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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】牽引支援装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240326BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20240326BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20240326BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/20 100
B60R1/26 100
B62D53/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020000575
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021111814
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 祐樹
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131638(JP,A)
【文献】特開2006-256544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0276078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0118860(US,A1)
【文献】特表2014-502582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0149040(US,A1)
【文献】特表2019-507974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/20
B62D 53/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車両を連結具で連結した牽引車両が後退する時に、前記被牽引車両の後方を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の撮像画像を表示する表示画面を備えるとともに、前記表示画面への接触位置を検出するタッチパネル機能を有するモニタ装置と、
前記撮像装置および前記モニタ装置に接続され、前記牽引車両の後退時に、前記モニタ装置の表示を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記表示画面上に、前記撮像画像を表示する撮像画像表示部と、操作用画像を表示する操作用画像表示部と、を設定する表示部設定処理部と、
前記操作用画像表示部に、前記牽引車両を示す車両モデルと、前記被牽引車両を示す被牽引車両モデルとを表示するモデル表示処理部と、
前記表示画面の前記操作用画像表示部に表示された前記被牽引車両モデルを移動させるタッチ操作を検出可能なタッチ操作検出部と、
前記被牽引車両モデルに対するタッチ操作の方向に応じて前記被牽引車両の移動方向を求め、前記被牽引車両の移動方向に基づいて前記撮像画像上の前記被牽引車両の移動方向を示す移動方向表示モデルを前記撮像画像と共に前記撮像画像表示部に表示する移動方向モデル表示処理部と、
を備え、
前記移動方向モデル表示処理部は、前記移動方向表示モデルとして、前記被牽引車両の左右の進行方向を表す矢印を前記撮像画像表示部に表示する牽引支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の牽引支援装置において、
前記モデル表示処理部は、前記牽引車両および前記被牽引車両を上方から見た状態を示す前記車両モデルおよび前記被牽引車両モデルを表示する牽引支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の牽引支援装置において、
前記タッチ操作に応じて、前記操作用画像表示部上の前記被牽引車両モデルを移動させる被牽引車両モデル移動表示処理部を備え、
前記被牽引車両モデル移動表示処理部は、前記タッチ操作に伴い、前記被牽引車両モデルを、前記連結具による連結点を中心とした回転動作として移動表示させる牽引支援装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の牽引支援装置において、
前記タッチ操作に応じて、前記操作用画像表示部上の前記被牽引車両モデルを移動させる被牽引車両モデル移動表示処理部を備え、
前記制御部は、後退時に、前記牽引車両と前記被牽引車両とがジャックナイフ現象を起こすジャックナイフ角度を算出するジャックナイフ角度算出部を備え、
前記被牽引車両モデル移動表示処理部は、前記被牽引車両モデルの移動量を、前記ジャックナイフ角度を超えない範囲に制限する牽引支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の牽引支援装置において、
前記制御部は、前記ジャックナイフ角度に基づいて、ジャックナイフ現象が発生しないトレーラ角を算出し、
前記モデル表示処理部は、ジャックナイフ現象が発生しないトレーラ角の領域を示す操舵許容範囲表示モデルを、前記操作用画像表示部の前記被牽引車両モデルに重畳して表示する牽引支援装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の牽引支援装置において、
前記表示画面および前記制御部は車載され、前記表示画面は、運転席よりも前方位置で、車両後方に向けて設置されている牽引支援装置。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の牽引支援装置において、
前記表示画面および前記制御部は、前記牽引車両と通信可能な車外の遠隔操作装置である牽引支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、牽引支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、車両の後部に取り付けた連結具に、トレーラなどの被牽引車両を連結して牽引する際の後退時に、操舵角の修正などの牽引支援を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には「後退移動中に車両-トレーラユニットを操作するシステムおよび方法は、車両の後部とトレーラの前部との間の相対位置を表す出力情報を生成する少なくとも1つのセンサ(12L、12R)を使用する。電子処理ユニット(22)は、測定された量を基準値と比較し、その比較から、トレーラが車両との直線状の整列から偏向しているかどうかを判断する。トレーラ(20)が車両(10)と一列に整列していない場合、システムは、車両のステアリングシステム(28)、トレーラのブレーキシステム、またはその両方に干渉する。センサは、距離センサまたはカメラであり、量は、距離またはマーカ位置である。比較用の基準値として、方法は、保存した値、または前もって測定した値、または同時に測定した値を使用する。方法は、自動で、または車両の運転者によって操作されたスイッチで作動される。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-502582
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、牽引車両が後退する時、牽引車両に対する被牽引車両の左右の移動方向と、牽引車両の転舵方向とは逆方向である。例えば、後退時に、牽引車両を右方向に操舵すると、連結点よりも前方の牽引車両の後端部が連結点に対して右方向に移動し、被牽引車両は連結点に対し左方向に移動する。したがって、後退時に被牽引車両を牽引車両の左方向(これを目標方向とする)に後退させたい場合、まず、牽引車両を、目標方向とは逆方向の右方向に操舵し、被牽引車両の後端部を目標方向に向ける。その後、操舵方向を中立方向に戻し、牽引車両の向きを被牽引車両と同じ方向に向ける、というような操舵を行うことになる。
【0006】
