(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】製品表面の拭き取り装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20240101AFI20240326BHJP
【FI】
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2020006416
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】横手 英幸
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-050655(JP,A)
【文献】特開2015-100794(JP,A)
【文献】特開平05-277419(JP,A)
【文献】特開平04-190880(JP,A)
【文献】実開平02-008583(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00
B05C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー支持機構に互いに側面を合わせた状態でそれぞれ支持した幅狭ローラー及び幅広ローラーと、
幅広ローラーの拭き取り作用周面が上下変位するように幅広ローラーを昇降変位させる幅広ローラー可動機構と、
少なくとも各ローラーの
幅員を足し合わせた幅員に相当する幅員の拭き取りシートをローラー周面に当接摺動させながら巻取り可能に構成したシート巻取り機構と、
各ローラー中少なくともいずれかのローラーに向かって薬液を供給可能に配設した薬液供給機構とよりなる製品表面の拭き取り装置。
【請求項2】
各ローラーは支持軸を介してローラー支持機構に回転自在に設けたことを特徴とする請求項1に記載の製品表面の拭き取り装置。
【請求項3】
拭き取りシートは少なくとも各ローラーの合わせた幅員に相当する長尺帯体をロール状に巻取り可能としたガーゼとしたことを特徴とする請求項2に記載の製品表面の拭き取り装置。
【請求項4】
幅広ローラー可動機構はシリンダーの可動部にブラケットを介して幅広ローラーの支持軸を連動連設して構成したことを特徴とする請求項3に記載の製品表面の拭き取り装置。
【請求項5】
幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラー可動機構と、シート巻取り機構と、
薬液供給機構とは装置フレームに一体に搭載し、装置フレームはユニバーサルに変動するアームを有した産業ロボットのアームに取り付けると共に、装置フレームに搭載した各ローラーはアームのロボット作動により製品表面を圧接しながら走行して製品表面の薬液拭き取り作業をするように構成した請求項4に記載の製品表面の拭き取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、組み付け前の自動車のフロントガラス等に付着した汚れをアルコール等で拭き取る作業を効率的に行うことが出来る製品表面の薬液等の拭き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組付け前の自動車のフロントガラス等に付着した汚れをアルコール等で拭き取る作業はロボットアーム先端に装着したフェルトの拭き取り治具によって行われていた。すなわち、ロボットアームの駆動によりフェルトをガラス拭き取り面に圧着摺動しながら行われていた。かかる作業を省エネルギーの装置を用いて自動的に行う装置として以下の特許文献に記載のような各種の拭き取り装置が開示されている。
【0003】
特許文献1には、フレキシブルなクリーニング用部材の一端が巻き出し機構に巻きつけられ、他端が拭き取り部のローラーを介して巻取り機構に巻きつけられ、該クリーニング用部材をワーク表面の汚れ拭き取り部として形成された押し付けローラーを経て巻取り機構に巻きつけられる構成について開示されている。また、フレキシブルなクリーニング用部材の洗浄力を向上するために洗浄液を滴下してクリーニング用部材に浸潤させる構成について開示されている。
【0004】
特許文献2には、ワーク表面の汚れを拭き取るためのロール状に収納されたウエス部材と、このウエス部材を繰り出すための繰り出しリールと、ワーク表面の汚れを払拭した後にウエス部材をロール状に収納するための巻取りリールと、このウエス部材がワークの汚れを拭き取る前にウエス部材に洗浄液を付与する洗浄液付与手段とを備える構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-100794号公報
