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特許7460493スプリンクラ装置、消火システム、スプリンクラバルブ、およびスプリンクラバルブの完全性を試験する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】スプリンクラ装置、消火システム、スプリンクラバルブ、およびスプリンクラバルブの完全性を試験する方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/14 20060101AFI20240326BHJP
   A62C 37/50 20060101ALI20240326BHJP
   A62C 35/00 20060101ALI20240326BHJP
   H04B 5/79 20240101ALI20240326BHJP
【FI】
A62C37/14
A62C37/50
A62C35/00
H04B5/79
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020156869
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2021049338
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】19198720
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512003733
【氏名又は名称】マリオフ コーポレイション オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ミコウァイ ヤクブ サディク
(72)【発明者】
【氏名】ナザール クルツケビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイチェフ ドミニク ジムニー
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/011725(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0194976(US,A1)
【文献】米国特許第1450219(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第3702003(EP,A1)
【文献】特表2017-522992(JP,A)
【文献】特表2014-503336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/14
A62C 37/50
A62C 35/00
H04B 5/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止された壊れやすいハウジング(110)と前記ハウジング(110)の中の受動回路装置(120)とを含むスプリンクラバルブ(100)であって、前記受動回路装置(120)が無線モジュール(160)を含む、前記スプリンクラバルブ(100)と、
前記無線モジュール(160)を介して前記スプリンクラバルブ(110)内部での圧力変化を検出するように構成されている基地局(200)と、
を備えた、スプリンクラ装置。
【請求項2】
前記無線モジュール(160)が、インダクタ(170)及び前記スプリンクラバルブ(100)の前記ハウジング(110)の中の圧力変化を感知できる容量を有するコンデンサ(150)を含むことができ、
前記基地局(200)が、前記コンデンサ(150)の前記容量の変化によって生じる前記無線モジュール(160)の共振周波数の変化を監視して、このことにより前記スプリンクラバルブ(100)の前記ハウジング(110)内部の圧力変化を検出するように構成されている、
請求項1に記載のスプリンクラ装置。
【請求項3】
前記基地局(200)が前記無線モジュール(160)を介して前記受動回路装置(120)にワイヤレスで電力を供給するように構成されている、請求項1または2に記載のスプリンクラ装置。
【請求項4】
前記受動回路装置が前記スプリンクラバルブ(100)の前記ハウジング(110)の中の流体を加熱するための加熱素子(180)を含む、請求項1、2または3に記載のスプリンクラ装置。
【請求項5】
前記受動回路装置(120)が、前記無線モジュール(160)によって受信される信号が所定の閾値より大きい振幅を有する場合にのみ前記加熱素子(180)が作動するように構成されている、請求項4に記載のスプリンクラ装置。
【請求項6】
前記スプリンクラバルブ(100)の完全性を試験するように構成されている装置コントローラ(290)を含む、請求項1~5のいずれかに記載のスプリンクラ装置。
【請求項7】
前記スプリンクラバルブ(100)が4ミリメートル未満の直径を有する、請求項1~6のいずれかに記載のスプリンクラ装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の複数のスプリンクラ装置と、前記複数のスプリンクラ装置の複数の前記スプリンクラバルブ(100)の完全性を同時に試験するように構成されているシステムコントローラとを含む、消火システム。
【請求項9】
封止された壊れやすいハウジング(110)と、前記ハウジング(110)の中の受動回路装置(120)とを含むスプリンクラバルブであって、前記受動回路装置(120)が、コンデンサ(150)と共振回路として構成されているインダクタ(170)とを含む、スプリンクラバルブ。
【請求項10】
スプリンクラバルブの完全性を試験する方法であって、
前記スプリンクラバルブ(100)の封止された壊れやすいハウジング(110)内部の受動回路装置(120)の無線モジュール(160)を介して前記スプリンクラバルブ(100)の中の圧力変化を監視すること、及び
