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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ステップモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H02P8/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020206047
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092999
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】白井 琢矢
(72)【発明者】
【氏名】田京 祐
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-157294(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141994(WO,A1)
【文献】特開2020-162335(JP,A)
【文献】特開2020-112446(JP,A)
【文献】特開2020-016531(JP,A)
【文献】特開2019-215361(JP,A)
【文献】特開平03-089900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P8/00-8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に2極着磁されたロータ
前記ロータに対向して設けられた第1のステータ磁極部及び第2のステータ磁極部、及び、当該第1及び前記第2のステータ磁極部の間にあって前記ロータに向き合って設けられた第3のステータ磁極部を有するステータ
前記第1のステータ磁極部及び前記第3のステータ磁極部に磁気的に結合する第1のコイルと、
前記第2のステータ磁極部及び前記第3のステータ磁極部に磁気的に結合する第2のコイル
を有するステップモータを駆動する駆動電圧を発生可能な駆動電圧発生手段を備え、
前記駆動電圧は、前記第1のコイルと前記第2のコイルに印加され、前記第1のステータ磁極部と前記第2のステータ磁極部を互いに異なる極性に励磁する第1の駆動電圧と、前記第1のコイルまたは前記第2のコイルのいずれか1つのコイルに印加され、前記第1のステータ磁極部と前記第2のステータ磁極部を互いに異なる極性に励磁させ、且つ、前記第3のステータ磁極部を前記第1のステータ磁極部または前記第2のステータ磁極部と同じ極性に励磁する第2の駆動電圧と、を含み、
前記駆動電圧発生手段は、
前記第1の駆動電圧による前記ロータの回転方向が前記第2の駆動電圧による前記ロータの回転方向と同一になるように前記駆動電圧を印加することで、
前記第1の駆動電圧により前記ロータを90度以上回転させ、
前記第1の駆動電圧及び前記第2の駆動電圧により前記ロータは180度回転させ、
前記第1の駆動電圧及び前記第2の駆動電圧を交互に繰り返して印加することによって、ロータを回転駆動させる、
ことを特徴とするステップモータ駆動装置。
【請求項2】
前記第1の駆動電圧により、前記ロータを115度以上且つ150度以下回転させる、請求項1に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項3】
前記ロータの極性値を記憶するステアリング記憶手段を更に備え、
前記ステアリング記憶手段は、前記第2の駆動電圧の出力終了後に前記極性値を反転し、
駆動電圧発生手段は、前記極性値に基づいて、前記第1の駆動電圧、及び、前記第2の駆動電圧の印加方向を反転する、請求項1又は2に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項4】
前記ロータの回転を検出するための検出パルスを発生可能な検出パルス発生手段と、
前記検出パルスに基づく電圧を前記第1のコイル又は前記第2のコイルに印加することにより、検出される検出信号に基づいて、前記ロータの回転/非回転を判定する回転検出手段と、
を更に備える、請求項1~3の何れか一項に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項5】
前記第2の駆動電圧を前記ステップモータに印加する時間は可変であって、
前記回転検出手段は、前記第2の駆動電圧の印加中に前記ロータの回転を検出し、
前記回転検出手段の検出結果により、印加中の前記第2の駆動電圧の印加時間が可変される、請求項4に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項6】
前記第1の駆動電圧を前記ステップモータに印加する時間は可変であって、
前記回転検出手段の検出結果により、次回印加される前記第1の駆動電圧の印加時間が可変される、請求項4又は5に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項7】
前記ロータの回転を補助する補正パルスを発生可能な補正パルス発生手段を更に備え、
前記補正パルス発生手段は、前記回転検出手段が前記ロータを非回転と判断した場合に、前記補正パルスに応じた電圧を前記第2の駆動電圧に続いて前記ステップモータへ出力する、請求項4~6の何れか一項に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項8】
前記ロータの回転を停止させる終端パルスを発生可能な終端パルス発生手段を更に備え、
前記終端パルス発生手段は、駆動停止時に、前記終端パルスに応じた電圧を前記第1の駆動電圧又は前記第2の駆動電圧の出力後に前記ステップモータへ出力する、請求項1~7の何れか一項に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項9】
停止状態の前記ロータの動き出しを補助する初動パルスを発生可能な初動パルス発生手段を更に備え、
前記初動パルス発生手段は、駆動開始時に、前記初動パルスに応じた電圧を前記第1の駆動電圧の出力前に前記ステップモータへ出力する、請求項4~8の何れか一項に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項10】
停止状態の前記ロータの動き出しを補助する初動パルスを発生可能な初動パルス発生手段を更に備え、
前記初動パルス発生手段は、駆動開始時に、前記初動パルスに応じた電圧を前記第1の駆動電圧の出力前に前記ステップモータへ出力し、
前記初動パルスに応じた電圧を前記ステップモータへ印加する時間は可変であり、
前記回転検出手段は、前記初動パルスの印加中に前記ロータの回転を検出し、
前記回転検出手段の検出結果により、前記初動パルスに応じた電圧を前記ステップモータへ印加する時間が可変される、請求項に記載のステップモータ駆動装置。
【請求項11】
前記駆動電圧発生手段によって第2の駆動電圧が印加されたとき、前記ロータは、前記ロータの前記第3のステータ磁極部に対向する極性が前記第3のステータ磁極部の極性と相違するように回転する、請求項1~10の何れか一項に記載のステップモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2コイルステップモータを駆動するためのステップモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ表示式の電子時計で利用される2コイルステップモータにおいて、2つのコイルを同時に励磁させる駆動パルスと、いずれか1つのコイルのみを励磁させる駆動パルスを切り替えながら駆動させる技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載された発明では高速駆動可能な2コイルステップモータを備えた電子時計が提案されている。ロータを360度回転させるために、1つのコイルのみを励磁させる駆動パルスにより135度回転させ、2つのコイルを同時に励磁させる駆動パルスにより225度回転させる方式を採用している。これにより、ロータを停止させることなく、短時間で一回転させることができるため、高速駆動が実現できると共に、運針が滑らかになり、見栄えの良い電子時計が提供できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/141994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多機能な電子時計においては、現在時刻の表示モードの他に、ワールドタイム表示モードなどを持っており、モードの切り替え時においては、指針をよりスピーディに駆動させることが求められていた。
【0006】
本発明は、2コイルステップモータをよりスピーディに駆動させることを可能とするステップモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、径方向に2極以上着磁されたロータ、ロータに対向して設けられた第1のステータ磁極部及び第2のステータ磁極部、及び、当該第1及び第2のステータ磁極部の間にあってロータに向き合って設けられた第3のステータ磁極部を有するステータ、第1のステータ磁極部及び第3のステータ磁極部に磁気的に結合する第1のコイル、及び、第2のステータ磁極部及び第3のステータ磁極部に磁気的に結合する第2のコイル、を有するステップモータを駆動するためのステップモータ駆動装置であって、
第1のコイルと第2のコイルに印加され、第1のステータ磁極部と第2のステータ磁極部を互いに異なる極性に励磁する第1の駆動電圧と、第1のコイルまたは第2のコイルのいずれか1つのコイルに印加され、第1のステータ磁極部と第2のステータ磁極部を互いに異なる極性に励磁させ、且つ、第3のステータ磁極部を第1のステータ磁極部または第2のステータ磁極部と同じ極性に励磁する第2の駆動電圧と、を発生可能な駆動電圧発生手段を備え、
駆動電圧発生手段は、第1の駆動電圧により前記ロータを90度以上回転させ、第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧によりロータは180度回転させ、第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧を交互に繰り返して印加することによってロータを回転駆動させる、ステップモータ駆動装置を提供する。
【0008】
上記のステップモータ駆動装置は、第1の駆動電圧により、ロータを115度以上且つ150度以下回転させることが好ましい。
【0009】
上記のステップモータ駆動装置は、ロータの極性値を記憶するステアリング記憶手段を更に備え、ステアリング記憶手段は第2駆動電圧出力終了後に極性値を反転し、駆動電圧発生手段は、極性値に基づいて、第1の駆動電圧、及び、第2の駆動電圧の印加方向を反転することが好ましい。
【0010】
上記のステップモータ駆動装置は、ロータの回転を検出するための検出パルスを発生可能な検出パルス発生手段と、検出パルスに基づく電圧を第1のコイル又は第2のコイルに印加することにより、検出される検出信号に基づいて、ロータの回転/非回転を判定する回転検出手段と、を更に備えることが好ましい。
【0011】
上記のステップモータ駆動装置は、第2の駆動電圧をステップモータに印加する時間は可変であって、回転検出手段は第2の駆動電圧の印加中に前記ロータの回転を検出し、回転検出手段の検出結果により印加中の前記第2の駆動電圧の印加時間幅可変されることが好ましい。
【0012】
上記のステップモータ駆動装置は、第1の駆動電圧を前記ステップモータに印加する時間は可変であって、回転検出手段の検出結果により、次回印加される第1の駆動電圧の印加時間が可変されることが好ましい。
【0013】
上記のステップモータ駆動装置は、ロータの回転を補助する補正パルスを発生可能な補正パルス発生手段を更に備え、補正パルス発生手段は回転検出手段がロータを非回転と判断した場合に、補正パルスに応じた電圧を第2の駆動電圧に続いて前記ステップモータへ出力することが好ましい。
【0014】
上記のステップモータ駆動装置は、ロータの回転を停止させる終端パルスを発生可能な終端パルス発生手段を更に備え、終端パルス発生手段は、駆動停止時に、終端パルスに応じた電圧を第1の駆動電圧又は第2の駆動電圧の出力後に前記ステップモータへ出力することが好ましい。
【0015】
上記のステップモータ駆動装置は、停止状態のロータの動き出しを補助する初動パルスを発生可能な初動パルス発生手段を更に備え、初動パルス発生手段は、駆動開始時に、初動パルスに応じた電圧を第1の駆動電圧の出力前にステップモータへ出力することが好ましい。
【0016】
上記のステップモータ駆動装置は、初動パルスに応じた電圧をステップモータへ印加する時間は可変であり、回転検出手段は初動パルスの印加中にロータの回転を検出し、回転検出手段の検出結果により、初動パルスに応じた電圧を前記ステップモータへ印加する時間が可変されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
1つのコイルのみを励磁させる駆動パルスの出力期間と比較して、2つのコイルを同時に励磁させる駆動パルスの出力期間の割合を大きくしたことで、従来よりも2コイルステップモータを高速駆動可能なステップモータ駆動装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電子時計10の一例を示す平面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るステップモータ駆動装置20の概略構成図である。
図3】2コイルステップモータの概略構成図である。
図4】ドライバ回路30の一例を示す回路図である。
