(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】船舶用操縦装置
(51)【国際特許分類】
B63H 25/02 20060101AFI20240326BHJP
B63H 21/22 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B63H25/02 Z
B63H21/22 C
(21)【出願番号】P 2020123245
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019141426
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】金城 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 武史
(72)【発明者】
【氏名】田高田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西村 健太
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健志
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-076029(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135371(WO,A1)
【文献】特開2012-059075(JP,A)
【文献】実開昭57-189010(JP,U)
【文献】特開2006-062481(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0092257(KR,A)
【文献】米国特許第09828080(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/02
B63H 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者によって操作される
マスターハンドルと、モータで前記マスターハンドルに同期されるスレーブハンドルとの間で切替可能な複数のハンドルとを備えた、推進機関に対する出力指示が入力される操作部と、
前記操作部を駆動可能なモータと、
前記
マスターハンドルの操作位置を検出するセンサと、
前記操作部が前記マスターハンドルのときは、前記操作者の操作により前記
マスターハンドルが所定位置に到達したことを前記センサが検出すると、
前記操作部が操作された方向と反対方向に力が生じるように前記モータを駆動制御することで力覚を刺激して前記操作者に報知する報知部
と、を備え、
前記モータは、前記操作部がスレーブハンドルのときは、前記操作者の操作により前記マスターハンドルが所定位置に到達したことを前記センサが検出すると、前記モータを駆動して、前記操作部を前記所定位置まで移動させて前記スレーブハンドルを前記マスターハンドルに同期させることを特徴とする
船舶用操縦装置。
【請求項2】
前記所定位置を設定する設定部を備える請求項
1に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記操作者の設定動作により前記所定位置を設定する請求項
2に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項4】
設定された前記所定位置を解除する解除部を備える請求項
1に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項5】
前記解除部は、前記操作者の解除動作により設定された前記所定位置を解除する請求項
4に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項6】
前記操作者によって設定された前記操作位置の履歴情報を記憶する履歴情報記憶部を備え、
前記設定部は、前記履歴情報に基づいて前記所定位置を設定する請求項
2に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項7】
前記履歴情報は、前記操作部が停止しているときの前記操作位置および前記停止が継続する時間を含み、
前記設定部は、前記停止が継続する時間が所定の時間より長いとき当該操作位置を前記所定位置に設定する請求項
6に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項8】
設定された前記所定位置を解除する解除部を備え、
前記解除部は、前記履歴情報に基づいて前記所定位置を解除する請求項
7に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項9】
