(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ガイド表示システムおよびこれを備えたクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240326BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20240326BHJP
G01C 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C13/22 Y
G01C7/00
(21)【出願番号】P 2020056811
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 巖
(72)【発明者】
【氏名】小阪 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 勁太
(72)【発明者】
【氏名】窪田 諭
(72)【発明者】
【氏名】田中 成典
(72)【発明者】
【氏名】中原 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】中畑 光貴
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-99742(JP,A)
【文献】特開2006-11880(JP,A)
【文献】特開2013-221887(JP,A)
【文献】特開2019-24151(JP,A)
【文献】特開2002-366977(JP,A)
【文献】特開2011-134234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
B66C 13/22
G01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を第一標高値として取得し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を取得するとともに当該標高値の平均を第二標高値として算出し、
前記第一標高値と前記第二標高値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、ことを特徴とするガイド表示システム。
【請求項2】
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を含む所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を取得するとともに当該標高値の平均を第一平均値として算出し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を取得するとともに当該標高値の平均を第二平均値として算出し、
前記第一平均値と前記第二平均値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、ことを特徴とするガイド表示システム。
【請求項3】
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
それぞれの前記三次元地図について前記グリッドごとに地表面又は地物を表すラベル値を付与し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図について前記グリッドごとの前記ラベル値を第一ラベル値として取得し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの前記ラベル値を取得するとともに当該ラベル値の平均を第二ラベル値として算出し、
前記第一ラベル値と前記第二ラベル値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、ことを特徴とするガイド表示システム。
【請求項4】
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
それぞれの前記三次元地図について地物を特定し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図における前記地物の位置を第一地物位置として取得し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の前記三次元地図における前記地物の位置を第二地物位置として取得し、
前記第一地物位置と前記第二地物位置との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、ことを特徴とするガイド表示システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイド表示システムを備えたクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド表示システムおよびこれを備えたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吊荷と吊荷周辺の地物について、位置および標高に関する情報をオペレータに提示できるガイド表示システムが公知となっている。かかるガイド表示システムは、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたガイド表示システムは、レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部を備えている。データ処理部は、吊荷や地物を取り囲むガイド枠図形などのガイド情報を生成し、カメラが撮影した映像に対してガイド情報を重ね合わせてデータ表示部に表示する。このようなガイド表示システムによれば、吊荷と吊荷周辺の地物について、位置および標高に関する情報をオペレータに提示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたガイド表示システムは、作業領域における地物を認識できるものの、その地物が動体であるか否かを区別して認識できないという問題があった。つまり、
図18に示すように、作業領域における地物を認識できるものの、その地物が作業員や作業車両などの動体であるか否かを区別して認識できないという問題があったのである。
【0006】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、作業領域における地物について動体であるか否かを区別して認識できるガイド表示システムを提供することを目的としている。また、かかるガイド表示システムを備えたクレーンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第一の発明は、
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を第一標高値として取得し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を取得するとともに当該標高値の平均を第二標高値として算出し、
