(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】再生アスファルト混合物の製造方法及び再生アスファルト混合物の製造装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/10 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E01C19/10 A
(21)【出願番号】P 2019172000
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】志賀 義伸
(72)【発明者】
【氏名】末原 俊史
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-079136(JP,A)
【文献】特開昭57-096106(JP,A)
【文献】特開2009-249991(JP,A)
【文献】特開2019-044367(JP,A)
【文献】特開2008-208606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト廃材を破砕し、破砕した後の前記アスファルト廃材を、粒径5mm~0mmの第一の再生骨材と、粒径13mm~5mm超の第二の再生骨材とに分級する工程と、
加熱溶融した新規のアスファルトと再生用添加剤及
び施工性改善剤と
を加熱しながら混合した再生用アスファルトに、前記第一の再生骨材
を、混合してアスファルトモルタルを製造する工程と、
前記アスファルトモルタルと、異なる加熱手段でそれぞれ加熱された前記第二の再生骨材及
び新規骨材とを混合して再生アスファルト混合物を製造する工程と、を、有し、
前記第一の再生骨材および前記第二の再生骨材は、針入度が20以上である旧アスファルトを3質量%以上含むことを特徴とする再生アスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記アスファルトモルタル製造時に、前記新規のアスファルトと加熱混合を行う前の前記第一の再生骨材は常温である請求項1に記載された再生アスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
前記新規のアスファルト及び/または前記アスファルトモルタルに、発泡剤を含む水溶液を添加して発泡させることで容積を増大させ、粘性を低減させる請求項1または2に記載された再生アスファルト混合物の製造方法。
【請求項4】
前記アスファルトモルタルの製造時の加熱混合時間は10分以上である請求項1から3のいずれか1項に記載された再生アスファルト混合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載された再生アスファルト混合物の製造方法に用いられる再生アスファルト混合物の製造装置であって、
加熱された新規のアスファルトと第一の再生骨材と再生用添加剤及び/または施工性改善剤とを加熱混合してアスファルトモルタルを製造する混合釜と、
前記アスファルトモルタルと前記第一の再生骨材より粒径の大きい第二の再生骨材及び/または新規骨材とを、攪拌混合することで再生アスファルト混合物を製造するミキサーと、
を備えたことを特徴とする再生アスファルト混合物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト再生骨材を利用した再生アスファルト混合物の製造方法及び再生アスファルト混合物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アスファルト舗装の表層と基層に施工されたアスファルト混合物の廃材を破砕することでアスファルト再生骨材が製造されている。このアスファルト再生骨材は再生アスファルト混合物の材料として用いられ、新規のアスファルト及び新規の骨材とを混ぜ合わせて再生アスファルト混合物としてアスファルト舗装道路に広く施工されている。
例えば、従来の再生アスファルト混合物の製造方法では、
図4に示すように、アスファルト再生骨材(以下、単に再生骨材という)100をドライヤ101で加熱する。そして、加熱した再生骨材100を、加熱した新規の細骨材102及び粗骨材103、新規のアスファルト104と共にミキサー105に投入して攪拌混合することで再生アスファルト混合物を製造し、再生アスファルト舗装として路面に敷設している。
【0003】
