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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L33/56
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020099622
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193715
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢司
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204830(JP,A)
【文献】特開2016-219504(JP,A)
【文献】特開2016-121756(JP,A)
【文献】特開2007-250817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/207152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が搭載されるとともに、環形状の基板金属層が固着された内側基板接合面と前記内側基板接合面の外側の隣接領域である外側基板接合面とを有する基板接合面を備えた基板と、
前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、前記基板金属層に対応するサイズの環形状のフランジ金属層が固着されたフランジ接合面を有するフランジとを備え、前記半導体発光素子を収容する空間を有して前記基板に封止接合された透光性キャップと、を有し、
前記基板と前記透光性キャップとの封止接合部は、前記基板金属層及び前記フランジ金属層が金属接合材によって接合された内側接合部と、前記内側接合部の外側の隣接領域であって、無機接着材によって接合された外側接合部とを有する、半導体発光装置。
【請求項2】
前記基板金属層及び前記フランジ金属層は円環形状を有する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記無機接着材は、ガラス系又はセラミック系の無機接着剤である、請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記透光性キャップの前記窓部は半円球形状を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記透光性キャップは平板形状を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記フランジは、前記フランジの底面の内側領域において前記底面から突出したフランジ突出部を有し、前記フランジ突出部の底面に前記フランジ金属層が固着されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記外側接合部は、前記フランジの上面まで至り、前記内側接合部及び前記フランジを覆うように形成されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記外側基板接合面は、前記内側基板接合面を囲む少なくとも1つの外環の溝、又は前記外環の少なくとも一部の溝を有し、
前記無機接着材は、前記溝を充填するように形成されている、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記透光キャップは、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスからなる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記半導体発光素子は、アルミ窒化ガリウム(AlGaN)系の半導体発光素子である、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記半導体発光素子は、波長265~415nmの紫外光を発光する半導体発光素子である、請求項10に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置、特に紫外光を放射する半導体発光素子が内部に封入された半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を半導体パッケージの内部に封入する半導体装置が知られている。半導体発光モジュールの場合では、半導体発光素子が載置された支持体に、発光素子からの光を透過するガラスなどの透明窓部材が接合されて気密封止される。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、半導体発光素子を収容する凹部が設けられた基板と、窓部材とが接合された半導体発光モジュールが開示されている。
【0004】
また、特許文献3、4には、紫外線発光素子が搭載された実装基板と、スペーサと、ガラスにより形成されたカバーとが接合された紫外光発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-18873号公報
【文献】特開2018-93137号公報
【文献】特開2016-127255号公報