前記第一標高値と前記第二標高値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。
【0009】
第二の発明は、
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を含む所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を取得するとともに当該標高値の平均を第一平均値として算出し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの標高値を取得するとともに当該標高値の平均を第二平均値として算出し、
前記第一平均値と前記第二平均値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。
【0010】
第三の発明は、
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
それぞれの前記三次元地図について前記グリッドごとに地表面又は地物を表すラベル値を付与し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図について前記グリッドごとの前記ラベル値を第一ラベル値として取得し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の所定枚数の前記三次元地図について前記グリッドごとの前記ラベル値を取得するとともに当該ラベル値の平均を第二ラベル値として算出し、
前記第一ラベル値と前記第二ラベル値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。
【0011】
第四の発明は、
吊荷の上方から当該吊荷ならびに地表面を走査するレーザスキャナと、
前記レーザスキャナが取得した点群データを用いてグリッドごとに代表点を算出するとともに当該代表点に基づいて三次元地図を作成するデータ処理部と、を備えたクレーンのガイド表示システムにおいて、
連続するフレームごとに前記三次元地図を作成し、
それぞれの前記三次元地図について地物を特定し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図における前記地物の位置を第一地物位置として取得し、
現在時刻から最も近い時刻に作成された前記三次元地図を除く他の前記三次元地図における前記地物の位置を第二地物位置として取得し、
前記第一地物位置と前記第二地物位置との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。
【0012】
第五の発明は、第一から第四の発明に係るガイド表示システムを備えたクレーンである、としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
第一の発明に係るガイド表示システムは、連続するフレームごとに三次元地図を作成する。そして、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図についてグリッドごとの標高値を第一標高値として取得し、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図を除く他の所定枚数の三次元地図についてグリッドごとの標高値を取得するとともに標高値の平均を第二標高値として算出し、第一標高値と第二標高値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システムによれば、作業領域における地物について動体であるか否かを区別して認識できる。
【0015】
第二の発明に係るガイド表示システムは、連続するフレームごとに三次元地図を作成する。そして、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図を含む所定枚数の三次元地図についてグリッドごとの標高値を取得するとともに標高値の平均を第一平均値として算出し、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図を除く他の所定枚数の三次元地図についてグリッドごとの標高値を取得するとともに標高値の平均を第二平均値として算出し、第一平均値と第二平均値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システムによれば、作業領域における地物について動体であるか否かを区別して認識できる。
【0016】
第三の発明に係るガイド表示システムは、連続するフレームごとに三次元地図を作成する。そして、それぞれの三次元地図についてグリッドごとに地表面又は地物を表すラベル値を付与し、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図についてグリッドごとのラベル値を第一ラベル値として取得し、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図を除く他の所定枚数の三次元地図についてグリッドごとのラベル値を取得するとともにラベル値の平均を第二ラベル値として算出し、第一ラベル値と第二ラベル値との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システムによれば、作業領域における地物について動体であるか否かを区別して認識できる。
【0017】
第四の発明に係るガイド表示システムは、連続するフレームごとに三次元地図を作成する。そして、それぞれの三次元地図について地物を特定し、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図における地物の位置を第一地物位置として取得し、現在時刻から最も近い時刻に作成された三次元地図を除く他の三次元地図における地物の位置を第二地物位置として取得し、第一地物位置と第二地物位置との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システムによれば、作業領域における地物について動体であるか否かを区別して認識できる。
【0018】
第五の発明に係るクレーンは、第一から第四の発明に係るガイド表示システムを備えた、としたものである。かかるクレーンによれば、前述の効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクレーンを示す図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るガイド表示システムを示す図。
【
図9】第一形態に係る同一領域推定処理の流れを示す図。
【
図10】第一形態に係る同一領域推定処理の概要を示す図。
【
図11】第二形態に係る同一領域推定処理の流れを示す図。
【
図12】第二形態に係る同一領域推定処理の概要を示す図。
【
図13】第三形態に係る同一領域推定処理の流れを示す図。
