(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/20 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F23N5/20 F
F23N5/20 102C
(21)【出願番号】P 2020152179
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013289(JP,A)
【文献】実開昭58-107461(JP,U)
【文献】特開平05-133522(JP,A)
【文献】特開平07-158844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に配置され、燃焼用空気と燃料ガスとの混合ガスを燃焼させるバーナと、バーナに燃焼用空気を供給するファンと、バーナに燃料ガスを供給するガス供給路と、ガス供給路に設けられた比例弁と、バーナに点火させる点火動作を行う点火手段と、バーナの着火を検知する着火検知手段と、ファン、比例弁及び点火手段を夫々制御するコントローラとを備えた燃焼装置であって、
コントローラには、バーナの着火に適した混合ガスの空気過剰率が初期値として予め設定され、
コントローラは、バーナでの燃焼が指示されると、混合ガスの空気過剰率を初期値にするように燃焼用空気の空気量と燃料ガスのガス量とを調整し、点火手段に点火動作を行わせてもバーナに着火しない場合、混合ガスの空気過剰率を初期値から段階的に低下させつつ、点火手段に再点火動作を繰り返し実行させるように構成されるものにおいて、
コントローラは、バーナの燃焼時間を累積して燃焼累積時間を記憶し、
コントローラには、点火手段の再点火動作に際して初期値から低下させる混合ガスの空気過剰率の下限値として、燃焼累積時間が所定の設定時間未満である場合の第1下限値と、燃焼累積時間が前記設定時間以上である場合の、第1下限値よりも高い第2下限値とが、夫々、設定されていることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記点火手段の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の前記初期値からの段階的な低下を、前記バーナに供給する燃料ガスのガス量を段階的に増加させることにより行うことを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃焼装置であって、
前記コントローラは、前記点火手段の再点火動作の繰返し数をカウントし、当該繰返し数が所定回数になっても前記バーナに着火しない場合、点火エラーであると判断し、前記燃焼の指示をキャンセルして点火エラーを報知するように構成されるものにおいて、
コントローラは、点火エラーの判断の直前に実行された点火手段の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率を記憶し、点火エラーの判断、燃焼の指示のキャンセル及び点火エラーの報知後、点火エラーの報知が解除されて燃焼が再指示されると、点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間が所定の経過時間内である場合、コントローラは、点火手段の点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率を、記憶した前記空気過剰率以下に調整することを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
前記コントローラは、記憶した前記燃焼累積時間をクリアする燃焼累積時間クリア手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に配置され、燃焼用空気と燃料ガスとの混合ガスを燃焼させるバーナと、バーナに燃焼用空気を供給するファンと、バーナに燃料ガスを供給するガス供給路と、ガス供給路に設けられた比例弁と、バーナに点火させる点火動作を行う点火手段と、バーナの着火を検知する着火検知手段と、ファン、比例弁及び点火手段を夫々制御するコントローラとを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃焼装置として、コントローラには、バーナの着火に適した混合ガスの空気過剰率が初期値として予め設定され、コントローラは、バーナで混合ガスを燃焼させる燃焼が指示されると、混合ガスの空気過剰率を初期値にするように燃焼用空気の空気量と燃料ガスのガス量とを調整し、点火手段に点火動作を行わせてもバーナに着火しない場合、混合ガスの空気過剰率を初期値から段階的に低下させつつ、点火手段に再点火動作を繰り返し実行させるように構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、燃焼装置を新規に設置する等の場合、空気がガス供給路内に残存してガス供給路内が燃料ガスで十分に置換されていない状態では、実際にバーナに供給される混合ガスの空気過剰率は初期値よりも高く、点火手段に点火動作を行わせてもバーナに着火しないという不具合が発生する。