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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂製パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20240326BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240326BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/26
B29C45/56
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020097526
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187131
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸 淳史
(72)【発明者】
【氏名】大畦 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉木 敦美
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-178361(JP,A)
【文献】特開平10-202685(JP,A)
【文献】特開2015-174441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
B29C 45/26
B29C 45/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ本体(2)の一端部と他端部の少なくとも一方に、溝(4a、5a)と孔(4b、5b)の少なくとも一方が形成された第1フランジ部(4、5)を有する樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分に溶融樹脂を流入させるとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、
前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分から前記パイプ本体(2)の長手方向に離れた部分に溶融樹脂を流入させ、前記パイプ本体(2)の長手方向に流動させる第2工程と、
前記第1工程でガスを圧送することにより流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型(11)の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部へ向けて流しながら前記両溶融樹脂を中空状に成形するとともに、前記第1フランジ部(4、5)を前記パイプ本体(2)に一体成形して溶融樹脂を固化させた後、前記第1フランジ部(4、5)に対応するように配置されたスライド型(31、32)を移動させることによって前記溝(4a、5a)と前記孔(4b、5b)の少なくとも一方を形成する第3工程とを備えていることを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記第3工程では、前記ガスを前記成形型(11)の内部において樹脂製パイプ(1)が有する分岐管部(3)に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記第3工程では、前記成形型(11)の内部で前記分岐管部(3)の先端部に第2フランジ部(6)を一体成形して溶融樹脂を固化させた後、前記第2フランジ部(6)に対応するように配置されたスライド型(33)を移動させることによって前記第2フランジ部(6)に溝(6a)と孔(6b)の少なくとも一方を形成することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記成形型(11)の内部における前記分岐管部(3)の基端部に対応する部分から溶融樹脂を射出することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記成形型(11)の内部において、前記分岐管部(3)の基端部と前記パイプ本体(2)とに連なるリブ(7)に対応する部分から溶融樹脂を射出することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記第3工程では、前記パイプ本体(2)の他端部から突出するように不要樹脂部を一体成形し、前記成形型(11)の内部でトリミング型(32c)を移動させて前記不要樹脂部を切断することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記第3工程では、前記パイプ本体(2)の他端部の内径よりも小径な筒状の前記不要樹脂部(101)を、前記パイプ本体(2)の他端部から突出するように一体成形しておき、前記不要樹脂部(101)の外周面に沿う筒状に形成された前記トリミング型(32c)を前記不要樹脂部(101)の基端部に押し当てて切断することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記パイプ本体(2)の他端部に前記第1フランジ部(5)を一体成形し、当該他端部の前記第1フランジ部(5)に対応するように配置されたスライド型(32)に内蔵された前記トリミング型(32c)を前記不要樹脂部(101)の基端部に押し当てて切断することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記第1工程での溶融樹脂の射出開始と同時、または前記第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第2工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする樹脂製パイプ(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の樹脂材を用いてパイプを製造する樹脂製パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製パイプは例えば自動車の各種配管部材として広く使用されており、直管形状のものや複雑に湾曲した形状のものなどがある。この種の樹脂製パイプの製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、溶融状態の樹脂材を、一端にフローティングコアを備えた成形型の内部に射出した後、ガスを圧送してフローティングコアを排出側に移動させて樹脂を中空状に成形するとともに、成形型の成形面に押し付けて固化させる方法がある。特許文献1では、樹脂製パイプが分岐管部を備えている。この分岐管部は機械加工によって形成され、樹脂製パイプの内部に連通している。