【
図14】第三形態に係る同一領域推定処理の概要を示す図。
【
図15】第四形態に係る同一領域推定処理の流れを示す図。
【
図16】第四形態に係る同一領域推定処理の概要を示す図。
【
図17】同一領域推定処理を経て生成されたガイド情報を示す図。
【
図18】地物が動体であるか否かを区別して認識できない状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の一実施形態に係るクレーン1について説明する。
【0021】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、走行車両2とクレーン装置6を備えている。
【0022】
走行車両2は、クレーン装置6を搬送するものである。走行車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。走行車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、走行車両2の幅方向に延伸するビームと地表面Fに接地して走行車両2を支持するジャッキシリンダで構成されている。
【0023】
クレーン装置6は、吊荷Wを吊り上げた状態で搬送するものである。クレーン装置6は、ブーム7を備えている。ブーム7には、ワイヤロープ8が架け渡されている。ブーム7の先端部分から垂下するワイヤロープ8には、フック9が取り付けられている。また、ブーム7の基端側近傍には、ウインチ10が配置されている。尚、クレーン装置6は、ブーム7の側方にキャビン11を備えている。キャビン11の内部には、旋回操作具19や伸縮操作具20、起伏操作具21、巻回操作具22などが設けられている(
図2参照)。
【0024】
ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータを旋回用モータ12と定義する。旋回用モータ12は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ23によって適宜に稼動する(
図2参照)。つまり、旋回用モータ12は、旋回用バルブ23が作動油の流量や流動方向を切り替えることで適宜に稼動する。尚、旋回用バルブ23は、制御装置18の指示に基づいて稼動する。ブーム7の旋回角度は、旋回用センサ27によって検出される(
図2参照)。
【0025】
また、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータを伸縮用シリンダ13と定義する。伸縮用シリンダ13は、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ24によって適宜に稼動する(
図2参照)。つまり、伸縮用シリンダ13は、伸縮用バルブ24が作動油の流量や流動方向を切り替えることで適宜に稼動する。尚、伸縮用バルブ24は、制御装置18の指示に基づいて稼動する。ブーム7の伸縮長さは、伸縮用センサ28によって検出される(
図2参照)。
【0026】
更に、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータを起伏用シリンダ14と定義する。起伏用シリンダ14は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ25によって適宜に稼動する(
図2参照)。つまり、起伏用シリンダ14は、起伏用バルブ25が作動油の流量や流動方向を切り替えることで適宜に稼動する。尚、起伏用バルブ25は、制御装置18の指示に基づいて稼動する。ブーム7の起伏角度は、起伏用センサ29によって検出される(
図2参照)。
【0027】
加えて、フック9は、アクチュエータによって昇降自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータを巻回用モータ15と定義する。巻回用モータ15は、電磁比例切換弁である巻回用バルブ26によって適宜に稼動する(
図2参照)。つまり、巻回用モータ15は、巻回用バルブ26が作動油の流量や流動方向を切り替えることで適宜に稼動する。尚、巻回用バルブ26は、制御装置18の指示に基づいて稼動する。フック9の吊下長さは、巻回用センサ30によって検出される(
図2参照)。
【0028】
ところで、本願においては、クレーン1に対してXYZ座標系を規定している。XYZ座標系におけるX軸方向(奥行方向とも呼ぶ)は、ブーム7の起伏支点の軸方向に対して垂直、かつ重力方向に対して垂直な方向となっている。また、XYZ座標系におけるY軸方向(水平方向とも呼ぶ)は、ブーム7の起伏支点の軸方向に対して平行、かつ重力方向に対して垂直な方向となっている。更に、XYZ座標系におけるZ軸方向(鉛直方向とも呼ぶ)は、ブーム7の起伏支点の軸方向に対して垂直、かつ重力方向に対して平行な方向となっている。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係るガイド表示システム50について説明する。
【0030】
図2に示すように、ガイド表示システム50は、クレーン1の制御装置18と連携している。ガイド表示システム50は、データ取得部60とデータ処理部70とデータ表示部80とデータ入力部90を備えている。
【0031】
データ取得部60は、後述するガイド情報を生成するために必要な情報を取得するものである。データ取得部60は、カメラ61とレーザスキャナ62と慣性計測装置63と第一測位装置64が一体に構成されたセンサユニット66を有している。センサユニット66は、ブーム7の先端部分にジンバルを介して取り付けられている(
図1参照)。
【0032】
カメラ61は、作業領域の一部を撮影するものである。カメラ61は、適宜なスペックを有しており、撮影した映像をデータ処理部70へ出力する。尚、カメラ61は、吊荷Wの上方から吊荷Wならびに吊荷W周辺の地表面F(地物Eを含む)を撮影する。そのため、データ処理部70は、吊荷Wならびに吊荷W周辺の地表面F(地物Eを含む)についての映像を取得することができる。
【0033】
レーザスキャナ62は、作業領域の一部について点群データPを取得するものである(
図3参照)。レーザスキャナ62は、適宜なスペックを有しており、取得した点群データPをデータ処理部70へ出力する。尚、レーザスキャナ62は、吊荷Wの上方から吊荷Wならびに吊荷W周辺の地表面F(地物Eを含む)を走査する。そのため、データ処理部70は、吊荷Wならびに吊荷W周辺の地表面F(地物Eを含む)についての点群データPを取得することができる。
【0034】
慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:以下「IMU」とする)63は、センサユニット66の姿勢に関する情報(具体的にはカメラ61とレーザスキャナ62の姿勢に関する情報)を取得するものである。IMU63は、適宜なスペックを有しており、取得したカメラ61とレーザスキャナ62の姿勢に関する情報をデータ処理部70へ出力する。そのため、データ処理部70は、カメラ61とレーザスキャナ62の姿勢に関する情報を取得することができる。