このような不具合に対し、特許文献1記載の燃焼装置では、コントローラが、混合ガスの空気過剰率を初期値から段階的に低下させつつ、点火手段に再点火動作を繰り返し実行させることで対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際にバーナに供給される混合ガスの空気過剰率が初期値であっても、例えば、点火電極でのスパークミス等の偶発的な要因によってバーナが未着火になる場合がある。この場合、特許文献1記載の燃焼装置のコントローラは、その時の混合ガスの空気過剰率が初期値よりも高いと誤判断して、空気過剰率を低下させるため、実際にバーナに供給される混合ガスの空気過剰率が過度に低くなる。このように空気過剰率が過度に低い混合ガスに対し、点火手段に再点火動作を実行させてバーナに点火させると、爆着や、一酸化炭素ガスが発生する燃焼不良等の不具合が起こる虞がある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、実際にバーナに供給される混合ガスの空気過剰率を適正に調整し、バーナの着火に至りやすくすると共に、点火手段の再点火動作時に、爆着や、燃焼不良等の不具合が起こるのを抑制することができる燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃焼室に配置され、燃焼用空気と燃料ガスとの混合ガスを燃焼させるバーナと、バーナに燃焼用空気を供給するファンと、バーナに燃料ガスを供給するガス供給路と、ガス供給路に設けられた比例弁と、バーナに点火させる点火動作を行う点火手段と、バーナの着火を検知する着火検知手段と、ファン、比例弁及び点火手段を夫々制御するコントローラとを備えた燃焼装置であって、コントローラには、バーナの着火に適した混合ガスの空気過剰率が初期値として予め設定され、コントローラは、バーナでの燃焼が指示されると、混合ガスの空気過剰率を初期値にするように燃焼用空気の空気量と燃料ガスのガス量とを調整し、点火手段に点火動作を行わせてもバーナに着火しない場合、混合ガスの空気過剰率を初期値から段階的に低下させつつ、点火手段に再点火動作を繰り返し実行させるように構成されるものにおいて、コントローラは、バーナの燃焼時間を累積して燃焼累積時間を記憶し、コントローラには、点火手段の再点火動作に際して初期値から低下させる混合ガスの空気過剰率の下限値として、燃焼累積時間が所定の設定時間未満である場合の第1下限値と、燃焼累積時間が前記設定時間以上である場合の、第1下限値よりも高い第2下限値とが、夫々、設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、燃焼累積時間が所定の設定時間未満であって、ガス供給路内の空気残存に起因して実際には初期値よりも高い空気過剰率の混合ガスがバーナに供給され、バーナに着火しないと推定される場合、コントローラは、混合ガスの空気過剰率を第1下限値に基づいて初期値から段階的に低下させ、点火手段の再点火動作を繰り返し実行させる。したがって、従前と同様に、バーナの着火に至りやすくなる。また、燃焼累積時間が所定の設定時間以上であって、ガス供給路内が混合ガスで置換されていると推定される場合、コントローラは、混合ガスの空気過剰率を第2下限値に基づいて初期値から段階的に低下させ、点火手段の再点火動作を繰り返し実行させる。したがって、混合ガスの空気過剰率を必要以上に低下させずに済み、点火手段の再点火動作時に、爆着や、一酸化炭素ガスが発生する燃焼不良等の不具合を抑制することができる。
【0009】
なお、混合ガスの空気過剰率は、バーナの点火に適した初期値と、点火手段の再点火動作に際して低下させる値の2種類に大別される。これらの内、前者は、予めコントローラに設定される値であり、燃料ガスの種類、バーナの燃焼特性、ファンの給気能力等を考慮して推定される推定値である。一方、後者には、実測値を採用することもできるが、初期値と同様な推定値を採用することができる。バーナに供給される燃焼用空気はファンの回転数と相関関係があり、また、燃焼ガスのガス量は、比例弁に通電する比例弁電流とも相関関係があることが既知である。このため、点火手段の再点火動作に際して低下させる混合ガスの空気過剰率は、必ずしも実測値にする必要はなく、ファンの回転数と比例弁電流値とから推定可能である。したがって、上記2種類の混合ガスの空気過剰率は推定値で代用することができる。
【0010】
本発明においては、上記コントローラは、上記点火手段の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の上記初期値からの段階的な低下を、上記バーナに供給する燃料ガスのガス量を段階的に増加させることにより行うことが望ましい。ここで、コントローラが行う、点火手段の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の初期値からの段階的な低下は、燃焼用空気の空気量を低減させることによっても行うことができる。燃料ガスのガス量を増加又は燃焼用空気の空気量を低減させる具体的な方法には、コントローラが行う制御に難易が生じる可能性があるが、以下の5つのパターンが想定される。
【0011】
・パターン1
燃焼用空気の空気量を所定量で一定にして燃料ガスのガス量を増加させる。
・パターン2
燃焼用空気の空気量を増加させつつ、燃料ガスのガス量を、結果として混合ガスの空気過剰率が低下するように増加させる。
・パターン3
