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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04664 20160101AFI20240326BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240326BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04 J
H01M8/04955
H01M8/04746
H01M8/04 H
H01M8/04858
H01M8/10 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020173665
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065251
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 佳克
(72)【発明者】
【氏名】大塚 忍
(72)【発明者】
【氏名】及川 治郎
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160412(JP,A)
【文献】特開2008-269812(JP,A)
【文献】特開2014-116069(JP,A)
【文献】特開2008-60054(JP,A)
【文献】特開2019-149265(JP,A)
【文献】特開2009-26632(JP,A)
【文献】特開2022-61629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって
燃料電池と、
前記燃料電池に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給流路と、
前記燃料電池から酸化オフガスを排出するための酸化オフガス排出流路と、
前記酸化ガス供給流路と前記酸化オフガス排出流路とを接続するバイパス流路と、
前記酸化ガス供給流路に設けられ、前記燃料電池に供給される前記酸化ガスの流量を調整する第1弁装置と、
前記酸化オフガス排出流路に設けられ、前記燃料電池から排出される前記酸化オフガスの流量を調整する第2弁装置と、
前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を流れる前記酸化ガスの流量を調整する第3弁装置と、
前記第1弁装置と前記第2弁装置と前記第3弁装置とにおける異常を検出する異常検出部と、
前記燃料電池の発電を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1弁装置において最小開度で固着した異常である開異常とは異なる他の異常が検出された場合と、前記第2弁装置において前記他の異常が検出された場合と、前記第3弁装置において任意の異常が検出された場合と、のうちのいずれかの場合には、前記燃料電池の出力電流に制限を設けたフェールセーフ発電を前記燃料電池に実行させ、該フェールセーフ発電を実行中に、さらに、前記第1弁装置と前記第2弁装置と前記第3弁装置とのうち、異常が検出されている弁装置とは異なる2つの弁装置のうちのいずれかにおいて任意の異常が検出された場合には、前記燃料電池の発電を停止させる、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記第3弁装置の異常が検出されていない状態において、前記第1弁装置と前記第2弁装置とのうちのいずれかにおいて前記開異常が検出された場合には、前記燃料電池の発電を停止させる、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給流路と、燃料電池から酸化オフガスを排出するための酸化オフガス排出流路と、酸化ガス供給流路と酸化オフガス排出流路と接続して燃料電池をバイパスするバイパス流路が設けられた燃料電池システムが知られている。このような燃料電池システムにおいて、酸化オフガス排出流路に配置される弁装置(調圧弁)が異常の場合に、燃料電池の出力制限運転を実行する、或いはバイパス流路に設けられている弁装置の開度を調整するといったフェールセーフ処理を行うことが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-60054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムにおいては、特許文献1において想定しているような酸化オフガス排出流路に配置される弁装置の単独異常以外にも、酸化ガス供給流路に配置される弁装置の単独異常、およびバイパス流路に配置される弁装置の単独異常が生じ得る。さらには、これら3つの弁装置のうちの任意の2以上の弁装置の多重異常も生じ得る。そして、これらの異常が生じた場合にも、酸化オフガス排出流路に配置される弁装置の単独異常が生じた場合と同様に、燃料電池の発電継続が不可能となる、或いは、エアコンプレッサやガス流路を構成する配管等が損傷するといった不具合が起こり得る。
