(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】減速機の状態監視装置、及び減速装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240326BHJP
G01H 3/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H3/10
(21)【出願番号】P 2020073872
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗田 昌兆
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和彦
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-041670(JP,A)
【文献】特開2019-122082(JP,A)
【文献】特開2008-032477(JP,A)
【文献】特開2017-207416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01M 13/02-13/045
G01H 3/10
G01H 17/00
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機の
複数のクランク軸の状態を監視し
前記複数のクランク軸のそれぞれの状態信号を発信する
複数の発信部と、
前記
複数の発信部からの
複数の前記状態信号
を比較することにより前記減速機の状態を判定する判定部と、を備える
減速機の状態監視装置。
【請求項2】
前記
複数の発信部は、前記
複数のクランク軸の振動、音、温度、回転の少なくとも一つを前記状態信号として発信する
請求項
1に記載の減速機の状態監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記
複数の発信部からの
複数の前記状態信号に基づいて故障検知、寿命予測、故障予知の少なくとも一つを行う
請求項1
又は2に記載の減速機の状態監視装置。
【請求項4】
前記
複数のクランク軸は、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を
含み、
前記複数の発信部は、
前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の状態を監視し第1信号を発信する第1発信部と、
前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の状態を監視し第2信号を発信する第2発信部と、
前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の状態を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、
前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する
請求項1から
3の何れか一項に記載の減速機の状態監視装置。
【請求項5】
前記
複数のクランク軸は、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を
含み、
前記複数の発信部は、
前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の状態を監視し第1信号を発信する第1発信部と、
前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の状態を監視し第2信号を発信する第2発信部と、
前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の状態を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、
前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差のうちの2つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する
請求項1から
3の何れか一項に記載の減速機の状態監視装置。
【請求項6】
ケースと、
前記ケースの内部空間に配置された減速機と、
前記減速機
の複数のクランク軸の状態を監視し
前記複数のクランク軸のそれぞれの状態信号を発信する
複数の発信部と、
前記複数の発信部からの複数の前記状態信号を比較することにより前記減速機の状態を判定する判定部と、を備える
減速装置。
【請求項7】
ケースと、
前記ケースの内部空間に配置された減速機と、
前記減速機の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、
前記発信部からの前記状態信号に基づいて前記減速機の状態を判定する判定部と、を備え、
前記減速機は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、
前記発信部は複数設けられ、
複数の前記発信部は、
前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の振動を監視し第1信号を発信する第1発信部と、
前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の振動を監視し第2信号を発信する第2発信部と、
前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の振動を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、
前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する
減速装置。
【請求項8】
ケースと、
前記ケースの内部空間に配置された減速機と、
前記減速機の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、
