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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01R13/52 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020122843
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019170
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 雅隆
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 哲広
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-328932(JP,A)
【文献】特開2017-147103(JP,A)
【文献】特開平07-336932(JP,A)
【文献】特開2013-084418(JP,A)
【文献】特開2014-038793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子と、前記複数の前記端子を保持するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられるカバーと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングと前記カバーとの取り付けの際、前記ハウジング及び前記カバーの一方が有する係止部が、前記ハウジング及び前記カバーの他方が有する被係止部に係合し、
前記複数の前記端子の各々は、
ボルトを用いた締結によって端子金具を接続可能な被締結部を有し、
前記被締結部の各々は、
前記ハウジングと前記カバーとの間に画成される複数の収容室の各々に収容され、
一の前記被締結部と他の前記被締結部との間に位置する前記収容室の隔壁は、
前記ハウジング及び前記カバーの一方が有するリブと前記ハウジング及び前記カバーの他方が有する受け部とが当接して構成される液密部を、当該隔壁の少なくとも一部に有し、
前記リブ及び前記受け部の一方は、
前記ハウジングと前記カバーとの取付方向に対して傾く傾斜面であって、前記係止部と前記被係止部との係合の途中に前記係合に伴って移動する前記リブ及び前記受け部の他方が接触して摺動する傾斜面と、
前記係合の完了時に前記傾斜面に沿って前記摺動の向きとは逆向きに移動する前記リブ及び前記受け部の前記他方が当接して前記液密部を構成する当接面と、を有し、
前記当接面は、前記リブ及び前記受け部の前記一方の先端に位置して、前記リブ及び前記受け部の前記一方の基端側に前記傾斜面が連接され、
前記液密部は、前記リブ及び前記受け部の前記他方と前記当接面とが互いに向かい合うことで構成され、
前記リブ及び前記受け部の前記他方は、
前記係合の途中に、前記傾斜面に接触し、前記傾斜面から受ける押圧力によって弾性変形し、前記係合の完了時に、前記弾性変形に起因して前記傾斜面から受ける押圧力によって、前記傾斜面に沿って前記摺動の向きとは前記逆向きに押し戻される、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記当接面は、
前記係合の完了時に当該当接面に向かい合う前記リブ及び前記受け部の前記他方の表面に沿う形状を有する、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記リブ及び前記受け部の前記他方は、
前記リブ及び前記受け部の前記他方が前記傾斜面に接触しているときの撓み量よりも、前記リブ及び前記受け部の前記他方が前記当接面に当接しているときの撓み量が小さい、ように構成される、
コネクタ。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記当接面は、
前記取付方向に沿うように延びる形状を有する、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子と、複数の端子を収容するハウジングと、ハウジングに取り付けられるカバーと、を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の端子収容室を有するハウジングと、端子収容室および端子収容室から延びる電線を覆うようにハウジングに取り付けられるカバーと、を備えるコネクタが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この従来のコネクタでは、カバーは、主として、ハウジングから所望の向きに電線を案内するための案内具として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-152265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した種類のコネクタは、一般に、電線の端末に圧着された筒状(箱状)の端子金具を端子収容室に挿し込んで収容し、更に、複数の端子収容室の各々を隔壁によって互いに隔離することで、意図しない回路の短絡などを抑制するようになっている。
