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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ショベル、ショベルの制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E02F3/43 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020556185
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044785
(87)【国際公開番号】W WO2020101005
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018214162
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 力
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008719(JP,A)
【文献】特開2014-074319(JP,A)
【文献】国際公開第2015/173936(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150136(WO,A1)
【文献】特開2002-327465(JP,A)
【文献】国際公開第98/036131(WO,A1)
【文献】特開2008-106440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0131610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のクローラを含む下部走行体と、
前記一対のクローラを駆動する一対の走行モータと、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体の向きを変化させることが可能なアクチュエータと、
目標施工面に関する情報と前記上部旋回体の向きに関する情報とに基づき、前記上部旋回体を前記目標施工面に正対させるように前記アクチュエータを動作させる正対制御を実行可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記一対の走行モータのうちの少なくとも一方により前記下部走行体が駆動されている場合に、前記上部旋回体が前記目標施工面に正対する状態を維持するように、前記正対制御を行う、
ショベル。
【請求項2】
前記上部旋回体に搭載されるアタッチメントを備え、
前記アタッチメントが駆動されている場合に、前記上部旋回体が前記目標施工面に正対する状態を維持するように、前記正対制御を行う、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記上部旋回体の向きを変化させることが可能な前記アクチュエータは、前記上部旋回体を駆動する旋回駆動部である、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記上部旋回体の向きを変化させることが可能な前記アクチュエータは、前記走行モータである、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
ショベルの周囲の様子を認識する空間認識装置を備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータの動作開始前において、前記空間認識装置の取得情報に基づきショベルから所定範囲内に人が存在すると判断された場合に、前記アクチュエータを動作不能とする、
請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
ショベルの周囲の様子を認識する空間認識装置と、
前記アクチュエータの操作を受け付ける操作装置と、を備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータの動作開始前において、前記空間認識装置の取得情報に基づきショベルから所定範囲内に人が存在すると判断されると、前記操作装置が操作されても前記アクチュエータを駆動させない、
請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御装置は、前記上部旋回体に搭載されるアタッチメントが前記目標施工面に近づく方向に前記上部旋回体が旋回操作された場合に、前記正対制御を開始する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項8】
一対のクローラを含む下部走行体と、前記一対のクローラを駆動する一対の走行モータと、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の向きを変化させることが可能なアクチュエータと、を備えるショベルの制御装置であって、
目標施工面に関する情報と前記上部旋回体の向きに関する情報とに基づき、前記上部旋回体を前記目標施工面に正対させるように前記アクチュエータを動作させる正対制御を実行可能に構成され、前記一対の走行モータのうちの少なくとも一方により前記下部走行体が駆動されている場合に、前記上部旋回体が前記目標施工面に正対する状態を維持するように、前記正対制御を行う、
ショベルの制御装置。
【請求項9】
前記上部旋回体に搭載されるアタッチメントが前記目標施工面に近づく方向に前記上部旋回体が旋回操作された場合に、前記正対制御を開始する、
請求項8に記載のショベルの制御装置。
【請求項10】
前記上部旋回体に搭載されるアタッチメントが駆動されている場合に、前記上部旋回体が前記目標施工面に正対する状態を維持するように、前記正対制御を行う、
請求項に記載のショベルの制御装置。
【請求項11】
前記上部旋回体の向きを変化させることが可能な前記アクチュエータは、前記上部旋回体を駆動する旋回駆動部である、
請求項に記載のショベルの制御装置。
【請求項12】
前記上部旋回体の向きを変化させることが可能な前記アクチュエータは、走行モータである、
請求項に記載のショベルの制御装置。
【請求項13】
前記アクチュエータの動作開始前において、ショベルの周囲の様子を認識する空間認識装置の取得情報に基づきショベルから所定範囲内に人が存在すると判断された場合に、前記アクチュエータを動作不能とする、