【文献】特開平10-192795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる従来の拭き取り装置は、所定の形状に形成されたフェルト拭き取り治具にフェルトを装着した場合、フェルト装着面が所定の大きさで構成されているために拭き取り対象のガラスに突起物が有ると、そこを避けて拭き取り治具を移動しなければならず、そのために突起物の周辺に拭き残しを生じ、最終的にはかかる残処理部分は手作業で処理するしかなかった。
【0007】
特に、突起物がガラス周縁近傍にあってガラス縁取りモール部との間の間隔が狭い場合は、従来の拭き取り治具ではどうしても完璧な拭き取りは困難であった。
そこで、本発明では、拭き取り対象製品の狭い面も広い面も一つの装置で連続して拭き取り作業を実施でき、しかも、拭き取り作業に使用する拭き取りシートを長尺帯状のロールに巻取ることができるガーゼ体とすることにより拭き取り作業の工程毎にシートを取り替える必要がなく、また、使用済みの拭き取りシートはロール状に巻き取って常に新しい拭き取りシートを継続して供給することができ、従来のバッチ式取替え作業をロット式に変換して拭き取り作業の効率化を格段に向上することができる製品表面の薬液等の拭き取り装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ローラー支持機構に互いに側面を合わせた状態でそれぞれ支持した幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラーの拭き取り作用周面が上下変位するように幅広ローラーを昇降変位させる幅広ローラー可動機構と、少なくとも各ローラーを合わせた幅員に相当する幅員の拭き取りシートをローラー周面に当接摺動させながら巻取り可能に構成したシート巻取り機構と、各ローラー中少なくともいずれかのローラーに向かって薬液を供給可能に配設した薬液供給機構とよりなる製品表面の薬液等の拭き取り装置に係る。
【0009】
また、各ローラーは支持軸を介してローラー支持機構に回転自在に支承したことにも特徴を有する。
【0010】
また、拭き取りシートは少なくとも各ローラーの合わせた幅員に相当する幅員を有する長尺帯体をロール状に巻取り可能としたガーゼであることにも特徴を有する。
【0011】
また、幅広ローラー可動機構はシリンダーの可動部にブラケットを介して幅広ローラーの支持軸を連動連設して構成したことにも特徴を有する。
【0012】
また、幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラー可動機構と、シート巻取り機構と、薬液供給機構とは装置フレームに一体に搭載し、装置フレームはユニバーサルに変動するアームを有した産業ロボットのアーム先端に取り付け、各ローラーはアームのロボット作動により製品表面を圧接走行しながら製品表面の薬液拭き取り作業を行うように構成したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、製品表面の拭き取り装置を、ローラー支持機構に互いに側面
を合わせた状態でそれぞれ支持した幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラーの拭
き取り作用周面が上下変位するように幅広ローラーを昇降変位させる幅広ローラー可動機
構と、少なくとも各ローラーの幅員を足し合わせた幅員に相当する幅員の拭き取りシートをローラー周面に当接摺動させながら巻取り可能に構成したシート巻取り機構と、各ローラー中少なくともいずれかのローラーに向かって薬液を供給可能に配設した薬液供給機構とより構成したことにより、製品の表面の薬液等を拭き取り作業する際に、広範囲の製品表面においては、幅広ローラーを可動機構を介して降下させて幅狭ローラーと幅広ローラーとのそれぞれの拭き取り作用周面を同一レベルに変位させることにより、両ローラーの合わせた広幅員で広範囲の拭き取り作業が可能となる。他方、拭き取り面に突起物があり、しかも、製品の縁取りモールとの間が狭い場合には、幅広ローラーを可動機構を介して上昇させて幅広ローラーの拭き取り作用周面が機能しない、すなわち、突起物と緩衝しない位置に変位し、狭空間を通過できる幅狭ローラーの拭き取り作用周面のみを機能させて狭表面の拭き取り作業を行うことができる。従って、拭き取り表面の状況に応じて幅狭表面でも幅狭ローラーによって円滑且つ充分に薬液等の拭き取り作業が行えることになり、従来の手作業での狭表面の拭き作業を解消して薬液拭き取り作業の効率を格段に向上することができる効果がある。
