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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240326BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
F24F13/15 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020085234
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178581
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】塚原 晋
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-041664(JP,A)
【文献】特開2006-306365(JP,A)
【文献】特開2013-086518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室空間に開口する吹出口から吹き出される風の風向を調整可能な風向調整装置であって、
前記吹出口に連通する送風路の一側を画成する第1のフィンと、前記送風路の他側を画成する第2のフィンと、を有し、前記吹出口から吹き出される風の風向を変更可能な風向変更部と、
前記送風路の上流側に配置され、前記送風路に連通する導入口が形成された壁部と、
を備え、
前記第1のフィンが複数のフィンを回動自在に連結させることで形成されており、
前記第2のフィンが複数のフィンを回動自在に連結させることで形成されており、
前記第1のフィンは、下流側の端部が、前記吹出口の一側における上流側近傍に前記吹出口が形成された部材に対して相対的に回動できるように取り付けられるとともに、上流側の端部が、前記壁部の一側に形成された第1の貫通孔に、先端を前記壁部の外方に突出させた状態で前記壁部に対して相対移動できるように挿入されている自由端であり
前記第2のフィンは、下流側の端部が、前記吹出口の他側における上流側近傍に前記吹出口が形成された部材に対して相対的に回動できるように取り付けられるとともに、上流側の端部が、前記壁部の他側に形成された第2の貫通孔に、先端を前記壁部の外方に突出させた状態で前記壁部に対して相対移動できるように挿入されている自由端である
風向調整装置。
【請求項2】
前記第1のフィンの下流側の端部が、先端を中心として前記吹出口が形成された部材に対して相対的に回動できるように取り付けられており、
前記第2のフィンの下流側の端部が、先端を中心として前記吹出口が形成された部材に対して相対的に回動できるように取り付けられている、
請求項1に記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記第1のフィンと前記第2のフィンとを連結するリンクをさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の風向調整装置。
【請求項4】
前記第1の貫通孔が、前記第1のフィンの上流側の端部の前記壁部に対する相対移動を許容した状態で封止されており、
前記第2の貫通孔が、前記第2のフィンの上流側の端部の前記壁部に対する相対移動を許容した状態で封止されている、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、車室空間に風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えば、インストルメントパネルやセンターコンソール部などの車両の各部に設置され、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置としては、下記の特許文献1に開示されているように、吹出口から吹き出される風が通過する送風路を画成する一対のフィンと、一対のフィンを可動可能に保持するケースと、を備えるものが知られている。
【0004】
この特許文献1では、板状の上部壁部と上部接続部とを回動自在に連結することで一方のフィンを形成し、板状の下部壁部と下部接続部とを回動自在に連結することで他方のフィンを形成している。そして、上部壁部および下部壁部を、それぞれの先端部を中心として回動できるようにした状態でケースの前部に連結している。さらに、上部接続部および下部接続部を、ケースに対して相対移動できるようにした状態でケースの後部に支持している。こうすることで、一対のフィンがケースに可動可能に保持されるようにしている。
【0005】
そして、ケースに可動可能に保持させた一対のフィンを変位させることで、吹出口から吹き出される風の風向を調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-306365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術では、吹出口が形成されたレジスタパネルにリテーナを嵌合させることでケースを形成している。そして、リテーナの上流側の壁部に下流側(吹出口側)に開口する溝部を設け、この溝部に上部接続部および下部接続部の基端側の端部を回動可能かつ深さ方向に往復動可能な状態で挿入することで、一対のフィンを変位させた際に、上部接続部および下部接続部のケースへの保持が維持されるようにしている。