図5】(a)は駆動パルス列SP10による駆動波形及O1~O4の一例を示し、(b)は駆動パルス列SP10による各トランジスタの動作を示す表である。
図6】(a)~(e)は、駆動パルス列SP10によるステップモータ40の動作図である。
図7】(a)は逆転駆動パルス列SP10´による駆動波形O1´~O4´の一例を示し、(b)~(f)は逆転駆動パルス列SP10´によるステップモータ40の動作図である。
図8】(a)比較例として示す駆動波形を示し、(b)~(e)は比較例として示す駆動波形によるステップモータ40の動作図である。
図9図5に示した駆動パルス列SP10による駆動波形と図8に示した比較例として示す駆動パルス列SP20による駆動波形とを比較して説明するための図である。
図10】ステップモータ駆動装置20において、第1の駆動電圧によりロータを回転させる角度を変更したときの駆動パルス列SP10と駆動パルス列SP20との間の時間差を示す図であり、(a)はロータを回転させる角度が115度である場合を示し、(b)はロータを回転させる角度が135度である場合を示し、(c)はロータを回転させる角度が150度である場合を示す。
図11】本発明の第2の実施形態に係るステップモータ駆動装置50の概略構成図である。
図12】ドライバ回路60の一例を示す回路図である。
図13】ステップモータ40のロータ41の回転と非回転を説明するための図である。
図14】(a)は駆動パルス列SP30による駆動波形O1~O4の一例を示し、(b)は駆動パルス列SP30及び検出パルスCPによる各トランジスタの動作を示す表である。
図15】駆動パルス発生回路53から出力されるパルス波形の一例を示す図である。
図16】(a)は補正パルスFPを含む場合の駆動パルス列SP30に対応した駆動波形О1~О4の一例を示し、(b)は補正パルスFPによるドライバ回路60のトランジスタのON/OFF状態を示した表である。
図17】(a)~(f)は、補正パルスFPによるステップモータ40の動作を説明するための図である。
図18】第2の実施形態に係るステップモータ駆動装置50の動作フロー図である。
図19】(a)はコイルAに発生する誘起電流の波形を示す図であり、(b)はコイルBに発生する誘起電流の波形を示す図であり、(c)はコイル端子O1~O4に印加される駆動波形О1~О4の一例を示す図である。
図20】(a)~(c)は、本発明の第2の実施形態における変形例を説明するための図である。
図21】本発明の第3の実施形態に係るステップモータ駆動装置70の概略構成図である。
図22】(a)は初動パルス列IP10に対応した駆動波形О1~О4の一例を示し、(b)は初動パルス列IP10及び検出パルスCPによるドライバ回路60のトランジスタのON/OFF状態を示した表である。
図23】(a)~(d)は、初動パルス列IP10によるステップモータ40の動作を説明するための図である。
図24】(a)は駆動パルス列SP30及び終端パルス列EPに対応した駆動波形О1~О4の一例を示し、(b)は終端パルス列EPによるドライバ回路60のトランジスタのON/OFF状態を示した表である。
図25】(a)~(d)は、終端パルスEPによるステップモータ40の動作を説明するための図である。
図26】(a)~(d)は、本発明の第3の実施形態における変形例1を説明するための図である。
図27】(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態における変形例2を説明するための図である。
図28】第3の実施形態における変形例2における動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係るステップモータ駆動装置20を適用可能な電子時計10の一例を示す平面図であり、図2は本発明の第1の実施形態に係るステップモータ駆動装置20の概略構成図である。
【0021】
図1に示す電子時計10は、アナログ表示方式の電子時計であり、文字板11、時針12a、分針12b、秒針12c、図2に示すステップモータ駆動装置20、及び、図2に示す2コイルステップモータ40等を有している。図示してはいないが、電子時計10は、更に、輪列、回転駆動させて振動を得るための回転錘、及び、電源等を含む。ステップモータ40は、指針、及び、回転錘を駆動させるための輪列に機械的に接続されている。輪列は、時針12a、分針12b、秒針12cの3つの指針が連動するように構成されている。また、輪列は、指針を駆動させるか、回転錘を駆動させるか、を機械的に選択可能に構成され、1つのステップモータ40で指針および回転錘の両方を駆動できる。電源は、例えば二次電池を含む。
【0022】
ステップモータ駆動装置20は、発振回路21と、制御回路22と、駆動パルス発生回路23と、ドライバ回路30を含む。ステップモータ駆動装置20は、例えば、マイクプロセッサを含む集積回路として実装されている。発振回路21は、水晶振動子(図示せず)によって、所定のクロック信号P1を生成し、制御回路22に出力する。制御回路22は、クロック信号P1に基づいて制御信号CN1を生成し、駆動パルス発生回路23に出力する。駆動パルス発生回路23は、制御信号CN1に基づいて、駆動パルス列SP10を生成し、ドライバ回路30に出力する。ドライバ回路30は、駆動パルス列SP10に基づいて、駆動波形O1~04を生成し、ステップモータ40に供給する。
【0023】
図3は、本発明に係る2コイルステップモータ駆動装置によって駆動可能な2コイルステップモータの概略構成図である。図3に示す様に、ステップモータ40は、ロータ41、ステータ42、及び、2つのコイル(コイルA及びコイルB)等を含んで構成される。
【0024】
ロータ41は、2極磁化された円盤状の回転体であり、径方向にN極、S極が着磁されている。ロータ軸43は、ロータ41の中心に設けられ、図面の垂直方向の上下に設けられた軸受け(図示せず)によりロータ41を回転可能に支持している。
【0025】
ステータ42は、軟磁性体によって製造され、ロータ41が挿入されるロータ穴44が設けられ、ロータ穴44にロータ41が配置されている。ステータ42には、ロータ41に略対向して第1のステータ磁極部45a(以下、「第1磁極部45a」と略す)と、第2のステータ磁極部45b(以下、「第2磁極部45b」と略す)が設けられている。また、第1磁極部45aと第2磁極部45bの間にあって、ロータ41と向き合う位置に第3のステータ磁極部45c(以下、「第3磁極部45c」と略す)が設けられている。
【0026】
ロータ41をはさんで第3磁極部45cの反対側となる、第1磁極部45aと第2磁極部45bの間には、ステータの幅が狭くなる狭窄部46が設けられる。また、ロータ41の中心から見て、第3磁極部45cの方向を0度とした場合、左右おおむね75度の位置にスリット47が設けられている。すなわち、第1磁極部45aと第3磁極部45c、第2磁極部45bと第3磁極部45c、第1磁極部45aと第2磁極部45bが磁気的に接続されにくくなっている。なお、狭窄部46とスリット47は、ここで示したような狭窄や間隙であってもよいし、細幅の非磁性材料をスリット47の位置に挿入し、ステータと結合させたものであってもよい。
【0027】
ステップモータ40には、第1磁極部45aと第3磁極部45cに磁気的に結合する第1のコイルとしてのコイルAと、第2磁極部45bと第3磁極部45cに磁気的に結合する第2のコイルとしてのコイルBが設けられている。
【0028】
コイルAのコイル巻き線の両端は、絶縁基板48a上に配置されたコイル端子O1、O2とそれぞれ接続している。また、コイルBは絶縁基板48b上にコイル端子O3、O4を有しており、コイルBの巻線の両端が接続されている。この各コイル端子O1~O4に、前述したドライバ回路30から出力される駆動波形O1~O4がそれぞれ供給される。説明をわかりやすくするために、各コイル端子と、供給される各駆動波形の符号を共通にしている。また、一例としてコイル端子O1がコイルAの巻始めであり、コイル端子O4がコイルBの巻始めである。図3に示す様に、絶縁基板48aにコイルAが回線され、絶縁基板48bにコイルBが回線され、絶縁基板48a及び48bは3本のネジ49でステータ48に固定されている。
【0029】
図3で示すロータ41は静止状態であり、図面の上方を0度と規定し(始点)、その位置から反時計回りに90度、180度、270度と規定する。ロータ41は、N極が0度に位置するときと、180度に位置するときが静的安定点である。ステータ42が磁化されていない場合は、保持トルクによりロータ41に対して静的安定点に留まる力が働く。なお、図3で示すロータ41は、N極が0度の静的安定点に留まっている。そして、後述するステップモータ40の回転駆動の説明をわかりやすくするために、ロータ41のN極が135度に位置するときを定常回転の開始位置と規定する。ところで、ステータ42が磁化されていない状態で、ロータ41のN極を定常回転の開始位置に位置せることはできないが、後述する実施形態3にてロータ41のN極を定常回転の開始位置に合わせてから定常駆動させる方法を説明する。なお、定常回転の開始位置はロータ41のN極が90度から180度の間であれば任意であり、通常はステータ42の設計により任意に調節が可能である。
【0030】
図4は、ドライバ回路30の一例を示す回路図である。
【0031】
図4に示す様に、ドライバ回路30は、駆動パルス列SP10に基づいて、ステップモータ40のコイルA、コイルBに駆動波形O1~O4を供給する4つのバッファ回路によって構成される。
【0032】
第1のバッファ回路では、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1とがコンプリメンタリ接続されており、駆動波形O1を生成して、コイルAのコイル端子O1に供給する。第2のバッファ回路では、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP2と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN2とがコンプリメンタリ接続されており、駆動波形O2を生成して、コイルAのコイル端子O2に供給する。
【0033】
第3のバッファ回路では、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP3と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN3とがコンプリメンタリ接続されており、駆動波形O3を生成して、コイルBのコイル端子O3に供給する。第4のバッファ回路では、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP4と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN4とがコンプリメンタリ接続されており、駆動波形O4を生成して、コイルBのコイル端子O4に供給する。
【0034】
各トランジスタP1~P4、N1~N4のそれぞれのゲート端子Gには、駆動パルス発生回路23から駆動パルスが入力され、各トランジスタは駆動パルスに基づいてON/OFF制御され、駆動波形O1~O4を出力する。
【0035】
図5(a)は駆動パルス列SP10による駆動波形及O1~O4の一例を示し、図5(b)は駆動パルス列SP10による各トランジスタの動作を示す表である。
【0036】
図5(a)は、ロータ41を、N極が定常回転の開始位置135度にある状態から、正転方向(反時計回り)に回転駆動させるために、ドライバ回路30からコイル端子O1~コイル端子О4に出力される4つの駆動波形O1~O4を示している。
【0037】
図5(b)は、駆動波形O1~O4を生成するために、ドライバ回路30の8つのトランジスタP1~P4及びN1~N4のON/OFF状態を示した表である。後述する様に、ステップモータ40の4つの駆動状態に応じて、駆動波形O1~O4も4つの状態に区別されるが、最初の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが、第1の駆動パルスSP11である。同様に、第2の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが第2の駆動パルスSP12であり、第3の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが第3の駆動パルスSP13であり、第4の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが第4の駆動パルスSP14である。また、第1の駆動パルスSP11~第4の駆動パルスSP14をまとめて、駆動パルス列SP10と称する。
【0038】
図5(a)に示す様に、駆動パルス列SP10は、第1の駆動パルスSP11、第2の駆動パルスSP12、第1の駆動パルスSP11のコイルへの印加方向を反転させた反転第1の駆動パルスSP13と第2の駆動パルスSP12のコイルへの印加方向を反転させた反転第2の駆動パルスSP14の4個の駆動パルスを含む。ステップモータ40が、回転を継続している場合には、図5(a)に示す4つの駆動波形O1~O4が、繰り返し順次ステップモータ40へ供給され、その為にドライバ回路30に駆動パルス列SP10が繰り返し順次出力されることとなる。
【0039】
制御回路22は、ロータ41の極性を記憶するステアリング記憶手段(不図示)を備えており、ステアリング記憶手段は、コイルへのパルス印加方向を記憶する変数を記憶している。また、変数は、第2の駆動パルスSP12及び、反転第2の駆動パルスSP14を出力する毎にその値が反転される。制御回路22は、変数の値に基づいて、駆動パルス発生回路23から、第1の駆動パルスSP11と第2の駆動パルスSP12と、反転第3の駆動パルスSP13及び反転第4の駆動パルスSP14を選択的に出力可能に制御する。これにより、各コイルへの電流印加方向が反転される。