【0005】
これに対し、ハウジングにインサート成形などによって固定したバスバ(端子)に、ボルトを用いた締結によって端子金具を接続する場合、上述した従来のコネクタとは異なり、ボルト自体の収容スペースや締結作業を行うための作業スペースを確保する必要がある。そのため、従来のコネクタのような隔壁で区切られた端子収容室を設けることが困難である。しかし、端子金具を端子にボルトで締結する形式のコネクタであっても、従来のコネクタと同様、端子同士の間を適正に電気的に隔離することが望ましい。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子金具を端子にボルトで締結する構成を有していても端子同士の意図しない短絡を抑制可能なコネクタ、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
複数の端子と、前記複数の前記端子を保持するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられるカバーと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングと前記カバーとの取り付けの際、前記ハウジング及び前記カバーの一方が有する係止部が、前記ハウジング及び前記カバーの他方が有する被係止部に係合し、
前記複数の前記端子の各々は、
ボルトを用いた締結によって端子金具を接続可能な被締結部を有し、
前記被締結部の各々は、
前記ハウジングと前記カバーとの間に画成される複数の収容室の各々に収容され、
一の前記被締結部と他の前記被締結部との間に位置する前記収容室の隔壁は、
前記ハウジング及び前記カバーの一方が有するリブと前記ハウジング及び前記カバーの他方が有する受け部とが当接して構成される液密部を、当該隔壁の少なくとも一部に有し、
前記リブ及び前記受け部の一方は、
前記ハウジングと前記カバーとの取付方向に対して傾く傾斜面であって、前記係止部と前記被係止部との係合の途中に前記係合に伴って移動する前記リブ及び前記受け部の他方が接触して摺動する傾斜面と、
前記係合の完了時に前記傾斜面に沿って前記摺動の向きとは逆向きに移動する前記リブ及び前記受け部の前記他方が当接して前記液密部を構成する当接面と、を有し、
前記当接面は、前記リブ及び前記受け部の前記一方の先端に位置して、前記リブ及び前記受け部の前記一方の基端側に前記傾斜面が連接され、
前記液密部は、前記リブ及び前記受け部の前記他方と前記当接面とが互いに向かい合うことで構成され、
前記リブ及び前記受け部の前記他方は、
前記係合の途中に、前記傾斜面に接触し、前記傾斜面から受ける押圧力によって弾性変形し、前記係合の完了時に、前記弾性変形に起因して前記傾斜面から受ける押圧力によって、前記傾斜面に沿って前記摺動の向きとは前記逆向きに押し戻される、
コネクタであること。
[2]
上記[1]に記載のコネクタにおいて、
前記当接面は、
前記係合の完了時に当該当接面に向かい合う前記リブ及び前記受け部の前記他方の表面に沿う形状を有する、
コネクタであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタにおいて、
前記リブ及び前記受け部の前記他方は、
前記リブ及び前記受け部の前記他方が前記傾斜面に接触しているときの撓み量よりも、前記リブ及び前記受け部の前記他方が前記当接面に当接しているときの撓み量が小さい、ように構成される、
コネクタであること。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載のコネクタにおいて、
前記当接面は、
前記取付方向に沿うように延びる形状を有する、
コネクタであること。
【0008】
上記[1]の構成のコネクタによれば、ハウジングにカバーが取り付けられることで、ハウジングとカバーとの間に複数の収容室が画成される。この複数の収容室の各々に、端子の被締結部(即ち、端子とボルトとの締結箇所)が収納される。更に、端子の一の被締結部と他の被締結部との間に位置する収容室の隔壁には、ハウジング及びカバーの一方が有するリブと他方が有する受け部とが当接して構成される液密部が設けられる。この液密部は、隔壁を通り抜けようとする水や油などの液体の進入経路(いわゆる沿面距離)を長くする構造(いわゆるラビリンス構造)を有することとなり、優れた液密機能を発揮する。その結果、一般の使用環境下でコネクタが用いられる場合であっても、水や油などにコネクタが晒される過酷な環境下(例えば、変速機の潤滑油中)でコネクタが用いられる場合であっても、端子同士の間を適正に電気的に隔離できる。
【0009】
更に、ハウジング及びカバーの一方が有する係止部(例えば、係止突起)と他方が有する被係止部(例えば、ロックアーム)とが係合する過程で、リブ及び受け部の一方が有する傾斜面に、リブ及び受け部の他方が接触して摺動する。よって、リブと受け部とが付き当てられて押し付け合う場合に比べ、リブと受け部との接触が上記係合の妨げになり難い。加えて、上記係合が完了すると、リブ及び受け部の他方が、その傾斜面に沿って上記摺動の向きとは逆向きに移動し、当接面に当接して液密部を構成する。よって、この逆向きの移動(例えば、押し戻し)に伴って係止部と被係止部との間の隙間(いわゆるクリアランス)が小さくなる。この結果、ハウジングとカバーとの取り付け後の位置ズレが抑制される。
