(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】受信状態表示方法、受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 17/309 20150101AFI20240326BHJP
H04B 17/23 20150101ALI20240326BHJP
H03M 13/19 20060101ALI20240326BHJP
H03M 13/29 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H04B17/309
H04B17/23
H03M13/19
H03M13/29
(21)【出願番号】P 2020083130
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大季
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140461(JP,A)
【文献】特開2020-053787(JP,A)
【文献】特開2003-230070(JP,A)
【文献】特開2006-128841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/309
H04B 17/23
H03M 13/19
H03M 13/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LDPC誤り訂正符号処理が施されて変調されたデジタル信号を伝送する伝送システムにおける受信装置の受信状態を表示する受信状態表示方法であって、
受信信号から復調された前記デジタル信号に対するLDPC誤り訂正後における符号誤り率よりも、信号品質レベルが向上した場合における低下率が小さな仮想符号誤り率を設定し、
前記LDPC誤り訂正後における前記符号誤り率、又は前記信号品質レベルを実測し、実測された前記符号誤り率又は実測された前記信号品質レベルに対応する前記仮想符号誤り率を決定する仮想符号誤り率決定工程と、
決定された前記仮想符号誤り率に基づいて前記受信状態の表示を行う表示工程と、
を具備することを特徴とする受信状態表示方法。
【請求項2】
前記デジタル信号に対して、内復号として前記LDPC誤り訂正が行われ、
前記仮想符号誤り率を設定するために用いられる前記符号誤り率を、外復号の前後における前記デジタル信号を比較することによって算出することを特徴とする請求項1に記載の受信状態表示方法。
【請求項3】
前記仮想符号誤り率を設定するために用いられる前記信号品質レベルは前記受信信号のC/N比(キャリア対ノイズ比)であり、前記受信信号から前記デジタル信号を復調する際のMER(変調誤差比)より前記C/N比を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の受信状態表示方法。
【請求項4】
前記C/N比と前記仮想符号誤り率との間の対応関係を記憶することを特徴とする請求項3に記載の受信状態表示方法。
【請求項5】
前記C/N比と前記仮想符号誤り率との間の対応関係は、前記デジタル信号に対して畳み込み符号処理が施された場合のビタビ復号後における符号誤り率である参照用符号誤り率と前記C/N比との間の対応関係を、前記LDPC誤り訂正後における前記符号誤り率に対して許容される上限値に対応する前記C/N比が、前記参照用符号誤り率に対して許容される上限値に対応する前記C/N比と一致するように、前記C/N比に対してオフセットさせた特性として設定することを特徴とする請求項4に記載の受信状態表示方法。
【請求項6】
前記C/N比と前記仮想符号誤り率との間の対応関係を、前記デジタル信号に対する変調方式、又は符号化率に応じて複数種類記憶し、前記変調方式又は前記符号化率に応じて選択して用いることを特徴とする請求項
3から請求項5までのいずれか1項に記載の受信状態表示方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の受信状態表示方法を実行する受信装置であって、
前記受信信号における前記信号品質レベルを測定する信号品質レベル算出部と、
前記LDPC誤り訂正後における前記符号誤り率を測定するBER算出部と、
前記信号品質レベル又は前記符号誤り率に応じて前記仮想符号誤り率を設定する仮想BER算出部と、
前記仮想符号誤り率に基いた前記受信状態の表示を行う受信状態表示部と、