【0003】
また、特許文献2には、溶融状態の樹脂材を成形型の内部に射出した後、成形型のキャビティ内に配置されたスライド型があって、該スライド型にはコア部が設けられておりスライド型がコア部と共にキャビティの軸方向に沿ってコア部がスライドすることにより樹脂を中空状に成形するとともに、成形型の成形面に押し付けて固化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6068756号公報
【文献】特開2002-178361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した樹脂製パイプは別の配管部材に接続されて使用されるのが一般的である。樹脂製パイプを別の配管部材に接続する際、樹脂製パイプの端部にフランジ部を設けておき、このフランジ部を配管部材のフランジ部等に固定することによって樹脂製パイプと配管部材とを接続する構造が考えられる。
【0006】
特許文献1、2のように溶融樹脂にガスを圧送して樹脂製パイプを得る場合、部品点数の削減の観点からフランジ部を樹脂製パイプに一体成形したいという要求がある。フランジ部を樹脂製パイプに一体成形することで、部品点数及び組付時の工数を削減できるだけでなく、フランジ部とパイプ本体との間に継ぎ目ができないので、気密性及び液密性を確保することができ、一体成形のメリットは大きい。
【0007】
ところが、特許文献1、2では製造時にガスを溶融樹脂に圧送するための構造及びガスによって流動した樹脂を製品の外部で受ける構造が必要になるとともに、製造時の工程として、溶融樹脂を射出する工程及びガスを圧送する工程が必要になり、全体として複雑化する。
【0008】
その一方で、フランジ部はパイプ本体の管軸に対して交差する方向に突出する部分であるとともに、そのフランジ部には、シール材を嵌め込むための溝や、相手側の部材に締結するためのブッシュやボルト等が挿通する孔が形成されており、形状が複雑である。このフランジ部をどのようにしてパイプ本体に一体成形するかが問題となる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶融樹脂にガスを圧送して樹脂製パイプを成形する場合に、溝や孔を有するフランジ部をパイプ本体に一体成形できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明は、パイプ本体(2)の一端部と他端部の少なくとも一方に、溝(4a、5a)と孔(4b、5b)の少なくとも一方が形成された第1フランジ部(4、5)を有する樹脂製パイプ(1)の製造方法において、前記パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分に溶融樹脂を流入させるとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分から前記パイプ本体(2)の長手方向に離れた部分に溶融樹脂を流入させ、前記パイプ本体(2)の長手方向に流動させる第2工程と、前記第1工程でガスを圧送することにより流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型(11)の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部へ向けて流しながら前記両溶融樹脂を中空状に成形するとともに、前記第1フランジ部(4、5)を前記パイプ本体(2)に一体成形して溶融樹脂を固化させた後、前記第1フランジ部(4、5)に対応するように配置されたスライド型(31、32)を移動させることによって前記溝(4a、5a)と前記孔(4b、5b)の少なくとも一方を形成する第3工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。また、ガスが圧送されるので、ガスも成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。一方、第2工程で成形型の内部における分岐管部の先端部に対応する部分に射出された溶融樹脂は、成形型の内部におけるパイプ本体に対応する部分へ向けて流動する。第1工程及び第2工程の前にスライド型を進出させておくことができる。
【0012】
その後、第3工程では、第1工程で射出された溶融樹脂と第2工程で射出された溶融樹脂とが合流し、第1工程で圧送されたガスが成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流れ、これによりパイプ本体が成形される。また、成形型の内部では、パイプ本体と共に第1フランジ部が一体成形される。第1フランジ部の成形後、スライド型を移動(後退)させると、第1フランジ部に溝と孔の少なくとも一方が形成される。これにより、第1フランジ部に対して、シール材を嵌め込むための溝や、相手側の部材に締結するためのボルト等が挿通する孔を機械加工によることなく、同一成形型内でパイプ本体及び第1フランジ部と共に形成することができる。
【0013】
第1フランジ部は、パイプ本体の一端部と他端部の一方のみに設けられていてもよい。また、第1フランジ部は、パイプ本体の一端部と他端部の両方に設けられていてもよい。両方に設けられている場合、成形型内で第1フランジ部を2つ成形することになるので、スライド型を2つ設ければよい。また、第1フランジ部には、溝のみ形成してもよいし、孔のみ形成してもよいし、溝と孔の両方を形成してもよい。
【0014】
第2の発明は、前記第3工程で、前記ガスを前記成形型(11)の内部において樹脂製パイプ(1)が有する分岐管部(3)に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、樹脂製パイプがパイプ本体から分岐する分岐管部を備えている場合に、その分岐管部もパイプ本体に一体成形することができる。分岐管部は1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0016】
第3の発明は、前記第3工程で、前記成形型(11)の内部で前記分岐管部(3)の先端部に第2フランジ部(6)を一体成形して溶融樹脂を固化させた後、前記第2フランジ部(6)に対応するように配置されたスライド型(33)を移動させることによって前記第2フランジ部(6)に溝(6a)と孔(6b)の少なくとも一方を形成することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、分岐管部の先端部に第2フランジ部を一体成形することができる。第2フランジ部の成形後、スライド型を移動させると、第2フランジ部に溝と孔の少なくとも一方が形成される。これにより、機械加工によることなく、第2フランジ部に溝や孔を形成することができる。第2フランジ部には、溝のみ形成してもよいし、孔のみ形成してもよいし、溝と孔の両方を形成してもよい。