請求項に記載のショベルの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベル等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ショベルの上部旋回体が法面等の目標施工面に対して正対しているか否かをオペレータ等に認識させることが可能な技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/026469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、旋回体が目標施工面に正対していない場合、オペレータは、ショベルを目標施工面に正対させるため、旋回操作等を行う必要がある。そのため、オペレータは、ショベルを目標施工面に正対させるための操作工程のたびに煩わしいと感じる可能性がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、ショベルの上部旋回体を目標施工面に正対させる際にオペレータが感じる煩わしさを低減させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
一対のクローラを含む下部走行体と、
前記一対のクローラを駆動する一対の走行モータと、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体の向きを変化させることが可能なアクチュエータと、
目標施工面に関する情報と前記上部旋回体の向きに関する情報とに基づき、前記上部旋回体を前記目標施工面に正対させるように前記アクチュエータを動作させる正対制御を実行可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記一対の走行モータのうちの少なくとも一方により前記下部走行体が駆動されている場合に、前記上部旋回体が前記目標施工面に正対する状態を維持するように、前記正対制御を行う、
ショベルが提供される。
【0008】
また、本開示の他の実施形態では、
一対のクローラを含む下部走行体と、前記一対のクローラを駆動する一対の走行モータと、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の向きを変化させることが可能なアクチュエータと、を備えるショベルの制御装置であって、
目標施工面に関する情報と前記上部旋回体の向きに関する情報とに基づき、前記上部旋回体を前記目標施工面に正対させるように前記アクチュエータを動作させる正対制御を実行可能に構成され、前記一対の走行モータのうちの少なくとも一方により前記下部走行体が駆動されている場合に、前記上部旋回体が前記目標施工面に正対する状態を維持するように、前記正対制御を行う、
ショベルの制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上述の実施形態によれば、ショベルの上部旋回体を目標施工面に正対させる際にオペレータが感じる煩わしさを低減させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ショベルの側面図である。
図2】ショベルの構成の一例を概略的に示す図である。
図3】ショベルの構成の他の例を概略的に示す図である。
図4A】ショベルと目標施工面との相対的な位置関係の具体例を示す図である。
図4B】ショベルと目標施工面との相対的な位置関係の具体例を示す図である。
図5】ショベルの油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
図6A】ショベルの油圧システムにおけるブームに関する操作系の構成部分の一例を示す図である。
図6B】ショベルの油圧システムにおけるバケットに関する操作系の構成部分の一例を示す図である。
図6C】ショベルの油圧システムにおける上部旋回体に関する操作系の構成部分の一例を示す図である。
図7】ショベルのコントローラによる正対処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図8A】正対処理が実行される際のショベルの動作工程の一例を示す上面図である。
図8B】正対処理が実行される際のショベルの動作工程の一例を示す上面図である。
図9】正対処理が実行される際のショベルの動作工程の他の例を示す上面図である。
図10】ショベルのコントローラによる正対処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
図11】ショベルのコントローラによる正対処理の更に他の例を概略的に示すフローチャートである。
図12A】ショベルの自律運転機能に関する構成の一例を示す図である。
図12B】ショベルの自律運転機能に関する構成の一例を示す図である。
図12C】ショベルの自律運転機能に関する構成の一例を示す図である。
図13】ショベル管理システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0013】
[ショベルの概要]
最初に、図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る掘削機としてのショベル100の側面図である。
【0015】
尚、図1では、ショベル100は、施工対象の上り傾斜面ESに面する水平面に位置すると共に、後述する目標施工面の一例である上り法面BS(つまり、上り傾斜面ESに対する施工後の法面形状)が併せて記載されている。
【0016】
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業機)を構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10とを備える。
【0017】
下部走行体1は、左右一対のクローラが走行油圧モータ1L,1Rでそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。つまり、一対の走行油圧モータ1L,1R(走行モータの一例)は、被駆動部としての下部走行体1(クローラ)を駆動する。