再生骨材100は廃材となった旧骨材の表面に旧アスファルトが被覆されている。アスファルト舗装の再生骨材100を繰り返して再生することによりアスファルトが製造時の再加熱や供用中の紫外線で劣化し油分が脱落するため、再生骨材100等を混合した再生アスファルト混合物は次第に性能が劣化してしまう。すると、再生アスファルト舗装に短期間で轍掘れやひび割れ等が発生するという問題が生じる。
この問題を解決するため、例えば特許文献1に記載された再生骨材では、油分が付着した表面を削り取ることによって付着した油分量を少なくし、その後の加熱工程において、再生骨材に再生用添加剤を添加して新規のアスファルトと混合することで、再生アスファルト混合物の性能を高めるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された再生アスファルト混合物は、その性能が十分回復しているとはいえない。そのため、この場合でも比較的短期間で再生アスファルト舗装に骨材飛散やひび割れ等が発生するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、より優れた耐久性を発揮できる再生アスファルト混合物の製造方法及び再生アスファルト混合物製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る再生アスファルト混合物の製造方法は、加熱溶融した新規のアスファルトと再生用添加剤及び/または施工性改善剤と第一の再生骨材とを、混合してアスファルトモルタルを製造する工程を、有することを特徴とする。
本発明によれば、加熱溶融した新規のアスファルトと再生用添加剤及び/または施工性改善剤と第一の再生骨材の3種の材料を混合してアスファルトモルタルを製造することで第一の再生骨材に付着する旧アスファルトの柔軟性と耐久性を回復させたアスファルトモルタルを製造することができる。
【0008】
また、上述の製造方法で製造されたアスファルトモルタルと第一の再生骨材より粒径の大きい第二の再生骨材及び/または新規骨材とを混合して再生アスファルト混合物を製造する工程を、更に有することが好ましい。
本発明によれば、第一の再生骨材の表面に再生用添加剤及び/または施工性改善剤を付着させて浸透させ、アスファルトを加熱混合することでより均一に混合できて、第一の再生骨材に付着する旧アスファルトの柔軟性と耐久性を回復できるため、アスファルト舗装の轍掘れやひび割れの起こりにくい耐久性の高い混合物を得られる。
【0009】
また、第一の再生骨材は、粒径が5mm以下であることが好ましい。
粒径5mm以下の第一の再生骨材を用いることで粒度が安定し、再生用添加剤及び/または施工性改善剤とアスファルトを加熱混合することで効率よく混合できて、品質の安定したアスファルトモルタルを製造できる。
【0010】
また、第一の再生骨材には旧アスファルトが3%以上含まれていてもよい。
第一の再生骨材の表面に旧アスファルトが3%以上含まれているため、再生用添加剤及び/または施工性改善剤が均等に浸透して均一に混ざり合って油分が多くなり柔軟性と耐久性を回復でき、品質が向上する。
【0011】
また、アスファルトモルタル製造時に、新規のアスファルトと加熱混合を行う前の第一の再生骨材は常温である。
第一の再生骨材は常温であるため、加熱せずに保管することができる。
【0012】
また、アスファルトモルタルに、加熱された粒径5mm超の第二の再生骨材及び/または加熱された新規骨材を混合することで、再生アスファルト混合物を製造する工程を、有していることが好ましい。
アスファルトモルタルに加熱された第二の再生骨材及び/または新規骨材を混合することで、再生アスファルト混合物を製造できる。
【0013】
また、新規のアスファルト及び/またはアスファルトモルタルに、発泡剤を含む水溶液を添加して発泡させることでアスファルトの容積を増大させ、粘性を低減させてもよい。
再生用アスファルト及び/またはアスファルトモルタル中で発泡剤が発泡することで泡がベアリングの役割を果たして混合性が向上する。
【0014】
また、アスファルトモルタルの製造時の加熱混合時間は10分以上であることが好ましい。
アスファルトモルタルの製造時に10分以上加熱混合することで、新規のアスファルトと第一の再生骨材と再生用添加剤及び/または施工性改善剤とをより均一に且つ十分混合できて品質が安定する。
【0015】
