(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】縫製システムおよび縫製方法
(51)【国際特許分類】
D05B 33/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
D05B33/00
(21)【出願番号】P 2019151761
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】射越 悠
(72)【発明者】
【氏名】井村 智
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-197491(JP,A)
【文献】特開2002-126384(JP,A)
【文献】特開平05-192462(JP,A)
【文献】特開平04-026448(JP,A)
【文献】特開2018-187162(JP,A)
【文献】特開2004-209127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 33/00
D05B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製方向が互いに平行になるように縫製方向に向かって左右対称に配置された一対のミシンと、
縫製対象物を前記縫製方向上流側で把持する把持装置と、
前記縫製対象物の供給位置で前記縫製対象物を把持した前記把持装置を、前記縫製対象物を縫製する縫製位置へ向けて搬送する搬送装置と、
制御装置と、
前記縫製対象物の一対の縫製ラインの間に設けられ、縫製対象物を支持する高さを調整する高さ調整部材と、
前記高さ調整部材を昇降させる昇降装置と、を備え、
前記把持装置は、前記縫製対象物を前記縫製方向上流側において両側端側から把持する一対の把持部を有し、
前記制御装置は、内側に凹の形状を有する前記縫製対象物の一対の縫製線のうち最も内側の最内位置が前記縫製位置を通過するときに、一対の前記把持部を移動させる方向を前記縫製対象物の搬送路の幅方向の外側から内側へ切り替えるとともに、前記縫製対象物の縫製中の送り速度に対する前記把持装置の相対搬送速度を低下させるように制御する搬送制御部を有する、
縫製システム。
【請求項2】
前記搬送制御部は、前記縫製対象物の前記最内位置が前記縫製位置を通過するまで、一対の前記縫製線に応じて一対の前記把持部を前記縫製対象物の搬送路の幅方向の外側へ移動させるとともに、前記相対搬送速度を一定に保持するように制御し、
前記縫製対象物の前記最内位置が前記縫製位置を通過した後、一対の前記縫製線に応じて一対の前記把持部を前記縫製対象物の搬送路の幅方向の内側へ移動させるとともに、徐々に前記相対搬送速度を上昇させて、最初に一定に保持した前記相対搬送速度まで戻すように制御する、
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記縫製対象物に向けて、かつ、前記縫製対象物の搬送路の幅方向の内側から前記縫製線のある方向である前記縫製対象物の搬送路の幅方向の外側に向けて送気する送気装置をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記縫製対象物の端部をガイドし、前記送気装置からの送気を通過させるガイド部材をさらに備える、
請求項3に記載の縫製システム。
【請求項5】
縫製対象物の一対の縫製ラインの間に設けられ、縫製対象物を支持する高さを調整する高さ調整部材で、高さを調整し、内側に凹の形状を有する縫製対象物の一対の縫製線のうち最も内側の最内位置が縫製位置を通過するまで、一対の前記縫製線に応じて、縫製対象物を縫製方向上流側で把持する把持装置を構成する一対の把持部を、前記縫製対象物の搬送路の幅方向の外側へ移動させるとともに、前記縫製対象物の縫製中の送り速度に対する前記把持装置の相対搬送速度を一定に保持して縫製する第1縫製ステップと、
前記縫製対象物の前記最内位置が前記縫製位置を通過するときに、一対の前記把持部を移動させる方向を前記縫製対象物の搬送路の幅方向の外側から内側へ切り替えるとともに、前記相対搬送速度を一気に低下させる相対搬送速度低下ステップと、
前記縫製対象物の前記最内位置が前記縫製位置を通過した後、一対の前記縫製線に応じて一対の前記把持部を前記縫製対象物の搬送路の幅方向の内側へ移動させるとともに、徐々に前記相対搬送速度を上昇させて、最初に一定に保持した前記相対搬送速度まで戻しながら縫製する第2縫製ステップと、を有する、
縫製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縫製システムおよび縫製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製方向に向かって左右対称的に配置された2台のミシンの縫製方向下流側及び縫製方向上流側のそれぞれで縫製対象物を把持して、縫製対象物の脇縫いを行う技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、縫製対象物の脇縫いに係る縫製線の内側に凹の形状に応じて、縫製方向下流側で縫製対象物を把持する部材を幅方向の外側から内側へ移動させる際、縫製対象物にしわやたるみ等が発生してしまう可能性がある。その結果、縫製対象物が、縫製方向下流側で縫製対象物を把持する部材に追従しなくなり、縫製対象物を制御できないという問題があった。
【0005】
本発明の態様は、縫製対象物の脇縫いに係る縫製線の内側に凹の形状に応じて、縫製対象物を縫製方向下流側で縫製対象物を把持する部材に追従させることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
縫製方向が互いに平行になるように縫製方向に向かって左右対称に配置された一対のミシンと、縫製対象物を縫製方向上流側で把持する把持装置と、前記縫製対象物の供給位置で前記縫製対象物を把持した前記把持装置を、前記縫製対象物を縫製する縫製位置へ向けて搬送する搬送装置と、制御装置と、を備え、前記把持装置は、前記縫製対象物を前記縫製方向上流側において両側端側から把持する一対の把持部を有し、前記制御装置は、内側に凹の形状を有する前記縫製対象物の一対の縫製線のうち最も内側の最内位置が前記縫製位置を通過するときに、一対の前記把持部を移動させる方向を幅方向の外側から内側へ切り替えるとともに、前記縫製対象物の縫製中の送り速度に対する前記把持装置の相対搬送速度を低下させるように制御する搬送制御部を有する、縫製システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、縫製対象物の脇縫いに係る縫製線の内側に凹の形状に応じて、縫製対象物を縫製方向下流側で縫製対象物を把持する部材に追従させることを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る縫製システムの一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る縫製システムの一部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る縫製システムを備え付けるフレームを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第1搬送装置、第2把持装置及び第2搬送装置の詳細を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第1把持装置の詳細を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第1把持装置の動作を示す側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る第1把持装置の動作を示す側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るガイド部材の詳細を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る高さ調整装置の一例を示す側面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る高さ調整装置の一例を示す側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る縫製システムの制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面のX軸と平行な方向をX軸方向とし、所定面においてX軸と直交するY軸と平行な方向をY軸方向とし、所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。また、以下の説明においては、所定面を適宜、XY平面、と称する。本実施形態においては、XY平面と水平面とが平行であることとする。
【0011】
[実施形態]
<縫製システム>
図1は、本実施形態に係る縫製システム1の一例を模式的に示す平面図である。
図1は、縫製システム1を上方から見た図、すなわち+Z方向から-Z方向に見た図である。縫製システム1は、縫製対象物Sを縫合して、縫製品SP(
図19及び
図20参照)を製造する。本実施形態において、縫製品SP(
図19及び
図20参照)は衣料である。縫製対象物Sは、布、織物、不織布、及び皮の少なくとも一つを含む概念である。なお、
図1では、後述する高さ調整装置14(
図9参照)または高さ調整装置140(
図10参照)の図示を省略している。
【0012】
図1に示すように、縫製システム1は、フレームFに備え付けられており、縫製対象物Sを縫製方向SDに縫製するミシン2と、縫製対象物Sを下方から支持する支持板4と、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側へ先引きする先引き装置5と、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側から把持する第1把持装置6と、第1把持装置6を縫製方向SDに搬送する第1搬送装置7と、縫製対象物Sを縫製方向SDの上流側から把持する第2把持装置8と、第2把持装置8を縫製方向SDに搬送する第2搬送装置9と、制御装置10と、を備える。本実施形態では、
図1に示すように、縫製方向SDは、Y軸方向の+Y方向となるように示されている。また、縫製方向SDに延びた縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWは、X軸方向となるように示されている。
【0013】