前記解除部は、設定された前記所定位置で前記操作部の停止が継続する時間が所定の時間より短いとき当該所定位置を解除する請求項
8に記載の
船舶用操縦装置。
【請求項10】
前記報知部は、前記操作者の操作により前記操作部が複数の所定位置の1つに到達したことを前記センサが検出すると、前記複数の所定位置ごとに異なる大きさ
の力が生じるように前記モータを駆動制御することで前記操作者に報知する請求項
1から9のいずれかに記載の
船舶用操縦装置。
【請求項11】
設定された前記所定位置を表示する表示部を備える請求項
2から10のいずれかに記載の
船舶用操縦装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置および船舶用操縦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用推進機の遠隔操縦装置には、推進機を制御するための制御ハンドル(以下、「ハンドル」と略称する)が設けられている。操作者はこのハンドルを動かすことにより、推進機の出力や回転方向を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下、ハンドルが操作可能な範囲内において現在ある位置を「操作位置」と呼ぶ。前述の遠隔操縦装置では、操作者はハンドルの指針とパネルの目盛りを見て操作位置を把握することができる。
【0005】
一方ハンドルには、操作位置が所定の位置(以下、「ノッチポジション」と呼ぶ)に到達すると、操作者の力覚を刺激して感覚を生じさせるためのメカニカルな機構が設けられている。以下、ハンドルがノッチポジションに到達したときに操作者が感じる感覚を「ノッチ感」と呼ぶ。
【0006】
ノッチポジションは、例えばハンドルの指針が各目盛りの中央位置にあるときに相当する。こうしたメカニカルな機構は、例えばバネ力で押さえられた剛球と、V字型またはU字型の溝とを用いて構成することができる。これにより操作者は、手の感覚だけで操作位置を把握することができる。従って操作者は、ハンドルを見ることなく、船の周囲の状況などを目で確認しながらハンドルを操作することができる。すなわち上記のハンドルは、メカニカルな機構により生成したノッチ感を用いて、操作部が所定の操作位置に到達したことを操作者に報知している。
【0007】
次に、現行のエレクトリックシャフト機能を有する遠隔操縦装置について説明する。このような遠隔操縦装置で使われるハンドルは、例えばブリッジセンター、左舷ウィングおよび右舷ウィングの3か所といったように、船内の複数の場所にそれぞれ配置される。操作者はこれらのいずれの場所からも船を操縦することができる。
【0008】
操縦時には、これら複数のハンドルのうちいずれか1つが、操作者の操作を受け付けるハンドルとして選択される。以下、操作者によって操作されるハンドルを「マスターハンドル」と呼ぶ。残りのハンドルは、マスターハンドルの動きに同期して動く。以下、マスターハンドルに同期して動くハンドルを「スレーブハンドル」と呼ぶ。これら複数のハンドルにはそれぞれ、自分がスレーブハンドルの時にマスターハンドルに同期して動くためのモータが組み込まれている。
【0009】
前述のようにハンドルには同期用のモータが組み込まれている。従ってこのままでは操作者がマスターハンドルを手動操作するとき、モータ軸も一緒に回さなくてはならない。このモータ軸を回すための負荷は大きいため、操作者はハンドルをスムーズに動かすことができなくなってしまう。
【0010】
これを解決するために、モータの動力をハンドルに伝達する伝達系統には、以下のような滑りクラッチが組み込まれている。すなわちこの滑りクラッチは、ハンドルに加えられる力が所定の大きさより小さいときは滑らない。従ってこのときハンドルとモータとの間で力が伝達される(以下、この所定の大きさの力を「滑り限界力」と呼ぶ)。ハンドルに加えられる力が増加し滑り限界力以上になると滑りクラッチは滑る。従ってこのときハンドルとモータとの間の力の伝達は遮断される。こうして操作者は、滑り限界力以上の力をハンドルに加えることにより、同期用モータ軸を回すことなくハンドルを動かすことができる。
【0011】
さて前述のノッチ感を生成するメカニカルな機構は、ハンドルがノッチポジションに到達したとき、ハンドルに加えられる力と反対方向の力を与える(以下、この反対向きの力を「ノッチ力」と呼ぶ)。ここでハンドルに加えられる力は、ハンドルがマスターハンドルのときは操作者によって加えられる力である。操作者はこのノッチ力によって生成されるノッチ感を感じることにより、ハンドルがノッチポジションに到達したことを把握することができる。一方ハンドルがスレーブハンドルのときは、ハンドルに加えられる力は同期用のモータによって加えられる力である。この場合ノッチ力は、当該ハンドルをマスターハンドルに同期させようとする力と反対向きの力となる。
