(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチおよびそれを備えた電子機器
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20240326BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20240326BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
H01H13/14 A
H01H13/52 F
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2020179388
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000101330
【氏名又は名称】アストロデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光町 透
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118197(JP,A)
【文献】特開2010-251101(JP,A)
【文献】特開2020-170682(JP,A)
【文献】特開2011-249264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に設けられたタクトスイッチと、
前記タクトスイッチの周辺であって前記基材との間に空隙を形成しつつ前記タクトスイッチを覆うように配置され、前記タクトスイッチに向かって延びる貫通孔を有する弾性体と、
前記貫通孔に挿入された状態で前記弾性体に係止されたシャフトと、を備え、
前記シャフトは、前記タクトスイッチのクリック音を低下させる硬質材料で形成された、押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記タクトスイッチは、固定接点と可動接点とを含み、
前記シャフトが前記可動接点に対して押し付けられた場合に、前記可動接点が前記固定接点に対して押し付けられる、請求項1に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記硬質材料は、前記シャフトと前記固定接点との間での前記可動接点の振動を抑制する硬さを有する、請求項2に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項4】
前記弾性体の上に前記シャフトを覆うように設けられたカバー部材をさらに備え、
前記カバー部材は、前記弾性体よりも硬い材料で形成された、請求項1~3のいずれかに記載の押しボタンスイッチ。
【請求項5】
開口を有し、前記カバー部材の一部を前記開口から露出させる筐体をさらに備え、
前記弾性体は、前記弾性体と前記筐体との間の隙間を塞ぐように、前記筐体に接触する凸部を有する、請求項4に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記筐体に押さえ付けられた外周フランジ部を有する、請求項5に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項7】
前記弾性体は、前記カバー部材が押された場合に、前記外周フランジ部の移動スペースとして機能する凹部を有する、請求項6に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項8】
前記シャフトは、前記弾性体に係止されたフランジを有している、請求項1~7のいずれかに記載の押しボタンスイッチ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の押しボタンスイッチを備えた、電子機器。
【請求項10】
前記押しボタンスイッチは、録音機能の使用中に操作されるスイッチである、請求項9に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、押しボタンスイッチおよびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