【0040】
第1の駆動パルスSP11による駆動波形O1、О3の電圧は、0(v)であり、駆動波形O2、О4の電圧は、-V(v)である。これにより、ステップモータ40のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが励磁される。
【0041】
第2の駆動パルスSP12による駆動波形O4の電圧は、-V(v)であり、他の駆動波形O1、O2、O3の電圧は、0(v)である。これにより、ステップモータ40のコイルBにのみ駆動電流が流れて、コイルBのみが励磁される。この場合、コイルAには、駆動電流は流れない。
【0042】
第3の駆動パルスSP13による4つの駆動波形O1~O4は、第1の駆動パルスSP11による4つの駆動波形O1~O4の電圧状態が反転した状態となっている。すなわち、第3の駆動パルスSP13による駆動波形O2、O4の電圧は、0(v)であり、駆動波形O1、O3の電圧は、-V(v)である。これにより、ステップモータ40のコイルA、コイルBの両方に、第1の駆動パルスSP11による駆動波形O1~O4の時とは逆方向の駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが逆方向に励磁される。
【0043】
第4の駆動パルスSP14による駆動波形O1、О2、О4の電圧は、0(v)であり、駆動波形O3の電圧は、-V(v)。これにより、ステップモータ40のコイルBに、第2の駆動パルスSP12による駆動波形O1~О4の時とは逆方向の駆動電流が流れて、コイルBのみが逆方向に励磁される。
【0044】
なお、駆動パルス列SP10の周期、すなわち、合計のパルス幅は任意である。また、駆動波形O1~O4は、連続するフルパルスとして図示しているが、複数の細かいパルス群によるチョッパ形の駆動パルスとしても良い。
【0045】
図6は、図5に示す駆動波形及O1~O4によるステップモータ40の動作図である。ステップモータ40の正転方向(反時計回り)への回転駆動について図6(a)~(e)を用いて説明する。
【0046】
図6(a)に示す様に、ロータ41のN極の開始位置は、図3に示す0度の位置から反時計回りに135度の位置にあるものとする。なお、図6において、各パルスによるロータ41の移動量は一例を示しており、通常はステータ42の設計により任意に調節が可能である。
【0047】
図6(b)は、第1の駆動パルスSP11による駆動波形O1~О4に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBがそれぞれ矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部45aがN極に磁化され、第2磁極部45bがS極に磁化され、第3磁極部45cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のN極と第2磁極部45bのS極が引き合い、且つ、ロータ41のS極と第1磁極部45aのN極が引き合い、ロータ41のN極は、反時計周りに回転し、定常回転の開始位置135度から270度の位置まで、約135度回転する。
【0048】
次に、図6(c)は、第2の駆動パルスSP12による駆動波形O1~O4に示した電圧がステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルBにのみ駆動電流が流れて、コイルBのみが矢印の方向に励磁される。これにより、第2磁極部45bがS極、第3磁極部45cがN極に磁化され、コイルAは励磁されないので第1磁極部45aは第3磁極部45cと同じN極となる。その結果、ロー41のS極と第1の磁極部45a及び第3の磁極部45cのN極が引き合い、ロータ41のN極は、停止することなく更に反時計周りに回転し、270度の位置から315度の位置まで、約45度回転する。
【0049】
この時点で、ロータ41は第1の駆動パルスSP11と第2の駆動パルスSP12による駆動波形O1~O4に示した電圧によって、定常回転の開始位置を基準として反時計周りに180度回転されたことになる。
【0050】
次に、図6(d)は、第3の駆動パルスSP13による4つの駆動波形O1~O4に示した電圧(第1の駆動パルスSP11による4つの駆動波形O1~O4の電圧状態が反転した電圧)が、コイル端子O1~О4に供給された状態を示している。この結果、コイルA、コイルBの両方に、第1の駆動パルスSP11による駆動波形O1~O4の時とは逆方向の駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが矢印の方向(図6(b)とは逆方向)に励磁される。これにより、第1磁極部45aがS極に磁化され、第2磁極部45bがN極に磁化され、第3磁極部45cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のN極と第1磁極部45aのS極が引き合い、且つ、ロータ41のS極と第2磁極部45bのN極が引き合い、ロータ41のN極は、反時計周りに回転し、315度の位置から0度の位置を通過して90度の位置まで、約45度回転する。
【0051】
次に、図6(e)は、第4の駆動パルスSP14による駆動波形O1~O4に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示している。この結果、コイルBに、第2の駆動パルスSP12による駆動波形O1~О4の時とは逆方向の駆動電流が流れて、コイルBのみが矢印の方向(図6(c)とは逆方向)に励磁される。これにより、第2磁極部45bがN極に磁化され、第3磁極部45cがS極に磁化され、コイルAは励磁されないので第1磁極部45aは第3磁極部45cと同じS極となる。その結果、ロータ41のN極と第1の磁極部45a及び第3の磁極部45cのS極が引き合い、ロータ41のN極は、停止することなく更に反時計周りに回転し、90度の位置から定常回転の開始位置である135度の位置まで、約45度回転する。
【0052】
この時点で、ロータ41は、第1の駆動パルスSP11~第4の駆動パルスSP14による駆動波形O1~O4に示した電圧によって、正転方向(反時計回り)に360度回転駆動される。以上のように第1の実施形態に係るステップモータ駆動装置20は、ステップモータ40に駆動パルス列SP10による駆動波形O1~O4に示した電圧を供給することで、正転方向(反時計回り)の回転駆動を可能としている。
【0053】
図5において、コイルA及びコイルBを両方とも励磁する駆動パルスSP11又は駆動パルスSP13による駆動波形O1~O4を、第1の駆動電圧と称し、コイルA又はコイルBの一方のみを励磁する駆動パルスSP12又は駆動パルスSP14による駆動波形O1~O4を、第2の駆動電圧と称する。すると、ドライバ回路30は、第1の駆動電圧により、ロータ41を90度以上(図5の例では135度)回転させ、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧でロータ41を180度回転させている。更に、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧とを交互に連続してコイルA及び/又はコイルBに印加することによって、ロータ41を回転駆動している。第1の駆動電圧により、ロータ41を回転させる角度は、135度に限定されず、115度以上且つ150度以下であれば、ステップモータ40の特性等に応じて、適宜決定することができる。
【0054】
図7(a)は逆転駆動パルス列SP10´による駆動波形O1´~O4´の一例を示し、図7(b)~(f)は逆転駆動パルス列SP10´によるステップモータ40の動作図である。図7を用いて、ステップモータ40のロータ41を逆転方向(時計回り)に駆動させる場合について説明する。
【0055】
図7(a)は、ステップモータ40のロータ41を逆転方向(時計回り)に駆動させるための逆転駆動パルス列SP10´による逆転駆動波形O1´~O4´示している。後述する様に、ステップモータ40の4つの駆動状態に応じて、逆転駆動波形O1´~O4´も4つの状態に区別されるが、最初の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが、第1の逆転駆動パルスSP11´である。同様に、第2の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが第2の逆転駆動パルスSP12´であり、第3の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが第3の逆転駆動パルスSP13´であり、第4の状態となるようにドライバ回路30の8つのトランジスタのON/OFF状態を規定するのが第4の逆転駆動パルスSP14´である。また、第1の逆転駆動パルスSP11´~第4の逆転駆動パルスSP14´をまとめて、逆転駆動パルス列SP10´と称する。
【0056】
図7(b)に示す様に、ロータ41のN極の開始位置は、図3に示す0度の位置から反時計回りに225度の位置にあるものとする。なお、各パルスでの駆動による移動量は一例を示しており、通常はステータ42の設計により任意に調節が可能である。
【0057】
図7(c)は、第1の逆転駆動パルスSP11´による逆転動波形O1´~О4´に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBがそれぞれ矢印の方向(図6(b)とは逆の方向)に励磁される。これにより、第1磁極部45aがS極に磁化され、第2磁極部45bがN極に磁化され、第3磁極部45cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のS極と第2磁極部45bのN極が引き合い、ロータ41のN極と第1磁極部45aのS極が引き合い、ロータ41のN極は、時計周りに回転し、開始位置の225度から90度の位置まで、約135度回転する。
【0058】
次に、図7(d)は、第2の逆転駆動パルスSP12´による逆転動波形O1´~О4´に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルAにのみ駆動電流が流れて、コイルAが矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部45aがS極に磁化され、第3磁極部45cがN極に磁化され、コイルBは励磁されないので第2磁極部45bは第3磁極部45cと同じN極となる。その結果、ロータ41のS極と第2の磁極部45b及び第3の磁極部45cが引き合い、ロータ41のN極は停止することなく更に時計周りに回転し、90度の位置から45度の位置まで、約45度回転する。
【0059】
この時点で、ロータ41は第1の逆転駆動パルスSP11´と第2の逆転駆動パルスSP12´によって、逆転定常回転の開始位置を基準として逆転方向(時計回り)に180度回転されたことになる。
【0060】
次に、図7(e)は、第3の逆転駆動パルスSP13´による逆転動波形O1´~О4´に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBがそれぞれ矢印の方向(図7(c)とは逆の方向)に励磁される。これにより、第1磁極部45aがN極に磁化され、第2磁極部45bがS極に磁化され、第3磁極部45cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のS極と第1磁極部45aのN極が引き合い、ロータ41のN極と第2磁極部45bのS極が引き合い、ロータ41のN極は、時計周りに回転し、45度の位置から270度の位置まで、約135度回転する。
【0061】
次に、図7(f)は、第4の逆転駆動パルスSP14´による逆転動波形O1´~О4´に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルAのみに駆動電流が流れて、コイルAが矢印の方向(図7(d)とは逆の方向)に励磁される。これにより、第1磁極部45aがN極に励磁され、第3磁極部45cがS極に磁化され、コイルBは励磁されないので第2磁極部45bは第3磁極部45cと同じS極となる。その結果、ロータ41のN極と第2の磁極部45b及び第3の磁極部45cのS極が引き合い、ロータ41のN極は停止することなく更に時計周りに回転し、270度の位置から逆転定常回転の開始位置である225度の位置まで、約45度回転する。
【0062】
この時点で、ロータ41は、第1の逆転駆動パルスSP11´~第4の逆転駆動パルスSP14´による逆転動波形O1´~О4´に示した電圧によって、逆転方向(時計回り)に360度回転駆動される。以上のように第1の実施形態に係るステップモータ駆動装置20は、ステップモータ40に逆転駆動パルス列SP10´による逆転駆動波形O1´~O4´に示した電圧を供給することで、逆転方向(時計回り)の回転駆動を可能としている。なお、図7を参照して説明された逆転駆動は、後述する第2及び第3の実施形態に係るステップモータ駆動装置においても同様に実行可能である。
【0063】
[比較例]
図8は、比較例として示す駆動波形O1~O4、及び、比較例として示す駆動波形O1~O4によるステップモータ40の動作図である。図8を用いて、前述したステップモータ40のロータ41を正転方向(反時計回り)に駆動させる比較例について説明する。
【0064】
図8(a)は、ロータ41を、N極が定常回転の開始位置135度にある状態から、正転方向(反時計回り)に回転駆動させるために、コイル端子O1~コイル端子О4に出力される、比較例における4つの駆動波形O1~O4を示している。