【0005】
しかしながら、従来においては、酸化ガス供給流路に配置される弁装置の異常や、バイパス流路に配置される弁装置の異常や、上述の3つの弁装置のうちの2以上の弁装置における多重異常が発生した場合の対応について、十分に検討されていないのが実情であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給流路と、前記燃料電池から酸化オフガスを排出するための酸化オフガス排出流路と、前記酸化ガス供給流路と前記酸化オフガス排出流路とを接続するバイパス流路と、前記酸化ガス供給流路に設けられ、前記燃料電池に供給される前記酸化ガスの流量を調整する第1弁装置と、前記酸化オフガス排出流路に設けられ、前記燃料電池から排出される前記酸化オフガスの流量を調整する第2弁装置と、前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を流れる前記酸化ガスの流量を調整する第3弁装置と、前記第1弁装置と前記第2弁装置と前記第3弁装置とにおける異常を検出する異常検出部と、前記燃料電池の発電を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記第1弁装置において最小開度で固着した異常である開異常とは異なる他の異常が検出された場合と、前記第2弁装置において前記他の異常が検出された場合と、前記第3弁装置において任意の異常が検出された場合と、のうちのいずれかの場合には、前記燃料電池の出力電流に制限を設けたフェールセーフ発電を前記燃料電池に実行させ、該フェールセーフ発電を実行中に、さらに、前記第1弁装置と前記第2弁装置と前記第3弁装置とのうち、異常が検出されている弁装置とは異なる2つの弁装置のうちのいずれかにおいて任意の異常が検出された場合には、前記燃料電池の発電を停止させる。
この形態の燃料電池システムによれば、第1弁装置において開異常とは異なる他の異常が検出された場合と、第2弁装置において他の異常が検出された場合と、第3弁装置において任意の異常が検出された場合と、うちのいずれかの場合には、燃料電池の出力電流に制限を設けたフェールセーフ発電を燃料電池に実行させるので、発電を継続させる可能性を高めることができる。また、該フェールセーフ発電を実行中に、さらに、既に異常が検出されている弁装置とは異なる2つの弁装置のうちのいずれかにおいて任意の異常が検出された場合、すなわち多重異常が生じた場合には、燃料電池の発電を停止させるので、以下の効果を奏する。すなわち、第1弁装置において他の異常が検出され、さらに第2弁装置において任意の異常が検出された場合、および、第2弁装置において他の異常が検出され、さらに第1弁装置において任意の異常が検出された場合に燃料電池の発電を停止させるので、燃料電池に供給する酸化ガスの流量を正確に制御できなくなり、供給される酸化ガスの流量の過不足に起因して燃料電池自体が損傷してしまうことを抑制できる。また、第1弁装置または第2弁装置において他の異常が検出され、さらに第3弁装置におきて任意の異常が検出された場合、および、第3弁装置において任意の異常が検出され、さらに第1弁装置または第2弁装置において任意の異常が検出された場合に燃料電池の発電を停止させるので、酸化ガス供給流路およびバイパス流路内の圧力や、燃料電池内の圧力が過剰に高くなることを抑制でき、これらの流路を構成する管等の構成部品や燃料電池自体が損傷してしまうことを抑制できる。
(2)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記第3弁装置の異常が検出されていない状態において、前記第1弁装置と前記第2弁装置とのうちのいずれかにおいて前記開異常が検出された場合には、前記燃料電池の発電を停止させてもよい。
この形態の燃料電池システムによれば、第3弁装置の異常が検出されていない状態において、第1弁装置と第2弁装置とのうちのいずれかにおいて開異常が検出された場合には、燃料電池の発電が停止するので、燃料電池に対して酸化ガスを全く供給できない又は極少量しか供給できない、或いは、燃料電池から酸化オフガスを全く排出できない又は極少量しか排出できないにもかかわらず、燃料電池に対して酸化ガスを継続して供給することを回避できる。このため、酸化ガス供給流路内の圧力や燃料電池内の圧力の過剰な上昇を抑制でき、これにより、管等の酸化ガス供給流路の構成部品の損傷や、燃料電池の構成部品の損傷を抑制できる。さらには、無駄な酸化ガスの供給を行わずに済み、酸化ガス供給に要する電力消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態としての燃料電池システムの構成を示すブロック図。
図2】燃料電池システムにおいて実行される発電制御処理の概略手順を示すフローチャート。
図3】第1弁装置および第2弁装置についてそれぞれ実行される発電制御処理の手順を示すフローチャート。
