(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/34 20200101AFI20240326BHJP
H02P 21/00 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
G01R31/34 A
G01R31/34 F
H02P21/00
(21)【出願番号】P 2020109490
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】望月 慶佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義樹
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-75868(JP,A)
【文献】特開2018-153028(JP,A)
【文献】特開2004-64864(JP,A)
【文献】特開2009-195106(JP,A)
【文献】特開2015-80344(JP,A)
【文献】特開2014-113026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/34
G01R 31/00
H02P 21/00
H02P 11/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込む電流データ読込部と、
前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分ける周期単位切り分け部と、
前記三相電流データを二相電流データに変換する三相二相変換部と、
前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして出力する誤差算出部と、
前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力する処理出力部と、
を備える分析装置。
【請求項2】
前記処理出力部は、前記誤差を拡大し、所定の単位円上に前記周期単位で重畳させる処理を複数の前記周期単位分行い、前記処理結果の出力として、拡大した前記誤差を重畳させた前記単位円を複数の前記周期単位分重ねて、所定の表示部に描画する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記処理出力部は、ひずみ評価値算出部と、ばらつき評価値算出部と、異常度算出部とを有し、
前記ひずみ評価値算出部が、前記誤差の前記周期単位内のばらつきに対応する値を、ひずみ評価値として算出し、
前記ばらつき評価値算出部が、前記誤差の複数の前記周期単位間のばらつきに対応する値を、ばらつき評価値として算出し、
前記異常度算出部が、前記ひずみ評価値と前記ばらつき評価値に基づいて異常の度合いを表す異常度を算出し、前記処理結果として前記異常度または前記異常度と所定の閾値とを比較した判定結果の少なくとも一方を出力する
請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記基準データは、前記ベクトルの大きさの理想値に対応し、
前記誤差算出部は、前記ベクトルの大きさと前記基準データとの差を前記誤差として算出する
請求項1から3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記基準データは、正常時にサンプリングされた前記三相電流データに基づく前記二相電流データに対応し、
前記誤差算出部は、前記ベクトルと前記基準データとを前記周期単位で比較することで前記誤差を算出する
請求項1から3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記三相電流データを補間してサンプル数を増やすデータ補間部をさらに備え、
前記周期単位切り分け部が、前記データ補間部によって補間された前記三相電流データを前記三相交流の周期単位で切り分ける
請求項1から5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
1周期分のサンプル数が一定値となるように前記三相電流データを正規化する位相軸正規化部をさらに備え、
前記三相二相変換部が、前記位相軸正規化部によって正規化された前記三相電流データを前記二相電流データに変換する
請求項1から6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
電流振幅が所定値となるように前記三相電流データを正規化する電流振幅正規化部をさらに備え、
前記三相二相変換部が、前記電流振幅正規化部によって正規化された前記三相電流データを前記二相電流データに変換する
請求項1から7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記ひずみ評価値算出部が、前記周期単位内の複数点で複数の前記周期単位の各前記誤差の平均値を求め、前記各平均値の標準偏差に対応する値を、前記ひずみ評価値として算出し、
前記ばらつき評価値算出部が、前記周期単位内の複数点で複数の前記周期単位の各前記誤差の標準偏差を求め、前記各標準偏差の平均値に対応する値を、前記ばらつき評価値として算出し、