押しボタンスイッチを備えた電子機器として、たとえば、キーボードを備えた録音機能付きのビデオカメラの開発が行われている。この押しボタンスイッチは、たとえば、下記の特許文献1に開示されているように、固定接点と可動接点とを有している。押しボタンスイッチは、人の指で押されると、可動接点が移動して固定接点に接触する。それにより、電気が流れる。このような押しボタンスイッチには、押されたときに、人の指にクリック感を生じさせるために、前述の固定接点および可動接点がタクトスイッチと呼ばれるスイッチによって構成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のタクトスイッチの押圧操作によれば、クリック感とともに、クリック音が生じる。そのため、たとえば、ビデオカメラ等の録音機能付き電子機器で録音しているときには、タクトスイッチのクリック音がビデオカメラで録音されてしまう。したがって、クリック音が発生しない押しボタンスイッチが求められている。しかしながら、クリック音を発生させないために、クリック感まで発生しなくしてしまえば、押しボタンスイッチの押し間違えが生じ易い。
【0005】
本開示の目的は、クリック感を生じさせながら、クリック音の発生を抑制することができる押しボタンスイッチおよびそれを備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態の押しボタンスイッチは、基材に設けられたタクトスイッチと、前記タクトスイッチの周辺であって前記基材との間に空隙を形成しつつ前記タクトスイッチを覆うように配置され、前記タクトスイッチに向かって延びる貫通孔を有する弾性体と、前記貫通孔に挿入された状態で前記弾性体に係止されたシャフトと、を備え、前記シャフトは、前記タクトスイッチのクリック音を低下させる硬質材料で形成されている。
【0007】
本開示の一形態の電子機器は、上記の押しボタンスイッチを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の押しボタンスイッチを備えた電子機器の一例のビデオカメラの斜視図である。
【
図2】実施の形態の押しボタンスイッチおよびその周辺構造の分解部分斜視図である。
【
図3】実施の形態の押しボタンスイッチおよびその周辺構造を示す部分斜視図である。
【
図4】実施の形態の押しボタンスイッチの筐体の内側面に形成された環状の窪みを説明するための図である。
【
図5】実施の形態の押しボタンスイッチおよびその周辺構造の断面図(
図1のV-V線断面図)であって、押しボタンスイッチが押されていない状態を示す図である。
【
図6】実施の形態の押しボタンスイッチおよびその周辺構造の断面図であって、押しボタンスイッチが押された状態を示す図である。
【
図7】実施の形態の押しボタンスイッチを構成するタクトスイッチの断面模式図であって、タクトスイッチの可動接点がシャフトによって押されていない状態を示す図である。
【
図8】実施の形態の押しボタンスイッチを構成するタクトスイッチの断面模式図であって、タクトスイッチの可動接点がシャフトによって押された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、実施の形態の押しボタンスイッチ10を備えた電子機器100の一例のビデオカメラの斜視図である。
【0011】
図1に示されるように、実施の形態の電子機器100は、ビデオカメラである。ビデオカメラは、取っ手80が設けられた筐体6と、筐体6の正面に取り付けられ、撮像に用いられるレンズ90と、筐体6の側面に設けられた液晶モニタ70と、撮像の操作に用いられる複数の押しボタンスイッチ10と、備えている。
【0012】
電子機器100は、押しボタンスイッチ10を備えている。押しボタンスイッチ10は、カバー部材5を有している。カバー部材5の中央部が、筐体6の開口6aから露出している。押しボタンスイッチ10は、録音機能の使用中に操作されるスイッチである。押しボタンスイッチ10は、
図1においては、単一の独立したスイッチである。しかしながら、複数の押しボタンスイッチがマトリックス状に配置され、それにより、キーボードが電子機器100の筐体6に形成されていてもよい。
【0013】
本実施の形態の電子機器100によれば、以下に説明される押しボタンスイッチ10の構造によって、電子機器100の使用者が、押しボタンスイッチ10を押したときに、クリック感は生じるが、クリック音の発生が抑制されている。そのため、録音中の押しボタンスイッチ10に起因した音の発生を抑制することができる。その結果、ビデオカメラ等の録音機能を使用しているときに、押しボタンスイッチ10の操作音がビデオカメラに録音されてしまう不具合の発生を抑制することができる。以下、実施の形態の押しボタンスイッチ10の構造を具体的に説明する。