【0035】
第一測位装置(Global Navigation Satellite System:以下「GNSS受信機」とする)64は、GNSS衛星から発せられた電波を受信することでセンサユニット66の緯度、経度、標高値(具体的にはレーザスキャナ62の座標値)を取得するものである。GNSS受信機64は、適宜なスペックを有しており、取得したレーザスキャナ62の座標値をデータ処理部70へ出力する。そのため、データ処理部70は、レーザスキャナ62の座標値を取得することができる。
【0036】
加えて、データ取得部60においては、第二測位装置65がクレーン装置6の旋回中心位置に配置されている。第二測位装置(Global Navigation Satellite System:以下「GNSS受信機」とする)65は、GNSS衛星から発せられた電波を受信することでクレーン装置6の旋回中心の緯度、経度、標高値(具体的にはクレーン装置6の旋回中心の座標値)を取得するものである。GNSS受信機65は、適宜なスペックを有しており、取得した旋回中心の座標値をデータ処理部70へ出力する。そのため、データ処理部70は、クレーン装置6の旋回中心の座標値を取得することができる。
【0037】
このように、ガイド表示システム50は、レーザスキャナ62の座標値とクレーン装置6の旋回中心の座標値によってブーム7を基線としたGNSSコンパスを構成している。このため、データ処理部70は、レーザスキャナ62の向きを算出することができる。また、ガイド表示システム50では、点群データPおよびIMU63の計測時刻がGNSS衛星の原子時計の時刻(以下「GNSS時刻」とする)で同期していることを要件としている。尚、GNSS受信機64とGNSS受信機65には、測位精度の高いRTK(Real Time Kinematic)測位方式を採用している。但し、RTK測位方式に限定せず、他の測位方式を採用していてもよい。
【0038】
データ処理部70は、データ取得部60と接続されており、様々な処理を行うものである。データ処理部70は、例えば汎用のコンピュータによって構成されている。尚、データ処理部70は、センサユニット66の近傍に配置されている。但し、データ処理部70は、キャビン11の内部など他の場所に配置されていてもよい。もちろん持ち運び可能なものであってもよい。
【0039】
データ表示部80は、データ処理部70と接続されており、様々な情報を映し出すものである。データ表示部80は、例えば汎用のモニタによって構成されている。尚、データ表示部80は、キャビン11の内部に配置されている。そのため、クレーン1のオペレータに対して情報を提示できる。もちろんデータ処理部70が持ち運び可能なものである場合などでは、一体となったモニタであってもよい。
【0040】
データ入力部90は、データ処理部70と接続されており、様々な数値を入力或いは設定を変更するものである。データ入力部90は、例えば汎用のキーボードやマウス、タッチパネルによって構成されている。尚、データ入力部90も、キャビン11の内部に配置されている。そのため、クレーン1のオペレータが自在に数値を入力或いは設定を変更できる。もちろんデータ処理部70が持ち運び可能なものである場合などでは、一体となったキーボードやマウス、タッチパネルであってもよい。
【0041】
次に、レーザスキャナ62による走査態様について説明する。
【0042】
図3に示すように、レーザスキャナ62は、地表面Fに対して上方からレーザ光を照射する。レーザスキャナ62は、複数のレーザ発信機ならびにレーザ受信機を備えており、同時に複数本のレーザ光を照射して同時に複数個の点データp(点データpの集合が点群データPである)を取得できる。
【0043】
具体的に説明すると、レーザスキャナ62は、合計16個のレーザ発信機を備えており、同時に16本のレーザ光を照射できる。それぞれのレーザ発信機は、Y軸方向を中心に2°ずつ照射角度を異にしている。また、それぞれのレーザ発信機は、X軸を中心に連続的に位相角を変えて照射可能に構成されている。そのため、レーザスキャナ62は、地表面Fの所定の範囲に対してレーザ光を照射できる。
【0044】
更に、レーザスキャナ62は、合計16個のレーザ受信機を備えており、同時に16本のレーザ光の反射光を検出できる。それぞれのレーザ受信機は、Y軸方向を中心に2°ずつ検出角度を異にしている。また、それぞれのレーザ受信機は、レーザ発信機から発信されたレーザ光と同じ光路で反射光を検出可能に構成されている。こうして、レーザスキャナ62は、地表面Fを覆う点群データPを取得できるのである。尚、点群データPを取得できる範囲は、カメラ61によって撮影される範囲である計測領域Rを含んでいる。
【0045】
このように構成することで、データ処理部70は、計測領域Rを含む範囲について点群データPを取得できる。レーザスキャナ62は、吊荷Wの上方から吊荷Wならびに吊荷W周辺の地表面F(地物Eを含む)を走査するため、点群データPには、吊荷W、地表面F、地物Eが表れることとなる。点群データPを構成する各点データpには、IMU63やGNSS受信機64・65によって取得された様々な情報が付加される。例えば姿勢情報や位置情報などである。
【0046】
次に、データ処理部70による処理の流れについて説明する。
【0047】
図4に示すように、データ処理部70は、点群データ補正工程STEP-1と三次元地図作成工程STEP-2とクラスタリング工程STEP-3と作業領域可視化工程STEP-4を行う。これらの工程は、所定時間ごとに繰り返し行われる。
【0048】
点群データ補正工程STEP-1は、レーザスキャナ62、IMU63、GNSS64・65による情報を基に現在時刻から最も近い時刻の点群データP、姿勢情報および位置情報を取得し、レーザスキャナ62の向きを算出する。そして、姿勢情報、位置情報および向きを用いて点群データPの位置と傾きを補正し、これを補正済みの点群データPとして出力する(
図5参照)。
【0049】
具体的に説明すると、点群データ補正工程STEP-1は、時刻同期処理STEP-11と剛体変換処理STEP-12で構成されている。
【0050】
時刻同期処理STEP-11は、現在時刻から最も近い時刻で、かつ計測領域Rの端から端までを一巡したレーザスキャナ62、IMU63、GNSS64・65による情報同士をGNSS時刻にて同期する。そして、同期済みの点データp、姿勢情報、位置情報の組み合わせを出力する。
【0051】
剛体変換処理STEP-12は、同期済みの点データp、姿勢情報、位置情報の組み合わせを一つ取得する。そして、取得した姿勢情報を用いて点データpの座標値を剛体変換し、点データpの座標系を平面直角座標系に変換して傾き、位置および向きを補正した点群データPを出力する。
【0052】
三次元地図作成工程STEP-2は、異なる時期や位置から取得した補正済みの点群データP同士を重ね合わせ、格子状のグリッド(複数の点データpを含む格子状に分割された領域である)Gに分割し、グリッドGごとに代表点Prを算出する(