【0018】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aで駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。つまり、旋回油圧モータ2Aは、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0019】
尚、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aの代わりに、電動機(以下、「旋回用電動機」)により電気駆動されてもよい。つまり、旋回用電動機は、旋回油圧モータ2Aと同様、非駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0020】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0021】
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
【0022】
キャビン10は、オペレータが搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0023】
ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素(被駆動要素)を駆動する。
【0024】
また、ショベル100は、キャビン10のオペレータにより操作可能に構成されるのに代えて、或いは、加えて、所定の外部装置(例えば、後述の支援装置200や管理装置300)のオペレータによって遠隔操作が可能に構成されてもよい。この場合、ショベル100は、例えば、後述の撮像装置S6が出力する画像情報(撮像画像)を外部装置に送信する。また、後述するショベル100の表示装置40に表示される各種の情報画像(例えば、各種設定画面等)は、同様に、外部装置に設けられる表示装置にも表示されてよい。これにより、オペレータは、例えば、外部装置に設けられる表示装置に表示される内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。そして、ショベル100は、外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素を駆動してよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータの操作装置26に対する操作、及び外部装置のオペレータの遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
【0025】
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動で油圧アクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(以下、「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」)を実現する。
【0026】
自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の動作要素(油圧アクチュエータ)以外の動作要素(油圧アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」)が含まれてよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、自動運転機能には、ショベル100の周囲の作業者等の人のジェスチャをショベル100が認識し、認識されるジェスチャの内容に応じて、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(「ジェスチャ操作機能」)が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0027】
[ショベルの構成]
次に、図1に加えて、図2図4を参照して、本実施形態に係るショベル100の具体的な構成について説明する。
【0028】
図2図3は、それぞれ、本実施形態に係るショベル100の構成の一例及び他の例を概略的に示す図である。図2図3のショベル100は、コントローラ30に含まれる、後述のマシンガイダンス部50の構成が異なる点以外、同様の構成を有する。図4図4A図4B)は、ショベル100と目標施工面との相対的な位置関係の具体例を示す図である。具体的には、図4Aは、ショベル100の上部旋回体3が目標施工面に正対していない状態の一例を示す図であり、図4Bは、ショベル100の上部旋回体3が目標施工面に正対している状態の一例を示す図である。
【0029】
尚、図2図3において、機械的動力系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系は、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。また、図4A図4Bにおいて、施工完了領域CSは、施工対象の上り傾斜面ESのうち、目標施工面(例えば、上り法面BS)の施工が完了した、つまり、目標施工面が完成している領域を表し、未施工領域NSは、未施工、つまり、目標施工面が完成していない領域を表す。また、図4A図4Bにおいて、円筒体CBは、目標施工面に対して、その軸が法線方向に沿うように配置されており、目標施工面の法線方向を表している。
【0030】
本実施形態に係るショベル100の駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0031】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0032】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。レギュレータ13は、例えば、後述の如く、レギュレータ13L,13Rを含む。
【0033】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30による制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。メインポンプ14は、例えば、後述の如く、メインポンプ14L,14Rを含む。