さらに、後退時には、牽引車両に対する被牽引車両の左右の移動方向と、モニタの表示画面上での被牽引車両の左右の移動方向が逆転する。例えば、被牽引車両を牽引車両の左方向に移動させたい場合、スライダを左方向にスライドさせて移動方向を指示することになるが、その際、ステアリングホイールは、後退初期は右方向に操舵し、モニタの画面上では被牽引車両が右方向に移動することになる。
【0007】
このように、スライダの操作方向および実際の被牽引車両の移動方向に対し、ステアリングホイールの操舵方向やモニタの画面上の被牽引車両の移動方向が異なるため、運転者が、被牽引車両が指示通りに移動しているのかどうか把握し難い。
【0008】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたもので、後退時に、運転者が被牽引車両の進行方向を指示し易く、操舵の方向やモニタ装置の表示画面上で被牽引車両の移動方向をより把握しやすい牽引支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対して、本開示の牽引支援装置は、撮像装置と、モニタ装置と、制御部とを備える。撮像装置は、被牽引車両を連結具で連結した牽引車両が後退する時に、前記被牽引車両の後方を撮像する。モニタ装置は、前記撮像装置の撮像画像を表示する表示画面を備えるとともに、前記表示画面への接触位置を検出するタッチパネル機能を有する。制御部は、前記撮像装置および前記モニタ装置に接続され、前記牽引車両の後退時に、前記モニタ装置の表示を制御する。
【0010】
そして、制御部は、表示部設定処理部と、モデル表示処理部と、タッチ操作検出部と、被牽引車両モデル移動表示処理部と、移動方向モデル表示処理部とを備える。
表示部設定処理部は、前記表示画面上に、撮像画像を表示する撮像画像表示部と、操作用画像を表示する操作用画像表示部と、を設定する。
モデル表示処理部は、操作用画像表示部に、牽引車両を示す車両モデルと、被牽引車両を示す被牽引車両モデルとを表示する。
タッチ操作検出部は、表示画面の操作用画像表示部に表示された被牽引車両モデルを移動させるタッチ操作を検出する。
被牽引車両モデル移動表示処理部は、タッチ操作に応じて、操作用画像表示部上の被牽引車両モデルを移動させる。
移動方向モデル表示処理部は、被牽引車両を牽引車両に対しタッチ操作方向に応じて移動させる際、撮像画像上の被牽引車両の移動方向を求め、撮像画像上の被牽引車両の移動方向を示す移動方向表示モデルを撮像画像と共に撮像画像表示部に表示する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の牽引支援装置によれば、操作用画像表示部に表示した被牽引車両モデルに対して移動方向をタッチ操作により入力すると、タッチ操作に応じて被牽引車両モデル移動表示処理部が、操作用画像表示部において被牽引車両モデルを車両モデルに対して移動させる。
したがって、操作者は、牽引車両に対する被牽引車両の動きを、直感的に入力することができ、操作性に優れる。
【0012】
しかも、移動方向モデル表示処理部は、被牽引車両モデルを用いたタッチ操作に応じて、モニタ装置の表示画面の撮像画像上における被牽引車両の移動方向を、移動方向表示モデルにより表示する。このため、被牽引車両を移動させる前の時点で、操作方向と表示画面上の被牽引車両の移動方向との関連性を把握することができ、例えば、モニタ装置が運転席や車外に配置されていても、被牽引車両の移動方向を正確に把握し易い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態1の牽引支援装置を備えた牽引車両、および、この牽引車両に連結されたトレーラを示す側面図である。
図2図2は、連結具を示す斜視図である。
図3図3は、ジャックナイフ現象とトレーラ角を説明するための牽引車両およびトレーラの平面図である。
図4図4は、実施の形態1の牽引支援装置の概要を示すブロック図である。
図5A図5Aは、実施の形態1の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像を表示した例を示す図である。この図では、トレーラのトレーラ角が0度の状態を示している。
図5B図5Bは、実施の形態1の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像を表示するとともに、スワイプ操作した例を示す図である。この図では、図5Aの状態からトレーラモデルを右方向にスワイプ操作した状態を示している。
図5C図5Cは、実施の形態1の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像を表示するとともに、スワイプ操作した例を示す図である。この図では、図5Bの状態からトレーラモデルをさらに右方向にスワイプ操作した状態を示している。
図5D図5Dは、実施の形態1の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像を表示するとともに、スワイプ操作した例を示す図である。この図では、図5Aの状態からトレーラモデルを左方向にスワイプ操作した状態を示している。
図5E図5Eは、実施の形態1の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像を表示するとともに、スワイプ操作した例を示す図である。この図では、図5Dの状態からトレーラモデルを右方向にスワイプ操作して戻した状態を示している。
図6】実施の形態1の牽引支援装置の全体を示すブロック図である。
図7図7は、ジャックナイフ角度と、ジャックナイフ角度を生じない操舵範囲と、警報角度との関係を示す図である。
図8図8は、ジャックナイフ角度およびトレーラ角速度を算出するための関係式に代入する牽引車両およびトレーラのパラメータを示す平面図である。
図9図9は、図8に示した関係式のゲインを求めるためのマップを示す図である。このうち、(a)はトレーラ速度閾値、(b)はトレーラ加速度閾値、(c)は転舵角閾値、(d)はトレーラ角速度閾値を求めるためのマップである。
図10図10は、操舵可能領域の説明図であり、(a)は操舵可能領域を狭める前を示す図、(b)は操舵可能領域を操舵制限角近傍まで狭めた状態を示す図である。
図11図11は、トレーラ角と操舵角との関係を示すグラフである。このうち、(a)はトレーラ角の経時的な変化を示すグラフ、(b)は操舵角の経時的な変化を示すグラフである。
図12図12は、切り増しの際の操舵の状態を示す図である。このうち、(a)は切り増しの前(時刻t1)の状態、(b)は切り増し中(時刻t2)の状態である。
図13図13は、後退操作制御部のブロック図である。
図14図14は、後退操作制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図15図15は、実施の形態2の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像の表示例を示す図である。
図16図16は、実施の形態3の牽引支援装置において、操作用画像表示部に操作用画像の表示例を示す図である。
図17図17は、実施の形態4の牽引支援装置の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
(実施の形態1)
以下に、実施の形態1の牽引支援装置Aについて説明する。
実施の形態1の牽引支援装置Aは、図1に示す牽引車両1に搭載されている。
(牽引車両の説明)
まず、牽引車両1について簡単に説明する。
牽引車両1は、車体後部に連結具2を備え、被牽引車両であるトレーラ3を連結可能である。
【0015】
牽引車両1は、運転手が運転する機能に加え、運転を支援する機能、または、乗員に代わって自動で運転を行う機能を備える(運転支援車や自動運転車など)。また、運転支援や自動運転のために、牽引車両1は、図6に示す自動ブレーキシステム21および自動操舵システム22を備える。
【0016】
自動ブレーキシステム21は、不図示の制動装置の制動作動を制御するものである。自動ブレーキシステム21は、周知のように、不図示の自動運転制御装置および車載センサからの入力に基づいて制動力を制御する。そして、後退支援時、自動ブレーキシステム21は制御部11のブレーキ操作部44などからの指令に基づいて制動力を制御する。
【0017】
自動操舵システム22は、周知のように、不図示のステアリングホイールあるいは転舵輪を回転させるモータなどのアクチュエータを備え、不図示の自動運転制御装置からの入力に基づいて、転舵輪(前輪1a)を転舵させる。そして、後退支援時、自動操舵システム22は、制御部11の操舵規制部53などからの指令に基づいて転舵輪を転舵させる。