前記圧力が所定の閾値に達する場合、前記スプリンクラバルブが正常に作動していると判定すること、または
前記圧力が所定の閾値に達しない場合、前記スプリンクラバルブが正常に作動していないと判定すること
を含む、方法。
【請求項11】
前記スプリンクラバルブ(100)の中の前記圧力変化を監視することは、前記無線モジュール(160)のコンデンサ(150)の容量の変化によって生じる前記無線モジュール(160)の共振周波数の変化を監視することと、前記共振周波数の前記変化に基づいて前記圧力変化を判定することとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基地局(200)を用いて前記スプリンクラバルブ(100)のハウジング(110)の内部に封止された前記受動回路装置(120)に電力をワイヤレスで供給することを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記スプリンクラバルブの前記ハウジングの中の流体を加熱して、その中の圧力を増加させて、このことにより火災事象をシミュレーションすることを含む、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記無線モジュール(160)に所定の閾値より大きい振幅を有する信号を送ることによって前記受動回路装置(120)の加熱素子(180)を作動させることを含む、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれかに記載のスプリンクラ装置を使用すること、または、請求項8に記載の消火システムを使用すること、または、請求項9に記載のスプリンクラバルブを使用することを含む、請求項10~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火システム、スプリンクラ装置、受動回路装置を含むスプリンクラバルブ及びスプリンクラバルブの完全性を試験する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消火システムは、通常、火災を消火するかまたは防止するために流体を放出するように構成されたスプリンクラ装置を含む。スプリンクラ装置は、通常、所定の温度で壊れてこのことによりスプリンクラに消火液を放出させるように構成されたバルブを含む。正しく機能するために、スプリンクラ装置のバルブは、火災が生じた場合に生じる既定の状況の下で壊れなければならない。したがって、バルブは、スプリンクラ装置の重要なコンポーネントである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現代の消火システムは、スプリンクラを監視して、例えば、それらが正常に作動していることを確認し、そして、火災などの位置を特定するためにそれらの位置を追跡するように構成することができる。したがって、スプリンクラ装置は、取り付けられた適切なセンサ及び回路を備えていてもよい。しかしながら、スプリンクラバルブの操作は依然として機械的であり、現場でのスプリンクラバルブの検査はまだ手作業であって、通常はバルブは損傷または他の欠陥について目視で検査することが必要である。バルブの重要性を考えれば、バルブ監視プロセスに対する改良が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、スプリンクラ装置が提供されて、これは、封止された壊れやすいハウジングとハウジングの中の受動回路装置とを含むスプリンクラバルブであって、受動回路装置が無線モジュールを含む、スプリンクラバルブと、無線モジュールを介してスプリンクラバルブ内部での圧力変化を検出するように構成された基地局とを含む。
【0005】
スプリンクラ装置は、スプリンクラバルブの亀裂検出のために用いることができる。スプリンクラバルブは、従来のスプリンクラ装置及び/または消火システムなどにおける使用に適したものであり得る。スプリンクラバルブは、所定の条件、例えば火災事象を表す所定の条件の下で、ハウジングに亀裂が入るかまたは壊れるように構成することができて、その結果、スプリンクラバルブを用いて、所定の条件が満たされるときに、スプリンクラ装置及び/または消火システムを起動させることができる。スプリンクラバルブは、それが壊れない限りスプリンクラ装置からの消火剤などの放出を妨げるように構成することができる。例えば、スプリンクラバルブは、その温度が所定の閾値に達するときに砕けるように構成することができる。スプリンクラバルブは、それが損傷を受けていないときに、それは、例えばスプリンクラ装置のシールまたはプラグを定位置に保持して消火剤の放出を防止するために、所定の機械負荷を支えることができるように構成することができる。
【0006】
封止された壊れやすいハウジングは、流体を含むことができて、液体及び/またはガスを含むことができる。したがって流体は、ハウジングの中に封止されもよく、ハウジングは密封されてもよい。ハウジングは、液体の圧力が所定の閾値に達すると壊れるように構成することができる。液体圧と温度は関連しているので、ハウジングは、液体が所定の温度に達すると壊れるように構成することができる。ハウジングならびに液体及び/またはガスは、ハウジングが所定の条件の下で壊れて、スプリンクラバルブがスプリンクラ装置からの消火剤の放出を妨げるための機械負荷を支えることができなくなるように構成することができる。ハウジングは、あらゆる適切な材料により形成することができて、クオーツ状のもの(quartzoid)から形成されてもよい。
【0007】
受動回路装置は、それが単離して作動することが可能でないという点で、受動的であり得る。それは、受動的な電子部品のみを含んでいてもよい。受動回路装置は、それ自体がその中の電流の流れを制御できなくてもよい。受動回路装置は、例えば基地局またはスプリンクラバルブの外部の他の装置からの外部信号及び制御に応答してのみ作動するように構成することができる。
【0008】