【0012】
上述のメカニカルな機構で生成したノッチ感を用いて操作者に操作位置を報知する技術には、以下のような課題がある。例えばグリス切れなどが原因で上記のメカニカルな機構の動きが渋くなった場合、ノッチ力は正常時より大きくなる。このときハンドルがマスターハンドルであるときは、操作者はノッチ感が強まったと感じる。一方このハンドルがスレーブハンドルであるときは、増加したノッチ力に打ち勝って当該ハンドルを駆動してマスターハンドルに同期させるためには、同期用モータの出力を増加する必要がある。このときもしノッチ力が滑り限界力以上であると、同期用モータの力も滑り限界力以上としなければならない。しかしながらこうすると滑りクラッチが滑って、モータは空転してしまう。すなわちメカニカルな機構が原因となって、スレーブハンドルをマスターハンドルに同期させることができなくなってしまう。
【0013】
さらにノッチポジションとノッチポジションとの間で船を操縦したい場合、操作者は、ハンドルを微調整して操作位置を決める。しかしながらこのような操作位置は、船の種類、航路あるいは操作者の好みなどにより、よく使われる位置が決まっていることがある。操作者は、このよく使われる位置に付箋などを貼るなどすることにより、目視で操作位置を設定することもある。しかしこの場合操作者は、手の感覚だけで操作位置を把握することができない。
【0014】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、メカニカルな機構に依存することなく、操作部が所定の位置に到達したことを操作者に報知する操作装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の操作装置は、操作部と、操作部の操作位置を検出するセンサと、操作部が所定位置に到達したことをセンサが検出すると、力覚、聴覚および嗅覚の少なくとも1つを刺激して操作者に報知する報知部とを備える。
【0016】
本発明の別の態様は、船舶用操縦装置である。この装置は、操作者によって操作されて、推進機関に対する出力指示が入力される操作部と、操作部の操作位置を検出するセンサと、操作者の操作により操作部が所定位置に到達したことをセンサが検出すると、力覚、聴覚および嗅覚の少なくとも1つを刺激して操作者に報知する報知部とを備える。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メカニカルな機構に依存することなく、操作部が所定の位置に到達したことを操作者に報知する操作装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態から第3実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】第4実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】第5実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】第6実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】第7実施形態に係る船舶用操縦装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】第8実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第9実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】第10実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】第11実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】第12実施形態に係る操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態を基に図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態から第3実施形態に係る操作装置1の構成を示す機能ブロック図である。操作装置1は、操作部10と、センサ11と、報知部12とを備える。
【0022】
[第1実施形態]
以下、
図1を参照しながら第1実施形態に係る操作装置1の動作を説明する。
【0023】
操作部10は、操作者の操作を受け付ける部分であり、例えばハンドルやレバー等である。操作部10は所定の操作位置にセットされる。例えば操作部10が船舶用の操縦ハンドルである場合、操作部10がセットされた操作位置に対応して推進機の出力やスクリューの回転方向が定まる。