を具備することを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル変調された信号を受信して復調、復号する際の受信状態を表示する受信状態表示方法、及びこれが実行される受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル通信においては、受信状態によらずにデジタル信号が誤りなく伝送されるように各種の符号化処理が施される。この符号化処理により、受信状態が悪いためにデジタル信号の一部のビットが正確に認識できなかった場合でも、誤り訂正処理が施され、元のデジタル信号が正確に復号される。しかしながら、このような誤り訂正処理による復号ができない程度に受信状態が劣化する場合もある。また、元のデジタル信号が誤り訂正処理を用いることによって正確に復号されている場合でも、実際には、現在の受信状態が良好であり誤り訂正処理によって初めて正確に認識できるビットの数が少ない場合と、現在の受信状態が良好ではなく誤り訂正処理によって初めて正確に認識できるビットが多い場合が存在する。
【0003】
ここで、このように伝送されたデジタル信号における符号誤り率(BER)は、C/N比(キャリア/ノイズ比:単位dB)の関数として、
図4に示されるように表される。ここで、特許文献1に記載されるように、誤り訂正処理のために誤り訂正内復号と誤り訂正外復号の2つの処理が行われる場合においては、誤り訂正内復号後のBERにおいては、その後の誤り訂正外復号後において正確な復号を可能とするために、許容上限値が存在する。このため、BERがこの許容上限値となる場合と比べて、現在どの程度の余裕をもった受信状況であるかを示す指数である受信マージンを認識できることが好ましい。
【0004】
図4においては、特許文献1に記載されたように、デジタル信号に対する符号化として畳み込み符号化が用いられ、誤り訂正内復号としてビタビ復号が行われた後のBERのC/N比依存性が示されている。ここでは、BERはC/N比が1dB増加する毎に1桁程度減少する。BERは、ここで、前記の許容上限値をB0とし、これに対応するC/N比をCN0とすると、現在のBERに対応したC/N比をCN1として、CN1-CN0が現在の受信マージンとなり、この受信マージンが正の大きな値となることが要求される。
【0005】
図5は、このような受信状態を視覚的に表示するインジケータ表示の例である。ここでは、「POOR」はこちらの側(図中左側)で受信状態が悪いことを意味し、「GOOD」はこちらの側(図中右側)で受信状態が良好であることを意味する。「-3」、「-4」等の表示は、BERの指数を示し、例えば「-3」はBERが1×10
-3である状態、「-4」はBERが1×10
-4である状態に対応する。
【0006】
図5においては、BERが1×10
-2以上である場合(a)、BERが1×10
-4~1×10
-3の間である場合の表示(b)、BERが1×10
-6~1×10
-5の間である場合の表示(c)、BERが1×10
-7未満である場合の表示(d)が、それぞれ示されており、(a)~(d)の順序に従って良好な受信状態が示されている。前記の許容上限値はここでは1×10
-4とされるため、
図5における特に「-4」と「-5」の表示は差別化されている。受信装置側の表示部において、このような表示を行わせることによって、ユーザーは現在の受信状況を直感的に認識することができる。
【0007】
特許文献1には、このような受信マージンを適正に認識する技術が記載されている。ここでは、上記のような誤り訂正処理として、誤り訂正内復号としてビタビ復号が、誤り訂正外復号としてリードソロモン復号が、それぞれ行われている。この場合、リードソロモン復号処理の限界点は、前記のように例えばBERが2×10-4程度の点であるため、誤り訂正内復号後(誤り訂正外復号前)におけるBERがこの値よりも小さなことが要求される。
【0008】
この場合、
図4におけるBERとしては誤り訂正内復号後のBERを採用して、
図5に示されたような表示を行わせることによって、ユーザーは、現在の受信状態を適正に認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のFPUにおいては、中間周波数(IF周波数)を130MHzとし、ARIB STD-B33、B11に準拠したシステムが用いられている。このシステムにおいては、特許文献1に記載されたように、誤り訂正符号として畳み込み符号が用いられ、前記のように、誤り訂正内復号としてビタビ復号が、誤り訂正外復号としてリードソロモン復号が用いられた。