図4】第3弁装置について実行される発電制御処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1は、本開示の一実施形態としての燃料電池システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態において燃料電池システム10は、車両に搭載され、負荷100に対して電力を供給する。負荷100には、図示しないトラクションモータの他、燃料電池システム10に含まれる後述するエアコンプレッサ33や水素ポンプ84等の補機も含まれる。
【0010】
燃料電池システム10は、燃料電池20と、酸化ガス給排出系30と、水素ガス給排系70と、二次電池90と、DC/DCコンバータ91と、制御装置92とを備える。
【0011】
本実施形態において、燃料電池20は、固体高分子型燃料電池であり、アノード反応ガスである水素ガスと、酸化ガス(カソード反応ガスとも呼ばれる)である空気の供給を受けて発電する。燃料電池20は、複数の単セル21が積層されたスタック構造を有する。したがって、燃料電池20は、燃料電池スタックとも呼ばれる。各単セル21は、図示しない電解質膜の両面に電極を配置した図示しない膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する図示しない一対のセパレータとを有する。燃料電池20を構成する各単セル21には、電解質膜を介して、水素ガスが供給されるアノード22と、空気が供給されるカソード23とが形成されている。なお、図1では、アノード22およびカソード23を概念図として示している。
【0012】
酸化ガス給排出系30は、空気を燃料電池20に供給し、酸化オフガス(カソードオフガスとも呼ばれる)を燃料電池20から排出する。酸化オフガスには、燃料電池20における発電を伴う電気化学反応に用いられなかった空気と、かかる電気化学反応により生じた生成水に由来する水蒸気とが含まれる。
【0013】
酸化ガス給排出系30は、酸化ガス供給流路31と、エアコンプレッサ33と、酸化オフガス排出流路41と、バイパス流路51と、第1弁装置61と、第2弁装置62と、第3弁装置63とを備える。
【0014】
酸化ガス供給流路31は、一端が燃料電池20に接続され、燃料電池20に空気(圧縮空気)を供給するために用いられる。エアコンプレッサ33は、酸化ガス供給流路31に配置され、図示しないフィルタ装置を介して大気から空気を取り込んで圧縮して送り出す。酸化オフガス排出流路41は、一端が燃料電池20に接続され、燃料電池20から酸化オフガスを排出するために用いられる。バイパス流路51は、酸化ガス供給流路31と酸化オフガス排出流路41とを接続する。バイパス流路51は、酸化ガス供給流路31においてエアコンプレッサ33の下流側に接続されている。また、バイパス流路51は、酸化オフガス排出流路41に接続されている。これにより、エアコンプレッサ33により圧縮された空気が燃料電池20をバイパスして酸化オフガス排出流路41へと供給される。
【0015】
第1弁装置61は、酸化ガス供給流路31に設けられ、燃料電池20に供給される空気の流量を調整する。第1弁装置61は、図示しない弁体と、弁体を駆動する第1駆動モータ61aと、第1開度検出センサ61bとを備える。本実施形態において、第1弁装置61はノーマリクローズタイプの弁装置として構成されている。したがって、第1駆動モータ61aに駆動電力が供給されていない状態において、酸化ガス供給流路31の開度は最小開度「ゼロ」となっている。なお、最小開度は「ゼロ」に限らず、ゼロよりも大きな任意の値であってもよい。第1開度検出センサ61bは、酸化ガス供給流路31の開度を検出する。例えば、第1駆動モータ61aの回転数をエンコーダにより検出し、かかる回転数から弁体の駆動量、すなわち酸化ガス供給流路31の開度を検出してもよい。
【0016】
第2弁装置62は、酸化オフガス排出流路41に設けられ、燃料電池20から排出される酸化オフガスの流量を調整する。また、第2弁装置62は、酸化オフガスの流量を調整することにより、カソード側の排圧を調整する調圧弁としても機能する。第2弁装置62は、第1弁装置61と同様な構成を有する。すなわち、第2弁装置62は、図示しない弁体と、弁体を駆動する第2駆動モータ62aと、第2開度検出センサ62bとを備え、ノーマリクローズタイプの弁装置として構成されている。
【0017】
第3弁装置63は、バイパス流路51に設けられ、バイパス流路51を流れる空気(圧縮空気)の流量を調整する。また、第3弁装置63は、バイパス流路51を流れる空気の流量を調整することにより、燃料電池20に供給される空気の流量も調整する。すなわち、第3弁装置63は、エアコンプレッサ33から供給される圧縮空気の流れを、燃料電池20に向かう流れと、酸化オフガス排出流路41に向かう流れとに分流し、その分流比率を調整する。第3弁装置63は、第1弁装置61および第2弁装置62と同様な構成を有する。すなわち、第3弁装置63は、図示しない弁体と、弁体を駆動する第3駆動モータ63aと、第3開度検出センサ63bとを備え、ノーマリクローズタイプの弁装置として構成されている。
【0018】