前記異常度算出部が、前記ひずみ評価値に第1重み係数を乗じた値と前記ばらつき評価値に第2重み係数を乗じた値とを加算した値を前記異常度として算出する
請求項3に記載の分析装置。
【請求項10】
電動機に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込むステップと、
前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分けるステップと、
前記三相電流データを二相電流データに変換するステップと、
前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして出力するステップと、
前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力するステップと、
を含む分析方法。
【請求項11】
電動機に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込むステップと、
前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分けるステップと、
前記三相電流データを二相電流データに変換するステップと、
前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして出力するステップと、
前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析装置、分析方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ電流を用いた異常診断技術としては、特許文献1に記載のように電流波形(理想は正弦波)の振幅確率密度を理想電流(正弦波)と実測電流で比較する方法や、特許文献2に記載のように電流実効値を監視して閾値比較により異常診断を行う技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-257362号公報
【文献】特開2013-050294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の異常診断技術では、モータや補機類の異常が電流へ与える影響が、振幅確率密度や電流実効値という数値としてしか現れないため、例えば異常の有無を視覚的に理解しづらかったりする等、分析が不適切になってしまう場合があるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、モータや補機類の異常が電流へ与える影響を適切に分析することができる分析装置、分析方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る分析装置は、電動機に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込む電流データ読込部と、前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分ける周期単位切り分け部と、前記三相電流データを二相電流データに変換する三相二相変換部と、前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして出力する誤差算出部と、前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力する処理出力部と、を備える。
【0007】
本開示に係る分析方法は、電動機に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込むステップと、前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分けるステップと、前記三相電流データを二相電流データに変換するステップと、前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして出力するステップと、前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力するステップと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、電動機に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込むステップと、前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分けるステップと、前記三相電流データを二相電流データに変換するステップと、前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして出力するステップと、前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の分析装置、分析方法およびプログラムによれば、電動機(モータ)や補機類の異常が電流へ与える影響を適切に