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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/04 20060101AFI20240326BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20240326BHJP
   G01L 19/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01L19/04
G01L9/00 303P
G01L19/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020026183
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131298
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 祐希
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 里奈
(72)【発明者】
【氏名】新村 悠祐
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0298913(US,A1)
【文献】特開2012-253082(JP,A)
【文献】実開昭48-080592(JP,U)
【文献】特開昭61-138135(JP,A)
【文献】独国実用新案第000020320540(DE,U1)
【文献】特開2012-189349(JP,A)
【文献】特開2004-045140(JP,A)
【文献】特開平05-264385(JP,A)
【文献】特開2009-031291(JP,A)
【文献】特開2004-279151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178487(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10323559(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0009088(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32,27/00-27/02
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流出入する配管と対向する端面に開口部が形成されたハウジングと、
前記開口部を塞ぐように配設されるとともに、前記被測定流体の圧力を受けて変形する薄膜部が中央部に形成されたダイアフラムと、
前記変形を電気信号として検出するために前記薄膜部の表面に載置された圧力検出素子と、
を備え、
前記ダイアフラムは、前記薄膜部の外周縁部に形成された被支持部を介して自身の移動が規制されるように前記ハウジングに支持され、この被支持部と前記ハウジングとの間に、相互間の熱移動を抑制する熱伝導低減構造が設けられ、
前記ハウジングは、内側に形成された空洞部に前記圧力検出素子を収容するセンサハウ
ジングと前記配管と接続する接続ハウジングとに分割されてなり、前記熱伝導低減構造を
備える前記被支持部が、前記センサハウジングおよび前記接続ハウジングの少なくとも一つに設けられている圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記被支持部は前記被測定流体の圧力が印加される方向の移動が規制される第1の被支持部と前記方向に対して垂直な面内の移動が規制される第2の被支持部とから構成され、
前記第1の被支持部および前記第2の被支持部の少なくとも1つが前記熱伝導低減構造を備える圧力センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力センサにおいて、
前記センサハウジングと前記接続ハウジングとの間に相互の熱移動を抑制する熱伝導低減構造がさらに設けられている圧力センサ。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記熱伝導低減構造の少なくとも一部は、前記ハウジングを形成する材料よりも熱伝導率の小さな材料からなる断熱部材が前記ダイアフラムと前記ハウジングとの間に介在することにより構成されている圧力センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記熱伝導低減構造の少なくとも一部は、前記ダイアフラムと前記ハウジングとの接触面積を低減する構造からなる圧力センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の圧力センサにおいて、
前記接触面積を低減する構造は、前記ダイアフラムおよび前記ハウジングの少なくとも一方に突設された複数の柱状体を介して前記ダイアフラムと前記ハウジングとが接するピラー構造である圧力センサ。
【請求項7】
請求項5に記載の圧力センサにおいて、
前記接触面積を低減する構造は、前記ダイアフラムおよび前記ハウジングの少なくとも一方に設けられた凸状段差部を介して前記ダイアフラムと前記ハウジングとが接する構造である圧力センサ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記熱伝導低減構造の少なくとも一部は、前記ダイアフラムと前記ハウジングとの間に形成された真空の空間によって構成される圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体等の圧力を検出する圧力センサ、特にサニタリー用圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力を検出する圧力センサのうち、食品や医薬品等の分野の製造現場等で用いられるサニタリー用圧力センサに対しては、衛生的な配慮が必要とされることから、耐食性、清浄性、信頼性および汎用性等に関して厳しい要件が課せられている。このような要件は、衛生管理に関する法規制の厳格化が図られている近年において、さらに厳しいものとなっている。