【0011】
これに対して、長高精細度テレビジョン放送用のFPUに対しては、ARIB STD-B71に準拠したシステムが用いられる。この場合には、誤り訂正符号としてLDPC符号が用いられ、誤り訂正内復号としては、前記のビタビ復号ではなく、より高精度のLDPC復号が用いられる。
図6は、この場合における、LDPC復号後のBERとC/N比の関係を、前記のビタビ復号後のBERと比較して模式的に示す。
【0012】
LDPC復号を用いた場合においては、C/N比に対してのBERの変化が、ビタビ復号を用いた場合よりも急峻となる。この場合、ビタビ復号の場合には
図5においてなされる「POOR」と「GOOD」の間のインジケータ表示の切替(BERの1桁毎の変化)が1dB程度の変化に対応したのに対し、LDPC復号の場合には「-3」と「-7]の間の間隔が1dB程度となるため、受信状態の僅かな変化によって、
図5(a)~(d)の変化が生じた。すなわち、BERのC/N比に対する変化率が大きくなりすぎたために、インジケータ表示を行う場合には、実際には
図5(a)と
図5(d)の間が瞬時に切り替わるという状況になるため、ユーザーが、現在の受信状態の変化を適正に認識することが困難となった。
【0013】
このため、LDPC誤り訂正符号処理が用いられた場合でも、受信状態の変化をユーザーが適正に認識できる技術が望まれた。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の受信状態表示方法は、LDPC誤り訂正符号処理が施されて変調されたデジタル信号を伝送する伝送システムにおける受信装置の受信状態を表示する受信状態表示方法であって、受信信号から復調された前記デジタル信号に対するLDPC誤り訂正後における符号誤り率よりも、信号品質レベルが向上した場合における低下率が小さな仮想符号誤り率を設定し、前記LDPC誤り訂正後における前記符号誤り率、又は前記信号品質レベルを実測し、実測された前記符号誤り率又は実測された前記信号品質レベルに対応する前記仮想符号誤り率を決定する仮想符号誤り率決定工程と、決定された前記仮想符号誤り率に基づいて前記受信状態の表示を行う表示工程と、を具備する。
この際、前記デジタル信号に対して、内復号として前記LDPC誤り訂正が行われ、前記仮想符号誤り率を設定するために用いられる前記符号誤り率を、外復号の前後における前記デジタル信号を比較することによって算出してもよい。
この際、前記仮想符号誤り率を設定するために用いられる前記信号品質レベルは前記受信信号のC/N比(キャリア対ノイズ比)であり、前記受信信号から前記デジタル信号を復調する際のMER(変調誤差比)より前記C/N比を算出してもよい。
この際、前記C/N比と前記仮想符号誤り率との間の対応関係を記憶してもよい。
この際、前記C/N比と前記仮想符号誤り率との間の対応関係は、前記デジタル信号に対して畳み込み符号処理が施された場合のビタビ復号後における符号誤り率である参照用符号誤り率と前記C/N比との間の対応関係を、前記LDPC誤り訂正後における前記符号誤り率に対して許容される上限値に対応する前記C/N比が、前記参照用符号誤り率に対して許容される上限値に対応する前記C/N比と一致するように、前記C/N比に対してオフセットさせた特性として設定してもよい。
この際、前記C/N比と前記仮想符号誤り率との間の対応関係を、前記デジタル信号に対する変調方式、又は符号化率に応じて複数種類記憶し、前記変調方式又は前記符号化率に応じて選択して用いてもよい。
本発明の受信装置は、前記受信状態表示方法を実行する受信装置であって、前記受信信号における前記信号品質レベルを測定する信号品質レベル算出部と、前記LDPC誤り訂正後における前記符号誤り率を測定するBER算出部と、前記信号品質レベル又は前記符号誤り率に応じて前記仮想符号誤り率を設定する仮想BER算出部と、前記仮想符号誤り率に基いた前記受信状態の表示を行う受信状態表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、LDPC誤り訂正符号処理が用いられた場合でも、受信状態の変化をユーザーが適正に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る受信装置の構成を示す図である。
【
図2】仮想BERを設定するための参照用の受信装置の構成を示す図である。
【
図3】仮想BER、実際のBERのC/N比依存性を示す図である。
【
図4】一般的なBERのC/N比依存性を示す図である。
