(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】堆積物除去方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B01D21/24 P
B01D21/24 W
(21)【出願番号】P 2020100225
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐二
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-000105(JP,A)
【文献】特開2007-283183(JP,A)
【文献】特公平03-034545(JP,B2)
【文献】特開昭64-058508(JP,A)
【文献】特開平03-146101(JP,A)
【文献】特開2012-037271(JP,A)
【文献】特開2015-129420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-21/01
21/02-21/34
B26F1/00-3/16
E03F1/00-11/00
E02D1/00-3/115
E04G23/00-23/08
G21F9/00-9/36
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物内の滞留水の中に堆積物が堆積している場合であって、前記滞留水の上部が構造物で覆われる場合であり、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法であって、
前記滞留水の上部の構造物の特定箇所を穿孔して、前記構造物に穿孔部を形成し、前記穿孔部からサンドポンプを前記滞留水に投下し、
圧縮空気を噴射する1本の圧縮空気チューブと高圧水を噴射する複数本の高圧水チューブとを、複数本の前記高圧水チューブで、1本の前記圧縮空気チューブを、半円状に取り囲むように、前記滞留水の中に設置し、
複数本の前記高圧水チューブの内径を1本の前記圧縮空気チューブの内径よりも小さくし、
複数本の前記高圧水チューブの先端はL字状に屈折し、その出口部分は同じ方向を向き、
複数本の前記高圧水チューブの出口部分は、1本の前記圧縮空気チューブの出口部分よりも下方に設置され、
複数本の前記高圧水チューブから噴射される高圧水は水平方向に向けられ、1本の前記圧縮空気チューブから噴射される圧縮空気は鉛直方向に向けられ、
前記堆積物の表面に、前記圧縮空気チューブから前記圧縮空気を噴射して、前記堆積物の破砕片を前記滞留水の中に巻き上げ、前記高圧水チューブから前記高圧水を噴射して、前記堆積物の破砕片を前記サンドポンプの方向に押し流し、
前記サンドポンプによって前記滞留水と前記堆積物
とを
懸濁水として吸引し、
前記懸濁水を移送し、移送先で前記懸濁水を前記滞留水と前記堆積物とに分離し、前記堆積物を除去することを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載する堆積物除去方法であって、
前記構造物が床であって、前記穿孔部は、ウォータジェット切断による穿孔により形成されることを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項3】
請求項1に記載する堆積物除去方法であって、
前記構造物がグレーチングであって、前記穿孔部は、放電加工による穿孔により形成されることを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項4】
請求項1に記載する堆積物除去方法であって、
前記サンドポンプは、前記滞留水の中で水平方向に移動する機構を有し、前記滞留水の中で水平方向に移動し、前記
懸濁水を吸引することを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項5】
請求項1に記載する堆積物除去方法であって、
前記懸濁水を吸引するに連れて、分離した前記堆積物の量が増加することを確認することを特徴とする堆積物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滞留水中の堆積物を除去する堆積物除去方法に係り、特に、建造物内の滞留水中に堆積物が堆積している場合に、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
除去する必要がある滞留水中の堆積物として、例えば、水処理設備の沈砂池に堆積している土砂がある。沈砂池に堆積している土砂は、バケット型土砂かき揚げ装置やポンプ式吸引揚砂装置などにより揚砂される。
【0003】
バケット型土砂かき揚げ装置は、沈砂池の底面全体に堆積した土砂をそのままかき揚げて排出するため、除去しようとする土砂を一か所に集積する必要がない。しかし、装置構成が大規模で複雑となり、狭隘な環境では使用しにくく、保守管理も煩雑となる。