【0018】
第4の発明は、前記成形型(11)の内部における前記分岐管部(3)の基端部に対応する部分から溶融樹脂を射出することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、分岐管部を形成する樹脂を当該分岐管部の基端部近傍に供給することができるので、成形不良を招くことなく、長い分岐管部を成形できる。
【0020】
第5の発明は、前記成形型(11)の内部において、前記分岐管部(3)の基端部と前記パイプ本体(2)とに連なるリブ(7)に対応する部分から溶融樹脂を射出することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、分岐管部の基端部とパイプ本体とをリブによって繋ぐことができるので、強度を高めることができる。この場合に、リブに対応する部分から溶融樹脂を射出するので、リブの成形不良を抑制できる。また、第1工程で圧送されたガスがリブの内部を通ってランナの方向に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0022】
第6の発明は、前記第3工程で、前記パイプ本体(2)の他端部から突出するように不要樹脂部を一体成形し、前記成形型(11)の内部でトリミング型(32c)を移動させて前記不要樹脂部を切断することを特徴とする。
【0023】
すなわち、ガスをパイプ本体の一端部から他端部へ向けて圧送することで溶融樹脂を成形しているので、パイプ本体の他端部には不要樹脂部が一体成形されることになる。この不要樹脂部を成形型の内部でトリミングできるので、脱型後の加工工数を削減することができる。
【0024】
第7の発明は、前記第3工程で、前記パイプ本体(2)の他端部の内径よりも小径な筒状の前記不要樹脂部(101)を、前記パイプ本体(2)の他端部から突出するように一体成形しておき、前記不要樹脂部(101)の外周面に沿う筒状に形成された前記トリミング型(32c)を前記不要樹脂部(101)の基端部に押し当てて切断することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、不要樹脂部をその基端部でトリミングすることができるので、パイプ本体に残る不要樹脂部を最小限にすることができる。
【0026】
第8の発明は、前記パイプ本体(2)の他端部に前記第1フランジ部(5)を一体成形し、当該他端部の前記第1フランジ部(5)に対応するように配置されたスライド型(32)に内蔵された前記トリミング型(32c)を前記不要樹脂部(101)の基端部に押し当てて切断することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、トリミング型をスライド型に内蔵することで、コンパクトな成形型にすることができる。
【0028】
第9の発明は、前記第1工程での溶融樹脂の射出開始と同時、または前記第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第2工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂を、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて十分に流動させてから、第2工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、溶融樹脂にガスを圧送して樹脂製パイプを成形する工程においてフランジ部をパイプ本体に一体成形し、成形型内でスライド型を用いてフランジ部に溝や孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造された樹脂製パイプの側面図である。
図2】上記樹脂製パイプの断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る製造方法で使用される成形型の断面図である。
図4】成形型の内部に溶融樹脂を供給した状態を示す図3相当図である。
図5】ガスの圧送によって溶融樹脂を合流させた状態を示す図3相当図である。
図6】成形後の溶融樹脂が固化した状態を示す図3相当図である。
図7】溶融樹脂の成形後に各スライド型を後退させた状態を示す図3相当図である。
図8】本発明の実施形態2に係るスライド型近傍の断面図である。
図9】溶融樹脂が固化した状態を示す図8相当図である。
図10】不要樹脂部を切断した状態を示す図3相当図である。
図11】フランジ部の端面に環状溝を形成した場合の図9相当図である。
図12】フランジ部の溶融樹脂を最後に射出した場合の図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
<実施形態1>
(樹脂製パイプ1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法により製造された樹脂製パイプ1を示すものである。樹脂製パイプ1は、パイプ本体2と、該パイプ本体2から分岐する分岐管部3とが一体成形されたものであり、例えば自動車の吸気系やブローバイガス導入系の配管部材や温水、冷却水等の配管部材等として用いることが可能である。樹脂製パイプ1は自動車の配管部材以外にも、住宅や工場設備の配管部材として用いることも可能である。樹脂製パイプ1を流れる流体の流通方向は特に限定されるものではなく、流体が図1の上から下へ向けて流れてもよいし、下から上へ向けて流れてもよい。また、流体が分岐管部3から流入してもよいし、分岐管部3から流出してもよい。樹脂製パイプ1を構成する樹脂材は、特に限定されるものではなく、補強用ガラス繊維が混入した樹脂材であってもよい。
【0034】
パイプ本体2の一端部(図1及び図2の上側に位置する端部)には、当該一端部に対して別の配管部材が接続される際に使用される一端側フランジ部(第1フランジ部)4が一体成形されている。一端側フランジ部4は、パイプ本体2の一端部の軸線に対して交差する方向に延びる板状をなしており、後述するようにパイプ本体2の成形時に同時に成形された部分である。したがって、一端側フランジ部4を設けるにあたって樹脂製パイプ1の部品点数が増加することはなく、例えば自動車への組付工数を削減できるのに加えて、一端側フランジ部4とパイプ本体2の一端部との間に継ぎ目が無い構造になるので、高い気密性及び液密性を確保できる。一端側フランジ部4の延びる方向と、パイプ本体2の一端部の軸線とは略直交した関係となっているが、略直交していなくてもよい。
【0035】