【文献】特開2016-127249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板と窓部材との間の封止性、接合信頼性について一層の向上が求められている。紫外光を放射する半導体発光素子、特にAlGaN系の半導体発光素子は、気密が不十分であると劣化し易く、当該半導体発光素子が搭載された半導体装置には高い気密性が求められる。
【0007】
また、AlGaN系結晶は水分によって劣化する。特に、発光波長が短波長になるほどAl組成が増加して劣化し易い。そこで、発光素子を収めるパッケージ内部に水分が侵入しない気密構造として、基板とガラス蓋を金属接合材で気密する構造が採用されていたが、多湿環境下又は水回りで使用される場合に気密が十分でないという問題があった。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高接合性及び高気密性を有するとともに、高い信頼度及び低透湿性など高い耐環境性を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が搭載されるとともに、環形状の基板金属層が固着された内側基板接合面と前記内側基板接合面の外側の隣接領域である外側基板接合面とを有する基板接合面を備えた基板と、
前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、前記基板金属層に対応するサイズの環形状のフランジ金属層が固着されたフランジ接合面を有するフランジとを備え、前記半導体発光素子を収容する空間を有して前記基板に封止接合された透光性キャップと、を有し、
前記基板と前記透光性キャップとの封止接合部は、前記基板金属層及び前記フランジ金属層が金属接合材によって接合された内側接合部と、前記内側接合部の外側の隣接領域であって、無機接着材によって接合された外側接合部とを有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。
図1B】半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。
図1C】半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
図1D】半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。
図1E】第1の実施形態の透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
図2図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図3A】基板11と透光キャップ13の接合前の状態を模式的に示す断面図である。
図3B】基板11と透光キャップ13の内側接合部形成後の状態を模式的に示す断面図である。
図3C】基板11と透光キャップ13の外側接合部形成後の状態を模式的に示す断面図である。
図4A】第2の実施形態による半導体発光装置30の断面を模式的に示す断面図である。
図4B】基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
図5A】第3の実施形態による半導体発光装置40の断面を模式的に示す断面図である。
図5B】基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
図5C】無機接合部25の形成方法を模式的に示す断面図である。
図6A】第3の実施形態の改変例の基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
図6B】第3の実施形態の改変例の基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
図7A】第4の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。
図7B】半導体発光装置50の基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
図8A】第4の実施形態による半導体発光装置50の上面を模式的に示す平面図である。
図8B】半導体発光装置50の側面を模式的に示す図である。
図8C】半導体発光装置50の内部構造を模式的に示す図である。
図9A】第4の実施形態の改変例を示す図であり、改変例の半導体発光装置50の上面を模式的に示す平面図である。
図9B】改変例の半導体発光装置50の側面を模式的に示す図である。
図9C】改変例の半導体発光装置50の内部構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。図1Bは、半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。図1Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。図1Dは、半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。図2は、図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