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る分析装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図13】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図14】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図15】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図16】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図17】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図18】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図19】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図20】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図21】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図22】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図23】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
【
図24】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
【
図25】本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図26】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(分析装置の構成)
以下、本開示の実施形態に係る分析装置、分析方法およびプログラムについて、
図1~
図25を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る分析装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を示すフローチャートである。
図3~
図11、
図20、
図22および
図24は、本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための波形図である。
図12~
図19、
図21、および
図23は、本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための位相面である。
図25は、本開示の実施形態に係る分析装置の動作例を説明するための模式図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
図1に示す本開示の実施形態に係る分析装置1は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータ、そのコンピュータの周辺装置等から構成されていて、コンピュータ、周辺装置等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせで構成される機能的構成として、処理部11と、記憶部12と、表示部13を備える。ここで、記憶部12は、処理部11が使用するデータ等を記憶する。また、表示部13は、所定の表示画面に処理部11によって指示された文字や図形を表示する。
【0013】
図1に示す分析装置1は、電源盤5から電動機3に供給される三相電流Iu、IvおよびIwの測定値を用いて、電動機3およびポンプ等の回転機械である補機4の異常分析や異常診断を行う。
図1に示す例では、電動機3へは、電源盤5が含む商用電源等の電源51から開閉器52と三相電源線53を介して三相電流Iu、IvおよびIwが供給される。電動機3は、例えば三相誘導電動機等の三相交流電動機であり、駆動軸31を介して補機4に接続され、補機4を回転駆動する。また、測定装置2は、電流センサ21を用いて三相電源線53に流れる三相電流Iu、IvおよびIwを測定し、所定の周期でサンプリングして三相電流データを生成し、分析装置1に対して出力する。なお、測定装置2は、三相電流データを、三相電流Iu、IvおよびIwのうちの2相分の測定値と、Iu+Iv+Iw=0の関係式から算出した残りの値から生成してもよい。なお、電動機3は、三相電源線53から供給される三相電源で直接、駆動されるものであってもよいし、インバータやコンバータ等を介して駆動されるものであってもよい。また、測定装置2から分析装置1への三相電流データの転送は、リアルタイム処理としてもよいし、バッチ処理としてもよい。
【0014】
分析装置1において処理部11は、電流データ読込部111、データ補間部112、周期単位切り分け部113、位相軸正規化部114、電流振幅正規化部115、三相二相変換部116、位相面誤差半径算出部117、および処理出力部118を含む。また、処理出力部118は、位相面誤差半径拡大部1181、誤差拡大位相面描画部1182、形状ひずみ評価値算出部1183、半径ばらつき評価値算出部1184、および位相面異常度算出部1185を含む。
