(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】スチーマー
(51)【国際特許分類】
D06F 75/18 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
D06F75/18
(21)【出願番号】P 2019181323
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小俣 汐生
(72)【発明者】
【氏名】庭山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】高木 均
(72)【発明者】
【氏名】栗林 正人
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0020086(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2939809(FR,A1)
【文献】中国特許出願公開第103451900(CN,A)
【文献】特開2019-097751(JP,A)
【文献】特開2003-093799(JP,A)
【文献】特開2000-005497(JP,A)
【文献】実開昭56-120197(JP,U)
【文献】中国実用新案第205205527(CN,U)
【文献】米国特許第4843215(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 75/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留した液体を気化室に導き、前記気化室で気化したスチームを外部に噴出する本体を備えたスチーマーにおいて、
前記本体の外郭部材
が前記タンク
の一部を構成し、前記外郭部材に前記タンクと前後方向に並んで、前記タンクから水を前記気化室に送り出すためのポンプが収容され、
前記外郭部材は、前記ポンプを収容する収容部を有
し、
前記タンクと前記収容部の間であって、前記本体の腹部の下方には仕切壁を有し、
前記タンクは全体が前記仕切壁よりも前側に位置し、
前記外郭部材の側部であって、前記タンクを構成する部分に側部開口が設けられ、
前記タンクの構造部材として、前記側部開口を塞ぐタンク窓が設けられ、
前記側部開口と前記タンク窓との間が、溶着部で密閉され、
前記外郭部材の底部に底部開口が設けられ、
前記タンクの構造部材として、前記底部開口を塞ぐタンクベースが設けられ、
前記底部開口と前記タンクベースとの間が、溶着部で密閉され、
前記外郭部材が透明ではない色に着色され、前記タンク窓が透明部材で形成されていることを特徴とするスチーマー。
【請求項2】
前記ポンプの外形が筒状に形成され、前記スチーマーの前後方向に対して直交して横向きに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスチーマー。
【請求項3】
前記気化室が形成されるベースと、
前記ベースの上部から側部を覆うように設けられたベースカバーと、を備え、
前記外郭部材が前記ベースカバーを取り囲むように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスチーマー。
【請求項4】
前記タンクには、そこから前記液体を出し入れするための注液口が設けられ、
前記注液口を前記外郭部材と一体的に備えたことを特徴とする請求項1~
3の何れか一つに記載のスチーマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体から外部にスチームを噴出させて、衣類などのしわ伸ばしを行なうスチーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスチーマーとして、例えば特許文献1には、タンクに貯留した水を電磁ポンプにより加熱された気化室に導き、そこ気化室で気化したスチームをスチーム噴出口から外部に噴出するスチーム噴出器が開示されている。ここでのスチーム噴出器は、置台となるスタンドに着脱可能に載置されるスチーマーの本体として、本体の外観面を形成する外郭部材(筐体)の内部に、容器状のタンクが収容して設けられる。
【0003】