【0003】
このような状況にあるサニタリー用圧力センサにおいては、例えば耐食性の要件から、圧力の測定対象の流体(例えば液体)が接触する接液部分にステンレス鋼(SUS)、セラミックスおよびチタン等の耐食性の高い材料が用いられている。また、清浄性の要件から、洗浄しやすいフラッシュダイアフラム構造が採用され、且つ蒸気洗浄に対する高い耐熱衝撃性をもつように設計されている。さらに、信頼性の要件から、封入剤を使用しない構造(オイルフリー構造)およびダイアフラムが破れ難い構造(バリア高剛性)が採用されている。
【0004】
このように、サニタリー用圧力センサにおいては、使用する材料や構造が他の圧力センサに比べて制限されている。このため、他の圧力センサに比べて高感度化が容易ではない。例えば、高い耐圧性能を有するダイアフラムを実現するためには、ダイアフラムの膜厚を大きくする(ダイアフラムの厚みに対する径のアスペクト比を小さくする)必要があるが、ダイアフラムの膜厚を大きくするとダイアフラムの変形が微小となり、センサ感度が低下するという問題が生じる。このため、サニタリー用圧力センサでは、ダイアフラムの微小な変形を精度良く検出するための技術が求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、ダイアフラム(3)の支持面(3B)に略垂直に起立する3つの支持部材(2a、2b,2c)を所定の位置に立設し、これら支持部材の上に半導体チップを載置した圧力センサ(100)が記載されている。この圧力センサ(100)においては、ダイアフラム(3)の微小なたわみが、3つの支持部材(2a、2b,2c)、具体的には、支持面(3B)の中心(30)に配設された1つの支持部材(2a)と、中心(30)に対して点対称となる位置に配設された2つの支持部材(2b,2c)とを通じて効率的にセンシング部(半導体チップ1)に伝えられる(具体的には、半導体チップ1が、支持面3Bに直接設けられている場合に比べて大きく歪むように構成されている)ことで、センサ感度が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-120214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、サニタリー用圧力センサが装着された装置においては、清浄性を保つために定期的に蒸気洗浄が実施されるが、当該蒸気洗浄は、作業性や生産効率等の観点から、装置を作動させた状態で実施されるのが通例である。また、様々な環境下で使用されることから、サニタリー用圧力センサを用いて高温の被測定流体を測定することが想定される。このように、サニタリー用圧力センサにおいては、被測定流体が高温である場合、当該流体との接触面を形成するダイアフラムを通じて大きな熱エネルギが入力する。ここで、上記特許文献1に記載の発明をはじめとする従来のダイアフラムを用いたオイルフリー構造の圧力センサにあっては、ダイアフラムとこれを支持するハウジングとが一体化された中実の金属(例えばステンレス鋼)の塊の下面、換言すれば、ダイアフラム(より具体的には、ダイアフラムにおける薄膜として機能する部分)を一部分として含んだハウジングの下面に被測定流体が接触するように構成されている。このため、上記接触面(ダイアフラムの下面)からハウジング全体へと伝熱が妨げられることなく熱エネルギが拡散する。当該事象は、ダイアフラムおよびこれを含むハウジングの内部に温度分布(温度勾配)を生じさせ、被測定流体の圧力とは無関係にダイアフラムを含むハウジング全体を変形させる(以下、この変形を単に「熱変形」と称することがある。)。この熱変形は、被測定流体の圧力に依存しない出力変動をもたらす。このように、大きな熱エネルギを有する被測定流体が接することで生じるダイアフラムおよびこれを含んだハウジングの温度分布は、ダイアフラムを用いたサニタリー用圧力センサを使用して圧力測定を行う際の誤差要因の1つとなっている。このような測定誤差は、衛生管理に関する法規制の厳格化が図られている現状に鑑みれば、早急に解消しなければならない技術課題の1つである。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダイアフラムおよびハウジングにおける温度分布を抑制し、もって当該温度分布に起因する測定誤差が抑制された圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサ(1A)は、被測定流体が流出入する配管(H)と対向する端面(13)に開口部(14)が形成されたハウジング(10)と、前記開口部を塞ぐように配設されるとともに、前記被測定流体の圧力を受けて変形する薄膜部(21)が中央部に形成されたダイアフラム(20)と、前記変形を電気信号として検出するために前記薄膜部の表面に載置された圧力検出素子(30)と、を備え、前記ダイアフラムは、前記薄膜部の外周縁部に形成された被支持部(22)を介して自身の移動が規制されるように前記ハウジングに支持され、この被支持部と前記ハウジングとの間に、相互間の熱移動を抑制する熱伝導低減構造(40)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記圧力センサにおいて、前記被支持部が前記被測定流体の圧力が印加される方向の移動が規制される第1の被支持部(22c)と前記方向に対して垂直な面内の移動が規制される第2の被支持部(22b)とから構成され、前記第1の被支持部および前記第2の被支持部の少なくとも1つが前記熱伝導低減構造(40、50)を備えるように構成してもよい。