一端側フランジ部4における他の配管部材との接続面には、パイプ本体2の一端部が開口している。一端側フランジ部4の接続面には、パイプ本体2の一端部の開口を囲む円環状の溝4aが形成されている。この溝4aには、Oリング等の弾性材からなるシール材(図示せず)が嵌め込まれる。溝4aに嵌め込まれたシール材は他の配管部材のフランジ部(図示せず)に当接してシール性が得られるようになっている。
【0036】
一端側フランジ部4には、当該一端側フランジ部4を他の配管部材のフランジ部に締結するための締結部材(図示せず)が挿通する挿通孔4b、4bが互いに間隔をあけて形成されている。挿通孔4b、4bは、一端側フランジ部4の溝4aよりも外側部分に位置しており、一端側フランジ部4をその厚み方向に貫通している。該挿通孔4b、4bには、ブッシュが挿入されている。上記締結部材は、例えばボルトやネジ等であり、締結部材を挿通孔4b、4bのブッシュに挿通させて他の配管部材のフランジ部のナット等(図示せず)に螺合させることで、一端側フランジ部4を他の配管部材のフランジ部に締結固定することができる。尚、一端側フランジ部4は、他の配管部材以外の部材(各種容器やポンプ等)に対して接続することもでき、この場合、溝4aに嵌め込まれたシール材は他の配管部材以外の部材に当接し、また一端側フランジ部4は他の配管部材以外の部材に締結されることになる。
【0037】
一端側フランジ部4には、溝4aと挿通孔4b、4bの両方が形成されていてもよいし、溝4aのみ、または挿通孔4b、4bのみが形成されていてもよい。溝4aのみが形成されている場合、一端側フランジ部4はクリップ(図示せず)等により、他の配管部材に固定できる。また、挿通孔4b、4bの数は特に限定されるものではなく、1以上の任意の数にすることができる。挿通孔4b、4bの数に応じて一端側フランジ部4の形状を変えることができる。
【0038】
パイプ本体2の他端部(図1及び図2の下側に位置する端部)には、当該他端部に対して別の配管部材が接続される際に使用される他端側フランジ部(第1フランジ部)5が一体成形されている。他端側フランジ部5は、パイプ本体2の他端部の軸線に対して交差する方向に延びる板状をなしており、後述するようにパイプ本体2の成形時に同時に成形された部分である。
【0039】
他端側フランジ部5は、一端側フランジ部4と同様に構成することができる。図2に示すように、他端側フランジ部5における他の配管部材との接続面には、パイプ本体2の他端部が開口するとともに、その周りに円環状の溝5aが形成されている。さらに、他端側フランジ部5には、当該他端側フランジ部5を他の配管部材のフランジ部に締結するための締結部材が挿通する挿通孔5b、5bが互いに間隔をあけて形成されている。
【0040】
他端側フランジ部5には、溝5aと挿通孔5b、5bの両方が形成されていてもよいし、溝5aのみ、または挿通孔5b、5bのみが形成されていてもよい。また、挿通孔5b、5bの数は特に限定されるものではなく、1以上の任意の数にすることができる。
【0041】
図1に示すように、分岐管部3は、パイプ本体2における長さ方向中央部よりも他端部寄りに位置しており、パイプ本体2から径方向に突出している。図2に示すように、分岐管部3の内部とパイプ本体2の内部とは互いに連通している。この実施形態では、分岐管部3とパイプ本体2とのなす角度が略直角であるが、これに限られるものではなく、90°未満であってもよいし、90°を超えていてもよい。分岐管部3の外径は、パイプ本体2の外径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、分岐管部3の長さは、パイプ本体2の長さよりも大幅に短く設定されているが、逆に長くてもよい。分岐管部3の位置は、図示した位置に限られるものではなく、自由に設定することができる。分岐管部3は、直管形状であってもよいし、湾曲した形状であってもよい。
【0042】
分岐管部3の基端部がパイプ本体2に接続された部分である。分岐管部3はパイプ本体2と一体成形されているので、分岐管部3を設けるにあたって部品点数が増加することはないとともに、分岐管部3とパイプ本体2との接続部分の気密性及び液密性を確保できる。
【0043】
分岐管部3の先端部には、当該先端部に対して別の配管部材が接続される際に使用される分岐管フランジ部(第2フランジ部)6が一体成形されている。分岐管フランジ部6は、分岐管部3の先端部の軸線に対して交差する方向に延びる板状をなしており、後述するようにパイプ本体2の成形時に同時に成形された部分である。
【0044】
分岐管フランジ部6は、一端側フランジ部4と同様に構成されており、分岐管フランジ部6における他の配管部材との接続面には、分岐館部3の先端部が開口するとともに、溝6aが形成されている。さらに、分岐管フランジ部6には、当該分岐管フランジ部6を他の配管部材のフランジ部に締結するための締結部材が挿通する挿通孔6b、6bが互いに間隔をあけて形成されている。
【0045】
分岐管フランジ部6には、溝6aと挿通孔6b、6bの両方が形成されていてもよいし、溝6aのみ、または挿通孔6b、6bのみが形成されていてもよい。また、挿通孔6b、6bの数は特に限定されるものではなく、1以上の任意の数にすることができる。
【0046】
この実施形態では、一端側フランジ部4、他端側フランジ部5及び分岐管フランジ部6を設けているが、これに限らず、一端側フランジ部4、他端側フランジ部5及び分岐管フランジ部6のうち、任意の1つまたは2つのみ設けてもよい。フランジ部が無い端部については、例えば他の配管部材に差し込んで接続することや、他の配管部材を差し込んで接続することが可能である。
【0047】
パイプ本体2の一端部と他端部との間には、第1湾曲部2c、第2湾曲部2d及び直管部2eが設けられている。第1湾曲部2cはパイプ本体2における一端部寄りの部分に設けられている。第2湾曲部2dはパイプ本体2における他端部寄りの部分に設けられている。直管部2eは、第1湾曲部2cと第2湾曲部2dとの間に設けられている。一端側接続管部2aと他端側接続管部2bとのいずれか一方または両方を省略してもよい。また、直管部2eを省略してもよい。パイプ本体2の形状や径や任意に設定することができる。
【0048】
すなわち、パイプ本体2の形状は上述した形状に限られるものではなく、直管状のものであってもよいし、多数の湾曲部や直管部からなるものであってもよい。直管部の長さは湾曲部の曲率半径等も自由に設定することができる。また、パイプ本体2の長さや外径、内径も自由に設定することができる。また、パイプ本体2の断面形状は、例えば円形や楕円形等にすることができ、自由な形状にすることができる。
【0049】
分岐管部3におけるパイプ本体2との接続部分は、当該パイプ本体2に近づくほど拡径するように形成されている。すなわち、分岐管部3の接続部分の内径は、パイプ本体2に近づくほど大きくなっており、これにより、分岐管部3の接続部分の内周面は湾曲した面で構成されることになる。分岐管部3の接続部分の内周面の形状は、後述するガスの流入時に形成されるものである。
