(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】耐水素誘起割れ(HIC)性が強化されたX-65グレードのAPI 5L PSL-2仕様に適合する鋼組成物及びその鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240326BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20240326BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C22C38/00 301F
C21D8/02 C
C22C38/14
(21)【出願番号】P 2020551382
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 IB2018057606
(87)【国際公開番号】W WO2019180499
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】201831010054
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】518201418
【氏名又は名称】タタ スチール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パサック、プラシャント
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ、サウラブー
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャルヤ、バスデブ
(72)【発明者】
【氏名】ムクハージー、サブラタ
(72)【発明者】
【氏名】バーガット、アマル ナス
(72)【発明者】
【氏名】シャストリ、フリシケシュ
(72)【発明者】
【氏名】シエッド、バディルイジャマン
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102373383号明細書
【文献】特開2006-274338号公報
【文献】中国特許出願公開第103469098号明細書
【文献】中国特許出願公開第104818427号明細書
【文献】中国特許出願公開第105506472号明細書
【文献】特開2006-63351号公報
【文献】特開2013-11005号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 7/00- 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.02%~0.06%の範囲の濃度の炭素(C)、0.7%~1.3%の範囲の濃度のマンガン(Mn)、0.06%~0.10%の範囲の濃度のニオブ(Nb)、0.015%~0.025%の範囲の濃度のチタン(Ti)、0.03%~0.10%の範囲の濃度のアルミニウム(Al)、0.1%~0.5%の範囲の濃度のケイ素(Si)、0.0001%~0.0060%の範囲の濃度の窒素(N)、0.0001%~0.0020%の範囲の濃度の硫黄(S)及び0.0001%~0.015%の範囲の濃度のリン(P)を含
み、
残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成物であって、
当該鋼組成物は、バナジウム(V)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びモリブデン(Mo)を含まず、10%未満の割れ長さ比(CLR)、5%未満の割れ厚さ比(CTR)、2%未満の割れ感受性比(CSR)を示し、
前記鋼は、ポリゴナルフェライト及びベイニティック
フェライト/アシキュラフェライトを含む微細構造(microstructure)を有し、鋼の微細構造中のベイニティックフェライト/アシキュラフェライトの量は、5%~10%の範囲であ
り、
前記組成物の炭素当量が0.35未満であり、当該炭素当量は、次の式:
によって計算される、
鋼組成物。
【請求項2】
前記鋼が、API 5L PSL-2 X65仕様に適合し、水素誘起割れ(HIC)に対して高い耐性を与える、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項3】
前記組成物が、0.0020%~0.0050%の範囲の濃度のカルシウム(Ca)をさらに含む、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項4】
Nb、Ti及びNの累積濃度が0.20%を超えない、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項5】
前記組成物を有する前記鋼が、450MPa~550MPaの範囲の降伏強度(YS)を有し、535Mpa~650MPaの範囲の極限引張強度(UTS)及び少なくとも25%の伸び値を有する、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項6】