【0014】
図2は、実施の形態の押しボタンスイッチ10およびその周辺構造の分解斜部分視図である。
図3は、実施の形態の押しボタンスイッチ10およびその周辺構造を示す部分斜視図である。
図4は、実施の形態の押しボタンスイッチ10を構成する筐体6の内側面に形成された環状の窪み6bを説明するための図である。
【0015】
図2に示されるように、押しボタンスイッチ10は、基材1、タクトスイッチ2、弾性体3、シャフト4、カバー部材5、および筐体6を備えている。
【0016】
基材1は、その主表面上にタクトスイッチ2を備えている。基材1は、本実施の形態においては、平板状をなしているものとする。しかしながら、基材1は、タクトスイッチ2が設置され得る形状であれば、いかなる形状を有していてもよい。
【0017】
弾性体3は、タクトスイッチ2を覆うように、基材1上に設置される。弾性体3は、外周部3X、内周部3Z、および薄肉部3Yを備えている。内周部3Zは、その中央部に、貫通孔3aおよび凹部3bを有している。外周部3Xは、内周部3Zの外側で内周部3Zを取り囲むように環状に設けられている。薄肉部3Yは、内周部3Zと外周部3Xとを接続する環状部分である。薄肉部3Yは、内周部3Zおよび外周部3Xよりも厚さが小さいため、内周部3Z、薄肉部3Y、および外周部3Xによって、環状の溝Sが形成されている。弾性体3は、環状の突起3cを備えている。環状の突起3cは、後述する筐体6の環状の窪み6b(
図4参照)に嵌め込まれる。
【0018】
なお、弾性体3の平面視における輪郭は、
図2に示されるような矩形の角部が丸められた形状に限定されず、円形または楕円形等、いかなる形状を有していてもよい。また、弾性体3の基材1側の表面に位置決め用の穴が設けられており、基材1に位置決め用の突起が設けられており、位置決め用の穴と位置決め用の突起とが嵌合することにより、弾性体3の基材1に対する位置決めがなされてもよい。
【0019】
シャフト4は、直線状に延びる円柱形状の主軸4bと、主軸4bの一方端に設けられた環状のフランジ4aと、を備えている。ただし、主軸4bおよびフランジ4aの横断面の形状は、円形に限定されず、正方形、長方形、正六角形、正八角形、正十二角形、または楕円形等のいかなる形状であってもよい。シャフト4のタクトスイッチ2側の先端面は、平面形状を有しているが、球形の一部、凹形状、または凸形状等のいかなる形状を有していてもよい。
【0020】
シャフト4の主軸4bは、弾性体3の貫通孔3aに挿入される。シャフト4のフランジ4aは、弾性体3の環状の凹部3bに嵌り込む。それにより、シャフト4と弾性体3とは嵌合する。シャフト4の直径は、貫通孔3aの内径よりも大きい。そのため、シャフト4は、弾性体3に密着しているので、シャフト4と弾性体3とは一体的に移動する。ただし、シャフト4と弾性体3との間に隙間が存在してもよい。
【0021】
カバー部材5は、突出部5bと、突出部5bの外周部に連続するように設けられ、外方に突出した外周フランジ部5aと、を有している。カバー部材5の突出部5bは、筐体6の開口6aから露出するように、開口6aに挿入される。開口6aから露出した突出部5bが、電子機器100の使用者によって押圧操作される部分である。カバー部材5のカバー部材5の外周フランジ部5aは、弾性体3の内周部3Z、薄肉部3Y、および外周部3Xによって形成された環状の溝Sに受け入れられる。外周フランジ部5aは、弾性体3の薄肉部3Yに押し当てられる。
【0022】
本実施の形態においては、シャフト4およびカバー部材5は、別個の2つの部材として設けられている。それにより、押しボタンスイッチ10を構成する個々の部品の厚さを小さくすることができる。そのため、押しボタンスイッチ10を構成する部品のコストダウンを図ることができる。しかしながら、シャフト4とカバー部材5とは、たとえば、一体成形された1つの部品で形成されていてもよい。この場合、シャフト4のフランジ4aは不要となる。
【0023】
筐体6は、開口6aを有している。筐体6の開口6aの周辺部が、環状の溝S内において、カバー部材5の外周フランジ部5aを弾性体3に向かって押し付けるように、筐体6と弾性体3とがカバー部材5を挟み付けている。筐体6の開口6aは、カバー部材5の突出部5bを受け入れた状態で、突出部5bが開口6aから露出する。その結果、