燃焼用空気の空気量を低減させつつ、燃料ガスのガス量を増加させる。
・パターン4
燃料ガスのガス量を所定量で一定にして燃焼用空気の空気量を低減させる。
・パターン5
燃料ガスのガス量を減少させつつ、燃焼用空気の空気量も、結果として混合ガスの空気過剰率が低下するように低減させる。
【0012】
点火手段の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の初期値からの段階的な低下を、バーナに供給する燃料ガスのガス量を段階的に増加させるのは、上記パターン1、パターン2及びパターン3に該当するが、こうすることによって、上記パターン4及びパターン5と比較すると、ガス供給路内をバーナに向かって通過する燃料ガスのガス量が増加するため、ガス供給路内に残存する空気をより早く燃料ガスで置換することができる。したがって、バーナの着火が早期に実現される。
【0013】
また、本発明においては、上記コントローラは、上記点火手段の再点火動作の繰返し数をカウントし、当該繰返し数が所定回数になっても上記バーナに着火しない場合、点火エラーであると判断し、上記燃焼の指示をキャンセルして点火エラーを報知するように構成されるものにおいて、コントローラは、点火エラーの判断の直前に実行された点火手段の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率を記憶し、点火エラーの判断、燃焼の指示のキャンセル及び点火エラーの報知後、点火エラーの報知が解除されて燃焼が再指示されると、点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間が所定の経過時間内である場合、コントローラは、点火手段の点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率を、記憶した上記空気過剰率以下に調整することが望ましい。これによれば、点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間が所定の経過時間内である場合、燃焼の最初の指示及び燃焼の再指示が連続してなされた指示であると推定されるため、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を初期値よりも低くすることができる。このため、第1下限値又は第2下限値に向けての混合ガスの空気過剰率の段階的な低下を早めることができ、バーナの着火により至りやすくなる。また、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を、点火エラーの判断の直前に実行された点火手段の再点火動作に際して記憶した混合ガスの空気過剰率よりも低くする場合、混合ガスの空気過剰率の低下がより一層促進されるため、バーナの着火により有利になる。例えば、点火手段の再点火動作の繰返し数として設定される所定回数によっては、第1下限値又は第2下限値に到達することなく、点火手段の再点火動作の繰返し数が所定回数になり、コントローラが点火エラーであると判断する場合が想定される。このような場合、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を上記の通りに調整することは、バーナの早期の着火に有利になる。
【0014】
さらに、上記コントローラは、記憶した上記燃焼累積時間をクリアする燃焼累積時間クリア手段を備えることが望ましい。これによれば、燃焼装置を設置してから所定の燃焼累積時間経過後に、ガスタンクの再充填やガス供給路の更新等が行われることに伴い、ガス供給路内に空気が再び残存することに起因して実際にバーナに供給される混合ガスの空気過剰率が初期値よりも高くなる場合、燃焼累積時間クリア手段によってコントローラが記憶した燃焼累積時間をクリアすることができる。このため、点火手段の再点火動作に際して初期値から段階的に低下させる混合ガスの空気過剰率の下限値が、第2下限値から再び第1下限値に更新される。したがって、燃焼装置の新規な設置等の場合と同様に、バーナの着火に至りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の燃焼装置の一実施形態である給湯用熱源機を示す模式図。
【
図2】
図1に示す給湯用熱源機のコントローラが行う制御の第1形態を示すフローチャート。
【
図3】本発明の燃焼装置が備えるコントローラが行う制御の第2形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明の燃焼装置1の実施形態である給湯用熱源機1aの概要を説明する。給湯用熱源機1aは、燃焼筐2で囲われる燃焼室2aを備えている。燃焼室2aの下部にはバーナ3が配置され、バーナ3は、5本の単位バーナ3aが並設された第1部分3
1と、10本の単位バーナ3aが並設された第2部分3
2とを有している。また、燃焼室2aには、バーナ3の第1部分3
1に臨む点火電極31が設けられていると共に、点火電極31への高電圧印加源であり、点火手段としてのイグナイタ32が設けられている。イグナイタ32は、通電により点火動作を行い、点火電極31でスパークさせて第1部分3
1に点火させる。さらに、燃焼室2aには、バーナ3の第1部分3
1の着火を検知する着火検知手段としてフレームロッド33が設けられている。
【0017】