前記組成物を有する前記鋼が、2μm~4μmの範囲の平均結晶粒径を有する、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項7】
前記組成物を有する前記鋼が、160H
v~200H
vの範囲の硬度値を有する、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項8】
前記鋼が少なくとも0.90
mmの破壊靭性(CTOD-亀裂先端開口変位)値を有する、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項9】
前記組成物を有する前記鋼が、非サワー用途に用いられるラインパイプ鋼である、請求項1に記載の鋼組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を有する鋼を製造する方法であって、
a.請求項1に記載の鋼組成物で鋼スラブを鋳造し、続いて前記スラブを1100℃~1250℃の範囲の温度まで加熱するステップ、
b.Ae
3-50(℃)~Ae
3+50(℃))の仕上熱間圧延温度を用い、再結晶停止温度(T
NR)未満で、70%~90%の圧下率で前記スラブを熱間圧延するステップ、
c.熱間圧延鋼板を500℃~600℃の範囲の巻取温度まで制御冷却して、前記鋼を得るステップ
を含む、方法。
【請求項11】
ステップ(a)における前記加熱を、20分~2時間の範囲の期間にわたって行い、ステップ(c)における前記冷却を、毎秒10℃~50℃の範囲の速度で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度における前記冷却により、ポリゴナルフェライト及びベイニティックフェライト
/アシキュラフェライトを含む微細構造を有する鋼が生じる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、優れた耐水素誘起割れ(HIC)性及び優れた低温靭性、成形性及び溶接性を有するAPI 5L PSL-2 X65仕様に適合するラインパイプ鋼グレードの設計に関する。より詳細には、本開示は、炭素(C)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、窒素(N)、硫黄(S)及びリン(P)を特定の濃度で含む鋼組成物であって、生じた鋼が、優れたHIC耐性、引張特性の向上を特定のフェライトポテンシャルと炭素当量と共に確実に示すような、鋼組成物を提供する。したがって、HIC耐性鋼は、サワーグレードの原油埋蔵量を輸送できるほど十分に強靭性である。本開示はまた、本開示の鋼を製造する方法も提供し、この方法における特異的な制御条件によって、鋼が所望のHIC耐性特性を示し、この仕様に適合するように、鋼を製造できる。
【背景技術】
【0002】
石油や天然ガスのパイプラインによる長距離輸送は、燃料輸送の最も効果的かつ経済的な方法である。非サワーグレード(non-sour grade)の原油埋蔵量が段階的に枯渇することにより、高度な精製技術によるサワーグレード(硫黄含有量0.5%超)の利用が求められる。したがって、その輸送には、燃料輸送の効率を高めるために使用される高い運転圧力と相まって、原油中にH2Sが存在することによって生じる水素誘起割れ(HIC:hydrogen induced cracking)に対して優れた耐性を有するグレードのラインパイプ鋼が必要である。
【0003】
先行技術では、高強度ラインパイプ鋼のHIC特性が改善され得る方法が提案されていて、その1つは鋼への銅(Cu)の実質的な添加によるものである。鋼組成物において、最大1重量%のCu含有量が提案されている。しかし、鋼中のこのような高濃度のCuは、鋼の赤熱脆性に対する感受性を高め、これにより鋼スラブの熱間成形/圧延中に鋼表面に割れが生じ得る。ニッケル(Ni)の添加によって赤熱脆性の問題を克服できるが、0.5%を超える添加は、鋼の溶接性に影響を与えるだけでなく、鋼のコストも大幅に上昇させる。他の先行技術は、鋼の溶融及び精錬により、介在物の数を制限し、ラインパイプ鋼のHIC特性を改善することを提案している。
【0004】
さらに、いくつかの先行技術は、鋼のHIC特性を改善するために使用される、鋼の微細構造にTi-Mo析出物を形成させることができるチタン(Ti)と共にモリブデン(Mo)を含む組成物を提案している。しかし、この組成物は、Mn偏析につながる高濃度のマンガン(Mn)を含有し、鋼の微細構造における微細構造バンディングを促進する。これにより微細構造の不均一性が引き起こされ、鋼は、鋼グレードの中厚にて、より硬質の相を形成しやすくなる。偏析領域に局在化した、より硬質の相が存在することにより、鋼が水素誘起割れの影響を受けやすくすることが既知である。
【0005】