【0012】
図1A及び図1Bに示すように、半導体発光装置10は、矩形板形状の基板11と、半円球状のガラスからなる透光性窓である透光キャップ13と、が接合されて構成されている。より詳細には、基板11の上面上には、円環状の金属層12(以下、基板金属層12ともいう。)が形成され、透光キャップ13と接合されている。
【0013】
なお、基板11の側面がx方向及びy方向に平行であり、基板11の上面がxy平面に平行であるとして示している。
【0014】
図1E及び図2に示すように、透光キャップ13は、半円球状のドーム部13Aと、透光部であるドーム部13Aの底部に設けられたフランジ部13Bとからなる。なお、図1Eは、透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
【0015】
フランジ部13Bは円環板形状を有している。フランジ部13Bの底面にはフランジ金属層21が固着されており、フランジ接合面が形成されている。基板金属層12上に金属接合層22によってフランジ金属層21が接合されることによって、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。
【0016】
基板11は、ガス等を透過しないセラミック基板である。例えば、高い熱伝導率を有し、気密性に優れた窒化アルミニウム(AlN)が用いられる。なお、基板11の基材としては、アルミナ(Al)等の気密性に優れた他のセラミックを用いることができる。
【0017】
透光キャップ13は、半導体発光装置10内に配された発光素子15からの放射光を透過するガラスからなる。例えば、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスを好適に用いることができる。
【0018】
半導体発光装置10内の封入ガスとしては、ドライな窒素ガスや空気などを用いることができ、あるいは内部を真空としてもよい。
【0019】
図1Dに示すように、基板11上には、半導体発光装置10内の配線電極である第1配線電極(例えば、アノード電極)14A及び第2配線電極(例えば、カソード電極)14Bが備えられている(以下、特に区別しない場合には、配線電極14と称する。)。発光ダイオード(LED)又は半導体レーザなどの半導体発光素子15が第1配線電極14A上に金属接合層15Aによって接合され、発光素子15のボンディングパッド15Bがボンディングワイヤ18Cを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0020】
発光素子15は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む半導体構造層が形成されたアルミ窒化ガリウム(AlGaN)系の半導体発光素子(LED)である。また、発光素子15は、半導体構造層が、反射層を介して導電性の支持基板(シリコン:Si)上に形成(接合)されている。
【0021】
発光素子15は、支持基板の半導体構造層が接合された面の反対面(発光素子15の裏面とも称する)にアノード電極を備え(図示せず)、基板11上の第1配線電極14Aに電気的に接続されている。また、発光素子15は、半導体構造層の支持基板が接合された面の反対面(発光素子15の表面とも称する)にカソード電極(カソード電極パッド15B)を備え、ボンディングワイヤを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0022】
発光素子15は、波長265~415nmの紫外光を発光する窒化アルミ系の発光素子であることが好適である。具体的には、発光中心波長が、265nm、275nm、355nm、365nm、385nm、405nm又は415nmの発光素子を用いた。
【0023】
窒化アルミ系の紫外線を放射する発光素子(UV-LED素子)を構成する半導体結晶のAl組成は高く、過剰な酸素(O2)や水分(H2O)によって酸化劣化され易い。
【0024】
また、基板11上には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bに接続されたツェナーダイオード(ZD)である保護素子16が設けられ、発光素子15の静電破壊を防止する。
【0025】
図1Cに示すように、基板11の裏面には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bにそれぞれ接続された第1実装電極17A及び第2実装電極17B(以下、特に区別しない場合には、実装電極17と称する。)が設けられている。具体的には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bの各々は、例えば銅(Cu)からなる金属ビア18A、18Bを介してそれぞれ第1実装電極17A及び第2実装電極17Bに接続されている。
【0026】
図2を参照すると、半導体発光装置10は配線回路基板(図示しない)上に実装され、第1実装電極17A及び第2実装電極17Bへの電圧印加によって、発光素子15は発光し、発光素子15の表面(光取り出し面)からの放射光LEは透光キャップ13を経て外部に放射される。
【0027】
次に、基板11と透光キャップ13のフランジ部13Bとの接合部について説明する。