【
図5】BERに基づいて受信状態を表示する表示方法の例である。
【
図6】LDPC復号後のBER、ビタビ復号後のBERのC/N比依存性を示す図である。
【0018】
次に、本発明を実施するための形態となる受信装置を具体的に説明する。この受信装置においては、本発明を実施するための形態となる受信状態表示方法が実施される。以下に、この受信装置について説明する。
【0019】
図1は、この受信装置1の構成を示す図である。この受信装置は、例えばFPU(Field Pickup Unit:テレビジョン放送用の無線中継伝送装置)における受信を行うための一部であり、ARIB STD-B71に準拠した動作を行う。ここで伝送されるデジタル信号に対する符号化には、誤り訂正内符号としてLDPC符号が、誤り訂正外符号としてBCH符号がそれぞれ用いられている。
図1は、この受信装置1の構成を示すブロック図である。ここで、復号後のデジタル信号(放送用のTS信号)に関わる構成については、本願発明とは無関係であるため、記載が省略されている。また、受信した信号に対する復調前における信号処理としては、例えば中間周波数へ周波数変換された信号(IF信号)を生成する処理等があるが、ここでは、こうしたアンテナ10から受信された信号に対する復調前の処理を行う部分は、単一の受信高周波部20として記載されている。
【0020】
デジタル復調部30は、このIF信号を、変調方式(OFDM、シングルキャリアQAM等)に応じて復調する。ただし、この復調後の信号には、受信状態に応じた符号誤りが含まれている。このため、この復調後のデジタル信号は、内復号部40に入力し、ここではLDPC復号による誤り訂正処理が行われる。これによって、このデジタル信号の符号誤り率(BER)が改善する。その後、更にこの信号は外復号部50に入力し、ここではBCH復号による誤り訂正処理が行われることによって、TS信号が出力される。前記の通り、これよりも後におけるTS信号に対する構成は、従来の受信装置、例えば特許文献1に記載の受信装置と同様である。
【0021】
ここで、外復号部50による誤り訂正処理を適正に行わせることができ、適正なTS信号を出力させるためには、内復号部50による誤り訂正処理後におけるBERが一定値(許容上限値)以下である必要がある。一方、このBERは受信状態(受信信号のC/N比(キャリア/ノイズ比:単位dB))に依存し、C/N比が小さな場合にはBERは大きくなり、C/N比が大きな場合にはBERは小さくなる。
【0022】
このため、ここでは、デジタル復調部30の復調の状況から現在の受信信号の信号品質レベルを認識するための信号品質レベル算出部60が用いられる。ここで認識される信号品質レベルは、C/N比である。信号品質レベル算出部60は、デジタル復調部30によるOFDMやシングルキャリアQAM等の変調方式に応じたコンスタレーションにおけるMER(変調誤差比:単位dB)を認識することができる。MERとC/N比には一定の関係があるため、この関係より、現在の受信信号におけるC/N比を算出することができる。
【0023】
また、ここでは、特にLDPC復号(誤り訂正内復号)後のBERを算出するためのBER算出部70が設けられる。BER算出部70は、特許文献1に記載の技術と同様に、外復号部50に入力されるデータ(LDPC復号処理が行われたデータ)と、外復号部50から出力されたデータ(BCH復号処理が行われたデータ)との比較を行うことによって、外復号部50に入力されるデータ(LDPC復号処理が行われたデータ)のBERを算出する。
【0024】
BERを算出するためには相応のデータ量が必要となるため、時間を要する場合があり、例えば受信状態の時間変化が大きな場合には、この方法で適正にBERを認識できない場合がある。この場合、この受信装置1における
図4に示されたようなBERとC/N比の対応関係を予め記憶させていれば、信号品質レベル算出部60によって認識されたC/N比からBERを認識することもできる。この対応関係は、後述するデータ記憶部100に予め記憶させておくことができる。
【0025】
このため、この受信装置1においては、このように認識されたBERを、ディスプレイである受信状態表示部80において
図5に示されたような表示を行わせることができる。しかしながら、
図6に示されたように、内復号部40でLDPC復号が行われた後におけるBERのC/N比に対する変化率は急峻であるため、実際にこのような表示を行った場合には、ユーザーが現在の受信状態を認識することは困難である。