受動回路装置は、ハウジングの流体内に配置されていてもよく、そして流体内に自由に配置することができて、ハウジングに取り付けられたりあるいは機械的に連結されていなくてもよい。回路装置は、所定の条件の下で壊れる際のスプリンクラバルブの機能を妨げたりまたは影響を及ぼさないようにできる。
【0009】
スプリンクラ装置は、スプリンクラバルブの機械的故障の際に消火剤液が火災の消火のために放出されるように、構成することができる。この点に関しては、スプリンクラ装置は、従来の方法で構成することができて、例えば、消火能力が必要であり得る建物または他の構造に設置することができる。基地局は、建物などに設置することができる。
【0010】
無線モジュールは、インダクタ及びスプリンクラバルブのハウジングの中の圧力変化を感知できる容量を有するコンデンサを含むことができる。基地局は、コンデンサの容量の変化によって生じる無線モジュールの共振周波数の変化を監視して、このことによりスプリンクラバルブのハウジング内部の圧力変化を検出するように構成することができる。
【0011】
無線モジュールは、コンデンサ及びインダクタのみによって設けることができる。インダクタ及びコンデンサは、共振回路、LC回路、タンク回路、同調回路などとして構成することができる。したがって、無線モジュールは、インダクタ及びコンデンサの特性で決定される共振周波数を有することができる。共振周波数は、インダクタのインダクタンス及びコンデンサの容量によって決定することができる。しかしながら、ハウジングの中の圧力変化は、コンデンサの構造及び寸法に影響を及ぼす可能性があり、このことによりその容量が変化する場合がある。すなわち、コンデンサは圧力の下で変形することがあり得て、その変形は、例えば、その導体素子の間の間隔を減らすことによってその容量に影響を及ぼし得る。したがって、コンデンサの容量の変化は、例えばハウジングに含まれる液体の、ハウジングの中での圧力変化を表すことができる。さらに、コンデンサの容量の変化は、無線モジュールの共振周波数の変化を引き起こす。共振周波数の変化は、スプリンクラバルブの圧力変化に比例し得る。したがって、基地局は、無線モジュールの共振周波数の変化を監視し、及び/または追跡して、このことによりスプリンクラバルブの中の圧力の変化を検出するように構成することができる。このように、コンデンサ及び/または無線モジュールは、圧力センサとしてとして使用するためにスプリンクラ装置に配置することができる。
【0012】
したがって、使用中に、スプリンクラバルブのハウジングの中の圧力変化は、コンデンサの容量の変化を引き起こし、それは次に無線ユニットの共振周波数の変化を引き起こす。基地局は、共振周波数のそれらの変化を検出及び監視して、それらの変化をスプリンクラバルブのハウジングの中の圧力変化と関連付ける。したがって、基地局は、スプリンクラバルブの中の圧力を測定することができる。
【0013】
基地局は、無線モジュールの共振周波数の変化を追跡するように構成された共振追跡モジュールを含むことができる。したがって、受動回路装置は、デジタル装置である必要はなく、コントローラ、マイクロプロセッサなどを含む必要はない。受動回路装置の中のものはいずれも情報を格納する必要はないので、受動回路はRFID技術などを使用する必要はないものでもよい。基地局は、スプリンクラバルブの受動回路装置との通信のために構成された、アンテナなどを含むことができる。アンテナは、受動回路装置の無線モジュールに信号を送信することができ、及び/または受動回路装置の無線モジュールから信号を受信することができる。無線モジュールは基地局のアンテナからの信号に反応するように構成することができ、基地局はその反応を検出するように構成することができる。
【0014】
コンデンサは、周囲圧力の変化に応じてその容量を変えることができる任意の適切なコンデンサであってもよい。コンデンサは所定の距離によって分離されている複数の導電層を含むことができ、コンデンサは、所定の距離が変化するように、圧力の下で変形するように構成することができる。コンデンサは、標準コンデンサであってもよく、基本的に、空間的に互いから切り離されて保持される少なくとも2つの電極を含むことができる。コンデンサの層の間の所定の距離の変化は、結果としてその容量の変化をもたらすことになる。コンデンサの層の間の所定の距離は、増加する圧力によって減少することができ、及び/または減少する圧力によって増加することができる。導電層は任意のトポグラフィを有してもよく、実質的に平面でもよく、隣接する層の間の所定の距離は、例えば、周囲または大気の圧力で実質的に一定でもよい。すなわち、導電層は、互いと実質的に平行でもよい。
【0015】
コンデンサは、その容量が圧力によって検出可能に変化する限り、いかなる形もとることができる。コンデンサは、単純な、平面の、または一般的なコンデンサでもよい。すなわち、コンデンサは、単純なコンデンサ以外のものとしての使用のためにも特に適合させる必要はない。コンデンサは、共振回路での使用に適したものでもよく、圧力センサとしての使用に特に適合しなくてもよい。コンデンサは、コンデンサとしての用途のみに製造されて意図されているものでもよい。コンデンサは、流体を含むための流体チャンバ、ダイヤフラムまたは他のいかなる空洞または中空ボリュームも有していなくてよい。したがって、回路装置は、特別に適合された圧力検出コンポーネントを必要とすることなく、ハウジングの中の圧力変化を検出するように構成することができる。あるいは、コンデンサは、スプリンクラバルブ内部での使用、ならびに本明細書において記載されている装置及び方法による使用のために特別に設計されていてもよい。インダクタは、スプリンクラバルブ内部の共振回路に使用するいかなる適切なインダクタでもあってもよい。
【0016】
