義される、直歯を有する例示的な先行技術の平歯車を示す概略側面図
図3】基本的な用語が本図に基づいて定義される、例示的な先行技術の研削ウォームを示す概略側面図
図4】(a)第1の歯車ワークピースに係るトポロジカル創成研削のために実行される、本発明に係る方法のステップを示す非常に概略化された図的表示(b)第2の歯車ワークピースに係るトポロジカル創成研削のために実行される、本発明に係る方法のステップを示す非常に概略化された図的表示
図5A】4つのワークピースに係る従来の創成研削から生じる理論上の接触線が概略形で示された、研削ウォームの歯面を示す非常に概略化された展開図の拡大表示
図5B】4つの歯車ワークピースに係る創成研削中に、各歯車の創成研削において、次の歯車ワークピースに係る研削の前に、本発明によって相対的ジャンプ動作が実行される場合に生じる理論上の接触線が概略形で示された、研削ウォームの歯面を示す非常に概略化された展開図の拡大表示
図6】本発明の実施形態による研削機械を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書では、関連する文献や特許でも使用される用語を使用する。しかしながら、これらの用語は、単に便宜上使用されるものである。発明の概念および特許請求の範囲の保護範囲は、特定の用語の選択による解釈に制限されない。本発明は、他の概念のシステムおよび/または技術分野に容易に適用可能である。使用する用語は、他の専門分野でも同様に用いられる。
【0028】
特定的に修整された歯面(tooth flank)を有する歯車ワークピース10を製造するために、連続的研削工程におけるトポロジカル創成研削が使用可能であることが知られる。トポロジー修整されたウォーム領域5(例えば、図3を参照)を備える研削ウォーム2を使用することで、例えば、歯車ワークピース10における歯面LFとRFのクラウニングを創成することができる(例えば、図2を参照)。適切なクラウニングを提供することで、歯車10が導入されたときの位置誤りに対する感度を低減可能である。加えて、騒音発生に有利な影響がある。
【0029】
トポロジカル創成研削は、主に、異常(インタリービングとも称される)を低減または完全に防ぐために用いられる。異常は、研削ウォーム2で研削中に、接触線の位置が連続的に変化するために発生する。異常の低減または完全な防止は、研削ウォーム2の適切に修整されたウォーム領域5を精確に制御された方法で使用することにより、達成される。これには、研削機械100(例えば、図6を参照)の高精度な機械基板と、高い繰り返し精度で、歯車ワークピース10に対して研削ウォーム2を配置し動かす最適化された駆動装置とを要する。
【0030】
本明細書で説明される方法に関して用いられる研削ウォーム2は、図3に示すように、少なくとも1つのトポロジー修整されたウォーム領域5を有する。このトポロジー修整されたウォーム領域は、例えば、ウォーム領域5の幅bmに対して異なるプロファイル角(profile angle)を有してよい。図3に示された例では、トポロジー修整されたウォーム領域5は、ねじ幅b0のおよそ半分にわたっている。研削ウォーム2の直径は、d0で示される。この直径d0は、研削ウォーム2の材料がドレッシング中に除去されることに伴い、時間とともに減少する。
【0031】
トポロジー修整されたウォーム領域5は、例えば、ピッチ高さの変化によって、クラウニングの態様で(in a crowned manner)修整される。このような修整は、研削ウォーム2における可能な修整の単に一例である。しかしながら、対応する研削ウォーム2の修整は、可視困難なほど微小な場合が多い。図3において、トポロジー修整されたウォーム領域5は、よく視認できるようにするため、灰色で強調されている。
【0032】