【0011】
また、上記圧力センサにおいて、前記ハウジングが、内側に形成された空洞部(15)に前記圧力検出素子を収容するセンサハウジング(12E)と前記配管と接続する接続ハウジング(11E)とに分割されてなり、前記熱伝導低減構造を備える前記第1被支持部および前記第2被支持部の少なくとも一つが、前記センサハウジングおよび前記接続ハウジングの少なくとも一つに設けられるように構成してもよい。
【0012】
さらに、上記圧力センサにおいて、 前記センサハウジングと前記接続ハウジングとの間に相互の熱移動を抑制する熱伝導低減構造(90)がさらに設けられるように構成してもよい。
【0013】
また、上記圧力センサにおいて、前記熱伝導低減構造の少なくとも一部が、前記ハウジングを形成する材料よりも熱伝導率の小さな材料からなる断熱部材が前記ダイアフラムと前記ハウジングとの間に介在することにより構成されていてもよい。
【0014】
さらに、上記圧力センサにおいて、前記熱伝導低減構造の少なくとも一部が、前記ダイアフラムと前記ハウジングとの接触面積を低減する構造であってもよい。
【0015】
また、上記圧力センサにおいて、前記接触面積を低減する構造が、前記ダイアフラムおよび前記ハウジングの少なくとも一方に突設された複数の柱状体(61)を介して前記ダイアフラムと前記ハウジングとが接するピラー構造であってもよい。
【0016】
さらに、上記圧力センサにおいて、前記接触面積を低減する構造が、前記ダイアフラムおよび前記ハウジングの少なくとも一方に設けられた凸状段差部(70)を介して前記ダイアフラムと前記ハウジングとが接する構造であってもよい。
【0017】
また、上記圧力センサにおいて、前記熱伝導低減構造の少なくとも一部が、前記ダイアフラムと前記ハウジングとの間に形成された真空の空間(80)によって構成されてもよい。
【0018】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を括弧付きで記載している。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダイアフラムの温度分布に起因する測定誤差が抑制された圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る圧力センサに配管が接続された態様を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図3図3は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図4図4は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図5図5は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図6図6は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る圧力センサが備える「熱伝導低減構造」の一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態である第1の実施の形態ないし第6の実施の形態を、図1ないし図8に基づいて説明する。なお、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を割愛する。また、説明文中の前後方向、上下方向および左右方向は、各図に示された圧力センサ1A、1B、1C、1D、1E、1Fの紙面に対する奥行き方向、上下方向および左右方向としてそれぞれ定義する。なお、各図は概念図であって、それぞれに示された内容は、実際の圧力センサと必ずしも同一ではない。
【0022】
≪第1の実施の形態≫
はじめに、本発明の第1の実施の形態である圧力センサ1Aを、図1および図2に基づいて説明する。
【0023】
〔圧力センサの構成〕
先ず、圧力センサ1Aの構成について説明する。この圧力センサ1Aは、図1に示すように、ハウジング10とダイアフラム20と圧力検出素子30とから主に構成されており、さらに、ハウジング10とダイアフラム20との間に介在する断熱部材40、50を備えている。
【0024】
[ハウジング10]
ハウジング10は、被測定流体Fが流出入する配管Hと接続する連結部材としての機能と、ダイアフラム20の移動を規制する支持部材としての機能と、圧力検出素子30を粉塵等から保護するカバー部材としての機能とを有する要素であって、耐食性の高い金属材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)からなる。ハウジング10は、例えば、配管Hと連結する接続部11と、圧力検出素子30を収容する空間を内側に備えるセンサハウジング部12とが一体成形された形で構成されている。また、ハウジング10の下面には、配管Hと対向する端面13が形成されており、この端面13の中央部には、ダイアフラム20が組み込まれる開口部14が形成されている。
【0025】
ハウジング10の一部を構成する接続部11は、ハウジング10の下部を形成する略円錐台形状を呈した部位であって、半径方向外側に向かってテーパ状に突出する部分によってフェルールフランジ部11fが形成されている。このフェルールフランジ部11fは、例えば図1に示すように、弾性部材Mを介して配管Hのフェルールフランジ部Hfと接続する。圧力センサ1Aと配管Hとは、例えば、上下に重なり合ったフェルールフランジ部11fとフェルールフランジ部HfとがクランプCによって上下方向に挟持されることで所定の結合力を伴って連結している。また、接続部11の下面は、上記端面13の一部を構成し、その内側には、全高の低い円柱状の内部空間をもつ上記開口部14が形成されている。この開口部14には、ダイアフラム20が挿入される。なお、上記弾性部材Mは、ハウジング10に比べて熱伝導率の小さな材料から形成されていることが好ましい。これにより、被測定流体の熱エネルギがハウジング10に伝達されることを可及的に抑制することができる。