【0024】
センサ11は、操作部10の操作位置を検出する。センサ11は、検出した操作位置を報知部12に通知する。
【0025】
報知部12は、操作位置が所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、操作者の力覚、聴覚および嗅覚の少なくとも1つを刺激する。これにより報知部12は、操作位置が所定の位置に到達したことを操作者に報知する。
【0026】
力覚は五感のうち触覚に関係する感覚で、人が物体と接触したときに感じる力感覚である。例えば報知部12は、操作部10が所定位置に到達すると、操作部10を操作する手にノッチ感や抵抗感などを感じさせてもよい。以下、操作者が操作部を動かすときに、当該操作部から受ける抵抗感または手応えを「操作抵抗」と呼ぶ。
【0027】
聴覚は、音波の刺激によって人に生じる感覚である。報知部12は、操作部10が所定位置に到達すると、操作者がクリック音や電子音などを聞かせてもよい。
【0028】
嗅覚はにおいの感覚である。報知部12は、操作部10が所定位置に到達すると、操作者に所定のにおいを嗅がせてもよい。
【0029】
本実施形態によれば、メカニカルな機構を利用することなく、操作部10が所定の位置に到達したことを操作者に報知することができる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、やはり
図1を参照しながら、第2実施形態に係る操作装置1の動作を説明する。第1実施形態に係る操作装置1と共通する部分は説明を省略し、相違する部分に焦点を当てて説明する(以下同様)。
【0031】
報知部12は、操作位置が所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、操作部10の操作抵抗を当該所定位置に到達する前に比べて増加させる。これにより報知部12は、操作位置が所定の位置に到達したことを操作者に報知する。
【0032】
操作抵抗はモータ等によって生成してよく、操作抵抗の強弱の制御はモータ等の出力を制御することにより行ってよい。
【0033】
操作者は、操作部10を操作する手に感じる操作抵抗が強まったことにより、操作部10が所定位置に到達したことを把握することができる。すなわち本実施形態によれば、メカニカルな機構を利用することなく、操作者が手に感じる操作感を創出することができる。
【0034】
[第3実施形態]
次に、やはり
図1を参照しながら、第3実施形態に係る操作装置1の動作を説明する。
【0035】
報知部12は、操作位置が所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、複数の所定位置ごとに異なる大きさで操作部10の操作抵抗をそれぞれの所定位置に到達する前に比べて増加させる。これにより報知部12は、操作部10が複数の所定位置の1つに到達したことを、各所定位置に応じた大きさの操作抵抗で操作者に報知する。
【0036】
以下、操作部10が船舶用のハンドルである場合を例に、具体的に説明する。船舶用のハンドルでは、操作位置は複数の所定の操作位置(ノッチポジション)を備え、ハンドルはこれらのいずれかにセットされる。例えばノッチポジションは、中央のSTOP位置、STOP位置より前方に配置される複数のAHEAD位置およびSTOP位置より後方に配置される複数のASTERN位置を備える。ハンドルがSTOP位置のとき、推進機の出力は停止する。ハンドルがAHEAD位置のとき、推進機は船を前進させる。ハンドルがASTERN位置のとき、推進機は船を後進させる。
【0037】
AHEAD位置は例えば、STOP位置に近い位置から前方に向けて順に、DEAD SLOW位置、SLOW位置、HALF位置、FULL位置およびNAV.FULL位置を備える。同様にASTERN位置も例えば、STOP位置に近い位置から後方に向けて順に、DEAD SLOW位置、SLOW位置、HALF位置およびFULL位置を備える。AHEAD位置、ASTERN位置ともに、ノッチポジションがSTOP位置から離れるほど推進機の出力は強くなる。
【0038】
例えば報知部12は、ハンドルがSTOP位置に到達したとき、最も弱い操作抵抗を与えて操作者に報知してよい。さらにハンドルがSTOP位置から前方または後方に向けて一方向に動かされ、DEAD SLOW位置、SLOW位置、HALF位置、FULL位置、NAV.FULL位置に到達するたびに、徐々に操作抵抗を強めて操作者に通知してよい。すなわち推進機の出力が強いほど、操作者が手に感じる操作抵抗は強いものであってよい。
【0039】