図6(A)参照)。そして、代表点Prに基づいて面を生成することで、これを作業領域の三次元地
図Mとして出力する(
図6(B)参照)。
【0053】
具体的に説明すると、三次元地図作成工程STEP-2は、グリッド生成処理STEP-21と三次元地図更新処理STEP-22で構成されている。
【0054】
グリッド生成処理STEP-21は、補正済みの点群データP同士を重ね合わせて格子状のグリッドGに分割する。そして、グリッドGに含まれる点データpの標高値(座標値の高さ成分)について平均値を算出し、グリッドGの重心位置に高さ成分を平均値とした代表点Prを算出する。
【0055】
三次元地図更新処理STEP-22は、グリッドGごとに新たに算出された代表点Prを取得する。また、前回に算出された既存の代表点Prも取得する。そして、新たに算出された代表点Prと既存の代表点Prが異なる場合に新たに算出された代表点Prに基づく面を生成して三次元地
図Mを出力する。
【0056】
クラスタリング工程STEP-3は、上下左右に隣り合うグリッドGの代表点Prについて互いの代表点Prの高さ成分の関係性から特定領域に対してラベルLを付与する(
図7(A)参照)。なお、
図7(A)等に示す丸囲み数字がラベルLを表している。そして、同じラベルLが付された特定領域について吊荷Wに相当する特定領域を吊荷Wとし、地表面Fに相当する特定領域を地表面Fとして出力する(
図7(B)参照)。更に、それ以外の特定領域を地物Eとして出力する(
図7(C)参照)。
【0057】
具体的に説明すると、クラスタリング工程STEP-3は、ラベリング処理STEP-31と同一領域推定処理STEP-32と地物領域推定処理STEP-33で構成されている。
【0058】
ラベリング処理STEP-31は、格子状に並ぶグリッドGを画素に見立てる。また、各グリッドGに存在する代表点Prの高さ成分を輝度値に見立てる。そして、上下左右に隣り合うグリッドGの輝度値を所定の定めに基づいて比較し、特定領域に対してラベルLを付与する。
【0059】
同一領域推定処理STEP-32は、同じラベルLが付された特定領域を一つの平面に見立てる。そして、同じラベルLが付された特定領域の中でオペレータが手動操作によって選択した特定領域を吊荷Wとして出力する。また、最も点データpが多い特定領域を地表面Fとして出力する。
【0060】
地物領域推定処理STEP-33は、吊荷Wや地表面Fとされた特定領域以外について代表点Prの集合を特定領域として取得する。そして、この特定領域に最も近い地表面Fとされた特定領域を取得した上で高さ成分の平均値を算出し、平均値の差が同じ特定領域の高さ成分の差以下の場合に地物Eとして出力する。
【0061】
作業領域可視化工程STEP-4は、吊荷Wや地物Eを取り囲むガイド枠図形GD1などのガイド情報(標高を表す数値GD2・GD3を含む)を生成し、カメラ61が撮影した映像に対してガイド情報を重ね合わせてデータ表示部80に出力する(
図8(A)参照)。また、吊荷W、地表面F、地物Eの三次元的な位置関係を表す三次元地
図Mについて可視化して出力する(
図8(B)参照)。
【0062】
具体的に説明すると、作業領域可視化工程STEP-4は、領域可視化処理STEP-41と三次元地図可視化処理STEP-42で構成されている。
【0063】
領域可視化処理STEP-41は、レーザスキャナ62の位置と向きに基づいて吊荷Wや地物Eの映像上における位置を算出する。そして、吊荷Wや地物Eを取り囲むガイド枠図形GD1を生成し、カメラ61が撮影した映像における吊荷Wや地物Eに対してガイド枠図形GD1を重ね合わせて出力する。また、吊荷Wの標高を表す数値GD2や地物Eの標高を表す数値GD3についても出力する。
【0064】
三次元地図可視化処理STEP-42は、ラベルLが付された吊荷W、地表面F、地物EについてグリッドGごとに代表点Prの座標値を取得する。そして、グリッドGごとに代表点Prを重心とする面を生成する。このとき、面の一辺の幅は、グリッドGの幅と同じとする。その後、吊荷W、地表面F、地物Eごとに着色を行って、これを三次元地
図Mとして可視化するのである。
【0065】
次に、第一形態に係る地物領域推定処理STEP-33の流れについて詳しく説明する。ここでは、既に地物Eが特定されているものとする。
【0066】
前述したように、データ処理部70は、クラスタリング工程STEP-3にて地物領域推定処理STEP-33を行う。
【0067】
図9に示すように、地物領域推定処理STEP-33は、グリッドGごとに行われる複数の処理によって構成されている。以下に説明する処理の流れは、ガイド表示システム50に採用できる一例である。但し、本願に掲げる発明を実現できればよく、処理の流れについて限定するものではない。
【0068】
第一処理STEP-331において、データ処理部70は、時系列に並んだ複数のフレームf・f・f・・・を取得する(
図10(A)参照)。「フレームf」とは、ある時刻の点群データPに基づいて作成された三次元地
図Mと同義といえる。三次元地
図M・M・M・・・を取得した後には、第二処理STEP-332へ移行する。
【0069】
第二処理STEP-332において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図MについてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を第一標高値En1として取得する(
図10(B)参照)。第一標高値En1を取得した後には、第三処理STEP-333へ移行する。
【0070】
第三処理STEP-333において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を取得するとともに標高値の平均を第二標高値En2として算出する(
図10(C)参照)。本ガイド表示システム50では、「所定枚数」を過去へ遡って連続する30枚(t-1番目からt-30番目までの30枚)としている。第二標高値En2を取得した後には、第四処理STEP-334へ移行する。
【0071】
第四処理STEP-334において、データ処理部70は、第一標高値En1と第二標高値En2との差が閾値を超えるか否かを判断する。本ガイド表示システム50では、「閾値」を0.6メートルとしている。これらの差が閾値を超えている場合には、第五処理STEP-335へ移行し、これらの差が閾値を超えていない場合には、第六処理STEP-336へ移行する。
【0072】
第五処理STEP-335において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを動体であると判断する(
図17の矢印m参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて動体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、動体であると認定された地物Eに対して他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0073】