【0026】
センサハウジング部12は、ハウジング10の上部を形成する部位であって、接続部11から上方(配管Hと対向する側と反対の方向)へ向けて延在する円筒形状を呈し、その内側には開口部14から上方へ延伸した円柱状の空洞部15が形成されている。この空洞部15は、圧力検出素子30が収容される上記空間に相当し、例えば大気と連通している。空洞部15の開口径は、例えば開口部14のそれよりも小さく形成されており、空洞部15の下端と開口部14との間には、図2に示すように、略水平面からなる円環状の座面12aが形成されている。
【0027】
[ダイアフラム20]
ダイアフラム20は、配管Hの内部空間と空洞部15とを非連通状態で隔絶する隔壁部材としての機能と、被測定流体Fの圧力Pを受圧するとその一部がたわむ変形部材としての機能とを備える要素であって、ハウジング10と同じく耐食性が高い材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)またはチタンから形成されている。ダイアフラム20は、図2に示すように、その中央部に薄膜部21が形成され、薄膜部21の外側に外周縁部22が形成されている。また、ダイアフラム20の下面(配管Hと対向する側の面)は、被測定流体Fと接する流体接触面20aの少なくとも一部を形成している。
【0028】
ダイアフラム20の中央部を構成する薄膜部21は、変形部材としての機能を果たす部分であって、例えば薄い円板状の部位として形成されている。薄膜部21の下面(配管Hと対向する側の面)は、被測定流体Fの圧力Pを受ける受圧面21aを形成する。この受圧面21aは、流体接触面20aの一部を構成し、薄膜部21が変形部材としての機能を果たすべく、その全面が配管Hの内部空間Vと対向している。例えば、配管Hが円筒管からなる本実施の形態では、受圧面21aの直径D21が配管Hの内径dH(配管Hの内部空間Vを画成する内側壁面の直径dH)よりも小さく設定されている。また、薄膜部21の上面(受圧面21aの反対側にあって空洞部15と対向する位置にある面)は、圧力検出素子30が載置されるセンサ保持面21bを形成している。
薄膜部21は、受圧面21aを通じて大気よりも高い被測定流体Fの圧力Pが印加されると、外周縁部22と連接する周縁が所定の位置に固定されつつ中央が突出するように変形する。この変形は、センサ保持面21bに載置された圧力検出素子30へと伝達される。
【0029】
ダイアフラム20の外周縁を構成する外周縁部22は、所定の剛性を伴って薄膜部21の外周縁を保持しつつ、開口部14にダイアフラム20が挿入された際、断熱部材40、50を介してハウジング10に支持される部位である。外周縁部22は、所定の剛性が保持されるよう薄膜部21よりも厚みが大きく設定され、また、開口部14へ挿入可能となるように、その平面視形状が画定される。例えば、開口部14が円柱状を呈している本実施の形態では、開口部14の開口径よりも小さい外径を有する円形状として上記平面視形状が画定される。上記形態の外周縁部22においては、ダイアフラム20がハウジング10の開口部14を塞ぐように配設された際、その外周側壁面22bが開口部14を画成する円筒側壁面14aと対向し、その上面22cがハウジング10の座面12aと対向することとなる。なお、互いが対向するこれら部位間には、後述するように、断熱部材40、50が配設される(具体的には、上面22cと座面12aと間に断熱部材40が配設され、外周側壁面22bと円筒側壁面14aとの間に断熱部材50が配設される)。このため、互いが対向するこれら部位の間に所定の隙間が形成されるよう、各寸法が設定される。
【0030】
また、外周縁部22の下面22aは、受圧面21aとともに流体接触面20aの一部を構成する。ここで、外周縁部22の外径、すなわち、ダイアフラム20の外径D20は、例えば、下面22aが配管Hの内部空間Vと対向するように、配管Hの内径dHと同等に設定される。これにより、下面22aよりも内側で被測定流体Fと接することとなる。換言すれば、被測定流体Fとハウジング10とが接しないように構成されることとなる。なお、下面22aと配管Hの内部空間Vを画成する壁部Wの上端面とが対向するように上記外径D20を設定してもよい。すなわち、外径D20が配管Hの内径dHよりも大きくなるように設定してもよい。
【0031】
上記形態のダイアフラム20においては、流体接触面20aを通じて被測定流体Fの圧力Pが所定の方向(図1および図2における上方向)へ印加された際、ダイアフラム20の当該方向への移動(以下、この移動を「第1の移動」と称する。)が、上面22cおよびこれと対向する座面12aを通じて規制されることとなる。すなわち、上面22cは、特許請求の範囲に記載の「第1の被支持部」として機能し、座面12aは、ダイアフラム20の上記第1方向の移動を規制する支持部(以下、「第1の支持部」と称する。)として機能することとなる。
【0032】
また、ダイアフラム20は、外周側壁面22bおよびこれと対向する円筒側壁面14aを通じて、圧力Pが印加される方向に対して垂直な面内(図1および図2における水平面内。)の移動(以下、この移動を「第2の移動」と称する。)が規制されることとなる。すなわち、外周側壁面22bは、特許請求の範囲に記載の「第2の被支持部」として機能し、円筒側壁面14aは、ダイアフラム20の上記第2の移動を規制する支持部(以下、「第2の支持部」と称する。)として機能することとなる。