縫製システム1は、本実施形態では、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの中央を通り、縫製方向SD及び鉛直方向であるZ軸方向を含む中央鉛直面に対して鏡面対称の構造を有している。以下において、中央鉛直面に対して縫製方向SDに向かって右側の部位を指し示す符号について、適宜数字の後に文字Aを付して説明し、中央鉛直面に対して縫製方向SDに向かって左側の部位を指し示す符号について、適宜数字の後に文字Bを付して説明する。また、以下において、中央鉛直面に対して右側の部位を基準としてさらに縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの右側と、中央鉛直面に対して左側の部位を基準としてさらに縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの左側とを、適宜合わせて、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側、または、単に外側、と称する。また、以下において、中央鉛直面に対して右側の部位を基準として縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの左側と、中央鉛直面に対して左側の部位を基準として縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの右側とを、適宜合わせて、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側、または、単に内側、と称する。
【0014】
ミシン2は、縫製方向が互いに平行になるように縫製方向SDに向かって鏡面対称に配置された一対のミシン2Aとミシン2Bと、を有し、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの両端の縫製対象物Sの内側に形成される一対の縫製線SCに沿って、一対の縫製位置3で、縫製対象物Sを脇縫いする。ミシン2Aは、縫製方向SDに向かって右側に設けられており、縫製方向SDに向かって右側にある縫製線SCAに沿って右側の縫製位置3Aで、縫製対象物Sを脇縫いする。ミシン2Bは、縫製方向SDに向かって左側に設けられており、縫製方向SDに向かって左側にある縫製線SCBに沿って右側の縫製位置3Bで、縫製対象物Sを脇縫いする。
【0015】
縫製対象物Sの搬送路において、一対の縫製位置3からそれぞれ縫製方向SDと平行に伸ばした直線状に、一対のミシン2が縫製対象物Sを縫製する一対の縫製ライン3Lが形成される。すなわち、縫製対象物Sの搬送路において、縫製位置3Aから縫製方向SDと平行に伸ばした直線状に、ミシン2Aが縫製対象物Sを縫製する縫製ライン3LAが形成される。また、縫製対象物Sの搬送路において、縫製位置3Bから縫製方向SDと平行に伸ばした直線状に、ミシン2Bが縫製対象物Sを縫製する縫製ライン3LBが形成される。
【0016】
支持板4は、縫製方向SDに向かって鏡面対称に配置された一対の支持板4Aと支持板4Bと、を有する。支持板4Aは、縫製方向SDに向かって右側のミシン2Aの下方に、縫製ライン3LAに沿って所定の幅をもって設けられており、ミシン2Aの下方において縫製対象物Sにおける縫製方向SDに向かって右側を支持する。支持板4Bは、縫製方向SDに向かって左側のミシン2Bの下方に、縫製ライン3LBに沿って所定の幅をもって設けられており、ミシン2Bの下方において縫製対象物Sにおける縫製方向SDに向かって左側を支持する。支持板4Aと支持板4Bとの間には、鉛直方向下方に貫通した貫通孔4Cが形成されている。
【0017】
先引き装置5は、縫製方向SDの下流側から縫製対象物Sを所定の先引き圧で把持するとともに、所定の先引き量で先引きする。先引き装置5は、縫製対象物Sを鉛直方向の下方から所定の先引き圧で押さえるとともに、所定の先引き量で先引きする下方先引き装置51と、縫製対象物Sを鉛直方向の上方から所定の先引き圧で押さえるとともに、所定の先引き量で先引きする上方先引き装置52と、を有する。
【0018】
下方先引き装置51は、貫通孔4Cにおいて、縫製対象物Sの搬送路における一対の縫製位置3の付近から縫製方向SDの下流側までの領域に設置され、縫製位置3Aと縫製位置3Bとの間の、縫製位置3A,3Bから縫製方向SDの下流側において、下方から縫製対象物Sを送り処理する。下方先引き装置51は、具体的には、先送りローラまたは無端の先送りベルトと、先送りローラまたは無端の先送りベルトを、縫製対象物Sを送り処理する方向に駆動する図示しない駆動装置と、を有して構成される。
【0019】
上方先引き装置52は、下方先引き装置51の上方に鉛直方向に対向して設けられ、縫製位置3Aと縫製位置3Bとの間の、縫製位置3A,3Bの付近から縫製方向SDの下流側において、上方から縫製対象物Sを送り処理する。上方先引き装置52は、具体的には、下方先引き装置51と同様の構成を採用することができる。
【0020】
先引き装置5は、本実施形態では、縫製位置3Aと縫製位置3Bとの間付近から、一対の縫製位置3よりも縫製方向SDの下流側にかけて、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側に向けて送り処理しているが、本発明はこれに限定されることなく、一対の縫製位置3よりも縫製方向SDの下流側でのみ縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側に向けて送り処理する形態であってもよい。
【0021】
第1把持装置6は、縫製対象物Sを解放可能に把持する。第1把持装置6は、縫製システム1における縫製方向SDの上流側の作業者Oと対向する位置である縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持する。第1把持装置6は、一対の縫製位置3よりも縫製方向SDの下流側の位置で、縫製中に縫製対象物Sを解放する。
【0022】
第1把持装置6は、縫製方向SDに向かって鏡面対称に配置され、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側から把持する一対の第1把持部6Aと第1把持部6Bと、を有する。一対の第1把持部6Aと第1把持部6Bとは、いずれも、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持し、一対の縫製位置3よりも縫製方向SDの下流側の位置で、縫製中に縫製対象物Sを解放する。
【0023】
一対の第1把持部6Aと第1把持部6Bとは、縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に配列して設けられている。第1把持部6Aは、第1把持部6Bに対して縫製方向SDに向かって右側に設けられており、右側の縫製ライン3LAよりも内側(左側)の所定の位置を、縫製方向SDの下流側から把持する。第1把持部6Bは、第1把持部6Aに対して縫製方向SDに向かって左側に設けられており、左側の縫製ライン3LAよりも内側(右側)の所定の位置を、縫製方向SDの下流側から把持する。
【0024】
第1搬送装置7は、第1把持装置6を、縫製方向SDに沿って移動させる。第1搬送装置7は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を、縫製対象物Sを縫製する一対の縫製位置3へ向けて搬送し、一対の縫製位置3よりも縫製方向SDの下流側の位置で縫製中に縫製対象物Sを解放した第1把持装置6を、縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。
【0025】
第1搬送装置7は、第1把持部6Aを、支持板4Aの内側、すなわち支持板4Aの縫製方向SDに向かって左側と、先引き装置5の外側の縫製方向SDに向かって右側との間における貫通孔4Cの上方または下方の領域において、縫製方向SDに沿って移動させる。第1搬送装置7は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第1把持部6Aを、貫通孔4Cの上方を通って、右側の縫製ライン3LAの内側(左側)に沿って縫製位置3Aへ向けて搬送する。第1搬送装置7は、縫製位置3Aよりも縫製方向SDの下流側の位置で縫製中に縫製対象物Sを解放した第1把持部6Aを、貫通孔4Cの下方を通って、縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。
【0026】
第1搬送装置7は、第1把持部6Bを、支持板4Bの内側、すなわち支持板4Bの縫製方向SDに向かって右側と、先引き装置5の外側の縫製方向SDに向かって左側との間における貫通孔4Cの上方または下方の領域において、縫製方向SDに沿って移動させる。第1搬送装置7は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第1把持部6Bを、貫通孔4Cの上方を通って、左側の縫製ライン3LBの内側(右側)に沿って縫製位置3Bへ向けて搬送する。第1搬送装置7は、縫製位置3Bよりも縫製方向SDの下流側の位置で縫製中に縫製対象物Sを解放した第1把持部6Bを、貫通孔4Cの下方を通って、縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。
【0027】
第1搬送装置7は、第1把持部6A及び第1把持部6Bを、互いの相対的な位置関係を維持しながら、縫製方向SDに沿って同期して移動させる。
【0028】
第2把持装置8は、第1把持装置6よりも縫製方向SDの上流側で縫製対象物Sを解放可能に把持する。第2把持装置8は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持する。第2把持装置8は、一対の縫製位置3付近の位置で、縫製を終了した後に、縫製対象物Sを解放する。なお、本実施形態に係る第2把持装置8は、本発明に係る把持装置に対応している。
【0029】
第2把持装置8は、互いに鏡面対称に配置され、縫製対象物Sを縫製方向SDの上流側において両側端側から把持する一対の第2把持部8Aと第2把持部8Bと、を有する。一対の第2把持部8Aと第2把持部8Bとは、いずれも、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持し、一対の縫製位置3付近の位置で、縫製を終了した後に、縫製対象物Sを解放する。なお、本実施形態に係る一対の第2把持部8A及び第2把持部8Bは、本発明に係る一対の把持部に対応している。
【0030】
一対の第2把持部8Aと第2把持部8Bとは、縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に配列して設けられている。第2把持部8Aは、第2把持部8Bに対して縫製方向SDに向かって右側に設けられており、縫製対象物Sの縫製方向SDの上流側において、縫製対象物Sの右側の側端部を側端側から把持する。第2把持部8Bは、第2把持部8Aに対して縫製方向SDに向かって左側に設けられており、縫製対象物Sの縫製方向SDの上流側において、縫製対象物Sの左側の側端部を側端側から把持する。
【0031】
第2搬送装置9は、第2把持装置8を、縫製方向SDに沿って移動させる。第2搬送装置9は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第2把持装置8を、縫製対象物Sを縫製する一対の縫製位置3へ向けて搬送し、一対の縫製位置3付近の位置で縫製を終了した後に縫製対象物Sを解放した第2把持装置8を、縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。なお、本実施形態に係る第2搬送装置9は、本発明に係る搬送装置に対応している。
