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特許7460428射出成形機の段取支援装置及び段取支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】射出成形機の段取支援装置及び段取支援方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020065114
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160279
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】羽野 勝之
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-032437(JP,A)
【文献】特開平06-254932(JP,A)
【文献】特開2017-154311(JP,A)
【文献】特開2011-167876(JP,A)
【文献】特開2004-155088(JP,A)
【文献】特開2008-110485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段取項目で構成される段取作業を支援する射出成形機の段取支援装置であって、
前記段取項目の作業時間を算出するためのテーブルを記憶する記憶部と、
入力情報及び前記テーブルに基づいて、並行して行う複数の前記段取項目の各前記段取項目の作業開始タイミングを決定する、段取作業タイミング決定部と、を備え
前記テーブルは、前記射出成形機の周辺設備の能力に関わる設備能力補正データ、金型装置に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための金型補正データ、前記射出成形機の外部の環境に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための外部環境補正データ、および、作業者に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための作業者能力補正データ、の少なくとも1つを含む、
射出成形機の段取支援装置。
【請求項2】
前記段取作業タイミング決定部は、
前記段取項目の作業順番を決定する、
請求項1に記載の射出成形機の段取支援装置。
【請求項3】
前記入力情報は、前記射出成形機の設備情報、金型情報、成形条件情報、外部環境情報、作業者情報のうち少なくとも1つを含む、
請求項1または請求項2に記載の射出成形機の段取支援装置。
【請求項4】
前記段取作業の実績値に基づいて、前記テーブルを補正する、学習部を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機の段取支援装置。
【請求項5】
複数の段取項目で構成される段取作業を支援する段取支援方法であって、
入力情報を入力するステップと、
前記入力情報と、前記段取項目の作業時間を算出するためのテーブルと、に基づいて、並行して行う複数の前記段取項目の各前記段取項目の作業開始タイミングを決定するステップと、を有し、
前記テーブルは、射出成形機の周辺設備の能力に関わる設備能力補正データ、金型装置に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための金型補正データ、前記射出成形機の外部の環境に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための外部環境補正データ、および、作業者に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための作業者能力補正データ、の少なくとも1つを含む、
段取支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の段取支援装置及び段取支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機により成形を行う場合、予め、樹脂準備、金型取付、周辺設備の接続等の複数の段取項目から構成される段取作業が行われる。
【0003】