【0015】
電流データ読込部111は、電動機3に供給される三相電流Iu、IvおよびIwをサンプリングしたデータである三相電流データをメインメモリ等へ読み込む。電流データ読込部111は、測定装置2から三相電流データを読み込んでもよいし、前もって記憶部12に保存された三相電流データを読み込んでもよい。三相電流Iu、IvおよびIwの一例を
図3に示す。
図3は、横軸を時刻、縦軸を電流値として、三相電流Iu、IvおよびIwの時間変化を示す。
【0016】
次に、データ補間部112は、電流データ読込部111が読み込んだ三相電流データを補間して三相電流データのサンプル数を増加させる。また、周期単位切り分け部113は、三相電流データを三相交流の周期単位で切り分ける。すなわち、周期単位切り分け部113は、電流波形を1周期毎に切り分ける処理を行う。周期単位の切り分けは、例えば、1相の電流(例えば電流Iu)の電流ゼロクロス点を探索して、同一のサンプリング番号(あるいはサンプリング時刻)で三相分すべての電流を切り分けることで行うことができる。なお、本実施形態において、「切り分け」は各周期の開始あるいは終了のサンプリングデータを特定すること、「切り出し」は切り分け処理の結果に基づき周期毎にサンプリングデータを分離して取り出すことを意味する用語として用いる。
【0017】
なお、切り分けの際、電流のデータサンプリング(保存周期)が粗いと、切り分けの位置が電流ゼロクロス点に揃わなくなる場合がある。そのような場合、周期単位切り分け部113は、データ補間部112によって三相電流データをより細かいサンプリングに補間してから切り分けることができる。ただし、このデータ補間部112によるデータ補間処理は省略してもよい。また、データ補間部112によるデータ補間では、線形補間やスプライン(Spline)補間のような連続的な滑らかな補間を行うと、元データにおける電流のひずみが平滑化される恐れがあるため、形状維持区分的3次内挿法等の手法を用いることが望ましい。
図4は、横軸を時刻、縦軸を電流値として、電流Iuの切り分けの結果を示す。生データが未処理の状態の三相電流データ、破線が補間後1周期目の三相電流データ、鎖線が補間後2周期目の三相電流データを表す。また、
図5および
図6は、横軸を時刻、縦軸を電流値として、電流Iuの補間の例を示す。また、
図7は、横軸を時刻、縦軸を電流値として、電流Iuを切り出した波形を重ね書きした例(60周期分重ね書きした例)を示す。なお、本実施形態の説明で用いる波形図における交流周波数は60Hzである。
【0018】
次に、位相軸正規化部114は、1周期分のサンプル数が一定値となるように三相電流データを正規化する。切り出した電流データの時間軸には、もともとの電流の周期ばらつきとゼロクロス検出のわずかな誤差が含まれる。また、電源の50Hz/60Hzの違いもあるため、様々なデータを統一的に評価するためには横軸を正規化する必要がある。そこで、位相軸正規化部114は、電流波形図における横軸を時刻から0~360度の位相とし、決まったサンプル数となるように、データを補間する。補間手法としては、データ補間部112と同様の手法を用いることができる。
【0019】
次に、電流振幅正規化部115は、電流振幅が所定値となるように三相電流データを正規化する。電流振幅正規化部115は、データ(測定対象)によって電流振幅が異なるため、後述する各処理を画一化できるようにするため、振幅を正規化する。例えば、電流振幅正規化部115は、測定対象時間分(1秒間なら60周期分)の三相電流の平均振幅が1となるように電流振幅を正規化する。なお、相毎に正規化すると、1相だけ振幅が変化するような異常事象を捉えられなくなるため、三相全て同じ値で正規化する。
【0020】
図8は、横軸を位相、縦軸を電流値として、縦軸と横軸を正規化した後の電流Iuの例(60周期分重ね書きした例)を示す。横軸の単位「deg.pu」は正規化した位相(度)を表し、縦軸の単位「A.pu」は正規化した電流値(アンペア)を表す。
【0021】
次に、三相二相変換部116は、Park変換またはdq変換と呼ばれる以下の式(1)で三相電流データの各サンプリング値Iu、Iv、Iwを二相電流データId、Iqに変換する。
【0022】
【0023】
また、三相二相変換部116は、以下の式(2)で、Park’s Vector Ipを求める。このIpは、Id、Iqからなる位相面の円の半径を意味する。また、Ip(以下、位相面半径Ipという。)は、水平成分および垂直成分をIdおよびIqとするベクトルの大きさを表す。
【0024】
【0025】
以上から、三相電流が振幅Imで位相が120度ずつずれた理想正弦波の場合に、理想的なdq軸電流は以下の式で表される。
【0026】
【0027】