【0018】
図1に戻り、連結具2は、牽引車両1の車幅方向の中央で、リヤバンパ1dの下方の不図示のフレームに連結され、リヤバンパ1dから車両後方に突出されている。また、連結具2の先端には、球状のヒッチボール2a(連結点)を備え、このヒッチボール2aにトレーラ3に固定された連結部材31の先端部に設けられたカプラが覆い被さって連結可能となっている。これにより、牽引車両1とトレーラ3とが連結され、かつ、トレーラ3は、ヒッチボール2aを中心に旋回可能である。旋回方向は、牽引車両1に対して車幅方向である左右方向である。
【0019】
なお、トレーラ3を連結した牽引車両1は、通常の牽引車両1とは挙動が異なるため、運転には慣れが必要である。例えば、牽引車両1とトレーラ3との間には、牽引車両1の加速時や減速時などに、トレーラ3の慣性によって、トレーラ3と牽引車両1との間に速度差や角度変化が生じる。これにより、牽引車両1とトレーラ3とが大きく「く」の字状(またはL字状)に折れ曲がるいわゆるジャックナイフ現象が発生する可能性があるため、運転時には、ジャックナイフ現象が発生しないように注意する必要がある。特に、牽引車両1の運転は、後退する場合が難しい。例えば、図3に示すように、牽引車両1とトレーラ3とが成す角度(トレーラ角γ)がある程度以上の大きさ(ジャックナイフ角度θjk)となったジャックナイフ現象が生じるとトレーラ3が動かなくなってしまう。
【0020】
なお、トレーラ角γは、(牽引車両1を基準とする)車両前後方向Xの向きを0度としたトレーラ3の左右(車幅方向Y)の振れ角として表わすことができる(例えば、右側を+の角度、左側を-の角度などとする(なお、+と-は逆でもよい))。そして、扇形の範囲の内側が、ジャックナイフ角度θjk未満のジャックナイフ現象を発生しない範囲(後述する許容操舵領域Ta)となる。
【0021】
(牽引支援装置の説明)
実施の形態1の牽引支援装置Aは、後退の際に、モニタ装置12を用いて、運転者の後退指示の支援を行うとともに、牽引車両1がジャックナイフ現象に陥らないように支援を行う。すなわち、本実施の形態1では、運転者は、少なくともタッチ操作を行い、牽引支援装置Aは、タッチ操作に基づく操舵および制動を行う後退支援を行う。
【0022】
この牽引支援装置Aは、図4に示すように、カメラ23A、カメラ23B、信号処理装置24、制御部11、モニタ装置12を備え、かつ、上述した自動ブレーキシステム21の一部および自動操舵システム22の一部が含まれる。
【0023】
カメラ23Aは、主に牽引車両1を制御する際に使用するカメラである。図1に示すように、牽引車両1の車体後部に、トレーラ3および連結具2を撮像可能な位置に取り付けられている。なお、カメラ23Aに加えて、レーダーセンサ(Lidar)や、ミリ波センサ(Miliwave)など、トレーラ3の周辺状況を検知する装置を設けることも可能である。カメラ23Bは、被牽引車両であるトレーラ3のリアに相当する位置に取り付けられている。カメラ23Bは、有線通信または無線通信によって制御部11またはモニタ装置12と通信可能である。
【0024】
図4に戻り、信号処理装置24は、カメラ23A、カメラ23Bからの信号を処理して制御部11へ渡すための装置である。信号処理装置24は、制御部11の外部構成として設けたり、制御部11の内部機能として設けたりすることができる。
【0025】
モニタ装置12は、牽引車両1の不図示の運転席の近傍において、運転者が操作可能な位置に配置されている。なお、モニタ装置12は、牽引支援装置Aに専用のものを設けてもよいし、牽引車両1に設置されている他の電子機器(例えば、モニタを有する計器装置やカーナビゲーションシステムや車載テレビやドライブレコーダ、スマートフォン、タブレット端末)などのものを流用してもよい。
【0026】
そして、モニタ装置12は、図6に示すように、表示画面120と、スピーカ36と、タッチパネル27とを備える。そして、牽引車両1を後退させる際の操作時には、図5A図5Cに示すように、表示画面120の撮像画像表示部としてのカメラ画像表示部121に、カメラ23Bが撮像したトレーラ3の後方を撮影した映像(動画)を表示する。また、モニタ装置12は、タッチパネル27を備え、タッチパネル27は牽引支援制御に関する入力を受付可能である。牽引車両1が後退する時、表示画面120の操作用画像表示部122におけるタッチ操作を牽引支援制御の入力として使用する。詳細は後述する。
【0027】
制御部11は、牽引車両1が後退する時の支援として、後退方向の指示に関する入力を支援するとともに、トレーラ3を、ジャックナイフ現象を発生させることなく目標位置に後退させるための支援を行うものである。以下に制御部11について説明する。
【0028】
(制御部の構成)
まず、制御部11の構成を説明する。
制御部11は、主に、牽引車両1に搭載されたコンピュータなどの演算制御装置と、演算装置にインストールされた制御ソフトによって構成され、トレーラ3と牽引車両1の後退支援するために必要となる各種の制御量を算出することができるようになっている。
【0029】
制御部11は、図6に示すように、トレーラ角算出部34、警報角算出部15、操舵制限角算出部62、メモリ25、操舵規制部53、ブレーキ操作部44、重畳表示部17、警報発生部18、入力部28、後退操作制御部200を備える。
【0030】
トレーラ角算出部34は、カメラ23Aからの情報を入力して画像認識処理やデータ解析処理などを行うことでトレーラ角γを算出する。ここで、トレーラ角γは、図8に示すように、牽引車両1とトレーラ3との折れ角のことであり、連結具2のヒッチボール2aを通る牽引車両1の幅方向の中心線と、トレーラ3幅方向の中心線とが成す角度のことである。トレーラ角γは、時々刻々と変化する値であり、トレーラ角算出部34によって算出される。
【0031】
トレーラ角γは、トレーラ角速度ωを経過時間で積分することによって算出することもできる。なお、トレーラ角速度ωは、連結具2のヒッチボール2aを中心とするトレーラ3の回転運動の速度のことで、時々刻々と変化する物理量である。
【0032】
ここで、トレーラ角速度ωは、距離D、距離W、距離Lのパラメータや、車速Vや、転舵角δなどを関係式(図8の式2)に代入することで算出される。関係式中の距離Dは、連結具2のヒッチボール2a(連結点)からトレーラ3の従動輪3a(の中心)までの距離である。また、距離Wは牽引車両1の前輪1a(の中心)と後輪1b(の中心)との間の距離(ホイールベース)である。また、距離Lは牽引車両1の後輪1b(の中心)から連結具2のヒッチボール2a(連結点)までの距離、δは牽引車両1の転舵角、γcはジャックナイフ角度θjkである。
【0033】
次に、ジャックナイフ角度θjkおよび後述する警報角度θkについて説明する。
ジャックナイフ角度θjk(Jackknife angle)は、例えば、牽引車両1およびトレーラ3の各パラメータ(車両諸元)を、線形幾何学的な関係式(式1)に代入することによって算出される。
【0034】
この実施の形態1では、牽引車両1の前輪1aが操舵輪である。距離D、W、Lなどのパラメータを、例えば、モニタ装置12のタッチパネル機能を用いて入力部28から入力して、メモリ25に記憶させておくことができる。ジャックナイフ角度θjkは、その牽引車両1およびトレーラ3にとって固有の値(固定値)である。ジャックナイフ角度θjkは、車両前後方向Xの両側に、同じ角度で左右対称に存在する。ジャックナイフ角度θjkは、制御部11の内部で算出したものを用いてもよい。制御部11に、専用のジャックナイフ角度算出部を設けることができるが、本実施の形態1では、後述する警報角算出部15にジャックナイフ角度θjkを算出する構成としている。また、個体差などにより、算出した値と、画像やセンサの検出した値とが異なる場合は、計算式を補正する調整(キャリブレーション)を行う。
【0035】
警報角算出部15は、ジャックナイフ角度θjkに基づいて、牽引車両1の車速、加速度、操舵角およびトレーラ角速度ωの少なくとも1つを用い、牽引車両1やトレーラ3の時々刻々と変化する状態に応じた最適な警報角度θkを逐次算出する。
【0036】
なお、車速は、牽引車両1やトレーラ3に設けられた車速センサなどから得ることができる。加速度は、牽引車両1やトレーラ3に設けられた加速度センサなどから得ることができる。操舵角は、牽引車両1のステアリングホイールの切れ角のことである。操舵角は、牽引車両1の舵角センサなどから得ることができる。なお、この実施の形態1では、転舵角と操舵角とは、実際の確度は異なるが同様のものとして取扱っている。