本実施形態によれば、操作位置が複数のノッチポジションを備える場合、操作者は各ノッチポジションに応じた大きさの操作抵抗を感じるため、操作部がどのノッチポジションに到達したかを把握することができる。
【0040】
[第4実施形態]
図2は、本発明の第4実施形態に係る操作装置2の構成を示す機能ブロック図である。
図2の操作装置2は、
図1の操作装置1の構成要素に加えて、モータ13を備える。
【0041】
モータ13は操作部10に接続され、操作部10を駆動する。
【0042】
センサ11は、操作部10の操作位置と操作部10が操作された方向とを検出する。センサ11は、検出した操作位置と、操作された方向とを報知部12に通知する。
【0043】
報知部12は、操作位置が所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、操作部10が操作された方向と反対方向に力が生じるようモータ13を駆動制御する。これにより報知部12は、操作位置が所定の位置に到達したことを操作者に報知する。
【0044】
操作者は、操作部10を操作する方向と反対方向の力によって生じる操作抵抗を感じることにより、ノッチ感と似た感覚で操作部10がノッチポジションに到達したことを把握することができる。すなわち本実施形態によれば、メカニカルな機構に代えてモータを利用することにより、従来の操作装置のノッチ感に相当する操作感を創出することができる。
【0045】
[第5実施形態]
図3は、本発明の第5実施形態に係る操作装置3の構成を示す機能ブロック図である。
図3の操作部10は、第1ハンドル14aと、第2ハンドル14bと、第3ハンドル14cと、第1モータ13aと、第2モータ13bと、第3モータ13cとを備える。
【0046】
第1モータ13aは第1ハンドル14aに接続され、第1ハンドル14aを駆動する。第2モータ13bは第2ハンドル14bに接続され、第2ハンドル14bを駆動する。第3モータ13cは第3ハンドル14cに接続され、第3ハンドル14cを駆動する。
【0047】
第1ハンドル14a、第2ハンドル14bおよび第3ハンドル14cは船内の複数の場所にそれぞれ配置される。例えば第1ハンドル14aはブリッジセンターに配置され、第2ハンドル14bは左舷ウィングに配置され、第3ハンドル14cは右舷ウィングに配置されるといった具合である。
【0048】
第1ハンドル14a、第2ハンドル14bおよび第3ハンドル14cは、これらのいずか1つがマスターハンドルとなり、残りの2つがスレーブハンドルとなるように切替可能である。マスターハンドルは、操作者によって操作される。スレーブハンドルは、当該ハンドルに接続されたモータで駆動されてマスターハンドルに同期される。
【0049】
以下、第1ハンドル14aがマスターハンドルであり、第2ハンドル14bおよび第3ハンドル14cがスレーブハンドルであるときを例に、具体的に説明する。第1ハンドル14aは操作者によって操作される。第2ハンドル14bおよび第3ハンドル14cは、それぞれ第2モータ13bおよび第3モータ13cで駆動されて第1ハンドル14aに同期される。
【0050】
センサ11は、マスターハンドルである第1ハンドル14aの操作位置を検出する。センサ11は、検出した操作位置を報知部12に通知する。
【0051】
報知部12は、第1ハンドル14aが所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、操作者の力覚、聴覚および嗅覚の少なくとも1つを刺激する。これにより報知部12は、操作位置が所定の位置に到達したことを操作者に報知する。
【0052】
上記の具体例では、第1ハンドル14aがマスターハンドルであり、第2ハンドル14bおよび第3ハンドル14cがスレーブハンドルである。しかしこれに限られず、第2ハンドル14bがマスターハンドルであり、第3ハンドル14cおよび第1ハンドル14aがスレーブハンドルであってもよい。あるいは第3ハンドル14cがマスターハンドルであり、第1ハンドル14aおよび第2ハンドル14bがスレーブハンドルであってもよい。
【0053】
図3の操作部10は3組のハンドルとモータを備えるが、これらは3組に限られず任意の数の組であってよい。
【0054】
本実施形態によれば、マスターハンドルとスレーブハンドルとの間で切替可能な複数のハンドルで構成される操作装置に関し、メカニカルな機構を利用することなく、マスターハンドルが所定の位置に到達したことを操作者に報知することができる。
【0055】
[第6実施形態]
図4は、本発明の第6実施形態に係る操作装置4の構成を示す機能ブロック図である。
図4の報知部12は、第1モータ13a、第2モータ13bおよび第3モータ13cを駆動制御する。
図4の操作装置4のその他の構成は、
図3の操作装置3の構成と共通である。