基地局は、無線モジュールを介してワイヤレスで受動回路装置に電力を供給するように構成することができる。受動回路装置は、それにより使用されるすべての電力が無線モジュールを介して受け取られるように構成することができる。受動回路装置は、バッテリまたは他の(例えばコンデンサ以外の)蓄電装置を含まなくてもよく、外部入力がない場合それ自体に電力を供給することができなくてもよい。
【0017】
受動回路装置は、スプリンクラバルブのハウジングの中の流体を加熱するための加熱素子を含むことができる。加熱素子は、スプリンクラバルブのハウジングの中で流体を加熱してこのことによりハウジングの中で圧力を増加させるように動作可能でもよい。圧力のこのような増加によってコンデンサの容量が変化することになり得て、それによって無線モジュールの共振周波数も変わる。したがって、スプリンクラ装置は、例えば、本明細書において説明されている方法を用いて、スプリンクラバルブ完全性を試験するために用いることができる。
【0018】
受動回路装置は、所定の条件の達成に応じてのみ、例えば無線モジュールによって受信される信号が所定の閾値より大きい振幅を有する場合にのみ、加熱素子が作動するように構成することができる。したがって、スプリンクラ装置は、十分大きい振幅を有する信号を無線モジュールに送ることによって、必要とされる場合にのみ加熱素子が作動することができるように構成することができる。受動回路装置は、無線モジュールによって受信される信号が所定の閾値より少ない振幅を有する場合に加熱素子が作動しないように、構成することができる。したがって、スプリンクラ装置は、受動的な電子部品のみを使用して信号振幅に応じて動的に加熱素子を接続するように構成されている回路を用いて、加熱素子ロードによって共振回路スペクトルパラメータを望ましくない影響から分離するためのアーキテクチャによって構成することができる。したがって、基地局は、例えば無線モジュールから反応を引き出すことによって、加熱素子を作動させる必要なしに、スプリンクラバルブが存在することを検出することができる。
【0019】
例えば、受動回路装置は、無線モジュールが所定の閾値より大きい振幅を有する信号を受信する場合に加熱素子が作動するように構成された、一対のツェナーダイオードを含むことができる。ツェナーダイオードは、電圧スイッチとして構成することができて、逆向きに直列に配置されていてもよい。あるいは、受動回路装置は、必要に応じて加熱素子を作動させるためのDIAC(交流用のダイオード)または他の適切なコンポーネントを含んでいてもよい。
【0020】
スプリンクラ装置は、例えば、ハウジングを破壊して、このことによりスプリンクラ装置を起動させるのに十分なレベルにその中の圧力が達するのを防止するハウジングの、亀裂などを確認することによって、スプリンクラバルブの完全性を試験するように構成された、装置コントローラを含むことができる。装置コントローラは、基地局の一部及び/またはスプリンクラ装置の別の部分でもよく、基地局から遠くにあってもよい。装置コントローラは、スプリンクラバルブの一部でなくてもよい。スプリンクラバルブの完全性を試験するために、装置コントローラは、基地局から受動回路装置に信号を送信することができる。受動回路装置は、その信号に応答して(例えば信号が十分に大きい振幅を有する場合)加熱素子を作動させることができ、このことによりスプリンクラバルブのハウジングの中の圧力を増加させることができる。装置コントローラは、受動回路装置の無線モジュールの共振周波数の結果として得られる変化を追跡することができる。コントローラは次に、周波数変化を圧力の変化に関連付けることができるか、または所与の共振周波数をスプリンクラバルブ内部の所与の圧力に関連付けることができる。スプリンクラバルブの圧力が所定の(例えばスプリンクラバルブを壊すために必要であるものよりもわずかに小さい)閾値に達する場合、装置コントローラは、火災が生じた場合に壊れるために必要な圧力にスプリンクラバルブが達することができること、及びそれ故、スプリンクラバルブが正常に作動しており、火災が生じた場合それが作動するのを妨げる場合がある亀裂または他の欠陥はない、と判定することができる。しかしながら、圧力が所定の閾値に達しない場合、それは、スプリンクラバルブが作動するために必要なレベルに圧力が達するのを妨げているハウジング内の欠陥、例えば亀裂または微小亀裂を表す可能性がある。その場合、装置コントローラは、スプリンクラバルブが正常に作動していないと判定することができる。したがって、スプリンクラバルブは、安全性を維持するために交換することができる。
【0021】
装置コントローラは、定期的にスプリンクラバルブの完全性を試験するように構成することができて、及び/または、例えばユーザまたは消火システムコントローラなどの別のコントローラによるコマンドで完全性を試験することができる。
【0022】
スプリンクラバルブは、約4ミリメートル未満の直径を有することができる。スプリンクラバルブは、従来のサイズを有することができ、消火システムに適したいかなるサイズでもあってもよい。しかしながら、スプリンクラバルブは、比較的小さいものであり得る。スプリンクラバルブは、例えばStandard Glass BulbsのDay-Impex Rangeに従ったサイズを有してもよく、941、942または989バルブタイプでもよい。知られている回路装置は、スプリンクラバルブでの、特に小さいスプリンクラバルブでの使用に適していない場合がある。例えば、それらは、大きすぎたり適切な形状になっていない場合があり、または十分な範囲で十分に信頼性が高くなかったり圧力変化を感知できない場合があり、及び/または、スプリンクラバルブなどの1回使い切り物品での使用には極端に高価な場合がある。
【0023】
本明細書において説明されているスプリンクラバルブにおいて、受動回路装置は、受動コンポーネントしか必要とせず、それ故、コントローラ、マイクロプロセッサ、メモリ、RFIDコンポーネントまたは他のデジタルコンポーネントを必要としない。したがって、受動回路装置は、最小のバルブを含んだいかなるスプリンクラバルブの中にも収納されるのに十分小さく、同時に十分な範囲で十分に信頼性が高く、圧力変化を感知でき、そして比較的安価であり得る。