また別な特許文献2にも、本体の外郭部材となる左右のポット本体の内部に、容器状のタンクを収容したスチーマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-111279号公報
【文献】実用新案登録第3215613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のようなスチーマーで使用されるタンクは、スチーム噴出用の液体となる水を貯留するために、本来は独立した部品で構成されるもので、スチーマー本体の外郭部材の内部で、その外郭部材と干渉しないように配設されるのが一般的である。しかしそれでは、タンクの大きさが外郭部材の大きさ(外郭サイズ)により自ずと制約され、タンクの容量を効果的に増加させることができない問題があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、従来と同じ本体の外郭サイズでありながら、タンクの容量を効果的に増加させることが可能なスチーマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンクに貯留した液体を気化室に導き、前記気化室で気化したスチームを外部に噴出する本体を備えたスチーマーにおいて、前記本体の外郭部材が前記タンクの一部を構成し、前記外郭部材に前記タンクと前後方向に並んで、前記タンクから水を前記気化室に送り出すためのポンプが収容され、前記外郭部材は、前記ポンプを収容する収容部を有し、前記タンクと前記収容部の間であって、前記本体の腹部の下方には仕切壁を有し、前記タンクは全体が前記仕切壁よりも前側に位置し、前記外郭部材の側部であって、前記タンクを構成する部分に側部開口が設けられ、前記タンクの構造部材として、前記側部開口を塞ぐタンク窓が設けられ、前記側部開口と前記タンク窓との間が、溶着部で密閉され、前記外郭部材の底部に底部開口が設けられ、前記タンクの構造部材として、前記底部開口を塞ぐタンクベースが設けられ、前記底部開口と前記タンクベースとの間が、溶着部で密閉され、前記外郭部材が透明ではない色に着色され、前記タンク窓が透明部材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、タンクを本体の外郭部材とは別な部品で形成するのではなく、外郭部材と一体的に備えて同じ部品で形成することにより、タンクと外郭部材との二重構造を解消して、従来と同じ本体の外郭サイズでありながら、タンクの容量を効果的に増加させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態におけるスチーマーの全体写真である。
【
図2】同、スチーマー本体の一部を透視した正面図である。
【
図3】同、スチーマー本体の正面斜め左側から見た一部を透視した図である。
【
図4】同、
図2よりもさらに正面斜め左側から見たスチーマー本体の一部を透視した図である。
【
図5】同、スチーマー本体の一部を透視した左側面図である。
【
図6】同、外郭部材を正面から撮影した写真である。
【
図7】同、外郭部材の要部を底面から撮影した写真である。
【
図8】同、外郭部材を上面から撮影した写真である。
【
図9】同、外郭部材を左側斜め上方から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましいスチーマーの実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1~
図9は、本発明の一実施形態におけるスチーマーを示している。まず、
図1~
図5に基づいてスチーマーの全体構成を説明すると、本実施形態のスチーマーは、液体である水Wを加熱気化してスチームを外部に噴出するスチーマー本体1と、床面Sに置いた状態で使用され、スチーマー本体1を着脱可能に載置する耐熱樹脂製の置台2と、を主な構成要素とする。スチーマー本体1の後部には、家庭用のコンセント(図示せず)からスチーマー本体1への電力供給を可能にする電源プラグ付きコード3が設けられる。
【0012】