【0065】
比較例では、ステップモータ40の3つの駆動状態に応じて、駆動波形O1~O4も3つの状態に区別されるが、最初の状態を規定するのが、第1の駆動パルスSP21である。同様に、第2の状態を規定するのが第2の駆動パルスSP22であり、第3の状態を規定するのが第3の駆動パルスSP23である。また、第1の駆動パルスSP21~第3の駆動パルスSP23をまとめて、駆動パルス列SP20と称する。
【0066】
図8(b)に示す様に、ロータ41のN極の開始位置は、図3に示す0度の位置から反時計回りに135度にあるものとする。
【0067】
次に、図8(c)は、第1の駆動パルスSP21による動波形O1~О4に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBがそれぞれ矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部45aがN極に磁化され、第2磁極部45bがS極に磁化され、第3磁極部45cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のN極と第2磁極部45bのS極が引き合い、ロータ41のS極と第1磁極部45aのN極が引き合い、ロータ41のN極は、反時計周りに回転し、定常回転の開始位置135度から270度の位置まで、約135度回転する。
【0068】
次に、図8(d)は、第2の駆動パルスSP22による動波形O1~О4に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBがそれぞれ矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部45aと第2磁極部45bがS極に磁化され、第3磁極部45cはN極に磁化される。その結果、ロータ41のS極と第3磁極部45cのN極が引き合い、ロータ41のN極は第1磁極部45aと第2磁極部45bの両方のS極と引き合うので、ロータ41のN極は、更に反時計回りに回転し、270度の位置から0度の位置まで、約90度回転する。
【0069】
次に、図8(e)は、第3の駆動パルスSP23による駆動波形O1~О4に示した電圧が、ステップモータ40のコイル端子O1~О4に供給された状態を示しており、コイルBのみに駆動電流が流れて、コイルAが矢印の方向に励磁される。これにより、第2磁極部45bがN極に励磁され、第3磁極部45cがS極に磁化され、コイルAは励磁されないので第1磁極部45aは第3磁極部45cと同じS極となる。その結果、ロータ41のN極と第1の磁極部45a及び第3の磁極部45cのN極が引き合い、ロータ41のN極は停止することなく更に反時計周りに回転し、0度の位置から定常回転の開始位置である135度の位置まで、約135度回転する。
【0070】
この時点で、ロータ41は駆動パルス列SP20による駆動波形O1~О4に示した電圧によって、定常回転の開始位置である135度から360度回転されたことになる。以上のように比較例の回転駆動によれば、ステップモータ40に駆動パルス列SP20を供給することで回転駆動を可能にしている。
【0071】
図9は、図5に示した駆動パルス列SP10による駆動波形と図8に示した比較例として示す駆動パルス列SP20による駆動波形とを比較して説明するための図である。
【0072】
図9の下部に示す駆動パルス列SP20による駆動波形О1~О4は、図8に比較例として示したものであって、ロータ41が脱調することなく安定駆動できる理想的な時間間隔で、切替わる様にして示している。一方、図9の上部に示す駆動パルス列SP10による駆動波形О1~О4は、図5に第1の実施形態に係るステップモータ駆動装置20がステップモータ40に出力するものとして示したものである。また、駆動パルス列SP10による駆動波形О1~О4は、駆動パルス列SP20による駆動波形О1~О4の印加時間間隔を基準として、ロータ41が脱調することなく安定駆動できる理想的な時間間隔で、切替わる様にして示している。なお、図9の上部には、駆動パルス列SP10に対応したロータ41の位置91~95を示し、図8の下部には、駆動パルス列20に対応したロータ41の位置96~99を示している。
【0073】
時刻T0においては、まだパルスは印加されていないので、ロータ41は駆動パルス列SP10の場合、及び、駆動パルス列SP20の場合共に、定常回転の開始位置である始点から135度の位置91及び96となる。
【0074】
次に、T1区間では、駆動パルスSP11及び駆動パルスSP21では、同じ駆動波形に基づく電圧をステップモータ40に印加してロータ41を135度回転駆動させている。したがって、駆動パルス列SP11とSP21のパルスの印加時間は同じで、ロータ41は共に、位置92及び97となる。
【0075】
次に、T2区間では、駆動パルスSP12はコイルBのみに通電させてロータ41を45度回転駆動させ、駆動パルスSP22はコイルA、コイルBを同時に通電させてロータ41を、同じパルスの印加時間で90度回転駆動させる。2つのコイルを用いた時の駆動力は1つのコイルを用いた時の駆動力の2倍となるため、目標の移動角は、駆動パルスSP12と駆動パルスSP22で異なるが、駆動パルスSP12及び駆動パルスSP22の双方は、同じ印可時間T2で駆動を完了できる。
【0076】
次に、T3区間では、駆動パルスSP13はコイルA、コイルBを同時に通電されて、ロータ41を135度回転駆動させるため、T1区間のSP11と同じパルス印加時間になり、ロータ41は位置94となる。更に、T4区間では、駆動パルスSP14はコイルBのみを通電させて45度回転駆動させるため、T2区間のSP12と同じ印加時間になる。T4区間の終了時点で駆動パルス列SP10により、ロータ41は始点から360度回転した位置95となる。
【0077】
一方、T3区間、T4区間及びT5区間では、駆動パルスSP23はコイルBのみに通電されて、ロータ41を135度回転駆動させる。なお、駆動パルスSP23は、1つのコイルを用いて大きな回転角度を得ようとしているため、パルスの印加時間が長くなっている。T5区間の終了時点において、駆動パルス列SP20によって、ロータ41は始点から360度回転した位置99となる。
【0078】
この様に、駆動パルス列SP10と駆動パルス列SP20とを比較すると、駆動パルス列SP10を利用した場合、T5区間分だけ(約9%)、ロータ41が360度回転する時間が早くなる。駆動パルス列SP10では、一回転中で、コイルAとコイルBの両方を励磁させて駆動させる回転角度の合計は270度であり、コイルBのみを励磁させて駆動させる回転角度の合計は90度である。一方で、比較例として示した駆動パルス列SP20では、一回転中で、コイルAとコイルBの両方を励磁させて駆動させる回転角度の合計は225度であり、コイルBのみを励磁させて駆動させる回転角度の合計は135度である。よって、駆動パルス列SP10の方が2つのコイルを励磁させて駆動させる回転角度が45度だけ多い。コイルAとコイルBの両方を励磁させて得られる駆動力は、コイルA又はコイルBのいずれか一方を励磁させて得られる駆動力の2倍であるため、駆動パルス列SP10は従来駆動パルス列SP20と比較して図8のT5区間だけ次のパルスが早く送ることができ、従来よりも約9%早く高速駆動させることができる。
【0079】
なお、仮に、従来駆動パルス列SP20において、駆動パルスSP23をT4区間で打ち切り、T5区間で駆動パルスSP23を出力せずに、次の駆動パルスSP21を出力させると、ロータ41の回転動作がパルスの切り替えに追従できず、脱調を発生させるリスクが極めて高くなる。一方、駆動パルス列SP10においては、T5区間を設けずとも脱調を発生させることがないので、安定性を担保しながら高速駆動させることを可能にしている。
【0080】
図10は、第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度を変更したときの駆動パルス列SP10と駆動パルス列SP20との間の時間差を示す図である。図10(a)はロータ41を回転させる角度が115度である場合を示し、図10(b)はロータ41を回転させる角度が135度である場合を示し、図10(c)はロータ41を回転させる角度が150度である場合を示す。
【0081】
図10(a)~(c)において、横軸は駆動パルス列SP10及び駆動パルス列SP20のT1区間の長さを基準単位とした駆動パルスの印加時間を示し、縦軸は回転角度を示す。図10(a)~(c)において、波形W11は駆動パルス列SP10によりロータ41を回転させたときの角度を示し、波形W12は駆動パルス列SP20によりロータ41を回転させたときの角度を示す。
【0082】
第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度が115度であるとき、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間は、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間よりも1%程度速くなる。第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度が113度以上であるとき、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間は、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間よりも速くなる。本発明では、第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度の最小値は、113度にマージンを付加して115度とされる。
【0083】
第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度が135度であるとき、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間は、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間よりも9%程度速くなる。
【0084】
第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度が150度であるとき、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間は、駆動パルス列SP10によりステップモータ40を360度回転する時間よりも15%程度速くなる。第1の駆動電圧によりロータ41を回転させるとき、2つのコイルに電流がながされるため、第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度を大きくするに従って、ステップモータ40を駆動するときに消費される消費電力が増加する。本発明では、ステップモータ40を駆動するときに消費される消費電力を抑制する観点から、第1の駆動電圧によりロータ41を回転させる角度の最大値は、150度とされる。
【0085】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係るステップモータ駆動装置50の概略構成図である。ステップモータ駆動装置50は、前述した電子時計10に適用可能であり、ロータ41の回転を検出する機構を設けることで、駆動安定性の向上と、消費電力の削減、及び更なる高速駆動化を実現させた例である。
【0086】
図11に示す様に、ステップモータ駆動装置50は、発振回路21と、制御回路52と、駆動パルス発生回路53と、検出パルス発生回路54、補正パルス発生回路55、パルス選択回路56、ドライバ回路60を含む。ステップモータ駆動装置50は例えば、マイクロコントローラを含む集積回路として実装されている。発振回路21及びステップモータ40は、図2に示したものと同じであるので、説明を省略する。
【0087】
制御回路52は、制御信号CN2、CN3、CN4を生成し、それぞれ駆動パルス発生回路53、検出パルス発生回路54、補正パルス発生回路55に入力する。駆動パルス発生回路53は、制御信号CN2に基づいてステップモータ40を駆動するための駆動パルス列SP30を生成し、パルス選択回路56に出力する。検出パルス発生回路54は、制御信号CN3に基づいて、ステップモータ40のロータ41が正常に回転したことを検出するための検出パルスCPを生成し、パルス選択回路56に出力する。補正パルス発生回路55は、制御信号CN4に基づいて、ステップモータ40の駆動を補助するための補正パルスFPを生成し、パルス選択回路56に出力する。なお、制御回路52は、メモリを含み、後述するパルス印加方向に対応した変数を記憶する。
【0088】
パルス選択回路56は、入力された駆動パルス列SP30、検出パルスCP、及び補正パルスFPを選択し、適切なタイミングでドライバ回路60へと出力する。ドライバ回路60は、パルス選択回路56から選択入力されたパルスに基づいて、駆動波形O1~O4を生成し、ステップモータ40に供給する。
【0089】
回転検出判定回路57は、ステップモータ40のコイルA、コイルBに検出パルスCPが供給されることにより検出される検出信号CSにより、ステップモータ40のロータ41の誘起電流を検出して回転の有無を判定し、判定結果CKを出力する。出力された判定結果CKは、パルス選択回路56に入力され、パルスの切り替え制御に使用される。
【0090】
図12は、ドライバ回路60の一例を示す回路図である。
【0091】