【0024】
スプリンクラバルブの中の圧力変化は、使用中に、約0~2.5MPa(0~25バール)の範囲であると予想することができる。コンデンサの容量は、この範囲にわたる圧力である程度変化し得る。したがって、コンデンサは、スプリンクラバルブの使用圧力範囲の中での圧力変化を感知できるものでもあってよい。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様を参照して本明細書において説明されている複数のスプリンクラ装置、及び複数のスプリンクラ装置の複数のスプリンクラバルブの完全性を同時に試験するように構成されたシステムコントローラを含む、消火システムが提供される。システムコントローラは、スプリンクラ装置をそれらのそれぞれの装置コントローラ(存在する場合)を介して制御することができるか、または直接スプリンクラ装置を制御することができる。各スプリンクラ装置がそれ自身のスプリンクラバルブの完全性を試験することができるので、消火システムは同時に複数またはすべての構成するスプリンクラバルブの完全性さえ試験することができる。消火システムは、構成するスプリンクラバルブの完全性を、定期的にかつ頻繁に、例えばシステムの起動時に、及び/または毎日など、試験するように構成することができる。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、封止された壊れやすいハウジング及びハウジングの中の受動回路装置を含むスプリンクラバルブが提供され、受動回路装置は共振回路として構成されるコンデンサ及びインダクタを含む。共振回路のコンデンサは、例えば約0バール(0MPa)から25バール(2.5MPa)までの範囲の周囲圧力変化を感知できる容量を有するように構成することができる。受動回路装置は、加熱素子を含むことができる。受動回路装置は、所定の閾値より大きい振幅を有する信号の共振回路による受信の際にのみ加熱素子が起動するように、構成することができる。回路装置は、所定の閾値より小さい振幅を有する信号の共振回路による受信の際に加熱素子を作動させないように構成することができる。受動回路装置は、加熱素子を作動させるための電圧スイッチとして構成される一対のツェナーダイオードを含むことができる。スプリンクラバルブは、従来のサイズでもよく、約4ミリメートル未満の直径を有することができる。スプリンクラバルブは、本発明の第1の態様及び/または本発明の第2の態様を参照して本明細書において説明されているスプリンクラバルブでもよく、このようなスプリンクラバルブに関して本明細書において説明されている特徴のいずれかを含むことができる。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、スプリンクラバルブの完全性を試験する方法が提供され、方法は、スプリンクラバルブの封止された壊れやすいハウジング内部の受動回路装置の無線モジュールを介してスプリンクラバルブの中の圧力変化を監視すること、及び、圧力が所定の閾値に達する場合、スプリンクラバルブが正常に作動していると判定すること、または、圧力が所定の閾値に達しない場合、スプリンクラバルブが正常に作動していないと判定することを含む。
【0028】
圧力変化は、圧力増加であり得て、スプリンクラバルブのハウジング内の流体の温度の上昇によって生じ得る。方法は、所定の期間以内の圧力変化を監視することを含むことができる。例えば、方法は、圧力が所定の期間以内に所定の閾値に達しない場合、スプリンクラバルブが正常に作動していないと判定することを含むことができる。スプリンクラバルブが正常に作動していると判定されるために、他の条件が満たされることを必要とする場合がある。例えば、圧力は、所定時間の間加熱された際に、所定量増加することを必要とする場合がある。異なる試験は、異なるバルブ及び/またはシステムに適している場合がある。
【0029】
スプリンクラバルブの中の圧力変化を監視することは、無線モジュールのコンデンサの容量の変化によって生じる無線モジュールの共振周波数の変化を監視することと、共振周波数の変化に基づいて圧力変化を判定することとを含むことができる。方法は、無線モジュールの共振周波数の変化をスプリンクラバルブのハウジングの中の圧力の変化と関連付けることを含むことができる。方法は、共振周波数の変化を圧力の変化に相関させることを含むことができる。コンデンサの容量の変化は、スプリンクラバルブのハウジングの中の圧力の変化によって生じ得る。したがって、方法は、無線モジュールの共振周波数が所定量よりも多く変化するか否かに基づいてスプリンクラバルブの完全性を判定することを含むことができる。
【0030】
方法は、共振周波数に基づいてスプリンクラバルブの中の圧力を測定することを含むことができる。方法は、無線モジュールの共振周波数をスプリンクラバルブ内部の圧力に相関させることを含むことができる。
【0031】
方法は、基地局を用いてスプリンクラバルブのハウジング内部に封止された受動回路装置にワイヤレスで電力を供給することを含むことができる。方法は、基地局から信号を発して受動回路装置から応答を誘導して、基地局を用いてその応答を検出することを含むことができる。電力は、無線モジュールを介して受動回路装置に供給することができる。
【0032】
方法は、スプリンクラバルブのハウジングの中の流体を加熱してその中の圧力を増加させて、このことにより火災事象をシミュレーションすることを含むことができる。方法は、基地局によってワイヤレスで供給された電力を使用して、ハウジングの中の流体を加熱することを含むことができる。方法は、加熱ユニットを作動させて流体を加熱することを含むことができる。
【0033】