図3に示される構造が形成される。
【0024】
図4に示されるように、筐体6は、その内側面に、開口6aの内周に沿って、開口6aを取り囲むように設けられた環状の窪み6bを有している。環状の窪み6bは、弾性体3の外周部3Xの上面に形成された環状の突起3cと嵌合する(
図2、
図5、および
図6参照)。それにより、環状の突起3cが筐体6によって押し潰される。その結果、筐体6と弾性体3との間の隙間は、ほぼ完全に塞がれる。
【0025】
したがって、電子機器100の外部の水分が筐体6と弾性体3との間の隙間を経由して押しボタンスイッチ10の内部へ進入することが防止されている。ただし、筐体6が環状の窪み6bを有しておらず、弾性体3の環状の突起3cが筐体6の内側面に押し潰されることにより、弾性体3と筐体6との間の隙間が塞がれてもよい。
【0026】
図5は、実施の形態の押しボタンスイッチ10およびその周辺構造の断面図であって、押しボタンスイッチ10が押されていない状態を示す図である。
図6は、実施の形態の押しボタンスイッチ10およびその周辺構造の断面図であって、押しボタンスイッチ10が押された状態を示す図である。
【0027】
図5および
図6に示されるように、前述のように、実施の形態の押しボタンスイッチ10は、平板状の基材1の上にタクトスイッチ2を備えている。タクトスイッチ2の詳細構造は後述される。
【0028】
弾性体3は、タクトスイッチ2の周辺であって、弾性体3と基材1との間に空隙3Sを形成しつつタクトスイッチ2を覆うように配置される。弾性体3は、タクトスイッチ2に向かって延びる貫通孔3aを有している。弾性体3は、前述のように、カバー部材5が基材1に向かって押された場合に、外周フランジ部5aの移動スペースとして機能する環状の溝Sを有している。
【0029】
弾性体3の上面は、シャフト4のフランジ4aを受け入れる環状の凹部3bを有している。フランジ4aの上面と弾性体3の上面とが面一をなしている。そのため、シャフト4の表面と弾性体3の表面との間に段差が生じない。したがって、カバー部材5をタクトスイッチ2に向かって押したときに、シャフト4および弾性体3を一体的に移動させることができる。また、弾性体3の内周部3Zは、後述されるカバー部材5の凹面5dと嵌合する凸部3dを構成している。
【0030】
弾性体3は、内周部3Z、外周部3X、および薄肉部3Yを備えている。内周部3Zは、貫通孔3aを有している。弾性体3は、シリコーンゴムで形成されている。なお、弾性体3は、後述されるLED(Light Emitting Diode)7の光を通過させるという観点から、透明材料で形成されていることが好ましい。外周部3Xは、内周部3Zの外側に設けられている。薄肉部3Yは、内周部3Zと外周部3Xとの間で、内周部3Zおよび外周部3Xと一体的に設けられている。薄肉部3Yは、内周部3Zおよび外周部3Xよりも厚さが小さく、かつ、平面視において、環状をなしている。
【0031】
シャフト4は、環状の薄肉部3Yの弾性変形に起因して、タクトスイッチ2に向かって移動する。したがって、シャフト4の先端がタクトスイッチ2に押し当てられる。なお、基材1と弾性体3との間には、空隙3Sの空気を排出するための排出通路3eが設けられている。そのため、弾性体3がタクトスイッチ2へ向かって弾性変形しても、空隙3S内の空気は、排出通路3eを経て、空隙3Sの外部へ移動することができる。
【0032】
シャフト4は、弾性体3に係止されたフランジ4aを有している。シャフト4は、主軸4bが貫通孔3aに挿入された状態で、フランジ4aが弾性体3に係止されている。そのため、シャフト4は、弾性体3の空隙3S側へ抜け出さない。シャフト4の先端部が貫通孔3aから可動接点24に向かって突出している。そのため、シャフト4をタクトスイッチ2により確実に接触させることができる。
【0033】
シャフト4は、タクトスイッチ2のクリック音を低下させる硬質材料で形成されている。シャフト4は、図示しない比較例の電子機器の押しボタンスイッチにおいて用いられているシリコーンゴムよりも硬い材料で形成されている。そのため、クリック感を生じさせながら、クリック音の発生を抑制することができる。
【0034】