【0032】
第2搬送装置9は、第2把持部8Aを、支持板4Aの上方の領域において、縫製方向SDに沿って移動させる。第2搬送装置9は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第2把持部8Aを、支持板4Aの上方を通って、右側の縫製ライン3LAに沿って縫製位置3Aへ向けて搬送する。第2搬送装置9は、縫製位置3A付近の位置で、例えば、縫製位置3Aの縫製方向SDの上流側すぐ手前の位置で、縫製を終了した後に縫製対象物Sを解放した第2把持部8Aを、支持板4Aの上方を通って、右側の縫製ライン3LAに沿って縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。
【0033】
第2搬送装置9は、第2把持部8Bを、支持板4Bの上方の領域において、縫製方向SDに沿って移動させる。第2搬送装置9は、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第2把持部8Bを、支持板4Bの上方を通って、左側の縫製ライン3LBに沿って縫製位置3Bへ向けて搬送する。第2搬送装置9は、縫製位置3B付近の位置で、例えば、縫製位置3Bの縫製方向SDの上流側すぐ手前の位置で、縫製を終了した後に縫製対象物Sを解放した第2把持部8Bを、支持板4Bの上方を通って、左側の縫製ライン3LBに沿って縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。
【0034】
第2搬送装置9は、第2把持部8A及び第2把持部8Bを、互いの相対的な位置関係を維持しながら、縫製方向SDに沿って同期して移動させる。
【0035】
図1に示すように、縫製システム1は、送気装置11と、送気装置12と、ガイド部材13と、をさらに備える。
【0036】
送気装置11は、第1把持装置6に設置されている。送気装置11は、第1把持装置6に把持されている縫製対象物Sに向けて、かつ、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側から縫製線SCのある方向である縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側に向けて送気することで、縫製対象物Sの縫製線SCの付近において生じる可能性のあるカールを除去する。
【0037】
送気装置11は、互いに鏡面対称に配置された一対の送気装置11Aと送気装置11Bと、を有する。送気装置11Aは、第1把持部6Aの上方及び下方の2箇所に設置されており、第1把持部6Aの上方から縫製対象物Sに向けて、縫製対象物Sを縫製する縫製線SCAのある方向である縫製方向SDに向かって右側に送気することで、縫製対象物Sの縫製ライン3LAにおいて生じる可能性のあるカールを除去する。送気装置11Bは、第1把持部6Bの上方及び下方の2箇所に設置されており、第1把持部6Bの上方から縫製対象物Sに向けて、縫製対象物Sを縫製する縫製線SCBのある方向である縫製方向SDに向かって左側に送気することで、縫製対象物Sの縫製ライン3LBにおいて生じる可能性のあるカールを除去する。
【0038】
送気装置12は、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの中央領域における上方に、縫製方向SDの下流側及び縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側に向けて、設置されている。送気装置12は、例えば、ミシン2の下面における縫製位置3または縫製位置3より縫製方向SDの上流側すぐ手前に、設置されている。送気装置12は、縫製位置3または縫製位置3より縫製方向SDの上流側すぐ手前の位置においてミシン2の縫製位置3に向かって搬送されている縫製対象物Sに向けて、かつ、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側から縫製線SCのある方向である縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側に向けて送気することで、縫製対象物Sの縫製線SCにおいて生じる可能性のあるカールを除去する。
【0039】
送気装置12は、互いに鏡面対称に配置された一対の送気装置12Aと送気装置12Bと、を有する。送気装置12Aは、ミシン2Aの下面における縫製位置3Aまたは縫製位置3Aより縫製方向SDの上流側すぐ手前に設置されており、縫製対象物Sに向けて縫製対象物Sを縫製する縫製線SCAのある方向である縫製方向SDに向かって右側に送気することで、縫製対象物Sの縫製線SCAにおいて生じる可能性のあるカールを除去する。送気装置12Bは、ミシン2Bの下面における縫製位置3Bまたは縫製位置3Bより縫製方向SDの上流側すぐ手前に設置されており、縫製対象物Sに向けて縫製対象物Sを縫製する縫製線SCBのある方向である縫製方向SDに向かって左側に送気することで、縫製対象物Sの縫製線SCBにおいて生じる可能性のあるカールを除去する。
【0040】
ガイド部材13は、送気装置12による送気方向、なおかつ、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの両側端の位置に配置されている。ガイド部材13は、縫製対象物Sの両側端部をガイドし、送気装置12による送気を通過させる。
【0041】
ガイド部材13は、互いに鏡面対称に配置された一対のガイド部材13Aとガイド部材13Bと、を有する。ガイド部材13Aは、送気装置12Aによる送気方向、なおかつ、縫製対象物Sの搬送路の縫製方向SDに向かって右側の側端の位置に配置されており、縫製対象物Sの縫製方向SDに向かって右側の側端部をガイドし、送気装置12Aによる送気を通過させる。ガイド部材13Bは、送気装置12Bによる送気方向、なおかつ、縫製対象物Sの搬送路の縫製方向SDに向かって左側の側端の位置に配置されており、縫製対象物Sの縫製方向SDに向かって左側の側端部をガイドし、送気装置12Bによる送気を通過させる。
【0042】
図1に示すように、縫製システム1は、先引き装置5より縫製方向SDの下流側に設けられたスタッカーSTと、をさらに備える。スタッカーSTは、縫製システム1によって縫製対象物Sが縫製されて得られた縫製品SP(
図19及び
図20参照)を、自動的に揃えて積み重ねる。
【0043】
図1に示すように、縫製システム1は、外部から接続された入出力装置15と、をさらに備える。入出力装置15は、縫製対象物Sの形状及び大きさに関する情報、一対の縫製線SCに関する情報及び縫製条件等の入力を受け付ける。入出力装置15は、入力を受け付ける際の受付、並びに、実行中または実行後の縫製処理に関する種々の情報等を、文字、画像、動画等として出力する。
【0044】
図2は、実施形態に係る縫製システム1の一部を示す斜視図である。
図3は、実施形態に係る縫製システム1を備え付けるフレームFを示す斜視図である。
図4は、実施形態に係る第1搬送装置7、第2把持装置8及び第2搬送装置9の詳細を示す斜視図である。なお、
図2では、縫製システム1を構成する一部の部位の位置関係を斜視図で示しており、縫製システム1を構成するその他の部位を適宜省略している。
【0045】
図3に示すように、フレームFは、縫製方向SDに沿って延びる直方体状の主フレームMFと、主フレームMFを縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に挟むように主フレームMFに隣接して配置されている隣接フレームFA及び隣接フレームFBと、を有する。
【0046】
図2に示すように、主フレームMFの上面には、支持板4A及び支持板4Bが設けられている。また、
図2に示すように、主フレームMFの内部空間領域には、第1搬送装置7と、第2搬送装置9とが配置されている。
【0047】
図3に示すように、隣接フレームFAは、主フレームMFに対して縫製方向SDに向かって右側に隣接して設けられている。
図2に示すように、隣接フレームFAは、ミシン2Aの縫製位置3Aを、主フレームMFの上面に設けられた支持板4Aと同様の高さに支持する。
【0048】
図3に示すように、隣接フレームFBは、主フレームMFに対して縫製方向SDに向かって左側に隣接して設けられている。
図2に示すように、隣接フレームFBは、ミシン2Bの縫製位置3Bを、主フレームMFの上面に設けられた支持板4Bと同様の高さに支持する。
【0049】
図4に示すように、第1搬送装置7は、より詳細には、一対の第1把持部6Aと第1把持部6Bとを互いの相対的な位置関係を維持しながら支持する第1把持装置支持台70と、縫製方向SDに沿って延びる一対の第1搬送ガイド71A及び第1搬送ガイド71Bと、第1搬送駆動部72と、を有する。
【0050】
一対の第1搬送ガイド71Aと第1搬送ガイド71Bとは、縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に配列して、互いに平行に設けられている。第1把持装置支持台70は、一対の第1搬送ガイド71A及び第1搬送ガイド71Bに、縫製方向SDに移動可能に嵌め合わせして設けられている。
【0051】
第1搬送駆動部72は、第1把持装置支持台70を縫製方向SDに移動させることで、第1把持装置支持台70に支持された一対の第1把持部6A及び第1把持部6Bを、互いの相対的な位置関係を維持しながら、縫製方向SDに沿って同期して移動させる。
【0052】
図4に示すように、第2把持装置8の第2把持部8Aは、より詳細には、第2把持下板81Aと、第2把持上板82Aと、第2把持上板82Aを回転駆動する第2把持駆動部84Aと、第2把持下板81A及び第2把持上板82Aを縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に移動させる第2把持移動部85Aと、第2把持下板81A及び第2把持上板82Aを鉛直方向に昇降させる第2把持昇降部86Aと、を有する。
【0053】
第2把持駆動部84Aは、第2把持上板82Aを、第2把持下板81Aの上方にあり第2把持下板81Aとの間で縫製対象物Sを挟み込んで把持する把持位置82AHと、第2把持下板81Aの上方から退避して縫製対象物Sを解放する解放位置82ASと、の間で移動させる。
【0054】
第2把持駆動部84Aは、解放位置82ASにある第2把持上板82Aを、上方から見て時計回りに回転駆動することで、縫製方向SDの上流側から把持位置82AHに移動させる。また、第2把持駆動部84Aは、把持位置82AHにある第2把持上板82Aを、上方から見て反時計回りに回転駆動することで、縫製方向SDの下流側から解放位置82ASに移動させる。
【0055】
第2把持移動部85Aは、第2把持下板81Aを支持するとともに、第2把持上板82Aを回転可能に支持している第2把持駆動部84Aを支持している。第2把持移動部85Aは、第2把持下板81Aと第2把持駆動部84Aとを互いに同期して縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に移動させることで、第2把持下板81Aと第2把持上板82Aとを互いに同期して縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に移動させる。