【0010】
したがって、本構成のコネクタは、端子金具を端子にボルトで締結する構成を有していても端子同士の意図しない短絡を抑制可能である。更に、本構成のコネクタは、ハウジングとカバーとの取り付けが容易であり、且つ、取り付け後の両者間の位置ズレを抑制できる。
【0011】
なお、上記「液密部」は、そのような液密部が無い場合(例えば、ハウジングとカバーとが単に突き合わされている場合)に比べて一方の収容室から他方の収容室へ液体が移動(侵入)することを抑制する機能を有していればよく、必ずしもそのような液体の移動を完全に防ぐ機能を有していなくてもよい。別の言い方をすると、上述したリブと受け部とは、互いに完全に密着するように配置されていてもよいし、そのような液体の移動を抑制できる程度の十分に小さな間隔をあけて配置されていてもよいし、一部分において密着し且つ他の部分において間隔をあけて配置されていてもよい。
【0012】
上記[2]の構成のコネクタによれば、当接面は、係合部と被係止部との係合の完了時に向かい合うことになるリブ及び受け部の他方の表面に沿うような形状を有している。よって本構成のコネクタは、当接面と他方の表面との間の密閉性を向上できる。
【0013】
上記[3]の構成のコネクタによれば、リブ及び受け部の他方は、その他方が傾斜面に接触しているときの撓み量よりも、その他方が当接面に当接しているときの撓み量が小さい、ように構成される。よって、ハウジングとカバーとの取り付け後、リブと受け部との擦れ合い等に起因して生じるリブ及び受け部の劣化を低減できる。
【0014】
上記[4]の構成のコネクタによれば、当接面は、ハウジングとカバーとの取付方向に沿うように延びる形状を有する。よって、ハウジング及びカバーの製造時に生じ得る寸法上の誤差(いわゆる製造ばらつき)の大小によらず、当接面とリブ及び受け部の他方との間の密閉性を維持し易い。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、端子金具を端子にボルトで締結する構成を有していても端子同士の意図しない短絡を抑制可能なコネクタ、を提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタを含むコネクタ付き電線の斜視図である。
図2図2は、コネクタ付き電線の分解斜視図である。
図3図3は、図2のA部の拡大図である。
図4図4(a)は、ハウジングへカバーを取り付ける際の様子を示す上面図であり、図4(b)は、ハウジングへのカバーの取り付けが完了した状態を示す上面図である。
図5図5は、カバーの斜視図である。
図6図6(a)は、図4(b)のB-B断面図であり、図6(b)は、図6(a)のD部の拡大図である。
図7図7は、図4(b)のC-C断面図である。
図8図8(a)、図8(c)、図8(e)は、ハウジングが有する係止突起とカバーが有する係止片との係合の開始から係合の完了までを時系列に示す、図4(b)のE-E断面の一部に相当する図であり、図8(b)、図8(d)、図8(f)はそれぞれ、図8(a)、図8(c)、図8(e)に示す時点における図6(b)のF部に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ6を含むコネクタ付き電線1について説明する。コネクタ付き電線1は、典型的には、車両の駆動系を構成する変速機のハウジング等に取り付けられて使用される。別の言い方をすると、コネクタ付き電線1は、車両用のワイヤハーネスの一部を構成する部材である。
【0019】
以下、説明の便宜上、図面に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、ハウジング4が相手側コネクタ(図示省略)と嵌合する方向(本発明の「取付方向」)と一致しており、相手側コネクタが嵌合する嵌合方向正面側(図2において右上側)が前側とされ、その反対の嵌合方向背面側(図2において左下側)が後側とされている。
【0020】
図1に示すコネクタ付き電線1は、図2に示すように、電線2と、電線2に取り付けられる端子金具3と、端子金具3が締結固定されるハウジング4と、ハウジング4に取り付けられるカバー5と、を備える。ハウジング4及びカバー5により、本発明の実施形態に係るコネクタ6が構成される。以下、コネクタ付き電線1を構成する部品について順に説明する。
【0021】
先ず、電線2について説明する。電線2は、図2及び図4(a)に示すように、導体芯線11と、導体芯線11を覆う樹脂被覆12と、で構成されている。電線2の端末部では、所定の端末処理が施されて、樹脂被覆12が除去されて導体芯線11が露出している。電線2は、典型的には、接地(アース)されて使用される。
【0022】
次いで、端子金具3について説明する。金属製の端子金具3は、図2に示すように、ボルト孔が形成された丸形平板状の端子部21と、端子部21に隣接すると共に電線2の露出する導体芯線11に加締められる芯線加締部22と、芯線加締部22に隣接すると共に電線2の樹脂被覆12の先端部に加締められる被覆加締部23と、を一体に有する。端子部21は、後述するバスバ7の被締結部7aに締結固定されることになる。