【0037】
警報角度θkは、トレーラ角γがジャックナイフ角度θjkに近いことを意味する角度である。ジャックナイフ現象を発生させないため、警報角度θkは、図7に示すように、ジャックナイフ角度θjkよりも内側に設定される。また、警報角度θkは、固定値としてもよいが、牽引車両1やトレーラ3の状況に応じて経時的に変化する可変値とすることが、好ましい。警報角度θkの詳細については、後述する。
【0038】
ここで、図7に基づいて、許容操舵領域Ta、内側領域Rins、警戒領域Aaについて説明する。図7において扇形で示された許容操舵領域Taは図3における許容操舵領域Taと同様である。図7において点線で示した基準線Oは、牽引車両1の幅方向を等分する中心線であり、連結具2の延長線上にある。ジャックナイフ角度θjk及び警報角度θkは基準線Oを挟んで左右対称に存在する。
【0039】
図7において、ジャックナイフ角度θjkを2倍した角度θjkで広がる扇形は、ジャックナイフ現象を引き起こさない許容操舵領域Taである。図7において、基準線を挟んで左右対称に存在する警報角度θkは、ジャックナイフ角度θjkよりも小さく設定される。図7において、警報角度θkを2倍した角度θjkで広がる扇形は内側領域Rinsである。この内側領域Rinsは、ジャックナイフ現象を発生させることなく操舵できるジャックナイフ非発生領域であり、警報が発生されない非警戒領域となる。
【0040】
そして、図7において、許容操舵領域Taから内側領域Rinsを引いた範囲は、ジャックナイフ現象に陥る寸前の警戒領域Aaである。
【0041】
次に、前述した警報角算出部15により算出する警報角度θkについて説明する。
警報角度θkは、例えば、ジャックナイフ角度θjkに、車速や、加速度や、操舵角や、トレーラ角速度ωなどから得られたゲインを乗算することで得ることができる。すなわち、警報角度θkは、牽引車両1とトレーラ3の状況に応じて変化する値である。
【0042】
警報角度θk = ジャックナイフ角度θjk X ゲイン
ゲインは、1よりも小さな値となるように作成される。ゲインは、例えば、「マップ値/実際の値」などの式によって求めることができる。この式は、分母(実際の値)が大きくなるに従ってゲイン(および警報角度θk)が小さくなり、分子(マップ値)が大きくなるに従ってゲイン(および警報角度θk)が大きくなるように作られている。
【0043】
具体的には、ゲインを求める式は、
「車速のマップ値/実際の車速の値」
「加速度のマップ値/実際の加速度の値」
「操舵角のマップ値/実際の操舵角の値」
「トレーラ角速度ωのマップ値/実際のトレーラ角速度ωの値」などの少なくともいずれかとなる。
【0044】
マップは、例えば、図9(a)~(d)に示すように、横軸を現在のトレーラ角γとし、縦軸を上記した変化される物理量の閾値として、例えば、比例的に増加する一次関数などとなるように設定される。マップ値は、マップによって得られた値のことである。マップ値は、現在のトレーラ角γにおける関数の値(例えば、トレーラ速度閾値、トレーラ加速度閾値、転舵角閾値、トレーラ角速度閾値などの各閾値)として求められる。各物理量から得られたゲインは、例えば、互いに乗算されて1つのゲインとされる。例えば、ジャックナイフ角度θjkが30度で、ゲインが0.83・・となった場合、警報角度θkは(30X0.83・・=)25度になる。
【0045】
上記したような牽引支援装置Aの基本的な構成は、主に、乗員が運転する牽引車両1に適用されるが、運転支援車および自動運転車に対しても適用することができる。
【0046】
制御部11は、牽引車両1に備えられた自動操舵システム22へ、牽引車両1の操舵可能領域を警報角度θkの内側領域Rins内(図7)に規制する操舵可能領域規制信号Ssrを送る操舵規制部53(図6)を備えてもよい。
【0047】
ここで、操舵可能領域は、操舵が可能な領域のことであり、通常の場合には、牽引車両1の左右の最大操舵角の範囲内である。この実施の形態1では、後退時の操舵可能領域は、警報角度θkの内側領域Rinsと同じとするが、内側領域Rinsよりも狭い範囲内に収まるように操舵角が自動的に規制されるようにしてもよい。これにより、警報角度θkを超えるような操舵や自動操舵ができなくなる。
【0048】
なお、操舵可能領域は、ジャックナイフ角度θjkを超えない範囲(許容操舵領域Ta)まで操舵角を規制するように構成することも可能である。
【0049】
次に、後退時の支援における自動操舵システム22による操舵について説明する。
牽引車両1に対する後退支援では、切り増しと呼ばれる操舵(図11(b)の領域64における操舵)が行われる。切り増しについての情報は、例えば、通信によって自動操舵システム22や後退支援システムから制御部11へ送らせるようにすることができる。
【0050】
すなわち、自動操舵システム22や後退支援システムによる後退支援では、例えば、図11(a)に示すように、トレーラ角γの向きを変更するとき(つまり、トレーラ角γの符号を変えるとき)に、より早くトレーラ角γを変えられるように、図11(b)に示すような、変更前の方向と同じ方向への操舵を行う(同じ側に一旦大きく切ってから反対側へ戻す)切り増しと呼ばれる特殊な操舵が行われる。なお、図11(a)中の実線は制御上のトレーラ角である目標トレーラ角θtを示し、破線は、トレーラ角γの実際の変化を示している。また、図11(b)は、トレーラ角γを図11(a)のように変化させるための操舵角の変化を示している。このような操舵角変化において、領域64の変化である切り増しは、比較的頻繁に行われている。
【0051】
そして、このような切り増しを行う際には、全体としての操舵量が大きくなったり操舵方向が急激に変化されたりすることで、トレーラ3が大きく振られるなどして、ジャックナイフ現象に陥るおそれがある。この切り増しの際の操舵量は、トレーラ角γを変える角度(目標トレーラ角θt(図11(a)))ごとに異なる。なお、トレーラ角γを変える目標トレーラ角θtは、牽引車両1やトレーラ3の状況に応じて時々刻々と変更するものである。本実施の形態において、目標トレーラ角θtは、乗員がタッチパネル27などを用いて制御部11の入力部28へ入力したトレーラモデルM3へのスワイプ方向に基づいて算出される。
【0052】
操舵制限角度は、目標トレーラ角θtへ向かうトレーラ角γの急激な角度変化を制限するために現在のトレーラ角γと目標トレーラ角θtとの間に設定されるトレーラ3の角度である(制限目標トレーラ角)。
【0053】
そのため、操舵制限角度までの操舵しかできなくなるので、図10(a)に示すような自動操舵システム22による操舵可能領域51は、実質的に図10(b)に示すような操舵制限角度線61までの範囲(制限領域63または操舵可能制限領域)に狭められる。操舵制限角度によって操舵可能領域51の目標トレーラ角θt側の部分が制限されることで、図10(a)のように左右対称となっている操舵可能領域51は、図10(b)のような左右非対称の制限領域63になる。なお、制限領域63は、操舵制限角度よりも若干(例えば、3度~5度程度)目標トレーラ角θt側に広めに設定してもよい。また、モニタ装置12には、左右非対称の制限領域63を表示させるようにするのが好ましいが、操舵制限角度による操舵制限がかかる前の操舵可能領域51をそのまま表示させてもよい。
【0054】
なお、図10(a)および図12(a)は、図11中の最後に行われる切り増し(領域64)の場合の、時刻t1(切り増しの直前)に対応するものであり、図10(b)および図12(b)は、図11の時刻t2(切り増しの途中)に対応するものである。そして、最後に行われる切り増し64の場合には、直前の時刻t1で、目標トレーラ角θt1とその時点でのトレーラ角γとが一致しているのに対し、時刻t2では、目標トレーラ角θt2が0度とされ、操舵制限角度は、0度よりも大きい、目標トレーラ角θt2とトレーラ角γとの間の値となっている。転舵角δは、時刻t1に対し時刻t2では目標トレーラ角θt2と反対側へ大きく切られている(δ(t1)→δ(t2))。
【0055】
具体的な操舵制限角度は、どのように設定してもよいが、例えば、下記の式を用いて算出できる。
操舵制限角度=(ジャックナイフ角度θjk-現在のトレーラ角γ)-目標トレーラ角θt
【0056】