他方、第六処理STEP-336において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを静止体であると判断する(
図17の矢印s参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて静止体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、静止体であると認定された地物Eに対して他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0074】
このように、本ガイド表示システム50は、連続するフレームf・f・f・・・ごとに三次元地
図Mを作成する。そして、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図MについてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を第一標高値En1として取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を取得するとともに標高値の平均を第二標高値En2として算出し、第一標高値En1と第二標高値En2との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システム50によれば、作業領域における地物Eについて動体であるか否かを区別して認識できる。
【0075】
ところで、本ガイド表示システム50においては、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く他の三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得(一つ前の三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得するが、かかる三次元地
図Mに同じ地物Eが表れていない場合は、更に遡った三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得する)し、これらの位置が重なる場合に静止体であると判断する、との構成を追加できる。このような構成を追加した場合、該当の地物Eが静止体であるとの判断を行うことができる。そして、静止体と判断された地物Eを除くことにより、その他の地物Eについて動体であるとの判断をより確実に行える。
【0076】
次に、第二形態に係る地物領域推定処理STEP-33の流れについて詳しく説明する。ここでは、既に地物Eが特定されているものとする。
【0077】
前述したように、データ処理部70は、クラスタリング工程STEP-3にて地物領域推定処理STEP-33を行う。
【0078】
図11に示すように、地物領域推定処理STEP-33は、グリッドGごとに行われる複数の処理によって構成されている。以下に説明する処理の流れは、ガイド表示システム50に採用できる一例である。但し、本願に掲げる発明を実現できればよく、処理の流れについて限定するものではない。
【0079】
第一処理STEP-331において、データ処理部70は、時系列に並んだ複数のフレームf・f・f・・・を取得する(
図12(A)参照)。「フレームf」とは、ある時刻の点群データPに基づいて作成された三次元地
図Mと同義といえる。三次元地
図M・M・M・・・を取得した後には、第二処理STEP-332へ移行する。
【0080】
第二処理STEP-332において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを含む所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を取得するとともに標高値の平均を第一平均値An1として算出する(
図12(B)参照)。本ガイド表示システム50では、「所定枚数」を過去へ遡って連続する30枚(t番目からt-29番目までの30枚)としている。第一平均値An1を取得した後には、第三処理STEP-333へ移行する。
【0081】
第三処理STEP-333において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を取得するとともに標高値の平均を第二平均値An2として算出する(
図12(C)参照)。本ガイド表示システム50では、「所定枚数」を過去へ遡って連続する30枚(t-1番目からt-30番目までの30枚)としている。第二平均値An2を取得した後には、第四処理STEP-334へ移行する。
【0082】
第四処理STEP-334において、データ処理部70は、第一平均値An1と第二平均値An2との差が閾値を超えるか否かを判断する。本ガイド表示システム50では、「閾値」を0.4メートルとしている。これらの差が閾値を超えている場合には、第五処理STEP-335へ移行し、これらの差が閾値を超えていない場合には、第六処理STEP-336へ移行する。
【0083】
第五処理STEP-335において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを動体であると判断する(
図17の矢印m参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて動体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、動体であると認定された地物Eに対して他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0084】
他方、第六処理STEP-336において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを静止体であると判断する(
図17の矢印s参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて静止体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、静止体であると認定された地物Eに対して他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0085】
このように、本ガイド表示システム50は、連続するフレームf・f・f・・・ごとに三次元地
図Mを作成する。そして、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを含む所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を取得するとともに標高値の平均を第一平均値An1として算出し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとの標高値(代表点Prの高さ成分)を取得するとともに標高値の平均を第二平均値An2として算出し、第一平均値An1と第二平均値An2との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システム50によれば、作業領域における地物Eについて動体であるか否かを区別して認識できる。