水素ガス給排系70は、水素ガスを燃料電池20に供給し、アノードオフガスを燃料電池20から排出する。アノードオフガスには、燃料電池20における電気化学反応に用いられなかった水素ガスの他、カソードから電解質膜を透過してアノードに移動した水に由来する水蒸気等を含む。
【0019】
水素ガス給排系70は、水素ガス供給流路71と、水素タンク72と、主止弁装置73と、調圧弁装置74と、インジェクタ75と、アノードオフガス排出流路81と、気液分離器82と、循環流路83と、水素ポンプ84と、排気排水弁装置85とを備える。
【0020】
水素ガス供給流路71は、水素タンク72と燃料電池20とを互いに接続し、水素タンク72に貯蔵されている水素ガスを燃料電池20に供給するために用いられる。水素タンク72は高圧の水素ガスを貯蔵している。主止弁装置73は、水素タンク72の下流に位置し、水素タンク72からの水素ガスの供給実行と供給停止とを実現する。調圧弁装置74は、主止弁装置73の下流側に位置し、水素タンク72から供給される水素ガスの圧力を減圧して下流側に供給する。インジェクタ75は、調圧弁装置74の下流側に位置し、制御装置92による制御内容、より具体的には噴射周期や噴射時間に応じて水素ガスを下流側に噴射する。
【0021】
アノードオフガス排出流路81は、一端が燃料電池20に接続され、アノードオフガスを排出するために用いられる。アノードオフガス排出流路81の他端は酸化オフガス排出流路41に接続されている。気液分離器82は、アノードオフガス排出流路81に設けられており、燃料電池20から排出されたアノードオフガスに含まれている水蒸気を液水に凝集させることにより、アノードオフガスをガス成分と液水とに分離する。気液分離器82により分離された後のガス成分は、循環流路83に供給される。他方、気液分離器82によって液水として分離された水は、気液分離器82の底部に溜まっており、排気排水弁装置85が開弁した際に、気液分離器82から排出されて、排気排水弁装置85を介して酸化オフガス排出流路41に流入する。循環流路83は、アノードオフガス排出流路81と水素ガス供給流路71とを互いに接続する。循環流路83の一端は、水素ガス供給流路71において、インジェクタ75よりも下流側に接続されている。気液分離器82において水蒸気が分離された後のガス成分には、高い含有率で水素ガスが含まれており、かかるガス成分を水素ガス供給流路71に供給する(戻す)ことにより、燃費向上が図られている。水素ポンプ84は、循環流路83に配置され、気液分離器82から排出されるガス成分を、水素ガス供給流路71へと送り出す。
【0022】
二次電池90は、充放電可能なバッテリであり、本実施形態では、リチウムイオン電池により構成されている。なお、リチウムイオン電池に代えて、ニッケル水素電池等の他の任意の二次電池により構成されてもよい。二次電池90は、燃料電池20とともに又は燃料電池20に代えて電力を負荷100に供給し、また、燃料電池20により発電された電力を蓄電可能に構成されている。DC/DCコンバータ91は、燃料電池20と負荷100との間および燃料電池20と二次電池90との間に配置され、燃料電池20の出力電圧を調整して負荷100または二次電池90に供給する。なお、DC/DCコンバータ91と負荷100としての図示しないトラクションモータとの間には、インバータが設けられ、かかるインバータにより直流電流が三相交流電流に変換されてトラクションモータに供給される。
【0023】
制御装置92は、燃料電池システム10全体を制御する。制御装置92は、CPU93およびメモリ94を備えるコンピュータとして構成されている。CPU93は、メモリ94に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、異常検出部95および制御部96として機能する。
【0024】
異常検出部95は、第1弁装置61、第2弁装置62および第3弁装置63における異常を検出する。本実施形態において、異常検出部95は、各弁装置61、62、63を駆動する駆動モータに対して送信された駆動指令と、各開度検出センサ61b、62b、63bにより検出された開度とを比較することにより、各弁装置61、62、63における異常を検出する。具体的には、例えば、第1弁装置61に対して送信された駆動指令が開度を増大させる指令であるにも関わらず、第1開度検出センサ61bにより検出される開度の時間変化がゼロ(変化なし)の場合には、弁を正常に開くことができない異常であると検出される。これとは逆に、第1弁装置61に対して送信された駆動指令が開度を減少させる指令であるにも関わらず、第1開度検出センサ61bにより検出される開度の時間変化がゼロ(変化なし)の場合には、弁を正常に閉じることができない異常であると検出される。このような弁を開いたり閉じたりできなくなる異常は、例えば、駆動モータの軸に接続されているギアに異物が挟まったり、ギアに錆が生じたり、ギアの歯が折れてしまうことによって起こり得る。また、弁体を支えているシャフトと、シャフトの軸受け部に異物が入り込んだ場合にも起こり得る。上述のように、各弁装置61、62、63は、いずれもノーマリクローズタイプの弁装置である。そして、各弁装置61、62、63において最小開度、つまり、本実施形態では開度ゼロの状態で弁が固着してしまい、弁を正常に開くことができない異常を、本実施形態では「開異常」と呼ぶ。
