(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電線保持具及び治具板
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01B13/012 D
(21)【出願番号】P 2020104573
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 昭久
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-023349(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を保持する保持部と、
前記保持部を支持する支持部と、
前記保持部又は前記支持部から、前記保持部を通り前記保持部に保持された前記電線の径方向に沿う平面と交わる方向に突出した突起部と、
を備え
、
前記保持部は、前記電線が載置される底部と、前記底部から少なくとも水平面より上方に延伸した延伸部と、を有し、
前記突起部と前記底部との距離は、前記電線に巻かれるロール状テープが巻かれる芯部材の直径以内である
電線保持具。
【請求項2】
前記突起部は、前記保持部又は前記支持部に着脱可能に構成される
請求項1に記載の電線保持具。
【請求項3】
前記平面は、前記底部と前記延伸部とを含む面である
請求項1又は2に記載の電線保持具。
【請求項4】
前記突起部は、前記延伸部の長さと同程度の長さを少なくとも有する
請求項
1~3のいずれか一項に記載の電線保持具。
【請求項5】
電線が配索される治具板であって、
平板状の治具板本体と、
前記治具板本体に固定された、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電線保持具と、
前記電線に位置決め用テープを巻くべき箇所を視認可能に示すよう、前記治具板
本体上に設けられたテープ位置指示部と、を備え、
前記支持部は、前記治具板
本体上において前記テープ位置指示部の近傍に突設され、
前記突起部は、前記テープ位置指示部との間に
前記底部と前記延伸部とを含む面である前記平面を挟むように突出する
治具板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線保持具及び治具板に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの製造工程において、組立図板(治具板)上に突設したU字状の電線保持具(Uフォーク)に複数本の電線を束ねて配置し、仕様に応じて電線束の外周面にテープ巻きするテープ巻き工程がある(例えば、特許文献1参照。)。テープ巻き工程では、Uフォークの位置を基準とした電線束の所定位置に、位置決め用のテープ巻きを行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、位置決め用のテープ巻きを行う位置が明確に指示されていない場合、Uフォークに中央を保持された電線束の左右いずれ側にテープを巻けばよいか作業者が把握できず、誤った側にテープを巻いたり、作業効率が低下したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、指示通りのテープ巻き作業を正確にかつ効率よく行うことを可能とする電線保持具及び治具板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電線保持具及び治具板は、下記(1)~(5)を特徴としている。
(1) 電線を保持する保持部と、
前記保持部を支持する支持部と、
前記保持部又は前記支持部から、前記保持部を通り前記保持部に保持された前記電線の径方向に沿う平面と交わる方向に突出した突起部と、
を備え、
前記保持部は、前記電線が載置される底部と、前記底部から少なくとも水平面より上方に延伸した延伸部と、を有し、
前記突起部と前記底部との距離は、前記電線に巻かれるロール状テープが巻かれる芯部材の直径以内である
電線保持具。
(2) 前記突起部は、前記保持部又は前記支持部に着脱可能に構成される
上記(1)に記載の電線保持具。
(3) 前記平面は、前記底部と前記延伸部とを含む面である
上記(1)又は(2)に記載の電線保持具。
(4) 前記突起部は、前記延伸部の長さと同程度の長さを少なくとも有する
上記(1)~(3)のいずれか一に記載の電線保持具。
(5) 電線が配索される治具板であって、
平板状の治具板本体と、
前記治具板本体に固定された、上記(1)~(4)のいずれか一に記載の電線保持具と、