前記発信部からの前記状態信号に基づいて前記減速機の状態を判定する判定部と、を備え、
前記減速機は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、
前記発信部は複数設けられ、
複数の前記発信部は、
前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の温度を監視し第1信号を発信する第1発信部と、
前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の温度を監視し第2信号を発信する第2発信部と、
前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の温度を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、
前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する
減速装置。
【請求項9】
ケースと、
前記ケースの内部空間に配置された減速機と、
前記減速機の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、
前記発信部からの前記状態信号に基づいて前記減速機の状態を判定する判定部と、を備え、
前記減速機は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、
前記発信部は複数設けられ、
複数の前記発信部は、
前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の回転を監視し第1信号を発信する第1発信部と、
前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の回転を監視し第2信号を発信する第2発信部と、
前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の回転を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、
前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号の変化具合に応じて故障危惧信号を発信する
減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機の状態監視装置、及び減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット等の装置に搭載された減速機の状態管理及び状態診断等を実施するために、減速機に各種センサを備えた構成が知られている。
例えば、特許文献1には、減速機の軸受の異常を診断する軸受診断装置が開示されている。軸受診断装置は、減速機に発生する振動を検出しアナログの電気信号を出力する振動センサを備える。振動センサは、減速機の軸受上部の箇所にマグネットアタッチメント等により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減速機の状態を精度よく監視することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、減速機の状態を精度よく監視することができる減速機の状態監視装置、及び減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る減速機の状態監視装置は、減速機の複数のクランク軸の状態を監視し前記複数のクランク軸のそれぞれの状態信号を発信する複数の発信部と、
前記複数の発信部からの複数の前記状態信号を比較することにより前記減速機の状態を判定する判定部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、発信部により減速機のクランク軸の状態を監視することで、減速機の外部から減速機の状態を監視する場合と比較して、減速機の状態を精度よく監視することができる。
加えて、発信部からの状態信号に基づいて減速機の状態を判定する判定部を備えることで、減速機の状態を精度よく判定することができる。
【0009】
(2)上記(1)に記載の減速機の状態監視装置では、前記複数の発信部は、前記複数のクランク軸の振動、音、温度、回転の少なくとも一つを前記状態信号として発信してもよい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の減速機の状態監視装置では、前記判定部は、前記複数の発信部からの複数の前記状態信号に基づいて故障検知、寿命予測、故障予知の少なくとも一つを行ってもよい。
【0011】
(4)上記(1)から(3)の何れかに記載の減速機の状態監視装置では、前記複数のクランク軸は、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を含み、前記複数の発信部は、前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の状態を監視し第1信号を発信する第1発信部と、前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の状態を監視し第2信号を発信する第2発信部と、前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の状態を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信してもよい。
【0012】