上記の先行技術に照らして、先行技術の制限を克服し、優れた成形性及び溶接性と相まって、水素誘起割れに対して優れた耐性を示す、鋼組成物及び微細構造が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、水素誘起割れ(HIC:hydrogen induced cracking)に対する高い耐性を提供し、非包晶性(non-peritectic)であり、強度及び靭性が強化された組成物から作られた鋼に関する。組成物は、約0.02重量%~約0.06重量%の範囲の濃度の炭素(C)、約0.7重量%~約1.3重量%の範囲の濃度のマンガン(Mn)、約0.06重量%~約0.10重量%の範囲の濃度のニオブ(Nb)、約0.015重量%~約0.025重量%の範囲の濃度のチタン(Ti)、約0.03重量%~約0.10重量%の範囲の濃度のアルミニウム(Al)、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲の濃度のケイ素(Si)、約0.0001重量%~約0.0060重量%の範囲の濃度の窒素(N)、約0.0001重量%~約0.0020重量%の範囲の濃度の硫黄(S)及び約0.0001重量%~約0.015重量%の範囲の濃度のリン(P)を含む。
【0007】
本開示の実施形態では、生じた鋼は、10%未満の割れ長さ比(CLR:crack length ratio)、5%未満の割れ厚さ比(CTR:crack thickness ratio)及び2%未満の割れ感受性比(CSR:crack sensitivity ratio)を示すことにより、水素誘起割れに対する優れた耐性を有する。
【0008】
本開示のさらなる実施形態では、組成物のフェライトポテンシャルは、0.85未満又は1.05超であり、これにより得られる鋼は非包晶性となり、これに対して組成物の炭素当量(carbon equivalence)は0.35未満であり、鋼が優れた溶接性を確実に示す。
【0009】
本開示のさらなる実施形態では、組成物を有する鋼は、ポリゴナル(polygonal)フェライト及びベイニティック(bainitic)フェライトの微細構造を有し、API 5L PSL-2 X65仕様に適合した引張特性を備える。
【0010】
本開示のさらなる実施形態では、本開示の鋼は、容易に熱間/冷間成形され、耐火性であり、溶接されて、とりわけサワーグレードの天然ガス又は原油の輸送に使用されるラインパイプ管を形成するように設計される。
【0011】
本開示は、上記の組成物を有する鋼を製造する方法であって、組成物を鋳造して鋼スラブとし、特定の条件で鋼スラブの熱間圧延して、熱間圧延鋼板を制御冷却して、鋼を得ることを含む方法も提供する。
【0012】
本開示の実施形態では、仕上熱間圧延温度(FRT)を有する再結晶停止温度(TNR)は、巻取温度と共に、本開示の鋼を得るために重要である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】サワーサービス用途に使用される溶接鋼管用のAPI 5L PSL-2 X65熱間圧延鋼グレードの製造用に設計された熱機械処理を示す概略図である。
【
図2(a)】500℃にて巻取った鋼のフェライトベイナイト微細構造を示す光学顕微鏡写真を提供する。
【
図2(b)】500℃にて巻取った鋼のフェライトベイナイト微細構造を示すSEM顕微鏡写真を提供する。
【
図3(a)】600℃にて巻取った鋼のアシキュラ又はベイニティックフェライトの微細構造を有する主にポリゴナルフェライトを示す光学顕微鏡写真を提供する。
【
図3(b)】600℃にて巻取った鋼のアシキュラ又はベイニティックフェライトの微細構造を有する主にポリゴナルフェライトを示すSEM顕微鏡写真を提供する。
【
図4】600℃にて巻取った鋼でのニオブカーバイド/カーボナイトライドの微細析出物の分散を示す、明視野及び暗視野のTEM顕微鏡写真を提供する。
【
図5】500℃にて巻取った鋼の微細ベイニティックフェライト/アシキュラフェライトの微細構造を示す、明視野TEM顕微鏡写真を提供する。
【
図6(a)】本開示の熱間圧延鋼の中厚領域における、炭素の均一分布を強調している。
【
図6(b)】本開示の熱間圧延鋼の中厚領域における、マンガンの均一分布を強調している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記で強調された先行技術の問題を考慮して、本開示は、水素誘起割れ(HIC:hydrogen induced cracking)に対する高い耐性を提供し、非包晶性であり、強度及び靭性が強化された組成物から作られた鋼を提供することを目的とする。この組成物を有する鋼は、API 5L PSL-2 X65仕様(API-米国石油協会/PSL-製品規格レベル)にも適合する必要がある。したがって、鋼の微細構造の発達、機械的性質(引張、硬度、靭性など)、偏析及びHIC特性に対する合金元素の影響や役割を調査するために、詳細な研究が行われる。鋼組成物と処理パラメータ(例えば変形スケジュール、仕上圧延温度(FRT)、巻取温度(CT)、ランアウトテーブルにおける冷却速度(ROT)など)は、熱機械シミュレーションに続いてパイロット規模試験を行うことによって設計及び最適化した。