本発明による再生アスファルト混合物の製造装置は、加熱された新規のアスファルトと第一の再生骨材と再生用添加剤及び/または施工性改善剤とを加熱混合してアスファルトモルタルを製造する混合釜と、アスファルトモルタルと第一の再生骨材より粒径の大きい第二の再生骨材及び/または新規骨材とを、攪拌混合することで再生アスファルト混合物を製造するミキサーと、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、混合釜で予め第一の再生骨材を含むアスファルトモルタルを製造することでアスファルトモルタルの性状が均一化されて第一の再生骨材の柔軟性と耐久性を回復でき、更にミキサーによって第二の再生骨材及び/または新規骨材を攪拌混合することで柔軟性と耐久性の高いアスファルト混合物を製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る再生アスファルト混合物の製造方法及び製造装置によれば、加熱溶融したアスファルトと再生用添加剤及び/または施工性改善剤とを混合すると共に第一の再生骨材と加熱混合してアスファルトモルタルを製造するため、再生用添加剤及び/または施工性改善剤によって第一の再生骨材の柔軟性と耐久性を回復でき、第一の再生骨材を含むアスファルトモルタルの性状が均一化されて高強度である。そのため、アスファルト舗装の骨材飛散やひび割れを長期間にわたって抑制して耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による再生アスファルト混合物の製造装置と製造方法を示す模式図である。
【
図2】第一の再生骨材に再生用添加剤を添加した図を示すものであり、(a)はアスファルト再生骨材の図、(b)はアスファルト再生骨材に再生用添加剤を添加した従来例の図、(c)はアスファルト再生骨材に再生用添加剤を添加した実施形態の図である。
【
図3】従来方法と実施形態の方法で製造した再生アスファルト混合物の試験結果を示す表1である。
【
図4】従来例による再生アスファルト混合物の製造装置と製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による再生アスファルト混合物の製造装置1と製造方法について説明する。
先ず、再生アスファルト混合物Aを製造するために添加する再生骨材として、既設のアスファルト舗装の補修時や打ち換え時等に掘り起こしたアスファルト廃材を適当な大きさに破砕してアスファルト再生骨材を製造する。破砕されたアスファルト再生骨材は適宜範囲の粒径、例えば粒径13mm~0mmの範囲を有するとされている。そして、このアスファルト再生骨材は例えば6.3mmの網目の篩によって粒径5mm以下、即ち粒径5mm~0mmの第一の再生骨材(細骨材)aと、粒径13mm~5mm超の第二の再生骨材(粗骨材)bとに分級するものとする。これら第一の再生骨材a及び第二の再生骨材bには旧アスファルト量が3質量%以上含まれている。
【0019】
図1は本発明の実施形態による再生アスファルト混合物Aの製造装置1を示すものである。再生アスファルト混合物Aの製造装置1は、新規のアスファルトcを収容して加熱可能なアスファルト貯蔵サイロ2と、アスファルトcと再生用添加剤dと第一の再生骨材aとを加熱混合するための混合釜3とを備えている。混合釜3は内部にアスファルトcと再生用添加剤dと第一の再生骨材aとを攪拌するための攪拌羽根4が内蔵されている。混合釜3内に投入する新規のアスファルトcは全体量の5~20%程度であることが好ましい。なお、再生用添加剤dに代えて、或いは再生用添加剤dと共に施工性改善剤を添加してもよい。
【0020】
本実施形態による再生アスファルト混合物Aの製造方法では、最初に加熱されたアスファルトcと再生用添加剤dとを混合釜3内に投入して加熱しながら攪拌混合し、その後に第一の再生骨材aを混合釜3内に投入して更に所定時間攪拌混合することで全体に均一なアスファルトモルタルeを製造するものとする。或いは、混合釜3内に再生用添加剤dと第一の再生骨材aとアスファルトcを同時にまたは前後して投入して、攪拌羽根4で混合してもよい。
アスファルトモルタルeを製造する工程における混合釜3内での混合時間は、10分以上、例えば10分から1時間程度とする。後述するミキサー8とは別に再生用添加剤d及び/または施工性改善剤と第一の再生骨材aとアスファルトcを攪拌羽根4で従来よりも長時間混合することで、アスファルトと第一の再生骨材に再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を十分しみこませて均一に混ぜることができる。
【0021】
新規のアスファルトcとして、例えばストレートアスファルトやブローンアスファルト、ゴムやポリマーなどを添加した改質アスファルト等の一般的に舗装に用いられるものを採用できる。
