(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ベンチレータ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20240326BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60H1/34 611C
B60H1/34 651B
F24F13/14 D
(21)【出願番号】P 2020085683
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】米山 陽二郎
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0366807(US,A1)
【文献】特開2016-113140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吹出口の開口部に、風向を調整する少なくとも1つの可動フィンが回転可能に配される車両用ベンチレータにおいて、
前記可動フィンを備えるフィン部材と、加飾フィンを備える少なくとも1つの加飾部材とを有し、
前記フィン部材は、回転可能に配される可動フィン本体部と、前記可動フィンの下流側端部に不動に配される固定部とを有し、
前記固定部は、前記可動フィン本体部の回転軸に沿って配され、且つ、前記回転軸に沿って前記可動フィン本体部に接触する又は近接する形状を有し、
前記固定部の外面は、前記加飾フィンの先端部の外面の少なくとも一部と同一の形状又は相似する形状を有
し、
前記フィン部材は、前記可動フィンを支持する少なくとも一対のアーム部を有し、
前記可動フィン本体部は、一対の前記アーム部に回転可能に連結され、
前記固定部は、一対の前記アーム部の先端部に固定されている
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項2】
前記フィン部材と前記加飾部材とが取り付けられるケース部材を有する請求項
1記載のベンチレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けられるベンチレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2019-31192号公報(特許文献1)や特許第6454223号公報(特許文献2)には、吹き出す空気の風向を調整可能なベンチレータが記載されている。
例えば、特許文献1に記載されているベンチレータには、フィン組立体がパネルの吹出し口に上下に回転可能に取り付けられている。また、フィン組立体は、幅方向に沿って並列に配される複数の下流側横フィンと、横フィンの上流側に高さ方向に沿って配される複数の上流側縦フィンと、複数の上流側縦フィンを互いに連結するリンクと、上流側縦フィンの1つに取り付けられる操作ノブとを備えている。なお、幅方向及び高さ方向は、横方向及び縦方向と言うこともできる。
【0003】
特許文献1のベンチレータは、フィン組立体を上下に回転させることにより、ベンチレータから吹き出す風向を高さ方向に調整できる。また、操作ノブを幅方向に操作することによって、上流側縦フィンを回転させて、ベンチレータから吹き出す風向を幅方向に調整できる。
【0004】
特許文献2に記載されているベンチレータは、ガイドフィン(可動フィン)を備えるエアアウトレットと、不動に設けられた装飾フィンを備える装飾装置とを有する。また、ガイドフィンは、下流端縁部に付設された回転軸を中心として装飾フィンに旋回可能に支承されている。特許文献2のベンチレータでは、ガイドフィンを上下に回転させることにより、風向を高さ方向に調整できる。また特許文献2には、装飾装置からエアアウトレットへの移行部がほとんどわからないように、エアアウトレットが良好に自動車内装に統合可能であるとの利点を有する旨が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-31192号公報
【文献】特許第6454223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1において、ベンチレータが取り付けられるパネルには、ベンチレータの幅方向に配される下流側横フィンに対応したデザインの意匠面が形成されている。これにより、パネルの意匠面とベンチレータとに統一感を持たせることができる。しかし、風向の調整のためにフィン組立体を上下に回転させたときに、下流側横フィンの位置がパネルの意匠面に対して上方又は下方にずれる。このため、パネルの意匠面とベンチレータとの間の統一感が崩れてしまい、車室内におけるベンチレータ及びその近傍の見栄え又は外観品質の低下を招く。