【0025】
制御部96は、燃料電池20に供給される空気や水素ガスの流量を制御することにより、燃料電池20の発電を制御する。具体的には、各弁装置61、62、63の開度やエアコンプレッサ33の回転数を制御することにより、燃料電池20に供給される酸化ガス(空気)の流量を制御する。また、インジェクタ75における水素ガスの噴射間隔や噴射時間や、水素ポンプ84の回転数を制御することにより燃料電池20に供給される水素ガスの流量を制御する。制御部96は、車両に搭載された運転制御用のECU(Electric Control Unit)から受信する要求電力量に基づき、かかる要求電力を燃料電池20から出力するための燃料電池20に供給する空気および水素ガスの流量を算出する。そして、制御部96は、かかる流量を実現するように、各弁装置61、62、63の開度やエアコンプレッサ33の回転数等を制御して燃料電池20に発電させる。なお、運転制御用のECUは、アクセル装置の踏み込み量や、トラクションモータの回転数や、燃料電池システム10に含まれる各補機からの要求電力量や、車両が備える空調装置からの要求電力量等に基づき、燃料電池20に対する要求発電量を算出する。
【0026】
上述のように要求発電量に基づき算出される流量で空気および水素ガスを燃料電池20に供給して実現される発電を、本実施形態では、「通常発電」と呼ぶ。本実施形態では、燃料電池20の発電態様として、通常発電の他、後述するフェールセーフ発電が設定されている。制御部96は、これらの各発電態様で燃料電池20に発電を実行させる。フェールセーフ発電では、要求発電量(要求電流量)に対して所定の上限値が設定され、かかる上限値を超えないように、燃料電池20への空気および水素ガスの供給流量が算出される。そして、かかる供給流量を実現するように、各弁装置61、62、63の開度やエアコンプレッサ33の回転数等が制御される。本実施形態では、上述の「所定の上限値」は、「50%」である。なお、50%に限らず、100%よりも低い任意の値を上限値として設定してもよい。
【0027】
A2.発電制御処理:
図2は、燃料電池システム10において実行される発電制御処理の概略手順を示すフローチャートである。発電制御処理とは、燃料電池20における発電態様を制御する処理を意味する。車両の始動スイッチがオンして、燃料電池システム10の運転が開始されると、制御部96は、燃料電池20に通常発電を行わせる。かかる通常発電の開始とともに、発電制御処理が実行される。
【0028】
まず、図2を用いて発電制御処理の概略を説明する。ステップS105において、異常検出部95は、各弁装置61、62、63の異常検出処理を行う。ステップS110において、異常検出部95は、異常を検出したか否かを判定する。後述するように、発電制御処理は繰り返し実行されており、ステップS110において判断対象としている異常は、いずれの弁装置61、62、63においても異常が検出されていない状態で初めて検出される異常の他、前回以前にステップS105の実行により異常が検出され、かかる異常が継続している状態においてかかる異常が生じた弁装置とは異なる他の2つの弁装置のうちのいずれかにおいて生じた異常を意味する。異常が検出されないと判定された場合(ステップS110:NO)、上述のステップS105に処理は戻る。
【0029】
異常が検出されたと判定された場合(ステップS110:YES)、ステップS115において、異常検出部95は、検出された異常は、第1弁装置61の開異常とは異なる他の異常(以下、単に「他の異常」とも呼ぶ)と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれかであるか否かを判定する。上述の「任意の異常」とは、開異常の他、開くことは可能であるが予定している変化量よりも小さな又は大きな開度変化である異常や、閉じることが全く不可能となる異常や、閉じることは可能であるが予定している変化量よりも小さな又は大きな開度変化である異常などの任意の種類の異常を意味する。
【0030】
検出された異常は、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれでもないと判定された場合(ステップS115:NO)、ステップS120において、制御部96は、燃料電池20の発電を停止させる。具体的には、エアコンプレッサ33の動作を停止させて燃料電池20への空気の供給を停止させ、また、インジェクタ75および水素ポンプ84の動作を停止させて燃料電池20への水素ガスの供給を停止させる。「検出された異常は、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれでもないと判定された場合」とは、本実施形態では、「第1弁装置61の開異常または第2弁装置62の開異常が発生している場合」を意味する。