【0056】
第5実施形態と同様に、第1ハンドル14aがマスターハンドルであり、第2ハンドル14bおよび第3ハンドル14cがスレーブハンドルであるときを例に、具体的に説明する。
【0057】
センサ11は、マスターハンドルである第1ハンドル14aの操作位置と第1ハンドル14aが操作された方向とを検出する。センサ11は、検出した操作位置と、操作された方向とを報知部12に通知する。
【0058】
報知部12は、第1ハンドル14aが所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、第1ハンドル14aが操作された方向と反対方向に力が生じるよう第1モータ13aを駆動制御する。これにより報知部12は、操作位置が所定の位置に到達したことを操作者に報知する。
【0059】
各ハンドルに接続されたモータは、当該ハンドルがマスターハンドルのときは、従来の操作装置のノッチ感に相当する操作感を創出することに使われる。一方当該ハンドルがスレーブハンドルのときはモータは、当該ハンドルをマスターハンドルに同期させるために駆動することに使われる。すなわち本実施形態によれば、各ハンドルがマスターハンドルであるかスレーブハンドルであるかに応じて、1つのモータに2つの役割を兼ねさせることができる。例えば同期用モータを備えた現行の遠隔操縦装置に本実施形態を適用することにより、新たにモータを追加することなく、メカニカルな機構に代えてモータを利用してノッチ感に相当する操作感を創出することができる。
【0060】
本実施形態によれば、マスターハンドルとスレーブハンドルとの間で切替可能な複数のハンドルで構成される操作装置に関し、メカニカルな機構に代えてモータを利用することにより、従来の操作装置のノッチ感に相当する操作感を創出することができる。
【0061】
[第7実施形態]
図5は、本発明の第7実施形態に係る船舶用操縦装置5の構成を示す機能ブロック図である。船舶用操縦装置5は、操作部15と、センサ11と、報知部12とを備える。
【0062】
操作部15は、操作者によって操作されて、推進機関に対する出力指示が入力される。操作部15は、複数の所定の操作位置(ノッチポジション)のいずれかにセットされる。例えばノッチポジションは、中央のSTOP位置、STOP位置より前方に配置される複数のAHEAD位置およびSTOP位置より後方に配置される複数のASTERN位置を備える。操作部15がSTOP位置にセットされたとき、推進機の出力は停止する。ハンドルがAHEAD位置のとき、推進機は船を前進させる。操作部15がASTERN位置にセットされたとき、推進機は船を後進させる。
【0063】
センサ11は、操作部15の操作位置を検出する。センサ11は、検出した操作位置を報知部12に通知する。
【0064】
報知部12は、操作位置が所定位置に到達したことをセンサ11から通知されると、操作者の力覚、聴覚および嗅覚の少なくとも1つを刺激する。これにより報知部12は、操作位置が所定の位置に到達したことを操作者に報知する。
【0065】
制御対象となる推進機関は一般に船舶用の推進機関である。こうした船舶は、例えばウォータージェット船、電気推進船、ハイブリッド推進船、ガスエンジン船、ディーゼルエンジン船などを含む。
【0066】
本実施形態によれば、メカニカルな機構を利用することなく、操作部15が所定の位置に到達したことを操作者に報知することができる船舶用操縦装置を実現することができる。
【0067】
[第8実施形態]
図6は、本発明の第8実施形態に係る操作装置6の構成を示す機能ブロック図である。操作装置6は、操作部10と、センサ11と、報知部12と、設定部16とを備える。
【0068】
設定部16は、前述の所定位置、すなわち操作位置がこの位置に到達したことをセンサ11から通知された報知部12が操作者の力覚、聴覚および嗅覚の少なくとも1つを刺激する位置を設定する。一例として報知部12は、設定部16が設定した所定位置に操作部10が到達すると、操作者の手にノッチ感を感じさせる。これにより操作者は、予め設定されたメカニカルな機構によるノッチポジションに加えて、新たに設定部16が設定した所定位置でもノッチ感を感じ、操作位置を把握することができる。すなわちこの実施形態によれば、報知部12が報知するための所定の位置(例えばノッチポジション)を柔軟に設定することができる。
【0069】
ある実施の形態では、設定部16は、操作者の設定動作により所定位置を設定してもよい。この場合設定部16は、ハンドルと、操作抵抗により操作者にノッチ感を与えるモータと、ノッチポジションを設定するための押し釦とを含んで構成されてよい。操作者はハンドルを操作し、ハンドルが所望の位置に到達したとき設定用の押し釦を押す。これにより、当該所望の位置にノッチポジションが設定される。この実施の形態によれば、操作者は、自分の好みや船の航路に応じて、報知部12が報知するための所定の位置(例えばノッチポジション)を自由に設定することができる。