図2は、例示的な直歯平歯車10の概略側面図を示す。しかしながら、本発明は、斜歯歯車ワークピース10にも適用可能である。図2の歯車ワークピース10上で、歯溝が特に強調されている。歯溝は、左側で歯面LFによって、右側で歯面RFによって境界付けられている。歯基部ZGは、灰色で示されている。歯幅は、参照符号b2で示されている。
【0033】
本発明に係る方法の少なくともいくつかの実施形態は、少なくとも2つの歯車ワークピース10.1,10.2の連続的な創成研削のための方法を含む。対応する方法の詳細は、非常に概略化された形式で、図4(a)と図4(b)に示されている。図3の例に示されるように、トポロジー修整されたウォーム領域5を少なくとも1つ備えるトポロジー修整された研削ウォーム2が使用される。連続的な創成研削工程は、トポロジー修整された歯面LF、RFが歯車ワークピース10.1,10.2において研削されるように実行される。図4(a)と図4(b)において、工具(回転)軸Bは、Z軸(シフト軸)と一致する。
【0034】
本発明の方法は、少なくとも次のステップを備える。文字a)、b)、A.などの使用は、必ずしもステップの時系列を意味しない。
a)第1の歯車ワークピース10.1を準備するステップ。例えば、第1の歯車ワークピース10.1は、部品ストアから取り出され、研削機械100の第1ワークピーススピンドル3に固定される。
b)第1の歯車ワークピース10.1と、研削機械100の工具スピンドル1に固定された研削ウォーム2との間で、相対運動を行うことにより、トポロジカル創成研削を実行するステップ。このトポロジカル創成研削操作は、少なくとも次のステップを備える。
A.研削ウォーム2を歯車ワークピース10.1に係合させる相対的送り運動Sz1のステップ。研削ウォーム2の歯を第1の歯車ワークピース10.1の歯溝に綺麗に挿入するため、送り中または送り前に、センタリングSe1が実行される。図4(a)において、センタリングSe1は両矢印で概略的に表現され、ここでは送り運動Sz1の方向に横に動く。
B.工具回転軸Bに平行または斜めな相対的軸送りSa1のステップ。図4(a)の例において、軸送りSa1は工具回転軸Bに平行に行われ、工具回転軸Bは、この例ではZ軸に一致する。
C.シフトとねじりを含む相対的シフト運動のステップ(ねじりは図4(a)に図示せず)。
【0035】
第1の歯車ワークピース10.1における創成研削操作の終わりに、歯車ワークピース10.1と研削ウォーム2との係合を解消するように、典型的に引き込み運動Sr1が実行される。
【0036】
第1の歯車ワークピース10.1が仕上げられた後、一連の歯車ワークピースの別の歯車ワークピース(例えば第2の歯車ワークピース10.2)が供給される。第2の歯車ワークピース10.2の加工が図4(b)に示される。このトポロジカル創成研削操作は、少なくとも次のステップを備える。
c)第2の歯車ワークピース10.2を準備するステップ。例えば、第2の歯車ワークピース10.2は、部品ストアから取り出され、研削機械100の第1ワークピーススピンドル3に固定される。
d)実質的に平行または斜めに伸びる方向の相対的ジャンプ動作のステップ。当該ジャンプ動作は、研削機械100の少なくとも1つの軸を動かすことによって、第2の歯車ワークピース10.2と研削ウォーム2との間で行われる。相対的ジャンプ運動を行う目的は、以下で詳述される。図4(a)と図4(b)との間の領域において、相対的ジャンプ動作は、ジャンプ幅ΔSによって表される。ジャンプ幅ΔSは、視認性を高めるために誇張して大きく図示されている。
e)第2の歯車ワークピース10.2がトポロジカル創成研削操作を受けるために、ステップb)を第2の歯車ワークピース10.2のために繰り返すステップ。このトポロジカル創成研削操作は、少なくとも次のステップを備える。
A.研削ウォーム2を歯車ワークピース10.2に係合させる相対的送り運動Sz2のステップ。研削ウォーム2の歯を第2の歯車ワークピース10.2の歯溝に綺麗に挿入するため、送りの範囲内または送りの前に、センタリングSe2が実行される。図4(b)おいて、センタリングSe2は両矢印で概略的に表現され、ここでは送り運動Sz2の方向に横に動く。