第1弁装置61の開異常が生じている場合、もはや燃料電池20に空気を供給できず、燃料電池20の発電を継続できない状況である。そこで、この場合、燃料電池20の発電を停止させることにより酸化ガス供給流路31内の圧力の過剰な上昇を抑制でき、酸化ガス供給流路31を構成する管の損傷等を抑制できる。加えて、酸化ガス供給流路31内の圧力の過剰な上昇に伴って、エアコンプレッサ33の負荷も過剰に上昇し、エアコンプレッサ33の構成部品が損傷するおそれもある。例えば、エアコンプレッサ33がターボ式のコンプレッサである場合には、サージ現象が生じてインペラやモータ等の構成部品が破損するおそれもある。また、エアコンプレッサ33による無駄な空気の供給を行わずに済み、燃料電池20への空気供給に要する電力消費を抑えることができる。また、第2弁装置62の開異常が生じている場合、燃料電池20からカソードオフガスが排出できない状況である。この場合、酸化オフガスが排出できないことから各単セル21のカソード側の圧力が過剰に高くなり、電解質膜や触媒層等がカソード側からアノード側へと座屈するといった燃料電池20の損傷が生じるおそれがある。しかし、本実施形態では、かかる場合には燃料電池20の発電を停止させるので、燃料電池20の構成部品の損傷を抑制できる。なお、燃料電池20の発電が停止した場合、運転制御用のECUは、例えば、車両の運転モードを、二次電池90からトラクションモータに対して電力を供給する、いわゆるEV(Electric Vehicle)モードに移行させてもよい。
【0031】
上述のステップS115において、検出された異常は、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれかであると判定された場合(ステップS115:YES)、ステップS125において、制御部96は、燃料電池20がフェールセーフ発電を現在実行中であるか否かを判定する。
【0032】
フェールセーフ発電を実行中でないと判定された場合(ステップS125:NO)、ステップS130において、制御部96は、燃料電池20にフェールセーフ発電を実行させる。第1弁装置61において開異常以外の他の異常が生じた場合、燃料電池20に供給される空気の流量を正確に制御できなくなるおそれがある。具体的には、燃料電池20に供給される空気の流量は、エアコンプレッサ33の回転数および第3弁装置63の開度(分流比)を調整することによっても調整可能である。しかし、この場合であっても、第1弁装置61の開度が所定の閾値範囲内の値でないと、燃料電池20への供給空気流量の過不足が生じ得る。そこで、かかる場合には、フェールセーフ発電を実行させ、各単セル21において酸化ガスの過不足が生じないようにしている。また、第2弁装置62において開異常以外の他の異常が生じた場合、燃料電池20から排出される酸化オフガスの流量を正確に制御できなくなるおそれがある。具体的には、排出される酸化オフガスの流量は、燃料電池20に供給される空気流量を調整することによっても調整可能である。しかし、この場合であっても、第2弁装置62の開度が所定の閾値範囲内の値でないと、排出される酸化オフガスの流量に過不足が生じ得る。そこで、本実施形態の燃料電池システム10では、かかる場合には、フェールセーフ発電を実行させ、排出される酸化オフガスの流量の過不足が生じないようにしている。また、第3弁装置63において任意の異常が生じた場合、燃料電池20に供給される空気の流量や、燃料電池20から排出される酸化オフガスの流量が正確に制御できなくなるおそれがある。例えば、エアコンプレッサ33の応答遅れを補償するために、予め要求流量よりも多い流量の圧縮空気を供給するようにエアコンプレッサ33に動作させ、要求流量との差分の流量をバイパス流路51に流すように第3弁装置63を動作させる構成において第3弁装置63に異常が生じた場合、エアコンプレッサ33の応答遅れを補償できずに、燃料電池20への酸化ガスの供給量に過不足が生じるおそれがある。また、かかる酸化ガスの供給量の過不足に起因して、燃料電池20から排出される酸化オフガスの流量にも過不足が生じるおそれがある。加えて、燃料電池システム10では、バイパス流路51を通る酸化ガスによって、アノードオフガス排出流路81に排出されるアノードオフガスに含まれる水素ガスを希釈して外部へと排出しているため、第3弁装置63の異常によりバイパス流路51を通る酸化ガスの流量が低減し、上述の希釈が適切に行われなくなるおそれがある。そこで、本実施形態の燃料電池システム10では、第3弁装置63において任意の異常が検出された場合には、フェールセーフ発電を実行させ、燃料電池20に供給される酸化ガスの流量に過不足が生じないように、また、排出される酸化オフガスの流量に過不足が生じないように、さらには、燃料電池20から排出される水素ガスを適切に希釈するようにしている。
【0033】