なお、本実施の形態では、後述するように、円筒側壁面14aと外周側壁面22bとの間には、弾性材料からなる断熱部材50が圧入されることとなる。このため、外周側壁面22bは、ダイアフラム20の上記第1の移動が規制される「第1の被支持部」としても機能することとなる。
【0033】
[圧力検出素子30]
圧力検出素子30は、ダイアフラム20における薄膜部21の変形を電気信号(例えば電圧信号)として検出する回路を備えた要素であって、例えば図2に示すように、3つの支持部材31を介してダイアフラム20のセンサ保持面21bの上に配設されている。圧力検出素子30は、例えば、Si等の半導体材料から成る基板とこの基板の上面に形成されたホイートストンブリッジ回路からなるひずみゲージとから構成されている。ホイートストンブリッジ回路が備える4つの抵抗素子(例えば拡散抵抗)は、薄膜部21の変形に応じてその長さが変位(伸縮)することで抵抗値が増減するように構成されている。これにより、薄膜部21の変形がホイートストンブリッジ回路の中間点の電圧値の変化として検出される。
【0034】
[断熱部材40]
断熱部材40は、ハウジング10とダイアフラム20との間、より具体的には、ハウジング10に形成された座面12aとダイアフラム20の一部を構成する外周縁部22に形成された上面22c(第1被支持部)との間に配設され、こられ2つの部位の間の熱移動を抑制する部材(特許請求の範囲に記載の「熱伝導低減構造」を構成する部材)である。断熱部材40は、ハウジング10を形成する材料(例えば、ステンレス鋼(SUS)またはチタン)よりも線膨張率の小さな材料、例えば耐熱性の高い材料(ゴムシート等)、フッ素系(PTFE)、シリコン系の材料からなる。断熱部材40は、例えば平面視円環状の薄板部材からなり、その外径はハウジング10に形成された開口部14の開口径未満であり、かつその内径は、空洞部15の開口径以上に設定されている。
【0035】
[断熱部材50]
断熱部材50は、ハウジング10とダイアフラム20との間、より具体的には、ハウジング10に形成された開口部14の円筒側壁面14aとダイアフラム20の一部を構成する外周縁部22(第2被支持部)の外周側壁面22bとの間に配設され、こられ2つの部位の間の熱移動を抑制する部材(断熱部材40とともに特許請求の範囲に記載の「熱伝導低減構造」を構成する部材)である。断熱部材50は、断熱部材40と同様に、ハウジング10を形成する材料、例えばステンレス鋼(SUS)またはチタンよりも線膨張率の小さな材料(例えば樹脂材料)からなり、好ましくは、ハウジング10とダイアフラム20との間に形成される上記隙間をシールすべく弾性材料からなる。当該弾性材料からなる断熱部材50は、その外径が開口部14の開口径(円筒側壁面14aの直径)よりも大きく、かつその内径が外周縁部22の外径(外周側壁面22bの直径)よりも小さな円環状の部材、例えばOリングからなる。当該仕様の断熱部材50は、円筒側壁面14aと外周側壁面22bとの間に圧入されることとなる。
【0036】
なお、断熱部材50にシール性能を持たせる代わりに、断熱部材40にシール性能をもたせてもよい。このとき断熱部材40は、ハウジング10を形成する材料よりも線膨張率の小さな弾性材料から形成されることとなる。
【0037】
〔効果〕
サニタリー用圧力センサが装着された装置においては、上述したように、清浄性を保つために作動中に蒸気洗浄が実施され、また、高温の被測定流体を測定することがあり得る。このため、ダイアフラムを用いた圧力センサをサニタリー用圧力センサとして使用する場合、作動中にダイアフラムを通じて大きな熱エネルギが圧力センサに入力することが想定される。ここで、従来のダイアフラムを用いたオイルフリー構造の圧力センサにおいては、上述したように、被測定流体と接触するダイアフラムがハウジングの一部分として形成されているため、被測定流体との接触面(ダイアフラムの下面)からハウジング全体に伝熱が妨げられることなく熱エネルギが拡散する。当該事象は、高温の流体にさらされた接触面(ダイアフラムの下面)と外表面が外気にさらされた他の部分との間に連続的な温度分布(温度勾配)を生じさせ、熱変形をもたらす。この温度分布に起因した熱変形は、上述したように、測定誤差をもたらす。これに対し、上記構成のダイアフラムを用いた圧力センサ1Aによれば、以下に示す理由によって、ダイアフラム20およびこれを支持するハウジング10のそれぞれにおいて温度分布が生じることを抑制し、上記熱変形に起因した測定誤差を低減することができる。
【0038】
すなわち、ダイアフラムを用いた圧力センサにおいては、受圧時にダイアフラムの移動、具体的には、上記第1の移動および上記第2の移動を規制することが機能上必須となる。これら2つの移動を規制するためには、ダイアフラムとこれを支持するハウジングとが不可避的に接触しまたは結合することになる。ここで、第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aにおいては、上述したように、ダイアフラム20の上記第1の移動を規制するために、ダイアフラム20側に「第1の被支持部」としての上面22cが設けられ、ハウジング10側に上面22cと対向する座面12aが設けられ、さらに上記第2の移動を規制するために、ダイアフラム20側に「第2の被支持部」としての外周側壁面22bが設けられ、ハウジング10側に外周側壁面22bと対向する円筒側壁面14aが設けられている。そして、これら対向する部位間には、断熱部材が介在している。具体的には、上面22cと座面12aとの間に断熱部材40が介在し、外周側壁面22bと円筒側壁面14aとの間に断熱部材50が介在している。この結果、ハウジング10とダイアフラム20とが熱的にアイソレーションされた構造(上記弾性部材Mが熱伝導率の低い断熱材料からなる場合には、配管Hとの間でも熱的にアイソレーションされた構造)となっている。さらに、薄膜部21および外周縁部22のみからなるダイアフラム20は、熱容量が小さく、均熱化が促進され易い構造となっている。