【0034】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26に対する操作や遠隔操作の状態に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁171~176を含む。より具体的には、制御弁171は、走行油圧モータ1Lに対応し、制御弁172は、走行油圧モータ1Rに対応し、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176は、アームシリンダ8に対応する。また、制御弁175は、例えば、後述の如く、制御弁175L,175Rを含み、制御弁176は、例えば、後述の如く、制御弁176L,176Rを含む。制御弁171~176の詳細は、後述する(図5参照)。
【0035】
本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26とを含む。また、ショベル100の操作系は、後述するコントローラ30によるマシンコントロール機能に関する構成として、シャトル弁32を含む。
【0036】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットラインを介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
【0037】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。
【0038】
図2図3に示すように、操作装置26は、油圧パイロット式である。操作装置26は、その二次側のパイロットラインを通じて直接的に、或いは、二次側のパイロットラインに設けられる後述のシャトル弁32を介して間接的に、コントロールバルブ17にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット圧が入力されうる。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。
【0039】
また、操作装置26は、パイロット圧を出力する油圧パイロット式ではなく、操作内容に対応する電気信号(以下、「操作信号」)を出力する電気式であってもよい。この場合、操作装置26からの電気信号は、コントローラ30に入力され、コントローラ30は、入力される電気信号に応じて、コントロールバルブ17内の各制御弁171~176を制御することにより、操作装置26に対する操作内容に応じた、各種油圧アクチュエータの動作を実現してよい。例えば、コントロールバルブ17内の制御弁171~176は、コントローラ30からの指令により駆動される電磁ソレノイド式スプール弁であってよい。また、例えば、パイロットポンプ15と各制御弁171~176のパイロットポートとの間には、コントローラ30からの電気信号に応じて動作する油圧制御弁(以下、「操作用制御弁」)が配置されてもよい。操作用制御弁は、例えば、比例弁31であってよく、シャトル弁32は、省略される。この場合、電気式の操作装置26を用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、その操作量(例えば、レバー操作量)に対応する電気信号によって、操作用油圧制御弁を制御しパイロット圧を増減させる。これにより、コントローラ30は、操作装置26に対する操作内容に合わせて、各制御弁171~176を動作させることができる。以下、操作用制御弁は、比例弁31である前提で説明を進める。
【0040】
操作装置26は、例えば、アーム5(アームシリンダ8)を操作するレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)、バケット6(バケットシリンダ9)、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)のそれぞれを操作するレバー装置26A~26Cを含む(図6参照)。また、操作装置26は、例えば、下部走行体1の左右一対のクローラ(走行油圧モータ1L,1R)のそれぞれを操作するレバー装置やペダル装置を含む。
【0041】
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有し、2つの入口ポートに入力されたパイロット圧のうちの高い方のパイロット圧を有する作動油を出口ポートに出力させる。シャトル弁32は、2つの入口ポートのうちの一方が操作装置26に接続され、他方が比例弁31に接続される。シャトル弁32の出口ポートは、パイロットラインを通じて、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている(詳細は、図4参照)。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。つまり、後述するコントローラ30は、操作装置26から出力される二次側のパイロット圧よりも高いパイロット圧を比例弁31から出力させることにより、オペレータによる操作装置26の操作に依らず、対応する制御弁を制御し、各種動作要素の動作を制御することができる。シャトル弁32は、例えば、後述の如く、シャトル弁32AL,32AR,32BL,32BR,32CL,32CRを含む。
【0042】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、吐出圧センサ28と、操作圧センサ29と、比例弁31,33と、表示装置40と、入力装置42と、音声出力装置43と、記憶装置47と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5と、撮像装置S6と、測位装置P1と、通信装置T1とを含む。
【0043】
コントローラ30(制御装置の一例)は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインタフェース装置等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、不揮発性の補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0044】
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の入力装置42に対する所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0045】