特許文献1には、射出成形機に係わる所定の段取りを支援するための射出成形機の段取支援方法において、段取り時に、コントローラのディスプレイに段取り画面を表示し、この段取り画面における段取りの種類に対応して設けた複数の項目選択ボタンの選択が行われたなら、選択された所定の段取りに係わる個々の作業のガイダンスメッセージを、作業手順に沿って順次ガイダンス表示部により表示するようにしたことを特徴とする射出成形機の段取支援方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-155088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、段取作業をどのように行うかは、作業者の経験に頼ることも多い。このため、シリンダ等の昇温完了や樹脂乾燥完了後において、他の段取項目が終わらず、長時間昇温温度での停止状態が続くおそれがあった。これにより、無駄な電力が消費されたり、樹脂焼けや過乾燥等の問題が発生するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、段取作業を支援する射出成形機の段取支援装置及び段取支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様の射出成形機の段取支援装置は、複数の段取項目で構成される段取作業を支援する射出成形機の段取支援装置であって、前記段取項目の作業時間を算出するためのテーブルを記憶する記憶部と、入力情報及び前記テーブルに基づいて、並行して行う複数の前記段取項目の各前記段取項目の作業開始タイミングを決定する、段取作業タイミング決定部と、を備え、前記テーブルは、前記射出成形機の周辺設備の能力に関わる設備能力補正データ、金型装置に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための金型補正データ、前記射出成形機の外部の環境に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための外部環境補正データ、および、作業者に応じて変化する前記段取項目の作業時間を算出するための作業者能力補正データ、の少なくとも1つを含む
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、段取作業を支援する射出成形機の段取支援装置及び段取支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る射出成形機システムの構成図。
図2】射出成形機の段取支援装置の機能ブロック図。
図3】設備能力補正データの一例。
図4】金型補正データの一例。
図5】外部環境補正データの一例。
図6】作業者能力補正データの一例。
図7】学習補正データの一例。
図8】段取支援装置の動作の一例を示すフローチャート。
図9】表示装置に表示される表示画面の一例。
図10】段取作業後に表示装置に表示される表示画面の一例。
図11】参考例における段取作業の作業タイムテーブルの一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0011】
(射出成形機システム)
図1は、一実施形態に係る射出成形機システムSの構成図である。
【0012】
射出成形機システムSは、射出成形機1と、射出成形機1の周辺設備と、ネットワーク8と、成形機管理サーバ9と、を備える。
【0013】
射出成形機1は、金型装置2を開閉する型締装置11と、金型装置2で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置(図示せず)と、金型装置2に成形材料(樹脂)を射出する射出装置12と、射出成形機1の各構成要素を制御する制御装置13と、を備える。射出装置12は、シリンダを備え、シリンダには成形材料を可塑化するためのヒータが設けられている。また、射出成形機1は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置14と、各種の情報等を表示する表示装置15と、を備える。操作装置14で入力された情報は、制御装置13に入力される。制御装置13は、各種の情報等を表示する表示画面を生成して、表示装置15に表示させる。
【0014】
図1に示す射出成形機システムSは、射出成形機1の周辺設備として、例えば、樹脂乾燥機3と、金型温調機4と、取出機5と、粉砕機6と、コンベア7と、を備える。
【0015】
樹脂乾燥機3は、射出装置12に供給する成形材料を乾燥させる。乾燥された成形材料は、射出成形機1の射出装置12に供給される。
【0016】
金型温調機4は、金型装置2の温度を所定の温度に温度調整する。例えば、金型装置2に流路が形成されている場合、金型温調機4は、金型装置2の流路に供給する熱媒体の温度および/または流量を制御することにより、金型装置2の温度を所定の温度に温度調整する。また、金型装置2にヒータが設けられている場合、金型温調機4は、金型装置2のヒータに供給する電力を制御することにより、金型装置2の温度を所定の温度に温度調整する。
【0017】