前記電線に位置決め用テープを巻くべき箇所を視認可能に示すよう、前記治具板本体上に設けられたテープ位置指示部と、を備え、
前記支持部は、前記治具板本体上において前記テープ位置指示部の近傍に突設され、
前記突起部は、前記テープ位置指示部との間に前記底部と前記延伸部とを含む面である前記平面を挟むように突出する
治具板。
【0007】
上記(1)、上記(3)、上記(4)の構成の電線保持具及び上記(5)の構成の治具板によれば、電線保持具に電線を保持させて位置決めテープを巻く際、テープを巻くべき箇所と反対側に突起部を突出させれば、作業者は、突起部とテープとの干渉を避けて、突起部がない側にテープを巻くこととなる。よって、作業者は、指示通りの位置に効率よくテープ巻き作業を行うことができる。
更に、上記(1)、上記(3)、上記(4)の構成の電線保持具及び上記(5)の構成の治具板によれば、突起部が設けられた側にテープを巻こうとすると、テープと突起部とが干渉してテープ巻き作業が行えないため、作業者が誤った側にテープを巻くことを確実に防止できる。
更に、上記(1)、上記(3)、上記(4)の構成の電線保持具及び上記(5)の構成の治具板によれば、Uフォーク等の電線保持具に誤巻き防止の突起部を設けることができる。
【0008】
上記(2)の構成の電線保持具によれば、突起部を外すことで、位置決めテープを巻く箇所以外にも電線保持具を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、指示通りのテープ巻き作業を正確にかつ効率よく行うことを可能とする電線保持具及び治具板を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態のUフォークを備えた治具板を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の治具板上でワイヤハーネスにテープを巻いた状態を示す図である。
【
図3】
図3は、底部と誤巻き防止部との距離を変化させた二種類のUフォークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のUフォーク10を備えた治具板1を示す図であり、
図2は、
図1の治具板1上でワイヤハーネスWHに位置決め用テープTを巻いた状態を示す図である。治具板1は、車両に用いられるワイヤハーネスWHを製造するにあたり、複数本の電線が束ねられた電線束が配索される布線用治具板である。治具板1には、外周にビニルテープが巻かれて結束された電線束が配索されて、電線束における、仕様に応じて指定された箇所に、位置決め用テープTを巻くテープ巻き作業が行われる。位置決め用テープTは、ワイヤハーネスWHを車両に取り付ける際の目印となる。
【0016】
治具板1は、平板状の治具板本体5と、治具板本体5に固定されたUフォーク10と、治具板本体5上に配置され、位置決め用テープTを巻くべき箇所を視認可能に示すテープ位置指示部20と、を備える。
【0017】
Uフォーク10は、ワイヤハーネスWHを保持する保持部11と、保持部11を支持する支柱12と、支柱12の下部を治具板本体5に固定する固定部13と、支柱12から突出した突起部である誤巻き防止部14と、を有する。
【0018】
保持部11は、ワイヤハーネスWHが載置される底部11aと、底部11aから鉛直上方(少なくとも水平面より上方)に延伸した二本の延伸部11bと、を有し、U字形状をなす。
【0019】
誤巻き防止部14は、延伸部11bとの長さと同程度の長さを少なくとも有するロッドであり、支柱12に着脱可能に構成される。誤巻き防止部14は、底部11aと二本の延伸部11bとを含む平面(保持部11を通り保持部11に保持されたワイヤハーネスWHの径方向に沿う平面)と交わる方向に突出する。本実施形態において、誤巻き防止部14は、前記平面の法線方向に突出する。
【0020】
テープ位置指示部20は、ワイヤハーネスWHにおける位置決め用テープTを巻くべき箇所に対応する位置に配置される矩形枠である。作業者は、Uフォーク10に載置されたワイヤハーネスWHの配索方向の、テープ位置指示部20が配置された側(
図2においては、Uフォーク10の右側)に、位置決め用テープTを巻く。テープ位置指示部20には、位置決め用テープTの巻き付け回数が表示されてもよい。
【0021】
Uフォーク10は、支柱12が、治具板本体5上において、テープ位置指示部20に隣接する位置に突設され、誤巻き防止部14が、テープ位置指示部20との間に前記平面を挟むように突出する。
【0022】