【0039】
上記構造の圧力センサ1Aによれば、高温の蒸気にさらされたダイアフラム20は、全体が蒸気の温度に均熱化され、他方、ダイアフラム20との間で熱的にアイソレーションされかつ外気にさらされたハウジングは、全体が略外気温に維持されることとなる。このように、上記構成の圧力センサ1Aによれば、ハウジング10およびダイアフラム20のそれぞれにおいて、温度分布の発生を抑制することができ、当該温度分布に起因した測定誤差を抑えることができる。
【0040】
≪第2の実施の形態≫
つづいて、本発明の第2の実施の形態である圧力センサ1Bを、図3に基づいて説明する。この第2の実施の形態に係る圧力センサ1Bは、断熱部材40を備えておらず、代わりにハウジング10とダイアフラム20との接触面積を低減するためのピラー構造60を具備している点が第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aと相違する。なお、これ以外の構成は圧力センサ1Aと同一である。
【0041】
ピラー構造60は、例えば図3に示すように、ハウジング10とダイアフラム20との間に配設された複数の柱状体61から構成されている。これら複数の柱状体61は、例えば、その全てがハウジング10に形成された座面12aから下方に向けて突設されており(形態1)、または、その全てがダイアフラム20の外周縁部22の上面22cから上方に向けて突設されており(形態2)、または、一部が座面12aから下方に向けて突設され残りが外周縁部22の上面22cから上方に向けて突設されている(形態3)。複数の柱状体61の頂面は、対向する面に当接している。具体的には、上記形態1ではダイアフラム20に形成された上面22cに当接し、上記形態2ではハウジング10に形成された座面12aに当接し、上記形態3では上面22cおよび座面12aに当接している。これら互いが当接する面のうち、ダイアフラム20の側に設けられた柱状体61の頂面および上面22cは、「第1の被支持部」として機能し、ハウジング10の側に設けられた柱状体61の頂面および座面12aは、「第1の支持部」として機能する。
【0042】
柱状体61は、例えば円柱からなる。ただし、円柱に限定される訳ではなく、円錐、円錐台、角柱、平面視円環状の凸形状等であってもよい。また、柱状体61が配置される位置や数も特定のものに限定されない。例えば、柱状体61を平面視において放射状に配置してもよいし、ランダムに配置してもよい。また、ダイアフラム20の上記第1の移動が安定した状態で規制されるよう、例えば、平面視略120度の間隔で配設された3つの柱状体61からピラー構造を構成してもよい。
【0043】
〔効果〕
複数の柱状体61からなるピラー構造を有することで、ダイアフラム20に設けられた「第1の被支持部」とこれに対向するハウジング10に設けられた第1の支持部との接触面積を低減させることができる。これにより、これら2つの部位間の熱移動量(伝熱量)が抑制される。この結果、上記第1の実施の形態と同様に、ハウジング10とダイアフラム20とが、互いに熱的にアイソレーションした状態となり、ハウジング10およびダイアフラム20のそれぞれにおいて、温度分布の発生を抑制することができる。これにより、当該温度分布に起因した測定誤差を抑えることができる。
【0044】
≪第3の実施の形態≫
つぎに、本発明の第3の実施の形態である圧力センサ1Cを、図4に基づいて説明する。この圧力センサ1Cは、断熱部材40を備えておらず、代わりにハウジング10とダイアフラム20との接触面積を低減するための凸状段差部70が設けられている点が第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aと相違する。なお、これ以外の構成は圧力センサ1Aと同一である。
【0045】
凸状段差部70は、例えば図4に示すように、ハウジング10の開口部14を画成する円筒側壁面14aの上端部から半径方向へ突出するように形成され、その縦断面形状は、略矩形状を呈している。凸状段差部70の内周側面をなす円筒側壁面70aの直径は、ダイアフラム20の外周側壁面22bの直径よりも小さく設定されている。これにより、ダイアフラム20が開口部14に挿入された際、その外周縁部22の上面22cの一部(具体的には、上面22cの外周縁部)が、略水平面からなる凸状段差部70の下面70bに当接する。これにより、下面70bは、「第1の被支持部」として機能する上面22cを通じてダイアフラム20の上記第1の移動を規制する支持部として機能する。
【0046】
凸状段差部70の縦断面形状は、略矩形状に限定される訳ではなく、例えば略半円形または略三角形であってもよい。このとき、凸状段差部70と外周縁部22の上面22cとが接するように各寸法が決定される。
【0047】
〔効果〕
凸状段差部70を有することで、ダイアフラム20に設けられた「第1の被支持部(外周縁部22の上面22c)」とこれに対向するハウジング10に設けられた第1の支持部(凸状段差部70の下面70b)との接触面積を低減させることができる。これにより、これら2つの部位間の熱移動量(伝熱量)が抑制される。この結果、上記第1の実施の形態と同様に、ハウジング10とダイアフラム20とが、互いに熱的にアイソレーションした状態となり、ハウジング10およびダイアフラム20のそれぞれにおいて、温度分布の発生を抑制することができる。これにより、当該温度分布に起因した測定誤差を抑えることができる。
【0048】
≪第4の実施の形態≫
つづいて、本発明の第4の実施の形態である圧力センサ1Dを、図5に基づいて説明する。この圧力センサ1Dは、断熱部材40を備えておらず、代わりにハウジング10に真空の空間80が設けられている点が第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aと相違する。なお、これ以外の構成は圧力センサ1Aと同一である。