【0023】
次いで、ハウジング4について説明する。樹脂製のハウジング4は、図2に示すように、本体部31と、本体部31の前側に位置するコネクタ嵌合部32と、本体部31の後側に位置するカバー取付部33と、を一体に備える。本体部31の内部には、インサート成形により、前後方向に延びる複数(本例では、2つ)のバスバ7(金属板)が一体化されている。
【0024】
本体部31は、図1及び図2に示すように、円筒状部分を有し、その円筒状部分の後端部にて、円筒状部分の径方向外側に所定の形状を有して突出するフランジ部34を有している。フランジ部34には、前後方向に貫通する複数のボルト孔35が形成されている。
【0025】
本体部31は、典型的には、車両の変速機のハウジングの円形の開口部(図示省略)に、本体部31の円筒状部分を挿入し、ボルト孔35に挿通されるボルト(図示省略)を用いてフランジ部34を当該ハウジングに締結固定することで、当該ハウジングに固定される。本体部31が当該ハウジングに固定された状態では、コネクタ嵌合部32(即ち、コネクタ嵌合部32に嵌合されることになる相手側コネクタ)は、空気中に位置し、カバー取付部33(即ち、カバー取付部33に取り付けられることになるカバー5)は、変速機の潤滑油中に位置することになる。
【0026】
コネクタ嵌合部32は、図1図2及び図6(a)に示すように、前方に開口する矩形のフード状の形状を有している。コネクタ嵌合部32には、相手側コネクタが挿入され嵌合されることになる。これにより、相手側コネクタに収容された相手側端子(図示省略)と、バスバ7におけるコネクタ嵌合部32の内部空間内にて露出している部分(図示省略)とが電気的に接続されることで、相手側端子に接続された相手側電線(図示省略)と、ハウジング4に内蔵されたバスバ7とが電気的に接続されることになる。
【0027】
カバー取付部33は、端子金具3が締結固定される部位であり、且つ、カバー5が取り付けられる部位でもある。カバー取付部33では、図2及び図3に示すように、2つのバスバ7の後端部である被締結部7aが、上下方向に所定の間隔を空けて本体部31から後方に突出するように露呈している。被締結部7aには、ボルト孔が形成されている。図2図4から理解できるように、下側のバスバ7の被締結部7aが、上側のバスバ7の被締結部7aより後側に位置している。換言すれば、2つの被締結部7aは、上下方向から見た場合に前後方向に互いにオフセットするように配置されている。
【0028】
カバー取付部33は、図6及び図7に示すように、カバー取付部33にカバー5が取り付けられた状態にて、カバー5と協働して、2つの被締結部7aをそれぞれ収容する2つの収容室36を上下方向に並ぶように画成する形状を有している。カバー取付部33及びカバー5の協働で構成される2つの収容室36を上下に隔てる隔壁、のうちの一部として、カバー取付部33は、図2及び図3に示すように、上側の被締結部7aと下側の被締結部7aとの間に位置する隔壁37を有している。隔壁37は、左右方向に拡がり且つ後方に延びる平板状の形状を有している。
【0029】
隔壁37の後端縁部には、図3に示すように、隔壁37の後端縁に沿って左右方向に延びる溝部47が形成されている。溝部47は、より具体的には、図6(b)及び図8(a)に示すように、下方及び前方に窪み、且つ、上方及び後方に開口する凹部である。隔壁37の後端縁部における、溝部47が形成されたことによって薄肉化された左右方向に延びる部分は、受け部38を構成している。受け部38は、カバー5の後述するリブ53との協働によって、液密部9(図6(b)及び図8(f)参照)を画成することになる。この溝部47内の空間は、後述するように、撓むように変形するリブ53の先端部分を受け入れるための空間(以下「撓み空間」とも称呼する)として機能する。
【0030】
図8(a)に示すように、受け部38の上面38a(溝部47に面する面)は、受け部38の先端(後端)から前方へ延びる当接面38bと、当接面38bの前端縁から前方へ延びる傾斜面38cとで構成されている。当接面38bは、左右方向及び前後方向に平行な平面である。傾斜面38cは、左右方向に平行、且つ、前方へ向かうにつれて徐々に上方に移動する向きに前後方向から傾斜する平面である。
【0031】
カバー取付部33は、図3に示すように、各被締結部7aの下側にてナット設置部39をそれぞれ画成する形状を有している。各ナット設置部39は、端子金具3の端子部21を対応する被締結部7aに締結固定する際に使用されるナット63(図2参照)を載置するための空間であり、後方に開口し且つ対応する被締結部7aの下面に臨んでいる。カバー取付部33の隔壁37は、2つのナット設置部39のうち上側のナット設置部39の下端を画成する壁を兼ねている。
【0032】
カバー取付部33には、図2に示すように、上側の被締結部7aの上方位置にて、本体部31から左右方向に拡がり且つ後方に延びる平板状のガイド片41が設けられている。ガイド片41の上面には、上方に突出する係止突起41aが形成されている。上下一対の被締結部7aの右方位置にて、本体部31から上下方向に拡がり且つ後方に延びる平板状のガイド片42が設けられている。ガイド片42の右面には、右方に突出する係止突起42aが形成されている。