方法は、無線モジュールに所定の閾値より大きい振幅を有する信号を送信することによって受動回路装置の加熱素子を作動させることを含むことができる。方法は、無線モジュールが所定の閾値より大きい振幅を有する信号を受信する場合にのみ、加熱素子を作動させることを含むことができる。方法は、無線モジュールによって受信される信号が所定の閾値より小さい振幅を有する場合、加熱素子を作動させないことを含むことができる。
【0034】
方法は、本発明の第1の態様を参照して本明細書において詳述されるスプリンクラ装置を用いること、または、本発明の第2の態様を参照して本明細書において詳述される消火システムを用いること、または、本発明の第3の態様を参照して本明細書において詳述されるスプリンクラバルブを用いることを含むことができる。したがって、方法は、本発明の任意の態様を参照して説明されている特徴を含むことができる。消火システム及び/またはスプリンクラ装置は、本発明の第4の態様による方法を実施するように構成されたコントローラを含むことができる。
【0035】
本発明の別の態様によれば、ハウジング内部の受動回路装置を用いて封止されたハウジングの中の圧力を監視する方法が提供される。本発明の別の態様によれば、外部モジュールを用いてハウジング内部の無線ユニットの共振周波数の変化を検出することによって封止されたハウジングの中の圧力を測定するように構成されたシステムが提供される。
【0036】
本発明の特定の実施形態が、例としてのみ、そして図を参照して、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ハウジング及びハウジング内部の受動回路装置を含むスプリンクラバルブを示す図である。
図2図1のスプリンクラバルブの受動回路装置と基地局との間の通信の概略図である。
図3図2の受動回路装置内の圧力センサとして使用するコンデンサの斜視図である。
図4A】スプリンクラバルブ内部の圧力が変化する際の、受動回路装置の無線モジュールの共振周波数の変化を示す図である。
図4B】スプリンクラバルブ内部の圧力が変化する際の、受動回路装置の無線モジュールの共振周波数の変化を示す図である。
図5】加熱中のスプリンクラバルブの特性圧力範囲を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、封止された壊れやすいハウジング110及びハウジング110の中に配置された受動回路装置120を含むスプリンクラバルブ100を示す。したがって、受動回路装置120はハウジング110の内部に封止される。ハウジング110は、液体130及びガス気泡140も含む。
【0039】
使用中、バルブ100は、スプリンクラ装置(部分的に図1に示される)に置かれ、シール、プラグなどを定位置に保つように配置されて消火液がスプリンクラ装置を出るのを防止する。スプリンクラ装置は、基地局200(図式的に図2に示される)を含む。スプリンクラ装置のシール210は、図1に示される。スプリンクラバルブ100は、それが壊れない限り消火剤液の展開を防止するように構成されている。スプリンクラ装置の近くの火災の場合、ハウジング110の液体130は加熱され、したがって、ハウジング110の中の圧力は増加する。一旦液体130が所定の温度(例えば火災に近いことを表す)に達すると、被加熱液体130からの結果として得られる圧力は壊れやすいハウジング110を破壊し、スプリンクラ装置のシール210はもはや所定位置に保持されない。その後、消火液はスプリンクラ装置から排出される。ハウジング110、液体130及びガス気泡140は、ハウジング110が所定の条件の下で、例えば液体130が所定の温度に達するとき、そして、このため、ハウジング110がこのことにより所定の圧力にさらされるときに、壊れるように構成することができる。ハウジング110は、あらゆる適切な材料により形成することができて、クオーツ状のもの(quartzoid)から形成されてもよい。
【0040】
バルブ100のハウジング110が、例えば亀裂によって損傷を受けている場合、ハウジング110内部の液体130の圧力増加はハウジング110外部の周囲圧力によって正常化することが可能である場合がある。例えば、液体130がハウジング110から漏れ出ることができ、及び/または、ガスがハウジング110に漏れて入ることができる。その場合、ハウジング130の中の圧力はハウジング110を壊すために必要なレベルに達することができず、したがって、スプリンクラ装置は火災が生じた場合消火液を排出することができない可能性がある。したがって、ハウジング110の損傷またはその亀裂は、スプリンクラ装置の操作上の安全を危険にさらし得る。補助なしでは人の眼に見えない可能性がある微小亀裂でさえ、スプリンクラバルブ100の適切な機能を妨げることがあり得る。
【0041】
したがって、スプリンクラ装置内に取り付けられたスプリンクラバルブの亀裂を現場で検出する周知の方法は、その方法が通常目視によるバルブの検査を含むが、スプリンクラ装置が正常に作動していることを確認するのには十分ではない場合があり、そのため、消火システムの操作上の安全性を確認することができない。さらに、このような方法は時間がかかる。目視でバルブを検査することが必要でない方法も知られているが、研究室または工場の条件以外での使用及び現場でバルブが設置されているものには適しておらず、そして通常はバルブをまとめて試験することに適していない。スプリンクラ装置が安全性上重要であることを考えると、試験に関する改良が望まれる。
【0042】
上記の問題に対処するために、図1のスプリンクラバルブ100は、ハウジング110の中に封止された受動回路装置120を含む。受動回路装置120は、コンデンサ150及びインダクタ170を含む、LC回路などの無線モジュール160を含む。スプリンクラ装置は、ワイヤレスで受動回路装置120に電力を供給して、無線モジュール160の共振周波数の変化を監視するように構成された、基地局200も含む。受動回路装置は、加熱素子180の動作を制御するための電圧依存的なスイッチとして構成された加熱素子180及び一対のツェナーダイオード190も含む。
【0043】