また、幅狭ローラーと幅広ローラーの2つのローラーを使用し幅広ローラーを昇降自在とすることで拭き取り幅員に応じて拭き取り幅を調整できローラーの取替え作業が必要なくなり作業効率が向上する。すなわち、幅広の拭き取りシートであっても幅広ローラーを上昇させておくことにより、幅狭表面を幅狭ローラーで押圧走行しながら拭き取り作業が行えることになり拭き取りシートの幅広サイズでも幅広表面、及び幅狭表面のいずれにも拭き取り機能を充分に果たすことができる効果がある。
また、シート巻取り機構を形成することで、従来製品表面の汚れを拭取った後のフェルト交換作業を省略でき連続してワーク表面の汚れを除去することを可能として作業効率が向上する。すなわち、拭き取り作業をした後のシートの交換をバッチ式から連続したシートの巻取り変位作業というロット式作業に変換したことにより、シートの巻き取りによって常に新しいシートで連続して拭き取り作業を行える効果がある。
また、拭き取りシート表面を湿らせるために薬液供給機構により汚れ除去用の液体を滴下することで汚れを拭き取る際のアルコールの分量を調整することができ、無駄な薬液の使用を規制することができる。また、拭き取りシートを切替えた際にも製品への圧着面が既に薬液を浸潤した状態となり、速材に製品の拭き取り作業を実施でき、作業効率が向上する。
【0014】
請求項2の発明によれば、各ローラーは支持軸を介してローラー支持機構に回転自在に設けたことにより、拭き取りシート切り替え時に拭き取りシート切り替えに係る負荷を低減して拭き取りシートが切り替え時に切断される虞を低減できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、拭き取りシートは少なくとも各ローラーを合わせた幅員に相当する長尺帯体をロール状に巻取り可能としたガーゼであるために、平織りガーゼの特徴によりローラーの回転する方向や拭き取り表面の走行に際して最適の拭き取り機能を果し、特に汚れを拭き取るときに拭き取り表面に圧着してロボットアームを移動する際の引張り応力に対して必要な強度を形成でき、従来使用されていた不織布と比較して千切れなどの不測の事態を低減できる。また、ガーゼは不織布と比較して吸水性に優れ、かつ繊維が太いため押圧走行するローラー周面が直接に拭き取り表面に干渉することなく太繊維のガーゼを介在して押圧摺動することになり拭き取り塗装面の損傷等を可及的に防止し、さらに、薬液吸収もしやすく、効率的な薬液拭き取り作業を行うことができる効果がある。
【0016】
請求項4の発明によれば、幅広ローラー可動機構はシリンダーの可動部にブラケットを介して幅広ローラーの支持軸を連動連設して構成したことにより、シリンダーを介して幅広ローラーの昇降作動を行うことができるため、シリンダーを介して幅広ローラーの昇降作動を行うことができ簡易な構造でデリケートな塗装表面の薬液拭き取り作業時の圧着調整が行える効果がある。
【0017】
請求項5の発明によれば、幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラー可動機構と、シート巻取り機構と、薬液供給機構とは装置フレームに一体に搭載し、装置フレームはユニバーサルに変動するアームを有した産業ロボットのアームに取り付けると共に、装置フレームに搭載した各ローラーはアームのロボット作動により製品表面を圧接しながら走行して製品表面の薬液拭き取り作業をするように構成したことにより、拭き取り製品の設置位置にかかわらずロボットアームの作動によって一定作業範囲内で拭き取りが行えることになり、人手による拭き取り作業に比し、ロボットアームの作動制御により拭き取り位置の多種多様な変位や拭き取り走行速度や、圧着力等の調整が可能となり拭き取り作業の多様化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態における拭き取り装置を示す全体正面図である。
【
図2】本発明の実施形態における拭き取り装置を示す全体斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態における拭き取り装置を示す全体側面図であり、(a)は拭き取り装置に拭き取りシートを装着していない状態を示す側面図であり、(b)は拭き取り装置に拭き取りシートを装着した状態を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態における拭き取り装置の幅広ローラーの昇降状態を示す側面図であり、(a)は幅広ローラーを降下した状態を示す側面図であり、(b)は幅広ローラーを上昇した状態を示す側面図である。