【0056】
第2把持昇降部86Aは、第2把持移動部85Aを昇降可能に支持している。第2把持昇降部86Aは、第2把持移動部85Aを鉛直方向に昇降させることで、第2把持下板81Aと第2把持上板82Aとを互いに同期して鉛直方向に昇降させる。
【0057】
第2把持装置8の第2把持部8Bは、第2把持部8Aと鏡面対称の構造を有しており、第2把持部8Aと同様に、把持位置82BHと解放位置82BSとの間を移動する第2把持下板81Bと、第2把持上板82Bと、第2把持駆動部84Bと、第2把持移動部85Bと、第2把持昇降部86Bと、を有する。第2把持部8Bの各部位の説明は、第2把持部8Aの各部位の説明と同様であるため、省略する。
【0058】
図4に示すように、第2搬送装置9は、より詳細には、一対の第2把持部8Aと第2把持部8Bとを互いの相対的な位置関係を維持しながら支持する第2把持装置支持台90と、縫製方向SDに沿って延びる一対の第2搬送ガイド91A及び第2搬送ガイド91Bと、第2搬送駆動部92と、を有する。
【0059】
一対の第2搬送ガイド91Aと第2搬送ガイド91Bとは、縫製方向SDに垂直な水平面内の方向に配列して、互いに平行に設けられている。第2把持装置支持台90は、一対の第2搬送ガイド91A及び第2搬送ガイド91Bに、縫製方向SDに移動可能に嵌め合わせして設けられている。
【0060】
第2搬送駆動部92は、第2把持装置支持台90を縫製方向SDに移動させることで、第2把持装置支持台90に支持された一対の第2把持部8A及び第2把持部8Bを、互いの相対的な位置関係を維持しながら、縫製方向SDに沿って同期して移動させる。
【0061】
図4に示すように、第1搬送装置7と第2搬送装置9とは、高さ方向に離間して独立した構造を形成している。このため、第1搬送装置7による第1把持装置6の搬送機構と、第2搬送装置9による第2把持装置8の搬送機構とを高さ方向に分離独立させることができるので、第1把持装置6と第2把持装置8とを互いに独立に搬送することができるとともに、別々にメンテナンス等を実施することができる。
【0062】
図5は、実施形態に係る第1把持装置6の詳細を示す斜視図である。
図6は、実施形態に係る第1把持装置6の動作を示す側面図である。
図7は、実施形態に係る第1把持装置6の動作を示す側面図である。
図6及び
図7のそれぞれは、第1把持装置6を-X方向から+X方向に見た図である。なお、
図5では、送気装置11、すなわち一対の送気装置11Aと送気装置11Bのうち、後述する第1把持上板62A及び第1把持上板62Bのそれぞれの上方に設けられているものだけが図示されており、後述する第1把持下板61A及び第1把持下板61Bのそれぞれの下方に設けられているものが第1把持部6A及び第1把持部6Bの陰に隠れている。また、
図6及び
図7では、送気装置11、すなわち一対の送気装置11Aと送気装置11Bの図示を省略している。
【0063】
図5、
図6及び
図7に示すように、第1把持装置6の第1把持部6Aは、より詳細には、第1把持下板61Aと、第1把持上板62Aと、上方側アーム63Aと、下流側アーム64Aと、上流側アーム65Aと、下方側アーム66Aと、昇降台67Aと、第1把持駆動部68Aと、支持台69Aと、を有する。
【0064】
第1把持駆動部68Aは、上方に昇降台67Aを支持し、昇降台67Aを昇降させる。昇降台67Aの上方には、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aの4種類のアームが設けられている。4種類のアームの上方には、縫製対象物Sを把持する第1把持下板61A及び第1把持上板62Aが設けられている。第1把持上板62Aの上方には、送気装置11Aが設けられており、第1把持下板61Aの下方には、送気装置11Aが設けられている。
【0065】
昇降台67Aには、下流側アーム64Aの一方の端部と、下方側アーム66Aの一方の端部と、がそれぞれ回転動作可能に接続されている。下方側アーム66Aは、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aの中で最も下方側に設けられ、一方の端部が昇降台67Aに、他方の端部が上流側アーム65Aの中央部に、それぞれ回転動作可能に接続されている。上流側アーム65Aは、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aの中で最も縫製方向SDの上流側に設けられ、一方の端部が第1把持下板61Aの把持面から所定の深さの位置に、他方の端部が上方側アーム63Aの中央部に、それぞれ回転可能に接続されており、中央部に下方側アーム66Aの他方の端部が回転可能に接続されている。
【0066】
下流側アーム64Aは、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aの中で最も縫製方向SDの下流側に設けられ、一方の端部が昇降台67Aに、他方の端部が上方側アーム63Aの基端部に、それぞれ回転可能に接続されている。上方側アーム63Aは、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aの中で最も上方側に設けられ、先端部に第1把持上板62Aが固定されており、中央部に上流側アーム65Aの他方の端部が回転可能に接続されており、基端部に下流側アーム64Aの他方の端部が回転可能に接続されている。
【0067】
第1把持装置6の第1把持部6Aは、以上のような構成を有するため、第1把持駆動部68Aにより昇降台67Aを昇降動作させることで、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aを所定の回転動作を伴う移動をさせて、第1把持上板62Aを、第1把持下板61Aの上方にあり第1把持下板61Aとの間で縫製対象物Sを挟み込んで把持する把持位置62AHと、第1把持下板61Aの上方から退避して縫製対象物Sを解放するとともに、第1把持下板61Aの把持面よりも下方に潜り込ませた解放位置62ASとの間で移動させる。すなわち、第1把持装置6の第1把持部6Aは、
図6に示すように、第1把持駆動部68Aによる昇降台67Aの上昇動作に基づいて、第1把持上板62Aを把持位置62AHに移動させる。また、第1把持装置6の第1把持部6Aは、
図7に示すように、第1把持駆動部68Aによる昇降台67Aの下降動作に基づいて、第1把持上板62Aを解放位置62ASに移動させて、縫製面よりも下方に潜り込ませる。
【0068】
なお、第1把持装置6の第1把持部6Aは、本実施形態では、上方側アーム63A、下流側アーム64A、上流側アーム65A及び下方側アーム66Aを有する折畳構造により、第1把持上板62Aを把持位置62AHと縫製面よりも下方に潜り込ませた解放位置62ASとの間で移動させる構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、蝶番を用いて第1把持上板62Aを端部で回転動作させることで、同様の把持位置62AHと解放位置との間で移動させる構成としてもよい。
【0069】
また、
図5、
図6及び
図7に示すように、第1把持装置6の第1把持部6Bは、第1把持部6Aと鏡面対称の構造を有しており、第1把持部6Aと同様に、第1把持下板61Bと、第1把持上板62Bと、上方側アーム63Bと、下流側アーム64Bと、上流側アーム65Bと、下方側アーム66Bと、昇降台67Bと、第1把持駆動部68Bと、支持台69Bと、を有する。第1把持上板62Bの上方には、送気装置11Bが設けられており、第1把持下板61Bの下方には、送気装置11Bが設けられている。第1把持部6Bの各部位の説明は、第1把持部6Aの各部位の説明と同様であるため、省略する。
【0070】
図8は、実施形態に係るガイド部材13の詳細を示す斜視図である。
図8に示すように、ガイド部材13は、より詳細には、ガイド部材本体131と、ガイド部材本体131に縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWに沿って形成された複数の送気通過孔132と、を有する。ガイド部材本体131は、鉛直方向の下端部付近で、縫製対象物Sの両側端部をガイドする。送気通過孔132は、縫製方向SDに沿って複数配列して形成され、送気装置12による送気を通過させる。
【0071】
図9は、実施形態に係る高さ調整装置14の一例を示す側面図である。
図9は、高さ調整装置14を-Y方向から+Y方向に見た図である。高さ調整装置14は、縫製対象物Sの一対の縫製ライン3Lの間に設けられ、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整する装置である。高さ調整装置14は、一対の支持板4Aと支持板4Bとの間の貫通孔4Cにおけるミシン2よりも縫製方向SDの上流側の空間に配置される。
【0072】
図9に示すように、高さ調整装置14は、高さ調整部材141と、昇降装置142と、を備える。高さ調整部材141は、縫製対象物Sの一対の縫製ライン3Lの間に設けられ、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整する部材である。昇降装置142は、高さ調整部材141を昇降させる。高さ調整装置14は、昇降装置142が高さ調整部材141を昇降させることで、一対の支持板4Aと支持板4Bとの間の貫通孔4Cにおけるミシン2よりも縫製方向SDの上流側の空間における縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0073】
図9(A)に示すように、高さ調整装置14は、昇降装置142により高さ調整部材141の上端部を一対の支持板4Aと支持板4Bよりも高くまで上昇させることで、幅広の縫製対象物SLを供給して載置した場合に、しわやたるみ等がない状態で幅広の縫製対象物SLを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0074】
また、
図9(B)に示すように、高さ調整装置14は、昇降装置142により高さ調整部材141の上端部を一対の支持板4Aと支持板4Bと同等の高さに調整することで、幅狭の縫製対象物SSを供給して載置した場合に、しわやたるみ等がない状態で幅狭の縫製対象物SSを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0075】
また、
図9(C)に示すように、高さ調整装置14は、昇降装置142により高さ調整部材141の上端部を一対の支持板4Aと支持板4Bよりも低くまで下降させることで、幅広の縫製対象物SLを供給して載置した場合に、しわやたるみ等がない状態で幅広の縫製対象物SLを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0076】
また、
図9に示すように、高さ調整装置14は、高さ調整部材141の上端部に形成された上面に設けられた高さ調整部材上ベルト143と、高さ調整部材上ベルト143を駆動する高さ調整部材上ベルト駆動部144と、をさらに備える。高さ調整装置14は、高さ調整部材上ベルト駆動部144により高さ調整部材上ベルト143を駆動することで、高さ調整部材上ベルト143の上に供給した縫製対象物Sを縫製方向SDに搬送して、作業者Oが第1把持装置6に縫製対象物Sを把持させた後に、速やかに第2把持装置8に縫製対象物Sを把持させることを可能にする。