(5)上記(1)から(3)の何れかに記載の減速機の状態監視装置では、前記複数のクランク軸は、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を含み、前記複数の発信部は、前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の状態を監視し第1信号を発信する第1発信部と、前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の状態を監視し第2信号を発信する第2発信部と、前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の状態を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差のうちの2つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信してもよい。
【0013】
(6)本発明の態様に係る減速装置は、ケースと、前記ケースの内部空間に配置された減速機と、前記減速機の複数のクランク軸の状態を監視し前記複数のクランク軸のそれぞれの状態信号を発信する複数の発信部と、前記複数の発信部からの複数の前記状態信号を比較することにより前記減速機の状態を判定する判定部と、を備える。
【0014】
この構成によれば、発信部によりケース内の減速機の状態を監視することで、ケース外から減速機の状態を監視する場合と比較して、減速機の状態を精度よく監視することができる。
【0022】
(7)本発明の態様に係る減速装置は、ケースと、前記ケースの内部空間に配置された減速機と、前記減速機の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、前記発信部からの前記状態信号に基づいて前記減速機の状態を判定する判定部と、を備え、前記減速機は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、前記発信部は複数設けられ、複数の前記発信部は、前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の振動を監視し第1信号を発信する第1発信部と、前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の振動を監視し第2信号を発信する第2発信部と、前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の振動を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する。
【0023】
この構成によれば、発信部によりケース内の減速機の状態を監視することで、ケース外から減速機の状態を監視する場合と比較して、減速機の状態を精度よく監視することができる。
加えて、減速機は、互いに同一形状を有する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を比較することで、各クランク軸が互いに異なる形状を有する場合と比較して、減速機の状態を精度よく判定することができる。
加えて、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動することにより、互いに同じ動作をする。これら各クランク軸を比較することで、各クランク軸が別個独立に動作する場合と比較して、減速機の状態を精度よく判定することができる。
加えて、判定部は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信することで、1つのクランク軸の振動変化から故障のおそれを予知することができる。
【0024】
(8)本発明の態様に係る減速装置は、ケースと、前記ケースの内部空間に配置された減速機と、前記減速機の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、前記発信部からの前記状態信号に基づいて前記減速機の状態を判定する判定部と、を備え、前記減速機は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、前記発信部は複数設けられ、複数の前記発信部は、前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の温度を監視し第1信号を発信する第1発信部と、前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の温度を監視し第2信号を発信する第2発信部と、前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の温度を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号に基づいて複数の信号差を算出し前記複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する。
【0025】
この構成によれば、発信部によりケース内の減速機の状態を監視することで、ケース外から減速機の状態を監視する場合と比較して、減速機の状態を精度よく監視することができる。
加えて、減速機は、互いに同一形状を有する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を比較することで、各クランク軸が互いに異なる形状を有する場合と比較して、減速機の状態を精度よく判定することができる。
加えて、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動することにより、互いに同じ動作をする。これら各クランク軸を比較することで、各クランク軸が別個独立に動作する場合と比較して、減速機の状態を精度よく判定することができる。
加えて、判定部は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信することで、1つのクランク軸の温度変化から故障のおそれを予知することができる。
【0026】