図2に示すように、Uフォーク10にワイヤハーネスWHを保持させて位置決め用テープTを巻く際、位置決め用テープTを巻くべき箇所と反対側に誤巻き防止部14を突出させておく。このようにすれば、作業者は、誤巻き防止部14と位置決め用テープTとの干渉を避けて、誤巻き防止部14がない側に位置決め用テープTを巻くこととなる。誤巻き防止部14がない通常のUフォークの場合には、テープ位置指示部20が示されていても、作業者は、Uフォークの左右いずれ側にテープを巻くべきか迷ったり、誤った側にテープを巻いたりする場合がある。しかし、誤巻き防止部14を有するUフォーク10の場合、作業者は、迷うことなく、誤巻き防止部14を避けて、正しい側にテープを巻くこととなる。よって、作業者は、指示通りの位置に効率よくテープ巻き作業を行うことができる。
【0023】
図3は、誤巻き防止部14と底部11aとの距離を変化させた二種類のUフォーク10a、10bを示す図である。
図3(a)に示すUフォーク10aは、誤巻き防止部14と底部11aとの距離a
1がロール状の位置決め用テープTの直径d以内である。
図3(b)に示すUフォーク10bは、誤巻き防止部14と底部11aとの距離a
2がロール状の位置決め用テープTの直径dより長い。Uフォーク10bは、誤巻き防止部14が突出している側においても位置決め用テープTと誤巻き防止部14とが干渉せず、作業者は誤った側にテープを巻いてしまう場合がある。一方、Uフォーク10aは、誤巻き防止部14が突出している側では位置決め用テープTと誤巻き防止部14とが干渉する。このため、誤巻き防止部14と底部11aとの距離a
1がロール状の位置決め用テープTの直径d以内であれば、作業者が誤った側にテープを巻くことを確実に防止できる。
【0024】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、誤巻き防止部14の形状は、上述したものに限定されない。
【0025】
誤巻き防止部14を、支柱12に着脱可能に構成してもよい。誤巻き防止部14を支柱12から外すことで、位置決め用テープTを巻く箇所以外にも、治具板本体5上の所定位置にUフォーク10を用いることができる。また、誤巻き防止部14を保持部11から突出するように設けてもよい。さらに、誤巻き防止部14の形状、大きさ及び突出方向は、上述のものに限定されない。誤巻き防止部14の形状、大きさ及び突出方向は、保持部11を通り保持部11に保持されたワイヤハーネスWHの径方向に沿う平面の一面側において、ワイヤハーネスWHに巻かれるテープと誤巻き防止部14とが干渉するものであればよい。
【0026】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る電線保持具及び治具板の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電線(ワイヤハーネスWH)を保持する保持部(11)と、
前記保持部を支持する支持部(支柱12)と、
前記保持部又は前記支持部から、前記保持部を通り前記保持部に保持された前記電線の径方向に沿う平面と交わる方向に突出した突起部(誤巻き防止部14)と、
を備える電線保持具(Uフォーク10)。
[2] 前記突起部は、前記保持部又は前記支持部に着脱可能に構成される
上記[1]に記載の電線保持具。
[3] 前記保持部は、前記電線が載置される底部(11a)と、前記底部から少なくとも水平面より上方に延伸した延伸部(11b)と、を有し、
前記平面は、前記底部と前記延伸部とを含む面である
上記[1]又は[2]に記載の電線保持具。
[4] 前記突起部と前記底部との距離(a1)は、前記電線に巻かれるロール状テープ(位置決め用テープT)の直径以内である
上記[3]に記載の電線保持具。
[5] 前記突起部は、前記延伸部の長さと同程度の長さを少なくとも有する
上記[3]又は[4]に記載の電線保持具。
[6] 電線が配索される治具板(1)であって、
平板状の治具板本体(5)と、
前記治具板本体に固定された、上記[1]~[5]のいずれか一に記載の電線保持具(Uフォーク10)と、
前記電線に位置決め用テープを巻くべき箇所を視認可能に示すよう、前記治具板本体上に設けられたテープ位置指示部(20)と、を備え、
前記支持部は、前記治具板本体上において前記テープ位置指示部の近傍に突設され、
前記突起部は、前記テープ位置指示部との間に前記平面を挟むように突出する
治具板(1)。
【符号の説明】
【0027】
1 治具板
5 治具板本体
10 Uフォーク
10a Uフォーク
10b Uフォーク
11 保持部
11a 底部
11b 延伸部
12 支柱
13 固定部
14 誤巻き防止部(突起部)
20 テープ位置指示部
T 位置決め用テープ
WH ワイヤハーネス