また、例えば、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0046】
また、例えば、コントローラ30は、操作装置26が電気式である場合、上述の如く、比例弁31を制御し、操作装置26の操作内容に応じた油圧アクチュエータの動作を実現してよい。
【0047】
また、例えば、コントローラ30は、比例弁31を用いて、ショベル100の遠隔操作を実現してよい。具体的には、コントローラ30は、外部装置から受信される遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容に対応する制御指令を比例弁31に出力してよい。そして、比例弁31は、パイロットポンプ15から供給される作動油を用いて、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させてよい。これにより、遠隔操作の内容がコントロールバルブ17の動作に反映され、油圧アクチュエータによって、遠隔操作の内容に沿った各種動作要素(被駆動要素)の動作が実現される。
【0048】
また、例えば、コントローラ30は、周辺監視機能に関する制御を行う。周辺監視機能では、撮像装置S6で取得される情報に基づき、ショベル100の周囲の所定範囲(以下、「監視範囲」)内への監視対象の物体の進入が監視される。監視範囲内への監視対象の物体の進入の判断処理は、撮像装置S6によって行われてもよいし、撮像装置S6の外部(例えば、コントローラ30)によって行われてもよい。監視対象の物体には、例えば、人、トラック、他の建設機械、電柱、吊り荷、パイロン、建屋等が含まれてよい。
【0049】
また、例えば、コントローラ30は、物体検出報知機能に関する制御を行う。物体検出報知機能では、周辺監視機能によって、監視範囲内に監視対象の物体が存在すると判断される場合に、キャビン10内のオペレータやショベル100の周囲に対する監視対象の物体の存在が報知される。コントローラ30は、例えば、表示装置40や音声出力装置43を用いて、物体検出報知機能を実現してよい。
【0050】
また、例えば、コントローラ30は、動作制限機能に関する制御を行う。動作制限機能では、例えば、周辺監視機能によって、監視範囲内に監視対象の物体が存在すると判断される場合に、ショベル100の動作を制限する。以下、監視対象が人の場合を中心に説明する。
【0051】
コントローラ30は、例えば、アクチュエータが動作する前において、撮像装置S6の取得情報に基づきショベル100から所定範囲内(監視範囲内)に人等の監視対象の物体が存在すると判断される場合、オペレータが操作装置26を操作しても、アクチュエータの動作を動作不能、或いは、微速状態での動作に制限してよい。具体的には、コントローラ30は、監視範囲内に人が存在すると判断される場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを動作不能にすることができる。電気式の操作装置26の場合には、コントローラ30から操作用制御弁(比例弁31)への信号を無効にすることで、アクチュエータを動作不能にすることができる。他の方式の操作装置26でも、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用制御弁(比例弁31)が用いられる場合には、同様である。アクチュエータの動作を微速にしたい場合には、コントローラ30から操作用制御弁(比例弁31)への制御信号を相対的に小さいパイロット圧に対応する内容に制限することで、アクチュエータの動作を微速状態にすることができる。このように、検出される監視対象の物体が監視範囲内に存在すると判断されると、操作装置26が操作されてもアクチュエータは駆動されない、或いは、操作装置26への操作入力に対応する動作速度よりも小さい動作速度(微速)で駆動される。更に、オペレータが操作装置26を操作している最中において、監視範囲内に人等の監視対象の物体が存在すると判断される場合には、オペレータの操作に関わらずアクチュエータの動作を停止、或いは、減速させてもよい。具体的には、監視範囲内に人が存在すると判断される場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを停止させてよい。コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用制御弁(比例弁31)が用いられる場合には、コントローラ30から操作用制御弁(比例弁31)への信号を無効にする、或いは、操作用制御弁に減速指令を出力することで、アクチュエータを動作不能、或いは、微速状態の動作に制限することができる。また、検出された監視対象の物体がトラックの場合、アクチュエータの停止或いは減速に関する制御は実施されなくてもよい。例えば、検出されたトラックを回避するようにアクチュエータは制御されてよい。このように、検出された物体の種類が認識され、その認識に基づきアクチュエータは制御されてよい。
【0052】
また、コントローラ30は、当然の如く、操作装置26の操作の場合と同様の動作制限機能をショベル100の遠隔操作が行われる場合に適用してもよい。
【0053】
また、例えば、コントローラ30は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関する制御を行う。また、コントローラ30は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能に関する制御を行う。つまり、コントローラ30は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する機能部として、マシンガイダンス部50を含む。
【0054】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。例えば、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能は、専用のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。
【0055】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ28により検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28は、例えば、後述の如く、吐出圧センサ28L,28Rを含む。