(透光キャップ13及びフランジ部13B)
また、図1A及び図1Bに示すように、透光性の蓋部材である透光キャップ13は、半円球状の窓部であるドーム部13Aと、ドーム部13Aの底部に設けられたフランジ部13Bとからなる。フランジ部13Bは円環板形状を有している。より詳細には、フランジ部13Bの底面はドーム部13Aの中心と同心の円環形状(中心:C)を有している。すなわち、フランジ部13Bの外縁(外周)は、フランジ部13Bの内縁(内周)と同心である。
(フランジ金属層21)
また、フランジ部13Bの底面には金属層21が固着されている。より詳細には、図1A及び図2に示すように、フランジ部13Bの円環形状の底面(以下、フランジ接合面ともいう。)13Sには円環形状の金属層であるフランジ金属層21が固着されている。
【0028】
フランジ金属層21は、フランジ部13Bのフランジ接合面13Sの内側の円環形状の領域(内側フランジ面)13S1に固着されている。フランジ接合面13Sは、さらに、内側フランジ面13S1の外側の隣接領域である円環形状の外側フランジ面13S2を有する。
(基板金属層12)
図1Dに示すように、基板11上には、円環形状を有する金属環体である基板金属層12が固着されている。より詳細には、図1D及び図2に示すように、基板11の上面の円環形状の基板接合面11Sには円環形状の金属層である基板金属層12が固着されている。
【0029】
基板金属層12は、基板接合面11Sの内側の円環形状の領域(内側基板接合面)11S1に固着されている。基板接合面11Sは、さらに、内側基板接合面11S1の外側の隣接領域である外側基板接合面11S2を有する。
【0030】
基板金属層12及びフランジ金属層21は、互いに対応する形状(円環形状)及びサイズを有している。すなわち、基板金属層12及びフランジ金属層21を接合したときに、合致する形状及びサイズを有している。
【0031】
また、基板金属層12は、第1配線電極14A、第2配線電極14B、発光素子15及び保護素子16とは電気的に絶縁され、これらを取り囲むように形成されている。
【0032】
図2に示すように、透光キャップ13のフランジ部13Bと基板11とは、金属接合層22及び無機接合部25によって接合されている。
(基板金属層12、フランジ金属層21及び金属接合層22の材料)
基板金属層12は、基板11上に、順にタングステン、ニッケル、金を積層した構造(W/Ni/Au)、あるいは、ニッケルクロム、金、ニッケル、金を積層した構造(NiCr/Au/Ni/Au)を有している。
【0033】
フランジ部13Bの底面のフランジ金属層21は、フランジ部13Bの基材(ガラス)上に、順にクロム、ニッケル、金を積層した構造(Cr/Ni/Au)、あるいはチタン、パラジウム、銅、ニッケル、金を積層した構造(Ti/Pd/Cu/Ni/Au)を有している。
【0034】
なお、上記の基板金属層12及びフランジ金属層21の構造は例示に過ぎない。例えば、Auの上に、相互拡散を抑制するバリア金属及び密着性の高い金属を積層した構造を有していてもよい。
【0035】
金属接合層22となる接合材は、例えば、フラックスを含まない円環状のAuSn(金スズ)シートであり、Snを22wt%含有するもの(溶融温度:約300℃)を用いた。金スズ合金シートの両表面に、Au(10~30nm)層を備えることもできる。AuSn合金の酸化を防ぎ、気密性を向上する。また、このAu層は、溶融固化(接合)時に、金属接合層22に溶解される。
(無機接合部25)
無機接合部25には、強固な接着性、高い硬度、気密性、耐熱性、低熱膨張率、耐水性、耐圧性、耐薬品性などを有する接着剤などを用いることができる。例えば、クォーツなどをベース成分としたガラス系接着剤、または、アルミナ、ジルコニア、シリカ、グラファイトなどをベース成分としたセラミック系の無機材料の接着剤などを用いることができる。
【0036】
より具体的には、第1配線電極14AとLED素子を約300℃でAu-Sn共晶接合するLEDパッケージにおいては、当該共晶接合温度より低い温度(例えば80℃~260℃)で硬化特性を有する反応型接着剤を用いることができる。主にこのタイプの無機接着剤には、硅酸塩系、酸化アルミニウム―珪酸塩系、ジルコニウム―珪酸塩系、酸化アルミニウム―ジルコニウム―珪酸塩系等のポリシリカ系接着剤がある。
【0037】
また、アルミナなどのセラミックとバインダーとして各種金属アルコキシド(Si,Ti,ZrAl)を用いた金属アルコキシド系接着剤がある。これらの無機接着剤は、高い硬度、優れた耐熱性及び接着強度を有し、低透湿性など高い気密性を有しており好適である。
【0038】
例えば、酸化アルミニウム―ジルコニウム―珪酸塩系の無機接着剤として、ジルコニウム化合物(60-70wt%)、ケイ酸塩(5-15wt%)、酸化アルミニウム(1-3wt%)、水(20-30wt%)からなる一液性の接着剤を用いることができる。
[発光装置10の製造方法]
以下に、発光装置10の製造方法について、詳細かつ具体的に説明する。
(素子接合工程)
まず、基板11の第1配線電極14A上にAuSn揮発性ソルダーペーストはんだを塗布する。は、溶融温度が約300℃のAu-Sn(22wt%)のAuSn組成はんだを用いた。
【0039】