【0015】
したがって、本開示の目的は、優れたHIC耐性を示し、API 5L PSL-2 X-65仕様で規定された特性に適合する、熱間圧延板/厚板を圧延するためのマイクロアロイ鋼組成物及び熱機械処理を提案することである。
【0016】
結果として、本開示は、約0.02重量%~約0.06重量%の範囲の濃度の炭素(C)、約0.7重量%~約1.3重量%の範囲の濃度のマンガン(Mn)、約0.06重量%~約0.10重量%の範囲の濃度のニオブ(Nb)、約0.015重量%~約0.025重量%の範囲の濃度のチタン(Ti)、約0.03重量%~約0.10重量%の範囲の濃度のアルミニウム(Al)、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲の濃度のケイ素(Si)、約0.0001重量%~約0.0060重量%の範囲の濃度の窒素(N)、約0.0001重量%~約0.0020重量%の範囲の濃度の硫黄(S)及び約0.0001重量%~約0.015重量%の範囲の濃度のリン(P)を含む、鋼組成物を提供する。組成物はまた、約0.0020~約0.0050重量%の範囲の濃度のカルシウム(Ca)も含み得る。
【0017】
本開示の鋼組成物は、熱間圧延鋼の中央部の厚さにおける微細構造バンディングを促進する炭素及びマンガンなどの元素の偏析を制限するように設計されている。従来のAPI-X-65と比較して少ない炭素とマンガンの含有量を、ROTにおける加速冷却と併せて使用して、優れたHIC特性を有する、偏析のない熱間圧延鋼を製造した。結果として、元素の濃度と組成物の設計方法により、熱間圧延鋼の中厚領域に炭素とマンガンが均一に分布される。
【0018】
組成物によって、得られた鋼が水素誘起割れに対して優れた耐性を有することができる。HICに対する鋼のこの性能は、NACE規格TM0284-2005(NACE-防蝕技術協会)に従ってHIC試験を行った際の、割れ長さ比(CLR)、割れ厚さ比(CTR)及び割れ感受性比(CSR)の3つのパラメータで表される。CLR、CTR、CSRは次の等式で定義される。
【数1】
【0019】
本開示の実施形態すべてにおいて、本明細書の組成物により、生じた鋼は、NACE規格TM0284-2005に従ってHIC試験を行った際に、10%未満の割れ長さ比(CLR)、5%未満の割れ厚さ比(CTR)及び2%未満の割れ感受性比(CSR)を示すことにより、水素誘起割れに対する優れた耐性を有することができる。組成物はまた、0.85未満又は1.05を超えるフェライトポテンシャルも示し、このため鋼は非包晶性である。
【0020】
本開示の組成物は、構成要素の濃度が最適な所望の結果を確実に与えるように特に設計されている。したがって、以下に示すように、重要な各要素の役割を、その濃度に関して理解することが重要である。
【0021】
炭素:鋼中の炭素の好ましい範囲は、約0.02重量%~約0.04重量%である。Cを添加すると、カーバイド/カーボナイトライドの形態の析出物の形成に加えて、固溶強化、第2相形成による鋼の強度が得られる。しかし本開示では、鋼の微細構造におけるマルテンサイト又はマルテンサイト/オーステナイト(MA)構成成分の形成を引き起こす、鋼中の炭素の偏析を制限するために、炭素含有量を0.06%に制限する。マルテンサイト及びMA構成成分が存在すると、鋼のHIC耐性に好ましくない。また炭素含有量が増加すると、鋼の靭性及び溶接性が低下する。さらに炭素含有量がより低くなると、非包晶性鋼組成物の設計も可能となる。
【0022】
マンガン:鋼中のMnの好ましい範囲は、約0.7重量%~約1.0重量%である。Mnは、固溶強化を付与する以外に、オーステナイト-フェライト変態温度も低下させ、フェライト結晶粒径の微細化に役立つ。マンガンがより高濃度になると、連続鋳造の工程中に中心偏析が増強される。さらに耐水素誘起割れ性に好ましくない、より多数のMnS介在物を生じる。鋼中のマンガンがより高濃度になると、炭素当量が増加し、鋼の溶接性が損なわれる。
【0023】
ケイ素:鋼中のSiの好ましい範囲は、約0.20重量%~約0.40重量%である。ケイ素は、Mnと同様に固溶強化効果を付与する。Siは脱酸元素としても用いられる。しかし、表面スケールの形成を防止するために、鋼中のSi含有量は、0.5%の最大含有量に制限される。またSi含有量が高くなると、炭素当量が増加するため、鋼の溶接性が損なわれる。
【0024】
ニオブ:鋼中のNbの好ましい範囲は、約0.07重量%~約0.08重量%である。鋼中のNbは、そのソリュートドラッグ効果のために結晶粒微細化に役立ち、鋼の炭素含有量を低下させることができる。ニオブは、再結晶停止温度を大幅に上昇させ、鋼の熱間圧延中に再結晶停止温度(TNR)未満でより多くの変形を可能にする。これにより、結晶粒径を大幅に縮小し、鋼の靭性を著しく向上させることができる。本開示におけるニオブの役割は拡張されて、オーステナイトの焼入れ性を高め、比較的低い冷却速度でベイニティックフェライト又はアシキュラフェライトを形成する。