【0004】
ポンプ式吸引揚砂装置は、装置構成が単純で小型化しやすい。しかし、ポンプ吸引口近傍の土砂しか吸引できないため、除去しようとする土砂を一か所に集積する必要がある。このため、ポンプ式吸引揚砂装置は、沈砂池に沈砂ピットを形成し、沈砂池の底面全体に堆積した土砂を沈砂ピットに集積して、固定型ポンプで吸引し、除去する。
【0005】
こうした従来技術の背景技術として、特開8-229310号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、沈砂池の底面を上流側から下流側に下降傾斜して形成し、その下流端に沈砂ピットを形成すると共に、沈砂ピットに隣接して上澄水を滞留するポンプ井を形成し、沈砂池の上流端部に圧力水を原水の流れ方向に噴射する土砂寄せノズルと、沈砂池の中流部に原水の流れ方向に所定の間隔で形成され、圧力水を下方向に噴射する複数の土砂巻上げノズルと、沈砂ピットに堆積した土砂を揚砂するジェットポンプ式揚砂装置とを、有する沈砂池の集砂装置が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される沈砂池の集砂装置は、沈砂池の底面を上流側から下流側に下降傾斜して形成し、沈砂ピットに堆積した土砂を集積する。
【0008】
しかし、特許文献1には、建造物内の滞留水中に堆積物が堆積している場合に、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法は記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、建造物内の滞留水中に堆積物が堆積している場合であって、滞留水の上部が構造物(床やグレーチング)で覆われ、建造物内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、本発明の堆積物除去方法は、建造物内の滞留水中に堆積物が堆積している場合であって、滞留水の上部が構造物で覆われる場合であり、特定箇所の堆積物を部分的に除去するものであって、滞留水の上部の構造物の特定箇所を穿孔して、構造物に穿孔部を形成し、穿孔部からサンドポンプを滞留水に投下し、圧縮空気を噴射する1本の圧縮空気チューブと高圧水を噴射する複数本の高圧水チューブとを、複数本の高圧水チューブで、1本の圧縮空気チューブを、半円状に取り囲むように、滞留水の中に設置し、複数本の高圧水チューブの内径を1本の圧縮空気チューブの内径よりも小さくし、複数本の高圧水チューブの先端はL字状に屈折し、その出口部分は同じ方向を向き、複数本の高圧水チューブの出口部分は、1本の圧縮空気チューブの出口部分よりも下方に設置され、複数本の高圧水チューブから噴射される高圧水は水平方向に向けられ、1本の圧縮空気チューブから噴射される圧縮空気は鉛直方向に向けられ、堆積物の表面に圧縮空気チューブから圧縮空気を噴射して、堆積物の破砕片を滞留水の中に巻き上げ、高圧水チューブから高圧水を噴射して、堆積物の破砕片をサンドポンプの方向に押し流し、サンドポンプによって滞留水と堆積物とを懸濁水として吸引し、懸濁水を移送し、移送先で懸濁水を滞留水と堆積物とに分離し、堆積物を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建造物内の滞留水中に堆積物が堆積している場合であって、滞留水の上部が構造物(床やグレーチング)で覆われ、建造物内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法を提供することができる。
【0012】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】実施例1に記載する床4を穿孔する方法を説明する説明図である。
【
図1B】実施例1に記載する堆積物3を除去する方法を説明する説明図である。
【
図2】実施例2に記載するスラスタを有するサンドポンプ28により、穿孔部7より広い範囲の堆積物3を除去する方法を説明する説明図である。
【
図3】実施例3に記載するクローラを有するサンドポンプ29により、穿孔部7より広い範囲の堆積物3を除去する方法を説明する説明図である。
【
図4A】実施例4に記載するグレーチング44を穿孔する方法を説明する説明図である。
【
図4B】実施例4に記載する堆積物43を除去する方法を説明する説明図である。
【
図5A】実施例5に記載するグレーチング44を穿孔する方法を説明する説明図である。
【
図5B】実施例5に記載する堆積物43を除去する方法を説明する説明図である。
【
図6】実施例5に記載する圧縮空気チューブ94と高圧水チューブ95との配置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して、説明する。なお、実質的に、同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【0015】