【0033】
更に、下側のナット設置部39の左右両端を画成する左右一対の側壁の左右方向両外側面には、左右方向内側に窪み且つ前後方向に延びる一対のガイド溝43が設けられている。ガイド片41,42及びガイド溝43は、カバー取付部33にカバー5を取り付ける際にカバー5を案内し、且つ、カバー取付部33にカバー5を固定する機能を発揮する。
【0034】
ハウジング4の本体部31の下側領域(コネクタ嵌合部32及びカバー取付部33より下側の領域)には、図1及び図6(a)に示すように、第2コネクタ嵌合部44が設けられている。第2コネクタ嵌合部44の内部には、インサート成形により、前後方向に延びる複数のピン端子8が一体化されている。第2コネクタ嵌合部44の前側には、前方に開口する矩形のフード状の第1フード部45が形成され、第2コネクタ嵌合部44の後側には、後方に開口する矩形のフード状の第2フード部46が形成されている。
【0035】
第1フード部45の内部空間にはピン端子8の前端部が露呈し、第2フード部46の内部空間にはピン端子8の後端部が露呈している。第1フード部45及び第2フード部46にはそれぞれ、第2の相手側コネクタ(図示省略)及び第3の相手側コネクタ(図示省略)が挿入され嵌合されることになる。これにより、第2の相手側コネクタに収容された第2の相手側端子(図示省略)と、第3の相手側コネクタに収容された第3の相手側端子(図示省略)とが、ピン端子8を介して電気的に接続されることになる。
【0036】
次いで、カバー5について説明する。樹脂製のカバー5は、図5に示すように、前方及び下方に開口する略直方体状の箱状の筐体部51を有する。筐体部51の内部空間には、筐体部51の後壁部の内面から左右方向に拡がり且つ前方に延びる平板状の隔壁52が形成されている。隔壁52の前端面には、前方に突出し且つ左右方向に拡がるリブ53が形成されている。リブ53は、ハウジング4の溝部47内に進入し得る程度の厚さ及び突出長さを有している。リブ53の下面は、左右方向及び前後方向に平行な平面である。隔壁52は、その前後方向における略中央から前端面(即ち、リブ53)までの範囲において、上下方向に隣接する壁部および左右方向に隣接する壁部から分離している。これにより、隔壁52は、リブ53を自由端として上下方向に弾性変形可能な片持ち梁状の形状を有している。
【0037】
隔壁52は、ハウジング4の隔壁37(図3参照)に対応する位置に設けられており、カバー5のハウジング4への取付状態にて、隔壁37と同様、2つの収容室36を上下に隔てる隔壁の一部として機能する。よって、筐体部51の内部空間において、隔壁52の上側領域は、上側の被締結部7aを収容する収容室36の一部を構成し、隔壁52の下側領域は、下側の被締結部7aを収容する収容室36の一部を構成している。
【0038】
筐体部51の左壁部には、上下一対の収容室36と左右方向にそれぞれ連通するように、前方に開口し後方に窪む上下一対の電線引出部54が形成されている。各電線引出部54は、対応する収容室36に収容されている端子金具3に接続されている電線2を外部(右方)に引き出すための開口部として機能する。
【0039】
筐体部51の上壁部の一部には、ハウジング4のガイド片41に対応して、前方に向けて片持ち梁状に延びる矩形枠状の係止片55が形成されている。筐体部51の右壁部の一部には、ハウジング4のガイド片42に対応して、前方に向けて片持ち梁状に延びる矩形枠状の係止片56が形成されている。筐体部51の下端部には、ハウジング4の一対のガイド溝43に対応して、前後方向に延びる一対のガイドリブ57が形成されている。以上、コネクタ付き電線1を構成する部品について順に説明した。
【0040】
次いで、コネクタ付き電線1の組み付け手順について説明する。まず、ゴム製の矩形枠状のパッキン64(図2参照)を、ハウジング4のコネクタ嵌合部32の内部空間における所定位置に取り付け(図6(a)参照)、且つ、ゴム製のOリング65(図2参照)を、ハウジング4の本体部31の円筒状部分の外周面に取り付ける(図6(a)参照)。
【0041】
次いで、図2に示すように、ハウジング4の一対のバスバ7の被締結部7aに、電線2が接続された端子金具3をそれぞれ締結固定する(図4(a)参照)。このため、まず、ハウジング4の各ナット設置部39にナット63を後方から挿入する。これにより、各ナット63は、ナット63の軸線周りに回転不能に、ナット設置部39に設置される。
【0042】
次いで、各バスバ7の被締結部7aの上面に、電線2が接続された端子金具3の端子部21を正規位置に向くように載置し、ワッシャ62付きのボルト61を、上方から端子部21及び被締結部7aそれぞれのボルト孔に挿入し、被締結部7aの下方に位置するナット63に噛み合わせる。これにより、被締結部7a及び端子部21がボルト61とナット63との間に挟まれることで、端子金具3が、正規位置を向いた状態で被締結部7aに締結固定される。
【0043】
このとき、2つの被締結部7aが前後方向に互いにオフセットするように配置されていることに起因して、被締結部7aにボルト61を締結する際、一の被締結部7aに締結されたボルト61が他の被締結部7aへの締結作業の妨げになり難い。以上より、端子金具3に接続された電線2と、ハウジング4に内蔵されたバスバ7とが電気的に接続される。