取出機5は、金型装置2で成形された成形品を取り出して、コンベア7に搬送する。取出機5は、成形品を吸着するチャックを有するチャック板(図示せず)を備えている。成形品は、コンベア7の製品箱(図示せず)に収容される。
【0018】
粉砕機6は、金型装置2で成形品を成形した際に生じるランナ等を破砕する。
【0019】
コンベア7には、成形品を収容する製品箱(図示せず)が載置されている。コンベア7は、製品箱を搬送する。
【0020】
射出成形機1の周辺設備は、ネットワーク8を介して、射出成形機1の制御装置13と通信可能に接続される。
【0021】
なお、射出成形機1の制御装置13は、ネットワーク8を介して、成形機管理サーバ9と通信可能に接続されている。射出成形機1の制御装置13は、射出成形機1の各種情報を成形機管理サーバ9に送信する。また、射出成形機1の周辺設備は、ネットワーク8を介して、成形機管理サーバ9と通信可能に接続されている。射出成形機1の周辺設備は、周辺設備の各種情報を成形機管理サーバ9に送信する。なお、射出成形機1の周辺設備は、周辺設備の各種情報を射出成形機1の制御装置13に送信し、射出成形機1の制御装置13から、周辺設備の各種情報を成形機管理サーバ9に送信する構成であってもよい。
【0022】
図2は、射出成形機1の段取支援装置の機能ブロック図である。ここでは、射出成形機1の段取支援装置は、制御装置13の一機能として実装されている。
【0023】
段取支援装置としての制御装置13は、段取作業タイミング決定部31と、機械学習部32と、入力部33と、出力部34と、記憶部35と、を備えている。
【0024】
段取作業タイミング決定部31は、入力情報(後述する情報21~26)及び記憶部35に予め記憶されたデータ(後述するデータ41~48)に基づいて、各段取項目の作業開始時間(作業開始タイミング)を決定する。即ち、段取作業タイミング決定部31は、各段取項目の作業開始時間を決定することにより、段取作業のスケジュールを作成する。
【0025】
機械学習部32は、過去の段取作業の実績値(後述する実績データ48)に基づいて、学習補正データ47を生成し、記憶部35に記憶させる。
【0026】
入力部33は、入力情報が入力される。ここでは、入力部33に入力される情報は、操作装置14によって入力されたものであってもよく、ネットワーク8を介して、射出成形機1の周辺設備や成形機管理サーバ9から送信された情報であってもよい。また、射出成形機1が備えるセンサで取得した情報であってもよい。
【0027】
例えば、入力部33には、段取完了時間情報21、設備情報22、金型情報23、成形条件情報24、外部環境情報25、作業者情報26等が入力される。
【0028】
段取完了時間情報21は、段取作業を終了する時刻、換言すれば、成形品の量産を開始する時刻を含む。設備情報22は、射出成形機1の周辺設備の情報を含む。金型情報23は、射出成形機1に取り付けられる金型装置2の情報を含む。成形条件情報24は、成形材料(樹脂)の種類、シリンダの昇温温度等の情報を含む。外部環境情報25は、射出成形機1の外部環境の情報(例えば、外気温度、外気湿度等)を含む。作業者情報26は、段取作業を行う作業者の情報を含む。
【0029】
出力部34は、各種の情報が出力される。ここでは、表示装置15に生成した各段取項目の作業開始時間を表示装置15に表示させてもよい。また、出力部34は、制御信号を送信して、射出成形機1または周辺設備の各部を直接制御してもよい。
【0030】
記憶部35は、各種のデータ(データ41~46)が予め記憶されている。また、機械学習部32が生成した学習補正データ47が記憶される。また、射出成形機1の過去の段取作業の実績値が実績データ48として、記憶部35に記憶される。
【0031】
ここで、段取作業は、複数の項目(段取項目)から構成される。段取項目データ41には、段取作業の段取項目が記憶されている。ここでは、段取作業の段取項目として、「樹脂準備」、「樹脂乾燥」、「ヒータ昇温」、「金型取付」、「金型昇温」、「粉砕機準備」、「コンベア設置」、「製品箱準備」、「取出機チャック板取付」、「取出機ティーチング」、「パージ」、「条件調整」を有しているものとして説明する。
【0032】