【
図5】本発明の実施形態にかかる拭き取り装置の拭き取り状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の要旨は、ローラー支持機構に互いに側面を合わせた状態でそれぞれ支持した幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラーの拭き取り作用周面が上下変位するように幅広ローラーを昇降変位させる幅広ローラー可動機構と、少なくとも各ローラーの幅員を足し合わせた幅員に相当する幅員の拭き取りシートをローラー周面に当接摺動させながら巻取り可能に構成したシート巻取り機構と、各ローラー中少なくともいずれかのローラーに向かって薬液を供給可能に配設した薬液供給機構とよりなる製品表面の拭き取り装置を提供せんとするものであり、また、各ローラーは支持軸を介してローラー支持機構に回転自在に設け、また、拭き取りシートは少なくとも各ローラーの合わせた幅員に相当する長尺帯体をロール状に巻取り可能としたガーゼとし、また、幅広ローラー可動機構はシリンダーの可動部にブラケットを介して幅広ローラーの支持軸を連動連設しまた、幅狭ローラー及び幅広ローラーと、幅広ローラー可動機構と、シート巻取り機構と、薬液供給機構とは装置フレームに一体に搭載し、装置フレームはユニバーサルに変動するアームを有した産業ロボットのアームに取り付けると共に、装置フレームに搭載した各ローラーはアームのロボット作動により製品表面を圧接しながら走行して製品表面の薬液拭き取り作業をするように構成したことにある。
【0020】
かかる構成により本発明では、拭き取り対象製品の狭い面も広い面も一つの装置で連続して拭き取り作業を行うことができ、しかも、拭き取り作業の工程毎にシートを取り替える必要がなく使用済みの拭き取りシートはロール状に巻き取って常に新しい拭き取りシートを継続して供給でき、従来のいわゆる拭き取りバッチ式の作業をロット作業に変換し、拭き取り作業の効率化を格段に向上することができる。
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の製品表面の拭き取り装置Aの全体正面図、
図2は同斜視図、
図3はローラーの幅広状態で拭き取り作業を行っている状態、すなわち、幅狭及び幅広ローラーの拭き取り作用周面を同一高さ位置にした場合の要部の説明図、
図4は同要部の側面図、
図5は幅狭ローラーの拭き取り作業状態を示す説明図、すなわち、本発明の製品表面の拭き取り装置において幅広ローラーが上昇してその拭き取り作用周面が幅狭ローラーより上方に位置して、幅狭場所の拭き取り作業を行っている状態の説明図を示している。
【0022】
本発明の製品W表面の拭き取り装置Aの要部構造は、
図1及び
図3に示すように、各ローラー11、12を側面で合わせた状態においてローラー支持機構15にそれぞれ支持した幅狭ローラー11及び幅広ローラー12と、幅広ローラー12の拭き取り周面13が上下変位するように幅広ローラー12を昇降変位させる幅広ローラー可動機構14と、少なくとも各ローラー11、12を足し合わせた幅員に相当する幅員の拭き取りシート30を拭き取り周面13に摺動させながら巻取り可能に構成したシート巻取り機構20と、各ローラー11、12中の少なくともいずれかのローラー11、12に向かって薬液を供給可能に配設した薬液供給機構40(
図3参照)とよりなる。
【0023】
そして、かかる幅狭ローラー11及び幅広ローラー12と、幅広ローラー可動機構14と、シート巻取り機構20と、薬液供給機構40などの要部構造は装置フレーム100に一体に搭載されており、装置フレーム100は、
図5に示すように、ユニバーサルに変動するアーム51を有した産業ロボット50のアーム51の先端に連結しており、アーム51のロボット作動により装置フレーム100に搭載した幅狭、幅広ローラー11,12が製品Wの表面を圧接しながら走行して製品表面の薬液拭き取り作業を行うように構成している。
【0024】
図中、符号60は産業ロボット50のアーム51と装置フレーム100との連結部60を示している。この連結部60は、平面視四角形状の板体61で形成されており、この板体61の中央部にはアーム51の先端との連結機構としてアーム取付孔62を穿設している。
【0025】