燃焼室2aの上部には、被加熱物として給湯用の熱交換器4が配置されている。また、燃焼筐2の下面には、バーナ3に燃焼用空気を供給するファン5が接続されている。ファン5が供給する燃焼用空気は、単位バーナ3aに直接供給される1次空気と、燃焼室2aの下部を通じて単位バーナ3aの炎口付近に供給される2次空気とからなる。バーナ3からの燃焼ガスにより熱交換器4の上流側の給水管4aからの水を加熱し、熱交換器4の下流側の出湯管4bから所定の設定温度に加熱された温水が出湯する。熱交換器4を通過した燃焼ガスは、燃焼筐2の上面に接続された排気路6から燃焼室2aの外部に排気される。
【0018】
バーナ3に燃料ガスを供給するガス供給路7には、電磁開閉弁からなる元弁71と、その下流側の比例弁72とが介設されている。また、比例弁72の下流側のガス供給路7の部分は、バーナ3の第1部分31に連なる第1分岐路7aと、バーナ3の第2部分32に連なる第2分岐路7bとに分かれている。第1分岐路7a及び第2分岐路7bの夫々には、電磁開閉弁からなる第1能力切換弁73a、第2能力切換弁73bが介設されている。バーナ3には、第1能力切換弁73a及び第2能力切換弁73bの開閉によって燃料ガスが第1部分31、又は第1部分31及び第2部分32の両方に供給される。こうして、バーナ3の燃焼能力が2段階に切り換わるようにしている。なお、イグナイタ32の点火動作に際してバーナ3には、燃料ガスと燃焼用空気の混合ガスが供給される。
【0019】
また、給湯用熱源機1aは、ファン5、元弁71、比例弁72、第1能力切換弁73a、第2能力切換弁73b及びイグナイタ32を制御するコントローラ8を備えている。コントローラ8は、CPU,ROM,RAM,A/Dコンバータ、インターフェース等を備えるマイクロコンピュータから構成される。フレームロッド33は、コントローラ8に接続されている。
【0020】
図2を参照して、
図1に示すコントローラ8が実行する制御の第1形態を説明する。なお、「混合ガスの空気過剰率」とは、
図1に示すバーナ3で燃料ガスを燃焼させるために必要な燃焼用空気の空気量の理論量に対する実際に供給されている燃焼用空気の空気量の乖離率である。この混合ガスの空気過剰率は、上述したように、実測することも可能であるが、バーナ3に供給する燃焼用空気の空気量は、ファン5の回転数と相関関係があることが既知である。また、バーナ3に供給する燃料ガスのガス量は、比例弁72に通電する比例弁電流とも相関関係があることが既知である。このため、混合ガスの空気過剰率は、ファン5の回転数と比例弁72に通電する比例弁電流とにより推定可能である。そこで、本実施形態では、後述する再点火動作に際して初期値から段階的に低下させる「混合ガスの空気過剰率」は、実測値ではなく、推定値にしている。また、コントローラ8に設定される、バーナ3の着火に適した混合ガスの空気過剰率の初期値は、燃料ガスの種類、バーナ3の燃焼特性、ファン5の給気能力等を考慮して推定されるバーナ3の着火に適した空気過剰率の推定値であり、この推定値は、給湯用熱源機1aが定常的に使用され、燃焼を繰り返す場合に要求される混合ガスの空気過剰率に対応する。
【0021】
以下に説明するコントローラ8の制御では、点火動作時のファン5の回転数を所定の回転数で一定にして比例弁電流を段階的に増大させることにより燃料ガスのガス量を段階的に増加させ、混合ガス中の空気量を相対的に低減させて空気過剰率を低下させる。そして、コントローラ8に、増加後の燃料ガスのガス量に対応する比例弁電流値を記憶させる。上述したように、混合ガスの空気過剰率は比例弁電流値で代用する。
【0022】
コントローラ8は、バーナ3での燃焼が指示されると、後述するように、タイマーを停止し、点火エラーの判断時からの経過時間Teが、コントローラ8に予め設定された所定の経過時間(例えば、30~60秒)内であるか否かを判別する(STEP1)。ここで、燃焼の指示は、コントローラ8に接続されるリモコンから給湯用熱源機1aに燃焼許可(運転ON)が指示されると共に、出湯管4bの末端に設けられたカラン等の給湯栓が開栓されることにより行われる。経過時間Teが所定の経過時間内である場合、燃焼の指示が複数回目であると、今回の燃焼の指示よりも一つ前の回の燃焼の指示で行った制御で記憶した、後述するような、点火エラーの判断の直前に実行されたイグナイタ32の再点火動作に際しての増加後の燃料ガスのガス量、すなわち、これに対応する比例弁電流値を読み込む(STEP2)。一方、給湯用熱源機1aの設置後の初回の燃焼の指示では、今回の燃焼の指示よりも一つ前の回の燃焼の指示は存在しないため、STEP2では、上記比例弁電流値に代え、コントローラ8に予め設定された、バーナ3の着火に適した混合ガスの空気過剰率の初期値に対応する比例弁電流値にする。
【0023】