【0025】
しかし、ニオブの含有量が0.10%を超えると、圧延機の負荷が大幅に増大されることがあり、圧延機のロールの寿命が大幅に短くなったり、場合により圧延機の能力を超えたりすることがある。
【0026】
窒素:鋼中の窒素の好ましい範囲は、約0.0040重量%~約0.0050重量%である。窒素はチタン及びニオブと結合して、ナイトライド/カーボナイトライドを形成する。したがって、材料をSAW(サブマージアーク溶接)又はERW(電気抵抗溶接)の最終適用工程に付する際に、結晶粒粗大化を制限するために、Ti/N比を(≧)3.14以下に維持する必要がある。しかし、窒素含有量を0.010重量%より高くすると、溶接継手の熱影響部(HAZ)が脆弱化につながり得る。
【0027】
チタン:鋼中のTiの好ましい範囲は、約0.020重量%~約0.025重量%である。鋼中のチタンは窒素と結合してTiN析出物を形成し、鋼を圧延前に再加熱したときに、TiN析出物がオーステナイト結晶粒粗大化を抑制する。またTiNが存在することによって、鋼を溶接操作に付する際に、熱影響部での事前のオーステナイト結晶粒粗大化が制限される。これにより、溶接鋼の熱影響部の靭性の悪化が防止される。
【0028】
アルミニウム:鋼中のAlの好ましい範囲は、約0.03重量%~約0.05重量%である。鋼中のアルミニウムは鋼の脱酸に使用される。Alの含有量が制限されると、酸化アルミニウムの含有量を制限され、酸化アルミニウムが存在すると、耐水素誘起割れ性が悪化する。
【0029】
硫黄:硫黄は、HIC特性の深刻な悪化を引き起こすので、高濃度のMnS介在物を回避するために、約0.0010重量%に制限する必要がある。
【0030】
リン:リン含有量は最大0.015重量%に制限する必要があるのは、リンの濃度が高くなると、粒界でのPの偏析により、耐水素誘起割れ性、靭性及び溶接性の低下につながる可能性があるためである。
【0031】
カルシウム:鋼中のCaの好ましい範囲は、約0.0020~約0.0050重量%である。鋼のカルシウム処理は、MnS介在物のサイズと形態を変化させるために重要である。Ca/S比は2~3の範囲である必要がある。
【0032】
したがって、本開示の好ましい実施形態では、本開示の組成物は、約0.02重量%~約0.04重量%の範囲の濃度のC、約0.7重量%~約1.0重量%の範囲の濃度のMn、約0.07重量%~約0.08重量%の範囲の濃度のNb、約0.020重量%~約0.025重量%の範囲の濃度のTi、約0.03重量%~約0.05重量%の範囲の濃度のAl、約0.2重量%~約0.4重量%の範囲の濃度のSi、約0.0040重量%~約0.050重量%の範囲の濃度のN、約0.0010%の濃度のS及び約0.010%の濃度のPを含む。組成物は、約0.0020~約0.0050重量%の範囲の好ましい濃度のCaも含み得る。
【0033】
本開示の別の好ましい実施形態では、組成物のマイクロアロイ総含有量は、0.20重量%未満に制限される。特に本開示の組成物において、Nb、Ti及びNの累積濃度(cumulative concentration)は、0.20重量%を超えない。
【0034】
本開示の組成物における成分のこの特定の濃度は、鋼に所望のHIC特性を与えるのに役立つ、特定の微細構造の形成につながる。本開示の実施形態では、本開示による鋼板は、90~95%のフェライトを有する。フェライトは、固溶強化へのMn及びSiの寄与によって強化される。高いNbと制御された熱機械処理条件を適用すると、500℃及び600℃の巻取温度での平均結晶粒径は、それぞれ約2.7μmと2.9μmに制限される。この結晶粒微細化により、ホールペッチ(Hall-Petch)の関係に支配されるフェライトの強度が著しく上昇する。また、より微細な結晶粒径により、室温及び氷点下温度で鋼の顕著な靭性が生じる。大きさがわずか数ナノメートルの微細析出物である、ニオブに富んだカーバイドの分散も、フェライトの強度に寄与する。これは、(以下の例1で与えるように)600℃にて巻取った鋼でのニオブカーバイド/カーボナイトライドの微細析出物の分散を示す、明視野及び暗視野のTEM顕微鏡写真を示す
図4からわかる。したがって、本開示の実施形態では、この組成物を有する鋼は、約2μm~約4μmの範囲の平均結晶粒径(average grain size)を有する。
【0035】
したがって、本開示の実施形態では、この組成物を有する鋼は、ポリゴナルフェライト及びベイニティックフェライトの微細構造を有する。微細構造中のベイニティック(bainitic)フェライト/アシキュラ(acicular)フェライトの量は、約5%~約10%の範囲である。ベイナイト/アシキュラフェライトによる強化は、その微細構造と高い転位密度に由来する。