【0050】
樹脂製パイプ1は、複数のリブ7を備えている。リブ7は、分岐管部3の基端部とパイプ本体2とに連なっており、リブ7によって分岐管部3の基端部が補強されている。複数のリブ7は、放射状に設けることができる。リブ7は1つであってもよいし、2つであってもよい。また、リブ7を設けることで、後述する成形時に溶融樹脂の流れを良好にすることができる。さらに、図示しないが、分岐管部3の周方向に延びるリブを設けて上記リブ7同士を連結してもよい。
【0051】
(成形装置10の構成)
次に、図3に基づいて実施形態に係る樹脂製パイプ1の製造方法で用いられる成形装置10について説明する。成形装置10は、溶融状態の樹脂を所定圧力で射出する射出機(図示せず)と、成形型11と、成形時のガスを所定圧力で供給するガス供給機(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えている。射出機は、樹脂を混練して加熱し、溶融状態とするとともに一定量を所定速度で射出する射出シリンダを備えている。ガス供給機は、溶融状態の樹脂内を流動可能な高圧ガス(例えば空気等)を圧送するための装置である。射出機及びガス供給機は、制御装置に接続されている。射出機は制御装置によって制御され、溶融樹脂の射出開始、射出終了、射出時の流量等がコントロールされる。また、ガス供給機も制御装置によって制御され、ガスの圧送開始、終了、圧送時の流量等がコントロールされる。
【0052】
成形型11は、例えば固定型及び可動型と、可動型を固定型に対して接離する方向に駆動する型駆動装置等を有している。型駆動装置は上記制御装置に接続されており、所定のタイミングで動作して成形型11を開閉する。型駆動装置によって可動型を駆動することにより、成形型11を型締め状態と、型開き状態とに切り替えることができる。固定型と可動型との合わせ部からガスや溶融樹脂が漏出しないようにするため、型締め時に固定型と可動型との間に隙間が殆どできない。
【0053】
成形型11の内部には、樹脂製パイプ1の外面を成形するための成形面12と、成形機のノズルからスプールを通じて溶融樹脂が射出される第1~第4スプール13~16と、第1~第5ランナ21~25と、溶融樹脂を成形面12に射出する第1~第5ゲート21G、22G、23G、24G、25Gとが設けられている。例えば、金型内でランナとゲートの部分を、ホットランナとバルブゲートを用いることによって射出量の制御やランナ廃棄量低減ができる。樹脂製パイプ1を成形するための空間Rが成形面12によって成形型11の内部に区画形成されている。空間Rは、パイプ本体2、一端側フランジ部4及び他端側フランジ部5を形成する第1空間R1と、分岐管部3、分岐管フランジ部6及びリブ7を形成する第2空間R2とで構成されており、第1空間R1と第2空間R2とは互いに連通している。
【0054】
さらに、成形型11には、第1スライド型31、第2スライド型32及び第3スライド型33が設けられるとともに、第1スライド型31を駆動する第1駆動装置34、第2スライド型32を駆動する第2駆動装置35及び第3スライド型33を駆動する第3駆動装置36も設けられている。第1~第3駆動装置34~36は、例えば油圧シリンダ等で構成することができる。
【0055】
第1スライド型31は、一端側フランジ部4の接続面、溝4a及び挿通孔4b、4bを成形する第1成形面31aを有している。第1駆動装置34は、上記制御装置に接続されており、制御装置によって制御され、第1スライド型31を予め定められたタイミングで図3に示す進出状態から図7に示す後退状態、後退状態から進出状態に切り替える。第1スライド型31の進退方向は、一端側フランジ部4の厚み方向、即ち溝4aの深さ方向及び挿通孔4bの深さ方向と一致している。
【0056】
第1スライド型31の内部には、第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分に連通する第1キャビティ31bが形成される。第1キャビティ31bは、パイプ本体2の一端部の管軸方向に延びている。さらに、第1スライド型31の内部には、第1キャビティ31bに連通するガス通路31cが形成されている。一方、成形型11には、ガス供給管11aが設けられている。第1スライド型31が進出状態にあるときに、ガス供給管11aの下流端がガス通路31cの上流端と接続される。ガス供給管11aの上流端には、上記ガス供給機が接続されている。
【0057】
第2スライド型32は、他端側フランジ部5の接続面、溝5a及び挿通孔5b、5bを成形する第2成形面32aを有している。第2スライド型32は例えばブロック材で構成されており、このブロック材の外面と成形型11との間には空気が流通可能な微小な隙間が形成されている。第2駆動装置35は、上記制御装置に接続されており、制御装置によって制御され、第2スライド型32を予め定められたタイミングで図3に示す進出状態から図7に示す後退状態、後退状態から進出状態に切り替える。第2スライド型32の進退方向は、他端側フランジ部5の厚み方向、即ち溝5aの深さ方向及び挿通孔5bの深さ方向と一致している。第2スライド型32の内部には、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分に連通する第2キャビティ32bが形成される。第2キャビティ32bは、パイプ本体2の他端部の管軸方向に延びており、ガスの圧力によって空間Rを流動してきた溶融樹脂を受けて捨てるための捨てキャビティである。
【0058】
第3スライド型33は、分岐管フランジ部6の接続面、溝6a及び挿通孔6b、6bを成形する第3成形面33aを有している。第3スライド型33は例えばブロック材で構成されており、ブロック材の外面と成形型11との間には空気が流通可能な微小な隙間が形成されている。第3駆動装置36は、上記制御装置に接続されており、制御装置によって制御され、第3スライド型33を予め定められたタイミングで図3に示す進出状態から図7に示す後退状態、後退状態から進出状態に切り替える。第3スライド型33の進退方向は、分岐管フランジ部6の厚み方向、即ち溝6aの深さ方向及び挿通孔6bの深さ方向と一致している。第3スライド型33の内部には、第2空間R2における分岐管部3の先端部に対応する部分に連通する第3キャビティ33bが形成される。第3キャビティ33bは、分岐管部3の先端部の管軸方向に延びており、ガスの圧力によって空間Rを流動してきた溶融樹脂を受けて捨てるための捨てキャビティである。
【0059】