【0008】
このように、上記従来の技術では、吹出口から吹き出される風の風向を制御することは可能であるが、風向調整装置の構成が複雑化してしまう。
【0009】
そこで、本開示は、より簡素な構成で風向を制御することが可能な風向調整装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の風向調整装置は、車室空間に開口する吹出口から吹き出される風の風向を調整することが可能な装置である。この風向調整装置は、前記吹出口に連通する送風路の一側を画成する第1のフィンと、前記送風路の他側を画成する第2のフィンと、を有し、前記吹出口から吹き出される風の風向を変更可能な風向変更部を備えている。また、風向調整装置は、前記送風路の上流側に配置され、前記送風路に連通する導入口が形成された壁部を備えている。また、前記第1のフィンが複数のフィンを回動自在に連結させることで形成されており、前記第2のフィンが複数のフィンを回動自在に連結させることで形成されている。ここで、前記第1のフィンは、下流側の端部が、前記吹出口の一側における上流側近傍に前記吹出口が形成された部材に対して相対的に回動できるように取り付けられるとともに、上流側の端部が、前記壁部の一側に形成された第1の貫通孔に、先端を前記壁部の外方に突出させた状態で前記壁部に対して相対移動できるように挿入されている。そして、前記第2のフィンは、下流側の端部が、前記吹出口の他側における上流側近傍に前記吹出口が形成された部材に対して相対的に回動できるように取り付けられるとともに、上流側の端部が、前記壁部の他側に形成された第2の貫通孔に、先端を前記壁部の外方に突出させた状態で前記壁部に対して相対移動できるように挿入されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、より簡素な構成で風向を制御することが可能な風向調整装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態にかかる風向調整装置が配置されるインストルメントパネルを模式的に示す斜視図である。
図2】風向を上向きにした状態における図1のA-A断面図である。
図3】風向を水平向きにした状態における図1のA-A断面図である。
図4】風向を上下きにした状態における図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、自動車等の車両のインストルメントパネルの裏側に配置され、インストルメントパネルに形成された吹出口から吹き出される空気(空調風)の風向を調整できるようにした風向調整装置を例示する。また、風向調整装置の前後方向、左右方向および上下方向については、インストルメントパネルの裏側に風向調整装置を配置した状態を基準として説明する。
【0014】
本実施形態にかかる風向調整装置2は、図1から図4に示すように、車室空間Sを画成するインストルメントパネル1の裏側(車室空間S側とは反対側)に配置されている。この風向調整装置2は、図示せぬ空調装置の送風ダクトを通って送られてくる空気をインストルメントパネル1に形成された吹出口Paから車室空間S内に吹き出させるものである。
【0015】
本実施形態では、インストルメントパネル1は、図1に示すように、上下方向の略中央部を車室空間S側に突出するように湾曲させた形状をしている。このようなインストルメントパネル1は、例えば、樹脂材料を用いて形成することができる。本実施形態では、インストルメントパネル1は、車幅方向に細長い板状の部材を上方かつ車両前方に向けて延在させた上部パネル11と、車幅方向に細長い板状の部材を下方かつ車両前方に向けて延在させた下部パネル12と、を備えており、上部パネル11と下部パネル12とが一体に形成されている。なお、上部パネル11および下部パネル12は、別体に形成することも可能である。
【0016】
また、インストルメントパネル1の車室空間S側に突出する部位には、車両幅方向に細長い略矩形状の穴1aが形成されている。この穴1aは、短手方向(上下方向)に比べて長手方向(車両幅方向)が比較的長くなる(アスペクト比が比較的高くなる)ように形成されており、本実施形態では、この穴1aを空気(空調風)の吹出口Paとして用いている。
【0017】
そして、このインストルメントパネル1の裏側(内側:車室空間Sが形成される側とは反対側)に、風向調整装置2が配置されている。この風向調整装置2は、例えば、ネジや樹脂爪等によりインストルメントパネル1に直接または間接的に固定されている。
【0018】
本実施形態では、風向調整装置2は、吹出口Paから吹き出される風の風向を変更可能な風向変更部3と、風向変更部3を保持するケース4と、を備えている。
【0019】