B.工具回転軸Bに平行または斜めに生じる相対的軸送りSa2のステップ。図4(b)の例において、軸送りSa2は、工具回転軸Bに平行に延びる方向に行われる。
C.シフトとねじりを含む相対的シフト運動のステップ(ねじりは図4(b)に図示せず)。
【0037】
第2の歯車ワークピース10.2における創成研削操作の終わりに、歯車ワークピース10.2と研削ウォーム2との係合を解消するように、典型的に引き込み運動Sr2が実行される。
【0038】
第2の歯車ワークピース10.2の研削が終了した後、一連の歯車ワークピースの別の歯車ワークピース(例えば歯車ワークピース10.3,10.4)が供給され、加工される。しかしながら、加工工程は、ここで終了されてもよい。
【0039】
相対的ジャンプ動作を実行せずに、第1の歯車ワークピース10.1のトポロジカル創成研削は、研削ウォーム2における第2の歯車ワークピース10.2および他の歯車ワークピースの創成研削操作と同じ点から始まる場合がある。ここでは、図5Bを簡単に参照する。相対的ジャンプ動作を実行しない場合、一連の歯車ワークピースの全ての歯車ワークピースのトポロジカル創成研削は、同一の理論上の接触線tKlに沿って(例えば、図5Bにおいて実線の曲線で示される接触線に沿って)実行される。
【0040】
全ての実施形態において、相対的ジャンプ動作は、次の歯車ワークピースのトポロジカル創成研削の前(例えば、第2の歯車ワークピース10.2の創成研削の前)に実行される。相対的ジャンプ動作は、例えば(図4(a)と図4(b)の間、または図5Bの領域に概略的に示されるように)ジャンプ幅ΔSで定義される。このジャンプ動作は、常に研削ウォーム2のトポロジー修整されたウォーム領域5において生じる。すなわち、そのようなジャンプ動作は、トポロジー修整されたウォーム領域5が次の歯車ワークピースを研削するために使用される場合にのみ実行されることが好ましく、相対的ジャンプ動作は、トポロジカル研削が、修整されたウォーム領域5を出ないように実行される。
【0041】
相対的ジャンプ動作を特定および実行することで、次の歯車ワークピースの創成研削操作は、研削ウォーム2のトポロジー修整されたウォーム領域5において、異なる領域で始まり、図5Bに示されるように、異なる理論上の接触線tKlをたどることが保証される。しかしながら、それはトポロジー修整されたウォーム領域5を備える研削ウォーム2であるので、相対的ジャンプ動作に起因して、第1の歯車ワークピース10.1は、第2の歯車ワークピース10.2と幾何学的に最小限に異なる。しかし、これらの違いは極僅かであるため、研削された歯車ワークピース10.1,10.2,10.3,10.4のそれぞれの動作挙動に影響を及ぼさない。
【0042】
少なくともいくつかの実施形態において、相対的ジャンプ動作は、接触密度EgDによって定義される。接触密度EgDは、工具特有のパラメータであってよい。すなわち、異なる寸法および/または異なる設計の(例えば、異なるコーティングを施された研削ウォーム)研削ウォーム2に対して、接触密度EgDもまた異なってよい。
【0043】
少なくともいくつかの実施形態において、接触密度EgDは、上限値の尺度とされる。当該上限値は、歯車ワークピースの創成研削のための最小有効半径d0を有する研削ウォーム2の使用において、成功が示されている。2018年4月17日にKlingelnberg GmbHを代理して出願された欧州特許出願公開第102018109067.6号明細書を参照されたい。本明細書と特許請求の範囲に記載されるように、相対的ジャンプ動作によれば、研削ウォーム2のトポロジー修整されたウォーム領域5を使用するとき、当該上限よりも大きい集積された(accumulated)接触密度がないように、研削ウォーム2の歯面を使用することが保証可能である。しかしながら、そのような上限値は、他の方法で(例えば実験的に)決定されてもよい。