このアーム取付孔62の周囲には5つの固定凹部63を形成しており、アーム51の下端部に形成した凸部(図示せず)と、この固定凹部63を係合することで略中央下端部に装置フレーム100が確実に固定されるように構成している。
【0026】
装置フレーム100には、
図1に示すように幅狭ローラー11及び幅広ローラー12と、幅広ローラー可動機構14と、シート巻取り機構20と、薬液供給機構40と、を設けている。
【0027】
幅狭ローラー11及び幅広ローラー12は各ローラー11、12の幅員を幅広ローラー12の幅員W2が幅狭ローラー11の幅員W1の略倍の幅員(W2=W1×2)としており、かかる幅狭ローラー11及び幅広ローラー12は各ローラー11、12の両側面を合わせた幅員となるように構成している。
【0028】
また、各ローラー11、12は、
図3(a)、(b)及び
図4(a)、(b)に示すように、各支持機構15、16を介して装置フレーム100に軸架されている。すなわち、幅狭ローラー11は装置フレーム100を構成する縦フレーム101に幅狭ローラー11用の幅狭ローラー支持機構15を介して軸架固定している。
【0029】
また、幅広ローラー12は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、装置フレーム100に設けた昇降自在の横フレーム102に逆L字状ブラケット17を連設し、逆L字状ブラケット17の垂直部18に幅広ローラー12用の幅広ローラー支持機構16を片持ち支持で軸架固定しており、横フレーム102の昇降作動に追随して幅広ローラー12が上下位置変位するように構成している。これらの機構を総称して幅広ローラー可動機構14としている。なお、横フレーム102の昇降機構は、シリンダーをアクチュエータ出力部105に連動連接して構成されている。
【0030】
従って、互いに側面を合わせて隣接状に併設した幅狭ローラー11及び幅広ローラー12においては、幅広ローラー12の上下位置調整で各ローラー11,12の作業周面、すなわち、拭き取り周面13が同一レベルで並列されて面一状態になる形態と、幅広ローラー12が幅狭ローラー11よりも上方に変位することにより幅狭ローラー11のみが有効作用レベルに位置する形態とに区分される。
【0031】
このように幅広ローラー12の降下形態では、
図4(a)に示すように各ローラー11,12は最下周面の面一レベルで側面並列状態となり、各ローラー11,12の合計幅員が(W1+W2)となり幅狭ローラー11単独での幅員W1の約3倍の有効作用周面幅となる。
他方、幅広ローラー12の上昇形態では、
図4(b)に示すように、幅狭ローラー11のみが有効作用レベルに位置しており、幅狭ローラー11の幅員W1のみが有効作用周面幅となる。
【0032】
また、幅狭ローラー11及び幅広ローラー12の配設位置上方の左右側方には、
図1に示すように、装置フレーム100に拭き取りシート30を巻取るための左右シートローラー21,22が配設されてシート巻取り機構20を構成している。
すなわち、装置フレーム100に左右シートローラー21,22を軸架し、一方のローラー(例えば、左シートローラー21)は拭き取りシート30をロール状に装着し、他方のローラー(例えば、右シートローラー22)は一方の左シートローラー21から解除されながら拭き取りに使用されて汚損した拭き取りシート30を巻き取るように構成されている。
図2中、符号23はシート巻取りのためのアクチュエータとしての電動モータ23を示しており、電動モータ23の出力軸として形成されたモータ出力軸24は右シートローラー22に連動連設している。
【0033】
このように左右シートローラー21,22間に懸架されて巻取り稼働する拭き取りシート30は、
図1及び
図2に示すように、その中途部を幅狭ローラー11及び幅広ローラー12の最下端周面に懸け回されてローラーの拭き取り周面13に当接した状態に構成されている。
【0034】
拭き取りシート30は、少なくとも幅狭ローラー11、及び幅広ローラー12を合わせた幅員に相当する幅員W3を有した長尺帯体でロール状に巻き取ったガーゼで構成しており、
図1及び
図2に示すように、左右シートローラー21,22の中途部を弛ませて幅狭ローラー11及び幅広ローラー12の最下端周面にかけ回している。