ここで、「樹脂準備」とは、樹脂乾燥機3に成形材料(樹脂)を供給可能にする作業をいう。「樹脂乾燥」とは、樹脂乾燥機3を駆動させて成形材料(樹脂)を乾燥させる作業をいう。「ヒータ昇温」とは、射出装置12のヒータを動作させて、シリンダを昇温する作業をいう。シリンダを昇温することにより、シリンダ内の成形材料は可塑化される。「金型取付」とは、型締装置11に金型装置2を取り付ける作業をいう。「金型昇温」とは、金型温調機4を動作させて金型装置2を所定の温度に調温する作業をいう。「粉砕機準備」とは、粉砕機6を動作可能な状態にする作業をいう。「コンベア設置」とは、射出成形機1の周辺にコンベア7を配置し、コンベア7を動作可能な状態にする作業をいう。「製品箱準備」とは、コンベア7に製品箱を準備する作業をいう。「取出機チャック板取付」とは、取出機5に、金型装置2と対応したチャック板を取り付ける作業をいう。「取出機ティーチング」とは、取出機5に成形品をチャックする際のチャック板の位置と、成形品を製品箱に収容する際のチャック板の位置と、を教示する作業をいう。「パージ」は、射出装置12に成形材料(樹脂)を供給して、シリンダ内で可塑化し、シリンダ内の成形材料(樹脂)をパージ(排出)する作業をいう。「条件調整」は、射出装置12から金型装置2に成形材料を射出して、試しの成形を行いながら、成形条件(型締装置11の型締力、射出装置12の樹脂量、射出圧力等)を調整する作業をいう。
【0033】
また、段取項目には、作業の順番が決められているものもある。段取項目データ41には、作業の順番を示す情報も記憶されている。例えば、「樹脂準備」は、「樹脂乾燥」よりも先に行われる。「金型取付」は、「金型昇温」よりも先に行われる。「金型取付」は、「取出機ティーチング」よりも先に行われる。「コンベア設置」は、「製品箱準備」よりも先に行われる。「取出機チャック板取付」は、「取出機ティーチング」よりも先に行われる。「ヒータ昇温」は、「パージ」よりも先に行われる。「パージ」は、「条件調整」よりも先に行われる。
【0034】
また、段取項目は、作業者が実際に作業を行う必要がある段取項目(以下「人的作業」とも称する。)と、制御装置13の制御によって自動運転可能な段取項目(以下「自動運転」とも称する。)と、に別けられる。段取項目データ41には、各段取項目が人的作業か自動運転かを示す情報も記憶されている。例えば、「樹脂準備」、「金型取付」、「粉砕機準備」、「コンベア設置」、「製品箱準備」、「取出機チャック板取付」、「取出機ティーチング」、「条件調整」は、人的作業に属する段取項目である。「樹脂乾燥」、「ヒータ昇温」、「金型昇温」、「パージ」は、自動運転に属する段取項目である。なお、人的作業として例示した各段取り項目は、自動で行われることもある。
【0035】
また、段取項目には、並行して作業が可能なものもある。段取項目データ41には、並行して作業が可能な段取項目を示す情報も記憶されていてもよい。
【0036】
段取項目基準時間データ42には、段取項目ごとに基準となる作業時間が記憶されている。
【0037】
設備能力補正データ43は、射出成形機1の周辺設備に応じて作業時間が変化する段取項目における、作業時間を算出するためのデータが記憶されている。図3は、設備能力補正データ43の一例である。ここでは、射出成形機1の周辺設備として、樹脂乾燥機3の設備能力補正データ43が記憶されている。図3に示す例において、設備能力補正データ43には、樹脂乾燥機3ごとに、樹脂乾燥機3の風量、樹脂乾燥機3の容量、成形材料ごとの乾燥時間(作業時間)が記憶されている。
【0038】
金型補正データ44は、射出成形機1の型締装置11に取り付けられる金型装置2のデータが記憶されている。図4は、金型補正データ44の一例である。図4に示す例において、金型補正データ44には、金型装置2ごとに、金型装置2の重量、金型装置2の材質、金型装置2の寸法、金型装置2に形成される流路の有無及び流路のタイプ、金型装置2に設けられるヒータの有無及び熱量が記憶されている。図4に示す金型補正データ44に基づいて、熱伝導解析等を行うことにより、「金型昇温」における昇温時間(作業時間)を算出することができる。
【0039】
外部環境補正データ45は、外部環境情報25に応じて作業時間が変化する段取項目における、作業時間を算出するためのデータが記憶されている。図5は、外部環境補正データ45の一例である。ここでは、外部環境情報25に応じて作業時間が変化する段取項目の一例として、「ヒータ昇温」における外部環境補正データ45を示す。図5に示す例において、外部環境補正データ45には、外気温度ごとに、昇温時間とシリンダ温度とが対応付けして記憶されている。図5に示す外部環境補正データ45に基づいて、「ヒータ昇温」における昇温時間(作業時間)を算出することができる。
【0040】
作業者能力補正データ46は、作業者に応じて作業時間が変化する段取項目における、作業時間を算出するためのデータが記憶されている。図6は、作業者能力補正データ46の一例である。ここでは、作業者に応じて作業時間が変化する段取項目の一例として、「取出機ティーチング」における作業者能力補正データ46を示す。図6に示す例において、作業者能力補正データ46には、作業者ごとに、保有資格、経験年数が記憶されている。また、作業者能力補正データ46には、作業者の情報に基づいて指定した取出機5のティーチングに要した平均時間(作業時間)が記憶されている。