【0007】
一方、特許文献2のベンチレータでは、ガイドフィンを上下に回転させても、ベンチレータを空気の吹出口側から見たときに、ガイドフィンの下流側端部が移動せずに下流側端部の位置が保持されるため、例えば特許文献1のように意匠面とベンチレータとの間の統一感が崩れることはなく、見栄え又は外観品質の低下を防ぐことが可能である。
【0008】
しかし、例えば自動車のデザイン性を高めたり、他の車との差別化を出したりするために、ガイドフィンを回転させたときにガイドフィンの下流側端部の位置を保持するだけでなく、ガイドフィンの下流側端部が回転しないように見える等の向上した見栄えを備えたベンチレータが求められることもある。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、可動フィンを回転させても可動フィンの下流側端部が移動しない構造を比較的簡単に形成可能で、また、見栄えをより向上させることが可能なベンチレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるベンチレータは、空気吹出口の開口部に、風向を調整する少なくとも1つの可動フィンが回転可能に配される車両用ベンチレータにおいて、前記可動フィンを備えるフィン部材と、加飾フィンを備える少なくとも1つの加飾部材とを有し、前記フィン部材は、回転可能に配される可動フィン本体部と、前記可動フィンの下流側端部に不動に配される固定部とを有し、前記固定部は、前記可動フィン本体部の回転軸に沿って配され、且つ、前記回転軸に沿って前記可動フィン本体部に接触する又は近接する形状を有し、前記固定部の外面は、前記加飾フィンの先端部の外面の少なくとも一部と同一の形状又は相似する形状を有し、前記フィン部材は、前記可動フィンを支持する少なくとも一対のアーム部を有し、前記可動フィン本体部は、一対の前記アーム部に回転可能に連結され、前記固定部は、一対の前記アーム部の先端部に固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のベンチレータは、前記フィン部材と前記加飾部材とが取り付けられるケース部材を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベンチレータによれば、可動フィンを回転させても可動フィンの下流側端部が移動しない構造を比較的簡単に形成でき、また、可動フィンの下流側端部が回転しないようにして、その見栄えをより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係るベンチレータを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したベンチレータを形成するフィン部材、加飾部材、及びケース部材を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示したフィン部材が分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図2に示した加飾部材が分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
【
図5】フィン部材と加飾部材の境界部及びその近傍を模式的に示す断面図である。
【
図6】可動フィンの幅方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
【
図7】上向きに風向を調整したときの可動フィンの断面を模式的に示す断面図である。
【
図8】下向きに風向を調整したときの可動フィンの断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0016】
図1は、本実施例に係るベンチレータを模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施例のベンチレータを形成するフィン部材、加飾部材、及びケース部材を模式的に示す斜視図である。
図3及び
図4は、フィン部材及び加飾部材が分解された状態をそれぞれ模式的に示す分解斜視図である。
【0017】
図1に示した本実施例のベンチレータ1は、例えば、自動車の車室内におけるインストルメントパネルやセンターコンソール等の図示しない内装部材に装着されるものであり、車両に備えられた空調装置に接続されることによって、空調装置から供給される空気を車室内に吹き出すことが可能な装置である。このようなベンチレータ1は、風向調整装置又は空気吹出装置とも呼ばれる。
【0018】