次に、発光素子15を揮発性ソルダーペースト上に載せて、基板を320℃まで加熱して、AuSnを溶融・固化して第1配線電極14A上に発光素子15を接合する。なお、保護素子16を搭載する場合には同時に行う。このとき、揮発性ソルダーペーストに含まれるフラックスは殆ど揮発する。
【0040】
次に、発光素子15の上部電極のボンディングパッド15Bと第2配線電極14Bとの間をボンディングワイヤ18C(Auワイヤ)によって電気的に接続する。
(フラックス追揮発工程)
上記のように発光素子15が接合された基板11をヒーターにセットし、窒素雰囲気下で、アニール温度300℃で20秒加熱して、揮発性ソルダーペーストの残留物(フラックス)を揮発させる。
【0041】
追揮発温度の下限は、残留物(フラックス)が揮発する300℃以上(すなわち、金属接合層22の溶融温度以上)が好ましい。また、追揮発温度の上限は、金属接合層22が再溶融しない温度以下、例えば330℃以下が好ましい。
(エキシマ光洗浄工程)
追揮発後の基板11をエキシマ-光照射装置にセットし、2000 mJ/cm2以上のエキシマ光を基板に照射する。これにより、基板11及び発光素子15の表面に吸着している残留物(フラックス)を分解除去した。
(キャップ接合工程1:内側接合部形成)
図3A図3Cは、図2のW部(接合部)の第1の接合工程(接合工程1)について説明する部分拡大断面図である。
【0042】
エキシマ光洗浄工程後の基板11と、透光キャップ13とをキャップ接合装置にセットする。次に、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を真空状態にし、温度275℃で5分加熱処理(アニール処理)する。
【0043】
続いて、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を封入ガスであるドライ窒素(N)ガス、1気圧(101.3kPa)で満たす。次に、基板11の基板金属層12上に環状AuSnシート(金属接合層22の接合材)を載せ、さらにその上から透光キャップ13のフランジ部13Bを載せる(図3A参照)。
【0044】
透光キャップ13を環状AuSnシートに押圧しつつ、320℃まで加熱する。加熱により、AuSnシートは基板金属層12に密着した部分から内側および外側に向かって溶融し、金属層12およびフランジ金属層21の金を若干量溶融しつつ固化する、又は冷却により固化する。図3Bに示すように、基板金属層12及びフランジ金属層21が金属接合層22によって接合された金属接合構造24からなる内側接合部JIが形成される。
(キャップ接合工程2:外側接合部形成)
内側接合部JIの外側の領域、すなわち、基板接合面11Sの外側基板接合面11S2とフランジ接合面13Sの外側フランジ面13S2との間に液状の無機接着剤を充填する。温度100℃で5~15分加熱処理し、無機接合部25が形成される。これにより、図3Cに示すように、外側接合部JOが形成され、基板11と透光キャップ13との封止接合が完了する。
(2重気密構造)
以上、説明したように、本実施形態による半導体発光装置10は、内側接合部JIと外側接合部JOからなる2重気密構造を有している。
【0045】
内側接合部JIは、基板金属層12、金属接合層22及びフランジ金属層21からなる金属材料(含む合金)で構成された封止構造を有している。当該金属封止構造は、1次気密封止と外側接合部形成時に発生する揮発成分のキャップ内への侵入とを防止する機能を有する。
【0046】
外側接合部JOは、ガラス系またはセラミック系の無機材料からなる無機接着剤で構成された封止構造を有している。当該無機接着剤封止構造は、2次気密封止と内側接合部の雰囲気ガスによる腐食防止とを防止する機能を有する。
【0047】
すなわち、本実施形態による2重気密構造は、展延性のある金属材料による1次気密封止構造と、硬度の高い無機材料に2次気密封止構造とを有し、振動や衝撃等に強く、また耐湿性、耐腐食性など耐環境性の高い気密接合を有する半導体発光装置を提供することができる。
[第2の実施形態]
図4Aは、図2と同様な図であり、本発明の第2の実施形態による半導体発光装置30の断面を模式的に示す断面図である。図4Bは、基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0048】
第2の実施形態において、透光キャップ13のフランジ部13Bは、内側フランジ面13S1において突出したフランジ突出部13Pを有している。
【0049】
より詳細には、フランジ突出部13Pの底面(内側フランジ面13S1)は円環形状を有し、内側フランジ面13S1にはフランジ金属層21が固着されている。
【0050】
また、基板接合面11Sの内側の円環形状の領域(内側基板接合面)11S1には基板金属層12が固着されている。基板金属層12及びフランジ金属層21は、互いに対応する形状(円環形状)及びサイズを有している。
【0051】
基板金属層12及びフランジ金属層21は、金属接合層22によって接合され、金属封止構造である金属接合構造24からなる内側接合部JIを形成している。
【0052】
また、基板接合面11Sの外側基板接合面11S2とフランジ接合面13Sの外側フランジ面13S2との間は無機接合部25によって接合され、無機接着材による封止構造からなる外側接合部JOが形成されている。
【0053】