【0044】
接触密度EgDは、前述の欧州特許出願公開第102018109067.6号明細書に記載されているように、らせん線路または歯の長手方向に沿って考えられ、研削ウォーム2の工具1回転あたりのねじ経路(図5Aにおいて、この工具1回転あたりのねじ経路は、ΔCで示されている)に対する逆数として定義される。すなわち、接触密度EgDは、ねじ移動量(screw travel)あたりの干渉回数を定義することを意味している。
【0045】
欧州特許出願公開第102018109067.6号明細書に記載されているように、最大研削ウォーム直径に対する接触密度EgDは、研削ウォーム2の複数回のドレッシング後に達する最小研削ウォーム直径に対する接触密度EgDよりも著しく低い。
【0046】
少なくともいくつかの実施形態において、相対的ジャンプ動作のジャンプ幅ΔSは、準備方法段階(a preparatory method step)において、例えばソフトウェアまたはソフトウェアモジュールSMを使用して計算される。これらの実施形態において、ステップ幅ΔSは、複数の歯車ワークピース10.1,10.2,10.3および10.4のトポロジカル研削における回転線(あるいは図5Bにおける理論上の接触線tKl)の相対的な位置を定義する。
【0047】
少なくともいくつかの実施形態において、相対的ジャンプ動作は、当該ジャンプ動作が、シフト動作やトポロジー修整されたウォーム領域から出る動作を含む次のトポロジカル創成研削操作を引き起こさないように、選択される。
【0048】
好ましくは少なくとも一部の実施形態において、経路長は、工具1回転あたりのシフト経路のごく一部に対応する。好ましくは、少なくとも一部の実施形態において、経路長は修整されたウォーム領域5の幅の1%未満である。
【0049】
ジャンプ動作を工具回転軸Bに平行な経路長によって定義する代わりに、別の変数によって(例えば、研削ウォーム2のらせん状の歯すじに平行な経路によって)定義することもできる。
【0050】
少なくともいくつかの実施形態において、工具回転軸Bに平行である相対的ジャンプ動作は、トポロジー修整されたウォーム領域5の範囲内でのみ次のトポロジカル創成研削操作が行われるように定義され、および/または実行される。この目的のために、例えば、トポロジー修整されたウォーム領域5の限界は、研削機械100の制御装置110および/またはソフトウェアもしくはソフトウェアモジュールSMにおいて、相対値または絶対値によって定義可能である。
【0051】
研削機械100は、少なくともいくつかの実施形態において、図6の例に示されるように使用される。研削機械100は、工具スピンドル1を備え、工具スピンドル1は、研削ウォーム2をピックアップして、研削ウォーム2を工具回転軸Bの周りに回転駆動するように設計される。研削機械100は、ワークピーススピンドル3も含み、ワークピーススピンドル3は、一連の歯車ワークピース10.1,10.2から歯車ワークピース10をピックアップして、歯車ワークピース10を回転駆動するように設計される。
【0052】
研削機械100は、ドレッシング装置112を含んでもよい。ドレッシング装置112は、ドレッサ4をピックアップして、ドレッサ4を回転駆動するように設計される。さらに、研削機械100は、研削ウォーム2と歯車ワークピース10との間における相対運動を実行するためのいくつかのNC制御軸を有する。当該相対運動は、歯車ワークピース10のトポロジカル創成研削およびドレッシングのために必要である。加えて、研削機械100は、制御装置110を備える。制御装置110は、一連の歯車ワークピースにおける第1の歯車ワークピース10.1の創成研削後、一連の歯車ワークピースにおける第2の歯車ワークピース10.2の創成研削前に、相対的ジャンプ動作が実行可能なように、研削機械100に(例えば内部または外部通信リンク111を通して)接続できる。既に説明されたように、このジャンプ動作は、ワークピーススピンドル3と工具スピンドル1との間、またはワークピース10.2と研削ウォーム2との間の小さな相対運動である。ジャンプ動作は、原則的に、工具回転軸Bに平行または斜めに延びる方向に行われる。