次いで、ファン5を駆動させて空気を燃焼室2a内に供給し、燃焼室2a内に残存する混合ガス等を排気路6から外部に排気するプリパージを実行する(STEP3)。この後、ファン5の回転数を所定の回転数で一定にし、元弁71及び第1能力切換弁73aに通電して開弁させると共に、比例弁72に通電して開弁させて、燃焼用空気と燃料ガスの混合ガスをバーナ3の第1部分31に供給する。初回の点火動作の場合、この時の比例弁71の比例弁電流値は混合ガスの空気過剰率の初期値に対応する値であり、後述する再点火動作の場合、経過時間Teが所定の経過時間内であれば、この時の比例弁71の比例弁電流値は、点火エラーの判断の直前に実行された再点火動作に際しての増加後の燃料ガスのガス量に対応する比例弁電流値である。一方、経過時間Teが所定の経過時間を超えていれば、この時の比例弁71の比例弁電流値は、混合ガスの空気過剰率の初期値に対応する値である。次いで、イグナイタ32に通電して点火動作を行わせて点火電極31でスパークさせる(STEP4)。そして、フレームロッド33の着火検知の有無に基づいてバーナ3の第1部分31に着火したか否かを判別する(STEP5)。バーナ3の第1部分31に着火した場合、タイマーを起動させて燃焼時間を計測する。この燃焼時間の計測は、燃焼の指示の各回で行い、コントローラ8は、計測した燃焼時間を累積して燃焼累積時間Taを記憶し、更新する(STEP6)。また、再点火動作によってバーナ3の第1部分31に着火した場合、着火に至る直前の再点火動作に際しての増加後の燃料ガスのガス量に対応する、記憶した比例弁電流値をクリアする(STEP7)。初回の燃焼の指示では、燃料ガスのガス量は、コントローラ8に予め設定された混合ガスの空気過剰率の初期値に対応するガス量であるため、STEP7を実行しても燃料ガスのガス量は変わらない。そして、第2能力切換弁73bを開弁させてバーナ3の第2部分32に火移りさせる等して、燃焼能力を切り換える。
【0024】
この後、コントローラ8は、燃焼の停止が指示されたか否かを判別する(STEP8)。燃焼の停止が指示されない場合、STEP5からSTEP8を繰り返し実行する。燃焼の停止が指示された場合、タイマーを停止させると共に、後述するように、カウンターにカウントさせて記憶し、更新した再点火動作の繰返し数をクリアする(STEP9)。この時、イグナイタ32への通電を停止し、開弁している第1能力切換弁73a、又は第1能力切換弁73a及び第2能力切換弁73bのいずれか一方と、比例弁72及び元弁71とを閉弁すると共に、ファン5を停止させて燃焼を終了する。そして、燃焼の再指示まで待機する。燃焼の停止の指示は、上記リモコンで給湯用熱源機1aに燃焼禁止(運転OFF)が指示されるか、又は給湯栓が閉栓されて止水される時と同時に行われる。
【0025】
一方、STEP4でイグナイタ32に通電して点火動作を行わせ、点火電極31でスパークさせても、STEP5でバーナ3の第1部分31に着火しない場合、コントローラ8は、一旦、第1切換弁73a、比例弁72及び元弁71を閉弁させ、ファン5を停止させると共に、イグナイタ32の点火動作も停止させる。この後、コントローラ8は、カウンターにカウントさせて記憶及び更新した再点火動作の繰返し数が設定された所定回数であるか否かを判別する(STEP10)。ここで、再点火動作とは、イグナイタ32が再度点火動作を実行する動作である。イグナイタ32の再点火動作に際しては、コントローラ8は、閉弁させた元弁71、比例弁72及び第1切換弁73aを再度開弁し、ファン5を再駆動させる。イグナイタ32の再点火動作の繰返し数が所定回数未満である場合、コントローラ8は、STEP6で記憶及び更新した燃焼累積時間Taが予め設定された設定時間未満であるか否かを判別する(STEP11)。なお、初回の燃焼の指示でバーナ3の第1部分31に着火しなかった場合、燃焼時間は計測されないため、燃焼累積時間Taはゼロであり、設定時間未満であると判別される。
【0026】
STEP11は、給湯用熱源機1aが設置されて間もない状態であるのか、又は設置されてバーナ3での燃焼が複数回繰り返して行われた状態であるのかによって、混合ガスの空気過剰率を初期値から低下させる下限値を相違させ、混合ガスの空気過剰率の調整を適正に行うための判別である。つまり、給湯用熱源機1aの設置後に初めて燃焼が指示される場合、ガス供給路7内に空気が存在し、STEP4の点火動作に際して混合ガスの空気過剰率を初期値に調整して混合ガスをバーナ3の第1部分31に供給しても、実際にバーナ3の第1部分31に供給される混合ガスの空気過剰率は、ガス供給路7内に存在する空気によって高くなるため、バーナ3で混合ガスを燃焼させるためには空気過剰率を十分に低下させる必要がある。また、バーナ3での燃焼が複数回繰り返し行われた状態である場合、ガス供給路7内は燃料ガスで置換されているため、バーナ3の第1部分31に供給される混合ガスの空気過剰率の低下をバーナ3での爆着や、一酸化炭素ガスの発生等の不具合が起こらないように抑制する必要がある。
【0027】
そこで、コントローラ8には、混合ガスの空気過剰率を低下させる際の空気過剰率の、初期値よりも低い下限値が2つ設定されている。すなわち、1つは、給湯用熱源機1aが設置されて間もない状態に対応する第1下限値Aであり、他の1つは、給湯用熱源機1aが設置されて燃焼が複数回繰り返して行われた状態に対応する第2下限値Bである。第2下限値Bは第1下限値Aよりも高く設定されている(A<B)。但し、第1下限値Aも、バーナ3での爆着や、一酸化炭素ガスの発生等の不具合が起こらないと推定される値にしている。そして、コントローラ8は、STEP11で燃焼累積時間Taが設定時間未満であると判別する場合、第1下限値Aを選択し(STEP12)、燃焼累積時間Taが設定時間以上であると判別する場合、第2下限値Bを選択する(STEP13)。
【0028】