風向変更部3は、図2から図4に示すように、第1のフィン31と第2のフィン32とを備えている。本実施形態では、第1のフィン31が上側(一側:吹出口Paの短手方向の一方側)に配置されており、第2のフィン32が第1のフィン31よりも下側(他側:吹出口Paの短手方向の他方側)に配置されている。こうすることで、第1のフィン31と第2のフィン32との間に吹出口Paに連通する送風路Pが形成されるようにしている。すなわち、本実施形態では、第1のフィン31が、吹出口Paに連通する送風路Pの上側(一側:吹出口Paの短手方向の一方側)を画成し、第2のフィン32が、送風路Pの下側(他側:吹出口Paの短手方向の他方側)を画成している。
【0020】
そして、第1のフィン31および第2のフィン32は、ケース4に対して相対移動することができるようにした状態でケース4内に配置されている。このとき、第1のフィン31および第2のフィン32は、板厚方向を略上下方向とした状態でケース4内に配置されている。
【0021】
本実施形態では、ケース4は、天壁41、底壁42、側壁43および奥壁44を備えており、送風路Pの下流側(吹出口Pa側)に開口する略箱状に形成されている。このようなケース4は、例えば樹脂材料を用いて一体成形することにより形成することができる。また、ケース4の奥壁44の上下方向の略中央部には、奥側(送風路Pの上流側)に向けて延設された延設部441が形成されており、この延設部441の上流端には、図示せぬ空調装置の送風ダクトに連通する導入口Pbが形成されている。このように、本実施形態では、ケース4の奥壁44が、送風路Pの上流側に配置され、送風路Pに連通する導入口Pbが形成された壁部に相当している。なお、本実施形態では、ケース4は、下流側の開口が吹出口Paを覆った状態でインストルメントパネル1に固定されている。
【0022】
ここで、本実施形態では、ケース4内に配置された第1のフィン31および第2のフィン32によって画成される送風路Pの形状を変化させることで、吹出口Paから吹き出される風の風向を変更できるようにしている。
【0023】
具体的には、複数のフィンを回動自在に連結させることで第1のフィン31を形成している。本実施形態では、第1のフィン31が第1の下流側フィン311と第1の上流側フィン312とを備えている。そして、第1の下流側フィン311の上流側端部311bに第1の上流側フィン312の下流側端部312aを連結させることで、第1の上流側フィン312が第1の下流側フィン311に対して相対回動できるようにしている。第1の下流側フィン311と第1の上流側フィン312との連結は、例えば、第1の下流側フィン311の上流側端部311bおよび第1の上流側フィン312の下流側端部312aのうちのいずれか一方の端部に車両幅方向に突出する軸部を設け、この軸部を他方の端部に設けられた穴や凹部に挿入することで形成することができる。
【0024】
同様に、複数のフィンを回動自在に連結させることで第2のフィン32を形成している。本実施形態では、第2のフィン32が第2の下流側フィン321と第2の上流側フィン322とを備えている。そして、第2の下流側フィン321の上流側端部321bに第2の上流側フィン322の下流側端部322aを連結させることで、第2の上流側フィン322が第2の下流側フィン321に対して相対回動できるようにしている。第2の下流側フィン321と第2の上流側フィン322との連結も、例えば、第2の下流側フィン321の上流側端部321bおよび第2の上流側フィン322の下流側端部322aのうちのいずれか一方の端部に車両幅方向に突出する軸部を設け、この軸部を他方の端部に設けられた穴や凹部に挿入することで形成することができる。
【0025】
このように、本実施形態では、2枚(複数枚)のフィンを直接連結させることで、第1のフィン31および第2のフィン32を形成している。
【0026】
また、ケース4内には、送風路Pを画成する第1のフィン31および第2のフィン32を左右両側(車両幅方向の両側)から挟み込むスペーサ45が配置されており、第1のフィン31および第2のフィン32が、このスペーサ45に相対移動可能に取り付けられている。
【0027】
本実施形態では、スペーサ45は、ケース4内の空間を車両幅方向に並ぶ複数の空間に仕切るように配置されている。このとき、スペーサ45は、図2から図4に示すように、下流側の端部を吹出口Paの近傍に向けて突出させた状態でケース4内に配置されている。
【0028】
そして、第1のフィン31の下流側の端部(第1の下流側フィン311の下流側端部311a)に形成された軸を、スペーサ45の下流側の端部の上部に形成された第1の丸穴45aに挿入させている。こうすることで、第1のフィン31(第1の下流側フィン311)がスペーサ45に、第1の丸穴45aを中心として上下方向(吹出口Paの短手方向)に回動できるように取り付けられている。
【0029】
同様に、第2のフィン32の下流側の端部(第2の下流側フィン321の下流側端部321a)に形成された軸を、スペーサ45の下流側の端部の下部に形成された第2の丸穴45bに挿入させている。こうすることで、第2のフィン32(第2の下流側フィン321)がスペーサ45に、第2の丸穴45bを中心として上下方向(吹出口Paの短手方向)に回動できるように取り付けられている。
【0030】
このように、本実施形態では、第1のフィン31および第2のフィン32を左右両側(車両幅方向の両側)から挟み込む一対のスペーサ45によって、送風路Pの側部が画成されている。
【0031】