【0077】
また、高さ調整部材141は、上面が縫製方向SDに向けて下方に傾斜していることが好ましい。高さ調整装置14は、この場合には、重力によって高さ調整部材141の上に供給した縫製対象物Sを縫製方向SDに搬送して、作業者Oが第1把持装置6に縫製対象物Sを把持させた後に、速やかに第2把持装置8に縫製対象物Sを把持させることを可能にする。
【0078】
図10は、実施形態に係る高さ調整装置140の一例を示す側面図である。
図10は、高さ調整装置140を-Y方向から+Y方向に見た図である。縫製システム1は、高さ調整装置14に代えて、高さ調整装置14と同様の位置に高さ調整装置140を配置して採用することができる。
【0079】
図10に示すように、高さ調整装置140は、高さ調整部材146と、昇降装置142と、を備える。高さ調整部材146は、縫製方向SDに沿って延びる棒部材である。高さ調整部材146は、円柱状であることが好ましい。高さ調整部材146は、高さ調整部材141と同様の位置に設けられ、同様の機能を有する部材である。高さ調整装置140は、高さ調整部材146が作業者Oにとって扱いやすい棒部材であるため、昇降装置142の昇降動作に応じて支持板4A及び支持板4Bに引っかかることもなく、上面の縫製方向SDに向けた傾斜を容易に変更することができるので、好ましい形態である。
【0080】
図10(A)に示すように、高さ調整装置140は、昇降装置142により高さ調整部材146の上端部を一対の支持板4Aと支持板4Bよりも高くまで上昇させることで、幅広の縫製対象物SLを供給して載置した場合に、しわやたるみ等がない状態で幅広の縫製対象物SLを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0081】
また、
図10(B)に示すように、高さ調整装置140は、昇降装置142により高さ調整部材146の上端部を一対の支持板4Aと支持板4Bと同等の高さに調整することで、幅狭の縫製対象物SSを供給して載置した場合に、しわやたるみ等がない状態で幅狭の縫製対象物SSを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0082】
また、
図10(C)に示すように、高さ調整装置140は、昇降装置142により高さ調整部材146の上端部を一対の支持板4Aと支持板4Bよりも低くまで下降させることで、幅広の縫製対象物SLを供給して載置した場合に、しわやたるみ等がない状態で幅広の縫製対象物SLを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0083】
図11は、実施形態に係る縫製システム1の制御装置10を示す機能ブロック図である。制御装置10は、縫製システム1を制御するコンピュータシステムを含む。
図11に示すように、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む処理装置10Aと、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む記憶装置10Bと、信号及びデータを入出力可能な入出力回路を含む入出力インターフェース10Cと、を有する。
【0084】
制御装置10の入出力インターフェース10Cには、ミシン2Aと、ミシン2Bと、下方先引き装置51と、上方先引き装置52と、第1把持駆動部68Aと、第1把持駆動部68Bと、第1搬送駆動部72と、第2把持駆動部84Aと、第2把持駆動部84Bと、第2把持移動部85Aと、第2把持移動部85Bと、第2把持昇降部86Aと、第2把持昇降部86Bと、第2搬送駆動部92と、送気装置11Aと、送気装置11Bと、送気装置12Aと、送気装置12Bと、昇降装置142と、高さ調整部材上ベルト駆動部144と、入出力装置15と、が接続される。
【0085】
処理装置10Aは、ミシン2A及びミシン2Bのそれぞれによる縫製対象物Sの脇縫い動作を制御する。処理装置10Aは、下方先引き装置51及び上方先引き装置52のそれぞれによる縫製対象物Sの送り動作を制御する。
【0086】
処理装置10Aは、送気装置11A、送気装置11B、送気装置12A及び送気装置12Bの送気動作を制御する。処理装置10Aは、昇降装置142の昇降動作を制御する。処理装置10Aは、高さ調整部材上ベルト駆動部144のベルト駆動動作を制御する。
【0087】
処理装置10Aは、入出力装置15が入力を受け付けた種々の情報を取得する。処理装置10Aは、入出力装置15に向けて種々の情報を送信することで、入出力装置15に出力させる。
【0088】
処理装置10Aは、搬送制御部101を有する。搬送制御部101は、第1把持駆動部68A及び第1把持駆動部68Bを制御することで、第1把持装置6の把持動作、解放動作及び潜込動作を制御する。搬送制御部101は、第1搬送装置7の第1搬送駆動部72を制御することで、第1把持装置6の搬送動作を制御する。
【0089】
搬送制御部101は、第2把持駆動部84A及び第2把持駆動部84Bを制御することで、第2把持装置8の把持動作及び解放動作を制御する。搬送制御部101は、第2把持移動部85A及び第2把持移動部85Bを制御することで、第2把持装置8の縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWにおける移動動作を制御する。搬送制御部101は、第2把持昇降部86A及び第2把持昇降部86Bを制御することで、第2把持装置8の昇降動作を制御する。搬送制御部101は、第2搬送装置9の第2搬送駆動部92を制御することで、第2把持装置8の搬送動作を制御する。
【0090】
搬送制御部101は、処理装置10Aが、実施形態に係る縫製システム1が実施形態に係る縫製方法を実行するための縫製プログラムを実行することにより、実現される機能部である。処理装置10Aの詳細な機能、すなわち、搬送制御部101の詳細な機能は、後述する実施形態に係る縫製方法の詳細な説明の箇所で説明する。
【0091】
【0092】
図13、
図15、
図17及び
図19のそれぞれは、実施形態に係る縫製方法を実行中の縫製システム1を上方から見た図、すなわち+Z方向から-Z方向に見た図である。
図14、
図16、
図18及び
図20のそれぞれは、実施形態に係る縫製方法を実行中の縫製システム1を側方から見た図、すなわち-X方向から+X方向に見た図である。なお、
図13から
図20では、実施形態に係る縫製方法を実行中に動作する縫製システム1の部分の位置関係を示しており、実施形態に係る縫製方法を実行中に動作しない部分を適宜省略している。
【0093】
縫製システム1によって実行される実施形態に係る縫製方法について、縫製システム1の処理装置10Aにおける搬送制御部101の詳細な機能と併せて、
図12~
図20を用いて説明する。
【0094】
図12に示すように、実施形態に係る縫製方法は、第1把持ステップS10と、第2把持ステップS20と、第1搬送ステップS30と、縫製開始ステップS40と、第1解放ステップS50と、第1引戻ステップS60と、第2搬送ステップS70と、縫製終了ステップS80と、第2解放ステップS90と、第2引戻ステップS100と、を有する。
【0095】
縫製対象物Sの供給位置で、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側から第1把持装置6で解放可能に把持する(第1把持ステップS10)。
【0096】
第1把持ステップS10では、具体的には、まず、作業者Oが、供給位置において、第1把持装置6の第1把持部6Aにおける第1把持下板61Aと第1把持上板62Aとの間、並びに、第1把持装置6の第1把持部6Bにおける第1把持下板61Bと第1把持上板62Bとの間に、縫製対象物Sを挿入して配置する。なお、本実施形態では、作業者Oの作業によって縫製対象物Sを挿入して配置するものとしたが、本発明はこれに限定されず、所定のロボット等を用いて自動で縫製対象物Sを挿入して配置する形態であってもよい。
【0097】
第1把持ステップS10では、次に、処理装置10Aの搬送制御部101が、第1把持駆動部68A及び第1把持駆動部68Bを制御することで、縫製対象物Sを、第1把持部6Aにおける第1把持下板61Aと第1把持上板62Aとの間、並びに、第1把持部6Bにおける第1把持下板61Bと第1把持上板62Bとの間の2箇所で把持させる。これにより、縫製システム1及び縫製対象物Sの関係は、
図1に示すような状態となる。
【0098】
第1把持ステップS10を実行した後に、縫製対象物Sの供給位置で、縫製対象物Sを縫製方向SDの上流側において両側端側から第2把持装置8で解放可能に把持する(第2把持ステップS20)。
【0099】
そこで、第2把持ステップS20の直前に、縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を、縫製方向SDの下流側に少し移動させることが好ましい。この際において、処理装置10Aの搬送制御部101が第1搬送駆動部72を制御することで、縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を縫製方向SDの下流側に少し搬送してもよい。もしくは、この際において、高さ調整装置14を採用している場合、処理装置10Aが、高さ調整部材上ベルト駆動部144を制御することで、縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を縫製方向SDの下流側に少し移動させてもよい。もしくは、この際において、高さ調整装置14または高さ調整装置140を採用している場合、高さ調整部材141または高さ調整部材146の上面の縫製方向SDに向けた下方への傾斜を利用して、重力によって、縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を縫製方向SDの下流側に少し移動させてもよい。このようにすることで、第2把持ステップS20を実行する際に、縫製対象物Sのたるみやしわを低減した状態、かつ、第1把持装置6の影響を低減した状態とすることができる。
【0100】
第2把持ステップS20では、具体的には、まず、作業者Oが、供給位置において、第2把持装置8の第2把持部8Aにおける第2把持下板81Aの上、並びに、第2把持装置8の第2把持部8Bにおける第2把持下板81Bの上に、縫製対象物Sを載置して配置する。なお、本実施形態では、作業者Oの作業によって縫製対象物Sを載置して配置するものとしたが、本発明はこれに限定されず、所定のロボット等を用いて自動で縫製対象物Sを載置して配置する形態であってもよい。
【0101】