このような式を用いて操舵制限角度を算出することで、操舵制限角度を目標トレーラ角θtよりも小さな操舵量に抑えることができる。操舵制限角度は、狭められた制限領域63および連結具2の周辺の表示と共に、例えば、赤線などによってモニタ装置12に表示させることができる。但し、操舵制限角度線61は、赤線に限るものではない。なお、目標トレーラ角θtは、表示させても、表示させなくてもよい。この実施の形態1では、目標トレーラ角θtは、必要な場合以外は、特に表示させないようにしている。
【0057】
操舵制限角算出部62は、操舵規制部53へ算出した操舵制限角度を送って、牽引車両1の操舵可能領域51を、操舵制限角度によって狭められた制限領域63内に制限するための制御部11の機能部分である。操舵規制部53は、牽引車両1の自動操舵システム22と通信を行って、自動操舵システム22に対し、狭められた制限領域63内に限定した自動操舵を行わせるための操舵可能領域規制信号Ssrを送る制御部11の機能部分となる。
【0058】
このような操舵制限角算出部62および操舵規制部53を備えることにより、牽引車両1を制限領域63の範囲内に制限して後退させる(すなわち、切り増し64を行ってもジャックナイフ現象に陥ることがないように緩やかな操舵で牽引車両1を後退させる)ことが可能になる。なお、このような制限領域63の範囲内での後退は、切り増し64が行われている間のみ行わせるようにしてもよいが、切り増し64に限ることなく後退の間中に継続して行ってもよい。
【0059】
(後退操作制御部の説明)
以上、後退時の支援制御について説明したが、この後退を実行する際に、運転者などの操作者が、モニタ装置12を用いトレーラ3の進行方向を入力する操作を行う。そして、制御部11の後退操作制御部200は、その入力操作を検出し、トレーラ3の移動方向を表示する。以下に、後退操作制御部200について説明する。
後退操作制御部200は、図13に示すように、表示部設定処理部210と、モデル表示処理部220と、タッチ操作検出部230と、モデル移動表示処理部240と、移動方向モデル表示処理部250とを備える。
【0060】
表示部設定処理部210は、表示画面120を、図5Aに示すように、カメラ画像表示部121と、操作用画像表示部122とに区画し設定する。なお、カメラ画像表示部121には、カメラ23Bの撮像画像を左右反転させた画像を表示する。
【0061】
モデル表示処理部220は、操作用画像表示部122に操作用画像IMを表示する。この操作用画像IMは、牽引車両1を模式的に表す車両モデルM1と、連結具2を模式的に表す連結部モデルM2と、トレーラ3を模式的に表すトレーラモデルM3と、連結部モデルM2を中心とする円弧である操舵補助線M5と、トレーラモデルM3を車幅方向に等分する線を連結部モデルM2まで延長したトレーラモデル位置補助線M6とを備え、各モデルM1~M6を、上方から見た図を表示する。さらに、操作用画像IMは、運転者の左右方向と牽引車両1の左右方向とが一致するように、操作用画像表示部122において、車両モデルM1を画面の上方に配置し、トレーラモデルM3を画面の下方に配置して表示する。また、モデル表示処理部220は、トレーラモデルM3に重畳して操舵許容範囲表示モデルMasを表示するが、この操舵許容範囲表示モデルMasについては後述する。
【0062】
タッチ操作検出部230は、運転者(操作者)によって行われたタッチパネル27への操作を検出し、タッチ操作の種類や操作方向を検出する。例えば、タッチ操作として、ユーザがタッチパネル27に短時間接触して接触を解除するタップ操作や、ユーザがタッチパネル27に接触した状態を保ったまま任意の位置へ接触位置を移動させるスワイプ操作、ユーザがタッチパネル27にタップ操作よりも長い時間同じ位置へ接触を続ける長押し操作が含まれる。タッチ操作検出部230は、スワイプ操作における接触位置が移動された方向に基づいてトレーラ3の移動操作方向を検出する。すなわち、モニタ装置12にはタッチパネル27が設けられており、運転者(操作者)は、後退にあたり、タッチパネル27を用いてトレーラ3を後退させる方向および角度の入力操作を行う。この入力操作は、トレーラモデルM3に指先FTを接触させ、接触状態を保ったままトレーラ3を移動させたい方向およびその角度に応じてスライドさせる操作(スワイプ操作)である。そして、タッチ操作検出部230は、このスワイプ操作の操作方向であるスワイプ操作方向とその操作量であるスワイプ量を検出する。
【0063】
モデル移動表示処理部240は、検出したスワイプ操作方向およびスワイプ量に基づいてトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6とを操作用画像表示部122において移動させる。このトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の画面上の移動は、図5A図5Eに示すように、ヒッチボール2a(連結点)を示す点M2aを中心とした回転とする。すなわち、スワイプ操作量をトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の回転角度に換算し、この回転角度に応じてトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6を、操作用画像表示部122においてスワイプ操作方向に回転させる。この回転は、スワイプ操作に追従して行う。トレーラモデルM3のみ移動の対象とし、トレーラモデル位置補助線M6はトレーラモデルM3の動きに合わせて移動するように設計しても良い。言い換えると、トレーラモデルM3へのタッチ操作に基づいてトレーラモデルM3を移動させると同時に、トレーラモデルM3の動きに合わせてトレーラモデル位置補助線M6を移動させる。このようにすると、ソフトウェアを処理する負荷が軽減できる。
【0064】
トレーラモデル位置補助線M6を表示することによって、操作者がトレーラモデルM3の角度を把握しやすくなる。さらに、操作者がトレーラモデルM3を操作する際、操作者は自身の操作内容(トレーラモデルM3の角度)と操舵許容範囲表示モデルMasとの関係を容易に理解できる。
【0065】
前述した操舵許容範囲表示モデルMasは、このスワイプ操作によりトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6を回転させる角度(トレーラ角γ)が、ジャックナイフ角度θjkを越えないようにするための目安として表示するモデルである。そこで、この操舵許容範囲表示モデルMasは、許容操舵領域Taや、内側領域Rins、あるいは、制限領域63、操舵可能領域51等の操舵制限角度により制限される範囲内に設定することができる。ここで、本実施の形態1では、操舵許容範囲表示モデルMasとして、警報角度θkにより規定される内側領域Rinsに相当する範囲を表示するものとする。なお、操舵許容範囲表示モデルMasは、図5B図5Eに示すスワイプ操作中も表示する。操舵許容範囲表示モデルMasとして内側領域Rinsを採用した場合、牽引車両1の移動に伴って内側領域Rinsを定義する警報角度θkが変化する。このため、操舵許容範囲表示モデルMasの範囲(開き角度)は変化する。
【0066】
また、モデル移動表示処理部240は、スワイプ操作に応じて回転させる際のトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の回転量がジャックナイフ角度θjkを越えないように、ここでは、操舵許容範囲表示モデルMasの範囲を超えることがないように、回転量を制限する。より具体的には、トレーラモデル位置補助線M6が操舵許容範囲表示モデルMasの範囲を超えることがないように回転量を制限する。
【0067】
さらに、モデル移動表示処理部240は、トレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の回転角度がジャックナイフ角度θjkあるいは許容操舵領域Taを越えるような操作量のスワイプ操作、操舵許容範囲表示モデルMasを逸脱するようなスワイプ操作が行われた場合には、同時に、色や音声による案内により、注意を促す。
【0068】
なお、このトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の制限は、警報角度θkに限定されず、ジャックナイフ角度θjkや操舵制限角度などの角度により制限するようにしてもよい。
【0069】