【0056】
操作圧センサ29は、上述の如く、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(即ち、油圧アクチュエータ)に関する操作状態(例えば、操作方向や操作量等の操作内容)に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29による操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。操作圧センサ29は、例えば、後述の如く、操作圧センサ29A~29Cを含む。
【0057】
尚、操作圧センサ29の代わりに、操作装置26におけるそれぞれの動作要素に関する操作状態を検出可能な他のセンサ、例えば、レバー装置26A~26C等の操作量(傾倒量)や傾倒方向を検出可能なエンコーダやポテンショメータ等が設けられてもよい。また、操作装置26が電気式である場合、操作圧センサ29は省略される。
【0058】
比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられる。比例弁31は、例えば、その流路面積(作動油が通流可能な断面積)を変更できるように構成される。比例弁31は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、レバー装置26A~26C)が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。比例弁31は、例えば、後述の如く、比例弁31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CRを含む。
【0059】
比例弁33は、操作装置26とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられる。比例弁33は、例えば、その流路面積を変更できるように構成される。比例弁33は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、レバー装置26A~26C)が操作されている場合に、操作装置26から出力されるパイロット圧を強制的に減圧させることができる。そのため、コントローラ30は、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26の操作に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、コントローラ30は、例えば、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26から出力されるパイロット圧を減圧させ、比例弁31から出力されるパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31及び比例弁33を制御することで、例えば、操作装置26の操作内容とは無関係に、所望のパイロット圧をコントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートに確実に作用させることができる。よって、コントローラ30は、例えば、比例弁31に加えて、比例弁33を制御することで、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能をより適切に実現することができる。比例弁33は、後述の如く、比例弁33AL,33AR,33BL,33BR,33CL,33CRを含む。
【0060】
表示装置40は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置40は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0061】
入力装置42は、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、各種情報画像を表示する表示装置40のディスプレイに実装されるタッチパネル、レバー装置26A~26Cのレバー部の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、回転ダイヤル等を含む。入力装置42に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0062】
音声出力装置43は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、所定の音を出力する。音声出力装置43は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力する。
【0063】
記憶装置47は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報を記憶する。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される、或いは、入力装置42等を通じて設定される目標施工面に関するデータを記憶していてもよい。当該目標施工面は、ショベル100のオペレータにより設定(保存)されてもよいし、施工管理者等により設定されてもよい。
【0064】
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよい。また、ブーム角度センサS1は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するシリンダセンサ等を含んでもよい。以下、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0065】
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0066】
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0067】
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(上部旋回体3或いは下部走行体1)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0068】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含んでよい。旋回状態センサS5による上部旋回体3の旋回角度や旋回角速度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0069】
撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像する。撮像装置S6は、ショベル100の前方を撮像するカメラS6F、ショベル100の左方を撮像するカメラS6L、ショベル100の右方を撮像するカメラS6R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラS6Bを含む。
【0070】
カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、即ち、キャビン10の内部に取り付けられている。また、カメラS6Fは、例えば、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラS6Lは、例えば、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラS6Rは、例えば、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラS6Bは、例えば、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0071】
撮像装置S6は、ショベル100の周囲の様子を認識するための情報を取得する空間認識装置の一例である。撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)は、それぞれ、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、撮像装置S6は、ステレオカメラや距離画像カメラ等であってもよい。撮像装置S6による撮像画像は、表示装置40を介してコントローラ30に取り込まれる。
【0072】
また、撮像装置S6は、取得する画像情報に基づきショベル100の周囲の物体を検知する物体検知装置として機能してもよい。この場合、撮像装置S6は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知してよい。検知対象の物体には、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、穴等が含まれうる。また、撮像装置S6は、撮像装置S6又はショベル100から認識された物体までの距離を算出してもよい。物体検知装置としての撮像装置S6には、例えば、ステレオカメラ、距離画像センサ等が含まれうる。また、撮像装置S6に代えて、或いは、加えて、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detecting and Ranging)、赤外線センサ等の他の空間認識装置や物体検知装置が設けられてもよい。
【0073】
尚、撮像装置S6は、直接、コントローラ30と通信可能に接続されてもよい。
【0074】
測位装置P1は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置P1は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。また、測位装置P1の機能のうちの上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサにより代替されてもよい。
【0075】
通信装置T1は、基地局を末端とする移動体通信網、衛星通信網、インターネット網等を含む所定のネットワークを通じて外部機器と通信を行う。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等である。
【0076】
マシンガイダンス部50は、例えば、マシンガイダンス機能に関するショベル100の制御を実行する。マシンガイダンス部50は、例えば、目標施工面とアタッチメントの先端部、具体的には、エンドアタッチメントの作業部位との距離等の作業情報を、表示装置40や音声出力装置43等を通じて、オペレータに伝える。目標施工面に関するデータは、例えば、上述の如く、記憶装置47に予め記憶されている。目標施工面に関するデータは、例えば、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、そして、Z軸を北極の方向にとる三次元直交XYZ座標系である。オペレータは、施工現場の任意の点を基準点と定め、入力装置42を通じて、基準点との相対的な位置関係により目標施工面を設定してよい。バケット6の作業部位は、例えば、バケット6の爪先、バケット6の背面等である。また、エンドアタッチメントとして、バケット6の代わりに、例えば、ブレーカが採用される場合、ブレーカの先端部が作業部位に相当する。マシンガイダンス部50は、表示装置40、音声出力装置43等を通じて、作業情報をオペレータに通知し、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の操作をガイドする。
【0077】
また、マシンガイダンス部50は、例えば、マシンコントロール機能に関するショベル100の制御を実行する。マシンガイダンス部50は、例えば、オペレータが手動で掘削操作を行っているときに、目標施工面とバケット6の先端位置とが一致するように、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の少なくとも一つを自動的に動作させてもよい。
【0078】
マシンガイダンス部50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、撮像装置S6、測位装置P1、通信装置T1及び入力装置42等から情報を取得する。そして、マシンガイダンス部50は、例えば、取得した情報に基づき、バケット6と目標施工面との間の距離を算出し、音声出力装置43からの音声及び表示装置40に表示される画像により、バケット6と目標施工面との間の距離の程度をオペレータに通知したり、アタッチメントの先端部(具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位)が目標施工面に一致するように、アタッチメントの動作を自動的に制御したりする。マシンガイダンス部50は、当該マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する詳細な機能構成として、位置算出部51と、距離算出部52と、情報伝達部53と、自動制御部54とを含む。