本実施例では、堆積物を吸引するサンドポンプが、滞留水中に投下される。そして、サンドポンプは、サンドポンプの下部に設置されるインペラを回転させ、滞留水と堆積物とを懸濁させ、懸濁水として吸引する。
【0016】
つまり、本実施例では、サンドポンプを、滞留水中で使用する。このため、滞留水上の構造物(床やグレーチングからなるフロア)に、少なくともサンドポンプが通過することができる穿孔部を形成する必要がある。
【0017】
一方、本実施例で記載する堆積物除去方法は、滞留水よりも比重の大きい堆積物を、効率よく吸引することができる。
【実施例1】
【0018】
まず、建造物内に滞留水中に堆積物が堆積している場合であって、滞留水の上部が構造物(床)で覆われ、建造物内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合に、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法を説明する。
【0019】
図1Aは、実施例1に記載する床4を穿孔する方法を説明する説明図である。
【0020】
実施例1では、建造物1の底部に、滞留水2と堆積物3とが溜まっている。滞留水2の上部が、床4で覆われている場合、堆積物3を除去するケースである。
【0021】
まず、建造物1の開口部5の外側に前室6を設置する。建造物1内の気体が、直接外気に漏洩しないようにする。
【0022】
開口部5から自走式の穿孔装置11を進入させ、床4の上を走行させる。
【0023】
穿孔装置11は、高圧水と共にアブレイシブ(研磨剤)を噴射するアブレイシブウォータジェットで、床4を穿孔する機能を有する。
【0024】
そして、前室6には、コントローラ12、アブレイシブ供給装置13、水槽14、高圧ポンプ15が設置され、穿孔装置11だけが、建造物1内に進入する。
【0025】
コントローラ12で制御される穿孔装置11が、堆積物3を除去したい場所の上部に到達したら、アブレイシブ供給装置13及び水槽14からアブレイシブを含有する高圧水を噴射し、床4を穿孔する。つまり、穿孔部7は、ウォータジェット切断による穿孔により形成される。
【0026】
床4への穿孔が完了したら、穿孔装置11を走行させ、開口部5から穿孔装置11を回収する。
【0027】
図1Bは、実施例1に記載する堆積物3を除去する方法を説明する説明図である。
【0028】
開口部5から自走式の堆積物除去装置21を進入させ、床4の上を走行させる。
【0029】
そして、前室6には、コントローラ23、セパレータ27、堆積物回収容器24、上澄み水移送ポンプ26、上澄み水回収タンク25が設置され、堆積物除去装置21だけが、建造物1内に進入する。
【0030】
サンドポンプ22は、堆積物除去装置21に搭載される。
【0031】
コントローラ23で制御され堆積物除去装置21が、穿孔部7に到達したら、サンドポンプ22を、穿孔部7から、滞留水2へ投下する。
【0032】
サンドポンプ22は、サンドポンプ22の下部に設置されるインペラを回転させ、滞留水2と堆積物3とを懸濁させ、懸濁水として吸引する。吸引された懸濁水は、セパレータ27で固体(堆積物3)と液体(上澄み水)とに分離され、固体(堆積物3)は、堆積物回収容器24に、液体(上澄み水)は、上澄み水移送ポンプ26を介して、上澄み水回収タンク25に移送される。
【0033】
サンドポンプ22で懸濁水を吸引した際に、堆積物回収容器24で回収した固体成分が増加しているか否か調査し、堆積物3が除去されていることを確認する。
【0034】
つまり、滞留水2と堆積物3とを懸濁水として吸引し、懸濁水を移送し、移送先で懸濁水を滞留水2と堆積物3とに分離する。そして、懸濁水を吸引するに連れて、分離した堆積物3の量が増加することを確認する。
【0035】
予定量の堆積物3が除去された場合、サンドポンプ22を引き上げ、堆積物除去装置21に格納する。そして、堆積物除去装置21を走行させ、開口部5から堆積物除去装置21を回収する。
【0036】
これにより、建造物1内の滞留水2中に堆積物3が堆積している場合であって、滞留水2の上部が床4で覆われ、建造物1内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、特定箇所の堆積物3を部分的に除去することができる。そして、邪魔な堆積物3がある場合にも、建造物1内の別の場所に移動し、特定箇所の堆積物3を部分的に除去することができる。
【実施例2】
【0037】
次に、実施例2に記載するスラスタを有するサンドポンプ28により、穿孔部7より広い範囲の堆積物3を除去する方法を説明する。
【0038】
図2は、実施例2に記載するスラスタを有するサンドポンプ28により、穿孔部7より広い範囲の堆積物3を除去する方法を説明する説明図である。