上述のステップS125において、フェールセーフ発電実行中であると判定された場合(ステップS125:YES)、上述のステップS120が実行され、燃料電池20の発電が停止される。フェールセーフ発電実行中、すなわち、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれかが生じている状態において、さらに重ねて、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれかが生じた場合には、発電が停止される。したがって、本実施形態においては、フェールセーフ発電が実行される(ステップS130が実行される)のは、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれかが生じており、且つ、他の弁装置61、62、63においては異常が生じていない場合に限られる。
【0034】
上述のように、本実施形態では、フェールセーフ発電が実行されるのは、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのうちのいずれかが生じている場合である。かかる場合に、さらに重ねて、第1弁装置61の他の異常と、第2弁装置62の他の異常と、第3弁装置63の任意の異常とのいずれかが生じた場合、すなわち、多重異常が生じた場合、第1弁装置61または第2弁装置62において開異常が生じた場合と同様に、管等の酸化ガス供給流路31の構成部品や、燃料電池20の構成部品に損傷が生じるおそれがある。さらには、バイパス流路51の構成部品にも損傷が生じ得る。また、エアコンプレッサ33による無駄な空気供給が行われ得る。具体的には、例えば、第1弁装置61において予定よりも閉速度が遅い異常が生じている状況において、さらに、第2弁装置62において予定よりも開速度が遅い異常が生じた場合、燃料電池20内に過剰に空気が供給され、且つ、酸化オフガスの排出が滞るため、各単セル21においてカソード側の圧力がアノード側の圧力に比べて過剰に大きくなり、電解質膜が座屈する等の損傷が起こり得る。また、各単セル21において、過剰な空気供給により電解質膜が過剰に乾燥してしまい、電解質膜が損傷するおそれもある。また、例えば、第1弁装置61において予定よりも開速度が遅い異常が生じている状況において、さらに、第3弁装置63の開異常が生じた場合、酸化ガス供給流路31およびバイパス流路51における圧力が過剰に上昇して、これらの流路31、51を構成する管等の構成部品に損傷が生じるおそれがある。また、この場合、各単セル21に供給される空気の流量が極端に減少し、いわゆるエア欠となって電解質膜が損傷するおそれもある。また、例えば、第2弁装置62において予定よりも開速度が遅い異常が生じている状況において、さらに、第3弁装置63において開異常が生じた場合、燃料電池20内における圧力が過剰に上昇し、例えば、電解質膜が座屈する等の燃料電池20の構成部品の損傷が生じ得る。そこで、本実施形態の燃料電池システム10では、このような場合には、第1弁装置61の開異常または第2弁装置62の開異常が生じた場合と同様に、燃料電池20の発電を停止させるようにしている。
【0035】
上述のステップS120またはステップS130の実行後、処理はステップS105に戻る。以上説明した発電制御処理は、弁装置61、62、63毎の処理フローとして実現される。すなわち、制御部96は、各弁装置61、62、63について、それぞれ発電制御処理を実行する。以下、図3、4を用いて説明する。
【0036】
図3は、第1弁装置61および第2弁装置62についてそれぞれ実行される発電制御処理の手順を示すフローチャートである。第1弁装置61と第2弁装置62とでは、同じ手順にて発電制御処理が実行される。ステップS105およびS110は、上述のステップS105、S110と同じである。すなわち、各弁装置61、62について、異常検出処理が実行され(ステップS105)、異常を検出したか否かの判定(ステップS110)が実行される。ステップS110において、異常を検出したと判定された場合(ステップS110:YES)、制御部96は、検出された異常は開異常であるか否かを判定する(ステップS115a)。
【0037】
検出された異常が開異常であると判定された場合(ステップS115a:YES)、上述のステップS120が実行され、燃料電池20の発電が停止される。したがって、通常運転時に第1弁装置61または第2弁装置62に開異常が生じた場合には燃料電池20の発電が停止する。同様に、フェールセーフ発電時に第1弁装置61または第2弁装置62に開異常が生じた場合にも燃料電池20の発電は停止する。ステップS115aにおいて、検出された異常が開異常でないと判定された場合(ステップS115a:NO)、上述のステップS125が実行される。
【0038】
図4は、第3弁装置63について実行される発電制御処理の手順を示すフローチャートである。第3弁装置63についての発電制御処理の手順は、ステップS115が省略されている点において、図2に示す手順と異なり、他の手順は同じである。すなわち、第3弁装置63については、異常が検出された場合には(ステップS110:YES)、開異常であるか否かに関わらず、ステップS125が実行され、フェールセーフ発電が実行中であるか否かが判定される。そして、フェールセーフ発電が実行中でなければ、異常の種類に関わらず、フェールセーフ発電が実行される。これは、第3弁装置63の単体の異常であれば、致命的な異常ではないため、燃料電池20の発電を停止することは要しないからである。なお、「致命的な異常ではない」とは、空気の供給に関しては、エアコンプレッサ33の回転数および第1弁装置61の開度を調整することにより、所定の流量範囲において、燃料電池20に供給される空気の要求流量、および燃料電池20から排出される酸化オフガスの要求流量を、それぞれ実現できる状況であることを意味する。