【0026】
このため、この受信装置1においては、受信状態表示部80において、実際のBERに基づく表示ではなく、これよりも受信状態の変化がわかりやすいように変更される。実際のBERとは異なる仮のBERである仮想符号誤り率(仮想BER)に基づいて受信状態に関する表示が行われる。この点について以下に説明する。
【0027】
図2は、このような仮想BERとC/N比との間の関係を設定するために用いられる比較用の受信装置2の構成を示す図である。この受信装置2においては、特許文献1に記載の技術と同様に、畳み込み符号及びリードソロモン符号が適用されるため、内復号部41においてビタビ復号が、外復号部51においてリードソロモン復号がそれぞれ行われる。この場合においても、信号品質レベル算出部60、BER算出部70が同様に用いられる。ただし、ここでBER算出部70によって算出されるのは、内復号部41によるビタビ復号後のBER(参照用符号誤り率)である。
図2において、受信状態認識部91は、BER算出部70によって算出されたBERを認識し、受信状態表示部80に対して、
図5に示されたような表示を行わせることができる。この際、前記と同様に、BER算出部70によらず、信号品質レベル算出部60によって認識されたC/N比からBERを認識してもよい。この場合のBERのC/N比依存性は
図4に示された通りである。
【0028】
なお、この受信装置2は、ここでは、このようなビタビ復号後のBERとC/N比の関係を認識するためのみに参照用として導入され、ビタビ復号後のBERとC/N比の関係が予め認識されれば、実際にこのような受信装置2を設けることは不要である。ビタビ復号後のBERとC/N比の関係と、LDPC復号後のBERのC/N比の関係の違いについては、
図6に示された通りである。
【0029】
図1の受信装置1において実行される受信状態表示方法においては、まず、BER算出部70によって算出されたBERに対応する仮想BERが決定される(仮想符号誤り率決定工程)。この際、前記のように、BER算出部70によって算出されたBERの代わりに、信号品質レベル算出部60によって認識されたC/N比から認識されたBERを用いてもよい。その後、BERではなくこの仮想BERに基づいた受信状態の表示が受信状態表示部80で行われる(表示工程)。仮想BERは、実際のBERよりもC/N比依存性が小さい、すなわち、信号品質レベルが向上した場合における低下率が小さくなるように設定される。
【0030】
LDPC復号後のBERをこのようなビタビ復号後のBER(参照用符号誤り率)に換算した仮想BERを算出するために仮想BER算出部90が用いられる。仮想BER算出部90は、前記のようにBER算出部70によって認識されたBER、あるいは信号品質レベル算出部60によって認識された信号品質レベル(C/N比)から、仮想BERを算出する。
図3は、この場合における仮想BERとC/N比の関係(特性A)を、実際のBERとC/N比の関係(B)と比較して示す図である。仮想BERのC/N比依存性(特性A)は、実際のBERのC/N比依存性(特性B)よりも緩やかに設定される。具体的には、仮想BERのC/N比依存性(特性A)は、
図4に示されたビタビ復号後のBERのC/N比依存性を水平方向にオフセットしたものである。
【0031】
ここで、特許文献1に記載の技術や受信装置1、2のように、誤り訂正内復号(以下、内復号)が行われ、その後に誤り訂正外復号(以下、外復号)が行われる場合には、外復号後において正確な復号が可能となるためには、内復号後のBERには許容上限値が存在する。この上限値は、
図1の構成が用いられた場合の
図3におけるBER(特性B)については、C0であるものとする。C0は、例えば1×10
-7程度であり、
図3における点Eがこれに対応し、この際のC/N比はCN01である。
【0032】
一方、特許文献1に記載されるように、
図2の受信装置2における内復号後のBERに対する同様の上限値をC1とすると、C1は、上記のC0よりも大きく、例えば1×10
-4程度である。
【0033】
図3における仮想BERのC/N比依存性(特性B)は、このようなビタビ復号が用いられた場合のBERのC/N比依存性においてBERがC1となる場合(D)のC/N比と、内復号部50によってLDPC処理が行われた後のBERがC0となる場合(E)のC/N比(=CN01)とが一致するように設定される。すなわち、
図3における仮想BERのC/N比依存性(特性B)は、ビタビ復号が用いられた場合のBERのC/N比依存性が、このようにC/N比に対してオフセットが設けられた特性に一致する。