図12に示すドライバ回路60において、コイルA及びコイルBへ供給される駆動波形O1~O4を出力するための構成(PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1~4と、NチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1~4とがコンプリメンタリ接続されている4つのバッファ回路)については、図4に示すドライバ回路30と同じである。
【0092】
ドライバ回路60は、さらに、PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタTP1及びTP2と、PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタTP3及びTP4とを有する点が、ドライバ回路30と異なっている。トランジスタTP1及びTP2は、検出抵抗を介して、それぞれコイルAのコイル端子O1、O2に接続され、トランジスタTP3及びTP4は、検出抵抗を介して、それぞれコイルBのコイル端子O3、O4に接続されている。
【0093】
ステップモータの回転検出自体は周知の技術ではあるが、後述の説明をわかりやすくするために、検出パルスCP及び回転検出判定回路57によるステップモータ40の回転検出について以下に説明する。
【0094】
図3に示した様に、ステップモータ40のステータ42には狭窄部46及びスリット47が設けられている。ロータ41が回転している間、及び、ロータ41が慣性により自由回転している間では、電磁誘導によりステータに発生する磁気は、磁気抵抗の大きい狭窄部46及びスリット47を通過しにくくなるため、その大部分がコイルA又はコイルBを通過する経路をとる。よって、ロータ41の回転により誘起される誘起電流を、コイルA、Bを用いて検出することができる。
【0095】
図12に示すドライバ回路60において、所定のタイミングで検出パルスCPをトランジスタTP1~TP4のゲートに印加して、各トランジスタをONとすることで、コイル端子O1~O4に発生する誘起電流の大きさを、電圧信号である検出信号CSとして取り出すことができる。検出判定回路57は、検出信号CSに基づいて、ロータ41の回転及び非回転の判定を行い、判定結果CKを出力する。
【0096】
なお、コイルAまたはコイルBに流れる誘起電流を検出する際は、コイルに駆動電流を流すことはできない。すなわち、コイルAとコイルBの両方に駆動電流が流れる駆動パルスを出力している際は回転検出をすることができない。したがって、コイルA又はコイルBのいずれか一方に駆動電流が流れている際に、駆動電流が流れていない側のコイルを回転検出に用いる。
【0097】
図13は、ステップモータ40のロータ41の回転と非回転を説明するための図である。
【0098】
図13(a)は、ロータ41が非回転、すなわち、駆動波形がコイルに印加されたにもかかわらず、ロータ41が所望の角度まで回転せず、回転に失敗した場合を示している。すなわち、駆動波形がコイルに印加されることによって、ロータ41が反時計回りにいったん回転するが、駆動力が不足しているためロータ41が保持トルクにより時計回りに逆回転して静的安定点である0度に戻された状態である。この場合、最終的にロータ41はなんら回転しなかったこととなるので、これを非回転と称する。図13(a)において、駆動波形がコイルに印加されている期間におけるロータ41の回転は破線で示している。
【0099】
図13(b)は、ロータ41が回転、すなわち、駆動波形がコイルに印加されて、ロータ41が所望の角度まで回転し、回転に成功した場合を示している。すなわち、駆動波形がコイルに印加されることによって、ロータ41が反時計回りにある一定角度以上回転し、駆動波形の印加停止後も、さらに保持トルクにより反時計回りに回転し、回転目標位置である180度まで回転した状態である。この場合は、最終的にロータ41は目標回転位置まで回転したこととなるので、これを回転と称する。
【0100】
このように、ロータ41が回転の場合と非回転の場合とでは、駆動パルス出力後のロータ41の挙動が異なり、そのため、コイルA、コイルBに発生する誘起電流の波形も異なる。回転検出判定回路57は、この波形の違いを検出信号CSとして取り出し、ロータの回転/非回転を判定している。
【0101】
図14(a)は駆動波形O1~O4の一例を示し、図14(b)は駆動パルス列SP30及び検出パルスCPによる各トランジスタの動作を示す表である。
【0102】
図14(a)は、ドライバ回路60からコイル端子O1~コイル端子O4に出力される駆動波形O1~O4、及び、駆動波形O1~O4を生成するための駆動パルス列SP30を示している。図14(a)の駆動波形O1~O4及び駆動パルス列SP30は、図5(a)の駆動波形O1~O4及び駆動パルス列10と同じである。
【0103】
以下では、駆動パルス列SP30を、第1の固定駆動パルスSP31、第2の可変駆動パルスSP32、反転第1の固定駆動パルスSP33、及び、反転第2の可変駆動パルスSP34の4つに分けて取り扱う。後述するように、第2の可変駆動パルスSP32と反転第2の可変駆動パルスSP34の長さ(期間)は、条件によって変更される。これに対し、第1の固定駆動パルスSP31と反転第1の固定駆動パルスSP33の長さは、固定であり、あらかじめ定められている。
【0104】
図14(b)は、駆動波形O1~O4を生成するためのドライバ回路60の8つのトランジスタのON/OFF状態、及び、トランジスタTP1~TP4のON/OFF状態を示した表である。なお、駆動波形O1~O4を生成するためのドライバ回路60の8つのトランジスタP1~P4、及びN1~N4のON/OFF状態は、図5(b)と同様であるので、その説明を省略する。
【0105】
以下、図14(b)のトランジスタTP1~TP4のON/OFF状態を示した表を用いて、回転検出について説明する。
【0106】
第1の固定駆動パルスSP31が出力される期間では回転検出は行わない。したがって、検出パルスCPによりトランジスタTP1~TP4は全てOFF状態とされる。
【0107】
次に、第2の可変駆動パルスSP32が出力される期間では、コイルBのみが励磁されているので、コイルAを回転検出に用いる。したがって、検出パルスCPによりトランジスタTP1のみON状態とし、トランジスタTP2~TP4は全てOFF状態とされる。
【0108】
次に、反転第1の固定駆動パルスSP33が出力される期間では回転検出は行わない。したがって、検出パルスCPによりトランジスタTP1~TP4は全てOFF状態とされる。
【0109】
最後に、反転第2の可変駆動パルスSP34が出力される期間では、コイルBのみが励磁されているので、コイルAを回転検出に用いる。したがって、検出パルスCPによりトランジスタTP1のみON状態とし、トランジスタTP2~TP4は全てOFF状態とされる。
【0110】
図15は、駆動パルス発生回路53から出力されるパルス波形の一例を示す図である。
【0111】
図15(a)~図15(c)に示したパルス波形は、ロータ41が回転と判定された時に、ドライバ回路60に出力される駆動パルス列、すなわち、第1の固定駆動パルスSP31と第2の可変駆動パルスSP32、または、反転第1の固定駆動パルスSP33と反転第2の可変駆動パルスSP34の例を示している。(以下、「第1の固定駆動パルスSP31または反転第1の固定駆動パルスSP33」を「第1の固定駆動パルスSP31/SP33」と略し、「第2の可変駆動パルスSP32または反転第2の可変駆動パルスSP34」を「第2の可変駆動パルスSP32/SP34」と略す。)図15(a)~図15(c)に示したものの他、どのような駆動パルス波形が選択されるかは、回転検出の結果に依存して変化する。図15(d)は、ロータ41が非回転と判定されたときに、ドライバ回路60に出力される補正パルスFPを示している。また、図15(e)は、回転検出を行うための検出パルスCPを、ドライバ回路60に出力するタイミングを示している。
【0112】
本実施形態では、第1の固定駆動パルスSP31/SP33は、5msの間出力されるようになっている。また、第2の可変駆動パルスSP32/SP34は、第1の固定駆動パルスSP31/SP33の出力後に出力され、長さを1ms刻みで1ms~5msの5つより選択可能になっている。可変駆動パルスSP32/SP34は、回転検出の結果に基づき、どの長さが選択されるかが決定される。より詳しくはこの後説明するが、基本的な考え方は、回転と判断されるまで可変駆動パルスSP32/SP34を出力し続けるというものである。
【0113】
最長の長さ(5ms)の可変駆動パルスSP32/SP34を出力しても回転との判断が得られない場合、図15(d)に示す補正パルスFPを出力し、ロータ41の回転を補助する。なお、補正パルスFPは、ロータ41が非回転と判断された場合に、ロータ41の脱調を防ぐために出力されるものであり、より強い駆動力を持つようにその波形が設定される。ここでは、5msのパルスとなっている。
【0114】
検出パルスCPは、可変駆動パルスSP32/SP34の出力開始後、0.25ms経過後から4.75ms経過するまで0.5ms毎に出力される、16μs幅のパルスとしている。
【0115】
以上の説明での第1の固定駆動パルスSP31/SP33、第2の可変駆動パルスSP32/SP34、補正パルスFPの長さや形状、検出パルスCPの出力タイミングなどは一例であり、ステップモータ40の形状や大きさ、駆動させる対象物の負荷など種々の構成に応じて変更されてよい。
【0116】
図16は、補正パルスFPを説明するための図である。図16(a)は、駆動パルス列SP30において第2の可変駆動パルスSP32の後に補正パルスFPが出力される場合に、ステップモータ40に印加される駆動波形О1~О4の一例を示している。
【0117】
図16(a)において、補正パルスFPの前後に出力される駆動パルス列SP30によって生成される駆動波形О1~О4については、図14において説明したものと同様であるので、その説明を省略する。補正パルスFPによる駆動波形O1、O4は電圧が―V(v)であり、駆動波形O3、O2は電圧が0(v)である。これにより、ステップモータ40のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて両方のコイルA、コイルBが励磁される。
【0118】
図16(b)は、補正パルスFPによるドライバ回路60の8つのトランジスタP1~P4及びN1~N4のON/OFF状態を示した表である。ドライバ回路60において、トランジスタN1とトランジスタP2がON、トランジスタP1とトランジスタN2がOFFし、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが励磁される。同様に、トランジスタP3とトランジスタN4がON、トランジスタN3とトランジスタP4がOFFし、駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0119】
図17(a)~(f)は、図16に示す補正パルスFPによるステップモータ40の動作を説明するための図である。
【0120】
図17(a)は、ステップモータ40の最初の状態を示しており、ロータ41のN極の開始位置は、図3に示す0度の位置から反時計周りに135度の位置にあるものとする。なお、各パルスでの駆動による移動量は一例を示しており、通常はステータ22の設計により任意に調節が可能である。
【0121】
図17(b)は、第1の固定駆動パルスSP31による駆動波形О1~О4に示した電圧がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第1磁極部22aがN極に磁化され、第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のN極と、第2磁極部22bのS極が引き合い、またロータ41のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ41は反時計周りに回転し、定常回転の開始位置(図3に示す0度の位置から反時計周りに135度の位置)から270度の位置まで、約135度回転する。
【0122】
次に、図17(c)は、第2の可変駆動パルスSP32による駆動波形О1~О4に示した電圧がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、コイルAは励磁されないので第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じN極となる。通常はロータ41のS極と、第1の磁極部22a及び第3の磁極部22cのN極が引き合い、ロータ41のN極は停止することなく更に反時計周りに270度の位置から、315度の位置まで約45度回転駆動しようとする。しかしながら、駆動させる対象物の負荷の大きさや、電源電圧や、外乱などの影響によって、315度の位置まで達することができなかった場合、図17(c)で示すように所望の位置までロータ41が回転せず、回転検出判定回路57により非回転と判定される。
【0123】
次に、図17(d)は、ロータ41の非回転判定を受けて補助パルスFPによる駆動波形О1~О4に示した電圧がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、コイルAには駆動電流(図示せず)がコイル端子O2からO1に流れ、矢印の方向に励磁される。同様に、コイルBには駆動電流(図示せず)がコイルO3からO4に流れ、矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cがN極に磁化される。その結果、ロータ41のS極と、第3磁極部22cのN極が引き合い、ロータ41のN極を強制的に0度の位置まで回転させる。
【0124】