【0039】
以上説明した実施形態の燃料電池システム10によれば、第1弁装置61において開異常とは異なる他の異常が検出された場合と、第2弁装置62において他の異常が検出された場合と、第3弁装置63において任意の異常が検出された場合と、うちのいずれかの場合には、燃料電池20の出力電流に制限を設けたフェールセーフ発電を燃料電池20に実行させるので、発電を継続させる可能性を高めることができる。また、フェールセーフ発電を実行中に、さらに、既に異常が検出されている弁装置とは異なる2つの弁装置のうちのいずれかにおいて任意の異常が検出された場合、すなわち多重異常が生じた場合には、燃料電池20の発電を停止させるので、そのまま発電を継続させて酸化ガス供給流路31やバイパス流路51の圧力が過剰に高くなることを抑制できる。これにより、管等の酸化ガス供給流路31やバイパス流路51の構成部品の損傷や、供給される酸化ガス量の過不足に起因する燃料電池20自体(各単セル21自体)の損傷を抑制できる。
【0040】
また、第3弁装置63の異常が検出されていない状態において、すなわち、通常発電状態において、第1弁装置61と第2弁装置62とのうちのいずれかにおいて開異常が検出された場合には、燃料電池20の発電が停止するので、燃料電池20に対して酸化ガスが供給できない、或いは、燃料電池20から酸化オフガスを排出できないにもかかわらず、燃料電池20に対して酸化ガスを継続して供給することを回避できる。このため、酸化ガス供給流路31内の圧力や燃料電池20内の圧力の過剰な上昇を抑制でき、これにより、管等の酸化ガス供給流路31の構成部品の損傷や、電解質膜等の燃料電池20の構成部品の損傷を抑制できる。さらには、無駄な酸化ガスの供給を行わずに済み、酸化ガス供給に要する電力消費、例えばエアコンプレッサ33における消費電力を抑えることができる。
【0041】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、第1弁装置61および第2弁装置62についても、図4に示す第3弁装置63についての発電制御処理と同様に、開異常であるか否かに関わらず、任意の異常が検出された場合にはフェールセーフ発電を行い、フェールセーフ発電が実行中に、任意の異常が検出された場合には燃料電池20の発電を停止させる構成としてもよい。かかる構成においても、第1弁装置61および第2弁装置62において異常が生じたにもかかわらず通常発電を行う構成に比べて、酸化ガス供給流路31、バイパス流路51、および燃料電池20を構成する部品の損傷を抑制できると共に、無駄な空気供給を抑制して消費電力を抑えることができる。
【0042】
(B2)ステップS105の異常検出処理において、異常検出部95は、各弁装置61、62、63の異常の有無を特定するために、敢えて特別な開度指令を各弁装置61、62、63に送信してもよい。例えば、次第に開度が大きくなるような複数回の指令を順次送信してもよい。また、これとは逆に、次第に開度が小さくなるような複数回の指令を順次送信してもよい。このような構成によれば、各弁装置61、62、63の異常の有無をより正確に検出できる。
【0043】
(B3)各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、異常検出部95および制御部96のうちの少なくとも1つの機能部を、集積回路、ディスクリート回路、またはそれらの回路を組み合わせたモジュールにより実現してもよい。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0044】
本開示は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…燃料電池システム、20…燃料電池、21…単セル、22…アノード、23…カソード、30…酸化ガス給排出系、31…酸化ガス供給流路、33…エアコンプレッサ、41…酸化オフガス排出流路、51…バイパス流路、61…第1弁装置、61a…第1駆動モータ、61b…第1開度検出センサ、62…第2弁装置、62a…第2駆動モータ、62b…第2開度検出センサ、63…第3弁装置、63a…第3駆動モータ、63b…第3開度検出センサ、70…水素ガス給排系、71…水素ガス供給流路、72…水素タンク、73…主止弁装置、74…調圧弁装置、75…インジェクタ、81…アノードオフガス排出流路、82…気液分離器、83…循環流路、84…水素ポンプ、85…排気排水弁装置、90…二次電池、91…DC/DCコンバータ、92…制御装置、93…CPU、94…メモリ、95…異常検出部、96…制御部、100…負荷
図1
図2
図3
図4