スチーマー本体1は、加熱手段としてヒータ(図示せず)を埋設した金属製のベース5を下部に備えている。ベース5の内部には、ヒータの近傍に位置して蒸気室すなわち気化室6が形成され、この気化室6に連通する複数のスチーム孔(図示せず)が、スチーマー本体1の底部をなすベース5の下面に開口形成される。また7は、ベース5の上部から側部を覆うように設けられた耐熱樹脂製のベースカバーである。ベースカバー7の上面後部側には、電源プラグ付きコード3の基端コード部や電磁ポンプ8などの電装部品9が取付け固定される一方で、ベースカバー7の下面側には、ヒータで加熱されるベース5が取付け固定される。つまりベースカバー7は、ベース5から電装部品9への熱影響を抑制する遮熱部材として機能する。
【0013】
11は、電装部品9を装着したベースカバー7を取り囲むように、スチーマー本体1に配設された外郭部材である。外郭部材11は単独の樹脂成型品で形成され、内部に形成した仕切壁12の前方には、スチーマー本体1の内部で水Wを貯留するタンク13を一体的に備える。また仕切壁12の後方には、スチーマー本体1の内部でタンク13と前後方向に並んで、電装部品9を収容するための部品収容部14を一体的に備える。タンク13の前方上部には、外郭部材11に開口形成した注水口15が設けられるが、それ以外の構成については、後ほど詳しく説明する。
【0014】
電磁ポンプ8は、タンク13からの水Wを気化室6に送り出すための電動のポンプとして、スチーマー本体1の内部に搭載される。ここでの電磁ポンプ8は一般的な電磁駆動式のポンプで、図示しないが電磁コイルの内部にプランジャー機構を設けて構成され、プランジャー機構が電磁コイルへの通断電によって往復動作することで、タンク13から吸い上げた水Wを気化室6に送り出せるようになっている。こうしたモータを使用しない電磁ポンプ8に代わって、例えばモータ駆動式のポンプを組み込んでもよい。ベースカバー7に組み込まれる電磁ポンプ8の外形は筒状に形成され、スチーマー本体1の前後方向に対して直交して横向きに配置される。そのため、電磁ポンプ8をスチーマー本体1の前後方向に沿って横向きに配置した場合と比べて、タンク13の前後方向の形状に自由度を持たせることができる。
【0015】
16は外郭部材11の上方に固定して設けられ、スチーマー本体1の側面から見て後端を開放した略U字状に形成された把手である。把手16の前方下部には、注水口15を手動で開閉可能にする注水口蓋17が設けられ、注水口蓋17を手前側に起こして注水口15を開けることで、ここからタンク13内に液体である水Wを収容したり、タンク13内の不要水を廃棄したりするようになっている。なお
図2~
図5では、スチーマー本体1を平坦な例えば床面Sに載置したときに、タンク13内に満水時の最大レベルで収容した水Wの状態を各々示している。
【0016】
把手16は、何れも樹脂製の把手ベース18と把手カバー19の二部品で構成され、スチーマー本体1の最上部に位置して、前方から後方に延びる棒状の握り部21が形成される。握り部21は、スチーマー本体1の腹部22との間に空洞23を有しており、握り部21の後部には、スチーマー本体1の後部から空洞23に手を差し入れて、握り部21を手で握ることができるように、空洞23に連通する開口部24が開口形成される。つまり、ここでの握り部21は、その後部がスチーマー本体1のどの部位にも連結せずに、開口部24を形成して開放した形状を有する。また、ここでいう腹部22とは、握り部21に対向したスチーマー本体1の平坦状の中央上面部を指すものであり、本実施形態では、把手ベース18の基部18Aとして形成される。把手ベース28は、この基部18Aの他に、基部18Aの前側でU字状に立ち上がる連結部18Bと、連結部18Bより後側に延び、握り部21の下面部を形成する延設部18Cとからなり、延設部18Cを把手カバー19で覆うことで、スチーマー本体1の握り部21が構成される。
【0017】
25はスチーマー本体1の上部に設けられた手動操作が可能な操作体で、本実施形態では、ベース5の温度設定と電源の入・切を兼用する上下動可能な第1操作ボタン25Aと、「スチーム」噴射の有無を切替える第2操作ボタン25Bと、を備えて構成される。第1操作ボタン25Aは把手16の上面側に露出して設けられ、第1操作ボタン25Aを押動操作するたびに、ベース5の温度設定と電源の状態が、例として「切」→「低」→「中」→「高」→「切」の順に切替わるようになっている。これに対して第2操作ボタン25Bは、把手16の上面側に露出して設けられ、図示しないサーミスタ等の温度検知手段で検知されたベース5の実際の温度が、第1操作ボタン25Aで設定されたベース5の温度に達した状態で、第2操作ボタン25Bを連続的に押動操作し続けると、その押している間だけ電磁ポンプ8が通常スチーム用の第1のモードで動作し、気化室6からスチーム孔を通してスチーム本体1の外部に適量のスチームが噴出(すなわち、「スチーム」噴射)される構成となっている。