また、拭き取りシート30をガーゼとしたことにより、ローラーの回転する方向や拭き取り表面の走行に際して最適な拭き取り機能を果し、特に汚れを拭き取る際、拭き取り表面に対して圧着状態でロボットアームを移動する際に引張り応力に対して必要な強度を形成できる。また、ガーゼは不織布と比較して吸水性に優れ、かつ繊維が太いため押圧走行する幅狭ローラー11及び幅広ローラー12の各拭き取り周面13、13が直接に拭き取り表面と緩衝することなく太繊維のガーゼを介在して押圧摺動することになり、拭き取り表面の損傷等を可及的に防止し、さらに、薬液吸収もしやすく、効率的な薬液拭き取り作業を行うことができる。
【0035】
また、製品Wの汚れを拭取った後に新たな拭き取り面を使用する際には右シートローラー22で巻取りながら各ローラー11、12の拭き取り周面13を摺動することで古い拭き取りシート30から新しい拭き取りシート30に拭き取り面を交換できる。
【0036】
このように、幅広ローラー12のみの上下位置調整により各ローラー11,12の作用周面、すなわち各ローラー11,12の周面最下端部に拭き取り周面13が同一レベルで並列された面一状態になる場合と、幅広ローラー12が幅狭ローラー11よりも上方に変位することにより幅狭ローラー11のみが有効作用レベルに位置する場合との二形態を生成することができ、拭き取りシート30の拭き取り有効幅員を拭き取る製品Wの拭き取り面に応じて使い分けることができる。
【0037】
すなわち、幅広ローラー12を降下形態とすれば、
図4(a)に示すように各ローラー11、12は周面の最下端部が面一レベルで側面並列状態となり、幅狭と幅広の各ローラー11、12の有効作用周面幅員W3となり、この幅員W3の全面に渡り同一幅の拭き取りシート30が製品Wの拭き取り面に当接する。
【0038】
他方、幅広ローラー12を上昇形態とすれば、
図4(b)に示すように幅狭ローラー11のみが有効作用レベルに位置し幅狭ローラー11の幅員W1の幅のみが有効作用周面幅となり幅員W3の拭き取りシート30はその3分の1の幅員だけ幅狭ローラー11に当接してこの3分の1の幅員で製品Wの表面を拭き取り走行することになる。
【0039】
従って、例えば、
図4(b)に示すように、製品Wに突起物Mがあり、その突起物Mの近傍に周縁モールPが形成されている場合は、突起物Mと周縁モールPとの間は幅狭となり、かかる幅狭部分の表面に付着した汚れの薬液等による汚れの拭き取り作業は、幅広ローラー12を上昇形態として幅狭ローラー11のみを有効作用レベル位置とし、幅狭ローラー11の幅員W1の幅で製品Wの幅狭部分を走行させて拭き取り作業を行うことができる。
【0040】
かかる幅狭面の拭き取り作業の拭き取り機能は幅狭ローラー11に当接した拭き取りシート30の略3分の1の幅員W1のみで行うことになる。
【0041】
他方、ガラス製品に突起物Mのない平面を広範囲に拭き取り走行する場合は、拭き取りシート30の全幅員W3を有効に使用する。そのためには、幅広ローラー12を降下形態とし、
図4(a)に示すように各ローラー11,12を最下周面の面一レベルで側面並列状態とし、幅狭と幅広の各ローラー11,12の有効作用周面幅員W3に拭き取りシート30の全幅員W3を当接して全幅員で拭き取り機能を果たすことができる。このように、ガラス製品の汚れの拭き取り面の状況に応じて幅狭ローラー11を使用して有効作用周面である幅員W1で拭き取る場合と、幅狭と幅広の各ローラー11,12の有効作用周面を合わせた最大幅員W3で拭き取りシート30の全幅を使用する場合とがある。
なお、かかる拭き取りシート30による拭き取り幅は幅狭ローラー11と幅広ローラー12との組合せの選択によってなされるが、実際の拭き取り作業では産業ロボット50のアーム51の変位制御と幅広ローラー12の昇降制御とを適時組み合わせることによりガラス製品の所定箇所において拭き取りシート30の有効な機能を果たすことができる。
【0042】
このような拭き取りシート30の使用形態では、幅広ローラー12の上下位置調整制御により拭き取りシート30の全面或いはその3分の1の幅員を使用するようにする。特に、拭き取りシート30の3分の1の幅員を使用する形態では残りの幅員分は幅広ローラー12と当接せず中空を揺動した状態となっている。
すなわち、拭き取りシート30は長尺の巻取りロールとしてシートを解舒しながら新しい拭き取りシート30が各ローラー11、12の周面に当接するようにしているため左右シートローラー21,22と幅狭ローラー11及び幅広ローラー12に掛け渡された拭き取りシート30の途中は弛緩しやすい。
そのため、
図1及び
図2に示すように各ローラー11、12の拭き取り周面13との当接が正確に実施されるように、拭き取りシート30を開放、巻取りする左右シートローラー21,22の中間部で拭き取りシート30を支持する懸架ロッド103,・・・,103を複数縦フレーム101に横架している。