第1~第4スプール13~16には、射出機の射出シリンダが接続されており、射出シリンダから射出された溶融樹脂は第1~第4スプール13~16に流入する。第1ランナ21は、第1スプール13から第1空間R1における一端側フランジ部4に対応する部分まで延びる樹脂通路である。第2ランナ22は、第1スプール13から第2空間R2におけるリブ7に対応する部分(分岐管部3の基端部に対応する部分)まで延びる樹脂通路である。リブ7に対応する部分に溶融樹脂を直接供給することで、リブ7の成形不良が起きにくくなる。第3ランナ23は、第2スプール14から第1空間R1における一端側フランジ部4に対応する部分まで延びる樹脂通路である。第4ランナ24は、第3スプール15から第1空間R1における他端側フランジ部5に対応する部分まで延びる樹脂通路である。第5ランナ25は、第4スプール16から第2空間R1における分岐管フランジ部6に対応する部分まで延びる樹脂通路である。
【0060】
第1~第4スプール13~16及び第1~第5ランナ21~25は一例であり、スプールの数及びランナの数は任意に設定することができる。例えば、第1空間R1における一端側フランジ部4に対応する部分、第1空間R1における他端側フランジ部5に対応する部分、第2空間R2における分岐管フランジ部6に対応する部分には、ランナによる樹脂の供給を行わなくてもよく、この場合、第3~第5ランナ23~25のうち、任意のランナを省略できる。また、第1ランナ21及び第2ランナ22は、第1空間R1におけるパイプ本体2に対応する部分に接続してもよい。
【0061】
第1~第5ランナ21~25には、開閉弁や絞り部材を設けることができる。これにより、溶融樹脂を供給するタイミングをコントロールすることができ、例えば、第1ランナ21に溶融樹脂を供給するタイミングと、第2ランナ22に溶融樹脂を供給するタイミングとを同じにしたり、第1ランナ21に溶融樹脂を供給するタイミングを、第2ランナ22に溶融樹脂を供給するタイミングよりも遅くすることや、その反対にすることもできる。
【0062】
(樹脂製パイプ1の製造方法)
次に、実施形態1の成形装置10を用いて樹脂製パイプ1を製造する製造方法について説明する。まず、成形型11を型閉じ状態にするとともに、第1スライド型31を第1駆動装置34によって進出状態にし、第2スライド型32を第2駆動装置35によって進出状態にし、第3スライド型33を第3駆動装置36によって進出状態にする。成形型11を型閉じするタイミングと、第1~第3スライド型31~33を進出状態にするタイミングとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
その後、射出機の射出シリンダから溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹脂は第1~第4スプール13~16に流入した後、第1~第5ランナ21~25を流通して第1~第5ゲート21G~25Gから成形面12内に射出される。第1~第4スプール13~16の全てに同時に射出してもよいし、異なるタイミングで射出してもよい。
【0064】
第1ランナ21を流通した溶融樹脂は、第1ゲート21Gを流通して第1空間R1における一端側フランジ部4に対応する部分に流入し、また、第3ランナ23を流通した溶融樹脂は第3ゲート23Gを流通して第1空間R1における一端側フランジ部4に対応する部分に流入するが、第1ランナ21及び第3ランナ23は、互いに異なる部分に連通しているので、第1空間R1の異なる部分からそれぞれ溶融樹脂が流入する。一端側フランジ部4はパイプ本体2の一端側に設けられる部分なので、第1ランナ21及び第3ランナ23からの溶融樹脂は、パイプ本体2の一端部に対応する部分から第1空間R1に射出されることになる。図示しないが、ランナ及びゲートの接続位置を変更することにより、溶融樹脂を第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分に直接射出してもよい。
【0065】
溶融樹脂の射出を停止した後、上記ガス供給機からガス供給管11aにガスを供給する。ガス供給管11aを流通したガスは、第1スライド型31のガス通路31cに流通した後、第1キャビティ31bに流入する。第1キャビティ31bに流入したガスは、第1空間R1における一端側フランジ部4に対応する部分からパイプ本体2の一端部に対応する部分へ圧送される。ガスの圧力により、溶融樹脂が第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流動していく。以上が第1工程である。
【0066】
また、第2ランナ22を流通した溶融樹脂は、第2ゲート22Gから第2空間R2におけるリブ7に対応する部分に流入した後、パイプ本体2の一端側及び他端側へ向けて流動する。第2空間R2におけるリブ7に対応する部分は、パイプ本体2の一端部に対応する部分からパイプ本体2の長手方向に離れた部分であり、このリブ7に対応する部分に溶融樹脂を流入させることで、パイプ本体2の長手方向に流動させることができる。この工程が第2工程である。尚、第2工程では、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分に溶融樹脂を供給し、パイプ本体2の長手方向に流動させてもよい。
【0067】
また、第4ランナ24を流通した溶融樹脂は、第4ゲート24Gを流通して第1空間R1における他端側フランジ部5に対応する部分に流入する。さらに、第5ランナ25を流通した溶融樹脂は、第5ゲート25Gを流通して第2空間R2における分岐管フランジ部6に対応する部分に流入する。これにより、各フランジ部5、6を成形する樹脂材の量を十分に確保でき、各フランジ部5、6の成形不良が起こりにくくなる。溶融樹脂を流入させるタイミングは、上記ガスの圧送を開始する前であってもよいし、後であってもよい。好ましくは、ガスの圧送を開始した後である。また、溶融樹脂の流入を完了させるタイミングも上記ガスの圧送を開始する前であってもよいし、後であってもよい。好ましくは、ガスの圧送を開始した後である。
【0068】
図5に示すように、第1工程でガスを圧送することにより流動させた溶融樹脂は、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端側へ向けて流れていき、第2工程で流動した溶融樹脂と合流する。ガスは更に第1空間R1におけるパイプ本体2の他端側へ向けて流れていくとともに、第2空間R2における分岐管部3の先端側へ向けて流れていく。これは、ガスの圧送によって高まった第1空間R1及び第2空間R2の内圧を、第2スライド型32及び第3スライド型33の外面と成形型11との間に形成されている隙間から逃がすことができるからである。
【0069】