コントローラ8による混合ガスの空気過剰率の初期値からの低下は、上述したように、ファン5の回転数を所定の回転数で一定にして比例弁電流を段階的に増大させることにより燃料ガスのガス量を段階的に増加させ、混合ガス中の空気量を相対的に低減させて行われる。具体的には、STEP4に際してコントローラ8に設定された混合ガスの空気過剰率の初期値から第1下限値A又は第2下限値Bまでの低下量を、再点火動作の繰返し数に関して設定した所定回数以上で等分して求める、再点火動作の1回当たりの混合ガスの空気過剰率の低下量に対応する比例弁電流の増大値、又は再点火動作の繰返し数が所定回数以上で、混合ガスの空気過剰率が第1下限値A又は第2下限値Bまで低下するように各回の空気過剰率の低下量を次第に大きくした、各回での比例弁電流の増大値が、コントローラ8に設定され、コントローラ8は、比例弁電流を所定の時間間隔で再点火動作を実行させる度に増大させる。
【0029】
そして、コントローラ8は、現時点での混合ガスの空気過剰率が第1下限値A又は第2下限値Bよりも高いか否か、すなわち、現時点での比例弁電流値が第1下限値A又は第2下限値Bに対応する比例弁電流値よりも小さいか否かを判別する(STEP14)。現時点での混合ガスの空気過剰率が第1下限値A又は第2下限値Bよりも高い場合、コントローラ8は、イグナイタ32に再点火動作を実行させる際の燃料ガスのガス量が増加するように比例弁電流の増大量を決定する(STEP15)。一方、STEP14で、現時点での混合ガスの空気過剰率が第1下限値A又は第2下限値B以下である場合、コントローラ8は、現時点での比例弁電流値のままとして混合ガスの空気過剰率を維持させる。こうすることで、何らかの要因によって、現時点での混合ガスの空気過剰率が第1下限値A又は第2下限値Bを下回る事態が発生しても、爆着や、一酸化炭素ガスが発生する燃焼不良等の不具合をより抑制することができる。次いで、コントローラ8は、STEP14の判別に基づく燃料ガスのガス量に対応する比例弁電流値を記憶及び更新し(STEP16)、再点火動作の繰返し数をカウンターにカウントさせて記憶及び更新する(STEP17)。この後、STEP3に戻り、ファン5を駆動させてプリパージを行い、次いで、元弁71、比例弁72及び第1能力切換弁73aを開弁させ、比例弁12には、STEP16で記憶及び更新した比例弁電流値で通電して混合ガスの空気過剰率を低下させる。そして、イグナイタ32に再点火動作を実行させ(STEP4)、バーナ3の第1部分31の着火の有無を判別する(STEP5)。再点火動作によってもバーナ3の第1部分31に着火しない場合、コントローラ8は、STEP10からSTEP17、STEP3からSTEP5を繰り返し実行する。なお、この場合、STEP16で記憶する比例弁電流値及びSTEP17で記憶する再点火動作の繰返し数は、再点火動作に際して逐次更新される。
【0030】
以上の再点火動作によってバーナ3に着火した場合、上述したように、コントローラ8は、燃焼累積時間Taの記憶及び更新を行い(STEP6)、着火に至る直前の再点火動作に際しての増加後の燃料ガスのガス量に対応する、記憶した比例弁電流値をクリアする(STEP7)。一方、再点火動作を所定回数繰り返し実行させてもバーナ3の第1部分31の着火に至らない場合、コントローラ8は、点火エラーであると判断し、燃焼の指示をキャンセルして点火エラーを報知する(STEP18)。この時、第1切換弁73a、比例弁72及び元弁71を閉弁し、ファン5を停止させる。また、タイマーを起動させて点火エラーの判断時からの経過時間Teを計測する(STEP19)。計測した経過時間Teはコントローラ8に記憶され、逐次更新される。この後、コントローラ8は、点火エラーの報知が解除されたか否かを判別し(STEP20)、解除された場合、STEP9に移行し、記憶した再点火動作の繰返し数をクリアする。なお、点火エラーの報知の解除は、リモコンを通じて行われるか、又は給湯栓の閉栓により行われる。
【0031】
そして、コントローラ8は、点火エラーの報知が解除された後、燃焼が再指示されると、上述したように、STEP1でタイマーを停止させ、経過時間Teが所定の経過時間内であるか否かの判別を行い、所定の経過時間内である場合、燃焼の再指示は、前回の燃焼の指示から連続してなされた指示であると推定されるため、点火エラーの判断の直前に実行された再点火動作に際しての増加後の燃料ガスのガス量に対応する、記憶した比例弁電流値を読み込む(STEP2)。この時、タイマーをリセットする。一方、経過時間Teが所定の経過時間を超えている場合、当該比例弁電流値をクリアすると共に(STEP21)、タイマーをリセットして、燃焼が最初に指示された時と同一の、上記の通りの制御を実行する。すなわち、経過時間Teが所定時間を超えて燃焼が再指示されると、燃焼の再指示は、前回の燃焼の指示には関連しない新たな燃焼の指示であると推定されるため、イグナイタ32の点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率は、再び初期値になる。
【0032】
図3を参照して、本発明の燃焼装置1が備えるコントローラ8が実行する制御の第2形態を説明する。
図3に示すコントローラ8の制御は、
図2に示す制御と以下の2点で相違している。すなわち、