【0049】
真空の空間80は、例えば図5に示すように、ハウジング10の一部分、具体的には、ダイアフラム20の一部を構成する外周縁部22の上面22c(第1の被支持部)と対向する部分に設けられている。これにより、真空の空間80の下部を画成する部分は、ダイアフラム20の上記第1の移動の規制する「第1の支持部」に相当する座面12aを形成する。
【0050】
なお、真空の空間80を、ダイアフラム20の側、例えばハウジング10の座面12aと対向する外周縁部22の一部分として設けてもよい。この場合、真空の空間80の上部を画成する部分は、第1の被支持部として機能する上面22cを形成する。
【0051】
〔効果〕
真空の空間80を有することで、ハウジング10に形成された座面12a(第1の被支持部)とダイアフラム20に形成された上面22c(第1の支持部)との間の熱移動量(伝熱量)が抑制される。この結果、上記第1の実施の形態と同様に、ハウジング10とダイアフラム20とが、互いに熱的にアイソレーションした状態となり、ハウジング10およびダイアフラム20のそれぞれにおいて、温度分布の発生を抑制することができる。これにより、当該温度分布に起因した測定誤差を抑えることができる。
【0052】
≪第5の実施の形態≫
つぎに、本発明の第5の実施の形態である圧力センサ1Eを、図6に基づいて説明する。この圧力センサ1Dは、ハウジングが2つの部品に分割されており、こられ2つの部品の間に「熱伝導低減構造」としての断熱部材が配設されている点が第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aと異なっている。
【0053】
圧力センサ1Eを構成するハウジング10Eは、図6に示すように、配管Hと接続する接続ハウジング11Eと圧力検出素子30を内側に収容するセンサハウジング12Eとに分割されてなる。センサハウジング12Eが接続ハウジング11Eの内側に挿入されるように組付けられることでハウジング10Eが形成される。なお、これら接続ハウジング11Eおよびセンサハウジング12Eは、圧力センサ1Aが備えるハウジング10と同様に、耐食性の高い金属材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)からなる。
【0054】
接続ハウジング11Eは、中央部に貫通孔が形成された略円錐台形状の部材であって、その下面に、配管Hと対向する端面13Eが形成されている。端面13Eの中央部には、開口部14Eが形成されており、さらにこの開口部14Eと連通しながら上方へと延在する挿入孔16Eが形成されている。開口部14Eおよび挿入孔16Eは、上記貫通孔を構成し、開口部14Eにはダイアフラム20およびセンサハウジング12Eの下端部に突設されたフランジ部12Ebが挿入され、挿入孔16Eにはフランジ部12Ebを除くセンサハウジング12Eの主要部が挿入される。ここで、挿入孔16Eを画成する円筒側壁面16Eaの半径は、開口部14を画成する円筒側壁面14Eaの半径よりも小さく設定されている。これにより、開口部14Eと挿入孔16Eとの間に略水平面からなる座面11Eaが下向きに形成されている。
【0055】
接続ハウジング11Eの外周側面は、ハウジング10の接続部11と同様に、半径方向外側に向かってテーパ状に突出し、当該突出部分によってフェルールフランジ部11Efが形成されている。フェルールフランジ部11Efは、圧力センサ1Aが備えるフェルールフランジ部11fと同様の方式により配管Hのフェルールフランジ部Hfと接合する。
【0056】
センサハウジング12Eは、略円筒状を呈し、下端部に半径方向へ突出したフランジ部12Ebを備える。フランジ部12Ebの下面は、ダイアフラム20の外周縁部22に形成された上面22cと対向する座面12Eaを形成している。この座面12Eaは、第1の支持部として機能する。すなわち、センサハウジング12Eは、座面12Eaを通じて第1の被支持部として機能する上面22cの移動、具体的には、ダイアフラム20の第1の移動を規制する。
【0057】
また、フランジ部12Ebの上面は、接続ハウジング11Eに形成された下向きの座面11Eaと対向する第1被支持部12Ecを形成している。センサハウジング12Eは、この第1被支持部12Ecと座面11Eaとを通じて、第1の移動が規制される。
【0058】
さらに、フランジ部12Ebの外周側壁面は、接続ハウジング11Eに形成された開口部14Eを画成する円筒側壁面14Eaと対向する第2被支持部12Eeを形成している。センサハウジング12Eは、この第2被支持部12Eeと円筒側壁面14Eaを通じて、第2の移動が規制される。
【0059】
接続ハウジング11Eとセンサハウジング12Eとの間には円環状の水平板部90aと円筒状の垂直壁部90bとから形成された断熱部材90が配設されている。具体的には、センサハウジング12Eの第1の移動を規制する第1被支持部12Ec(フランジ部12Ebの上面)と座面11Eaとの間に水平板部90aが介在し、センサハウジング12Eの第2の移動を規制する第2被支持部12Ee(フランジ部12Ebの外周側壁面)と開口部14Eを画成する円筒側壁面14Eaとの間に垂直壁部90bが介在するように配設されている。
【0060】
この断熱部材90は、断熱部材40と同様に、接続ハウジング11Eとセンサハウジング12Eを形成する材料(例えば、ステンレス鋼(SUS)またはチタン)よりも線膨張率の小さな材料、例えば耐熱性の高い材料(ゴムシート等)、フッ素系(PTFE)、シリコン系の材料からなる。
【0061】
〔効果〕
上記構成の圧力センサ1Eにおいては、薄膜部21と外周縁部22のみから構成された熱容量の小さいダイアフラム20が、断熱部材40、50を通じてハウジング10Eとの間で熱的にアイソレーションされることで、第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aと同様の効果がもたらされる。