【0018】
なお、ここでいう電源の「切」状態とは、スチーマー本体1の各部への電源電圧の供給を遮断した状態であり、それ以外のベース5の温度を「低」、「中」、「高」の何れかに設定した場合には、スチーマー本体1の各部に電源電圧が供給される電源の入状態に切替わる。また、第1操作ボタン25Aで切替できるベース5の温度設定は、「低」、「中」、「高」の3段階に限らず、何段階でも構わない。図示しないが、スチーマー本体1の内部には、操作体25からの操作信号と、温度検知手段からの検知信号を受けて、実際のベース5の温度が第1操作ボタン25Aで設定されたベース5の温度に維持されるように、ヒータを適宜通断電制御する温度制御装置が配設される。
【0019】
さらに本実施形態では、第1操作ボタン25Aによりベース5を所定の温度以上の「中」または「高」に温度設定した場合に、温度検知手段で検知されたベース5の実際の温度が、設定された「中」または「高」の温度に達した状態で、第1操作ボタン25Aと第2操作ボタン25Bを同時に操作すると、電磁ポンプ8が一時的に先程の第1モードとは別な増量スチーム用の第2モードで動作して、タンク13から気化室6に流れ込む水Wの流量が増加し、気化室6からスチーム孔を通して、スチーム本体1の外部にスチームが一時的に大量に噴出(すなわち、「ショット」噴射)される構成となっている。こうした「ショット」噴出の有無を専用の操作ボタンではなく、第1操作ボタン25Aと第2操作ボタン25Bとにより切替え操作できるようにすることで、スチーム本体1の限られたスペースに操作体25を無理なく配置できる。
【0020】
把手16の上部には、前述の操作体25よりも前方に位置して、前述の「低」の温度設定に対応した低温度表示部28Aと、「中」の温度設定に対応した中温度表示部28Bと、「高」の温度設定に対応した高温度表示部28Cと、からなる表示部28が視認可能に並んで配設される。それぞれの温度表示部28A~28Cは、第1色として例えば赤色に発光する第1発光素子と、第1色とは異なる第2色として例えば青色に発光する第2発光素子とを、把手16の内部に併設して構成される(何れも図示せず)。これらの発光素子は、例えば発光ダイオードで構成されるが、その他の電気信号を受けて発光する様々な発光素子を採用してもよい。
【0021】
そして、ベース5の実際の温度が第1操作ボタン25Aで設定された温度に達するまでは、その設定された温度に対応する温度表示部28A~28Cの何れかで、赤色に発光する第1発光素子が点滅表示され、ベース5の実際の温度が第1操作ボタン25Aで設定された温度に達すると、それまで赤色で点滅していた同じ第1発光素子が点灯表示に切替わる。これによりスチーマー本体1を利用するユーザーは、第1操作ボタン25Aでベース5をどの温度に設定し、且つベース5の実際の温度が設定した温度に達したか否かを直感的に視認できる。また、第1操作ボタン25Aによりベース5を「中」または「高」に温度設定した場合は、設定した温度に対応する中温度表示部28Bまたは高温度表示部28Cの第1表示素子が点灯状態に切替わった後に、第1操作ボタン25Aと第2操作ボタン25Bを同時に操作すると、それまで点灯状態であった第1表示素子に代わり、同じ中温度表示部28Bまたは高温度表示部28Cの青色に発光する第2表示素子が点灯状態に切替わる。この表示色の切替わりによって、ユーザーは第1操作ボタン25Aで設定したベース5の温度で、「ショット」噴射が行なわれていることを直感的に視認でき、それぞれの温度表示部28A~28Cに異なる発光色の発光素子を組み合わせることで、スチーム本体1の限られたスペースに少ない表示数でありながら、スチーマー本体1の動作状態をユーザーに的確に視認させることが可能になる。
【0022】
次に、タンク13とその周辺の構成について、
図6~