【0039】
実施例2に記載する堆積物除去方法は、実施例1に記載する堆積物除去方法と比較して、スラスタ(プロペラ)を有するサンドポンプ28を使用し、懸濁水を吸引する点が相違する。
【0040】
なお、サンドポンプ22は、サンドポンプ22の下側の堆積物3しか吸引できないが、
図2に示すようなスラスタを有するサンドポンプ28を投下することにより、滞留水2中で、サンドポンプ28を水平方向に走査し、穿孔部7よりも、水平方向に広い範囲の堆積物3を除去することができる。
【0041】
つまり、サンドポンプ28は、滞留水2中で水平方向に移動する機構を有し、滞留水2中で水平方向に移動し、堆積物3を吸引し、堆積物3を除去する。
【0042】
これにより、建造物1内の滞留水2中に堆積物3が堆積している場合であって、滞留水2の上部が床4で覆われ、建造物1内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、更に広い範囲で、特定箇所の堆積物3を部分的に除去することができる。
【実施例3】
【0043】
次に、実施例3に記載するクローラを有するサンドポンプ29により、穿孔部7より広い範囲の堆積物3を除去する方法を説明する。
【0044】
図3は、実施例3に記載するクローラを有するサンドポンプ29により、穿孔部7より広い範囲の堆積物3を除去する方法を説明する説明図である。
【0045】
実施例3に記載する堆積物除去方法は、実施例1に記載する堆積物除去方法と比較して、クローラ(キャタピラ)を有するサンドポンプ29を使用し、懸濁水を吸引する点が相違する。
【0046】
なお、サンドポンプ22は、サンドポンプ22の下側の堆積物3しか吸引できないが、
図3に示すようなクローラを有するサンドポンプ29を投下することにより、滞留水2中で、サンドポンプ29を水平方向に走査し、穿孔部7よりも、水平方向に広い範囲の堆積物3を除去することができる。
【0047】
つまり、サンドポンプ29は、滞留水2中で水平方向に移動する機構を有し、滞留水2中で水平方向に移動し、堆積物3を吸引し、堆積物3を除去する。
【0048】
これにより、建造物1内の滞留水2中に堆積物3が堆積している場合であって、滞留水2の上部が床4で覆われ、建造物1内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、更に広い範囲で、特定箇所の堆積物3を部分的に除去することができる。
【実施例4】
【0049】
次に、建造物内に滞留水中に堆積物が堆積している場合であって、滞留水の上部が構造物(グレーチング)で覆われ、建造物内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合に、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法を説明する。
【0050】
図4Aは、実施例4に記載するグレーチング44を穿孔する方法を説明する説明図である。
【0051】
実施例4では、建造物41の底部に、滞留水42と堆積物43とが溜まっている。滞留水42の上部が、グレーチング44で覆われている場合、堆積物43を除去するケースである。
【0052】
まず、建造物41の開口部45の外側に前室46を設置する。建造物41内の気体が、直接外気に漏洩しないようにする。
【0053】
開口部45から自走式の穿孔装置51を進入させ、グレーチング44の上を走行させる。
【0054】
穿孔装置51は、放電加工で、グレーチング44を穿孔する機能を有する。
【0055】
そして、前室46には、コントローラ52、放電加工電源53が設置され、穿孔装置51だけが、建造物41内に進入する。
【0056】
コントローラ52で制御される穿孔装置51が、堆積物43を除去したい場所の上部に到達したら、放電加工電源53から電力を供給し、グレーチング44を穿孔する。つまり、穿孔部47は、放電加工による穿孔により形成される。
【0057】
グレーチング44への穿孔が完了したら、穿孔装置51を走行させ、開口部45から穿孔装置51を回収する。
【0058】
図4Bは、実施例4に記載する堆積物43を除去する方法を説明する説明図である。
【0059】
開口部45から自走式の堆積物除去装置61を進入させ、グレーチング44の上を走行させる。
【0060】
そして、前室46には、コントローラ63が設置され、堆積物除去装置61だけが、建造物41内に進入する。
【0061】
サンドポンプ62は、堆積物除去装置61に搭載される。また、金属網製の堆積物収容容器65が、グレーチング44の上に設置される。
【0062】
コントローラ63で制御され堆積物除去装置61が、穿孔部47に到達したら、サンドポンプ62を、穿孔部47から、滞留水42へ投下する。
【0063】