なお、第1のフィン31および第2のフィン32の左右のうち少なくともいずれか一方側をケース4の側壁43に回動自在に取り付けるようにしてもよい。また、スペーサ45によって送風路Pの両側部を画成させる場合には、ケース4に側壁43を設けないようにすることも可能である。
【0032】
ここで、本実施形態では、第1の丸穴45aが吹出口Paの上側(一側:吹出口Paの短手方向の一方側)における上流側近傍に形成されている。したがって、本実施形態では、第1のフィン31の下流側の端部(第1の下流側フィン311の下流側端部311a)が、吹出口Paの上側(一側:吹出口Paの短手方向の一方側)における上流側近傍に取り付けられることになる。このとき、第1のフィン31の下流側の端部(第1の下流側フィン311の下流側端部311a)は、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1に対して相対的に回動できるようにスペーサ45に取り付けられることになる。
【0033】
さらに、本実施形態では、第1の下流側フィン311の先端に形成された軸部が第1の丸穴45aに挿入されるようにしている。したがって、第1のフィン31の下流側の端部(第1の下流側フィン311の下流側端部311a)は、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1に対して先端を中心として相対的に回動できるようにスペーサ45に取り付けられている。
【0034】
このように、本実施形態では、第1のフィン31の下流側の端部の回動中心が、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1の裏側における吹出口Paの一側の周縁部近傍に配置されている。
【0035】
一方、第2の丸穴45bは、吹出口Paの下側(他側:吹出口Paの短手方向の他方側)における上流側近傍に形成されている。したがって、本実施形態では、第2のフィン32の下流側の端部(第2の下流側フィン321の下流側端部321a)が、吹出口Paの下側(他側:吹出口Paの短手方向の他方側)における上流側近傍に取り付けられることになる。このとき、第2のフィン32の下流側の端部(第2の下流側フィン321の下流側端部321a)は、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1に対して相対的に回動できるようにスペーサ45に取り付けられることになる。
【0036】
さらに、本実施形態では、第2の下流側フィン321の先端に形成された軸部が第2の丸穴45bに挿入されるようにしている。したがって、第2のフィン32の下流側の端部(第2の下流側フィン321の下流側端部321a)は、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1に対して先端を中心として相対的に回動できるようにスペーサ45に取り付けられている。
【0037】
このように、本実施形態では、第2のフィンの下流側の端部の回動中心が、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1の裏側における吹出口Paの他側の周縁部近傍に配置されている。
【0038】
さらに、本実施形態では、第1のフィン31の上流側の端部(第1の上流側フィン312の上流端部312b)が、奥壁(壁部)44の上側(一側:吹出口Paの短手方向の一方側)に形成された第1の貫通孔44aに挿入されている。このとき、第1のフィン31は、先端(上流端)を奥壁(壁部)44の外方に突出させた状態で奥壁(壁部)44に対して相対移動できるように挿入されている。
【0039】
そして、第1の貫通孔44aは、封止材6によって、第1のフィン31の上流側の端部の奥壁(壁部)44に対する相対移動を許容した状態で封止されている。
【0040】
同様に、第2のフィン32の上流側の端部(第2の上流側フィン322の上流端部322b)が、奥壁(壁部)44の下側(他側:吹出口Paの短手方向の他方側)に形成された第2の貫通孔44bに挿入されている。このとき、第2のフィン32は、先端(上流端)を奥壁(壁部)44の外方に突出させた状態で奥壁(壁部)44に対して相対移動できるように挿入されている。
【0041】
そして、第2の貫通孔44bは、封止材6によって、第2のフィン32の上流側の端部の奥壁(壁部)44に対する相対移動を許容した状態で封止されている。
【0042】
第1の貫通孔44aおよび第2の貫通孔44bを封止する封止材としては、例えば、エラストマーや発泡材などの弾性変形可能なものを用いることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、第1の貫通孔44aが奥壁(壁部)44の延設部441よりも上方に形成されており、第2の貫通孔44bが奥壁(壁部)44の延設部441よりも下方に形成されている。こうすることで、空調装置の送風ダクトから導入口Pbを介して延設部441内に導入された空気(空調風)を、より確実に第1のフィン31と第2のフィン32との間に形成された送風路Pに導入させることができるようにしている。
【0044】
また、風向調整装置2は、第1のフィン31と第2のフィン32とを連結するリンク5をさらに備えている。