本実施形態による半導体発光装置30においては、フランジ突出部13Pを有し、フランジ突出部13Pの側面と無機接合部25との間においても接合面CSが形成されるので、横方向の応力に対する接合強度が向上する。
【0054】
また、外側接合部JOは硬度の高い無機接着材からなるので、内側接合部JIへの荷重を低減できるので、内側接合部JIの気密性の低下を防止することができる。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態による半導体発光装置30は、内側接合部JIと外側接合部JOからなる2重気密構造を有している。従って、上記実施形態と同様に、振動や衝撃等に強く、また、耐湿性、耐腐食性の高い気密接合を有する半導体発光装置を提供することができる。
[第3の実施形態]
図5Aは、図2と同様な図であり、本発明の第3の実施形態による半導体発光装置40の断面を模式的に示す断面図である。図5Bは、基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0056】
第3の実施形態において、フランジ部13Bの底面であるフランジ面13Sは円環形状を有し、フランジ金属層21が固着されている。また、基板接合面11Sの内側の円環形状の領域(内側基板接合面)11S1には基板金属層12が固着されている。基板金属層12及びフランジ金属層21は、互いに対応する形状(円環形状)及びサイズを有している。
【0057】
基板金属層12及びフランジ金属層21は、金属接合層22によって接合され、金属封止構造からなる内側接合部JIを形成している。
【0058】
また、内側接合部JIを覆うように、すなわち、フランジ部13Bの上面まで至り、金属接合構造24及びフランジ部13Bを覆うように無機接合部25からなる外側接合部JOが形成されている。
【0059】
図5Cは、無機接合部25の形成方法を模式的に示す断面図である。図5Cの上段の図に示すように、隣接する半導体発光装置間の外側接合領域に無機接着材のスラリーをポッティング装置PDによってフランジ部13Bの縁部が埋設されるまでポッティングする。続いて、キュア(無機接着剤の硬化)を行って無機接着材を固化し、無機接合部25を形成する。
【0060】
続いて、隣接する半導体発光装置間の無機接合部25を、ダイサDSやレーザダイシングによって個々の半導体発光装置40に分割し(図5Cの下段)、半導体発光装置40が製造される。
【0061】
かかる構造により、さらに基板11と透光キャップ13との接合強度が向上する。なお、図5A及び図5Bに示すように、フランジ部13Bの上面の全体を覆うように、無機接合部25が形成されていることが好ましい。
(第3の実施形態の改変例)
図6A及び図6Bは、図5Bと同様な図であり、第3の実施形態の改変例における基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0062】
図6Aを参照すると、外側基板接合面11S2には、溝GRが形成されている。また、図6Bを参照すると、外側基板接合面11S2には、内側溝GR1及び外側溝GR2(以下、特に区別しない場合には、溝GRと総称する)が形成されている。
【0063】
すなわち、外側基板接合面11S2には、少なくとも1つの溝GRが形成されている。溝GRは、内側接合部JIを囲む環状の溝(外環の溝)として形成されている。なお、溝GRは、閉じた環状ではなく、当該外環の少なくとも一部であるように形成されていてもよい。
【0064】
そして、無機接合部25は、当該少なくとも1つの溝GRを充填するように形成されている。
【0065】
かかる構造により、さらに外側接合部JOの接合強度を向上することができる。また、キャップ外れを防止することができる。
【0066】
上述においては、内側接合部JIと外側接合部JOからなる2重気密構造について説明したが、更なる気密性を向上する工夫を加えることもできる。例えば、無機接着剤が接触する透光キャップ及び基板11の接触面を荒らして無機接合部25の結着性を向上することもできる。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態による半導体発光装置40においても、内側接合部JIと外側接合部JOからなる2重気密構造を有している。従って、上記した実施形態と同様に、振動や衝撃等に強く、また、耐湿性、耐腐食性の高い気密接合を有する半導体発光装置を提供することができる。
[第4の実施形態]
図7Aは、本発明の第4の実施形態による半導体発光装置50の断面(図8AのA-A線に沿った断面)を模式的に示す断面図である。図7Bは、基板11と透光キャップ13との接合部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0068】
また、図8Aは、第4の実施形態による半導体発光装置50の上面を模式的に示す平面図である。図8Bは、半導体発光装置50の側面を模式的に示す図である。図8Cは、半導体発光装置50の内部構造を模式的に示す図である。
【0069】
図7A図8Aに示すように、第4の実施形態の透光キャップ13は、円盤状の平板であり、透光キャップ13の円環形状の外縁部がフランジ部13Bであり、その内側が透光部である窓部13Aである。フランジ部13Bの底面(すなわち、透光キャップ13の底面の円環形状外周部)には円環形状のフランジ金属層21が固着されており、金属接合面が形成されている。