サンドポンプ62は、サンドポンプ62の下部に設置されるインペラを回転させ、滞留水42と堆積物43とを懸濁させ、懸濁水として吸引する。吸引した懸濁水は、堆積物収容容器65に吐出される。堆積物収容容器65は、金属網製であるため、堆積物43は、堆積物収容容器65内に残存し、滞留水42は、堆積物収容容器65の網及びグレーチング44を流通し、落下し、滞留水42に戻る。
【0064】
サンドポンプ62で懸濁水を吸引した際に、堆積物収容容器65で回収した固体成分が増加しているか否か調査し、堆積物43が除去されていることを確認する。
【0065】
つまり、滞留水42と堆積物43とを懸濁水として吸引し、懸濁水を移送し、移送先(堆積物収容容器65)で懸濁水を滞留水42と堆積物43とに分離する。そして、懸濁水を吸引するに連れて、分離した堆積物43の量が増加することを確認する。
【0066】
予定量の堆積物43が除去された場合、サンドポンプ62を引き上げ、堆積物除去装置61に格納する。そして、堆積物除去装置61を走行させ、開口部45から堆積物除去装置61を回収する。
【0067】
これにより、建造物41内の滞留水42中に堆積物43が堆積している場合であって、滞留水42の上部がグレーチング44で覆われ、建造物41内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、特定箇所の堆積物43を部分的に除去することができる。そして、邪魔な堆積物43がある場合にも、建造物41内の別の場所に移動し、特定箇所の堆積物43を部分的に除去することができる。
【0068】
なお、実施例4においても、実施例2又は実施例3と同様に、サンドポンプ62にスラスタやクローラを設置し、更に広い範囲で、特定箇所の堆積物43を部分的に除去することができる。
【実施例5】
【0069】
次に、建造物内に滞留水中に堆積物が堆積している場合であって、滞留水の上部が構造物(グレーチング)で覆われ、建造物内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合に、特定箇所の堆積物を部分的に除去する堆積物除去方法を説明する。
【0070】
図5Aは、実施例5に記載するグレーチング44を穿孔する方法を説明する説明図である。
【0071】
実施例5では、建造物41の底部に、滞留水42と堆積物43とが溜まっている。滞留水42の上部が、70mm×20mmの格子状の隙間を有するグレーチング44で覆われている場合、穿孔部47よりも、水平方向に広い範囲の堆積物43を、除去するケースである。
【0072】
まず、建造物41の開口部45の外側に前室46(図示省略)を設置する。建造物41内の気体が、直接外気に漏洩しないようにする。
【0073】
開口部45から自走式の穿孔装置51を進入させ、グレーチング44の上を走行させる。
【0074】
穿孔装置51は、放電加工で、グレーチング44を穿孔する機能を有する。
【0075】
そして、前室46には、コントローラ52(図示省略)、放電加工電源53(図示省略)が設置され、穿孔装置51だけが、建造物41内に進入する。
【0076】
コントローラ52で制御される穿孔装置51が、堆積物43を除去したい場所の上部に到達したら、放電加工電源53から電力を供給し、グレーチング44を穿孔する。つまり、穿孔部47は、放電加工による穿孔により形成される。
【0077】
グレーチング44への穿孔が完了したら、穿孔装置51を走行させ、開口部45から穿孔装置51を回収する。
【0078】
図5Bは、実施例5に記載する堆積物43を除去する方法を説明する説明図である。
【0079】
特に、実施例5では、圧縮空気と高圧水とを使用して、穿孔部47よりも、水平方向に広い範囲の堆積物43を除去する方法を説明する。
【0080】
開口部45から自走式の堆積物除去装置61を進入させ、グレーチング44の上を走行させる。
【0081】
そして、前室46には、コントローラ63(図示省略)が設置され、堆積物除去装置61だけが、建造物41内に進入する。
【0082】
サンドポンプ62は、堆積物除去装置61に搭載される。また、金属網製の堆積物収容容器65(図示省略)が、グレーチング44の上に設置される。
【0083】
コントローラ63で制御され堆積物除去装置61が、穿孔部47に到達したら、サンドポンプ62を、穿孔部47から、滞留水42へ投下する。
【0084】
更に、開口部45から自走式の堆積物吹寄せ装置93を進入させ、堆積物除去装置61の近傍まで走行させる。そして、堆積物吹寄せ装置93から、グレーチング44の隙間を通過することができる外径の圧縮空気チューブ94と高圧水チューブ95とを、滞留水42中に設置する。
【0085】
なお、圧縮空気チューブ94に供給される圧縮空気及び高圧水チューブ95に供給される高圧水は、前室46から供給される。
【0086】