【0053】
研削機械100は、少なくともいくつかの実施形態において、ユーザ入力のために、手段30(例えば、ポータブル装置)および/またはソフトウェアモジュールSMを含んでもよい。それらは、ユーザがパラメータを、好ましくは接触密度EgDを、選択または入力することを可能にする。相対的ジャンプ動作は、相対的な動作が当該パラメータに基づいて、好ましくは接触密度EgDに基づいて、実行される。
【0054】
研削機械100は、少なくともいくつかの実施形態において、ユーザ入力のために、手段30(例えば、ポータブル装置)および/またはソフトウェアモジュールSMを含んでもよい。それらは、ユーザが相対的ジャンプ動作のジャンプ幅ΔSを選択または入力することを可能にする。
【0055】
図4(a)と図4(b)は、相対的ジャンプ動作が、歯車ワークピースの位置に対する研削ウォーム2の位置を変化させることを示す。加えて、当該相対位置は、第1の歯車ワークピース10.1の固定と、第2の歯車ワークピース10.2の固定とに起因して、変化している場合がある。このため、好ましくは、歯車ワークピース10.1および10.2の創成研削前に、センタリングSe1またはSe2が実行される。
【0056】
図5Aは、冒頭で既に説明したように、研削ウォーム2の歯面6の非常に概略化された展開図を拡大された形式で示す。ここでは、理論上の接触線tKlが概略形で示され、当該接触線tKlは、ワークピース10.1,10.2,10.3および10.4の従来の創成研削から生じる。
【0057】
一方、図5Bは、本発明の詳細を示す。図5Bは、トポロジカル研削ウォーム2の非常に概略化された展開図を拡大された形式で示している。ここでは、理論上の接触線tKl1,tKl2,tKl3,tKl4が概略形で示される。接触線tKlは、歯車ワークピース10.1,10.2,10.3および10.4の創成研削中に、本発明による相対的ジャンプ動作が、各場合において各々次の歯車ワークピースの研削前に実行されるときに生じる。工具1回転あたりのねじ移動量は、図5BにΔDで示される。工具1回転あたりのねじ移動量ΔDは、図5Aに示された従来の創成研削のための工具1回転あたりのねじ移動量ΔCより、著しく大きい。
【0058】
図5A図5Bに関して最後に、離散的に示された接触線は、理論上の線であることが言及されるべきである。現実には力の相互作用により、接触域は実際には重複する。
【符号の説明】
【0059】
1 工具スピンドル
2 研削工具/研削ウォーム
3 第1ワークピーススピンドル
4 ドレッサ
5 ウォーム領域
6 歯面/ウォーム歯面
10;10.1,10.2,10.3,10.4 歯車ワークピース
30 操作要素
31 通信リンク
100 研削機械
110 制御装置
111 通信リンク
112 ドレッシング装置
A 旋回軸
C ワークピース軸
B 工具(回転)軸
b0 ウォーム幅
bm 修整された領域の幅
b2 歯幅
ΔC 工具1回転あたりのねじ移動量
ΔD 工具1回転あたりのねじ移動量
h0 歯の高さ
ΔS ジャンプ距離
EgD 接触密度
LF 左歯面
l0* 基準ねじ(線)長
RF 右歯面
SM ソフトウェア/ソフトウェアモジュール
tKl 接触線
X 垂直軸
Y 水平直線軸
Z 水平直線軸/ストローク軸
Sa1、Sa2 軸送り/軸送り運動
Se1、Se2 センタリング
Sr1、Sr2 引き込み運動
Sz1、Sz2 送り運動
ZG 歯基部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6