また、再生用添加剤dは、アスファルト廃材である旧アスファルトc1に柔軟性等の性状を回復させる効果のある添加剤であり、鉱油等の石油潤滑油系のものが挙げられ、例えばRDEX(JXTGエネルギー株式会社製)、RJ-1(三徳アスリード株式会社製)、RJ-T(竹中産業株式会社製)等がある。再生用添加剤dの成分は飽和分、芳香族分、レジン分を含んでいる。再生用添加剤dの添加量は第一の再生骨材aの全質量に対して0.1質量%以上であることが好ましい。
【0022】
また、施工性改善剤は、再生アスファルト混合物Aの施工性を改善させる添加剤であり、具体的には再生アスファルト混合物Aの粘度を低下させることができる。そのため、スコップやレーキ等の舗装道具を用いた再生アスファルト混合物Aの敷き均し作業が容易になる。施工性改善剤として動植物油系や石油系が挙げられ、例えば脂肪酸系化合物、グリコールエーテル系化合物等がある。施工性改善剤の添加量は第一の再生骨材aの全質量に対して0.02質量%以上であることが好ましい。
また、再生用添加剤dと施工性改善剤の両方を用いる場合には、その比率によって各添加量が設定される。
【0023】
また、再生アスファルト混合物Aの製造装置1では、新規な粗骨材(砂利)f及び細骨材(砂)gを加熱するための第一のドライヤ5を備えている。また、上述した第二の再生骨材bを加熱するための第二のドライヤ6を備えている。第二の再生骨材bは粒径13mm~5mm超の範囲の粒径を有している。これら加熱された粗骨材f及び細骨材g、第二の再生骨材b、そして混合釜3で攪拌混合されたアスファルトモルタルeを投入して攪拌混合するためのミキサー8を備えている。
なお、粗骨材として第二の再生骨材bまたは新規の粗骨材fのどちらか一方だけ、または両方を投入することができる。また、細骨材として第一の再生骨材aを用いているため、新規の細骨材gは使用しなくてもよい。そのため、新規の粗骨材fは粒径5mm超以上であることが好ましい。更に残りの新規のアスファルトcをミキサー8に投入する。
【0024】
ミキサー8内の攪拌羽根9によって所定時間攪拌されることで得られた再生アスファルト混合物Aは、例えばダンプトラック11に投下されてアスファルト舗装の施工現場に搬送される。或いは、現場でミキサー8から直接、再生アスファルト混合物Aを排出して施工してもよい。
【0025】
ところで、第一の再生骨材a及び第二の再生骨材bからなるアスファルト再生骨材は、既設のアスファルト舗装の補修時や打ち換え時等に発生するアスファルト廃材を適切なサイズに破砕したものである。アスファルトcは飽和分、芳香族分、レジン分、アスファルテン(炭素)の4成分を含んでおり、再生を繰り返して古くなると飽和分が少なくなり、アスファルテンが多くなる特性を有する。これを旧アスファルトc1とする。アスファルト再生骨材には、骨材と骨材に付着した旧アスファルトc1を含んでいる。
しかも、この旧アスファルトc1の針入度(1/10mm)は20以上であることが好ましい。針入度は回収されたアスファルトの硬さを示す指標であり、針入度試験によって測定される。また、旧アスファルトc1の圧裂係数(MPa)は1.70以下であることが好ましい。圧裂係数はアスファルト再生骨材の粘弾性(粘り強さや軟らかさ)を表す指標であり、圧裂係数試験によって測定される。
【0026】
次に、本実施形態による再生アスファルト混合物Aの製造装置1を用いた製造方法について、
図1及び
図2を参照して説明する。
まず、前工程として、既設のアスファルト舗装の補修時や打ち換え時等に掘り起こしたアスファルト廃材を適当な大きさに破砕してアスファルト再生骨材を製造する。破砕されたアスファルト再生骨材の粒子は例えば粒径13mm~0mmの範囲とする。このアスファルト再生骨材には旧アスファルトが3質量%以上、通常では5~6質量%程度含まれている。
アスファルト再生骨材は、例えば
図2(a)に示す形状を有している。第一の再生骨材aまたは第二の再生骨材bからなる塊状の骨材kの表面に旧アスファルトc1と細骨材(砂)a1が付着して適宜厚さに被覆されている。このアスファルト再生骨材を例えば6.3mmの網目の篩によって、粒径0~5mm以下の第一の再生骨材aと粒径13mm~5mm超の第二の再生骨材bとに分級する。再生骨材を分級することで粒度が安定し、品質変動を抑制できる。
【0027】