【0086】
ところで、本ガイド表示システム50においても、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く他の三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得(一つ前の三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得するが、かかる三次元地
図Mに同じ地物Eが表れていない場合は、更に遡った三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得する)し、これらの位置が重なる場合に静止体であると判断する、との構成を追加できる。このような構成を追加した場合、該当の地物Eが静止体であるとの判断を行うことができる。そして、静止体と判断された地物Eを除くことにより、その他の地物Eについて動体であるとの判断をより確実に行える。
【0087】
次に、第三形態に係る地物領域推定処理STEP-33の流れについて詳しく説明する。ここでは、既に地物Eが特定されているものとする。
【0088】
前述したように、データ処理部70は、クラスタリング工程STEP-3にて地物領域推定処理STEP-33を行う。
【0089】
図13に示すように、地物領域推定処理STEP-33は、グリッドGごとに行われる複数の処理によって構成されている。以下に説明する処理の流れは、ガイド表示システム50に採用できる一例である。但し、本願に掲げる発明を実現できればよく、処理の流れについて限定するものではない。
【0090】
第一処理STEP-331において、データ処理部70は、時系列に並んだ複数のフレームf・f・f・・・を取得する(
図14(A)参照)。「フレームf」とは、ある時刻の点群データPに基づいて作成された三次元地
図Mと同義といえる。三次元地
図M・M・M・・・を取得した後には、第二処理STEP-332へ移行する。
【0091】
第二処理STEP-332において、データ処理部70は、それぞれの三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとに地表面F又は地物Eを表すラベル値Lnを付与する(
図14(B)参照)。地表面Fに対しては、ラベル値Lnとして「0」が付与され、地物Eに対しては、ラベル値Lnとして「1」が付与される。ラベル値Lnを付与した後には、第三処理STEP-333へ移行する。
【0092】
第三処理STEP-333において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図MについてグリッドGごとのラベル値(地表面Fが「0」で地物Eが「1」)Lnを第一ラベル値Ln1として取得する(
図14(C)参照)。第一ラベル値Ln1を取得した後には、第四処理STEP-334へ移行する。
【0093】
第四処理STEP-334において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとのラベル値(地表面Fが「0」で地物Eが「1」)Lnを取得するとともにラベル値Lnの平均を第二ラベル値Ln2として算出する(
図14(D)参照)。本ガイド表示システム50では、「所定枚数」を過去へ遡って連続する20枚(t-1番目からt-20番目までの20枚)としている。第二ラベル値Ln2を取得した後には、第五処理STEP-335へ移行する。
【0094】
第五処理STEP-335において、データ処理部70は、第一ラベル値Ln1と第二ラベル値Ln2との差が閾値を超えるか否かを判断する。本ガイド表示システム50では、「閾値」を0.85メートルとしている。これらの差が閾値を超えている場合には、第六処理STEP-336へ移行し、これらの差が閾値を超えていない場合には、第七処理STEP-337へ移行する。
【0095】
第六処理STEP-336において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを動体であると判断する(
図17の矢印m参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて動体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、動体であると認定された地物Eに対して他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0096】
他方、第七処理STEP-337において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを静止体であると判断する(
図17の矢印s参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて静止体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、静止体であると認定された地物Eに対して他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0097】
このように、本ガイド表示システム50は、連続するフレームf・f・f・・・ごとに三次元地
図Mを作成する。そして、それぞれの三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとに地表面F又は地物Eを表すラベル値Lnを付与し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図MについてグリッドGごとのラベル値Lnを第一ラベル値Ln1として取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く所定枚数の三次元地
図M・M・M・・・についてグリッドGごとのラベル値Lnを取得するとともにラベル値Ln・Ln・Ln・・・の平均を第二ラベル値Ln2として算出し、第一ラベル値Ln1と第二ラベル値Ln2との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システム50によれば、作業領域における地物Eについて動体であるか否かを区別して認識できる。
【0098】
ところで、本ガイド表示システム50においても、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く他の三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得(一つ前の三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得するが、かかる三次元地