(9)本発明の態様に係る減速装置は、ケースと、前記ケースの内部空間に配置された減速機と、前記減速機の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、前記発信部からの前記状態信号に基づいて前記減速機の状態を判定する判定部と、を備え、前記減速機は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、前記発信部は複数設けられ、複数の前記発信部は、前記第1クランク軸に設けられ前記第1クランク軸の回転を監視し第1信号を発信する第1発信部と、前記第2クランク軸に設けられ前記第2クランク軸の回転を監視し第2信号を発信する第2発信部と、前記第3クランク軸に設けられ前記第3クランク軸の回転を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、前記判定部は、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号の変化具合に応じて故障危惧信号を発信する。
【0027】
この構成によれば、発信部によりケース内の減速機の状態を監視することで、ケース外から減速機の状態を監視する場合と比較して、減速機の状態を精度よく監視することができる。
加えて、減速機は、互いに同一形状を有する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を比較することで、各クランク軸が互いに異なる形状を有する場合と比較して、減速機の状態を精度よく判定することができる。
加えて、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動することにより、互いに同じ動作をする。これら各クランク軸を比較することで、各クランク軸が別個独立に動作する場合と比較して、減速機の状態を精度よく判定することができる。
加えて、判定部は、第1信号、第2信号及び第3信号の変化具合に応じて故障危惧信号を発信することで、信号の変化具合から故障のおそれを予知することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、減速機の状態を精度よく監視することができる減速機の状態監視装置、及び減速装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態の減速装置の一部を破断して構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の各クランク軸の振動の位相波の波形例を示す図である。
【
図3】第2実施形態の減速装置の一部を破断して構成を示す図である。
【
図4】第2実施形態の各クランク軸の温度の位相波の波形例を示す図である。
【
図5】第3実施形態の減速装置の一部を破断して構成を示す図である。
【
図6】第3実施形態の各クランク軸の回転の位相波の波形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、減速装置として減速機の状態監視装置を備えた歯車伝動装置を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の減速装置10の一部を破断して構成を示す図である。
図1に示すように、減速装置10は、モータ1とロボットアーム2との間に配置された減速機3を備える。
減速装置10は、ケース11と、キャリア12と、入力ギア13と、3つの伝達ギア(スパーギア)14と、3つのクランク軸15と、RV(Rotary Vector)ギア16とを備える。
【0032】
減速装置10は、各クランク軸15に設けられた偏心部(図示略)の回転に連動させてRVギア16を揺動回転させる。これにより、減速装置10は、各クランク軸15に連結された伝達ギア14に噛み合う入力ギア13の入力回転から減速した出力回転を得るように、ケース11とキャリア12とを相対的に回転させる。減速装置10は、偏心揺動型の歯車伝動装置である。
【0033】
ケース11は、モータ1を収容するモータハウジング1aに固定されている。キャリア12は、ロボットアーム2に固定されている。キャリア12は、ケース11の内部で、中心軸Oの軸周りにケース11に対して回転可能に支持されている。例えば、ケース11と、キャリア12と、モータハウジング1aとによって囲まれる空間には、液状の潤滑剤が貯留される。
【0034】
入力ギア13はモータ1の回転軸1bに連結されている。3つの伝達ギア14は、入力ギア13に噛み合わされている。3つのクランク軸15は、3つの伝達ギア14に連結されている。各クランク軸15は、中心軸15aの軸周りにキャリア12に対して回転可能に支持されている。各クランク軸15の偏心部(図示略)は、RVギア16に対して回転可能に支持されている。
【0035】
RVギア16は、ケース11の内周面に設けられた複数の内歯ピン(図示略)に噛み合わされている。RVギア16は、各クランク軸15の回転に伴って偏心部とともに偏心運動することによって、ケース11の内歯ピンに接触しつつケース11に対して揺動回転する。
【0036】
キャリア12は、基部12aと、3つのシャフト部12bと、端板部12cとを備える。基部12a及び3つのシャフト部12bは一体的に形成されている。3つのシャフト部12b及び端板部12cは締結部材によって一体的に固定されている。各シャフト部12bは、中心軸Oに平行な軸方向にRVギア16に形成された貫通孔(図示略)に遊びを持った状態で挿し通されている。キャリア12は、RVギア16の揺動回転に伴って中心軸Oの軸周りにケース11に対して回転する。
【0037】
減速装置10は、減速機3に加えて、発信部18と、制御装置19(判定部)とを備える。
発信部18は、ケース11と、キャリア12と、モータハウジング1aとによって囲まれる空間に配置されている。発信部18は、減速機3の状態を監視し状態信号を発信する。発信部18は、複数設けられている。発信部18は、3つのクランク軸15にそれぞれ設けられている。3つのクランク軸15は、互いに同一形状を有する。3つのクランク軸15は、互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸である。3つのクランク軸15は、互いに同一形状を有し、かつ、互いに連動することにより、互いに同じ動作をする。
【0038】
複数の発信部18は、第1クランク軸に設けられた第1発信部と、第2クランク軸に設けられた第2発信部と、第3クランク軸に設けられた第3発信部と、である。例えば、回転体である各クランク軸15からの信号伝搬は、無線通信による方法、またはスリップリング等の回転コネクタによる方法等が挙げられる。