【0044】
ボルト61の締結向き(ボルト61が締め付けられる回転方向)は、上方からみて時計回り方向(右回り方向)である。各端子金具3が正規位置にある状態では、図4(a)に示すように、各端子金具3が端子部21(被締結部7a)から左方に延出するため、各端子金具3に接続されている電線2も左方に延出している。
【0045】
次いで、ハウジング4のカバー取付部33に、各端子金具3の接続箇所を覆うようにカバー5を取り付ける。このため、カバー取付部33にカバー5を後方から近づける(図4(a)参照)。そして、カバー5の隔壁52の前面とハウジング4の隔壁37の後面とが前後方向に対向しながら近づくように、一対の電線2がカバー5の一対の電線引出部54に進入するように、且つ、カバー取付部33のガイド片41及びガイド片42に、カバー5の筐体部51の上壁の内面、及び、筐体部51の右壁の内面がそれぞれ案内されるように、且つ、カバー取付部33の一対のガイド溝43に筐体部51の一対のガイドリブ57がそれぞれ係合しながらスライドするように、カバー5を前方へ押し付けながら、カバー5をカバー取付部33に対して前方へ移動させる。
【0046】
カバー5の移動が進行すると、図8(a)に示すように、カバー5側の係止片55,56と、ハウジング4側の係止突起41a,42aとが、それぞれ係合を開始する。この段階では、図8(b)に示すように、カバー5側のリブ53が、ハウジング4側の溝部47に未だ進入していない。
【0047】
なお、図8(a)、図8(c)及び図8(e)では、係止片55と係止突起41aとの係合状態の推移のみが示されている。この段階以降、係止片56と係止突起42aとの係合状態は、係止片55と係止突起41aとの係合状態と同じタイミングで同じように推移していくので、以下、係止片56と係止突起42aとの係合状態の推移に関する説明を省略する。
【0048】
図8(a)及び図8(b)に示す段階以降、係止片55の前端縁部55aが係止突起41aから受ける押圧力(のうち上向きの分力)によって、図8(c)に示すように、係止片55が上向きに弾性変形するようになる。カバー5の移動が進行するにつれて、前端縁部55aが係止突起41aの表面上を滑るように動きながら、係止片55の上向きの弾性変形量が増大していく。
【0049】
このように係止片55の弾性変形量が増大していく過程の途中にて、リブ53の下面が受け部38の当接面38bと対面するように、リブ53の先端(前端)が溝部47に進入する。その後、リブ53の先端が受け部38の傾斜面38cに接触し、リブ53の先端が傾斜面38cから受ける押圧力(のうち上向きの分力)によって、図8(d)に示すように、リブ53が上向きに変位するように隔壁52が弾性変形する。カバー5の移動が進行するにつれて、リブ53の先端が傾斜面38cの表面上を滑るように動きながら、隔壁52の上向きの弾性変形量が増大していく。換言すると、上向きに変位するリブ53の先端部分が、溝部47内の空間(即ち、撓み空間)内に受け入れられる。
【0050】
カバー5の移動が更に進行して、図8(c)に示すように、係止片55の前端縁部55aが係止突起41aを乗り越えて、係止片55が自身の弾性復元力によって下方へ弾性復帰すると、カバー5の前方への押し付けが終了される。カバー5の前方への押し付けが終了した時点では、図8(c)に示すように、係止片55の前端縁部55aと係止突起41aとの間に前後方向のクリアランスGが存在すると共に、図8(d)に示すように、リブ53が上向きに変位して隔壁52が撓むように弾性変形している。
【0051】
カバー5の前方への押し付けが終了した時点以降、上述した弾性変形に起因してリブ53の先端が傾斜面38cから受ける押圧力(のうち後向きの分力)によって、図8(f)に示すように、リブ53(即ち、カバー5)が傾斜面38cに沿って後向きに押し戻される。この押し戻し力によって、リブ53の先端が傾斜面38cと当接面38bとの境界に到達するまでリブ53が後方に移動すると共に隔壁52が弾性復帰する。この結果、図8(e)に示すように、係止片55の前端縁部55aと係止突起41aとが近接してクリアランスGが減少(或いは消滅)すると共に、図8(f)に示すように、リブ53の先端部の下面と当接面38bとが互いに向かい合うことで、液密部9が構成される。これにより、ハウジング4のカバー取付部33へのカバー5の取り付けが完了する(図1参照)。
【0052】
カバー5の取付完了状態では、ガイド片41,42の係止突起41a,42aがそれぞれカバー5の係止片55,56に係止される(図1参照)。これにより、カバー5のハウジング4からの分離が防止される。
【0053】
カバー5の取付完了状態において構成される液密部9(図6(b)及び図8(f)参照)は、隔壁52,37間を通り抜けようとする水の進入経路(いわゆる沿面距離)を長くするラビリンス構造を有することとなり、優れた液密機能を発揮する。なお、リブ53の下面と当接面38bとは、互いに完全に密着するように配置されていてもよいし、液密部9を通じた油などの液体の移動を抑制できる程度に十分に小さな間隔をあけて配置されていてもよいし、一部分において密着し且つ他の部分において間隔をあけて配置されていてもよい。即ち、液密部9が所望の液密性能を発揮できる限り、受け部38及びリブ53の接触の度合いは、特に制限されない。