【0045】
そして、第1の下流側フィン311の上流側端部311bおよび第1の上流側フィン312の下流側端部312aのうちのいずれか一方に設けられた軸部を、リンク5の上部に形成された穴または凹部に挿入することで、第1のフィン31をリンク5に取り付けている。同様に、第2の下流側フィン321の上流側端部321bおよび第2の上流側フィン322の下流側端部322aのうちのいずれか一方に設けられた軸部を、リンク5の下部に形成された穴または凹部に挿入することで、第2のフィン32をリンク5に取り付けている。
【0046】
このように、本実施形態では、第1の下流側フィン311と第1の上流側フィン312とを連結するための軸がリンク5を連結する部材も兼ねるようにしている。また、第2の下流側フィン321と第2の上流側フィン322とを連結するための軸がリンク5を連結する部材も兼ねるようにしている。こうすれば、第1のフィン31や第2のフィン32にリンク5を連結するための部材を別途設ける必要がなくなるため、構成の簡素化を図ることができるようになる。
【0047】
また、リンク5の上下方向の中央部には、車両幅方向に突出する軸部51が形成されている。そして、この軸部51をスペーサ45に形成された円弧状のスリット45cに、先端がスペーサ45の外方に突出するように挿入することで、リンク5がスリット45cに沿って上下に移動させることができるようにしている。
【0048】
なお、リンク5の上下方向への移動は、例えば、図示せぬリンク移動手段によって軸部51を上下に移動させることで行うことができる。
【0049】
そして、風向調整装置2の構成を上述したような構成とし、図示せぬリンク移動手段によってリンク5をスリット45cに沿って上下に移動させると、リンク5の移動に連動して第1のフィン31および第2のフィン32が移動することになる。
【0050】
具体的には、第1のフィン31の第1の下流側フィン311は、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1に対して先端(下流端)を中心として相対的に上下方向に回動することになる。そして、第1のフィン31の第1の上流側フィン312は、先端側(上流端側)をケース4に対して相対移動させながら、第1の貫通孔44aを中心としてケース4に対して相対的に上下方向に回動することになる。
【0051】
同様に、第2のフィン32の第2の下流側フィン321は、インストルメントパネル(吹出口Paが形成された部材)1に対して先端(下流端)を中心として相対的に上下方向に回動することになる。そして、第2のフィン32の第2の上流側フィン322は、先端側(上流端側)をケース4に対して相対移動させながら、第2の貫通孔44bを中心としてケース4に対して相対的に上下方向に回動することになる。
【0052】
そして、リンク5の軸部51をスリット45cに沿って下端から略中央部まで移動させると、送風路Pは、図2に示すように下方に屈曲した形状から図3に示すように略水平方向に一直線状に延在する形状となるように徐々に変化する。このとき、送風路Pを通って吹出口Paから車室空間S内に吹き出される風の風向は、斜め上方から略水平となるように徐々に変化する。
【0053】
さらに、リンク5の軸部51をスリット45cに沿って略中央部から上端まで移動させると、送風路Pは、図3に示すように略水平方向に一直線状に延在する形状から図4に示すように上方に屈曲した形状となるように徐々に変化する。このとき、送風路Pを通って吹出口Paから車室空間S内に吹き出される風の風向は、略水平から斜め下方となるように徐々に変化する。
【0054】
このように、本実施形態では、送風路Pの形状を変化させることで、空調装置の送風ダクトから導入口Pbを介して延設部441内に導入され、送風路Pを通って吹出口Paから車室空間S内に吹き出される風の風向を変化させるようにしている。
【0055】
以下では、上記実施形態で示した風向調整装置2の特徴的構成およびそれにより得られる効果を説明する。
【0056】
本実施形態にかかる風向調整装置2は、車室空間Sに開口する吹出口Paから吹き出される風の風向を調整可能な装置である。この風向調整装置2は、吹出口Paに連通する送風路Pの一側を画成する第1のフィン31と、送風路Pの他側を画成する第2のフィン32と、を有し、吹出口Paから吹き出される風の風向を変更可能な風向変更部3を備えている。また、風向調整装置2は、送風路Pの上流側に配置され、送風路Pに連通する導入口Pbが形成された奥壁(壁部)44を備えている。また、第1のフィン31が複数のフィンを回動自在に連結させることで形成されており、第2のフィン32が複数のフィンを回動自在に連結させることで形成されている。ここで、第1のフィン31の下流側の端部が、吹出口Paの一側における上流側近傍に吹出口Paが形成された部材(インストルメントパネル1)に対して相対的に回動できるように取り付けられている。さらに、第1のフィン31の上流側の端部が、奥壁(壁部)44の一側に形成された第1の貫通孔44aに、先端を奥壁(壁部)の外方に突出させた状態で奥壁(壁部)44に対して相対移動できるように挿入されている。また、第2のフィン32の下流側の端部が、吹出口Paの他側における上流側近傍に吹出口Paが形成された部材(インストルメントパネル1)に対して相対的に回動できるように取り付けられている。そして、第2のフィン32の上流側の端部が、奥壁(壁部)44の他側に形成された第2の貫通孔44bに、先端を奥壁(壁部)44の外方に突出させた状態で奥壁(壁部)44に対して相対移動できるように挿入されている。