【0039】
第1発信部は、第1クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた加速度センサ(以下「第1加速度センサ」ともいう。)を備える。第1発信部は、第1加速度センサの測定結果に適切な信号処理を行うことにより、第1クランク軸の振動を得る。第1発信部は、第1クランク軸の振動を監視し第1信号を発信する。
【0040】
第2発信部は、第2クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた加速度センサ(以下「第2加速度センサ」ともいう。)を備える。第2発信部は、第2加速度センサの測定結果に適切な信号処理を行うことにより、第2クランク軸の振動を得る。第2発信部は、第2クランク軸の振動を監視し第2信号を発信する。
【0041】
第3発信部は、第3クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた加速度センサ(以下「第3加速度センサ」ともいう。)を備える。第3発信部は、第3加速度センサの測定結果に適切な信号処理を行うことにより、第3クランク軸の振動を得る。第3発信部は、第3クランク軸の振動を監視し第3信号を発信する。
【0042】
本実施形態では、減速機3のクランク軸15の全てに加速度センサを搭載している。測定対象であるクランク軸15に加速度センサを直接取り付けているため、クランク軸15の全てにおいて効果的な振動計測が可能となる。各発信部18からの状態信号は、制御装置19に入力される。
【0043】
制御装置19は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。また、制御装置19の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0044】
制御装置19は、各発信部18からの状態信号に基づいて減速機3の状態を判定する。制御装置19は、各発信部18からの状態信号(第1信号、第2信号及び第3信号)を比較し、減速機3の状態を判定する。制御装置19は、発信部18からの状態信号に基づいて故障検知、寿命予測及び故障予知を行う。例えば、制御装置19は、減速機3の故障診断及び交換時期の設定などを行う。
【0045】
制御装置19は、予め実施された減速機3の振動計測の試験などによって取得された基準周波数データを記憶している。基準周波数データは、例えば、減速機3の複数の所定運転状態で発信部18(加速度センサ)によって取得された周波数分布マップのデータである。複数の所定運転状態は、例えば、無負荷、定格トルク及び定格トルクを超える所定トルク(例えば、定格トルクの所定数倍のトルク)の各々などである。
制御装置19は、減速機3の動作時に発信部18によって取得される周波数のデータと、基準周波数データとを比較することによって、減速機3の状態を判定する。
【0046】
ところで、減速機の故障モードは、クランク軸の疲労により故障(破損)する場合が支配的である。減速機が複数のクランク軸を備える場合、寿命により複数のクランク軸が同時に破損することは極めて稀である。通常は、複数のクランク軸のうち何れか1つが破損し、この破損が進むにつれて他のクランク軸が破損していく。
【0047】
例えば、減速機3が3つのクランク軸15を備える場合、ある1つのクランク軸15の破損が始まる。すると、ある1つのクランク軸15の加速度データ(振動データ)は他の2つと比較して振幅や周波数に差が生じる。そのため、減速機3の故障と判断できる。
また、クランク軸15同士を相対的に比較することにより減速機3の状態を判定するため、減速機3の運転状態に応じた基準データ(基準周波数データ)が常にある状態となる。これにより、クランク軸15の回転速度や出力トルク等の情報を必要としない故障検知が可能となる。
また、加速度データ、または加速度データの差に、ある閾値を設けることで、減速機3の故障進展度合いに応じた段階的な警報を出力できる。
【0048】
本実施形態では、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し、複数の信号差の何れか1つが閾値以上となっときに故障危惧信号を発信する。
ここで、複数の信号差は、例えば、第1信号と第2信号との差(例えば振幅の差)、第2信号と第3信号との差(例えば振幅の差)、第3信号と第1信号との差(例えば振幅の差)の各々などである。
故障危惧信号は、減速機3の故障のおそれがあることを示す信号である。例えば、制御装置19は、不図示のスピーカを通じて故障危惧信号を警報として発音してもよい。
【0049】
図2は、第1実施形態の各クランク軸の振動の位相波の波形例を示す図である。
図2に示すように、正常時において、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸はそれぞれ閾値より小さい振幅で振動する。
【0050】
第3クランク軸の状態信号である第3信号と第1クランク軸の状態信号である第1信号との振幅の差が所定閾値(以下「第1閾値」ともいう。)以上となった場合、制御装置19は、黄信号(第1警報)を出力する。言い換えると、第3信号が正常振幅より大きい注意振幅(
図2の振幅中)となった場合、制御装置19は、黄信号(第1警報)を出力する。
図2において、黄信号となる波形をドットハッチで示す。
【0051】
第3信号と第1信号との振幅の差が第1閾値を超える閾値(以下「第2閾値」ともいう。)以上となった場合、制御装置19は、赤信号(第2警報)を出力する。言い換えると、第3信号が注意振幅より大きい危険振幅(
図2の振幅大)となった場合、赤信号(第2警報)を出力する。
図2において、赤信号となる波形を黄信号よりも濃いドットハッチで示す。