図9を併せて参照しながら詳しく説明する。前述のように、スチーマー本体1の外観側面を形成する外郭部材11は、その前方に水Wを貯留するタンク13を備えている。タンク13は、外郭部材11の仕切壁12とタンク側壁31とにより囲まれた筒状体33の上端となる外郭部材11の前方上部を、同じ部材である外郭部材11のタンク上壁32で一体的に隙間なく覆う一方で、筒状体33の下端となる外郭部材11の前方底部開口を、別な部材である板状のタンクベース34で塞ぐことで、水Wを収容する有底容器状の貯留空間35が形成される。特に
図7に示すように、筒状体33の下端とタンクベース34の周縁との間には、例えば超音波溶着により施された溶着部36が形成され、外郭部材11の前方底部の開口とタンクベース34との間が溶着部36で隙間なく密閉される。こうした溶着部36によるタンク13への溶着構造により、タンクベース34が外郭部材11の前方底部を完全に密閉して塞ぎ、貯留空間35に収容された水Wが、外郭部材11で形成されたタンク13の底部から漏出するのを確実に防止できる。
【0023】
タンク側壁31の左側前方には、外郭部材11とは別な部材であるタンク窓41を装着するための窓孔42が、タンク窓41の外形形状に合わせて、例えば縦長状に開口形成される。タンク窓41は、タンク窓41を通してタンク13内部の水Wのレベル(水位)を目視できる程度の透明度を有する透明部材で形成され、必要に応じて満水時の水位の目安となる水位線43がその表面に設けられる。特に
図9に示すように、タンク窓41の周縁と窓孔42との間には、例えば超音波溶着により施された溶着部44が形成され、タンク窓41と窓孔42との間が溶着部44で隙間なく密閉される。こうした溶着部44によるタンク13への溶着構造により、タンク窓41と窓孔42との間を完全に密閉して塞ぎ、貯留空間35に収容された水Wが、タンク窓41の周囲から漏出するのを確実に防止できる。また、外郭部材11をあえて透明部材にしなくても、外郭部材11とは別な部材のタンク窓41だけを透明部材に形成すれば、ユーザーはタンク13内部の水Wのレベルを支障なく視認でき、外郭部材11に対するデザイン性の自由度が増して、例えば外郭部材11を透明ではない任意の色に着色形成できる。
【0024】
なお、タンク窓41はタンク13内部の水Wのレベルを視認できる位置であれば、タンク側壁31のどの位置に設けてもよく、それに合わせて窓孔42も、タンク側壁31のどの位置に開口形成されてもよい。
【0025】
タンク上壁32の前方には、前述した注水口15を有する突出部45が、外郭部材11の一部として一体的に形成される。注水口15はタンク13の貯留空間35と直接連通しており、注水口蓋17を閉じたときに、注水口15と注水口蓋17との間から水Wが漏出しないように、外郭部材11よりも弾性に富むリング形状のパッキン46が注水口15の内周面に装着される。本実施形態ではタンク13の注水口15が外郭部材11に一体で設けられているため、従来のようにタンクの注水口と外郭部材の注水口とを別々に開口して設ける必要がなく、またその間に設けられていた水漏れを防ぐためのパッキン構造も廃止できる。
【0026】
次に、上記構成のスチーマーについてその作用を説明すると、スチーマー本体1に設けられた注水口蓋17を開閉して、所定量の水Wをタンク13の内部の貯留空間35に収容する。続いて、家庭用のコンセントに電源プラグ付きコード3の先端部を差し込み、そこからスチーマー本体1に電力を給電する。この状態で、第1操作ボタン25Aを押動操作して、給電直後の電源「切」状態から、スチームの噴出対象物となる布地などに合わせたベース5の温度に設定すると、スチーマー本体1の内部では、温度検知手段で検知される実際のベース5の温度が、第1操作ボタン25Aで設定したベース5の温度に近付くように、温度制御装置がヒータを通断電制御して、気化室6を含むベース5への加熱を開始する。このとき、実際のベース5の温度が設定したベース5の温度に達するまでは、その設定したベース5の温度に対応する温度表示部28A~28Cの何れかが赤色に点滅表示される。その後、実際のベース5の温度が上昇して、第1操作ボタン25Aで設定したベース5の温度に達すると、その旨をユーザーに知らせるために、設定したベース5の温度に対応する温度表示部28A~28Cの何れかが、赤色の点滅表示から赤色の点灯表示に切替わる。
【0027】