ここで、ベンチレータ1に関して、前後方向は、後述する可動フィン12がニュートラルの位置(中央位置)に保持されているときにベンチレータ1から吹き出される空気の吹き出し方向に沿った方向である。この場合、空気の流れの下流側を前方とし、上流側を後方とする。上下方向及び左右方向は、ニュートラルの位置に保持されている可動フィン12を水平な状態に保持してベンチレータ1を吹出口側から見たときにおける垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である。
【0019】
本実施例のベンチレータ1は、複数の可動フィン12を有するフィン部材10(フィン組立体とも言う)と、フィン部材10の左右両側に配されて意匠面を形成する左右一対の加飾部材30(加飾組立体とも言う)と、フィン部材10及び左右の加飾部材30が取り付けられるケース部材50とを有する。このベンチレータ1は、ケース部材50にフィン部材10及び左右の加飾部材30が組み付けられることによって形成されている。
【0020】
本実施例の場合、3つの可動フィン12が、ケース部材50における空気吹出口の開口部に回転可能に配されている。また、3つの可動フィン12は、図示しないリンク部材によって、各可動フィン12の回転が連動するように互いに連結されている。
【0021】
フィン部材10は、
図3に示したように、フィン支持部11と、3つの可動フィン12の可動フィン本体部13と、フィン支持部11に固定される固定部14と、各可動フィン本体部13をフィン支持部11に回転可能に連結する複数の円柱状の連結ピン15と、可動フィン本体部13及び固定部14に取り付けられる操作ノブ16とを有する。
【0022】
この場合、ベンチレータ1に設けられる各可動フィン12は、可動フィン本体部13と固定部14とによって形成される。本実施例の可動フィン12は、上側に配される第1可動フィン12aと、中央に配される第2可動フィン(操作可動フィン)12bと、下側に配される第3可動フィン12cとを有する。
【0023】
フィン支持部11は、
図3に示すように、板状の支持上板部11a及び支持下板部11bと、支持上板部11a及び支持下板部11b間を連結する左右一対の連結柱11cと、左右の連結柱11cから前方に延在する3組の左右一対のアーム部11dとを有する。
【0024】
支持上板部11aの上面と支持下板部11bの下面とには、フィン部材10をケース部材50に取り付けるときに、ケース部材50の後述する係合孔部55に係合させる2つの係合突起11eがそれぞれ所定の位置に設けられている。また、支持上板部11a及び支持下板部11bと左右の連結柱11cとにより囲まれる空間部は、ケース部材50の後述する流路部52に接続される。
【0025】
本実施例のフィン支持部11において、各組の左右のアーム部11dは、互いに高さ方向に一定の間隔を開けて配されている。また、左右のアーム部11d間には、可動フィン本体部13を挿入可能な間隔が幅方向に設けられている。各組の左右のアーム部11dは、フィン支持部11に可動フィン本体部13が連結されたときに、左右のアーム部11dの内側面と可動フィン本体部13の左右の外側面とが接するように(
図5を参照)、又は僅かに離間した状態で保持されるように設けられている。
【0026】
各組の左右のアーム部11dの先端部には、固定部14が固定される固定用突出部と、連結ピン15を挿入して収容可能な第1収容孔部11fとが設けられている。固定用突出部の外周面(固定用突出面)は、固定部14の後述する内周面に対応して、幅方向から見たときに円弧状を呈する曲面に形成されている。各第1収容孔部11fは、固定用突出部の円弧状の外周面の中心部に設けられているとともに、アーム部11dの先端部を幅方向に沿って貫通している。
【0027】
本実施例で用いる3つの可動フィン本体部13は、互いに同じ形状を有する。各可動フィン本体部13は、フィンベース部13aと、フィンベース部13aの前端部から前方に突出するフィン軸部13bと、フィン軸部13bの左右の側端面から幅方向に沿って形成される第2収容孔部13cとを有する。可動フィン本体部13は、第2収容孔部13cが設けられている部分を除いて、幅方向に直交する断面が一定の形状を有するように形成されている。また、可動フィン本体部13は、左右対称的な形状を有するとともに、上下対称的な形状を有する。
【0028】
フィンベース部13aは、
図6に示すように、互いに平行に配される平坦な上面及び下面と、後方に向けて凸状に湾曲する後端面とを有する。フィンベース部13aの前端部には、フィン軸部13bに向けて厚さ(上下方向の寸法)を漸減させるように傾斜する傾斜面が形成されている。
【0029】
フィン軸部13bは、可動フィン本体部13の回転軸としてフィンベース部13aに一体的に形成されており、また、左右方向に沿ってまっすぐに設けられている。フィン軸部13bの外周面は、フィン軸部13bの幅方向に直交する断面を見たときに円弧状を呈する(