このように第1閾値及び第2閾値を設けることで、第3クランク軸の故障進展度合いに応じた段階的な警報(黄信号、赤信号等)を出力できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る減速装置10は、ケース11と、ケース11の内部空間に配置された減速機3と、減速機3の状態を監視し状態信号を発信する発信部18と、発信部18からの状態信号に基づいて減速機3の状態を判定する制御装置19と、を備え、減速機3は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を備え、発信部18は複数設けられ、複数の発信部18は、第1クランク軸に設けられ第1クランク軸の振動を監視し第1信号を発信する第1発信部と、第2クランク軸に設けられ第2クランク軸の振動を監視し第2信号を発信する第2発信部と、第3クランク軸に設けられ第3クランク軸の振動を監視し第3信号を発信する第3発信部と、を含み、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する。
【0053】
この構成によれば、発信部18によりケース11内の減速機3の状態を監視することで、ケース11外から減速機3の状態を監視する場合と比較して、減速機3の状態を精度よく監視することができる。
加えて、減速機3は、互いに同一形状を有する第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸を比較することで、各クランク軸が互いに異なる形状を有する場合と比較して、減速機3の状態を精度よく判定することができる。
加えて、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸は、互いに同一形状を有しかつ互いに連動することにより、互いに同じ動作をする。これら各クランク軸を比較することで、各クランク軸が別個独立に動作する場合と比較して、減速機3の状態を精度よく判定することができる。
加えて、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信することで、1つのクランク軸15の振動変化から故障のおそれを予知することができる。
【0054】
上述した実施形態では、発信部18がクランク軸15の軸方向端面に直接取り付けられた加速度センサを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、加速度センサは、伝達ギア14の端面に取り付けられてもよい。例えば、加速度センサは、クランク軸15に内蔵されていてもよい。例えば、加速度センサは、ホールドフランジ等の支持部材、またはクランク軸15の挿通孔(クランク孔)の近傍部位に取り付けられていてもよい。例えば、発信部18は、加速度センサに替えて振動センサを備えていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、発信部18は、クランク軸15の振動を状態信号として発信する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、発信部18は、クランク軸15の音、温度、回転等を状態信号として発信してもよい。例えば、発信部18は、クランク軸15の振動、音、温度、回転の少なくとも一つを状態信号として発信してもよい。
【0056】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の減速装置210の一部を破断して構成を示す図である。
上述した第1実施形態では、発信部18がクランク軸15の振動を監視し状態信号を発信する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、発信部218は、クランク軸15の温度を監視し状態信号を発信してもよい。
図3において、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図3に示すように、減速装置210は、減速機3に加えて、発信部218と、制御装置19とを備える。
発信部218は、ケース11と、キャリア12と、モータハウジング1aとによって囲まれる空間に配置されている。発信部218は、複数設けられている。複数の発信部218は、第1クランク軸に設けられた第1発信部と、第2クランク軸に設けられた第2発信部と、第3クランク軸に設けられた第3発信部と、である。例えば、回転体である各クランク軸15からの信号伝搬は、無線通信による方法、またはスリップリング等の回転コネクタによる方法等が挙げられる。
【0058】
第1発信部は、第1クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた温度センサ(以下「第1温度センサ」ともいう。)を備える。第1発信部は、第1クランク軸の温度を監視し第1信号を発信する。
第2発信部は、第2クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた温度センサ(以下「第2温度センサ」ともいう。)を備える。第2発信部は、第2クランク軸の温度を監視し第2信号を発信する。
第3発信部は、第3クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた温度センサ(以下「第3温度センサ」ともいう。)を備える。第3発信部は、第3クランク軸の温度を監視し第3信号を発信する。
【0059】
本実施形態では、減速機3のクランク軸15の全てに温度センサを搭載している。測定対象であるクランク軸15に温度センサを直接取り付けているため、クランク軸15の全てにおいて効果的な温度計測が可能となる。各発信部218からの状態信号は、制御装置19に入力される。
【0060】
制御装置19は、予め実施された減速機3の温度計測の試験などによって取得された基準温度データを記憶している。基準温度データは、例えば、減速機3の複数の所定運転状態で発信部218(温度センサ)によって取得された温度分布マップのデータである。
制御装置19は、減速機3の動作時に発信部218によって取得される温度のデータと、基準温度データとを比較することによって、減速機3の状態を判定する。
【0061】