次に、図17(e)は、反転第1の固定駆動パルスSP33による駆動波形О1~О4に示した電圧がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第1磁極部22aがS極に磁化され、第2磁極部22bがN極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のN極と、第1磁極部22aのS極が引き合い、またロータ41のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ41のN極は反時計周りに回転し、0度の位置から90度の位置まで約90度回転する。
【0125】
次に、図17(f)は、反転第2の可変駆動パルスSP34による駆動波形О1~О4に示した電圧がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、コイルAは励磁されないので第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ41のN極と、第1の磁極部22a及び第3の磁極部22cのS極が引き合い、ロータ41のN極は停止することなく更に反時計周りに回転し、90度の位置から定常回転の開始位置である135度の位置まで約45度回転する。
【0126】
以上のように、回転検出の結果が非回転と判定された際は、回転を補助する補助パルスFPが出力され、ステップモータ40のロータ41の回転を補助し、脱調を防止する。なお、図示はしないが、反転第2の駆動パルスSP34の出力後に補助パルスFPを出力する場合は、図16(a)に示した補助パルスFPに対応した駆動波形において駆動波形O1とO2を入れ替え、且つ、駆動波形O3とO4を入れ替えたものをステップモータ40へ出力する。
【0127】
図18は、第2の実施形態に係るステップモータ駆動装置50の動作フロー図である。以下、このフロー図に従って、図11に示すステップモータ駆動装置50の動作を説明する。
【0128】
最初に、ステップモータ駆動装置50は、駆動パルス発生回路53より発生される第1の固定駆動パルスSP31/SP33をパルス選択回56により選択し、ドライバ回路60に出力する(ST1)。第1の固定駆動パルスSP31と反転第2の固定パルスSP33のどちらが出力されるかは、制御回路52が有するステアリング記憶手段(不図示)に記憶されたパルス印加方向を示す変数に基づき決定される。
【0129】
次に、ステップモータ駆動装置50は、駆動パルス発生回路53より発生される第2の可変駆動パルスSP32/SP34をパルス選択回56により選択し、ドライバ回路60に出力する(ST2)。第1の可変駆動パルスSP32と反転第2の可変駆動パルスSP34のどちらが出力されるかは、制御回路52が有するステアリング記憶手段(不図示)に記憶されたパルス印加方向を示す変数に基づき決定される。
【0130】
次に、ステップモータ駆動装置50は、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力後から0.25ms経過後より5ms毎に、検出パルス発生回路54から出力される検出パルスCPをパルス選択回路56により選択してドライバ回路60に出力し、回転検出を開始する(ST3)。この結果得られる検出信号CSに基づいて、回転検出判定回路57は、判定結果CKを出力する。
【0131】
図19は、回転検出判定回路57による回転/非回転の判定について説明するための図である。図19(c)は、コイル端子O1~O4に印加される駆動波形О1~О4の一例を示す図であり、図19(a)はコイルAに発生する誘起電流の波形を示す図であり、図19(b)はコイルBに発生する誘起電流の波形を示す図である。
【0132】
時刻0msより、反転第2の可変駆動パルスSP34に対応した駆動波形О1~О4により、コイルBのコイル端子O3とO4間に電流が流れコイルBが励磁される。これにより、ロータ41が回転を始め、コイルA及びBには、正の向きの誘導電流が発生する。検出パルスCPに対応した電圧は、反転第2の可変駆動パルスSP34が印加されたコイルとは異なるコイルである、コイルAに印加される。具体的には、コイル端子O1に開始後0.25ms後から0.5ms毎に印加され、これにより各検出パルスCPに応じた検出信号CSが得られる。
【0133】
図19(a)に示すコイルAに生じる誘導電流の波形より明らかなように、ロータ41の回転当初は、コイルAに生じる誘導電流は正の符号をもつあまり大きくない値となる。条件にもよるが、ここで示した例では、回転開始からおおよそ2.5ms経過した時点で誘導電流の符号が反転し(負の符号となり)、ある一定以上の値を示す波形の山が生じる。なお、ロータ41が非回転の場合には、誘導電流が負の符号を持つことはない。この負の値を持つ波形の山は、ロータ41がポテンシャルの山を乗り越え、目標となる静的安定点に向かって回転していることを示している。図19(a)においてハッチングで示した負の符号を持つ波形の山を検出することにより、回転の検出ができる。
【0134】
コイル端子O1から検出される検出信号CSは、負の所定の閾値thと比較される。図19(c)に示すように、この例では回転開始から2.75ms経過後の検出パルスCP2.75までは、閾値thを下回ることがなく、回転開始から3.25ms経過後の検出パルスCP3.25で、始めて閾値thを下回っている。
【0135】
回転検出判定回路57では、連続して2回、閾値thを下回っている検出信号CSが得られることにより、回転と判断している。したがって、回転開始から3.75ms経過後の検出パルスCP3.75による検出信号CSが検出された時点で、回転検出判定回路57は回転と判定し、判定結果CKを出力する。また、回転開始から4.75ms経過しても連続する2回の検出信号CSが得られなかった場合は、非回転と判定し、判定結果CKを出力する。
【0136】
連続して2回、閾値thを下回っている検出信号CSが得られるタイミングは、駆動対象の負荷の大きさや、電源電圧など種々の条件により異なる。また、判定の条件は2回の連続する信号には限定されず、1回でも良いし、連続して3回以上でも良いし、所定期間内で得られた信号の数を加算して所定回数以上とするなどとしても良い。
【0137】
図18に戻り、回転検出開始後、回転判定が得られたタイミングを監視する。まず、回転開始より0.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得られたかを判定する(ST41)。検出信号CSが2回得られた場合(ST41:Y)、回転検出を終了し(ST51)検出パルスCPの出力を停止し、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の幅を1msに設定する(ST61)。これにより、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力は1msで終了する。
【0138】
回転開始より0.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得らなかった場合(ST41:N)、次は1.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得られたかを判定する(ST42)。得られた場合(ST42:Y)、回転検出を終了し(ST52)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の幅を2msに設定し(ST62)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力を2msで終了する。
【0139】
回転開始より1.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得らなかった場合(ST42:N)、次は2.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得られたかを判定する(ST43)。得られた場合(ST43:Y)、回転検出を終了し(ST53)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の幅を3msに設定し(ST63)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力を3msで終了する。
【0140】
回転開始より2.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得らなかった場合(ST43:N)、次は3.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得られたかを判定する(ST44)。得られた場合(ST44:Y)、回転検出を終了し(ST54)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の幅を4msに設定し(ST64)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力を4msで終了する。
【0141】
回転開始より3.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得らなかった場合(ST44:N)、次は4.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得られたかを判定する(ST45)。得られた場合(ST45:Y)、回転検出を終了し(ST55)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の幅を5msに設定し(ST65)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力を5msで終了する。
【0142】
回転開始より4.75ms経過までに検出信号CSが連続して2回得らなかった場合(ST45:N)は、非回転と判定されたことになるため、回転検出を終了し(ST56)、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力を5msで終了した後に(ST66)、補正パルス発生回路55より出力される補正パルスFPをパルス選択回路47により選択し、補正パルスFPに応じた駆動波形をドライバ回路60に出力する(ST7)。
【0143】
次に、第2の可変パルスSP32/SP34、又は、補助パルスFPの出力後、ステップモータ駆動装置50より停止信号が出ていれば、動作を終了する(ST8:Y)。停止信号が出ていない場合はST1に戻り、制御回路52が記憶するパルス印加方向を記憶する変数を反転させてから駆動を継続する(ST8:N)。
【0144】
このように、第2の実施形態によれば、180度の駆動ごとに、ロータ41の回転/非回転の検出ができ、非回転の場合に補正パルスFPを出力することで、ロータ41を確実に回転させることができる。また、出力される駆動パルス列の長さは、ロータ41の回転に必要な分のみで済むため、消費電力が削減されるとともに、無駄な通電時間が排除されて高速駆動が可能である。
【0145】
電子時計10における輪列の機械的な切り替えによって、ステップモータ40の駆動対象が指針の場合と、回転錘の場合と切り替わるが、それぞれの慣性量に応じた適切なパルス幅を選択出力させることができる。また、指針や回転錘が慣性量の大きいもの、又は小さいものに変更された場合でも同様に、変更後の慣性量に応じた適切なパルス幅を選択させることができる。すなわち、ステップモータ40の駆動対象の慣性量によらず、共通のモータ駆動装置を使って常に適切なパルス幅を選択して出力することができる。
【0146】
[第2の実施形態の変形例]
図20は、第2の実施形態における変形例を説明するための図である。
【0147】
第2の実施形態では、第1の固定駆動パルスSP31/SP33のパルス幅は5msに固定されていたが、第2の可変駆動パルスSP32/SP34の出力期間に行う回転検出の結果に応じて可変するようにしても良い。図20(a)は5msのパルス幅の場合を示しており、図20(b)は4msのパルス幅の場合を示しており、図20(c)は3msのパルス幅の場合を示している。
【0148】
ステップモータ40の定常駆動が始まった直後は、ロータ41の回転速度が十分に上がっておらず、回転検出に時間がかかるか、又は、回転が検出できないため、図18のフローチャートにおけるST64、ST65、ST66のような4ms以上の第2の可変駆動パルスSP32/34を出力する。このような場合、第1の固定駆動パルスSP31/33も図20(1)のような5msの長いパルス幅とする。
【0149】
ステップモータ40は徐々にロータ41の回転速度を上げていき、回転検出の結果、図18のフローチャートにおけるST62、ST63のような2ms以上の第2の可変駆動パルスSP32/34が出力されるようになる。このような場合、第1の固定駆動パルスSP31/SP33も、図20(2)のような4msのパルス幅とする。
【0150】
最後に、ステップモータ40のロータ41の回転速度が最大値まで達したとき、図18のフローチャートにおけるST61のような1msの第2の可変駆動パルスSP32/SP34が出力される状態になる。このような場合、第1の固定駆動パルスSP31/33も(3)のような3msの短いパルス幅とする。
【0151】
以上のように、第1の固定駆動パルスSP31/SP33のパルス幅を可変することによって、動作開始直後のロータ41の回転速度が小さいときは、より確実に駆動させることができ、ロータ41の回転速度が上がるにしたがって、更に回転速度を上げることが可能である。なお、用意する第1の固定駆動パルスSP31/SP33のパルス幅は3種類に限定されず、3種類より少なくともよく、また3種類より多くてもよい。また、第1の固定駆動パルスSP31/SP33のパルス幅を選択するための条件は任意である。