移動方向モデル表示処理部250は、スワイプ操作量に応じたトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の回転角度を実現するよう牽引車両1を転舵させたときのトレーラ3の予測移動軌跡を算出する。算出した予測移動軌跡を、移動方向表示モデルM4としてカメラ画像表示部121に表示する。例えば、図5A図5Eに示すように予測移動軌跡を帯状に表示する。なお、この帯状の移動方向表示モデルM4の幅は、トレーラ3の幅に応じた幅として表示する。
【0070】
そこで、後退操作制御部200は、スワイプ操作量あるいはトレーラモデルM3とトレーラモデル位置補助線M6の回転角度に応じてトレーラ3の移動軌跡を算出する移動軌跡予測部251をさらに備える。移動軌跡予測部251は、スワイプ操作によるトレーラ角γを実現するための転舵角δを求める。このようなトレーラ角γおよび転舵角δは、例えば、図11(a)のトレーラ角と、図11(b)の操舵角との関係として求めることができ、この操舵角で所定の車速で後退した場合の移動軌跡として算出することができる。
【0071】
なお、この場合、操舵角とトレーラ角γとの関係は、被牽引車両の違い(例えば、図8に示す距離Dの違い)で異なるため、個別に最適値の関係が得られるように、予め調整(キャリブレーション)を行う。
【0072】
次に、図14のフローチャートにより、運転者などの操作者が、モニタ装置12によりトレーラ3の移動方向を入力した際の後退操作制御部200による処理の流れを説明する。なお、この図14に示す処理は、後退を選択する操作が行われることで開始する。例えば、モニタ装置12などを介して後退を選択する指示が入力されたことや車両のギアが後退操作を示す位置に移動されたことを契機とする。
【0073】
最初のステップS101では、表示部設定処理部210が、表示画面120に、図5Aに示すように、カメラ画像表示部121と、操作用画像表示部122とに区画し設定する。そして、カメラ画像表示部121には、カメラ23Bの撮像画像を表示する。
次のステップS102では、モニタ装置12に表示されるトレーラモデルM3の回転角(トレーラモデル位置補助線M6の回転角)を操舵許容範囲表示モデルMasの基準となる角度を2倍した角度に制限する。本実施の形態では、操舵許容範囲表示モデルMasとして、警報角度θkにより規定される内側領域Rinsに相当する範囲を表示するものとするため、モニタ装置12に表示されるトレーラモデルM3の回転角を警報角度θkを2倍した2θkに制限する。
【0074】
次のステップS103では、操作用画像表示部122に、車両モデルM1と連結部モデルM2とトレーラモデルM3と、操舵補助線M5と、トレーラモデル位置補助線M6と操舵許容範囲表示モデルMasとから成る操作用画像IMを表示する。また、カメラ画像表示部121に移動方向表示モデルM4を表示する。
【0075】
次のステップS104では、タッチ操作検出部230において、スワイプ操作の検出の有無を判定し、スワイプ操作が行われるまで(否定の場合)、ステップS104の判定を繰り返し、スワイプ操作が行われたら(肯定の場合)ステップS105に進む。
【0076】
ステップS105では、タッチ操作検出部230によりスワイプ操作の操作方向および操作量を検出し読み込み、トレーラモデルM3およびトレーラモデル位置補助線M6を回転させる。
【0077】
この場合、図5A図5Cに示すように、操作者が、右方向にスワイプ操作を行った場合には、これに連動させて、トレーラモデルM3と、トレーラモデル位置補助線M6とを画面上で右方向に移動させる。なお、この操作は、トレーラ3を牽引車両1に対して右方向に後退させる場合の操作である。トレーラモデルM3をスワイプ操作によって移動させることができる範囲を操舵許容範囲表示モデルMas内に設定する。このようにすることで、ユーザは特別な配慮を行うことなく、ジャックナイフ現象を発生させることがない範囲内でトレーラモデルM3に関する指示を入力可能である。
【0078】
また、図5Dに示すように、操作者が、左方向にスワイプ操作を行った場合は、これに連動させて、トレーラモデルM3を画面上で左方向に移動させる。この操作は、トレーラ3を牽引車両1に対して左方向に後退させる場合の操作である。図5Eに示すように、指先FTを図5Dに示す位置から右方向に戻した場合、これに応じてトレーラモデルM3も図5Dに示す位置から右方向に回転させる。
【0079】
次のステップS106では、移動方向モデル表示処理部250の移動軌跡予測部251により、スワイプ操作量に応じたトレーラモデルM3の回転角度を実現するように、牽引車両1を転舵させた場合のトレーラ3の移動軌跡を算出する。
【0080】
さらに、ステップS107では、移動方向モデル表示処理部250により移動方向表示モデルM4をカメラ画像表示部121に帯状に表示する。この場合、図5A図5Cに示すように、トレーラモデルM3を車両モデルM1に対して右に移動させた場合、カメラ画像表示部121に表示する移動方向表示モデルM4も右方向に曲がるように表示する。つまり、カメラ23Bは、車両後方を向いているが、カメラ画像表示部121ではその画像を左右逆転して表示するため、トレーラ3を車両右方向へ移動させる場合、表示画面120上でも、右方向に旋回するよう移動方向表示モデルM4を表示する。よって、カメラ画像表示部121では、不図示のバックミラーと同じ向きに表示とすることにより、運転者に与える左右方向感覚における違和感を軽減できる。
【0081】
また、図5D図5Eに示すように、トレーラモデルM3を車両モデルM1に対して左方向に移動させた場合、カメラ画像表示部121に表示する移動方向表示モデルM4も、左方向に曲がるように表示する。
【0082】
ユーザが図5Eよりも左にスワイプする操作を行っても、トレーラモデルM3の位置は変化せず、移動方向表示モデルM4も変化せず、仮に、後退中に、このような操作を行った場合には、牽引車両1は停止する。さらに、「これ以上左方向へスワイプするとジャックナイフ現象が起きます。右方向へトレーラモデルM3をスワイプしてください。」等の警報を表示や音声で出力する。ユーザのタッチ位置が操舵許容範囲表示モデルMasで定義された角度内に入ったら再びトレーラモデルM3及び移動方向表示モデルM4の動きをスワイプ動作に追従させ、ユーザのスワイプ操作に基づく自動操舵を再開する。
【0083】
そして、図5B図5Cとの比較や、図5D図5Eとの比較で分かるように、トレーラモデルM3の回転量が相対的に大きくなれば、移動方向表示モデルM4の曲がり方も大きくなる。
なお、図5A図5Eに示したように、操舵補助線M5を表示してもよい。操舵補助線M5は操舵許容範囲表示モデルMasに対して一定の基準を示す目盛である。操舵許容範囲表示モデルMasの角度が変化したとしても、操舵補助線M5の角度は一定である。このため、牽引車両1とトレーラ3の状況が変化したため警報角度θkが変化し、操舵許容範囲表示モデルMasの角度が変化したとき、操作者はMasの角度が変化したことを理解しやすくなる。
【0084】
以上のようにして、操作者はトレーラ3の移動方向を入力しながら、牽引車両1の後退動作を行う。後退動作には、アクセルを踏むこと、アクセルを踏まずにクリープ現象を利用して車両を後退させることも含む。すなわち、牽引車両1の操作者は、従来の車両においてハンドル操作によって車両の進行方向を操作することに代えて、トレーラ3の移動方向を入力するタッチ操作を行う。操作者によって入力されたトレーラ3の移動方向に基づいて、自動操舵システム22はトレーラ3がスワイプ操作された方向に移動するよう自動操舵を行って牽引車両1を後退させる。後退動作中にトレーラ3の移動方向を変更する方向へスワイプ操作を検出すると、自動操舵システム22は、新しく入力されたスワイプ操作の方向に基づいて自動操舵を行って、牽引車両1を後退させる方向を変更する。
【0085】
また、牽引車両1を後退させている間は、図5A図5Eに示すカメラ23Bの撮像画像を表示する。
【0086】
このように、操作者は、後退時の移動方向の入力を、操作用画像IMのトレーラモデルM3を用いて行い、かつ、その際に、牽引車両1に対し実際にトレーラ3を移動させたい方向と同じ方向にスワイプ操作を行う。したがって、操作者は、牽引車両1に対するトレーラ3の動きを、直感的に入力することができ、操作性に優れる。
【0087】