堆積物43の表面に、圧縮空気チューブ94から圧縮空気を噴射し、堆積物43の破砕片を、滞留水42中に巻き上げる。そして、高圧水チューブ95から高圧水を噴射し、滞留水42中に水流を発生させ、堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に押し流す。これにより、サンドポンプ62から離れた場所に位置する堆積物43もサンドポンプ62で吸引することができる。
【0087】
サンドポンプ62は、サンドポンプ62の下部に設置されるインペラを回転させ、滞留水42と堆積物43とを懸濁させ、懸濁水として吸引する。吸引した懸濁水は、堆積物収容容器65に吐出される。堆積物収容容器65は、金属網製であるため、堆積物43は、堆積物収容容器65内に残存し、滞留水42は、堆積物収容容器65の網及びグレーチング44を流通し、落下し、滞留水42に戻る。
【0088】
サンドポンプ62で懸濁水を吸引した際に、堆積物収容容器65で回収した固体成分が増加しているか否か調査し、堆積物43が除去されていることを確認する。
【0089】
つまり、滞留水42と堆積物43とを懸濁水として吸引し、懸濁水を移送し、移送先(堆積物収容容器65)で懸濁水を滞留水42と堆積物43とに分離する。そして、懸濁水を吸引するに連れて、分離した堆積物43の量が増加することを確認する。
【0090】
予定量の堆積物43が除去された場合、サンドポンプ62を引き上げ、堆積物除去装置61に格納する。そして、堆積物除去装置61を走行させ、開口部45から堆積物除去装置61を回収する。
【0091】
このように実施例5に記載する堆積物除去方法は、建造物41内の滞留水42中に堆積物43が堆積している場合であって、滞留水43の上部がグレーチング44で覆われる場合であり、特定箇所の堆積物43を部分的に除去するものであって、滞留水42の上部のグレーチング44の特定箇所を穿孔して、グレーチング44に穿孔部47を形成し、穿孔部47からサンドポンプ62を滞留水42に投下し、堆積物43を吸引し、堆積物43を除去するものである。
【0092】
そして、実施例5に記載する堆積物除去方法は、
(1)建造物41内の滞留水42中に堆積物43が堆積している場合であって、滞留水43の上部がグレーチング44で覆われる場合であり、特定箇所の堆積物43を部分的に除去するものであって、
(2)まず、建造物41の小さな開口部45から、滞留水42の上部のグレーチング44に、自走式の穿孔装置51を進入させ、グレーチング44の特定箇所を穿孔し、グレーチング44に穿孔部47を形成し、
(3)次に、建造物41の小さな開口部45から、滞留水42の上部のグレーチング44に、自走式の堆積物除去装置61を進入させ、穿孔部47からサンドポンプ62を滞留水42に投下し、堆積物43を吸引し、堆積物43を除去するものである。
【0093】
更に、実施例5に記載する堆積物除去方法は、圧縮空気を噴射する圧縮空気チューブ94と高圧水を噴射する高圧水チューブ95とを設置し、堆積物43の表面に、圧縮空気チューブ94から圧縮空気を噴射し、堆積物43の破砕片を、滞留水42中に巻き上げ、高圧水チューブ95から高圧水を噴射し、滞留水42中に水流を発生させ、堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に押し流す。
【0094】
これにより、建造物41内の滞留水42中に堆積物43が堆積している場合であって、滞留水42の上部がグレーチング44で覆われ、建造物41内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、簡易な装置により、特定箇所の堆積物43を部分的に除去することができる。そして、邪魔な堆積物43がある場合にも、建造物41内の別の場所に移動し、特定箇所の堆積物43を部分的に除去することができる。
【0095】
更に、堆積物吹寄せ装置93に搭載される圧縮空気チューブ94と高圧水チューブ95とを使用することにより、一か所の穿孔部47からでも、水平方向に広い範囲の堆積物43を除去することができる。
【0096】
また、実施例5に記載する圧縮空気チューブ94と高圧水チューブ95との配置を説明する。
【0097】
図6は、実施例5に記載する圧縮空気チューブ94と高圧水チューブ95との配置を説明する説明図である。
【0098】
図6に示すように、実施例5では、1本の圧縮空気チューブ94と複数本(実施例5では5本)の高圧水チューブ95(95a、95b、95c、95d、95e)とを設置する。そして、5本の高圧水チューブで、圧縮空気チューブ94を、半円状に、取り囲むように設置し、堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に、押し流す。これにより、堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に、効率よく押し流すことができる。
【0099】