【0036】
組成物によって形成されるこの微細構造によって、本開示の得られた鋼に強度及び品質の向上がもたらされる。より詳細には、本開示の鋼は、API 5L PSL-2 X65仕様によって要求されるように、高い降伏強度(YS:yield strength)及び極限引張強度(UTS:ultimate tensile strength)を有する。このため本開示の実施形態では、本開示の組成物を有する鋼は、約450MPa~約550MPaの範囲の降伏強度、約535MPa~約650MPaの範囲の極限引張強度(UTS)及び少なくとも25%の伸び値を有する。したがって、鋼のYS/UTS比も0.93未満に維持される。
【0037】
本開示の実施形態では、この組成物を有する鋼は、YS及びUTSに加えて、氷点下温度(sub-zero temperature)で縦方向(longitudinal direction)に約270J~約380J、横方向(transverse direction)に約260J~約370Jの範囲の衝撃靭性(impact toughness)を有する。さらに鋼は、約160Hv~約200Hvの範囲の硬度値及び少なくとも0.90の破壊靭性(CTOD-亀裂先端開口変位:crack tip opening displacement)値も有する。
【0038】
前述のように、本開示の鋼は、0.85未満又は1.05超のいずれかのフェライトポテンシャルを有し、それによって鋼が非包晶性となる。このフェライトポテンシャル(FP)は、次の経験式によって計算される:
FP=2.5*(0.5-C
eq)
式中、C
eqは組成物の炭素当量であり、次の等式で定義される:
Ceq=C+0.04*Mn+0.1*Ni+0.7*N-0.14*Si-0.04*Cr-0.1*Mo-0.24*Ti-0.7*S
これに対して、溶接割れの臨界金属パラメータ(Pcm)は
【数2】
によって計算される。
一方、国際溶接学会(International Institute of Welding)(IIW)に基づく式は
【数3】
である。
【0039】
本開示の実施形態では、組成物の炭素当量は、0.35未満である。この炭素当量によって、確実に、鋼が管製造及び他の最終用途工程中に優れた溶接性を示すようになる。
【0040】
したがって、本開示の鋼が、X-65グレード鋼についてAPI 5L PSL-2によって規定された仕様に従って、HICに対する高い耐性及び引張特性を示せるようになり、サワー環境に使用可能になるのは、特定の濃度における元素の精密な相乗的相互作用によるものである。ゆえに、開発された鋼は、容易に熱間/冷間成形され、耐火性であり、溶接されて天然ガス又は原油の輸送に使用されるラインパイプ管を形成するように設計されているが、組成物が一体となって本開示の鋼を形成する方法を理解することも重要である。
【0041】
このため本開示は、優れた溶接性及び成形性と共に、優れた耐水素誘起割れ性、優れた低温靭性を備えた、API PSL-2 X-65仕様に適合するラインパイプ鋼グレードを開発するための、制御された熱機械処理及び加速冷却法と組合せた、鋼の化学組成物の設計にも関する。
【0042】
したがって、本開示は、上記の組成物を有する鋼を製造する方法であって、
a.本開示の鋼組成物で鋼スラブを鋳造し、続いてスラブを加熱するステップ、
b.定義済みの仕上熱間圧延温度(FRT)を用い、再結晶停止温度(TNR)未満での圧下率で、スラブを制御熱間圧延するステップ、
c.熱間圧延鋼板を巻取温度まで制御冷却して、鋼を得るステップ
を含む方法を提供する。
【0043】
本開示の実施形態では、方法は、本開示の所望の鋼を達成するのに役立つ、特定の条件及びパラメータの下で実施される。最初に、特定の組成物をまず従来の連続鋳造機又は薄スラブ鋳造ルートのどちらかによって鋳造する。本開示の非包晶性鋼組成物により、確実に、どちらかのルートによって鋼が円滑に鋳造されるようになる。特定の組成物を用いてスラブを鋳造した後、スラブを約20分~約2時間、1100℃を超える温度に(好ましくは約1100℃~1250℃の範囲で)再加熱する。前の処理ステップで生成されたかもしれない析出物のニオブカーバイド/カーボナイトライドがいずれも完全に溶解するように、再加熱温度は1100℃を超えている。オーステナイトの結晶粒粗大化をもたらし、過度のスケール形成による歩留り損失をもたらし得るため、約1250℃を超える再加熱温度も望ましくない。
【0044】