【0041】
学習補正データ47は、機械学習部32で学習された、作業時間を算出するためのデータが記憶されている。図7は、学習補正データ47の一例である。ここでは、「条件調整」における学習補正データ47を示す。図7に示す例において、学習補正データ47には、作業者ごとに、成形条件調整に要した平均時間、条件補正の試行回数、補正時の良品率が記憶されている。成形条件調整に要した平均時間(作業時間)、条件補正の試行回数、補正時の良品率は、実績データ48に基づいて算出される。
【0042】
実績データ48には、射出成形機1の段取作業の実績データが記憶されている。例えば、段取作業において、作業者、各段取項目に要した時間等が記憶されている。
【0043】
<段取支援装置の動作>
次に、段取支援装置の動作について、図8を用いて説明する。図8は、段取支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS101において、段取作業タイミング決定部31は、入力情報の入力を受け付ける。ここでは、作業者は、操作装置14を操作して各種の情報(段取完了時間情報21、設備情報22、金型情報23、外部環境情報25、作業者情報26)を入力する。操作装置14で入力された情報は、入力部33を介して、段取作業タイミング決定部31に入力される。なお、各種の情報の入力は、作業者の入力に限られるものではなく、ネットワーク8を介して成形機管理サーバ9から入力されてもよい。
【0045】
ステップS102において、段取作業タイミング決定部31は、入力された情報(段取完了時間情報21、設備情報22、金型情報23、成形条件情報24、外部環境情報25、作業者情報26)及び記憶部35に記憶されている補正データ(段取項目データ41、段取項目基準時間データ42、設備能力補正データ43、金型補正データ44、外部環境補正データ45、作業者能力補正データ46、学習補正データ47、実績データ48)に基づいて、各段取項目の作業開始タイミングを算出する。
【0046】
具体的には、まず、段取作業タイミング決定部31は、入力情報に基づいて、各段取項目の作業時間を算出する。例えば、段取作業タイミング決定部31は、設備情報22に含まれる樹脂乾燥機3の機種情報と、成形条件情報24に含まれる樹脂名と、に基づいて、設備能力補正データ43(図3参照)を参照して、「樹脂乾燥」の作業時間を算出する。段取作業タイミング決定部31は、金型情報23に基づいて、金型補正データ44(図4参照)を参照して、「金型昇温」の作業時間を算出する。段取作業タイミング決定部31は、成形条件情報24に含まれるシリンダの昇温温度及び外部環境情報25に含まれる外部温度に基づいて、外部環境補正データ45(図5参照)を参照して、「ヒータ昇温」の作業時間を算出する。段取作業タイミング決定部31は、作業者情報26に基づいて、作業者能力補正データ46(図6参照)を参照して、「取出機ティーチング」の作業時間を算出する。段取作業タイミング決定部31は、作業者情報26に基づいて、学習補正データ47(図7参照)を参照して、「条件調整」の作業時間を算出する。また、「樹脂準備」、「金型取付」等の作業時間は、段取項目基準時間データ42から取得する。
【0047】
次に、段取作業タイミング決定部31は、算出した各段取項目の作業時間、段取完了時間情報21、段取項目データ41の段取項目の順番を示す情報、段取項目データ41の並行して作業可能な段取項目を示す情報、に基づいて、各段取項目の作業開始タイミングをそれぞれ決定する。
【0048】
ステップS103において、段取作業タイミング決定部31は、算出した各段取項目の作業開始時間(作業開始タイミング)を出力する。例えば、段取作業タイミング決定部31は、出力部34を介して、表示装置15に算出した各段取項目の作業開始時間を表示させる。これにより、作業者は、各段取項目の作業開始時間を把握することができる。また、人的作業の段取項目に関して、作業者は、表示装置15に提示された作業開始時間に従って各段取項目の作業を行うことができる。また、自動運転の段取項目に関して、制御装置13は、決定された作業開始時間に従って各段取項目の作業を行うことができる。
【0049】
図9は、表示装置15に表示される表示画面の一例である。表示画面には、段取項目201の項目名が表示されている。段取項目201の欄の隣(図9では右隣)には、項目名に対応して、各段取項目の作業時間(作業開始時刻、作業終了時刻)がタイムバー202が表示されている。また、タイムバー202には、段取作業タイミング決定部31で生成した予定欄202aが表示されている。なお、タイムバー202には、実績時間を表示する実績欄202bが設けられていてもよい。また、表示画面には、項目名に対応して、コメント欄203が設けられている。コメント欄203には、作業時間の補正理由と補正時間が表示される。これにより、段取項目基準時間データ42に格納される各段取項目ごとの基準時間からの増減を容易に把握することができる。