【0152】
[第3の実施形態]
図21は、本発明の第3の実施形態に係るステップモータ駆動装置70の概略構成図である。ステップモータ駆動装置70は、前述した電子時計10に適用可能であり、ロータ41の動き出しを補助するパルスを出力可能な機構と、ロータ41の動作停止を補助するパルスを出力可能な機構を設けることで、駆動信頼性を向上させた例である。
【0153】
図21に示す様に、ステップモータ駆動装置70は、発振回路21と、制御回路52と、駆動パルス発生回路53と、検出パルス発生回路54、補正パルス発生回路55、パルス選択回路56、回転検出判定回路57、ドライバ回路60に加え、初動パルス発生回路58、終端パルス発生回路59を含む。ステップモータ駆動装置70は例えば、マイクロコントローラを含む集積回路として実装されている。発振回路21及びステップモータ40は、図2に示したものと同じであるので、説明を省略する。
【0154】
制御回路52は、制御信号CN2、CN3、CN4、CN5、CN6を生成し、それぞれ駆動パルス発生回路53、検出パルス発生回路54、補正パルス発生回路55、初動パルス発生回路58、終端パルス発生回路59に入力する。駆動パルス発生回路53は、制御信号CN2に基づいてステップモータ40を駆動するための駆動パルス列SP30を生成し、パルス選択回路56に出力する。検出パルス発生回路54は、制御信号CN3に基づいてステップモータ40のロータ41が正常に回転したことを検出するための検出パルスCPを生成し、パルス選択回路56に出力する。補正パルス発生回路55は、制御信号CN4に基づいてステップモータ40の駆動を補助するための補正パルスFPを生成し、パルス選択回路56に出力する。初動パルス発生回路58は、制御信号CN5に基づいてステップモータ40のロータ41を定常回転の開始位置に位相を合わせ、動き出しを補助するための初動パルスIPを生成し、パルス選択回路56に出力する。終端パルス発生回路59は、制御信号CN6に基づいてステップモータ40のロータ41を静的安定点である0度位置、又は180度の位置に停止させるための終端パルスEPを生成し、パルス選択回路56に出力する。なお、制御回路52は、メモリを含み、後述するパルス印加方向に対応した変数を記憶する。
【0155】
パルス選択回路56は、入力された駆動パルス列SP30、検出パルスCP、補正パルスFP、初動パルスIP、及び、終端パルスEPを選択し、適切なタイミングでドライバ回路60へと出力する。ドライバ回路60は、パルス選択回路56から選択入力されたパルスに基づいて、駆動波形О1~О4を生成し、ステップモータ40に供給する。
【0156】
回転検出判定回路57は、ステップモータ40のコイルA、コイルBに検出パルスCPが供給されることにより検出される検出信号CSにより、ステップモータ40のロータ41の誘起電流を検出して回転の有無を判定し、判定結果CKを出力する。出力された判定結果CKは、パルス選択回路56に入力され、パルスの切り替え制御に使用される。
【0157】
図22は、初動パルス列IP10を説明するための図である。図22(a)は初動パルス列IP10に対応した駆動波形О1~О4の一例を示している。
【0158】
初動パルスIP10は、ステップモータ40を定常駆動させるために、ロータ41のN極を静的安定点である0度の位置から定常回転の開始位置である135度の位置まで移動させるためのものである。図22(a)に示す様に、初動パルス列IP10は第1の初動パルスIP11と、第2の初動パルスIP12と、第3の初動パルスIP13の3個の駆動パルスから構成される。
【0159】
第1の初動パルスIP11は、駆動波形O1の電圧が-V(v)であり、駆動波形O2、O3、O4の電圧が0(v)である。これにより、駆動波形O1とO2に接続されるステップモータ40のコイルAに駆動電流が流れて励磁される。
【0160】
第2の駆動パルスIP12は、駆動波形O1、O3の電圧が-V(v)であり、駆動波形O2、O4の電圧が0(v)である。これにより、ステップモータ40のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが励磁される。
【0161】
第3の初動パルスIP13は、駆動波形O3の電圧が-V(v)であり、駆動波形O1.O2、O4の電圧が0(v)である。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ40のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0162】
なお、初動パルス列IP10の合計のパルス幅は任意である。また、駆動波形O1~O4は連続するフルパルスとして図示しているが、複数の細かいパルス群によるチョッパ形の駆動パルスでもよい。
【0163】
図22(b)は、初動パルス列IPによるドライバ回路60の8個のトランジスタP1~P4及びN1~N4のON/OFF状態と、検出パルスCPによるドライバ回路60の4個のトランジスタTP1~4及びのON/OFF状態を示した表である。
【0164】
第1の初動パルスIP11による駆動波形O1の電圧が-V(v)、駆動波形O2の電圧が0(v)となるので、トランジスタN1とトランジスタP2がON、トランジスタP1とトランジスタN2がOFFし、駆動電流がコイルAのコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが励磁される。駆動波形O3、O4の電圧は共に0(v)となるので、トランジスタP3、P4がON、トランジスタN3、N4がOFFし、コイルBには駆動電流が流れず、コイルBは励磁されない。
【0165】
次に、第2の初動パルスIP12による駆動波形O2の電圧が0(v)、駆動波形O1の電圧が-V(v)となるので、トランジスタN1とトランジスタP2がON、トランジスタP1とトランジスタN2がOFFし、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが励磁される。駆動波形O4の電圧が0(v)、駆動波形O3の電圧が-V(v)となるので、トランジスタN3とトランジスタP4がON、トランジスタP3とトランジスタN4がOFFし、駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0166】
次に初動パルスIP13による駆動波形O3の電圧が-V(v)、駆動波形O4の電圧0(v)となるので、トランジスタN3とトランジスタP4がON、トランジスタP3とトランジスタN4がOFFし、駆動電流がコイルBのコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。駆動波形O1、O2の電圧は共に0(v)となるので、トランジスタP1及びP2がON、トランジスタN1及びN2がOFFし、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。
【0167】
このように、初動パルス列IP10の3個の駆動パルスIP11~IP13によって、ドライバ回路60の各トランジスタがON/OFF制御され、ステップモータ40のコイルA、コイルBを励磁する。なお、初動パルス列IP10が出力される際には、回転検出を行わないので、TP1~TP4は全てOFFである。
【0168】
図23(a)~(d)は、図22に示す初動パルス列IP10によるステップモータ40の動作を説明するための図である。
【0169】
図23(a)は、ステップモータ40の最初の状態を示し、ロータ41のN極が静的安定点の0度にある。なお、各パルスでの駆動による移動量は一例を示しており、通常はステータ42の設計により任意に調節が可能である。
【0170】
次に、図23(b)は、第1の初動パルスIP11に対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態であり、駆動電流(図示せず)がコイル端O2からO1に流れ、コイルAは矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部22aがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、コイルBは励磁されないので、第2磁極部22bは第3磁極部22cと同じN極になる。その結果、ロータ41のS極と、第2の磁極部22b及び第3の磁極部22cのN極が引き合い、ロータ41のN極は反時計周りに回転し、45度の位置まで約45度回転する。
【0171】
次に、図23(c)は、第2の駆動パルスIP12に対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態であり、駆動電流(図示せず)がコイル端子O2からO1に流れ、コイルAは矢印の方向に励磁される。また、駆動電流(図示せず)がコイルO4からO3に流れ、コイルBは矢印の方向に励磁される。これにより、第1磁極部22aがS極に磁化され、第2磁極部22bがN極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消しあって磁化されない。その結果、ロータ41のN極と、第1磁極部22aのS極が引き合い、またロータ41のS極と第2磁極部22aのN極が引き合い、ロータ41のN極は反時計周りに回転し、45度の位置から90度の位置まで約45度回転する。
【0172】
次に、図23(d)は、第3の初動パルスIP13に対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態であり、駆動電流(図示せず)がコイル端子O4からO3に流れ、コイルBは矢印の方向に励磁される。これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、またコイルAは励磁されないので第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ41のN極と、第1の磁極部22a及び第3の磁極部22cのS極が引き合い、ロータのN極は反時計周りに回転し、90度の位置から定常回転の開始位置である135度の位置まで約45度回転する。
【0173】
以上のように、ステップモータ40に3個の初動パルスIP11~IP13から構成される初動パルス列IP10対応した駆動波形О1~О4を供給することで、定常回転の開始位置である、135度位置まで回転駆動する。初動パルス列に含まれる3個の初動パルスのそれぞれで約45度ずつ回転させることで、停止状態のロータ41を定常回転の開始位置135度まで確実に回転でき、定常回転が開始できる確率を向上させている。
【0174】
なお、初動パルス列IPの出力後に定常回転の開始位置135度位置にロータ41のN極が位置していれば、初動パルス列IPのパルス波形は任意である。例えば、初動パルス列IP10が第3の初動パルスIP13の1個だけの構成または、第1の初動パルスIP11もしくは第2の初動パルスIP12のいずれか1つと、第3の初動パルスIP13の2個で構成されていてもよく、駆動させる対象物の負荷などに応じて任意で選択可能である。
【0175】
図24は、終端パルス列EPを説明するための図である。終端パルス列EPは、ステップモータ40のロータ41を静的安定点である0度または180度の位置に維持させるための駆動波形を生成する。
【0176】
図24(a)は駆動パルス列SP30及び終端パルス列EPに対応した駆動波形О1~О4の一例を示している。駆動パルス列SP30に含まれる第1の固定駆動パルスSP31及び第2の可変駆動パルスSP32は、図14を参照して説明したものと同じであるので、説明を省略する。また、終端パルスEPは第2の実施形態における図16(a)を参照して説明した補助パルスFPと同様に、強制的にロータ41のN極を0度の位置もしくは180度の静的安定点に駆動させる役割があるため、補助パルスFPと同じパルスを用いる。本実施形態では、終端パルスEPを補助パルスFPと分けて取り扱う。ただし、駆動波形自体は補助パルスFPで示したものと同じなので、説明を省略する。なお、図24(a)に示した終端パルスEPのパルス幅は任意である。駆動波形O1~O4は、連続するフルパルスとして図示しているが、複数の細かいパルス群によるチョッパ形の駆動パルスでもよく、駆動させる対象物の負荷などに応じて任意に選択可能である。
【0177】
図24(b)は、終端パルス列EPによるドライバ回路60の8つのトランジスタP1~P4及びN1~N4のON/OFF状態を示した表である。図24(b)は、図16(b)に示した補助パルスFPによるトランジスタP1~P4及びN1~N4のON/OFF状態と同じであるので、説明を省略する。
【0178】
図25(a)~(d)は、図24に示す終端パルスEPによるステップモータ40の動作を説明するための図である。
【0179】
図25(a)は、第1の固定駆動パルスSP31に対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、ロータ41のN極と、第2磁極部22bのS極が引き合い、またロータ41のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ41のN極は反時計周りに回転し、定常回転の開始位置135度から270度の位置まで約135度回転する。
【0180】
次に、図25(b)は、第2の可変駆動パルスSP32に対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第1磁極部22aと第3磁極部22cがN極に磁化され、第2磁極部22bはS極に磁化される。その結果、ロータ41のN極と第2磁極部22bのS極が引き合い、また、ロータ41のS極は、第1磁極部22aと第3磁極部22cの両方のN極と引き合うので、ロータ41のN極は更に反時計回りに回転し、270度の位置から315度の位置まで45度回転する。