ここで、使用者となるユーザーが「スチーム」噴射機能を利用する場合は、握り部21を手で握ったまま、把手16の下側から指で第2操作ボタン25Bを連続して押動操作する。すると、第2操作ボタン25Bを操作している間は電磁ポンプ8が通常スチーム用の第1モードで動作して、スチーマー本体1がどの姿勢にあっても、タンク13の貯留空間35から水Wが強制的に吸い上げられる。したがってこの場合は、加熱した気化室6に送り出された水Wがそこで気化し、スチーム本体1の底面からスチーム孔を通して、衣類などに適量のスチームを噴出することができる。
【0028】
一方、ユーザーがドライ機能を利用する場合は、温度表示部28A~28Cの何れかが赤色の点灯表示になっている状態で、第2操作ボタン25Bから指を離すと、電磁ポンプ8の動作が停止して、タンク13の貯留空間35からから気化室6への水Wの送り出しが遮断される。したがって、この場合は全てのスチーム孔からスチームが噴出しないドライスチーマーとして、スチーマー本体1を使用できる。
【0029】
さらに、ユーザーが「ショット」噴射機能を利用する場合は、予め第1操作ボタン25Aによりベース5の温度を「中」または「高」に設定した後、実際のベース5の温度が設定した温度にまで上昇して、設定した温度に対応する中温度表示部28Bまたは高温度表示部28Cが赤色の点滅表示から赤色の点灯表示に切替わったら、第1操作ボタン25Aと第2操作ボタン25Bを同時に操作する。すると、今度は電磁ポンプ8が増量スチーム用の第2モードで一時的に動作して、スチーマー本体1がどの姿勢にあっても、タンク13の貯留空間35から水Wが強制的に吸い上げられると共に、タンク13から気化室6に流れ込む水Wの流量が、前述の「スチーム」噴射の場合よりも増加する。したがってこの場合は、スチーム本体1の底面からスチーム孔を通して、衣類などに一時的な大量のスチームを噴出することが可能となる。
【0030】
また、「ショット」噴射機能によるスチームの噴出中は、設定した温度に対応する中温度表示部28Bまたは高温度表示部28Cが赤色から青色の点灯表示に切替わるので、ユーザーは第1操作ボタン25Aで設定したベース5の温度で、「ショット」噴射が行なわれているのを直感的に視認できる。
【0031】
上述した「スチーム」噴射や「ショット」噴射の機能を利用するには、タンク13内の貯留空間35に所定量の水Wを収容しておく必要がある。本実施形態では、タンク13が独立した一つの部品としてではなく、タンクベース34とタンク窓41を除く殆どの部分で、スチーマー本体1の外観面を形成する外郭部材11と同じ部品で一体的に形成される。そのため、外郭部材11とタンク13との二重構造が解消され、従来と同じ外郭部材11のサイズでありながら、タンク13の容量を効果的に増加させることが可能になり、タンク13の内部に水Wを収容する手間を減らすことができる。
【0032】
また、タンク13の外郭部材11とは別部品で形成したタンクベース34は、溶着部36により外郭部材11の底部開口となる筒状体33の下端を隙間なく密閉して塞ぐように配設されている。そのため、タンク13の容量を効果的に増加させつつも、タンク13の底部からの水Wの漏出を確実に防ぐことができる。同様に、タンク13の外郭部材11とは別部品で形成したタンク窓41も、溶着部44により外郭部材11の側部開口となる窓孔42を隙間なく密閉して塞ぐように配設されている。そのため、タンク窓41の周囲からの水Wの漏出を確実に防ぐと共に、タンク窓41だけを透明部材に形成すれば、タンク13内部への視認性を損なうことなく、外郭部材11に対するデザイン性の自由度を拡げることが可能になる。
【0033】
以上のように、本実施形態のスチーマーは、タンク13に貯留した液体となる水Wを気化室6に導き、気化室6で気化したスチームを外部に噴出する本体としてのスチーマー本体1を備えており、このスチーマー本体1の外部に露出した外観面を形成する外郭部材11にタンク13を一体的に備えている。
【0034】
この場合、タンク13をスチーマー本体1の外郭部材11とは別な部品で形成するのではなく、外郭部材11と一体的に備えて同じ部品で形成することにより、タンク13と外郭部材11との二重構造を解消して、従来と同じスチーマー本体1の外郭サイズでありながら、タンク13の容量を効果的に増加させることが可能になる。
【0035】