特定の組成物で鋼スラブを鋳造し、再加熱した後、スラブの熱間圧延を行う。従来の熱間ストリップ圧延機で圧延を行う場合、熱間圧延は、再結晶温度より高い粗圧延ステップと、再結晶温度より低い仕上圧延ステップを構成する。再結晶停止温度(摂氏でのTNR)は、結晶粒径と第2相形成に関して、開発された鋼の最終的微細構造を定義する上で重要なパラメータである。圧延は、特定の仕上圧延温度(FRT:finish rolling temperature)を用いて、TNR未満にて、約70%~約90%を超える圧下率で行う。いくつかの実施形態では、CSP(コンパクトストリップ処理)/TSCR(薄スラブ鋳造)が鋼の製造に使用される場合(別個の粗圧延機がない場合)、熱間圧延の初期停止の間に鋳造構造を破壊するために、変形スケジュールを設計する必要があり、仕上げは、約Ae3-50(℃)~約Ae3+50(℃)の範囲のFRTを用いて、TNR未満での圧下率(percentage reduction)が約70%~約90%となるように、再結晶温度未満で行う必要がある。
【0045】
その後、パーライトの形成を抑制し、微細構造におけるベイニティックフェライト又はアシキュラフェライトの形成を促進するために、熱間圧延鋼板を約10℃/秒~約50℃/秒の範囲の冷却速度、約520℃~約600℃の範囲の巻取温度(CT)にて、ランアウトテーブル(ROT)での加速冷却法に付する。600℃付近のより高い巻取温度により、過飽和フェライト中に微細なカーバイドが析出することにより、鋼の強度を上昇させることができる。
【0046】
図1は、X-65サワーグレードの製造に使用する、設計された化学的性質の熱間圧延ストリップの生産に用いる熱機械処理を示す概略図を示す。
【0047】
したがって、本明細書に記載する組成物を有する鋼を製造する方法は、
a.本開示の鋼組成物で鋼スラブを鋳造し、続いてスラブを約1100℃~約1250℃の範囲の温度まで加熱するステップ、
b.約Ae3-50(℃)~約Ae3+50(℃))の仕上熱間圧延温度(FRT)を用い、再結晶停止温度(TNR)未満で、約70%~約90%の圧下率でスラブを熱間圧延するステップ、
c.熱間圧延鋼板を約500℃~約600℃の範囲の巻取温度まで制御冷却して、鋼を得るステップ
を含む。
【0048】
本開示のさらなる実施形態では、前述の方法のステップ(a)における加熱は、約20分~約2時間の範囲の期間にわたって行い、ステップ(c)における冷却は、毎秒約10℃~約50℃の範囲の速度で行う。
【0049】
一実施形態では、前述の説明事項は、開示の例示であり、制限ではない。本明細書ではこの開示の特定の特徴が相当強調されているが、本開示の原理から逸脱することなく、様々な修正を行うことができ、好ましい実施形態において多くの変更を行えることがわかる。当業者は、本明細書の実施形態が、本明細書に記載された実施形態の趣旨及び範囲内で修正して実施できることを認識するであろう。
【実施例】
【0050】
[例1:本開示の鋼の製造及びその微細構造の分析]
以下の表1に示す組成物を有する鋼を鋳造して、2個のビレットとした。次に、ニオブ析出物が完全に溶解するように、鋳造したビレットを1200℃の温度まで1時間再加熱した。どちらのビレットも、T
NR(1030~1040℃)未満での78%圧下率によって、同じ変形スケジュールで熱間圧延して、温度870℃の温度まで仕上圧延した。熱間圧延後、2個のビレットから処理した2枚の熱間圧延板を25~30℃/秒の冷却速度にて、それぞれ500℃と600℃の巻取温度まで冷却した。
【表1】
【0051】
500℃と600℃にて巻取った、得られた熱間圧延板を微細構造の詳細、結晶粒径、硬度値について分析し、結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0052】
結果:500℃及び600℃にて巻取った鋼のどちらの場合も、微細構造、結晶粒径及び硬度は、本開示の鋼によって必要とされる値に相当する。
【0053】
一方、
図2は、500℃で巻取った鋼のフェライト-ベイナイトの微細構造を示す光学顕微鏡写真(2a)及びSEM顕微鏡写真(2b)を示す。
図3は、600℃で巻取った鋼のアシキュラ又はベイニティックフェライトの微細構造を有する、主にポリゴナルフェライトを示す光学顕微鏡写真(3a)及びSEM顕微鏡写真(3b)を示す。
【0054】
さらに、
図4は、600℃にて巻取った鋼での炭化ニオブカーバイド/カーボナイトライドの微細析出物の分散を示す、明視野及び暗視野のTEM顕微鏡写真を示すが、
図5は、500℃で巻取った鋼の微細ベイニティックフェライト/アシキュラフェライトの微細構造を示す、明視野のTEM顕微鏡写真を示す。
【0055】
[例2:本開示の鋼の引張特性の分析]
例1で示した組成及び工程の詳細を備えた鋼を製造し、500℃及び600℃にて巻取った、得られた熱間圧延板を降伏強度(YS)、極限引張強度(UTS)、%伸び及びYS/UTS比について分析し、結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0056】
結果:500℃及び600℃にて巻取った鋼のどちらの場合も、引張特性は本開示の鋼に必要な値に相当し、API 5L PSL-2 X65仕様に従っている。
【0057】
[例3:本開示の鋼の衝撃靭性の分析]
例1で示した組成及び工程の詳細を備えた鋼を製造し、500℃及び600℃にて巻取った、得られた熱間圧延板の衝撃靭性を分析して、結果を下の表4に示す。