尚、この隙間から樹脂が流出しないように隙間の形状及び大きさが設定されている。また、第1空間R1及び第2空間R2の内圧を逃がすためのバルブ(図示せず)を第2スライド型32及び第3スライド型33に設けてもよい。隙間及びバルブの両方を設けることもできる。いずれの場合も、供給したガスが樹脂部分を破って外部に漏れないようにしておく。これにより、パイプ本体2を他端部まで成形できるとともに、分岐管部3も先端部まで一体成形できる。
【0070】
図6に示すように、ガスが第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部へ向けて流れる。第1空間R1に充填された溶融樹脂のうち、成形面12に接触している部分は固化が始まっているので、ガスは径方向中心部近傍に中空部を形成しながら、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流れる。このようなガスの流れによって溶融樹脂が第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて中空部が形成されながら流動する。これによりパイプ本体2が得られる。パイプ本体2の内部に注入されたガスは樹脂の中空部から外側へ漏れることはない。よって、ガスが第2空間R2における分岐管部3の先端部へ向けても流れていく。これにより、第2空間R2内の溶融樹脂も中空状に成形され、分岐管部3が得られる。パイプ本体2に継ぎ目がなく、また、分岐管部3とパイプ本体2との間にも継ぎ目が無い、一体成形の樹脂製パイプ1が成形される。
【0071】
また、ガスの流れ方向上流端に位置する一端側フランジ部4がパイプ本体2の一端部と一体成形される。また、ガスの流れ方向下流端に位置する他端側フランジ部5がパイプ本体2の他端部と一体成形され、さらに、分岐管フランジ部6が分岐管部3の先端部と一体成形される。
【0072】
図7に示すように、溶融樹脂が固化した後、一端側フランジ部4に対応するように配置されている第1スライド型31を後退させることによって溝4aと挿通孔4bを形成することができる。また、他端側フランジ部5に対応するように配置されている第2スライド型32を後退させることによって溝5aと挿通孔5bを形成することができ、さらに、分岐管フランジ部6に対応するように配置されている第3スライド型33を後退させることによって溝6aと挿通孔6bを形成することができる。以上が第3工程である。
【0073】
成形時には、溶融樹脂が第1スライド型31の第1キャビティ31bにも流入した状態で固化するので、図7に示すように、第1スライド型31を後退させると、一端側不要樹脂部100が一端側フランジ部4に一体成形されることになる。一端側不要樹脂部100は、第1キャビティ31bの内面によって成形された筒状をなしている。一端側不要樹脂部100の先端部はガスの通路であったため、開放されている。
【0074】
また、溶融樹脂が第2スライド型32の第2キャビティ32bにも流入した状態で固化するので、第2スライド型32を後退させると、他端側不要樹脂部101が他端側フランジ部5に一体成形されることになる。他端側不要樹脂部101は、第2キャビティ32bの内面によって成形された筒状をなしており、先端部が樹脂材によって閉塞されている。
【0075】
さらに、溶融樹脂が第3スライド型33の第3キャビティ33bにも流入した状態で固化するので、第3スライド型33を後退させると、分岐管不要樹脂部102が分岐管フランジ部6に一体成形されることになる。分岐管不要樹脂部102は、第3キャビティ33bの内面によって成形された筒状をなしており、先端部が樹脂材によって閉塞されている。
【0076】
脱型後に、一端側不要樹脂部100、他端側不要樹脂部101及び分岐管不要樹脂部102を、それぞれ、一端側フランジ部4、他端側フランジ部5及び分岐管フランジ部6から切除することで、樹脂製パイプ1を得ることができる。
【0077】
上記第2工程は、上記第1工程の溶融樹脂射出と同じタイミングで行ってもよいし、第1工程の溶融樹脂射出が完了した後に行ってもよい。また、第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、第2工程で溶融樹脂の射出を開始することもできる。これにより、第1工程で成形型11の内部に射出された溶融樹脂を、パイプ本体2の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて十分に流動させてから、第2工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0078】
第1工程で射出する溶融樹脂の量は、第1空間R1におけるパイプ本体2の直管部2eに対応する部分に達する量とすることができ、この量の溶融樹脂を射出した後、射出を停止する。尚、第1工程で射出する溶融樹脂の量は、パイプ本体2の形状や長さに応じて任意に設定することができる。第2工程で射出する溶融樹脂の量も同様である。また、ガスの供給は、全ての溶融樹脂の射出を停止した後に行うことができる。
【0079】
あるいは、第1工程で溶融樹脂を射出した後、ガスをパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて圧送することで、第1工程で射出された溶融樹脂をパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流動させることができる。その後、分岐管部3の基端部に対応する部分から溶融樹脂を射出してもよい。この方法によっても溶融樹脂を合流させることができる。
【0080】
第1工程で流動させた溶融樹脂と、第2工程で流動させた溶融樹脂とは、成形型11の内部、即ち第1空間R1におけるパイプ本体2の中間部に対応する部分で合流する。このとき、ガスがパイプ本体2の他端側へ向かう方向へ流通していくので、このガスの流れにより、上流側から下流側まで連続した中空部分が形成される。余った樹脂は、上記他端側不要樹脂部101になる。
【0081】
また、第2空間R2近傍まで流通したガスは、その圧力により、成形型11の内部における分岐管部3に対応する部分、即ち第2空間R2に流入することにより中空部が形成される。これは、第3キャビティ33bの内圧がスライド型の隙間から逃げることにより、パイプ本体2の内部ガスが中空パイプを形成しながら、第2空間R2に流入する。その後、溶融樹脂を固化させることにより、分岐管部3が機械加工を施すことなく、パイプ本体2に一体成形される。
【0082】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、第1工程で成形型11の内部に射出された溶融樹脂と、第2工程で成形型11の内部に射出された溶融樹脂とが成形型11の内部で合流するとともに、溶融樹脂を中空状に成形する。これによりパイプ本体2及び分岐管部3が成形される。また、成形型の内部では、パイプ本体2と共に一端側フランジ部4及び他端側フランジ部5が一体成形され、分岐管部3と共に分岐管フランジ部6が一体成形される。これらフランジ部4~6の成形後、スライド型31~33を移動させると、フランジ部4~6に溝4a、5a、6a及び挿通孔4b、5b、6bが形成される。これにより、溝4a、5a、6a及び挿通孔4b、5b、6bを機械加工によることなく形成することができる。