【0050】
図10は、段取作業後に表示装置15に表示される表示画面の一例である。図10に示すように、実績欄202bに、各段取項目の作業時間(作業開始時刻、作業終了時刻)が表示されてもよい。
【0051】
ここで、図11は、参考例における段取作業の作業タイムテーブルの一例である。ここでは、作業者の技能未熟により「取出機ティーチング」に時間がかかり、「パージ」の開始時刻が遅れたことを示している。その結果、「樹脂乾燥」及び「ヒータ昇温」の後に無駄な待機時間が生じている。また、「パージ」の開始時刻が遅れたことに起因して、「パージ」の終了時刻及び「条件調整」の開始時刻も遅れたことがわかる。また、作業者の技能未熟により「条件調整」の作業時間がさらに伸びている。この結果、量産開始の12:00までに、段取作業が終了せず、射出成形機1の生産性が低下する。
【0052】
これに対し、図10に示すように、本実施形態の段取支援装置では、設備能力、外部環境、金型情報、作業者能力、学習データ等に応じて、各段取工程の作業時間及び作業開始時刻を補正する。具体的には、図10に示す例において、段取作業タイミング決定部31は、設備情報22に含まれる樹脂乾燥機3の機種情報と、成形条件情報24に含まれる樹脂名と、に基づいて、設備能力補正データ43(図3参照)を参照して、「樹脂乾燥」の作業時間を通常(基準時間)よりも10分短くなるように設定(補正)している。また、段取作業タイミング決定部31は、成形条件情報24に含まれるシリンダの昇温温度及び外部環境情報25に含まれる外部温度に基づいて、外部環境補正データ45(図5参照)を参照して、「ヒータ昇温」の作業時間を通常(基準時間)よりも10分長くなるように設定(補正)している。また、段取作業タイミング決定部31は、金型情報23に基づいて、金型補正データ44(図4参照)を参照して、「金型昇温」の作業時間を通常(基準時間)よりも10分長くなるように設定(補正)している。また、段取作業タイミング決定部31は、作業者情報26に基づいて、作業者能力補正データ46(図6参照)を参照して、「取出機ティーチング」の作業時間を通常(基準時間)よりも10分長くなるように設定(補正)している。また、段取作業タイミング決定部31は、作業者情報26に基づいて、学習補正データ47(図7参照)を参照して、「条件調整」の作業時間を通常(基準時間)よりも10分長くなるように設定(補正)している。なお、段取作業タイミング決定部31は、これら以外の段取項目の作業時間を通常(基準時間)に設定している。そして、段取作業タイミング決定部31は、設定された各段取項目の作業時間と、段取項目データ41に含まれる作業の順番を示す情報と、に基づいて、各段取項目の作業開始タイミングを算出する。これにより、作業者は、生成された各段取項目における作業開始時刻に従って作業することにより、効率的に段取作業を行うことができる。また、無駄な待機時間を削減することができる。また、量産開始時刻までに段取作業を終了させることができる。
【0053】
以上、射出成形機1の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0054】
本実施形態に係る段取支援装置は、射出成形機1の制御装置13に実装されるものとして説明したが、これに限られるものではない。段取支援装置は、成形機管理サーバ9に実装される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
S 射出成形機システム
1 射出成形機
2 金型装置
3 樹脂乾燥機
4 金型温調機
5 取出機
6 粉砕機
7 コンベア
8 ネットワーク
9 成形機管理サーバ
11 型締装置
12 射出装置
13 制御装置
14 操作装置
15 表示装置
21 段取完了時間情報
22 設備情報(入力情報)
23 金型情報(入力情報)
24 成形条件情報(入力情報)
25 外部環境情報(入力情報)
26 作業者情報(入力情報)
31 段取作業タイミング決定部
32 機械学習部(学習部)
33 入力部
34 出力部
35 記憶部
41 段取項目データ
42 段取項目基準時間データ
43 設備能力補正データ(テーブル)
44 金型補正データ(テーブル)
45 外部環境補正データ(テーブル)
46 作業者能力補正データ(テーブル)
47 学習補正データ(テーブル)
48 実績データ(テーブル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11