なお、位相面とは、複数種類のデータを2つの組み合わせに分け、縦軸と横軸に同一時刻毎のデータをプロットしたグラフ(図)である(特開2017-211829号公報)。本実施形態において、位相面は、二相電流データIdとIqを横軸と縦軸にとり、同一時刻のIdとIqで決まる座標をプロットしたグラフである。データにわずかな変化が生じたとき、時間応答における変化では同じような応答波形になり、見分けることが困難なケースは多いが、位相面上ではわずかな変化でも図形的に拡大できる効果があり、形状の違いから特性変化を捉えることができる。
【0028】
図9は、横軸を位相、縦軸を電流値として、二相電流データIdおよびIqと位相面半径Ipの例を示す。
【0029】
次に、位相面誤差半径算出部117(誤差算出部)は、二相電流データの各相IdおよびIqを水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を算出して誤差データとして位相面誤差半径拡大部1181等へ出力する。ここで、基準データは、二相電流データの各相IdおよびIqを水平成分および垂直成分とするベクトルに対して比較基準となるデータであって、正常時のデータである。基準データは、例えば、ベクトルの大きさ(位相面半径Ip)の理想値(計算値)に対応するものとしたり、正常時にサンプリングされた三相電流データに基づく二相電流データに対応するものとしたりすることができる。また、処理出力部118が含む位相面誤差半径拡大部1181は、位相面誤差半径算出部117が算出した誤差を拡大する。
【0030】
例えば、位相面誤差半径算出部117は、三相二相変換部116が式(2)から算出した位相面半径Ipから、Ip理想値(一定値の基準データ)を減算することで誤差を算出することができる。すなわち、位相面誤差半径算出部117は、算出された位相面半径Ipから式(3.3)に示す振幅Im×√6/2を減算することで、位相面半径Ipと基準データ(Ip理想値)との誤差(この場合の誤差を位相面誤差半径δIpと呼ぶ)を算出することができる。位相面半径Ipは、IdおよびIqからなる位相面の円の半径に相当しているため、Ipの理想値との誤差は、位相面での半径誤差に相当する。
【0031】
さらに、位相面誤差半径拡大部1181は、発生した位相面変化を拡大するために、位相面誤差半径δIpを定数倍Kmagして拡大することで(Kmagは1以上)、拡大誤差半径δIpmagを算出する。拡大誤差半径δIpmagは、以下で算出される。
【0032】
【0033】
なお、二相電流データの各相IdおよびIqを水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差は、位相面誤差半径δIpに限らず、例えば、後述する周方向角度誤差δθとしてもよい。
【0034】
次に、誤差拡大位相面描画部1182は、二相電流データの各相IdおよびIqを水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差を拡大し、所定の単位円上に周期単位で重畳させる処理を複数の周期単位分行い、処理出力部118による処理結果の出力として、拡大した誤差を重畳させた単位円を複数の周期単位分重ねて、所定の表示部13に描画する。誤差拡大位相面描画部1182は、例えば、半径1の単位円上に拡大誤差半径δIpmagを重畳させることで、誤差拡大位相面を描画する。具体的には、以下の式で求めた「Id成分」と「Iq成分」で決まるdq平面上の点を1周期毎に複数周期分重ねて描画する。
【0035】
【0036】
図10~
図14を参照して、誤差拡大位相面描画部1182による誤差拡大位相面の描画例について説明する。
図10は、この描画例で用いる正常時のデータの例を示す。横軸は正規化された位相であり、縦軸は上の波形が位相面誤差半径δIp、下の波形が周方向角度誤差δθである。位相面誤差半径δIp(δr)は、位相面半径IpのIp理想値(一定値の基準データ)からの誤差であり、周方向角度誤差δθは、サンプリング時刻(サンプリング番号)から決まる位相の値(基準データ)と式(5.3)から算出される位相θとの誤差である。
図11は、この描画例で用いる異常時のデータの例を示す。
図10と同様に、横軸は正規化された位相であり、縦軸は上の波形が位相面誤差半径δIp、下の波形が周方向角度誤差δθである。
【0037】
図12は、正規化をせずに、三相電流をそのまま二相変換してそのまま2軸に取ってグラフ化した位相面を示す。実線が正常時のデータであり、破線が異常時のデータである。
図12に示す電流位相面では、正常データも異常データもほぼ円で違いがない。
【0038】
図13は、正常時の誤差拡大位相面を示す。電流を60周期重ねているが各周期のデータはほぼ重なっている。形状はわずかに円からひずんでいる(元の電流品質や装置構成に起因するものである)。
【0039】
図14は、異常時の誤差拡大位相面を示す。電流の60周期でのばらつきがある。形状も正常時よりもひずんでいる。
【0040】
本実施形態によれば、単純に位相面を描いただけではわからないような電流の変化を、位相面上のばらつきや形状ひずみとして可視化することが可能となっている。
【0041】
次に、
図15~