図2に示すSTEP1,STEP2,STEP19及びSTEP21を省略している。また、STEP20とSTEP9の間に、点火エラーの判断の直前に実行されたイグナイタ32の再点火動作に際しての増加後の燃料ガスのガス量に対応する、記憶した比例弁電流値をクリアするSTEP22を追加している。すなわち、
図2に示すSTEP21を、報知解除の指示の有無の判別(STEP20)の後に実行する。このような
図3に示す、コントローラ8が実行する制御は、一般に、バーナ3の第1部分3
1の着火までに要する再点火動作の繰返し数が、
図1に示す給湯用熱源機1aよりも多い、例えば暖房用熱源機等の燃焼装置1に適用することができる。
【0033】
そして、
図1に示す給湯用熱源機1aを含め、燃焼装置1のコントローラ8は、
図1に示すように、
図2及び
図3に示すSTEP6で記憶した燃焼累積時間Taをクリアする燃焼累積時間クリア手段81を備えることができる。燃料累積時間クリア手段81は、コントローラ8にリモコンが接続されている場合、リモコンに設けることができる。
【0034】
このような燃焼装置1では、燃焼累積時間Taが所定の設定時間未満であって、ガス供給路7内の空気残存に起因して実際には初期値よりも高い空気過剰率の混合ガスがバーナ3の第1部分31に供給され、バーナ3の第1部分31に着火しないと推定される場合、コントローラ8は、混合ガスの空気過剰率を第1下限値Aに基づいて初期値から段階的に低下させ、点火手段としてのイグナイタ32の再点火動作を繰り返し実行させる。したがって、従前と同様に、バーナ3の第1部分31の着火に至りやすくなる。また、燃焼累積時間Taが所定の設定時間以上であって、ガス供給路7内が混合ガスで置換されていると推定される場合、コントローラ8は、混合ガスの空気過剰率を第2下限値Bに基づいて初期値から段階的に低下させ、イグナイタ32の再点火動作を繰り返し実行させる。したがって、混合ガスの空気過剰率を必要以上に低下させずに済み、イグナイタ32の再点火動作時に、爆着や、一酸化炭素ガスが発生する燃焼不良等の不具合を抑制することができる。
【0035】
また、コントローラ8は、イグナイタ32の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の初期値からの段階的な低下を、バーナ3の第1部分31に供給する燃料ガスのガス量を段階的に増加させることにより行う。ここで、イグナイタ32の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の初期値からの段階的な低下は、バーナ3の第1部分31に供給する燃焼用空気の空気量を段階的に低下させて行うこともできる。燃料ガスのガス量を増加又は燃焼用空気の空気量を低減させる具体的な方法には、コントローラ8が行う制御に難易が生じる可能性があるが、以下の5つのパターンが想定される。
【0036】
・パターン1
燃焼用空気の空気量を所定量で一定にして燃料ガスのガス量を増加させる。
・パターン2
燃焼用空気の空気量を増加させつつ、燃料ガスのガス量を、結果として混合ガスの空気過剰率が低下するように増加させる。
・パターン3
燃焼用空気の空気量を低減させつつ、燃料ガスのガス量を増加させる。
・パターン4
燃料ガスのガス量を所定量で一定にして燃焼用空気の空気量を低減させる。
・パターン5
燃料ガスのガス量を低減させつつ、燃焼用空気の空気量も、結果として混合ガスの空気過剰率が低下するように低減させる。
【0037】
イグナイタ32の再点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率の初期値からの段階的な低下を、バーナ3の第1部分31に供給する燃料ガスのガス量を段階的に増加させるのは、上記パターン1、パターン2及びパターン3に該当するが、こうすることによって、上記パターン4及びパターン5と比較すると、ガス供給路7内をバーナ3の第1部分31に向かって通過する燃料ガスのガス量が増加するため、ガス供給路7内に残存する空気をより早く燃料ガスで置換することができる。したがって、バーナ3の第1部分31の着火が早期に実現される。また、バーナ3の第1部分31に供給する燃焼用空気の空気量を、上記実施形態のようにファン5の回転数を所定の回転数で一定にするか、又は増大させるかしつつ、比例弁電流を増大させて燃料ガスのガス量を段階的に増加させて混合ガスの空気過剰率を低下させれば(上記パターン1及びパターン2)、燃焼用空気の空気量を低減させずに済むため、燃焼装置1の耐風性能を良好に維持することもできる。
【0038】
さらに、点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間Teが所定の経過時間内である場合、燃焼の最初の指示及び燃焼の再指示が連続してなされた指示であると推定されるため、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を燃焼の最初の指示時の混合ガスの空気過剰率を初期値よりも低くすることができる。このため、第1下限値A又は第2下限値Bに向けての混合ガスの空気過剰率の段階的な低下を早めることができ、バーナ3の第1部分31の着火により至りやすくなる。また、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を、点火エラーの判断の直前に実行されたイグナイタ32の再点火動作に際して記憶した混合ガスの空気過剰率よりも低くする場合、混合ガスの空気過剰率の低下がより一層促進されるため、バーナ3の第1部分31の着火により有利になる。