また、トレーラモデルM3を用いたスワイプ操作に応じ、カメラ画像表示部121の撮像画像上に、画面上でのトレーラ3の移動方向を移動方向表示モデルM4により表示するようにした。このため、操作者は、トレーラモデルM3のスワイプ操作に応じた後退時のトレーラ3の移動方向や移動量を予め把握することができる。そして、後退を開始した後は、表示画面120上のトレーラ3の移動方向が、スワイプ操作方向に一致する方向であって、移動方向表示モデルM4に沿う方向の動きとなり、かつ、運転者が不図示のバックミラーを見た場合と同様の方向となるため、運転者に違和感を与えにくい。
【0088】
特に、牽引車両1では、図11に示すように、自動操舵によるステアリングホイールの回転方向(操舵角)と、トレーラ3との動きの方向(トレーラ角γ)とが、不一致となる。また、牽引車両1に対するトレーラ3の移動方向と、カメラ23Bの撮像画像をそのまま表示した場合の表示画面120におけるトレーラ3の動きとが逆転する。このため、これらの動きが違和感を与える場合がある。それに対し、上記のように、運転者などの操作者は、予め表示画面120上により、牽引車両1に対するトレーラ3の動きと、表示画面120の撮像画像上の動きとを予め把握でき、しかも、カメラ23Bの撮像画像を左右反転させて表示画面120に表示するため、このような違和感が生じるのを抑制できる。
【0089】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の牽引支援装置の効果を列挙する。
(1)実施の形態1の牽引支援装置Aは、カメラ(撮像装置)23Bとモニタ装置12と制御部11とを備える。カメラ23Bは、トレーラ3を連結具2で連結した牽引車両1が後退する時に、トレーラ3の後方を撮像する。モニタ装置12は、カメラ23Bの撮像画像を表示する表示画面120を備えるとともに、表示画面120への接触位置を検出するタッチパネル27を有する。制御部11は、カメラ23Bおよびモニタ装置12に接続され、牽引車両1の後退時に、後退支援としてモニタ装置12の表示を制御する。
【0090】
さらに、制御部11は、表示部設定処理部210と、モデル表示処理部220と、タッチ操作検出部230と、被牽引車両モデル移動表示処理部としてのモデル移動表示処理部240と、移動方向モデル表示処理部250とを備える。
【0091】
表示部設定処理部210は、表示画面120上に、撮像画像を表示するカメラ画像表示部121と、操作用画像IMを表示する操作用画像表示部122と、を設定する。
モデル表示処理部220は、操作用画像表示部122に、牽引車両1を示す車両モデルM1と、トレーラ3を示す被牽引車両モデルとしてのトレーラモデルM3とを表示する。
タッチ操作検出部230は、表示画面120の操作用画像表示部122に表示されたトレーラモデルM3を移動させるタッチ操作を検出可能である。
モデル移動表示処理部240は、タッチ操作に応じて、操作用画像表示部122上のトレーラモデルM3を移動させる。
移動方向モデル表示処理部250は、トレーラ3を牽引車両1に対しタッチ操作方向に応じて移動させる際の、撮像画像上のトレーラ3の移動方向を求め、撮像画像上のトレーラ3の移動方向を示す移動方向表示モデルM4を撮像画像と共に表示する。さらに、トレーラモデルM3へのタッチ操作に基づいて、牽引車両1を後退させる自動操舵を行う。
【0092】
したがって、運転者などの操作者は、牽引車両1に対するトレーラ3の動きを、直感的に入力することができ、操作性に優れる。しかも、移動方向モデル表示処理部250は、トレーラモデルM3を用いたスワイプ操作に応じて、モニタ装置12の表示画面120の撮像画像上におけるトレーラ3の移動方向を、表示画面120上で移動方向表示モデルM4により表示する。このため、トレーラ3を移動させる前の時点で、操作方向と表示画面120上のトレーラ3の移動方向との関連性を把握することができ、例えば、モニタ装置12(表示画面120)が運転席や車外に配置されていても、トレーラ3の移動方向を正確に把握し易い。さらに、操作者は、複雑な牽引車両1の操舵を行うことなく、トレーラモデルM3へのタッチ操作によってトレーラ3の方向を指示するだけで、意図した方向へトレーラ3を後退させることができる。
【0093】
(2)実施の形態1の牽引支援装置Aは、スワイプ操作に応じ、牽引車両1を転舵させて後退した際のトレーラ3の予測移動軌跡を求める移動軌跡予測部251を備える。そして、移動方向モデル表示処理部250は、移動方向表示モデルM4として予測移動軌跡を撮像画像に帯状に重畳して表示する。
【0094】
したがって、表示画面120におけるトレーラ3の移動方向に加え、どのような軌跡を描いて後退するのかを把握でき、トレーラ3と物体などの干渉とを、予め防止することができる。
【0095】
(3)実施の形態1の牽引支援装置Aは、モデル表示処理部220は、牽引車両1およびトレーラ3を上方から見た状態を示す車両モデルM1およびトレーラモデルM3を表示する。
したがって、運転者などの操作者は、牽引車両1に対するトレーラ3の実際の移動方向を直感的に認識し易く操作性に優れる。
【0096】
(4)実施の形態1の牽引支援装置Aは、モデル移動表示処理部240が、タッチ操作に伴い、車両モデルM1を、連結具2による連結点としてのヒッチボール2aを中心とした回転動作として移動表示させる。
【0097】
したがって、運転者などの操作者は、後退操作時に、牽引車両1に対するトレーラ角γを視覚的に認識しやすく、操作性に優れる。
【0098】
(5)実施の形態1の牽引支援装置Aは、制御部11は、後退時に、牽引車両1とトレーラ3とがジャックナイフ現象を起こすジャックナイフ角度θjkを算出するジャックナイフ角度算出部としての警報角算出部15を備える。そして、モデル移動表示処理部240は、トレーラモデルM3の移動量を、ジャックナイフ角度θjkを超えない範囲に制限する。
【0099】
したがって、トレーラモデルM3をスワイプ操作で回転させる場合、手加減が分からず大きく操作してしまう可能性があるが、この制限により、ジャックナイフ現象が生じるような操舵を行ってしまう不具合を防止でき、操作性に優れる。
【0100】
(6)実施の形態1の牽引支援装置Aは、制御部11は、ジャックナイフ角度θjkに基づいて、ジャックナイフ現象が発生しないトレーラ角としての警報角度θkを算出する。そして、モデル表示処理部220は、ジャックナイフ現象が発生しないトレーラ角γの領域を示す警戒領域Aaの範囲を示す操舵許容範囲表示モデルMasを、操作用画像表示部122のトレーラモデルM3に重畳して表示する。
【0101】
したがって、操作者は、スワイプ操作を行う際に、操作可能な限界域を視覚的に予め把握でき、操舵許容範囲表示モデルMasを表示しない場合と比較して、操作性に優れる。
【0102】
(7)実施の形態1の牽引支援装置Aは、表示画面120および制御部11は車載され、表示画面120は、運転席よりも前方位置で、車両後方に向けて設置されている。
【0103】
このような表示画面120の配置では、カメラ23Bの画像をそのまま表示すと、後退時に、トレーラ3の実際の牽引車両1に対する左右の移動方向と、表示画面120におけるトレーラ3の画像上の左右の移動方向とが逆転する。このため、運転者などの操作者は、表示画面120を見ていると、トレーラ3が左右のいずれの方向に移動するのか、混乱する可能性がある。このような状況において、上記(1)に記載したように、高い操作性を得ることができるとともに、トレーラ3を移動させる方向および表示画面120におけるトレーラ3の移動方向の正確な把握を可能とする。
しかも、本実施の形態1では、後退操作制御部200は、表示画面120のカメラ画像表示部121に、カメラ23Bの撮像画像を左右逆転して表示するようにした。このため、運転者は、カメラ画像表示部121の画像の左右方向と、不図示のバックミラーの写る像の左右方向とが一致し、運転者の違和感を軽減し、上記のような混乱が生じるのをさらに抑えることができる。
【0104】
(他の実施の形態)
次に、本開示の牽引支援装置の他の実施の形態について説明する。
なお、他の実施の形態の説明において、実施の形態1と共通する構成にはその構成と同じ符号を付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0105】
(実施の形態2)
実施の形態2の牽引支援装置は、図15に示すように、操作用画像表示部122における車両モデルM1、連結部モデルM2、トレーラモデルM3の配置を、実施の形態1とは上,下逆にした例である。この場合、カメラ画像表示部121にカメラ23Bの画像をそのまま表示しても移動方向の入力時のトレーラモデルM3の移動方向と、カメラ画像表示部121における移動方向表示モデルM4が表示する移動方向とが一致することになり、この点で、カメラ画像表示部121におけるトレーラ3の画像の移動方向に対する違和感が生じにくい。