図18を参照して、位相面誤差半径算出部117が、基準データを、正常時にサンプリングされた三相電流データに基づく二相電流データに対応するものとする例について説明する。上述した例では、位相面誤差半径δIpを計算する際に、理想電流から計算される理想Ip(固定値)との誤差を計算したが、対象プラントの正常データを取得できていれば、正常データの平均的な二相電流データId、Iqを記憶し、そこから計算される位相面半径Ipを基準データとして誤差計算に用いることで、理想との差ではなく、正常との差を可視化可能となる。
【0042】
図15は、位相面半径Ipの理想値を基準データとして、正常時(1)の三相電流データから求めた位相面半径Ipとの誤差を拡大した位相面(誤差拡大位相面)を示す。
【0043】
図16は、正常時(1)の三相電流データに対し、正常時(1)の平均を基準データとした位相面(誤差拡大位相面)を示す。
図16の誤差拡大位相面はやや六角形状にひずんでいるが、想定される通り本図はほぼ円形となっている。
【0044】
図17は、正常時(1)とは別の正常時のデータである正常時(2)の三相電流データに対し、正常時(1)の平均を基準データとした位相面(誤差拡大位相面)を示す。
図16とほぼ同様に円形となることが想定される。
【0045】
図18は、異常データに対し、正常時(1)の平均を基準データとした位相面(誤差拡大位相面)を示す。
【0046】
次に、形状ひずみ評価値算出部1183(ひずみ評価値算出部)は、二相電流データの各相IdおよびIqを水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差の周期単位内のばらつきに対応する値を、形状ひずみ評価値(ひずみ評価値)として算出する。形状ひずみ評価値算出部1183は、例えば、周期単位内の複数点で複数の周期単位の各誤差の平均値を求め、各平均値の標準偏差に対応する値を、形状ひずみ評価値として算出する。
【0047】
次に、半径ばらつき評価値算出部1184(ばらつき評価値算出部)は、二相電流データの各相IdおよびIqを水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差の複数の周期単位間のばらつきに対応する値を、半径ばらつき評価値(ばらつき評価値)として算出する。半径ばらつき評価値算出部1184は、例えば、周期単位内の複数点で複数の周期単位の各誤差の標準偏差を求め、各標準偏差の平均値に対応する値を、半径ばらつき評価値として算出する。
【0048】
次に、位相面異常度算出部1185(異常度算出部)は、形状ひずみ評価値と半径ばらつき評価値に基づいて異常の度合いを表す位相面異常度(異常度)を算出し、処理出力部118の処理結果として位相面異常度または位相面異常度と所定の閾値とを比較した判定結果の少なくとも一方を出力する。位相面異常度算出部1185は、例えば、形状ひずみ評価値に第1重み係数を乗じた値と半径ばらつき評価値に第2重み係数を乗じた値とを加算した値を位相面異常度として算出する。
【0049】
本実施形態において、異常時に発生する誤差拡大位相面における変化は、大きく分けて、(1)形状のひずみが大きくなるパターン(
図19)と、(2)半径のばらつきが大きくなるパターン(
図21)と、(3)(1)と(2)の併合パターン(ひずみの角度ずれ)(
図23)とに分類することができる。
【0050】
図19は、異常時(1)の三相電流データに対し、正常時(1)の平均を基準データとした位相面(誤差拡大位相面)を示す。また、
図20は、横軸に正規化された位相をとり、縦軸に位相面誤差半径δIpをとり、
図19に示す異常時(1)のデータを示す。
【0051】
図21は、異常時(2)の三相電流データに対し、正常時(1)の平均を基準データとした位相面(誤差拡大位相面)を示す。また、
図22は、横軸に正規化された位相をとり、縦軸に位相面誤差半径δIpをとり、
図21に示す異常時(2)のデータを示す。
【0052】
図23は、異常時(3)の三相電流データに対し、正常時(1)の平均を基準データとした位相面(誤差拡大位相面)を示す。また、
図24は、横軸に正規化された位相をとり、縦軸に位相面誤差半径δIpをとり、
図23に示す異常時(3)のデータを示す。
【0053】
また、位相面誤差半径δIpに着目すると、「1」周期による変化はないが位相面誤差半径δIpの振れがある場合、「2」位相面誤差半径δIpのオフセットが変化する場合、「3」「1」と「2」の併合のパターンがある。
【0054】
「1」は、横軸の各位相で平均値を計算したときに、360度の間でばらつきがある。「2」は、横軸の各位相で標準偏差を計算したときに、それが平均的に大きい。
【0055】
このため、本実施形態では、形状ひずみの評価については、位相面誤差半径δIpの各位相での平均値の1周期標準偏差を形状ひずみ評価値として評価する。また、半径ばらつきの評価については、位相面誤差半径δIpの各位相での標準偏差の1周期平均を半径ばらつき評価値として評価する。また、これを組み合わせて、重み係数K1、K2(第1重み係数、第2重み係数)とし、以下の式で異常度を定義する。
【0056】
【0057】
なお、形状ひずみ評価値は、
図25に示す例では、各位相P1、P2、P3およびP4で、各点d11とd21の平均、各点d12とd22の平均、各点d13とd23の平均、および各点d14とd24の平均を計算し、1周期(0~360度)で求めた平均値の標準偏差を、形状ひずみ評価値とすることができる。なお、