【表4】
【0058】
結果:500℃及び600℃にて巻取った鋼のどちらの場合も、衝撃靭性は、本開示の鋼による必要に応じて、縦方向が-60℃にて270J~380J、横方向が260J~370Jの範囲であること判明した。
【0059】
[例4:本開示の鋼の引張特性の分析]
例1で示した組成及び工程の詳細を備えた鋼を製造し、500℃及び600℃にて巻取った、得られた熱間圧延板を、室温と氷点下温度での破壊靭性(CTOD)について分析して、結果を下の表5に与える。
【表5】
【0060】
結果:500℃及び600℃で巻取った鋼のどちらの場合も、本開示の鋼による必要に応じて、破壊靭性は0.90を超えることが判明した。
【0061】
[例5:本開示の鋼の水素誘起割れ(HIC)特性の分析]
例1で示した組成及び工程の詳細を備えた鋼を製造し、500℃及び600℃にて巻取った、得られた熱間圧延板を、そのHIC特性について、NACE規格TM0284-2005に従って試験した。100*20*T(Tは熱間圧延ストリップの厚さ)の標準サンプルを、H2Sで飽和させた、pHが3±0.5の蒸留水に溶解させた0.5%酢酸及び5%塩化ナトリウムからなる試験溶液に、陽圧下で96時間暴露させた。
【0062】
試験後、暴露させたサンプルを研磨し、サンプルに発生した割れに金属組織検査を行った。HICに対する鋼の性能は、(上で定義した通り)CLR、CTR及びCSRの3つのパラメータで表す。結果を以下の表6に与える。
【表6】
【0063】
結果:500℃及び600℃にて巻取った鋼のどちらの場合も、割れは発生せず、開発された鋼のCLR、CTR、CSRの3つのパラメータはすべてゼロであることが判明した。
【0064】
[例6:本開示の鋼の元素分布の分析]
例1で示した組成及び工程の詳細を備えた鋼を製造し、得られた熱間圧延板を、その中の炭素及びマンガンの分布について分析する。
図6から認められるように、熱間圧延鋼の中厚領域では、炭素及びマンガンが均一に分布している。この均一分布は、本明細書の鋼を得るために用いた、本開示の特定の組成のために達成される。
【0065】
本開示の追加の実施形態及び特徴は、本明細書で与える説明に基づいて、当業者には明らかとなる。本明細書の実施形態は、説明においてその様々な特徴及びその有利な詳細を与える。本明細書の実施形態を必要以上に不明瞭にしないために、周知/従来の方法及び技法の説明は省略している。
【0066】
特定の実施形態の前述の説明は、本明細書の実施形態の一般的な性質を非常に十分に明らかにし、当業者が現在の知識を付加することによって、一般的な概念から逸脱せずに特定の実施形態などの様々な利用を容易に修正及び/又は様々な利用に容易に適応でき、したがって、このような適応及び修正は、開示される実施形態の均等物を意味し、その範囲内であると理解されるべきであり、意図される。本明細書で用いる表現又は用語は、説明を目的としたものであり、制限を目的としたものではないことを理解されたい。したがって、本開示の実施形態を好ましい実施形態に関して説明したが、当業者は、本明細書の実施形態が、本明細書に記載された実施形態の趣旨及び範囲内で修正して実施できることを認識するであろう。
【0067】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、状況及び/又は用途に適切であるように、複数から単数に及び/又は単数から複数に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、明確にするために、本明細書で明示的に示され得る。
【0068】
この明細書全体を通して、「含む(comprise)」という用語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、使用される場合は常に、示した要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を、他のいずれの要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数又はステップの群をも除外することなく含むことを意味すると理解される。
【0069】
本明細書に含まれる文書、作用、材料、装置、物品などの議論は、開示の状況を提供する目的のためのみである。これらの事項のいずれか又はすべてが先行技術の基礎の一部を構成する又は本出願優先日以前に任意の場所に存在していた、本開示関連分野において共有されている一般的知識であったことを認めるものとして解釈すべきではない。
【0070】
本明細書ではこの開示の特定の特徴が相当強調されているが、本開示の原理から逸脱することなく、様々な修正を行うことができ、好ましい実施形態において多くの変更を行えることがわかる。開示又は好ましい実施形態の性質におけるこれら及び他の修正は、本明細書の開示から当業者には明らかであり、それにより、前述の説明事項は、単に開示の例示であり、制限ではないとして明確に理解されるべきである。