例えば、減速機が3つのクランク軸15を備える場合、ある1つのクランク軸15の破損が始まる。すると、ある1つのクランク軸15の転がり抵抗が増加することにより、ある1つのクランク軸15の温度が他の2つの温度よりも高くなる。そのため、減速機3の故障と判断できる。
また、破損する部品の温度を直接測定しているため、減速機3の表面温度を測定する場合と比較して、早期に、より確実に故障検知が可能となる。
また、クランク軸15同士を相対的に比較することにより減速機3の状態を判定するため、減速機3の運転状態に応じた基準データ(基準温度データ)が常にある状態となる。これにより、減速機3の運転状況に影響されにくい故障検知が可能となる。
また、温度データ、または温度データの差に、ある閾値を設けることで、減速機3の故障進展度合いに応じた段階的な警報を出力できる。
【0062】
本実施形態では、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し、複数の信号差の何れか1つが閾値以上となっときに故障危惧信号を発信する。
ここで、複数の信号差は、例えば、第1信号と第2信号との差(例えば温度の差)、第2信号と第3信号との差(例えば温度の差)、第3信号と第1信号との差(例えば温度の差)の各々などである。
【0063】
図4は、第2実施形態の各クランク軸の温度の位相波の波形例を示す図である。
図4において、各波形の横軸は時間、縦軸は温度をそれぞれ示す。
図4に示すように、正常時において、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸はそれぞれ閾値より小さい温度を有する。
【0064】
第3クランク軸の状態信号である第3信号と第1クランク軸の状態信号である第1信号との温度の差が所定閾値(以下「第1温度閾値」ともいう。)以上となった場合、制御装置19は、黄信号(第1警報)を出力する。言い換えると、第3信号が正常温度より大きい注意温度(
図4の温度差中)となった場合、制御装置19は、黄信号(第1警報)を出力する。
図4において、黄信号となる波形をドットハッチで示す。
【0065】
第3信号と第1信号との温度の差が第1温度閾値を超える閾値(以下「第2温度閾値」ともいう。)以上となった場合、制御装置19は、赤信号(第2警報)を出力する。言い換えると、第3信号が注意温度より大きい危険温度(
図4の温度差大)となった場合、赤信号(第2警報)を出力する。
図4において、赤信号となる波形を黄信号よりも濃いドットハッチで示す。
このように第1温度閾値及び第2温度閾値を設けることで、第3クランク軸の故障進展度合いに応じた段階的な警報(黄信号、赤信号等)を出力できる。
【0066】
この構成によれば、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信することで、1つのクランク軸15の温度変化から故障のおそれを予知することができる。
【0067】
上述した第2実施形態では、発信部218がクランク軸15の軸方向端面に直接取り付けられた温度センサを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、温度センサは、伝達ギア14の端面に取り付けられてもよい。例えば、温度センサは、クランク軸15に内蔵されていてもよい。例えば、温度センサは、ホールドフランジ等の支持部材、またはクランク軸15の挿通孔(クランク孔)の近傍部位に取り付けられていてもよい。
【0068】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態の減速装置310の一部を破断して構成を示す図である。
上述した第1実施形態では、発信部18がクランク軸15の振動を監視し状態信号を発信する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、発信部318は、クランク軸15の回転を監視し状態信号を発信してもよい。
図5において、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図5に示すように、減速装置310は、第3減速機3に加えて、発信部318と、制御装置19とを備える。
発信部318は、ケース11と、キャリア12と、モータハウジング1aとによって囲まれる空間に配置されている。発信部318は、複数設けられている。複数の発信部318は、第1クランク軸に設けられた第1発信部と、第2クランク軸に設けられた第2発信部と、第3クランク軸に設けられた第3発信部と、である。例えば、発信部318は、磁石318aと磁気センサ318bとを有する回転センサを備える。これにより、クランク軸15の1回転に応じて、サインカーブ1周期の磁気データが得られる。
【0070】
第1発信部は、第1クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた回転センサ(以下「第1回転センサ」ともいう。)を備える。第1発信部は、第1クランク軸の回転を監視し第1信号を発信する。
第2発信部は、第2クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた回転センサ(以下「第2回転センサ」ともいう。)を備える。第2発信部は、第2クランク軸の回転を監視し第2信号を発信する。
第3発信部は、第3クランク軸の軸方向端面に直接取り付けられた回転センサ(以下「第3回転センサ」ともいう。)を備える。第3発信部は、第3クランク軸の回転を監視し第3信号を発信する。
【0071】
本実施形態では、減速機3のクランク軸15の全てに回転センサを搭載している。測定対象であるクランク軸15に回転センサを直接取り付けているため、クランク軸15の全てにおいて効果的な回転(磁気)計測が可能となる。各発信部からの状態信号は、制御装置19に入力される。
【0072】
制御装置19は、予め実施された減速機3の回転(磁気)計測の試験などによって取得された基準磁気データを記憶している。基準磁気データは、例えば、減速機3の複数の所定運転状態で発信部318(回転センサ)によって取得された磁気分布マップのデータである。