【0057】
このように、第1のフィン31および第2のフィン32の上流側の端部を、奥壁(壁部)44に形成された貫通孔に、奥壁(壁部)44に対して相対移動できるように挿入させるようにすれば、ケース4の内部に上流側の端部を保持する機構を設けたり、ケース2を複数の部材に分割したりする必要がなくなる。その結果、吹出口Paから吹き出される風の風向を調整可能な風向調整装置2の構成をより簡素化させることができるようになる。
【0058】
すなわち、本実施形態によれば、より簡素な構成で風向を制御することが可能な風向調整装置2を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態のように、奥壁(壁部)44に形成された貫通孔に挿入するだけで、第1のフィン31および第2のフィン32の上流側の端部が奥壁(壁部)44に保持されるようにすれば、より容易に風向調整装置2を組み立てることができるようになる。
【0060】
さらに、第1のフィン31および第2のフィン32の上流側の端部の奥壁(壁部)44に対する相対移動によって、各部材の寸法公差により生じる風向調整装置2の組付交差を吸収することができるため、壁部やフィンの製造が容易になる。
【0061】
なお、本実施形態にかかる風向調整装置2では、送風路Pの形状を変えることで吹出口Paから吹き出される風の風向を変化させるようにしている。こうすれば、インストルメントパネル1の吹出口Paに風向調整用のフィン等を設けることなく、風向を変化させることができるようになる。その結果、インストルメントパネル1の吹出口Paの意匠性をより向上させることができるようになる。
【0062】
また、本実施形態では、第1のフィン31の下流側の端部が、先端を中心として吹出口Paが形成された部材(インストルメントパネル1)に対して相対的に回動できるように取り付けられている。そして、第2のフィン32の下流側の端部が、先端を中心として吹出口Paが形成された部材(インストルメントパネル1)に対して相対的に回動できるように取り付けられている。
【0063】
こうすれば、風向を変化させた際に、第1のフィン31および第2のフィン32の下流端がインストルメントパネル1に対して平行移動してしまうことが抑制される。その結果、インストルメントパネル1の吹出口Paから第1のフィン31や第2のフィン32が見えてしまうことを抑制することができ、車室空間S内の見栄えをより向上させることができるようになる。
【0064】
また、本実施形態では、風向調整装置2が、第1のフィン31と第2のフィン32とを連結するリンク5をさらに備えている。
【0065】
こうすれば、風向を変化させた際に、送風路Pの幅(上下の高さ)が変化してしまうことを抑制することができる。その結果、風向きによらず、ほぼ一定量の風を安定して吹出口Paから吹き出すことができるようになる。
【0066】
また、本実施形態では、第1の貫通孔44aが、第1のフィン31の上流側の端部の奥壁(壁部)44に対する相対移動を許容した状態で封止されている。そして、第2の貫通孔44bが、第2のフィン32の上流側の端部の奥壁(壁部)44に対する相対移動を許容した状態で封止されている。
【0067】
こうすれば、送風路P内に導入された空気が貫通孔から外部に漏れてしまうことを抑制することができ、通気抵抗が上昇してしまうことを抑制することができるようになる。
【0068】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、2枚のフィンを回動自在に連結することで第1のフィン31や第2のフィン32を形成したものを例示したが、3枚以上のフィンを回動自在に連結することで第1のフィン31や第2のフィン32を形成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、第1のフィン31および第2のフィン32によって1つの送風路Pを形成したものを例示したが、第1のフィン31と第2のフィン32との間に、1つ以上の第3のフィンを設け、複数の送風路Pが形成されるようにしてもよい。
【0071】
また、第1のフィン31および第2のフィン32のリンク5を連結する部位は、上記実施形態で示した部位に限られるものではなく、様々な部位でリンク5を連結することが可能である。また、リンク5の数も様々な数とすることが可能である。
【0072】
また、風向変更部や壁部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 インストルメントパネル(吹き出し口が形成された部材)
2 風向調整装置
3 風向調整部
31 第1のフィン
32 第2のフィン
44 奥壁(壁部)
44a 第1の貫通孔
44b 第2の貫通孔
5 リンク
6 封止材
P 送風路
Pa 吹き出し口
Pb 導入口
S 車室空間
図1
図2
図3
図4