【0070】
[第9実施形態]
図7は、本発明の第9実施形態に係る操作装置7の構成を示す機能ブロック図である。操作装置7は、操作部10と、センサ11と、報知部12と、設定部16と、解除部17とを備える。
【0071】
解除部17は、設定部16によって設定された所定位置を解除する。操作装置7は様々な操作者によって使われ、また様々な航路を航行するために使われる。このとき、報知部12が報知するための所定の位置(例えばノッチポジション)は、操作者や航路によって変わり得る。従って設定部16によって設定された所定位置は、自由に解除できることが望ましい。すなわちこの実施形態によれば、一旦設定した所定の位置(例えばノッチポジション)を柔軟に解除することができる。
【0072】
ある実施の形態では、解除部17は、操作者の解除動作により、設定された所定位置を解除してもよい。この場合解除部17は、ハンドルと、操作抵抗により操作者にノッチ感を与えるモータと、ノッチポジションを解除するための押し釦とを含んで構成されてよい。操作者は、ハンドルが解除したい所定の位置にあるとき、解除用の押し釦を押す。これにより、当該所望の位置に設定されたノッチポジションが解除される。この実施の形態によれば、操作者は、自分の好みや船の航路に応じて、報知部12が報知するための所定の位置(例えばノッチポジション)を自由に解除することができる。
【0073】
[第10実施形態]
図8は、本発明の第10実施形態に係る操作装置8の構成を示す機能ブロック図である。操作装置8は、操作部10と、センサ11と、報知部12と、設定部16と、履歴情報記憶部18とを備える。
【0074】
履歴情報記憶部18は、操作者によって設定された操作位置の履歴情報を記憶する。設定部16は、この履歴情報に基づいて所定位置を設定する。
【0075】
本明細書において「操作位置の履歴情報」とは、航海中の操作者の操作による操作部10の操作位置の時間的変化に関する情報のことをいう。例えば履歴情報は、操作部10が停止しているときの操作位置、操作部10の停止が継続する時間、操作位置ごとの停止の回数、操作位置の切り替え速度などであってよい。履歴情報はまた、船が出港地を離岸してからの一定の時間帯、外洋を航行中の時間帯、入港地に着岸するまでの一定の時間帯といったように、航行の時間帯ごとに分類して記憶されてもよい。さらに履歴情報は、1回の航海に関するものであってもよいし、数日や数か月といった複数回数の航海を集積したものであってもよい。
【0076】
設定部16は、この履歴情報に基づいて、所定位置を自動的に設定する。例えば、履歴情報記憶部18は操作部10が停止した回数を操作位置ごと記憶し、設定部16は停止回数が一定値より多かった位置を所定位置に設定してもよい。この場合、操作者がより頻繁に設定した操作位置が所定の位置として自動的に設定される。あるいは履歴情報記憶部18は操作位置の切り替え速度を記憶し、設定部16は当該位置への切替速度が一定値より速かった位置を所定位置に設定してもよい。この場合、操作者がより迅速に設定した操作位置が所定の位置として自動的に設定される。
【0077】
履歴情報記憶部18は、履歴情報を航行の時間帯ごとに分類して記憶してもよい。このとき設定部16は、航行の時間帯ごとに異なる基準で所定位置を設定してもよい。例えば離岸時や接岸時は、船はより低速で航行する。逆に外洋を航行中は、船はより高速で航行する。このことから設定部16は、離岸時および接岸時は低速側でよりきめ細かく所定位置を設定し、外洋を航行中は高速側でよりきめ細かく所定位置を設定すると有利である。これにより、より実用的な所定位置の設定が可能となる。
【0078】
ある実施の形態では、履歴情報は、操作部10が停止しているときの操作位置およびこの停止が継続する時間を含む。そして設定部16は、停止が継続する時間が所定の時間より長いとき、当該操作位置を所定位置に設定する。
【0079】
操作部10の操作位置は、操作者が使いたい位置であるほど、あるいは使う必要のある位置であるほど、当該位置に停止している時間が長くなると考えられる。従って、停止が継続する時間が所定の時間より長い操作位置を所定位置に設定することにより、ユーザにとって使いやすく、有用なものとなる。すなわちこの実施の形態によれば、より実用的で使い勝手のよい操作装置を実現できる。
【0080】
[第11実施形態]
図9は、本発明の第11実施形態に係る操作装置9の構成を示す機能ブロック図である。操作装置9は、操作部10と、センサ11と、報知部12と、設定部16と、解除部17と、履歴情報記憶部18とを備える。
【0081】