第2把持ステップS20では、次に、処理装置10Aの搬送制御部101が、第2把持駆動部84Aを制御することで、解放位置82ASにある第2把持上板82Aを、上方から見て時計回りに回転駆動して、縫製方向SDの上流側から把持位置82AHに移動させることにより、縫製対象物Sを、第2把持下板81Aと第2把持上板82Aとの間で把持させる。また、第2把持ステップS20では、この動作と同時に、処理装置10Aの搬送制御部101が、第2把持駆動部84Bを制御することで、第2把持部8Aに対して実行した動作と同様に、縫製対象物Sを、第2把持下板81Bと第2把持上板82Bとの間で把持させる。このようにして、第2把持ステップS20では、縫製対象物Sを、第2把持部8Aにおける第2把持下板81Aと第2把持上板82Aとの間、並びに、第2把持部8Bにおける第2把持下板81Bと第2把持上板82Bとの間の2箇所で把持させる。
【0102】
第2把持ステップS20では、第2把持上板82A及び第2把持上板82Bを、作業者Oの外側かつ後側から、把持位置82AH及び把持位置82BHに移動させるので、作業者Oの作業へ与える影響を低減することができる。
【0103】
第1把持ステップS10及び第2把持ステップS20を実行した後に、縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を一対の縫製位置3へ向けて搬送する(第1搬送ステップS30)。
【0104】
第1搬送ステップS30では、具体的には、処理装置10Aの搬送制御部101が第1搬送駆動部72を制御することで、縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を縫製方向SDの下流側に向けて一対の縫製位置3まで搬送する。また、第1搬送ステップS30では、第1把持装置6の搬送に合わせて、処理装置10Aの搬送制御部101が第2搬送駆動部92を制御することで、縫製対象物Sを把持した第2把持装置8を縫製方向SDの下流側に向けて、第1把持装置6との間で縫製方向SDに一定の距離を保持して、一対の縫製位置3まで搬送する。
【0105】
第1搬送ステップS30では、処理装置10Aの搬送制御部101が、第1把持装置6と第2把持装置8との間の縫製方向SDの距離が、縫製対象物Sにおける第1把持装置6の把持位置と第2把持装置8の把持位置との間の縫製方向SDの距離と等しくなるように、第1搬送駆動部72及び第2搬送駆動部92を制御することが好ましく、この場合、縫製対象物Sのたるみやしわを低減した状態とすることができる。これにより、縫製システム1及び縫製対象物Sの関係は、
図13及び
図14に示すような状態となる。
【0106】
第1搬送ステップS30を実行した後に、一対の縫製位置3で縫製対象物Sの縫製を開始する(縫製開始ステップS40)。
【0107】
縫製開始ステップS40では、具体的には、処理装置10Aがミシン2Aを制御することで、第1把持装置6及び第2把持装置8で把持して縫製方向SDに沿って搬送した縫製対象物Sの、縫製位置3Aでの縫製線SCAに沿った脇縫い動作の実行を開始させる。縫製開始ステップS40では、また、ミシン2Aの脇縫い動作に合わせて、処理装置10Aがミシン2Bを制御することで、第1把持装置6及び第2把持装置8で把持して縫製方向SDに沿って搬送した縫製対象物Sの、縫製位置3Bでの縫製線SCBに沿って脇縫い動作の実行を開始させる。
【0108】
縫製開始ステップS40を実行した後、処理装置10Aの搬送制御部101が第1搬送駆動部72及び第2搬送駆動部92を制御することで、ミシン2A及びミシン2Bの脇縫い動作に合わせて、第1把持装置6及び第2把持装置8を搬送することで、縫製対象物Sの送り処理を実行する。
【0109】
縫製開始ステップS40を実行した後において、一対の縫製位置3で縫製対象物Sを縫製する最中に、第1把持装置6から縫製対象物Sを解放する(第1解放ステップS50)。
【0110】
第1解放ステップS50では、具体的には、脇縫い処理が進められている縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側の端部が先引き装置5の下方先引き装置51と上方先引き装置52との間に到達した時点で、処理装置10Aが下方先引き装置51及び上方先引き装置52を制御することで、先引き装置5に上下両面からの縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側への送り処理を開始させる。これにより、縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側が、先引き装置5により把持された状態となる。
【0111】
第1解放ステップS50では、次に、縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側を先引き装置5により把持させた状態で、処理装置10Aの搬送制御部101が、第1把持駆動部68A及び第1把持駆動部68Bを制御することで、第1把持装置6に縫製対象物Sを解放させる。このようにして、縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側の把持が、第1把持装置6から先引き装置5に引き継がれる。
【0112】
第1解放ステップS50では、処理装置10Aの搬送制御部101が、第1把持駆動部68A及び第1把持駆動部68Bを制御することで、第1把持装置6に縫製対象物Sを解放させたことに伴い、第1把持装置6を縫製面よりも下方に潜り込ませる。
【0113】
第1解放ステップS50を実行した後において、一対の縫製位置3で縫製対象物Sを縫製する最中に、第1解放ステップS50で縫製対象物Sを解放した第1把持装置6を供給位置へ向けて搬送する(第1引戻ステップS60)。
【0114】
第1引戻ステップS60では、
図15及び
図16に示すように、処理装置10Aの搬送制御部101が第1搬送駆動部72を制御することで、第1解放ステップS50で縫製対象物Sを解放し、なおかつ、縫製面よりも下方に潜り込ませた第1把持装置6を、縫製面よりも下方の空間を通って、縫製方向SDの上流側に向けて、供給位置へ向けて引き戻す方向へ搬送する。
【0115】
第1引戻ステップS60では、処理装置10Aの搬送制御部101が第1搬送駆動部72を制御することで、供給位置へ引き戻した第1把持装置6を、再び縫製面よりも上方に浮上させて、次の縫製対象物Sに対して実行する実施形態に係る縫製方法の第1把持ステップS10に再び使用することを可能にする。
【0116】
このように、本実施形態に係る縫製方法は、先の縫製対象物Sに対して実行する実施形態に係る縫製方法における第1引戻ステップS60までの実行に使用した第1把持装置6を、再び次の縫製対象物Sに対して実行する実施形態に係る縫製方法における第1把持ステップS10の実行に使用することを可能にする。このため、本実施形態に係る縫製方法は、先の縫製対象物Sに対して実行する実施形態に係る縫製方法における後述する第2搬送ステップS70、縫製終了ステップS80、第2解放ステップS90及び第2引戻ステップS100と、次の縫製対象物Sに対して実行する実施形態に係る縫製方法における第1把持ステップS10とを同じ時間帯に実行することを可能にしているので、複数の縫製対象物Sに対して効率よく縫製処理を実行することを可能にしている。
【0117】
縫製開始ステップS40を実行した後において、第2把持装置8を一対の縫製位置3へ向けて搬送する(第2搬送ステップS70)。
【0118】
第2搬送ステップS70では、処理装置10Aの搬送制御部101が第2搬送駆動部92を制御することで、ミシン2A及びミシン2Bの脇縫い動作に合わせて、第2把持装置8を搬送することで、縫製対象物Sの送り処理を実行する。本実施形態では、縫製対象物Sの外形が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWにおける内側に凹の形状にシェイプしたシェイプ形状をしており、縫製対象物Sのシェイプ形状にあわせて縫製線SCA及び縫製線SCBが内側に凹の形状にシェイプしたシェイプ曲線となる。このため、第2搬送ステップS70では、さらに、処理装置10Aの搬送制御部101が第2把持移動部85A及び第2把持移動部85Bを制御することで、縫製線SCA及び縫製線SCBのシェイプ曲線に応じて、第2把持装置8の第2把持部8Aと第2把持部8Bとの縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWにおける移動動作を制御する。ここで、縫製線SCA及び縫製線SCBのシェイプ曲線に応じた、第2把持装置8の第2把持部8Aと第2把持部8Bとの縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWにおける移動動作は、縫製対象物Sを脇縫いするシェイプ形状に基づき、シェイプ動作と称されている。なお、第2搬送ステップS70における縫製対象物Sの送り処理及び第2把持装置8の第2把持部8Aと第2把持部8Bとの縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWにおける移動動作の詳細な説明は、後述する。
【0119】
第2搬送ステップS70を実行中の縫製システム1及び縫製対象物Sの関係は、
図17及び
図18に示すような状態となる。
【0120】
第2搬送ステップS70を実行した後で、一対の縫製位置3での縫製対象物Sの縫製を終了する(縫製終了ステップS80)。
【0121】
縫製終了ステップS80では、具体的には、縫製位置3A及び縫製位置3Bのそれぞれでの縫製線SCA及び縫製線SCBのそれぞれに沿った脇縫いが終了すると、処理装置10Aがミシン2A及びミシン2Bを制御することで、ミシン2A及びミシン2Bによる縫製処理を停止させる。
【0122】
なお、
図17及び
図18に示すように、先の縫製対象物Sの縫製方向SDの上流側の端部と次の縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側の端部との距離が十分に小さい状態で、縫製対象物Sの送り処理を実行している場合には、処理装置10Aは、ミシン2A及びミシン2Bによる縫製処理の停止に代えて、ミシン2A及びミシン2Bの縫製処理で使用されている糸の切断を以って、先の縫製対象物Sに対する縫製処理を実質的に停止するとともに、次の縫製対象物Sに対する縫製処理を実質的に開始するものとしてもよい。この場合、先の縫製対象物Sに対する縫製終了ステップS80と、次の縫製対象物Sに対する縫製開始ステップS40と、を実質的に同時に実行する形となる。
【0123】
本実施形態に係る縫製方法では、縫製終了ステップS80まで実行することで、
図19及び
図20に示すように、縫製対象物Sを脇縫いした縫製品SPを取得する。本実施形態に係る縫製方法では、処理装置10Aが下方先引き装置51及び上方先引き装置52を制御することで、下方先引き装置51及び上方先引き装置52によって縫製品SPをスタッカーSTまで搬送させる。本実施形態に係る縫製方法では、スタッカーSTまで搬送させる縫製品SPをスタッカーSTに回収させ、自動的に揃えさせて積み重ねさせる。
【0124】
一対の縫製位置3での縫製対象物Sの縫製を終了した後、すなわち、縫製終了ステップS80を実行した後で、第2把持装置8から縫製対象物Sを解放する(第2解放ステップS90)。
【0125】