図25は、横軸に正規化された位相をとり、縦軸に位相面誤差半径δIpをとり、2周期分の位相面誤差半径δIpをデータIp1およびデータIp2として示す。
【0058】
また、半径ばらつき評価値は、
図25に示す例では、各位相P1、P2、P3およびP4で、各点d11とd21の標準偏差、各点d12とd22の標準偏差、各点d13とd23の標準偏差、および各点d14とd24の標準偏差を計算し、1周期(0~360度)で求めた平均値を半径ばらつき評価値とすることができる。
【0059】
また、重み係数K1およびK2の値は、例えば次のようにして決定することができる。すなわち、例えば、異常データを溜めて、そこから人手で決定してもよい。ひずみとばらつきが分かれているため、電源品質が悪いことがわかっている場合で形状がひずむことがわかっている場合にはK1を小さくしておくことができる(逆も可)。また、理想電流基準の場合はひずみの評価をせずにK1を小さくし、正常データがたまったらひずみの評価を開始するためにK1を大きくする、といった使い方が可能である。これにより、測定初回時に電源品質等による形状ひずみの発生による異常警告発報を回避することができる。また、異常データを供試データとして、強化学習によりK1、K2の最適解を探索してもよい。例えば、正常とわかっているデータ10個、異常とわかっているデータ30個がある場合に、それぞれの形状ひずみ評価値、半径ばらつき評価値が計算される。そこで、異常データを異常と判別し、正常データを正常と判別するように、K1、K2の重みを自動的に探索させる。
【0060】
なお、その他の異常度として、位相面誤差半径δIpのばらつきだけでなく、
図10等を参照して説明した周方向角度誤差δθを含めてもよい。また、円の面積に基づいて算出してもよい。
【0061】
(分析装置の動作例)
次に、
図2を参照して、
図1に示す分析装置1の動作例について説明する。
図2に示す処理は、例えば操作者の所定の指示操作に応じて開始される。
図2に示す処理では、まず、電流データ読込部111が、三相電流データの読込を行う(ステップS11)。次に、データ補間部112と周期単位切り分け部113が、三相電流データの補間と周期毎の切り分けを行う(ステップS12)。次に、位相軸正規化部114が、三相電流データの横軸を位相にして正規化する(ステップS13)。次に、電流振幅正規化部115が、三相電流データの電流振幅を正規化する(ステップS14)。次に、三相二相変換部116が、三相電流データを二相電流データに変換する(ステップS15)。次に、位相面誤差半径算出部117が位相面誤差半径を算出し、位相面誤差半径拡大部1181が誤差半径を拡大する(ステップS16)。次に、誤差拡大位相面描画部1182が、誤差拡大位相面を描画する(ステップS17)。次に、形状ひずみ評価値算出部1183が形状ひずみ評価値を算出する(ステップS18)。次に、半径ばらつき評価値算出部1184が、半径ばらつき評価値を算出する(ステップS19)。次に、位相面異常度算出部1185が、位相面異常度を算出し(ステップS20)、例えば算出した位相面異常度と所定の閾値と比較することで、位相面異常度を評価し(ステップS21)、閾値との比較結果や位相面異常度を評価結果として例えば表示部13に表示することで出力する(ステップS22)。
【0062】
(作用・効果)
以上のように本実施形態によれば、電動機3の三相電流を用いて位相面を描き、そこから異常診断を行うことができる。三相電流は120度ずつ位相がずれているため、その内の二相で単純に位相面を描くと、斜めの楕円となる。そこで、本実施形態では、三相電流を二相電流へ変換する処理を行う。また、理想電流との誤差を計算し、拡大することで、異常による位相面の変化を拡大する。また、位相面の特徴から、位相面の形状ひずみ・半径ばらつきを特徴量として定量化し、その線形和として異常度を定義し、異常診断へ適用可能とする。
【0063】
すなわち、本実施形態によれば、電動機3や補機4類の異常による電流のわずかな変化を可視化可能となる。いいかえれば、本実施形態によれば、電動機や補機類の異常が電流へ与える影響を適切に分析することができる。また、可視化により、異常だけでなく、正常状態の正常具合も可視化できる(元の電源品質がきれいな正弦波になっていない等)。また、位相面の変化である、形状のひずみ、半径のばらつきを定量化して異常度と定義し異常診断に活用できる。すなわち、交流周期内のばらつきや複数の交流周期間のばらつきを定量的にとらえることができる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0065】
〈コンピュータ構成〉
図26は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の診断装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0066】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0067】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0068】