【0034】
仮想BER特性算出部90は、このような特性に基づいて、BER算出部70によって認識されたBER、あるいは信号品質レベル算出部60によって認識された信号品質レベル(C/N比)から、仮想BERの値を算出する。このためには、BER算出部70によって認識されたBERと仮想BERとの間の換算用のデータ(換算表)、あるいはC/N比と仮想BERとの間の換算用のデータは、
図1におけるデータ記憶部100に予め記憶されている。データ記憶部100は、不揮発性メモリやハードディスクで構成されている。
【0035】
このような仮想BERを、
図5に示された表示におけるBERの代わりに用いた場合には、仮想BERの変化(通信状態の変化)が実際のBERよりも緩やかとなるため、ユーザーにとって視認しやすくなる。この際、前記のように、許容上限値(D、E)におけるC/N比は実際のBER(特性B)と仮想BER(特性A)の間で統一されている。また、例えば
図3においてC/N比がD、Eよりも大きく実際のBER(特性B)が許容上限値よりも小さな場合における仮想BER(特性A)は実際のBERよりも大幅に大きな値となる。
【0036】
実際のBERの代わりにこのような仮想BERを
図5における表示のために用いた場合には、BERが許容上限値にある(受信状態が限界点にある)、あるいは許容上限値よりも実際のBERが大きな(D、EよりもC/N比が小さな)場合には、その差分の程度は異なるものの、現在の受信状態が限界点にある、あるいはこれよりも悪いという旨を適正に認識することができる。一方、許容上限値よりも実際のBERが小さな(D、EよりもC/N比が大きい)場合には、その限界点からの差分の程度は異なるものの、現在の受信状態が限界点よりも良好な状態にあることを適正に認識することができる。このため、限界点からの差分は実際とは異なるものの、受信状態の傾向は適正に認識することができる。
【0037】
ただし、実際のBERを用いて
図5に示された表示を行った場合には、受信状態の僅かな変化によって、
図5(a)~(d)の間の変化が急激に生じるために、ユーザーが、現在の受信状態の変化を適正に認識することが困難となった。これに対し、このように仮想BERを用いた表示を行った場合には、受信状態の変化に伴うこのような表示の変化は、ビタビ復号が行われた場合と同等に緩やかとなるため、ユーザーがこの変化を認識することが容易となる。
【0038】
なお、上記の例では、仮想BERとC/N比の関係を設定する際には、
図2の受信装置2におけるビタビ復号後のBERとC/N比の関係が平行移動されて用いられた。しかしながら、同様の効果を奏する限りにおいて、実際のBERとC/N比の関係よりも変動率が緩やかである、仮想的な他の特性を用いてもよい。
【0039】
また、上記の例では、実測されたBER又は実測されたC/N比と仮想BERとの間の換算用のデータがデータ記憶部100に予め記憶されているものとされた。この際、このような換算用のデータを、BERのC/N比依存性が異なる複数の伝送条件(例えば変調方式、符号化率等)毎に記憶させ、選択された伝送条件に応じて選択して用いることもできる。これによって、伝送条件の異なる様々な状態に対しても、適切な仮想BERを設定することができる。あるいは、伝送条件の異なる複数の受信装置がある場合において、共通の仮想BER算出部、データ記憶部を用いて、各受信装置毎に受信状態の表示を行わせることができる。
【0040】
また、上記の例では、LDPC復号後のデジタル信号におけるBERの代わりに仮想BERが用いられたが、同様に信号品質レベルの変化に対するBERの変化率が大きな場合には、BERの代わりに仮想BERを用いた受信状態の表示を同様に行わせることができる。
【0041】
また、上記の例では、この受信装置がFPUの一部であるものとしたが、STL(Studio to Transmitter Link)やTTL(Transmitter to Transmitter Link)等、任意の無線システムにおいて上記の構成を用いることができる。
【0042】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0043】
1、2 受信装置
10 アンテナ
20 受信高周波部
30 デジタル復調部
40、41 内復号部
50、51 外復号部
60 信号品質レベル算出部
70 BER算出部
80 受信状態表示部
90 仮想BER算出部
91 受信状態認識部
100 データ記憶部