第2解放ステップS90では、具体的には、処理装置10Aの搬送制御部101が、第2把持駆動部84Aを制御することで、把持位置82AHにある第2把持上板82Aを、上方から見て反時計回りに回転駆動して解放位置82ASに移動させことにより、縫製対象物Sを第2把持部8Aから解放する。また、第2解放ステップS90では、この動作と同時に、処理装置10Aの搬送制御部101が、第2把持駆動部84Bを制御することで、第2把持部8Aに対して実行した動作と同様に、縫製対象物Sを第2把持部8Bから解放する。
【0126】
一対の縫製位置3での縫製対象物Sの縫製を終了した後に、第2解放ステップS90で縫製対象物Sを解放した第2把持装置8を供給位置へ向けて搬送する(第2引戻ステップS100)。
【0127】
第2引戻ステップS100では、
図19及び
図20に示すように、処理装置10Aの搬送制御部101が第2搬送駆動部92を制御することで、第2解放ステップS90で縫製対象物Sを解放した第2把持装置8を、縫製面よりも下方の空間を通って、縫製方向SDの上流側に向けて、供給位置へ向けて引き戻す方向へ搬送する。これにより、第2把持装置8は、次の縫製対象物Sに対して実行する実施形態に係る縫製方法の第2把持ステップS20に再び使用することを可能にする。
【0128】
このように、本実施形態に係る縫製方法は、第1把持装置6と第2把持装置8とを分離して搬送する機構を生かして、縫製対象物Sの縫製処理を逐次実行することを可能にしている。
【0129】
第2搬送ステップS70における縫製対象物Sの送り処理及び第2把持装置8の第2把持部8Aと第2把持部8Bとの縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWにおける移動動作について、以下に詳細に説明する。
図21は、実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
図22は、実施形態に係る縫製方法の一例を模式的に示す図である。
【0130】
図22は、実施形態に係る縫製方法を実行中の縫製システム1において、第2搬送ステップS70の説明に必要な縫製対象物Sの縫製線SCAと、縫製線SCA上の各段階における縫製点SP1,SP2,SP3,SP4,SP5と、第2把持装置8の第2把持部8Aと、のみを示した上方から見た図、すなわち+Z方向から-Z方向に見た図である。
【0131】
図21に示すように、実施形態に係る縫製方法における第2搬送ステップS70は、第1縫製ステップS71と、相対搬送速度低下ステップS72と、第2縫製ステップS73と、を有する。
【0132】
内側に凹の形状を有する縫製対象物Sの一対の縫製線SCのうち最も内側の最内位置が一対の縫製位置3を通過するまで、一対の縫製線SCに応じて、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側へ移動させるとともに、縫製対象物Sの縫製中の送り速度に対する第2把持装置8の相対搬送速度を一定に保持して縫製する(第1縫製ステップS71)。
【0133】
ここで、相対搬送速度とは、第1把持装置6の搬送速度または先引き装置5の送り速度によって定まる縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側の搬送速度を基準とした、第2把持装置8の搬送速度によって定まる縫製対象物Sの縫製方向SDの上流側の搬送速度のことである。
【0134】
第1縫製ステップS71では、具体的には、処理装置10Aの搬送制御部101が第2把持移動部85A及び第2把持移動部85Bを制御することで、縫製線SC上の縫製点が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側に向かうことに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側へ移動させる。
【0135】
例えば、
図22(A)、
図22(B)及び
図22(C)に示すように、第1縫製ステップS71では、縫製点SP1,SP2,SP3と縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側(左側)に向かうことに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8Aを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側(右側)へ移動させる。
【0136】
第1縫製ステップS71では、また、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側へ移動させると同時に、縫製対象物Sの一対の縫製線SCのうち最も内側の最内位置が一対の縫製位置3を通過するまでの間において、処理装置10Aの搬送制御部101が第2搬送駆動部92を制御することで、第2把持装置8の相対搬送速度を一定に、具体的には0に保持する。
【0137】
第1縫製ステップS71を実行した後、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過するときに、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを移動させる方向を縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側から内側へ切り替えるとともに、縫製対象物Sの縫製中の送り速度に対する第2把持装置8の相対搬送速度を一気に低下させる(相対搬送速度低下ステップS72)。
【0138】
相対搬送速度低下ステップS72では、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過するときに、処理装置10Aの搬送制御部101が第2把持移動部85A及び第2把持移動部85Bを制御することで、縫製線SC上の縫製点が向かう方向が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側から外側に切り替わることに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを移動させる方向を縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側から内側へ切り替える。
【0139】
例えば、
図22(D)に示すように、相対搬送速度低下ステップS72では、縫製対象物Sの最内位置である縫製点SP4において、縫製線SC上の縫製点が向かう方向が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側(左側)から外側(右側)に切り替わることに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8Aを移動させる方向を縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側(右側)から内側(左側)へ切り替える。
【0140】
これにより、相対搬送速度低下ステップS72では、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを移動させる方向を縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側から内側へ切り替えることに伴い、縫製対象物Sにたるみやしわが生じてしまう可能性があった。この可能性に対応するため、相対搬送速度低下ステップS72では、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過するときに、処理装置10Aの搬送制御部101が第2搬送駆動部92を制御することで、第2把持装置8の相対搬送速度を一気に低下させることにより、縫製対象物Sを引き延ばすことで縫製対象物Sにたるみやしわが生じてしまう可能性を低減する。相対搬送速度低下ステップS72では、具体的には、第2把持装置8の相対搬送速度を一気に負の値にする。
【0141】
相対搬送速度低下ステップS72を実行した後、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過した後、一対の縫製線SCに応じて第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側へ移動させるとともに、徐々に縫製対象物Sの縫製中の送り速度に対する第2把持装置8の相対搬送速度を上昇させて、最初に一定に保持した相対搬送速度まで戻しながら縫製する(第2縫製ステップS73)。
【0142】
第2縫製ステップS73では、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過した後において、処理装置10Aの搬送制御部101が第2把持移動部85A及び第2把持移動部85Bを制御することで、縫製線SC上の縫製点が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側に向かうことに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側へ移動させる。
【0143】
例えば、
図22(E)に示すように、第2縫製ステップS73では、縫製点SP5等に示されるように縫製点が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側(右側)に向かうことに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8Aを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側(左側)へ移動させる。
【0144】
第2縫製ステップS73では、その前の相対搬送速度低下ステップS72で第2把持装置8の相対搬送速度を一気に低下させたことに伴い、縫製対象物Sを引っぱり過ぎてしまう可能性がある。この可能性に対応するため、第2縫製ステップS73では、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過した後において、処理装置10Aの搬送制御部101が第2搬送駆動部92を制御することで、第2把持装置8の相対搬送速度を徐々に上昇させて、最初に一定に保持した相対搬送速度まで戻すことで、縫製対象物Sを引っぱり過ぎてしまう可能性を低減する。