<付記>
上記実施形態に記載の分析装置1は、例えば以下のように把握される。
【0069】
(1)第1の態様に係る分析装置1は、電動機3に供給される三相電流をサンプリングしたデータである三相電流データを読み込む電流データ読込部111と、前記三相電流データを三相交流の周期単位で切り分ける周期単位切り分け部113と、前記三相電流データを二相電流データに変換する三相二相変換部116と、前記二相電流データの各相を水平成分および垂直成分とするベクトルの、基準データからの誤差(位相面誤差半径δIp、周方向角度誤差δθ)を算出して誤差データとして出力する誤差算出部(位相面誤差半径算出部117)と、前記誤差データを前記周期単位でかつ複数の前記周期単位について処理し、処理結果を出力する処理出力部118と、を備える。この態様および以下の態様によれば、電動機や補機類の異常が電流へ与える影響を適切に分析することができる。
【0070】
(2)第2の態様に係る分析装置1は、(1)の分析装置1であって、前記処理出力部118は、前記誤差を拡大し、所定の単位円上に前記周期単位で重畳させる処理を複数の前記周期単位分行い、前記処理結果の出力として、拡大した前記誤差を重畳させた前記単位円を複数の前記周期単位分重ねて、所定の表示部13に描画する。この構成によれば、電動機や補機類の異常による電流のわずかな変化を可視化することができる。
【0071】
(3)第3の態様に係る分析装置1は、(1)または(2)の分析装置1であって、前記処理出力部118は、ひずみ評価値算出部(形状ひずみ評価値算出部1183)と、ばらつき評価値算出部(半径ばらつき評価値算出部1184)と、異常度算出部(位相面異常度算出部1185)とを有し、前記ひずみ評価値算出部が、前記誤差の前記周期単位内のばらつきに対応する値を、ひずみ評価値(形状ひずみ評価値)として算出し、前記ばらつき評価値算出部が、前記誤差の複数の前記周期単位間のばらつきに対応する値を、ばらつき評価値(半径ばらつき評価値)として算出し、前記異常度算出部が、前記ひずみ評価値と前記ばらつき評価値に基づいて異常の度合いを表す異常度(位相面異常度)を算出し、前記処理結果として前記異常度または前記異常度と所定の閾値とを比較した判定結果の少なくとも一方を出力する。この構成によれば、位相面の変化である、形状ひずみおよび半径ばらつきを定量化して異常度と定義し異常診断に活用することができる。
【0072】
(4)第4の態様に係る分析装置1は、(1)~(3)の分析装置1であって、前記基準データは、前記ベクトルの大きさの理想値に対応し、前記誤差算出部は、前記ベクトルの大きさと前記基準データとの差を前記誤差として算出する。
【0073】
(5)第5の態様に係る分析装置1は、(1)~(3)の分析装置1であって、前記基準データは、正常時にサンプリングされた前記三相電流データに基づく前記二相電流データに対応し、前記誤差算出部は、前記ベクトルと前記基準データとを前記周期単位で比較することで前記誤差を算出する。
【0074】
(6)第6の態様に係る分析装置1は、(1)~(5)の分析装置1であって、前記三相電流データを補間してサンプル数を増やすデータ補間部112をさらに備え、前記周期単位切り分け部113が、前記データ補間部112によって補間された前記三相電流データを前記三相交流の周期単位で切り分ける。
【0075】
(7)第7の態様に係る分析装置1は、(1)~(6)の分析装置1であって、1周期分のサンプル数が一定値となるように前記三相電流データを正規化する位相軸正規化部114をさらに備え、前記三相二相変換部116が、前記位相軸正規化部114によって正規化された前記三相電流データを前記二相電流データに変換する。
【0076】
(8)第8の態様に係る分析装置1は、(1)~(7)の分析装置1であって、電流振幅が所定値となるように前記三相電流データを正規化する電流振幅正規化部115をさらに備え、前記三相二相変換部116が、前記電流振幅正規化部115によって正規化された前記三相電流データを前記二相電流データに変換する。
【0077】
(9)第9の態様に係る分析装置1は、(3)の分析装置1であって、前記ひずみ評価値算出部が、前記周期単位内の複数点で複数の前記周期単位の各前記誤差の平均値を求め、前記各平均値の標準偏差に対応する値を、前記ひずみ評価値として算出し、前記ばらつき評価値算出部が、前記周期単位内の複数点で複数の前記周期単位の各前記誤差の標準偏差を求め、前記各標準偏差の平均値に対応する値を、前記ばらつき評価値として算出し、前記異常度算出部が、前記ひずみ評価値に第1重み係数を乗じた値と前記ばらつき評価値に第2重み係数を乗じた値とを加算した値を前記異常度として算出する。
【符号の説明】
【0078】
1 分析装置
3 電動機
4 補機
11 処理部
12 記憶部
13 表示部
111 電流データ読込部
112 データ補間部
113 周期単位切り分け部
114 位相軸正規化部
115 電流振幅正規化部
116 三相二相変換部
117 位相面誤差半径算出部
118 処理出力部
1181 位相面誤差半径拡大部
1182 誤差拡大位相面描画部
1183 形状ひずみ評価値算出部
1184 半径ばらつき評価値算出部
1185 位相面異常度算出部