【0181】
次に、図25(c)は、駆動停止命令を受けて終端パルスEPに対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cがN極に磁化される。その結果、ロータ41のS極と、第3磁極部22cのN極が引き合い、ロータ41のN極を0度の位置まで回転させる。
【0182】
次に、図25(d)は、終端パルスEP出力後にステップモータへの電圧の供給が打ち切られた状態を示している。この場合、コイルA、コイルB共に励磁されていないため、保持トルクのみが働き、ロータ41のN極は静的安定点である0度の位置で停止を続ける。
【0183】
なお、図16に示す反転第2の可変駆動パルスSP34の出力後に終端パルスEPを出力する場合は、図24(a)に示した終端パルスEPのコイル端子O1とO2、及び、O3とO4を入れ替えた駆動波形を出力すればよい。
【0184】
以下、第3の実施形態における動作フローを第2の実施形態で示した図18を参照しながら説明する。
【0185】
動作を開始すると、初動パルス発生回路58より出力される初動パルス列IPをパルス選択回路56より選択し、ドライバ回路60に出力する。この時点で、初動パルス列IPの出力により、ロータ41のN極が定常回転の開始位置である135度に位置しているため、定常駆動可能になっている。
【0186】
次に、図18で示したST1~ST8に基づいて、駆動パルス列SP30を停止信号が出るまで出力し、定常駆動させる。
【0187】
次に、停止信号が出た場合(ST8:Y)、終端パルス発生回路59より出力される終端パルスEPをパルス選択回路56より選択し、ドライバ回路60に出力する。これにより、ロータ41のN極は静的安定点である0度、又は180度に停止させることができ。終端パルスEPの出力を停止しても、保持トルクにより0度、又は180度の位置に停止し続ける。
【0188】
以上のように、第3の実施形態のステップモータ駆動装置70によれば、停止状態からの動き出しと、定常駆動の静止時にステップモータ40のロータ41の脱調を防止することができ、高速駆動かつ、駆動信頼性の高い動作が可能である。
【0189】
[第3の実施形態の変形例1]
図26は、終端パルスEPを終端パルスEPは第1の固定駆動パルスSP31または反転第1の固定駆動パルスSP33の出力後に出力した場合について説明するための図である。
【0190】
図26(a)は、第1固定駆動パルスSP31の後に終端パルスEPを出力する場合の駆動波形О1~О4の一例を示している。図26(a)は、図24(a)から、第2の可変駆動パルスSP32に対応した駆動波形О1~О4を除いた波形になっているので、説明を省略する。
【0191】
図26(b)~(d)は、図26(a)に示す終端パルスEPによるステップモータ40の動作を説明するための図である。
【0192】
図26(b)は、第1の固定駆動パルスSP31に対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、ロータ41のN極と、第2磁極部22bのS極が引き合い、またロータ41のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ41のN極は反時計周りに回転し、定常回転の開始位置135度から270度の位置まで約135度回転する。
【0193】
次に、図26(c)は、駆動停止命令を受けて終端パルスEPに対応した駆動波形О1~О4がステップモータ40に供給された状態を示している。この場合、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cがN極に磁化される。その結果、ロータ41のS極と、第3磁極部22cのN極が引き合い、ロータ41のN極を0度の位置まで回転させる。
【0194】
次に、図26(d)は、終端パルスEP出力後にステップモータへ電圧の供給を打ち切られた状態を示している。この場合、コイルA、コイルB共に励磁されていないため、保持トルクのみが働き、ロータ41のN極は静的安定点である0度の位置で停止を続ける
【0195】
なお、図16に示す反転第1の固定駆動パルスSP33の出力後に終端パルスを出力させることも可能であり、その場合は、図26(a)に示した終端パルスEPのコイル端子O1とO2、及び、O3とO4を入れ替えた駆動波形を出力すればよい。
【0196】
第3の実施形態の変形例1においては、ステップモータ40が高速駆動していてロータ41に大きな慣性が働いていても、第1の固定駆動パルスSP11または反転第1の固定駆動パルスの出力後に終端パルスEPを出力することによって、ロータ41のN極が90度、または270度の位置から終端パルスEPによる制動を働かせることできるため、0度、または180度の位置での停止を容易にすることが可能である。
【0197】
[第3の実施形態の変形例2]
図27は、第3の実施形態の変形例2における初動パルス列IP20について説明するための図である。図27(a)は初動パルス列IP20に対応した駆動波形О1~О4の一例を示している。第3の実施形態の変形例2では、初動パルス列IP20の出力中に回転検出を行い、回転検出結果に応じて補正パルスを出力することができる。
【0198】
図27(a)に示した初動パルス列IP20に対応した駆動波形О1~О4は、図22に示した初動パルス列IP10に対応した駆動波形О1~О4と同じである。ここでは、初動パルス列IP20を、第1の初動パルスIP21と、第2の初動パルスIP22と、第3の初動パルスIP23との3つのパルスに分けて取り扱う。第1の初動パルスIP21と、第2の初動パルスIP22長さは固定であり、あらかじめ定められている。これに対し、第3の初動パルスIP23の長さは可変であり、どの長さが選択されるかは回転検出の結果に基づいて選択される。回転と判定されるまで、パルスを出力し続けるというものである。一例として第2の実施形態における第2の可変駆動パルスSP32/SP34と同様に、長さを1ms刻みで1ms~5msの5つより選択可能とする。
【0199】
図27(b)は、初動パルス列IP20によるドライバ回路60の12個のトランジスタP1~P4、N1~N4、及び、TP1~4のON/OFF状態を示した表である。
【0200】
初動パルス列IP20を構成する初動パルスIP21~23を出力するためのドライバ回路60のトランジスタP1~P4、及びN1~N4の動作は、図22(b)を参照して説明したものと同様であるから、説明を省略する。
【0201】
検出パルスCPが出力されるドライバ回路60のトランジスタTP1~TP4の動作を説明する。第1の初動パルスIP21及び、第2の初動パルスIP22においては回転検出を行わないので、トランジスタTP1~TP4はOFFとなる。次に第3の初動パルスIP23においては、コイルBのみが励磁されておりコイルAを回転検出に用いるため、トランジスタTP1のみON、トランジスタTP2、TP3、TP4はOFFとなる。
【0202】
図28は、第3の実施形態における変形例2における動作フローを示す図である。以下、図28を用いて、第3の実施形態における変形例2における動作フローについて説明する。
【0203】
動作を開始すると、初動パルス発生回路58より出力される第1の初動パルスIP21及び第2の初動パルスIP22をパルス選択回路48より選択し、ドライバ回路60に出力する(ST9)。
【0204】
次に、初動パルス発生回路58より出力される第3の初動パルスIP23をパルス選択回路56より選択し、ドライバ回路60に出力する(ST10)。
【0205】
次に、第3の初動パルスIP23の出力後から0.25ms経過後より5ms毎に、検出パルス発生回路54から出力される検出パルスCPがパルス選択回路56により選択し、ドライバ回路60に出力され、回転検出を開始する(ST11)。回転検出については、第2の実施形態において説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0206】
回転検出開始後、回転判定が得られたタイミングを監視する。まず、回転開始より0.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST121)。検出信号CSが2回得られた場合(ST121:Y)、回転検出を終了して検出パルスCPの出力を停止し(ST131)、初動パルスIP23の幅を1msに設定する(ST141)。これにより、第3の初動パルスIP23の出力は1msとして、一連の動作を終了する。
【0207】
回転開始より0.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST121:N)、次に、回転開始より1.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST122)。検出信号CSが2回得られた場合(ST122:Y)、回転検出を終了し(ST132)検出パルスCPの出力を停止し、初動パルスSP23の幅を2msに設定する(ST142)。これにより、第3の初動パルスIP23の出力は2msとして、一連の動作を終了する。
【0208】
回転開始より1.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST122:N)、次に、回転開始より2.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST123)。検出信号CSが2回得られた場合(ST123:Y)、回転検出を終了し(ST133)検出パルスCPの出力を停止し、初動パルスSP23の幅を3msに設定する(ST143)。これにより、第3の初動パルスIP23の出力は3msとして、一連の動作を終了する。
【0209】
回転開始より2.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST123:N)、次に、回転開始より3.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST124)。検出信号CSが2回得られた場合(ST124:Y)、回転検出を終了し(ST134)検出パルスCPの出力を停止し、第3の初動パルスIP23の幅を4msに設定する(ST144)。これにより、第3の初動パルスIP23の出力は4msとして、一連の動作を終了する。
【0210】
回転開始より3.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST124:N)、次に、回転開始より4.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST125)。検出信号CSが2回得られた場合(ST125:Y)、回転検出を終了し(ST135)検出パルスCPの出力を停止し、初動パルスIP23の幅を5msに設定する(ST145)。これにより、第3の初動パルスIP23の出力は5msとして、一連の動作を終了する。
【0211】
回転開始より4.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST125:N)は、非回転と判定されたことになるため、回転検出を終了し(ST136)、第1の初動パルスIP23の出力を5msに設定して(ST146)、補正パルス発生回路55より出力される補正パルスFPをパルス選択回路47により選択し、ドライバ回路60に出力する(ST15)。なお、補正パルスFPの出力に関しては、第2の実施形態において、図16を用いて示した通りで、ロータ41のN極を0度または180度の位置に強制的に駆動させるパルスである。
【0212】
図28で示した動作フローが終了した時点で、ロータ41のN極は定常駆動の開始位置又は補正パルス出力後の静的安定点にあるため、モータを定常駆動させることが可能となる。以降はモータを定常駆動させるための動作を開始すればよく、例えば、第2の実施形態における図18で示したフローに従って動作させることが望ましい。
【0213】
電子時計10における輪列の機械的な切り替えによって、ステップモータ40の駆動対象が、指針の場合と回転錘の場合とで切り替わるが、それぞれの慣性量に応じた適切な条件で動き出すことができる。また、指針や回転錘が慣性量の大きいもの、又は、小さいものに変更された場合でも同様に、変更後の慣性量に応じた適切な条件で動き出すことができる。すなわち、ステップモータ40の駆動対象の慣性量によらず、共通のモータ駆動装置を使って常に適切な条件電で動き出すことができる。また、以降の動作においても継続して最適な駆動条件で駆動させることができる。
【0214】
以上のように、第3の実施形態の変形例2によれば、停止状態からの動き出しを補助する初動パルスIPを出力している間に回転検出を行うことにより、駆動対象の負荷や電源状態に応じた適切な初動パルスを出力することによって、動き出し信頼性の高い動作が可能である。
【符号の説明】
【0215】
10 電子時計
20、50、70 スッテプモータ駆動装置
21 発振回路
22、52 制御回路
23、53 駆動パルス発生回路
30、60 ドライバ回路
40 ステップモータ
41 ロータ
54 検出パルス発生回路
55 補正パルス発生回路
56 パルス選択回路
57 回転検出判定回路
58 初動パルス発生回路
59 終端パルス発生回路
SP10、SP30 駆動パルス列
CP 検出パルス
FP 補正パルス
IP 初動パルス
EP 終端パルス
図1
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