【0043】
上記したように幅狭ローラー11及び幅広ローラー12は製品Wの拭き取り箇所の幅員に応じて使い分けるように構成しており、拭き取りシート30が各ローラー11、12にガイドされて製品Wの表面を摺動して拭き取り作業を果たす。
【0044】
従って、各ローラー11、12は各ローラー支持機構15、16を中心に固定されており、拭き取りシート30を拭き取りガラス表面を摺動する際のガイド機能を最低限備えていれば良く、各ローラー支持機構15、16を中心に回転する必要はない。そのため、各ローラー11,12は不動状態を維持して回転しないように装置フレーム100に固定しておくこともできる。
【0045】
また、各ローラー11,12は製品Wの表面に拭き取りシート30を押圧して走行する機能だけあればローラーの形態としては必ずしも正面視円形である必要はなく、例えば、楕円形や多角形でも拭き取りシート30の拭き取り機能に支障はない。
【0046】
但し、拭き取りシート30の拭き取り作業後に拭き取りシート30の未使用面を各ローラー11、12の拭き取り周面13に円滑に搬送するためには各ローラー11、12を回転自在の構成とすることが望ましい。なぜならば、左右シートローラー21、22の巻取り作動で長尺の拭き取りシート30を円滑に拭き取り周面13に摺動させるには拭き取りシート30の掛け渡し回動作用を促進するために幅狭及び幅広ローラー11、12に回転機構を付した方が良い。
【0047】
また、装置フレーム100には、
図3(a)に示すように、各ローラー11、12の少なくともいずれかのローラー11、12に対して薬液を供給するための薬液供給機構40を設けている。薬液供給機構40は、薬液を貯留するための貯留タンク41と薬液を供給するための供給パイプ42とで構成しており、ここで使用される薬液としては油脂を拭き取るためにアルコール液としている。
【0048】
この貯留タンク41から各ローラー11、12へのアルコール液の供給は拭き取り作業の途中、或いは作業初期に供給するものであり、薬液供給のタイミングは拭き取りシート30の懸架作動や各ローラー11、12の設定作動やアーム51の押圧走行作動等と調時して行う。
【0049】
この発明の製品Wの表面の拭き取り装置Aは上記のように構成されており、その使用手順は次の通りである。
【0050】
まず拭き取りシート30のロールを左右シートローラー21、22に装着する。
【0051】
次いで、拭き取りシート30を各ローラー11、12の下周面、すなわち、拭き取り周面13に当てがいながら左右シートローラー21、22と各ローラー11、12との間にロール状の拭き取りシート30を懸架状態とする。
【0052】
この際に製品Wの拭き取り箇所の状況に応じて幅広ローラー12を昇降調整する。この幅広ローラー12が上昇位置にある時は幅狭ローラー11のみで製品Wを幅狭表面で拭き取り作業し、下降位置にある時は幅狭ローラー11及び幅広ローラー12の双方で製品Wの上面を広く拭き取る。
【0053】
一旦、拭き取り作業が終了すると拭き取りシート30の取替えとして左右シートローラー21,22により拭き取りシート30の巻取りを行い未使用の拭き取りシート30を各ローラー11,12に当接懸架する。
なお、かかる拭き取りシート30の取替え作業は製品Wの押圧走行作業中に行っても良く、このように左右シートローラー21、22の巻取り駆動によって所望のタイミングで新しい拭き取りシート30をセットすることができ、従来のいわゆるバッチ式の拭き取りシート30の取替え作業の代わりにロット式の連続した取替え作業に変換して製品W表面の薬液拭き取り作業の効率化を図った。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0055】
A 拭き取り装置
W 製品
W1、W2、W3 幅員
100 装置フレーム
101 縦フレーム
102 横フレーム
103 懸架ロッド
10 ローラー支持機構
11 幅狭ローラー
12 幅広ローラー
13 拭き取り周面
14 幅広ローラー可動機構
15 幅狭ローラー支持機構
16 幅広ローラー支持機構
17 逆L字状ブラケット
18 垂直部
20 シート巻取り機構
21 左シートローラー
22 右シートローラー
23 電動モータ
24 モータ出力軸
30 拭き取りシート
40 薬液供給機構
41 薬液貯留タンク
42 供給パイプ
50 産業ロボット
51 アーム
60 連結部
61 板体
62 アーム取付孔
63 固定凹部