【0083】
<実施形態2>
図8図10は、本発明の実施形態2に係る製造方法で使用される成形装置の一部(実施形態1の第2スライド型の周辺)を示すものである。実施形態2では、実施形態1の図7に示した不要樹脂部100~102を成形型11の内部で切断できるようにした点で実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0084】
図8に示すように、第2スライド型32にはトリミング型32cが設けられており、このトリミング型32cは第2スライド型32に内蔵されている。これにより、トリミング型32cが設けられた第2スライド型32をコンパクトにすることができる。トリミング型32cは、筒状に形成されており、第2スライド型32に対して進退動作可能に配設されている。トリミング型32cの進退方向は、第2スライド型32の進退方向と同方向である。第2スライド型32にはトリミング型32cを駆動するためのトリミング型駆動装置37が設けられている。トリミング型駆動装置37は油圧シリンダ等で構成されており、上記制御装置によって制御される。トリミング型駆動装置37は、予め定められたタイミングでトリミング型32cを図8に示す後退状態から図10に示す進出状態、進出状態から後退状態に切り替える。トリミング型32cのストローク量は、他端側不要樹脂部101の基端部を切断可能なストローク量であればよい。
【0085】
トリミング型32cの内部には、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分に連通する第2キャビティ32bが形成されている。第2キャビティ32bの内周面によって他端側不要樹脂部101の外周面が成形されることになるので、第2キャビティ32bの内径によって他端側不要樹脂部101の外径を設定できる。この実施形態では、パイプ本体2の他端部の内径よりも小径な筒状の他端側不要樹脂部101をパイプ本体2の他端部から突出するように一体成形可能にしている。言い換えると、トリミング型32cは、他端側不要樹脂部101の外周面に沿う筒状に形成されている。他端側不要樹脂部101の基端部の肉厚が他の部分に比べて薄くなるように、トリミング型32cの刃先32fの位置を設定することができる。例えば図11に示すように、フランジ部5の端面に環状の溝Mを形成し、該溝Mの底面に達するようにトリミング型32cの刃先32fを設定することができる。
【0086】
尚、トリミング型32cには、ガス圧送時に高まった第1空間R1の内圧を逃がすためのバルブ(図示せず)を設けてもよい。また、第1空間R1の内圧は、トリミング型32cの外面と第2スライド型32との間から逃がしてもよい。
【0087】
トリミング型32cの先端部には刃先32fが全周に亘って形成されている。刃先32fの直径D1(図8に示す)は、パイプ本体2の他端部の内径D2(図9に示す)よりも小さく設定されている。尚、刃先32fは、周方向に連続していてもよいし、断続していてもよい。
【0088】
図9に示すように、溶融樹脂の成形時にはトリミング型32cを後退状態にしておく。溶融樹脂が成形後、固化すると、他端側不要樹脂部101がトリミング型32cの第2キャビティ32b内に形成される。他端側不要樹脂部101が形成された後、図10に示すように、トリミング型32cを駆動装置37によって進出状態にする。これにより、トリミング型32cの刃先32fを他端側不要樹脂部101の基端部に押し当てて当該基端部を切断できる。このとき、他端側不要樹脂部101の基端部の肉厚が薄くなっている方が好ましい。この工程が他端側不要樹脂部101の切断工程である。この切断工程は第3工程で行うことができる。
【0089】
他端側不要樹脂部101の切断時には、トリミング型32cの刃先32fの直径D1(図8に示す)がパイプ本体2の他端部の内径D2(図9に示す)よりも小さいので、刃先32fを無理なくパイプ本体2の内部まで入れることができる。これにより、他端側不要樹脂部101の基端部を確実に切断できる。好ましくは、トリミング型32cの刃先32fの直径D1(図8に示す)がパイプ本体2の他端部の内径D2(図9に示す)よりも若干小さいサイズであれば、パイプ本体2の内面に形成される段差をより小さくすることができるので、流体の流量抵抗を少なくすることができる。
【0090】
脱型後、トリミング型32cの内面と他端側不要樹脂部101の外面との間に圧縮空気を注入することによって他端側不要樹脂部101をトリミング型32cの内部から押し出すことができる。トリミング型32cの内部に圧縮空気を注入する際、上述したバルブを設けていれば、そのバルブからトリミング型32cの内部に圧縮空気を容易に注入できる。
【0091】
この実施形態2では、実施形態1と同様な作用効果を奏することができるとともに、成形型11の内部でトリミング型32cを移動させて他端側不要樹脂部101を切断することができるので、脱型後の加工工数を削減することができる。尚、脱型後、パイプ本体2の他端部の内周面に対して仕上げ加工を施してもよい。
【0092】
実施形態2のトリミング型構造は、第1スライド型31や第3スライド型33に組み込むことができる。これにより、一端側不要樹脂部100や分岐管不要樹脂部102を成形型11の内部で切断することができる。
【0093】
また、図12に示すように、フランジ部4、5、6の溶融樹脂を最後に射出してもよい。この場合、フランジ部4の溶融樹脂とフランジ部5の溶融樹脂とフランジ部6の溶融樹脂とを同時に射出してもよいし、フランジ部4の溶融樹脂とフランジ部5の溶融樹脂とフランジ部6の溶融樹脂とを各々を別々の時に射出してもよいし、いずれか一つを他に比べて遅く射出してもよい。
【0094】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明に係る樹脂製パイプの製造方法は、例えば自動車の配管部品を製造する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 樹脂製パイプ
2 パイプ本体
3 分岐管部
4 一端側フランジ部(第1フランジ部)
5 他端側フランジ部(第1フランジ部)
6 分岐管フランジ部(第2フランジ部)
4a、5a、6a 溝
4b、5b、6b 挿通孔
7 リブ
11 成形型
31~33 第1~第3スライド型
32c トリミング型
101 他端側不要樹脂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12