制御装置19は、減速機3の動作時に発信部318によって取得される磁気のデータと、基準磁気データとを比較することによって、減速機3の状態を判定する。
【0073】
例えば、減速機が3つのクランク軸15を備える場合、ある1つのクランク軸15の破損が始まる。すると、ある1つのクランク軸15は、回転ムラが発生することにより、他の2つと比較して磁気データに変化が生じる。そのため、減速機3の故障と判断できる。
また、クランク軸15同士を相対的に比較することにより減速機3の状態を判定するため、減速機3の運転状態に応じた基準データ(基準磁気データ)が常にある状態となり、容易に故障検知が可能となる。
また、クランク軸15の破損本数や、磁気データの変化具合に応じて、減速機3の故障進展度合いに応じた段階的な警報を出力できる。ここで、磁気データの変化には、クランク軸15の回転ムラによる位相ずれ、歪み、振幅変化などが含まれる。磁気データの変化は、各クランク軸15からの信号から相対的に検知、判断する。
【0074】
本実施形態では、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号の変化具合に応じて段階的に故障危惧信号を発信する。例えば、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号の何れか1つが変化したとき第1故障危惧信号を発信する。例えば、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号のうちの2つが変化したとき第2故障危惧信号を発信する。
【0075】
図6は、第3実施形態の各クランク軸の回転の位相波の波形例を示す図である。
図6において、各波形の横軸は時間、縦軸は振幅をそれぞれ示す。
図6に示すように、正常時において、第1クランク軸、第2クランク軸及び第3クランク軸はそれぞれ磁気データの変化を殆ど有しない。
【0076】
第3クランク軸の状態信号である第3信号(第3クランク軸の磁気データ)が変化した場合、制御装置19は、黄信号(第1警報)を出力する。言い換えると、第1信号、第2信号及び第3信号のうち第3信号のみが変化した場合、制御装置19は、黄信号(第1警報)を出力する。
図6において、黄信号となる波形をドットハッチで示す。
図6の例では、第3クランク軸は、回転ムラによる位相ずれ(〇囲み部)、歪み(△囲み部)、及び振幅変化(□囲み部)を発生している。
【0077】
第3クランク軸の状態信号である第3信号(第3クランク軸の磁気データ)に加え、第2クランク軸の状態信号である第2信号(第2クランク軸の磁気データ)が変化した場合、制御装置は、赤信号(第2警報)を出力する。言い換えると、第1信号、第2信号及び第3信号のうち第2信号及び第3信号が変化した場合、制御装置19は、赤信号(第2警報)を出力する。
図6において、赤信号となる波形を黄信号よりも濃いドットハッチで示す。
図6の例では、第2クランク軸は、回転ムラによる位相ずれ(〇囲み部)及び歪み(△囲み部)を発生している。
このように磁気データの変化(クランク軸15の回転ムラによる位相ずれ、歪み、振幅変化など)を設けることで、クランク軸15の破損本数や磁気データの変化具合に応じた段階的な警報(黄信号、赤信号等)を出力できる。
【0078】
この構成によれば、制御装置19は、第1信号、第2信号及び第3信号の変化具合に応じて故障危惧信号を発信することで、信号の変化具合から故障のおそれを予知することができる。
【0079】
上述した第3実施形態では、発信部318が磁石318aと磁気センサ318bとを有する回転センサを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、回転センサは、エンコーダであってもよい。例えば、回転センサは、伝達ギア14の歯数を計測する近接センサであってもよい。
【0080】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、減速装置が減速機の状態監視装置を備えた歯車伝動装置である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、歯車伝動装置以外の減速装置に本発明を適用してもよい。例えば、減速装置に限らず、減速機の状態監視装置に本発明を適用してもよい。この場合、減速機の状態監視装置は、減速機のクランク軸の状態を監視し状態信号を発信する発信部と、発信部からの状態信号に基づいて減速機の状態を判定する判定部と、を備えていてもよい。
【0082】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、判定部は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差の何れか1つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、判定部は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて複数の信号差を算出し複数の信号差のうち2つが閾値以上となったときに故障危惧信号を発信してもよい。例えば、故障危惧信号を発信するタイミングは、要求仕様に応じて変更することができる。
【0083】
上述した実施形態では、発信部がクランク軸に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、発信部は、クランク軸以外の部材に設けられていてもよい。この場合、減速機の状態監視装置は、互いに同一形状の第1部材及び第2部材を備えた減速機に用いられ、第1部材の状態を監視し第1信号を発信する第1発信部と、第2部材の状態を監視し第2信号を発信する第2発信部と、第1信号及び第2信号を比較して減速機の状態を判定する判定部と、を備えていてもよい。
【0084】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0085】
1…モータ、2…ロボットアーム、3…減速機、10,210,310…減速装置、11…ケース、15…クランク軸、18,218,318…発信部、19…制御装置(判定部)