例えば、イグナイタ32の再点火動作の繰返し数として設定される所定回数によっては、第1下限値A又は第2下限値Bに到達することなく、イグナイタ32の再点火動作の繰返し数が所定回数になり、コントローラ8が点火エラーであると判別する場合が想定される。このような場合、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を上記の通りに調整することは、バーナ3の第1部分31の早期の着火に有利になる。一方、点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間Teが所定の経過時間を超えている場合、燃焼の最初の指示及び燃焼の再指示は関連性のない別々の指示であると推定されるため、燃焼の再指示時の混合ガスの空気過剰率を初期値に戻し、点火動作を改めて行うことができ、点火動作の安全性を良好に保つことができる。
【0039】
そして、燃焼装置1を設置してから所定の燃焼累積時間Taの経過後に、ガスタンクの再充填やガス供給路7の更新等が行われることに伴い、ガス供給路7内に空気が再び残存することに起因して実際にバーナ3の第1部分31に供給される混合ガスの空気過剰率が初期値よりも高くなる場合、燃焼累積時間クリア手段81によってコントローラ8が記憶した燃焼累積時間Taをクリアすることができる。このため、イグナイタ32の再点火動作に際して初期値から段階的に低下させる混合ガスの空気過剰率の下限値が、第2下限値Bから再び第1下限値Aに更新される。したがって、燃焼装置1の新規な設置等の場合と同様に、バーナ3の第1部分31の着火に至りやすくなる。
【0040】
以上、本発明を実施形態に関して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、バーナ3の構成やこれに伴うガス供給路7の構成には種々の態様が可能である。また、燃料ガスのガス量を調整するために、孔径の変更が可能な可変オリフィスがガス供給路7内に設けられる場合、この可変オリフィスをコントローラ8が制御するようにし、ファン5の回転数を所定の回転数で一定にして可変オリフィスの孔径を段階的に増大させて、燃料ガスのガス量を増加させることにより混合ガスの空気過剰率を初期値から段階的に減少させることができる。この場合、コントローラ8には、第1下限値A及び第2下限値Bの夫々に対応する可変オリフィスの孔径が設定され、コントローラ8は、増加後の燃料ガスのガス量に対応する可変オリフィスの孔径を記憶し、更新する。
【0041】
さらに、混合ガスの空気過剰率の初期値からの段階的な低下は、上述したように、バーナ3の第1部分31に供給する燃焼用空気の空気量を段階的に低減させることにより行うこともできる。この場合、燃焼用空気の空気量の低減は、バーナ3に供給する燃料ガスのガス量を所定量で一定にしてファン5の回転数を減少させることにより実現される(上記パターン4)。このように、燃焼用空気の空気量を低減させて混合ガスの空気過剰率を低下させる場合、コントローラ8には、第1下限値A及び第2下限値Bの夫々に対応するファン5の回転数が設定され、コントローラ8は、減少後の燃焼用空気の空気量に対応するファン5の回転数を記憶し、更新する。
【0042】
つまり、バーナ3の第1部分31に供給する混合ガスの空気過剰率を段階的に低下させる方法としては、バーナ3の第1部分31に供給される混合ガスの空気過剰率が低下する限り、上記パターン1からパターン5の5つのパターンの中から適宜なものを選択すればよい。
【0043】
さらにまた、
図2に示すコントローラ8が実行する制御では、STEP19を、STEP18とSTEP20の間ではなく、STEP20とSTEP9の間に挿入することもできる。この場合、点火エラーの報知が解除された時にタイマーを起動させ、コントローラ8が記憶する経過時間Teは、点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間にすることができる。なお、STEP1での判別の基準になる所定の経過時間は、点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間に関するものに変更する。
【0044】
そして、点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除後、所定の経過時間に燃焼が再指示される場合、イグナイタ32の点火動作に際しての混合ガスの空気過剰率は、点火エラーの判断の直前に実行されたイグナイタ32の再点火動作に際してコントローラ8が記憶した空気過剰率だけでなく、それ未満の値にすることもできる。この場合の混合ガスの空気過剰率としては、再点火動作の2回目等であって、且つ第1下限値A又は第2下限値Bには至らない、コントローラ8が記憶した上記空気過剰率よりも低い値が例示される。
【符号の説明】
【0045】
1…燃焼装置、2a…燃焼室、3…バーナ、32…イグナイタ(点火手段)、33…フレームロッド(着火検知手段)、5…ファン、7…ガス供給路、72…比例弁、8…コントローラ、81…燃焼累積時間クリア手段、Ta…燃焼累積時間、A…第1下限値、B…第2下限値、Te…点火エラーの判断時又は点火エラーの報知解除時から燃焼の再指示時までの経過時間。