分級に際して、アスファルト再生骨材を整流器や破砕機等に通すことでより多くの第一の再生骨材aを取り出すことができる。なお、アスファルト再生骨材を分級する際、必ずしも粒径5mmで分級しなくてもよく、例えば粒径6mm等でもよい。しかしながら、アスファルト再生骨材の粒径を5mmより大きくすると再生用添加剤dも増やす必要があり、5mm以下に設定したことで含有するアスファルトcが多くなるので再生用添加剤dを効率よく吸着できる。
【0028】
そして、アスファルト貯蔵サイロ2に収容された新規のアスファルトcの一部を加熱溶融したものを混合釜3内に投与すると共に、再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を混合釜3内に投入する。これら新規のアスファルトcと再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を攪拌羽根4によって攪拌混合することで再生用添加剤d及び/または施工性改善剤が均等に分散された再生用アスファルトを製造する。
そして、混合釜3内に粒径5mm以下の第一の再生骨材aを投入した後、再生用アスファルトと第一の再生骨材aとを攪拌羽根4によって例えば10分以上攪拌しながら加熱混合する。10分以上加熱混合することで再生用アスファルトと第一の再生骨材aは均一に混合される。これにより、アスファルトモルタルeを製造できる。アスファルトcは硫化水素やアルデヒド等の臭気成分を含むが、混合釜3内で加熱することで臭気が外部に漏出されにくくなる。
【0029】
再生用アスファルトに混合する第一の再生骨材aを粒径5mm以下にすることで再生用アスファルトとの混ぜ合わせ効率が良くなり、短時間で均一に混合できる。第一の再生骨材aは従来バーナー等で加熱した後、再生用アスファルトと加熱混合していたが、本実施形態では常温で混合する。なお、第一の再生骨材aは常温であるため加熱せずに保管できる。
粒径5mm程度でアスファルト再生骨材を分級することで第一の再生骨材aの分量が多くなり、効率的にアスファルトcと混合して1バッチでより効率的にアスファルトモルタルを製造できる。しかも、第一の再生骨材aは再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を吸着して混合効率が良く、熱劣化を受けにくく高品質でアスファルトモルタルの製造時間を短縮できる。
【0030】
ここで、
図2(a)に示すように、第一の再生骨材aは粒径5mm以下の骨材k(細骨材または粗骨材)の表面に旧アスファルトc1と細骨材a1が層状に付着している。従来の製造方法では、
図2(b)に示すように、第一の再生骨材aは骨材kの表面に付着し被覆された再生用添加剤d及び/または施工性改善剤が旧アスファルトc1内部に浸透するのに時間がかかる。そして、骨材kと旧アスファルトc1及び細骨材a1が熱で固くなり、再生用添加剤d及び/または施工性改善剤は表面に付着して被膜となり、旧アスファルトc1の内部には十分浸透しない。そのため、第一の再生骨材aは表面が滑り易くて動的安定度が小さく、その性状は十分回復しない。
【0031】
これに対し、本実施形態では、
図2(c)に示すように、第一の再生骨材aの表面に被覆された再生用添加剤d及び/または施工性改善剤が旧アスファルトc1内部に浸透して油分が多くなり軟らかくなる。この場合、再生用添加剤d及び/または施工性改善剤は第一の再生骨材aの骨材k内まで浸透する必要はないが、表面から旧アスファルトc1内部の深い所まで(好ましくは骨材kの表面まで)均一に混ざり合うため、再生アスファルト混合物Aの品質が向上する。
【0032】
また、混合釜3内で、新規のアスファルト、再生用アスファルトまたはアスファルトモルタルに、発泡剤を含む水溶液を添加して発泡させてもよい。発泡剤を添加して攪拌混合することで発泡材が発砲して容積を増大させてベアリングの役割を果たしてアスファルトを膨張させ、粘性を低減させて混合性が良くなる。
【0033】
混合釜3内で製造されたアスファルトモルタルeはミキサー8に投入される。
一方、新規骨材である粗骨材fは第一のドライヤ5で加熱される。また、粒径13mm~5mm超の粗骨材からなる第二の再生骨材bは第二のドライヤ6で加熱される。そして、新規の粗骨材fと第二の再生骨材bの一方または両方をミキサー8に投入し、石粉もミキサー8内に投入する。なお、新規の細骨材gは殆どミキサー8内に投入しないが、わずかに投入してもよい。また、不足分の新規のアスファルトcを加熱溶融してミキサー8内に投入する。