図6~
図8を参照)。フィン軸部13bの円弧状の外周面は、フィン軸部13bの幅方向の全体に亘って設けられている。
【0030】
更に、フィン軸部13bは、円弧状の外周面が、回転軸を中心に180°を越える範囲に、好ましくは200°以上の範囲に設けられるように形成されている(
図6を参照)。これにより、可動フィン本体部13を、固定部14に対して容易に回転させることができる。
【0031】
例えば本実施例の場合、フィン軸部13bにおける円弧状の外周面が可動フィン本体部13の回転軸を中心に略240°の範囲に連続的に設けられている。これに対し、円弧状の固定部14は、固定部14の幅方向に直交する断面を見たときに略180°の範囲で形成されている。これにより、可動フィン本体部13を、固定部14に対して、ニュートラルの位置から、
図7に示したように下方に向けて略30°まで回転させることができ、また、
図8に示したように上方に向けて略30°まで回転させることができる。ここで、可動フィン本体部13を下方又は上方に回転させるとは、可動フィン本体部13の後端部が下側又は上側に移動するように可動フィン本体部13を回転させることを言う。
【0032】
可動フィン本体部13の第2収容孔部13cは、
図5に示すように、連結ピン15を収容して保持する円柱状の孔部であり、フィン軸部13bの左右側縁部に設けられている。左右の各第2収容孔部13cは、連結ピン15を可動フィン本体部13の回転軸に沿って収容可能なように、フィン軸部13bの左右の側端面から、幅方向の内側に向けてまっすぐに形成されている。
【0033】
アーム部11dに設けた第1収容孔部11fと、可動フィン本体部13に設け第2収容孔部13cとに亘って1つの連結ピン15が収容されることにより、可動フィン本体部13がアーム部11dに回転可能に連結される。この場合、1つの可動フィン本体部13は、左右一対の連結ピン15を用いて、1組の左右のアーム部11dに連結される。
【0034】
可動フィン12の固定部14は、可動フィン本体部13の回転軸であるフィン軸部13bに沿って配されており、幅方向に直交する断面を見たときに(
図6を参照)、固定部14の内周面及び外周面が、可動フィン本体部13の回転軸を中心とする円弧状を呈する略C字状の形状を有する。この円弧状の固定部14は、上述したように、略180°の範囲で形成されている。固定部14の円弧状の外周面は、固定部14の幅方向の全体に亘って設けられている。
【0035】
固定部14の内周面は、フィン軸部13bの外周面に対応して形成されており、回転する可動フィン本体部13のフィン軸部13bを摺接可能な形状、又はフィン軸部13bから僅かに離間した近接状態を保持可能な形状を有する。例えば本実施例の場合、固定部14の内周面と可動フィン本体部13のフィン軸部13bとは、可動フィン本体部13の回転軸に沿って接触しており、また、フィン軸部13bの幅方向の全体に亘って接触している。固定部14は、フィン支持部11と一体的に形成されていてもよく、又は、フィン支持部11とは別体に形成して、フィン支持部11のアーム部11dの先端部に接着等によって固定されていてもよい。
【0036】
操作ノブ16は、中央の第2可動フィン12bに取り付けられており、幅方向に直交する断面がU字状を呈する形状を有する。操作ノブ16は、第2可動フィン12bの回転を阻害しないように可動フィン本体部13及び/又は固定部14に取り付けられている。この場合、操作ノブ16の内周部には、
図6に示すように、可動フィン本体部13の少なくとも一部と、固定部14とが収容される。本実施例の第1可動フィン12a及び第3可動フィン12cは、第2可動フィン12bから操作ノブ16が排除された形態で形成されている。
【0037】
左右の各加飾部材30は、上下方向に延在する板状の加飾ベース部31と、加飾ベース部31の上端部から前方に延在する加飾上板部32と、加飾ベース部31の下端部から前方に延在する加飾下板部33と、加飾上板部32及び加飾下板部33間において加飾ベース部31から前方に延在する3つの加飾フィン34とを有する。また、加飾上板部32の上面と加飾下板部33の下面とには、加飾部材30をケース部材50に取り付けるときに、ケース部材50の後述する係合孔部55に係合させる2つの係合突起35がそれぞれ所定の位置に設けられている。
【0038】
3つの加飾フィン34は、前後方向に沿って、互いに平行に配されている。加飾フィン34の加飾ベース部31から前方に延在する長さは、フィン部材10の左右のアーム部11dにおける連結柱11cから前方に延在する長さと同じである。各加飾フィン34は、加飾フィン本体部34aと、加飾フィン本体部34aの前端部から前方に突出する取付部34bと、取付部34bに取り付けられる加飾ガーニッシュ34cとをそれぞれ有する。