また、スチーマー本体1の外郭部材11とタンク13とを一つの部品で形成することで、部品点数や組立工数の削減を達成して、スチーマーとしての設計を簡素化でき、タンク13と外郭部材11との間から水Wが漏れ出しているか否かの煩わしい確認の検査も不要になる。
【0036】
上記構成において、本実施形態では外郭部材11の側部となるタンク側壁31に、側部開口となる窓孔42が設けられ、タンク13の構造部材として、窓孔42を塞ぐ透明部材によるタンク窓41が設けられ、窓孔42とタンク窓41との間が、全周にわたって溶着部44で隙間なく密閉されている。
【0037】
この場合、タンク13の内部を視認するためのタンク窓41が、外郭部材11の窓孔42を密閉して塞ぐように、タンク13への溶着構造を施すことで、外郭部材11を透明部材にすることなく、タンク窓41だけを透明部材にして、スチーマー本体1のデザイン性を広げることが可能になる。また、タンク13の容量を効果的に増加させつつ、タンク13の側部からの水Wの漏出を確実に防止できる。
【0038】
また本実施形態では、外郭部材11の底部に底部開口となる筒状体33の下端が設けられ、タンク13の構造部材として、外郭部材11の底部開口を塞ぐタンクベース34が設けられ、外郭部材11の底部開口とタンクベース34との間が、全周にわたって溶着部36で隙間なく密閉されている。
【0039】
この場合、タンク13の底部を形成するタンクベース34が外郭部材11の底部開口を密閉して塞ぐように、タンク13への溶着構造を施すことで、タンク13の容量を効果的に増加させつつ、タンク13の底部からの水Wの漏出を確実に防止できる。
【0040】
さらに本実施形態のタンク13には、注液口となる注水口15が設けられていて、蓋となる注水口蓋17を開けたときに、注水口15からタンク13の内部に水Wを出し入れできるようになっており、タンク13の注水口15を外郭部材11と一体的に備えている。
【0041】
この場合、特にタンク13の注水口15を外郭部材11と一体的に備えることで、従来のようにタンクの注液口と外郭部材の注液口とを別々に開口して設ける必要がなく、またその間に設けられていた液漏れ防止用のパッキン構造も廃止して、設計上の複雑さを著しく改善できる。
【0042】
その他、本実施形態のスチーマーは、タンク13からの水Wを気化室6に送り出すためのポンプとなる電磁ポンプ8を、スチーマー本体1の内部に設けた部品収容部14に搭載している。
【0043】
この場合、スチーマー本体1にポンプ13を搭載することで、タンク13の形状にとらわれることなく、タンク13の内部に貯留する水Wをくみ上げて、気化室6に強制的に送り出すことが可能となり、スチーム本体1の外部への安定したスチームの噴出が実現可能となる。
【0044】
また、ポンプ13の外形は筒状に形成され、スチーマー本体1の前後方向に対して直交して横向きに配置されている。
【0045】
この場合、筒状のポンプ13をスチーマー本体1の前後方向に沿って横向きに配置すると、タンク13の前後方向の形状もその分制約を受けるが、スチーマー本体1の前後方向に直交して横向きに配置すれば、タンク13の前後方向の形状に対する制約が少なくなり、タンク13の容量をより効果的に増加させることが可能となる。
【0046】
以上、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。本発明の名称である「スチーマー」は、本体から外部にスチームを噴射して衣類などのしわ伸ばしを行なうあらゆる製品に適用され、例えば本体の底部でスチームの噴出と共にアイロン掛けを行なえるスチームアイロンなども、その範疇に含まれる。また、タンク13を含めた外郭部材11は、本実施形態で示した形状に限定されず、外郭部材11の形状に合わせて、外郭部材11に溶着されるタンクベース34やタンク窓41の形状なども適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 スチーマー本体(本体)
5 ベース
6 気化室
7 ベースカバー
8 電磁ポンプ(ポンプ)
11 外郭部材
12 仕切壁
13 タンク
14 部品収容部(収容部)
15 注水口(注液口)
22 腹部
34 タンクベース
36,44 溶着部
41 タンク窓
42 窓孔(側部開口)
W 水(液体)