本実施の形態においては、シャフト4は、PMMA(PolyMethyl MethAcrylate)、つまり、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で形成されている。シャフト4は、PC(polycarbonate)樹脂、または、ABS(Acrylonitrile butadiene styrene)樹脂で形成されていてもよい。しかしながら、シャフト4を構成する硬質材料は、タクトスイッチ2のクリック音を低減できる硬さを有している材料であれば、いかなる材料であってもよい。なお、シャフト4は、後述されるLED7の光を通過させるという観点から、透明材料で形成されていることが好ましい。
【0035】
具体的には、比較例の電子機器の押しボタンスイッチのシャフトに用いられているシリコーンゴムより硬い材料であれば、いかなる硬質材料がシャフト4の材料として用いられてもよい。つまり、シリコーンゴムをシャフト4の材料として用いる場合に比較して、クリック音を低減できるのであれば、いかなる硬質材料がシャフト4の材料として用いられてもよい。なお、本実施の形態のシャフト4の硬さ測定方法と比較例のシリコーンゴムの硬さ測定方法とにおいて同一の硬さ測定方法が用いられるのであれば、いかなる硬さ測定方法が用いられてもよい。シャフト4の硬さは、デュロメータ(ゴム硬度計)のタイプAによる測定で90以上であることが好ましい。
【0036】
カバー部材5は、筐体6に押さえ付けられた外周フランジ部5aを有している。本実施の形態においては、カバー部材5は、筐体6によって位置固定されている。カバー部材5は、シャフト4と同一材料で形成されている。つまり、カバー部材5は、PMMA(PolyMethyl MethAcrylate)、つまり、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で形成されている。なお、カバー部材5は、後述されるLED7の光を通過させるという観点から、透明材料で形成されていることが好ましい。
【0037】
弾性体3の環状の溝Sは、内周部3Z、薄肉部3Y、および外周部3Xによって構成されている。環状の溝Sは、カバー部材5が
図6の白抜き矢印で示される方向に押された場合に、外周フランジ部5aの移動スペースとして機能する。弾性体3の環状の溝Sは、
図2から推測されるように、平面視においては、弾性体3の外形に沿った形状を有している。この環状の溝Sにより、カバー部材5のフランジ4aの移動が制限されることが防止されている。
【0038】
筐体6は、開口6aを有している。筐体6は、カバー部材5の一部を開口6aから露出させている。筐体6は、アルミニウムで形成されている。ただし、筐体6は、弾性体3よりも硬く、かつ、弾性体3を基材1に向かって押し付けることができる程度の硬さを有していれば、いかなる材料で形成されていてもよい。弾性体3は、弾性体3と筐体6との間の隙間を塞ぐように、筐体6に接触する突起3cを有している。
【0039】
より具体的には、筐体6は、基材1側に向かって突出した環状の縁部6cの先端面に、すなわち、弾性体3に対向する下面に、環状の窪み6bを有している。環状の窪み6bは、弾性体3の筐体6に対向する上面に設けられた環状の突起3cに密着した状態で嵌合する。それにより、弾性体3と筐体6との間の隙間が塞がれる。そのため、タクトスイッチ2の周辺の空間まで水分が浸入することを防止することができる。
【0040】
また、筐体6の環状の窪み6bと弾性体3の環状の突起3cとが嵌合することにより、基材1の面内方向における筐体6と弾性体3との位置ずれを抑制することができる。つまり、筐体6がカバー部材5、弾性体3、およびシャフト4を基材1に向かって押さえ付けることにより、カバー部材5、弾性体3、およびシャフト4を基材1に対する位置を固定することができる。その結果、シャフト4をより確実にタクトスイッチ2に向かって移動させることができる。なお、筐体6の窪み6bおよび弾性体3の突起3cは、いずれも、環状の平面形状を有していなくてもよく、互いに嵌合し、弾性体3と筐体6との間の隙間を塞ぐことができる形状であれば、いかなる平面形状を有していてもよい。
【0041】
なお、基材1の表面には、タクトスイッチ2以外に、LED7が設けられている。LED7が発した光は、弾性体3、シャフト4、およびカバー部材5を透過して、筐体6の開口6aから外部空間へ出射される。そのため、押しボタンスイッチ10の位置で点灯するため、夜間または暗がりにおいても、押しボタンスイッチ10の位置を容易に把握することができる。
【0042】