無線モジュール160の共振周波数は、インダクタ170及びコンデンサ150の特性で決定される。したがって、回路装置120は、基地局200のアンテナ230からの特定のバンド幅の信号に応答する。
【0044】
受動回路装置120は、ハウジング110内に配置される。スプリンクラバルブ100の適正な動作のためには、ハウジング110が封止されていてあらゆる全ての漏出を防止すること(例えば、ハウジング110へのいかなる流体の進入も防止すること、及び/またはハウジング110からのいかなる流体の流出も防止すること)が必要であり、さもなければ、上記の説明の通り、ハウジング110は非常事態が生じた場合壊れることができない。したがって、受動回路装置120は、ハウジング110の中に封止されて、例えば電力及び/または通信のための外部接続を単に備えることはできない。
【0045】
図2は、受動回路装置120を制御して、それと通信して、それに電力を与えるために受動回路装置120に近接して設けられている、基地局200の概略図を示す。基地局200は、無線モジュール160の共振周波数の変化を検出して追跡するための共振追跡ユニット220を含む。それは、無線モジュール160から信号を送受信するためのアンテナ230も含む。電源240は、基地局200に電力を供給し、さらに、アンテナ230及び無線モジュール160の交互作用を経て受動回路装置120に電力を供給するために提供されている。通信及び統合モジュール150は、例えばシステムコントローラ及び他のスプリンクラ装置を含むシステムアーキテクチャと通信して、それに統合されるために設けられている。装置コントローラ290は、基地局200及び受動回路装置120の動作を制御するために提供される。基地局200と受動回路装置120との間の通信は、磁束線260によって図式的に示される。装置コントローラ290は、自律的にスプリンクラ装置の動作を制御することができるか、または、例えば複数のスプリンクラ装置及びスプリンクラバルブを制御するように構成された遠隔システムコントローラの制御下のスプリンクラ装置の動作を制御することができる。
【0046】
図2の構成を使用して、バルブ100のハウジング110は、受動回路装置120を用いて亀裂に対して試験することができる。装置コントローラ290は、このような試験を実施するために受動回路装置120の動作を制御するように構成されている。試験中に、装置コントローラ290は、アンテナ230に無線モジュール160によって受信される信号を発するように指示する。信号は、所定の閾値より大きく、かつ2つのツェナーダイオード190によって提供される電圧スイッチを作動させるのに十分大きい振幅を有する。したがって、加熱素子180が作動して、ハウジング110の中の液体130は、スプリンクラバルブ内部の圧力が増加するように加熱される。結果として得られる液体130の圧力増加により、コンデンサ150が変形して、したがってその容量が変わる。
【0047】
図3は、受動回路装置120の無線モジュール160のコンデンサ150として使用する、標準コンデンサ300の例を示す。コンデンサ300は、誘電媒質330を用いて所定の距離320だけ分離された複数の導電性シート310(すなわち電極)を含む。コンデンサの活性領域312は、導電性シート310のオーバーラップによって画定される。コンデンサ300が圧力の変化の影響を受ける場合(矢印Pによって図式的に示される)、それは変形して、導電性シート310の間の所定の距離320は変化し、それにより、コンデンサ300の容量を変える。所定の距離320の変化がより大きいほど、容量の変化は、より大きくなる。
【0048】
コンデンサの容量は、
【0049】
【数1】
【0050】
として表すことができ、ここで、εは誘電率であり、nはコンデンサの導電性シート310の数であり、Aはシート310のうちの1つの活性領域であり、dはシート310の間の所定の距離320である。
【0051】
上記の式から、dが圧力の増加と共に減少するにつれて、(他の要因が所与のコンデンサ300に対して変化しないので)コンデンサ300の容量が増加することが分かる。圧力pの関数としての距離d(すなわち所定の距離320)は、
【0052】
【数2】
【0053】
として表すことができ、ここで、Eは活性領域に対して垂直の方向のコンデンサのヤング率であり、pは静水圧であり、d0はコンデンサ300の導電性シート310の間の元の所定の距離320である。したがって、上記の式から、スプリンクラバルブのハウジング110の中の圧力は、容量コンデンサ150の関数であると分かる。
【0054】
LC回路160の共振周波数は、インダクタ170のインダクタンスの、そして、コンデンサ150の容量の、2変数関数である。しかしながら、インダクタ170のインダクタンスは、周囲圧力の変化を実質的に感知しない。スプリンクラバルブ100の圧力が増加し、またコンデンサ150の容量が変化するにつれて、LC回路160の共振周波数はそれに対応して変化する。圧力の変化がより大きいほど、容量の変化及び結果として得られる無線モジュール160の共振周波数の変化は、より大きくなる。
【0055】
したがって、無線モジュール160の共振周波数を監視するように構成されることによって、基地局200は、このことにより、ハウジング110の中の液体130の圧力を監視することが可能である。基地局200は共振追跡ユニット220を用いて共振周波数を測定し、装置コントローラ290は共振周波数をスプリンクラバルブ内部の圧力に相関させる。したがって、装置コントローラ290は、無線モジュール160を介してスプリンクラバルブの圧力を判定する。
【0056】
図4A及び4Bは、LC回路の共振周波数がどのように圧力によって変化するかの例を示す。図4Aにおいて、3つの曲線は、利得の関数としての周波数を示す。その中で、圧力(及びコンデンサの容量)が増加するにつれて、共振周波数は、263.49kHzから、257.13kHzを過ぎて、251.58kHzまでシフトする。図4Bは同じ状況の位相に対する周波数を示し、共振周波数の変化は図4Aに対するものと同じであることを示す。