【0054】
以上により、カバー5のハウジング4への取り付けが完了し、図1に示すように、コネクタ付き電線1が得られる。
【0055】
なお、図6(a)に示すように、カバー5の取付完了状態では、下側のボルト61は、カバー5の隔壁52の直下に位置する。このため、下側のボルト61が不完全な締結により上方に浮いた状態にて、カバー5をハウジング4に取り付けようしても、カバー5の隔壁52のリブ53が下側のボルト61に干渉することで、カバー5を取付完了位置まで移動することができない。このため、カバー5を取付完了位置まで移動することができないことを検知することで、下側のボルト61が不完全な締結により上方に浮いた状態にあることを検知できる。
【0056】
カバー5の取付完了状態では、電線2は、カバー5の電線引出部54から延出している。このため、締結固定後の端子金具3が、正規位置から意図せずに緩み向き(ボルト61が緩められる回転方向、上方からみて反時計回り方向(左回り方向))に回転しようとしても、電線2が電線引出部54の後縁部に当接することで、当該端子金具3の回転が抑制され得る。
【0057】
図1に示す完成したコネクタ付き電線1は、車両の変速機のハウジングに取り付けられると共に、コネクタ嵌合部32に相手側コネクタが挿入され嵌合される。これにより、上述したように、相手側コネクタに収容された相手側端子と、ハウジング4に内蔵されたバスバ7とが電気的に接続される。
【0058】
この結果、相手側コネクタの相手側端子に接続された相手側電線と、端子金具3に接続された電線2とが、ハウジング4に内蔵されたバスバ7を介して、電気的に接続される。電線2は、車両の所定のアースポイントに接地(アース)される。これにより、電線2に電気的に接続された相手側電線も接地(アース)される。
【0059】
コネクタ付き電線1が車両の変速機のハウジングに取付られた状態では、上述したように、カバー取付部33(即ち、カバー5)は、変速機の潤滑油中に位置する。よって、カバー取付部33に位置するバスバ7の被締結部7aも潤滑油に晒されることになる。ハウジング4にカバー5を取り付けることで、潤滑油中の金属粉がバスバ7の被締結部7aに接触することが抑制され得る。
【0060】
<作用・効果>
以上、本発明の実施形態に係るコネクタ付き電線1に含まれるコネクタ6によれば、ハウジング4にカバー5が取り付けられることで、ハウジング4とカバー5との間に複数の収容室36が画成される。この複数の収容室36の各々に、バスバ7の被締結部7a(即ち、バスバ7とボルト61との締結箇所)が収納される。更に、バスバ7の一の被締結部7aと他の被締結部7aとの間に位置する収容室36の隔壁(ハウジング4が有する隔壁37及びカバー5が有する隔壁52)には、カバー5が有するリブ53とハウジング4が有する受け部38とが当接して構成される液密部9が設けられる。この液密部9は、隔壁37,52間を通り抜けようとする水や油などの液体の進入経路(いわゆる沿面距離)を長くする構造(いわゆるラビリンス構造)を有することとなり、優れた液密機能を発揮する。その結果、一般の使用環境下でコネクタ6が用いられる場合であっても、水や油などにコネクタ6が晒される過酷な環境下(例えば、変速機の潤滑油中)でコネクタ6が用いられる場合であっても、バスバ7同士の間を適正に電気的に隔離できる。
【0061】
更に、ハウジング4が有する係止部(係止突起41a,42a)とカバー5が有する被係止部(係止片55,56)とが係合する過程で、受け部38が有する傾斜面38cに、リブ53が接触して撓みながら摺動する。よって、リブ53と受け部38とが単純に付き当てられる場合に比べ、リブ53と受け部38との接触が上記係合の妨げになり難い。加えて、上記係合が完了すると、リブ53が、その傾斜面38cに沿って押し戻され、当接面38bに当接して液密部9を構成する。よって、この押し戻しに伴って係止部と被係止部との間の隙間(クリアランスG)が小さくなり、ハウジング4とカバー5との位置ズレが抑制される。
【0062】
したがって、本実施形態に係るコネクタ6は、端子金具3をバスバ7にボルト61で締結する構成を有していてもバスバ7同士の意図しない短絡を抑制可能である。更に、本実施形態に係るコネクタ6は、ハウジング4とカバー5との取り付けが容易であり、且つ、取り付け後の両者間の位置ズレを抑制できる。
【0063】
更に、本実施形態に係るコネクタ6によれば、当接面38bは、係合部と被係止部との係合の完了時に向かい合うことになるリブ53の下面に沿うような形状を有している。よって本実施形態に係るコネクタ6は、当接面38bとリブ53の下面との間の密閉性を向上できる。
【0064】
更に、本実施形態に係るコネクタ6によれば、リブ53は、リブ53が傾斜面38cに接触しているときの撓み量よりも、そのリブ53が当接面38bに接触しているときの撓み量が小さい、ように構成される。よって、ハウジング4とカバー5との取り付け後にリブ53と受け部38との間に生じる摩耗などに起因して生じるリブ53及び受け部38の劣化を低減できる。