図Mに同じ地物Eが表れていない場合は、更に遡った三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得する)し、これらの位置が重なる場合に静止体であると判断する、との構成を追加できる。このような構成を追加した場合、該当の地物Eが静止体であるとの判断を行うことができる。そして、静止体と判断された地物Eを除くことにより、その他の地物Eについて動体であるとの判断をより確実に行える。
【0099】
次に、第四形態に係る地物領域推定処理STEP-33の流れについて詳しく説明する。ここでは、既に地物Eが特定されているものとする。
【0100】
前述したように、データ処理部70は、クラスタリング工程STEP-3にて地物領域推定処理STEP-33を行う。
【0101】
図15に示すように、地物領域推定処理STEP-33は、グリッドGごとに行われる複数の処理によって構成されている。以下に説明する処理の流れは、ガイド表示システム50に採用できる一例である。但し、本願に掲げる発明を実現できればよく、処理の流れについて限定するものではない。
【0102】
第一処理STEP-331において、データ処理部70は、時系列に並んだ複数のフレームf・f・f・・・を取得する(
図16(A)参照)。「フレームf」とは、ある時刻の点群データPに基づいて作成された三次元地
図Mと同義といえる。三次元地
図M・M・M・・・を取得した後には、第二処理STEP-332へ移行する。
【0103】
第二処理STEP-332において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mにおける地物Eの位置(座標値)を第一地物位置Ep1として取得する(
図16(B)参照)。第一地物位置Ep1を取得した後には、第三処理STEP-333へ移行する。
【0104】
第三処理STEP-333において、データ処理部70は、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く他の三次元地
図Mにおける地物Eの位置(座標値)を第二地物位置Ep2として取得する(
図16(C)参照)。本ガイド表示システム50では、一つ前の三次元地
図Mを用いて第二地物位置Ep2を取得するが、かかる三次元地
図Mに相応の地物Eが表れていない場合は、更に遡った三次元地
図Mを用いて第二地物位置Ep2を取得する。第二地物位置Ep2を取得した後には、第四処理STEP-334へ移行する。
【0105】
第四処理STEP-334において、データ処理部70は、第一地物位置Ep1と第二地物位置Ep2との差(水平方向への変位量)が閾値を超えるか否かを判断する。本ガイド表示システム50では、「閾値」をグリッドGの座標値で規定している。これらの差が閾値を超えている場合には、第五処理STEP-335へ移行し、これらの差が閾値を超えている場合には、第六処理STEP-336へ移行する。
【0106】
第五処理STEP-335において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを動体であると判断する(
図17の矢印m参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて動体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、動体であると認定された地物Eに対して他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(静止体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0107】
他方、第六処理STEP-336において、データ処理部70は、かかるグリッドGを含む地物Eを静止体であると判断する(
図17の矢印s参照)。このため、データ処理部70は、この地物Eについて静止体であることを認識できる。尚、データ表示部80には、静止体であると認定された地物Eに対して他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色のガイド枠図形GD1を表示する。また、他の地物(動体と認定された地物)Eとは異なる色の標高を表す数値GD3を表示する。
【0108】
このように、本ガイド表示システム50は、連続するフレームf・f・f・・・ごとに三次元地
図Mを作成する。そして、それぞれの三次元地
図M・M・M・・・について地物Eを特定し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mにおける地物Eの位置を第一地物位置Ep1として取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く他の三次元地
図Mにおける地物Eの位置を第二地物位置Ep2として取得し、第一地物位置Ep1と第二地物位置Ep2との差が所定の閾値を超えた場合に動体であると判断する、としたものである。かかるガイド表示システム50によれば、作業領域における地物Eについて動体であるか否かを区別して認識できる。
【0109】
ところで、本ガイド表示システム50においても、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得し、現在時刻から最も近い時刻tに作成された三次元地
図Mを除く他の三次元地
図Mにおける地物Eの位置を取得(一つ前の三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得するが、かかる三次元地
図Mに同じ地物Eが表れていない場合は、更に遡った三次元地
図Mを用いて地物Eの位置を取得する)し、これらの位置が重なる場合に静止体であると判断する、との構成を追加できる。このような構成を追加した場合、該当の地物Eが静止体であるとの判断を行うことができる。そして、静止体と判断された地物Eを除くことにより、その他の地物Eについて動体であるとの判断をより確実に行える。
【0110】
最後に、発明の対象をガイド表示システム50からガイド表示システム50を備えたクレーン1とすることも考えられる。
【0111】
即ち、クレーン1は、ガイド表示システム50を備えている、としたものである。かかるクレーン1によれば、前述の効果と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0112】
1 クレーン
50 ガイド表示システム
60 データ取得部
61 カメラ
62 レーザスキャナ
63 慣性計測装置(IMU)
64 第一測位装置(GNSS受信機)
65 第二測位装置(GNSS受信機)
66 センサユニット
70 データ処理部
80 データ表示部
90 データ入力部
f フレーム
t 時刻
E 地物
F 地表面
G グリッド
M 三次元地図
P 点群データ
W 吊荷
Pr 代表点
En1 第一標高値
En2 第二標高値
An1 第一平均値
An2 第二平均値
Ln1 第一ラベル値
Ln2 第二ラベル値
Ep1 第一地物位置
Ep2 第二地物位置