また、上記構成の圧力センサ1Eにおいては、ハウジング10Eが接続ハウジング11Eとセンサハウジング12Eとに分割され、かつ互いが断熱部材90を通じて熱的にアイソレーションされているため、これら2つの部材ごとに均熱化が促進される。これにより、ハウジング10Eに温度分布が生じることを効果的に抑制することができる。この結果、温度分布に起因した測定誤差を、より確実に抑えることができる。
【0062】
≪第6の実施の形態≫
最後に、本発明の第6の実施の形態に係る圧力センサ1Fを、図7に基づいて説明する。この圧力センサ1Fは、断熱部材40、50を備えておらず、代わりにハウジング10とダイアフラム20との間に真空の空間100が配設されている点が第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aと相違する。なお、これ以外の構成は、圧力センサ1Aと同一である。
【0063】
真空の空間100は、ダイアフラム20の第1の移動を規制する「第1の被支持部」と「第1の支持部」との間、およびダイアフラム20の第2の移動を規制する「第2の被支持部」と「第2の支持部」との間に形成されている。具体的には、図7に示すように、ハウジング10に形成された座面12a(第1の支持部)とダイアフラム20に形成された上面22c(第1の被支持部)との間、およびハウジング10に形成された開口部14を画成する円筒側壁面14a(第2の支持部)とダイアフラム20を構成する外周縁部22の外周側壁面22b(第2の被支持部)との間に形成されている。真空の空間100は、これら部位と、開口部14の下端部から半径方向内側に向けて突設された凸部100aおよび空洞部15の下端部から下方に向けて突設された凸部100bとによって画成されている。凸部100aの頂部とこれに対向する外周縁部22の外周側壁面22b、および凸部100bの頂部とこれに対向する外周縁部22の上面22cとは、例えば、溶接等によって真空封止接合されている。すなわち、ハウジング10とダイアフラム20とは、真空の空間100を通じて一体化されている。
【0064】
〔効果〕
真空の空間100を有することで、ハウジング10に形成された座面12a(第1の被支持部)とダイアフラム20に形成された上面22c(第1の支持部)との間、およびハウジング10に形成された開口部14を画成する円筒側壁面14a(第2の支持部)とダイアフラム20を構成する外周縁部22の外周側壁面22b(第2の被支持部)との間の熱移動量(伝熱量)が抑制される。この結果、上記第1の実施の形態と同様に、ハウジング10とダイアフラム20とが、互いに熱的にアイソレーションした状態となり、ハウジング10およびダイアフラム20のそれぞれにおいて、温度分布の発生を抑制することができる。これにより、当該温度分布に起因した測定誤差を抑えることができる。
【0065】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、明細書および図面に直接記載のない構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、上記記載および各図で示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることも可能である。
【0066】
例えば、上記実施の形態においては、ダイアフラム20の第2の移動を規制する部位間(第2の被支持部としての外周側壁面22bと第2の支持部としての円筒側壁面14a)に配設された断熱部材50がOリングによって構成されているが、これを、図8に示すような薄膜部材50´によって構成してよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、ダイアフラム20の第1の移動と第2の移動とを規制する部位間にそれぞれ「熱伝導低減構造」が設けられているが、いずれか一方の移動を規制する部位間にのみ「熱伝導低減構造」が設けられた仕様としてもよい。当該仕様によっても、従来の圧力センサと比較して、ハウジング10とダイアフラム20とが熱的にアイソレーションされた状態が実現される。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、主にダイアフラム20の第1の移動を制限する部位間(第1の被支持部と第1の支持部との間)に設けられている「熱伝導低減構造」に対し、種々の形態を提案しているが、これら種々の形態をダイアフラム20の第2の移動を制限する部位間(第2の被支持部と第2の支持部との間)に採用してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態においては、ダイアフラム変形を電気信号として検出する手法(センシング原理)として、ひずみゲージを含んだ半導体チップを用いているが、これに限定されるわけではなく、例えば、静電容量式センサ、金属歪みゲージ、抵抗ゲージをスパッタ等により成膜したものを用いた圧力検出手法(センシング原理)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B、1C、1D、1E、1F…圧力センサ、10…ハウジング、11…接続部、12…センサハウジング部、13…端面、14…開口部、14a…円筒側壁面、15…空洞部、16E…挿入孔、20…ダイアフラム、20a…流体接触面、21…薄膜部、22…外周縁部、30…圧力検出素子、31…支持部材、40…断熱部材、50…断熱部材、60…ピラー構造、61…柱状体、70…凸状段差部、80…真空の空間、90…断熱部材、100…真空の空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8