履歴情報記憶部18は、操作者によって設定された操作位置の履歴情報を記憶する。解除部17は、履歴情報に基づいて、設定部16が設定した所定位置を自動的に解除する。
【0082】
例えば、履歴情報記憶部18は操作部10が停止した回数を操作位置ごと記憶し、解除部17は停止回数が一定値より少なくなった所定位置を解除してもよい。この場合、操作者があまり頻繁に使わなくなった操作位置が、所定位置から自動的に解除される。あるいは履歴情報記憶部18は操作位置の切り替え速度を記憶し、解除部17は当該位置への切替速度が一定値より遅くなった所定位置を解除してもよい。この場合、操作者があまり迅速な設定を必要としなくなった操作位置が所定位置から自動的に解除される。
【0083】
ある実施の形態では、履歴情報は、操作部10が停止しているときの操作位置およびこの停止が継続する時間を含む。そして解除部17は、設定された所定位置で操作部10の停止が継続する時間が所定の時間より短いとき当該所定位置を解除する。
【0084】
操作部10の操作位置は、操作者が使いたくない位置であるほど、あるいは使う必要のない位置であるほど、当該位置に停止している時間が短くなると考えられる。従って、停止が継続する時間が所定の時間より短くなった操作位置を所定位置から解除することにより、不要な所定位置が取り除かれ、ユーザにとっての煩わしさが減る。すなわちこの実施の形態によれば、さらに実用的で使い勝手のよい操作装置を実現できる。
【0085】
[第12実施形態]
図10は、本発明の第12実施形態に係る操作装置92の構成を示す機能ブロック図である。操作装置92は、操作部10と、センサ11と、報知部12と、設定部16と、表示部19とを備える。
【0086】
表示部19は、設定部16が設定した所定位置を表示する。表示部19は、任意の手段で実現してよい。例えば表示部19は、操作部10の操作位置に沿って配置された複数のLEDによって構成されてもよい。あるいは表示部19は、液晶などのディスプレイによって構成されてもよい。
【0087】
一般に操作者は、現在何個の所定位置がどこに設定されているかを確認したいと思う。この場合、LEDやディスプレイなどで構成した表示部19で設定された所定位置を表示させることにより、現在設定されている所定位置を容易に視認することができる。すなわちこの実施形態によれば、ユーザは、現在設定されている所定位置をリアルタイムに認識することができる。
【0088】
以上、本発明をいくつかの実施形態を基に説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0089】
(変形例)
以下、変形例について説明する。変形例の説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0090】
[変形例1]
実際の船舶の運用では、船が前進中にハンドルがASTERN位置のFULL位置に入るとエンジンに過大な負荷が掛かり、エンジンが破損する危険がある。これを防止するためにASTERN位置のFULL位置は非常時にのみ用いるものとし、通常時はストッパーなどでこの位置を遮断する場合がある。これを模擬する目的で、第3実施形態において、ASTERN位置のFULL位置に到達するときの操作抵抗を極端に強いものとしてもよい。本変形例によれば、より安全な操作装置を実現することができる。
【0091】
[変形例2]
第4実施形態において、報知部12は、操作部10がノッチポジションに所定の距離接近したとき、操作部10が操作された方向と同じ方向に力が生じるようモータ13を駆動制御してもよい。これにより操作者は、操作部10がノッチポジションに引き込まれるような感覚を得る。そして報知部12は、操作部10がノッチポジションに到達すると同時に、操作部10が操作された方向と反対方向に力が生じるようモータ13を駆動制御してもよい。これにより操作者はノッチ感を得る。さらに報知部12は、操作部10がノッチポジションを通過した後は、モータをオフにしてもよい。これにより操作者は、操作部10を自由に動かすことができる。本変形例によれば、メカニカルな機構に近いリアルな操作感を得ることができる。
【0092】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0093】
1・・操作装置、 2・・操作装置、 3・・操作装置、 4・・操作装置、 5・・船舶操縦操作装置、 10・・操作部、 11・・センサ、 12・・報知部、 13・・モータ、 13a・・第1モータ、 13b・・第2モータ、 13c・・第3モータ、 14a・・第1ハンドル、 14b・・第2ハンドル、 14c・・第3ハンドル、 15・・操作部、16・・・設定部、17・・・解除部、18・・・履歴情報記憶部、19・・・表示部。