【0145】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、縫製対象物Sを把持する第1把持装置6よりも縫製方向SDの上流側で縫製対象物Sを把持する第2把持装置8と、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第2把持装置8を、縫製対象物Sを縫製する縫製位置3へ向けて搬送する第2搬送装置9と、制御装置10と、を備え、第2把持装置8は、縫製対象物Sを縫製方向SDの上流側において両側端側から把持する一対の第2把持部8A,8Bを有し、制御装置10は、内側に凹の形状を有する縫製対象物Sの一対の縫製線SCのうち最も内側の最内位置が一対の縫製位置3を通過するときに、一対の第2把持部8A,8Bを移動させる方向を縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側から内側へ切り替えるとともに、縫製対象物Sの縫製中の送り速度に対する第2把持装置8の相対搬送速度を低下させるように制御する搬送制御部101を有する。このため、縫製線SC上の縫製点が向かう方向が縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側から外側に切り替わることに合わせて、第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bを移動させる方向を縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側から内側へ切り替えることに伴い、縫製対象物Sにたるみやしわが生じてしまう可能性を低減することができるので、縫製対象物Sの脇縫いに係る縫製線SCの内側に凹の形状に応じて、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側で縫製対象物Sを把持する第2把持装置8に追従させることを可能にすることができる。
【0146】
また、本実施形態によれば、搬送制御部101が、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過するまで、一対の縫製線SCに応じて一対の第2把持部8A,8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側へ移動させるとともに、相対搬送速度を一定に保持するように制御し、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過した後、一対の縫製線SCに応じて一対の第2把持部8A,8Bを縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側へ移動させるとともに、徐々に相対搬送速度を上昇させて、最初に一定に保持した相対搬送速度まで戻す。このため、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過するまでについても、縫製対象物Sの最内位置が一対の縫製位置3を通過した後についても、一対の縫製線SCに基づく第2把持装置8の第2把持部8A及び第2把持部8Bの移動によって縫製対象物Sにたるみやしわが生じてしまう可能性を低減することができるので、縫製対象物Sの脇縫いに係る縫製線SCの内側に凹の形状に応じて、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側で縫製対象物Sを把持する第2把持装置8に追従させることを可能にすることができる。
【0147】
なお、本実施形態によれば、第2把持装置8は、縫製対象物Sを縫製方向SDの上流側において両側端側から把持する一対の第2把持部8A,8Bを有し、第2搬送装置9は、一方の第2把持部8Aが供給位置で縫製対象物Sを把持した後、一方の第2把持部8Aを一対の縫製ライン3Lの一方である縫製ライン3LAに沿って搬送し、他方の第2把持部8Bが供給位置で縫製対象物Sを把持した後、他方の第2把持部8Bを一対の縫製ライン3Lの他方である縫製ライン3LBに沿って搬送する。このため、第2把持装置8は、第2把持部8Aによって縫製ライン3LAの付近で、第2把持部8Bによって縫製ライン3LBの付近で、2箇所で把持することができるので、一対の縫製ライン3Lの両方において縫製対象物Sを安定に把持することができる。
【0148】
また、本実施形態によれば、縫製対象物Sに向けて、かつ、縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの内側から縫製線SCのある方向である縫製対象物Sの搬送路の幅方向SWの外側に向けて送気する送気装置11,12をさらに備える。このため、送気装置11,12の送気により、縫製対象物Sの縫製線SCの付近において生じる可能性のあるカールを除去することができる。
【0149】
また、本実施形態によれば、縫製対象物Sの端部をガイドし、送気装置12からの送気を通過させるガイド部材13をさらに備える。このため、ガイド部材13により、送気装置12の送気によって飛ばされたり、新たに乱流を引き起こしてしまったりすることなく、送気装置12の送気により縫製対象物Sの端部が位置ずれを起こす可能性を低減することができる。
【0150】
また、本実施形態によれば、第1把持装置6が縫製対象物Sを解放可能に把持し、第1搬送装置7が、縫製対象物Sの供給位置で縫製対象物Sを把持した第1把持装置6を、縫製対象物Sを縫製する一対の縫製位置3へ向けて搬送し、一対の縫製位置3よりも縫製方向SDの下流側の位置で縫製中に縫製対象物Sを解放した第1把持装置6を、縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送するので、縫製が一通り終了するよりも前に、次の縫製の準備をすることを可能にする。また、互いに独立した別々の搬送機構である第1把持装置6及び第1搬送装置7による搬送機構と、第2把持装置8及び第2搬送装置9による搬送機構とにより、それぞれ縫製方向SDの下流側及び上流側で縫製対象物Sを把持することができるので、縫製が一通り終了するまで縫製対象物Sを安定に把持することができる。
【0151】
また、本実施形態によれば、第1搬送装置7が、第1把持装置6が縫製対象物Sを解放した後、第1把持装置6を縫製面よりも下方に潜り込ませてから縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送する。このため、実行中の縫製処理に縫製に影響を及ぼすことなく、第1把持装置6を素早く縫製対象物Sの供給位置へ向けて搬送することができる。
【0152】
また、本実施形態によれば、第1把持装置6は、縫製対象物Sを縫製方向SDの下流側から把持する一対の第1把持部6A,6Bを有し、第1搬送装置7は、一方の第1把持部6Aが供給位置で縫製対象物Sを把持した後、一方の第1把持部6Aを一対の縫製ライン3Lの一方である縫製ライン3LAの内側に沿って搬送し、他方の第1把持部6Bが供給位置で縫製対象物Sを把持した後、他方の第1把持部6Bを一対の縫製ライン3Lの他方である縫製ライン3LBの内側に沿って搬送する。このため、第1把持装置6は、第1把持部6Aによって縫製ライン3LAの内側で、第1把持部6Bによって縫製ライン3LBの内側で、2箇所で把持することができるので、一対の縫製ライン3Lの両方において縫製対象物Sを安定に把持することができる。
【0153】
また、本実施形態によれば、第1搬送装置7と第2搬送装置9とは、高さ方向に離間して独立した構造を形成している。このため、第1搬送装置7による第1把持装置6の搬送機構と、第2搬送装置9による第2把持装置8の搬送機構とを高さ方向に分離独立させることができるので、第1把持装置6と第2把持装置8とを互いに独立に搬送することができるとともに、別々にメンテナンス等を実施することができる。
【0154】
また、本実施形態によれば、縫製対象物Sを先引きする先引き装置5をさらに備え、第1把持装置6は、先引き装置5が縫製対象物Sの先引きを開始してから、縫製対象物Sを解放する。このため、縫製対象物Sの縫製方向SDの下流側の把持を、第1把持装置6から先引き装置5に引き継ぐことができるので、第1把持装置6が縫製対象物Sを解放した後においても、縫製対象物Sを実質的に把持した状態下で安定した縫製処理を実行することができる。
【0155】
また、本実施形態によれば、縫製対象物Sの一対の縫製ライン3Lの間に設けられ、縫製対象物Sを支持する高さを調整する高さ調整部材141,146と、高さ調整部材141,146を昇降させる昇降装置142と、をさらに備える。このため、高さ調整部材141,146及び昇降装置142により、縫製対象物Sの幅に基づいて、しわやたるみ等がない状態で縫製対象物Sを好適に供給できる高さに、縫製対象物Sを支持する鉛直方向の高さを調整することができる。
【0156】
また、本実施形態によれば、高さ調整部材141,146が、上面が縫製方向SDに向けて下方に傾斜している。このため、下方への傾斜により、高さ調整部材141,146の上に供給した縫製対象物Sを重力によって縫製方向SDに搬送するので、作業者Oが第1把持装置6に縫製対象物Sを把持させた後に、速やかに第2把持装置8に縫製対象物Sを把持させることを可能にする。
【0157】
また、本実施形態によれば、高さ調整部材146が、縫製方向SDに沿って延びる棒部材である。このため、棒部材である高さ調整部材146が作業者Oにとって扱いやすいので、昇降装置142の昇降動作に応じて支持板4A及び支持板4Bに引っかかることもなく、上面の縫製方向SDに向けた傾斜を容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0158】
1…縫製システム、2…ミシン、2A…ミシン、2B…ミシン、3…縫製位置、3A…縫製位置、3B…縫製位置、3L…縫製ライン、3LA…縫製ライン、3LB…縫製ライン、4…支持板、4A…支持板、4B…支持板、4C…貫通孔、5…先引き装置、51…下方先引き装置、52…上方先引き装置、6…第1把持装置、6A…第1把持部、6B…第1把持部、7…第1搬送装置、8…第2把持装置、8A…第2把持部、8B…第2把持部、9…第2搬送装置、10…制御装置、10A…処理装置、10B…記憶装置、10C…入出力インターフェース、11…送気装置、11A…送気装置、11B…送気装置、12…送気装置、12A…送気装置、12B…送気装置、13…ガイド部材、13A…ガイド部材、13B…ガイド部材、14…高さ調整装置、15…入出力装置、61A…第1把持下板、61B…第1把持下板、62A…第1把持上板、62AH…把持位置、62AS…解放位置、62B…第1把持上板、63A…上方側アーム、63B…上方側アーム、64A…下流側アーム、64B…下流側アーム、65A…上流側アーム、65B…上流側アーム、66A…下方側アーム、66B…下方側アーム、67A…昇降台、67B…昇降台、68A…第1把持駆動部、68B…第1把持駆動部、69A…支持台、69B…支持台、70…第1把持装置支持台、71A…第1搬送ガイド、71B…第1搬送ガイド、72…第1搬送駆動部、81A…第2把持下板、81B…第2把持下板、82A…第2把持上板、82AH…把持位置、82AS…解放位置、82B…第2把持上板、82BH…把持位置、82BS…解放位置、84A…第2把持駆動部、84B…第2把持駆動部、85A…第2把持移動部、85B…第2把持移動部、86A…第2把持昇降部、86B…第2把持昇降部、90…第2把持装置支持台、91A…第2搬送ガイド、91B…第2搬送ガイド、92…第2搬送駆動部、101…搬送制御部、131…ガイド部材本体、132…送気通過孔、140…高さ調整装置、141…高さ調整部材、142…昇降装置、143…高さ調整部材上ベルト、144…高さ調整部材上ベルト駆動部、146…高さ調整部材、F…フレーム、FA…隣接フレーム、FB…隣接フレーム、MF…主フレーム、O…作業者、S…縫製対象物、SC…縫製線、SCA…縫製線、SCB…縫製線、SD…縫製方向、SL…幅広の縫製対象物、SP…縫製品、SP1…縫製点、SP2…縫製点、SP3…縫製点、SP4…縫製点、SP5…縫製点、SS…幅狭の縫製対象物、ST…スタッカー、SW…縫製対象物Sの搬送路の幅方向。