【0039】
加飾フィン本体部34aは、可動フィン本体部13のフィンベース部13aと同じ厚さで形成されている。取付部34bは、取付部34bの幅方向に直交する断面が半円形を呈するように形成されている。この半円形の取付部34bに、加飾ガーニッシュ34cが取り付けられる。
【0040】
加飾ガーニッシュ34cは、幅方向に直交する断面を見たときに略C字状を呈する形状を有する。また、加飾ガーニッシュ34cは、幅方向に直交する断面を見たときに、加飾ガーニッシュ34cの外周面が、可動フィン12の固定部14の外周面と同じ円弧状を呈する形状を有する。なお本実施例において、加飾ガーニッシュ34cの外周面は、例えば加飾ガーニッシュ34cの少なくとも固定部14に隣接する部分が、固定部14の外周面と同じ円弧状を呈する形状、又は固定部14の外周面と相似する円弧状を呈する形状を有していてもよい。
【0041】
更に、加飾ガーニッシュ34cは、可動フィン12の固定部14と同じ材質又は類似する材質で形成されていることが好ましく、また、可動フィン12の固定部14と同じ又は類似する色や質感を備えていることが好ましい。それにより、可動フィン12の固定部14と加飾ガーニッシュ34cとは、同一の外観、又は同じように見える対応した外観を備えることができるため、完成させたベンチレータ1の見栄えを良くすること又は外観品質を高めることができる。
【0042】
本実施例のケース部材50は、
図2に示すように、平板状のケース本体部51と、ケース本体部51における幅方向の中央部に接続する筒状の流路部52と、ケース本体部51の上端部から前方に延在するケース上板部53と、ケース本体部51の下端部から前方に延在するケース下板部54とを有する。
【0043】
ケース本体部51の流路部52が接続される部分は開口している。ケース部材50の流路部52は、図示しない空調装置から供給される空気を流通させる流通空間を有しており、その流通空間は、フィン支持部11の支持上板部11a及び支持下板部11bと左右の連結柱11cとにより囲まれる空間部に連通する。ケース上板部53及びケース下板部54には、フィン部材10に設けた係合突起11eと、左右の加飾部材30に設けた係合突起35とを係合させるための係合孔部55が、各係合突起11e,35に対応する位置に設けられている。
【0044】
本実施例のベンチレータ1を組み立てる場合、先ず、フィン部材10と、左右の加飾部材30とをそれぞれ作製する。
フィン部材10を作製する場合、3つの固定部14が一体化されているフィン支持部11に、3つの可動フィン本体部13を回転可能に連結する。
【0045】
具体的には、フィン支持部11の左右一対のアーム部11d間に、対応する可動フィン本体部13を挿入し、アーム部11dの第1収容孔部11fと、可動フィン本体部13の第2収容孔部13cとが直接連通するようにアーム部11d及び可動フィン本体部13の位置を調整する。
【0046】
続いて、円柱状の連結ピン15を、フィン支持部11の幅方向の外側からアーム部11dの第1収容孔部11fに向けて挿入して押し込むことによって、
図5に示すように、第1収容孔部11f及び第2収容孔部13cの両方に亘って円柱状の連結ピン15を収容する。1つの可動フィン本体部13を、左側のアーム部11dに連結ピン15で連結し、且つ、右側のアーム部11dに連結ピン15で連結することによって、左右の連結ピン15を介して可動フィン本体部13が左右のアーム部11dに回転可能に支持される。
【0047】
上述のような連結ピン15により可動フィン本体部13と左右のアーム部11dとを連結する作業を、3つの可動フィン本体部13に対して行う。これによって、第1可動フィン12a及び第3可動フィン12cが形成される。また、中央の可動フィン本体部13及び固定部14に操作ノブ16を取り付けることによって、第2可動フィン12bが形成される。その結果、
図2に示したフィン部材10が作製される。
【0048】
また、上述のようなフィン部材10の作製とは別の工程において、左右一対の加飾部材30を作製する。左右の加飾部材30は、3つの加飾フィン34の取付部34bに加飾ガーニッシュ34cをそれぞれ固定することによって作製される。なお、加飾フィン34の取付部34bに加飾ガーニッシュ34cを固定する方法及び手段は特に限定されない。
【0049】