この実施の形態2にあっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0106】
(実施の形態3)
実施の形態3の牽引支援装置は、移動方向モデル表示処理部250が、移動方向表示モデルM4として、図16に示すように、左右方向を指す矢印モデルMYL、MYRを表示するようにした例である。この実施の形態3では、タッチ操作検出部230は、トレーラモデルM3へのスワイプ操作を検出する。例えば、トレーラモデルM3が右方向へスワイプ操作された場合、矢印モデルMYRが強調表示される。トレーラモデルM3が左方向へスワイプ操作された場合、矢印モデルMYLが強調表示される。強調表示の例は、強調表示の対象となるモデルを点滅させることや、強調表示の対象となるモデルの色を変更すること、強調表示の対象となるモデルの大きさを変更することが挙げられる。
【0107】
また、矢印モデルMYL、MYRを操作用画像IMとして用いることができる。この場合、タッチ操作検出部230は、矢印モデルMYL、MYRのスワイプ操作またはタップ操作、長押し操作を検出する。タップ操作の場合、少なくとも矢印モデルMYLと矢印モデルMYRのいずれがタップ操作されたのかを検出できればよい。移動方向モデル表示処理部250は、両矢印モデルMYL、MYRを用いて、タップ操作に応じたトレーラ3の表示画面120の上で移動方向を表示する。例えば、一度のタップ操作でトレーラ3を動かすようにしてもよい。このとき、矢印モデルMYLがタップされている場合トレーラ3を左方向へ動かし、矢印モデルMYRがタップされている場合トレーラ3を右方向へ動かす。例えば、両矢印モデルMYLまたはMYRが長押し操作されている場合、長押し操作を検出している間、トレーラ3を動かしても良い。このとき、矢印モデルMYLが長押しされている場合トレーラ3を左方向へ動かし、矢印モデルMYRが長押しされている場合トレーラ3を右方向へ動かす。
【0108】
スワイプ操作の場合、少なくともスワイプ操作方向を検出できればよい。そして、移動方向モデル表示処理部250は、両矢印モデルMYL、MYLを用いて、スワイプ操作に応じたトレーラ3の表示画面120の上で移動方向を表示する。この表示方法としては、両矢印モデルMYL、MYLのうち、トレーラ3の移動方向に一致するもののみを表示したり、図16に示すように、両矢印モデルMYL、MYLを表示した上で、トレーラ3の移動方向に一致するもののみを、点灯や着色表示したりして、トレーラ3の移動方向を表示する。矢印モデルMYL、MYRを操作用画像IMとして用いる場合、移動方向表示モデルM4を表示してもよい。
【0109】
この実施の形態3にあっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0110】
(実施の形態4)
実施の形態4の牽引支援装置は、モニタ装置12および制御部11を牽引車両1の車外に持ち出し可能とした例である。すなわち、図17に示すように、モニタ装置12bおよび後退操作制御200bは、車外の遠隔操作装置としての携帯端末MDに配置され、搭載されたアプリケーションにより、実施の形態1のモニタ装置12および後退操作制御200b同様の機能が与えられている。なお、携帯端末MDは、例えば、携帯式のパソコンや、携帯電話などを用いることができる。
【0111】
そして、携帯端末MDは、車載の通信装置300と相互に通信可能な通信装置400を備える。なお、通信装置300と通信装置400との通信は、直接通信可能としてもよいし、あるいは、通信ネットワークを介した通信であってもよい。また、カメラ23Bの画像も、制御部11bおよび通信装置300を介して送信するほか、カメラ23Bから携帯端末MDへ無線(例えば、Wi-Fiなど)により送信してもよい。
【0112】
したがって、操作者は、車外から操作を行うことができる。そして、操作者は、モニタ装置12bの表示画面120を車外で視認するため、表示画面120上におけるトレーラ3の移動方向と、実際の移動方向との関連性を持たせにくい。それに対して、本実施の形態では、表示画面120のカメラ画像表示部121に表示する操作用画像IMと、操作用画像表示部122における移動方向表示モデルM4とにより、操作方向と表示画面120上のトレーラ3の移動方向を予め把握することができる。よって、モニタ装置12が、牽引車両1に対してどの方向を向いていても、実施の形態1で説明したように、高い操作性を得ることができ、かつ、操作方向と表示画面120上のトレーラ3の移動方向との関連性を正確に把握することができる。
【0113】
なお、このように携帯端末MDにより車外で操作する場合、モデル表示処理部220は、牽引車両1に対する携帯端末MDの相対位置を検出する装置を設け、操作用画像IMの車両モデルM1とトレーラモデルM3との位置関係を、携帯端末MDの位置から見た牽引車両1とトレーラ3との相対位置に応じた向きとしてもよい。
【0114】
以上、本開示の実施の形態を図面に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0115】
例えば、実施の形態では、後退時に、自動操舵および自動制動を行うものを例示したが、これに限定されず、運転者が手動運転により後退するものにも適用することができる。この場合、表示画面120を見ながら後退操作を行うため、予め、表示画面120上におけるトレーラ3の移動方向を知るのは、有効である。
【0116】
また、実施の形態では、スワイプ操作による入力時に、トレーラモデルM3の回転量を制限したり、回転可能な量を表示する操舵許容範囲表示モデルMasを表示したりする例を示したがこれに限定されない。例えば、回転量の制限と、操舵許容範囲表示モデルMasの表示とのいずれか一方のみを行うようにしてもよいし、両方とも行わないようにしてもよい。この場合も、実際にジャックナイフ現象が生じるおそれがある操舵を行った際には、警報発生部18により警報を発生させるため、未然に防ぐことができる。また、実施の形態では、各モデルM1、M2、M3は、模式的に表したものを示したが、これに限定されず、牽引車両やトレーラの実物の映像を用いてもよい。また、各モデルM1~M3を模式的に表す場合も、実施の形態で示した形状に限定されず、ユーザが、牽引車両や被牽引車両を識別できる形状であればよい。
【0117】
また、実施の形態では、被牽引車両として、牽引車両としての自動車に牽引されるトレーラを示したが、これに限定されな。例えば、フルトレーラタイプのトラックや、連節バスなどにも適用することができる。
【0118】
なお、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示である。上述した各実施形態は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0119】
本明細書において参照した機能的構成を示すブロック図は、本願発明を容易に理解するために機能的な構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図である。当該構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素が更に多くの処理を実行するように分類することもできる。
【符号の説明】
【0120】
1 牽引車両
2 連結具
2a ヒッチボール(連結点)
3 トレーラ(被牽引車両)
11 制御部
12 モニタ装置
21 自動ブレーキシステム
22 自動操舵システム
23 カメラ(撮像装置)
120 表示画面
121 カメラ画像表示部(撮像画像表示部)
122 操作用画像表示部
200 後退操作制御部
210 表示部設定処理部
220 モデル表示処理部
230 タッチ操作検出部
240 モデル移動表示処理部
250 移動方向モデル表示処理部
251 移動軌跡予測部
A (実施の形態1の)牽引支援装置
FT 指先
IM 操作用画像
M1 車両モデル
M2 連結部モデル
M3 トレーラモデル
M4 移動方向表示モデル
MYL、MYR 矢印モデル(移動方向表示モデル)
Mas 操舵許容範囲表示モデル
MD 携帯端末(遠隔操作装置)
γ トレーラ角
θjk ジャックナイフ角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17