【0057】
したがって、スプリンクラ装置は、無線モジュールが置かれているスプリンクラバルブのハウジングの中の、圧力を測定し、及び/または圧力変化を監視することができる。それから、スプリンクラ装置は、加熱素子180を用いてスプリンクラバルブの完全性を試験することも可能である。
【0058】
加熱中に、液体130がしばらく加熱された後、ハウジング110の中の圧力が所定レベル(例えばハウジング110を破壊するのにほとんど十分な圧力)に達した場合、装置コントローラ290は、圧力損失がないこと、したがって、ハウジング110に亀裂がないことを判定することができる。こうして、バルブ100は、正常に作動していると判定することができる。あるいは、液体130がしばらく加熱された後、ハウジング110の中の圧力が所定レベルに達しない場合、装置コントローラ290は、圧力損失があり、したがってハウジングに亀裂などがある、と判定することができる。次に、バルブ100は、正常に作動していないと判定することができる。
【0059】
図5は、亀裂の入ったスプリンクラバルブを検出するプロセスの間の、様々な診断範囲の例を示す。異なる範囲、ゾーン及び値が、特定のスプリンクラバルブの異なる構成に対して使用可能である。例えば、図5の曲線a及びbは、ハウジング110の液体及びガスの量、液体及びガスのタイプ、壊れやすいハウジング110のために使用される材料のタイプなどの関数である。
【0060】
図5は、スプリンクラバルブ100の試験及び液体130の加熱の間の、装置コントローラ290で測定されるハウジング110の圧力変化を示す。水平軸は加熱素子180が作動した後の時間を示し、垂直軸は特定の時間で測定される圧力を示す。正常に作動しているスプリンクラバルブ100において、加熱素子180は、液体130の温度を上げて、したがって、所定の期間t1内で一定の量だけハウジング110の圧力を増加させると予想される。したがって、時点t1は、バルブ100の完全性を試験するための基準点として用いることができる。
【0061】
試験の間は、圧力は、バルブ100が、例えば加熱または火災事象の前に使用の準備ができている圧力範囲を表す、初期圧力ゾーン410で始まる。バルブ100の圧力は、損傷がなく、加熱されていない場合には、この範囲にあると予想される。バルブ100が正常に作動している(すなわち損傷を受けていない)場合、圧力はほぼ曲線aに沿って増加する。すなわち、圧力は、加熱されている間、時間の増加(すなわち温度の増加)と共に増加する。液体130の加熱は時間t1で停止され、それから、ハウジングの圧力は液体130が冷えるにつれて、再び低下する。したがって、圧力はゾーン440に到達せず、そこで、スプリンクラバルブ100のハウジング110は、例えば火災事象のケースでそうであるように、壊れると予想される。しかしながら、曲線aは、液体130の圧力が時間と共に増加して、比較的高いレベルに達するゾーン430に圧力が入ることを示している。したがって、ゾーン430は、損傷のないバルブ100を、そしてしたがって、正常に作動しているバルブ100を表す。スプリンクラバルブ100が正常に作動していると判定するための所定の閾値は、例えばその上側の範囲の近くの、ゾーン430のレベルにあってもよい。
【0062】
バルブ100が正常に作動していない(例えばそれに亀裂が入っている)場合、圧力はほぼ曲線bに沿って増加する。曲線b上で、圧力は、加熱によって増加し始めるが、すぐに安定水準に達する。したがって、ハウジング110内の圧力がゾーン440またはゾーン430にさえ到達せず、スプリンクラバルブ100の液体130に対する継続的な加熱にもかかわらず、ハウジング110を砕けさせるのに十分でないことは、明白である。したがって、スプリンクラバルブ100は、それが火災が生じた場合に壊れる可能性が低いので、使用するのに安全ではない。
【0063】
受動回路装置120は、明らかに安全のために重要なコンポーネントであり、したがって、非常に信頼性が高くなければならない。コンデンサ150が、例えば、約0バール(すなわち0Pa)から約25バール(すなわち2.5MPa)まで比較的広い圧力範囲にわたる圧力変化を感知できることも、好ましいことである。さらに、スプリンクラ装置は通常従来のサイズであり、したがって、スプリンクラバルブは比較的小さい従来のサイズを有するので、受動回路装置は、従来のスプリンクラバルブの中に収納されるために十分に小さく、そして正確に成形加工しなければならない。最後に、スプリンクラバルブは1回使い切り物品であるので、受動回路装置のコストは極端に高いものであるべきではない。
【0064】
本明細書において説明されているスプリンクラ装置は、複雑な電子部品または高価なコンポーネントを必要としない受動回路装置を用いて、上記の要求に対処する。したがって、それは、マイクロプロセッサ、コントローラ、メモリなどを必要としない。それは、RFID技術などに依存せず、デジタル通信を必要としない。したがって、それは、簡単に、かつ、安価に製造することができる。それは、その単純性のために、信頼性も高いものであり得る。それが非常に少ないコンポーネントしか必要としないので、すべての従来のスプリンクラバルブの中に適合するのに十分小さく作ることもできる。
【0065】
したがって、本明細書の開示によれば、スプリンクラバルブ100の自律的な、信頼性が高い、遠隔の試験を達成することができ、そしてまとめて実行することができる。バルブ100はセントラルシステムによって定期的に点検することができ、不完全なバルブ100は交換のためにフラグを立てることができる。本明細書の開示は、バルブ内の無線モジュールの共振周波数が圧力によって変化し得ると認識することによって、スプリンクラバルブの中の圧力を測定するための、単純で、信頼性が高い機構を提供する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5