【0070】
図7A図8A及び図8Bに示すように、基板11は、発光素子15をその内部に収容する空間である凹部RCを有している。より詳細には、基板11は、基板11の内縁で画定される円柱状の凹部RCを有するハウジング(枠構造)として構成され、基板11の頂面11T上に透光キャップ13が載置、接合されている。
【0071】
図8Cに示すように、基板接合面11Sの内側の円環形状の領域(内側基板接合面)11S1には基板金属層12が固着されている。基板金属層12はフランジ金属層21に対応する形状(円環形状)及びサイズを有している。
【0072】
図7Bに示すように、基板金属層12及びフランジ金属層21は、金属接合層22によって接合され、金属封止構造である金属接合構造24からなる内側接合部JIを形成している。
【0073】
また、基板接合面11Sの外側基板接合面11S2とフランジ接合面13Sの外側フランジ面13S2との間は無機接合部25によって接合され、無機接着材による封止構造からなる外側接合部JOが形成されている。
(第4の実施形態の改変例)
図9A図9B及び図9Cは、第4の実施形態の改変例を示す図であり、それぞれ半導体発光装置50の上面を模式的に示す平面図、側面を模式的に示す図、内部構造を模式的に示す図である。なお、図9AのA-A線に沿った半導体発光装置50の断面及び接合部Wの部分拡大断面は図7A図7Bと同様である。なお、
図9Aに示すように、本改変例においては、透光キャップ13は矩形状の平板であり、透光キャップ13の矩形環形状の外縁部がフランジ部13Bであり、その内側が透光部である窓部13Aである。フランジ部13Bの底面には矩形環形状のフランジ金属層21が固着されており、金属接合面が形成されている。なお、フランジ金属層21は、角部がR面である面取りされた形状を有している。
【0074】
図9A図9Cに示すように、発光素子15を収容する凹部RCは角柱形状を有している。なお、凹部RCは角部がR面加工(面取り)された角柱形状を有している。
【0075】
図9Cに示すように、基板接合面11Sの内側の矩形環形状の領域(内側基板接合面)11S1には基板金属層12が固着されている。基板金属層12はフランジ金属層21に対応する形状(矩形環形状)及びサイズを有している。
【0076】
図7Bに示すように、基板金属層12及びフランジ金属層21は、金属接合層22によって接合され、金属封止構造である金属接合構造24からなる内側接合部JIを形成している。
【0077】
また、基板接合面11Sの外側基板接合面11S2とフランジ接合面13Sの外側フランジ面13S2との間は無機接合部25によって接合され、無機接着材による封止構造からなる外側接合部JOが形成されている。
【0078】
本実施形態による半導体発光装置50においては、透光キャップ13は、円盤状の平板で構成されており、加工が容易であり、基板との接合の均一性も高く、コストも低減できる。また、矩形の透光キャップ13Bであっても、内側接合部JIと外側接合部JOの角部に丸み(R面取り)が設けてあれば十分な気密接合性を得ることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態による半導体発光装置50は、内側接合部JIと外側接合部JOからなる2重気密構造を有している。従って、上記した実施形態と同様に、振動や衝撃等に強く、また、耐湿性、耐腐食性の高い気密接合を有する半導体発光装置を提供することができる。
【0080】
なお、本明細書において、矩形状、矩形環形状及び角柱形状等の用語は、角部がR面又はC面などの面取りされた形状を含む。
【0081】
なお、上記した実施形態においては、基板金属層12及びフランジ金属層21等が円環形状を有する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、これらの金属層が多角形形状、又は角部が面取りされた多角形形状を有していてもよい。
【0082】
なお、上記した半導体材料及び金属材料、数値等は、特記した場合を除いて、例示であり、限定的に解釈されない。
【0083】
また、本明細書において、用語「円環」は、楕円環、長円環、オーバル形の環等を含み、円、円球、円柱等についても同様である。また、用語「矩形」は、正方形、長方形、及びこれらの角部が面取りされた形状を含み、矩形環、角柱等についても同様である。
【0084】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、高接合性及び高気密性を有するとともに、多湿などの悪環境下においても高い耐環境性を有する、高信頼度及び長寿命の半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
10,30 半導体発光装置
11 基板
11S 基板接合面
13S フランジ接合面
12 基板金属層
13 透光キャップ
13A 窓部
13B フランジ部
13P フランジ突出部
21 フランジ金属層
22 金属接合層
24 金属接合構造
25 無機接合部
GR 溝
JI 内側接合部
JO 外側接合部
RC 凹部
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C