図7は、実施の形態の押しボタンスイッチ10を構成するタクトスイッチ2の断面模式図であって、タクトスイッチ2の可動接点24がシャフト4によって押されていない状態を示す図である。
図8は、実施の形態の押しボタンスイッチを構成するタクトスイッチの断面模式図であって、タクトスイッチ2の可動接点24がシャフト4によって押された状態を示す図である。
【0043】
図7および
図8に示されるように、タクトスイッチ2は、容器部21、導電性支持部22、固定接点23、可動接点24、弾性膜部25、弾性支持部26、およびプッシュ板27を備えている。
【0044】
タクトスイッチ2の電気が流れる経路は、固定接点23および可動接点24を含んでいる。固定接点23は、導電性部材により形成されている。固定接点23は、容器部21の底面に固定されている。可動接点24は、メタルドームと呼ばれる導電性部材によって形成されている。可動接点24は、
図7に示される固定接点23から離れる方向に突出した第1状態と、
図8に示される固定接点23に接触するように固定接点23に向かって突出した第2状態とに変化する。
【0045】
図7に示されるように、カバー部材5が電子機器100の使用者の指で押されていないために、シャフト4がプッシュ板27から離れている状態においては、可動接点24は、固定接点23から離れている。そのため、タクトスイッチ2の電気経路を構成する固定接点23と可動接点24との間で電気は流れない。
【0046】
一方、
図8に示されるように、カバー部材5が使用者の指で押されたために、シャフト4がプッシュ板27を押した状態においては、弾性支持部26が弾性変形し、プッシュ板27が弾性膜部25を押す。それにより、弾性膜部25が可動接点24を固定接点23に接触させるように可動接点24を弾性変形する。つまり、タクトスイッチによれば、シャフト4が可動接点24に向かって押された場合に、可動接点24が固定接点23に対して押し付けられる。その結果、可動接点24が固定接点23に接触し、固定接点23と可動接点24とが電気的に接続される。したがって、タクトスイッチ2がオン状態になる、すなわち、固定接点23と可動接点24との間で電気が流れる。
【0047】
シャフト4が可動接点24に向かって移動すると、可動接点24は、
図7に示される上側に突出した第1湾曲状態から
図8に示される下側に突出した第2湾曲状態へ変化する。このとき、比較例の押しボタンスイッチのように、シャフトがシリコーンゴムのような柔らかい材料で形成されていると、可動接点24の第1湾曲状態と第2湾曲状態との間での状態変化の繰り返しが生じる。この状態変化の繰り返しに起因して、人に聞こえる程度の振動音が発生してしまう。
【0048】
しかしながら、本実施の形態においては、シャフト4は、硬質材料で形成されているため、可動接点24に第2湾曲状態を維持させることができる。つまり、シャフト4が、可動接点24の第1湾曲状態と第2湾曲状態との間での状態変化の繰り返しを抑制する。その結果、そのような可動接点24の状態変化の繰り返しに起因して生じる振動音の発生を抑制する。したがって、たとえば、押しボタンスイッチ10を用いる電子機器100としてのビデオカメラでの録音中等に発生するクリック音を低減することができる。
【0049】
シャフト4を構成する硬質材料は、上記したように、シャフト4と固定接点23との間での可動接点24の振動を抑制する硬さを有していれば、いかなるものであってもよい。
【0050】
また、カバー部材5は、カバー部材5と基材1とによって弾性体3を挟みつけるように設けられ、シャフト4を覆っている。そのため、カバー部材5は、シャフト4の弾性体3からの抜けを抑制する。カバー部材5は、弾性体3よりも硬い材料で形成されている。そのため、シャフト4は、可動接点24が基材1から離れる方向に突出した第1湾曲状態と可動接点24が基材1に接触するように突出した第2湾曲状態との間の状態変化を繰り返しに起因した振動音の発生をより確実に抑制することができる。
【0051】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、具体的な構成を任意に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 基材
2 タクトスイッチ
3 弾性体
3a 貫通孔
4 シャフト
5 カバー部材
5a 外周フランジ部
6 筐体
6a 開口
10 押しボタンスイッチ
23 固定接点
24 可動接点
100 電子機器