【0065】
更に、本実施形態に係るコネクタ6によれば、当接面38bは、ハウジング4とカバー5との取付方向(前後方向)に沿うように延びる形状を有する。よって、ハウジング4及びカバー5の製造時に生じ得る寸法上の誤差(いわゆる製造ばらつき)の大小によらず、当接面38bとリブ53との間の密閉性を維持し易い。
【0066】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0067】
上記実施形態では、ハウジング4が有する隔壁37に設けられた受け部38と、カバー5が有する隔壁52に設けられたリブ53との協働によって液密部9が構成されている。これに対し、ハウジング4が有する隔壁37に設けられたリブと、カバー5が有する隔壁52に設けられた受け部との協働によって液密部が構成されてもよい。
【0068】
更に、上記実施形態では、ハウジング4が有する係止部(係止突起41a,42a)とカバー5が有する被係止部(係止片55,56)とが係合するように構成されている。これに対し、ハウジング4が有する被係止部(係止片)とカバー5が有する係止部(係止突起)とが係合するように構成されてもよい。
【0069】
更に、上記実施形態では、溝部47の当接面38bと傾斜面38cとは組付方向に対する傾斜角度が異なっている。即ち、当接面38bは組付方向に対してほぼ平行に延びており、傾斜面38cは組付方向に対して傾いて延びている。しかし、ハウジング4とカバー5との組み付け後に当接面38bとリブ53とが液密部9を構成できる限り、当接面38bは、傾斜面38cと同じように組付方向に対して傾くように(即ち、当接面38bと傾斜面38cとが連続して一つの面を構成するように)構成されてもよい。
【0070】
更に、上記実施形態では、ナット設置部39と隔壁37とが一体化されている。これに対し、ナット設置部39と隔壁37が独立して設けられていてもよい。
【0071】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ6の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
複数の端子(7)と、前記複数の前記端子(7)を保持するハウジング(4)と、前記ハウジング(4)に取り付けられるカバー(5)と、を備えるコネクタ(6)であって、
前記ハウジング(4)と前記カバー(5)との取り付けの際、前記ハウジング及び前記カバーの一方(4)が有する係止部(41a,42a)が、前記ハウジング及び前記カバーの他方(5)が有する被係止部(55,56)に係合し、
前記複数の前記端子(7)の各々は、
ボルト(61)を用いた締結によって端子金具(3)を接続可能な被締結部(7a)を有し、
前記被締結部(7a)の各々は、
前記ハウジング(4)と前記カバー(5)との間に画成される複数の収容室(36)の各々に収容され、
一の前記被締結部(7a)と他の前記被締結部(7a)との間に位置する前記収容室(36)の隔壁(37,52)は、
前記ハウジング及び前記カバーの一方(5)が有するリブ(53)と他方(4)が有する受け部(38)とが当接して構成される液密部(9)を、当該隔壁(37,52)の少なくとも一部に有し、
前記リブ及び前記受け部の一方(38)は、
前記ハウジング(4)と前記カバー(5)との取付方向に対して傾く傾斜面(38c)であって、前記係止部(41a,42a)と前記被係止部(55,56)との係合の途中に前記係合に伴って移動する前記リブ及び前記受け部の他方(53)が接触して摺動する傾斜面(38c)と、前記係合の完了時に前記傾斜面(38c)に沿って前記摺動の向きとは逆向きに移動する前記他方(53)が当接して前記液密部(9)を構成する当接面(38b)と、を有する、
コネクタ(6)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(6)において、
前記当接面(38b)は、
前記係合の完了時に当該当接面(38b)に向かい合う前記他方(53)の表面に沿う形状を有する、
コネクタ(6)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタ(6)において、
前記リブ及び前記受け部の前記他方(53)は、
当該他方(53)が前記傾斜面(38c)に接触しているときの撓み量よりも、当該他方(53)が前記当接面(38b)に当接しているときの撓み量が小さい、ように構成される、
コネクタ(6)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載のコネクタ(6)において、
前記当接面(38b)は、
前記取付方向に沿うように延びる形状を有する、
コネクタ(6)。
【符号の説明】
【0072】
3 端子金具
4 ハウジング
5 カバー
6 コネクタ
7 バスバ(端子)
7a 被締結部
9 液密部
36 収容室
37 隔壁
38 受け部
38b 当接面
38c 傾斜面
41a 係止突起(係止部)
42a 係止突起(係止部)
52 隔壁
53 リブ
55 係止片(被係止部)
56 係止片(被係止部)
61 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8