そして、これら新規の粗骨材f及び/または第二の再生骨材b等をアスファルトモルタルeとミキサー8内の攪拌羽根9で攪拌混合して、再生アスファルト混合物Aを製造する。ミキサー8内で再生アスファルト混合物Aを製造する際、フィラーとして例えば石粉等、一般的にアスファルト舗装に用いられる材料を投入することができる。
【0034】
上述したように、本実施形態による再生アスファルト混合物Aの製造装置1及び製造方法は、アスファルトcに再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を均一に混合させた再生用アスファルトに、粒径5mm以下の第一の再生骨材aを投入して10分以上混合してアスファルトモルタルeを製造する。
これにより、第一の再生骨材aの表面に付着した旧アスファルトc1に再生用添加剤d及び/または施工性改善剤が均等に浸透し、従来のものより第一の再生骨材aの柔軟性と耐久性を回復できるため、アスファルト舗装の骨材飛散、轍掘れやひび割れの起こりにくい耐久性の高い混合物を得られる。
【0035】
次に本実施形態と従来例の製造方法によって製造された再生アスファルト混合物Aの試験結果について説明する。
図1に示す実施形態による再生アスファルト混合物Aの製造方法で得られた再生アスファルト混合物Aと
図4に示す従来例によるアスファルト混合物の製造方法で得られた再生アスファルト混合物について、動的安定度と疲労破壊回数の試験を行った。動的安定度とはアスファルト混合物の流動抵抗を示す指標であり、ホイールトラッキング試験において供試体となるアスファルト舗装面が1mm変形する(轍掘れ)のに要する車輪の通過回数を表す値である。疲労破壊回数とは、アスファルト混合物に繰り返し曲げ応力を加えることで、繰り返し曲げ試験により疲労でひび割れするまでの回数を表す値である。
【0036】
その試験結果は、
図3の表1に示す通りである。
従来例では、動的安定度3706回/mm、疲労破壊回数9016回であるのに対し、実施例では、動的安定度7000回/mm、疲労破壊回数14910回となった。実施形態による再生アスファルト混合物Aは、舗装の轍掘れやひび割れが起こりにくく高い耐久性を得られた。
【0037】
なお、本発明による再生アスファルト混合物Aの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、上記実施形態の構成を適宜置換したり変更したりすることができる。以下に、本実施形態による再生アスファルト混合物Aとその製造方法の変形例について説明するが、上述した実施形態と同一または同様なもの等については同一の符号を用いて説明する。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、再生アスファルト混合物Aの製造方法において、加熱溶融した新規のアスファルトcと再生用添加剤d及び/または施工性改善剤との2種の材料を混合して再生用アスファルトを製造する第一の工程と、残りの1種の材料である第一の再生骨材aと再生用アスファルトとを加熱混合してアスファルトモルタルを製造する第二の工程と、からなる二段階の工程を経由することで、アスファルトモルタルを製造した。
【0039】
しかし、本発明はこのような方法に限定されない。例えば第一変形例として、アスファルトと再生用添加剤d及び/または施工性改善剤と第一の再生骨材aとを混合釜3に同時または順次投入して10分以上攪拌混合することでアスファルトモルタルeを製造してもよい。
或いは第二変形例として、第一の再生骨材aと再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を混合釜3内に先に投入して混合し、その後に加熱溶融された新規のアスファルトcを投入して10分以上攪拌混合してもよい。
【0040】
これら第一及び第二変形例による製造方法では、再生用添加剤d及び/または施工性改善剤を第一の再生骨材aの表面に均等に付着させた後に加熱溶融された新規のアスファルトcを攪拌混合できる。そのため、再生用添加剤d及び/または施工性改善剤は第一の再生骨材aの表面から旧アスファルトc1内部の深い所まで(好ましくは骨材kの表面まで)均一に混ざり合うため、再生アスファルト混合物Aの品質が均一になる。
【符号の説明】
【0041】
1 再生アスファルト混合物の製造装置
2 アスファルト貯蔵サイロ
3 混合釜
4、9 攪拌羽根
8 ミキサー
11 ダンプトラック
A 再生アスファルト混合物
a 第一の再生骨材
b 第二の再生骨材
c アスファルト
c1 旧アスファルト
d 再生用添加剤
e アスファルトモルタル
f 粗骨材
g 細骨材
k 骨材