更に、圧縮空気チューブ94の外径及び5本の高圧水チューブ95の外径は、20mm以下である。そして、5本の高圧水チューブ95の内径は、圧縮空気チューブ94の内径よりも小さくし、堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に、押し流す。これにより、滞留水42中で、固着状態で堆積している堆積物43を、圧縮空気で、効率よく粉砕し、堆積物43の破砕片を巻き上げることができる。
【0100】
更に、5本の高圧水チューブ95は、先端がL字状に屈折し、その出口部分は同じ方向に向いている。屈折部分の長さは70mm以下である。これにより、堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に、効率よく押し流すことができる。
【0101】
更に、5本の高圧水チューブ95の出口部分は、圧縮空気チューブ94の出口部分よりも下方に設置される。そして、5本の高圧水チューブ95から放出される高圧水は、水平方向に向けられ、圧縮空気チューブ94から放出される圧縮空気は、鉛直方向に向けられる。
【0102】
これにより、滞留水42中で、固着状態で堆積している堆積物43を、圧縮空気で、粉砕すると共に、効率よく堆積物43の破砕片を巻き上げ、積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に、効率よく押し流すことができる。
【0103】
そして、このように5本の高圧水チューブ95を、設置することにより、同じ方向に高圧水を放出することができ、滞留水43中で、サンドポンプ62の方向へ向かう幅広く、強い流れを形成することができる。
【0104】
更に、圧縮空気チューブ94の圧縮空気は、堆積物43の破砕片を、巻き上げる。つまり、実施例5では、滞留水42中で、固着状態で堆積している堆積物43を、圧縮空気で、粉砕し、堆積物43の破砕片を巻き上げる。
【0105】
そして、5本の高圧水チューブ95の高圧水は、幅広く、強い流れで、巻き上げた堆積物43の破砕片を、サンドポンプ62の方向に、確実に押し流す。
【0106】
なお、5本の高圧水チューブ95には、屈折しているL字状の先端に、高圧水チューブ95の出口方向を固定する部材を設置してもよい。
【0107】
また、実施例5に記載する堆積物除去方法は、堆積物43の下に埋もれているものを調査するために、特定箇所の堆積物43を部分的に除去するような場合であっても、適用することができる。
【0108】
実施例5によれば、小型であって、遠隔操作の簡易な自走式である穿孔装置51、堆積物除去装置61、堆積物吹寄せ装置93を使用することにより、建造物41内の滞留水42中に堆積物43が堆積している場合であって、滞留水42の上部がグレーチング44で覆われ、建造物41内に有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、特定箇所の堆積物43を部分的に除去することができる。
【0109】
また、実施例5によれば、作業員が建造物41内に進入する必要はなく、このため、建造物41内の閉鎖空間に、有毒ガスなどが発生している可能性がある場合であっても、作業員は、安全に、建造物41内の滞留水42中に堆積している堆積物43を除去することができる。
【0110】
また、実施例5によれば、既設で、底面が水平な建造物41内の滞留水42中に堆積している堆積物43にも使用することができる。
【0111】
また、実施例5によれば、滞留水42の上部にグレーチング44があり、装置の設置に空間的な制約があり、狭隘な建造物41内であっても使用することができる。
【0112】
また、実施例5によれば、水平走査機能を有さないサンドポンプ62を使用しても、穿孔部47よりも、水平方向に広い範囲の堆積物43を除去することができる。
【0113】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0114】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【符号の説明】
【0115】
1、41・・・建造物、2、42・・・滞留水、3、43・・・堆積物、4・・・床、44・・・グレーチング、5、45・・・開口部、6、46・・・前室、7、47・・・穿孔部、11、51・・・穿孔装置、12、23、52、63・・・コントローラ、13・・・アブレイシブ供給装置、14・・・水槽、15・・・高圧ポンプ、21、61・・・堆積物除去装置、22、62・・・サンドポンプ、24・・・堆積物回収容器、25・・・上澄み水回収タンク、26・・・上澄み水移送ポンプ、27・・・セパレータ、28・・・スラスタを有するサンドポンプ、29・・・クローラを有するサンドポンプ、53・・・放電加工電源、65・・・堆積物収容容器、93・・・堆積物吹寄せ装置、94・・・圧縮空気チューブ、95・・・高圧水チューブ。