上述のようにフィン部材10と左右の加飾部材30とを作製した後、得られたフィン部材10及び左右の加飾部材30をケース部材50に組み付ける。この場合、フィン部材10及び左右の加飾部材30をそれぞれケース部材50のケース上板部53及びケース下板部54間に挿入し、フィン部材10及び左右の加飾部材30のそれぞれに設けた係合突起11e,35を、ケース部材50の係合孔部55にそれぞれ嵌入させ係合させることによって、フィン部材10及び左右の加飾部材30が1つのケース部材50に取り付けられる。
【0050】
上述のような工程を行うことにより、
図1に示したように左右の加飾部材30間に、第1可動フィン12a~第3可動フィン12cを備えるフィン部材10が設けられた本実施例のベンチレータ1が製造される。特に本実施例では、独立して形成されたフィン部材10と加飾部材30とをケース部材50に組み付けるという比較的簡単な作業でベンチレータ1を製造できる。
【0051】
また本実施例のベンチレータ1では、
図5に示したように、フィン部材10と左右の加飾部材30との間には間隙が設けられている。なお、本実施例のベンチレータ1は、フィン部材10と加飾部材30との間に間隙を設けずに形成されていてもよい。
そして、製造された
図1のベンチレータ1は、自動車の内装部材に装着される。
【0052】
以上のような本実施例のベンチレータ1は、可動フィン12の可動フィン本体部13を、
図6~
図8に示したように、固定部14に対し、可動フィン12のフィン軸部13b及び連結ピン15に沿った方向を回転軸にして、ニュートラルの位置から上下にそれぞれ略30°まで回転させることが可能であり、それによって、ベンチレータ1から吹き出す空気の風向を上下に調整できる。なお、可動フィン12のニュートラルの位置とは、可動フィン12が加飾フィン34と平行に保持される位置を言う。一方、固定部14は、可動フィン本体部13を上下に回転させても上下方向及び前後方向に移動することはなく、また、固定部14自体が回転することもない。
【0053】
すなわち、本実施例のベンチレータ1によれば、可動フィン本体部13及び固定部14により形成された可動フィン12を有するため、ベンチレータ1を空気吹出口側から見たときに、可動フィン12を回転させたときに可動フィン12の下流側端部(固定部14)が移動も回転もしないように見える特徴的な外観を簡単な構造で得ることができる。
【0054】
更に、
図1に示したベンチレータ1では、各可動フィン12の固定部14と、左右の加飾部材30の加飾ガーニッシュ34cとが、幅方向に沿って一直線上に配されており、一続きに繋がっているように見える。このため、3つの可動フィン12と、ベンチレータ1の意匠面を形成する左右の加飾部材30とが、統一感又は一体感を生じさせるような見栄えを得ることができる。また、可動フィン本体部13を回転させても、可動フィン12の固定部14は移動も回転もしないため、フィン部材10と加飾部材30との間の統一感又は一体感が崩れることはなく、ベンチレータ1の向上した外観品質を維持できる。
【0055】
なお、上述した実施例のベンチレータ1は、3つの可動フィン12を有するが、本発明において、ベンチレータに設ける可動フィンの個数は特に限定されず、ベンチレータの大きさやデザイン等に応じて可動フィンの設置数を変更可能である。また、実施例のベンチレータ1には、可動フィン12が幅方向に沿って配されているが、例えば可動フィンを高さ方向に沿って設置してベンチレータを形成してもよい。
【0056】
また本発明のベンチレータには、実施例で説明したような幅方向に沿って配される可動フィン12に加えて、例えば前述した特許文献1に記載されているように、可動フィン12の上流側に、高さ方向に沿って配される複数の上流側縦フィンが設けられていてもよい。或いは、実施例の可動フィン12に加えて、可動フィン12の下流側に、高さ方向に沿って配される複数の下流側縦フィンが設けられていてもよい。更に、可動フィン12に追加して設けられる上流側縦フィン又は下流側縦フィンは、左右方向に回転可能に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ベンチレータ
10 フィン部材
11 フィン支持部
11a 支持上板部
11b 支持下板部
11c 連結柱
11d アーム部
11e 係合突起
11f 第1収容孔部
12 可動フィン
12a 第1可動フィン
12b 第2可動フィン(操作可動フィン)
12c 第3可動フィン
13 可動フィン本体部
13a フィンベース部
13b フィン軸部
13c 第2収容孔部
14 固定部
15 連結ピン
16 操作ノブ
30 加飾部材
31 加飾ベース部
32 加飾上板部
33 加飾下板部
34 加飾フィン
34a 加飾フィン本体部
34b 取付部
34c 加飾ガーニッシュ
35 係合突起
50 ケース部材
51 ケース本体部
52 流路部
53 ケース上板部
54 ケース下板部
55 係合孔部