【0079】
位置算出部51は、所定の測位対象の位置を算出する。例えば、位置算出部51は、アタッチメントの先端部、具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位の基準座標系における座標点を算出する。具体的には、位置算出部51は、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの俯仰角度(ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度)からバケット6の作業部位の座標点を算出する。
【0080】
距離算出部52は、2つの測位対象間の距離を算出する。例えば、距離算出部52は、アタッチメントの先端部、具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位と目標施工面との間の距離を算出する。また、距離算出部52は、バケット6の作業部位としての背面と目標施工面との間の角度(相対角度)を算出してもよい。
【0081】
情報伝達部53は、表示装置40や音声出力装置43等の所定の通知手段を通じて、各種情報をショベル100のオペレータに伝達(通知)する。情報伝達部53は、距離算出部52により算出された各種距離等の大きさ(程度)をショベル100のオペレータに通知する。例えば、表示装置40による視覚情報及び音声出力装置43による聴覚情報の少なくとも一方を用いて、バケット6の先端部と目標施工面との間の距離(の大きさ)をオペレータに伝える。また、情報伝達部53は、表示装置40による視覚情報及び音声出力装置43による聴覚情報の少なくとも一方を用いて、バケット6の作業部位としての背面と目標施工面との間の相対角度(の大きさ)をオペレータに伝えてもよい。
【0082】
具体的には、情報伝達部53は、音声出力装置43による断続音を用いて、バケット6の作業部位と目標施工面との間の距離(例えば、鉛直距離)の大きさをオペレータに伝える。この場合、情報伝達部53は、鉛直距離が小さくなるほど、断続音の間隔を短くし、鉛直距離が大きくなるほど、断続音の間隔を長くしてよい。また、情報伝達部53は、連続音を用いてもよく、音の高低、強弱等を変化させながら、鉛直距離の大きさの違いを表すようにしてもよい。また、情報伝達部53は、バケット6の先端部が目標施工面よりも低い位置になった、つまり、目標施工面を超えてしまった場合、音声出力装置43を通じて警報を発してもよい。当該警報は、例えば、断続音より顕著に大きい連続音である。
【0083】
また、情報伝達部53は、アタッチメントの先端部、具体的には、バケット6の作業部位と目標施工面との間の距離の大きさやバケット6の背面と目標施工面との間の相対角度の大きさ等を作業情報として表示装置40に表示させてもよい。表示装置40は、コントローラ30による制御下で、例えば、撮像装置S6から受信した画像データと共に、情報伝達部53から受信した作業情報を表示する。情報伝達部53は、例えば、アナログメータの画像やバーグラフインジケータの画像等を用いて、鉛直距離の大きさをオペレータに伝えるようにしてもよい。
【0084】
自動制御部54は、アクチュエータを自動的に動作させることでオペレータによるショベル100の手動操作を自動的に支援する。具体的には、自動制御部54は、後述の如く、複数の油圧アクチュエータ(具体的には、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、及びバケットシリンダ9)に対応する制御弁(具体的には、制御弁173、制御弁175L,175R、及び174)に作用するパイロット圧を個別に且つ自動的に調整することができる。これにより、自動制御部54は、それぞれの油圧アクチュエータを自動的に動作させることができる。自動制御部54によるマシンコントロール機能に関する制御は、例えば、入力装置42に含まれる所定のスイッチが押下された場合に実行されてよい。当該所定のスイッチは、例えば、マシンコントロールスイッチ(以下、「MC(Machine Control)スイッチ」)であり、ノブスイッチとして操作装置26(例えば、アーム5の操作に対応するレバー装置)のオペレータによる把持部の先端に配置されていてもよい。以下、MCスイッチが押下されている場合に、マシンコントロール機能が有効である前提で説明を進める。
【0085】
例えば、自動制御部54は、MCスイッチ等が押下されている場合、掘削作業や整形作業を支援するために、アームシリンダ8の動作に合わせて、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一方を自動的に伸縮させる。具体的には、自動制御部54は、オペレータが手動でアーム5の閉じ操作(以下、「アーム閉じ操作」)を行っている場合に、目標施工面とバケット6の爪先や背面等の作業部位の位置とが一致するようにブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一方を自動的に伸縮させる。この場合、オペレータは、例えば、アーム5の操作に対応するレバー装置をアーム閉じ操作するだけで、バケット6の爪先等を目標施工面に一致させながら、アーム5を閉じることができる。
【0086】
また、自動制御部54は、MCスイッチ等が押下されている場合、上部旋回体3を目標施工面に正対させるために旋回油圧モータ2A(アクチュエータの一例)を自動的に回転させてもよい。以下、コントローラ30(自動制御部54)による上部旋回体3を目標施工面に正対させる制御を「正対制御」と称する。これにより、オペレータ等は、所定のスイッチを押下するだけで、或いは、当該スイッチが押下された状態で、旋回操作に対応する後述のレバー装置26Cを操作するだけで、上部旋回体3を目標施工面に正対させることができる。また、オペレータは、MCスイッチを押下するだけで、上部旋回体3を目標施工面に正対させ且つ上述の目標施工面の掘削作業等に関するマシンコントロール機能を開始させることができる。
【0087】
例えば、ショベル100の上部旋回体3が目標施工面に正対している状態は、アタッチメントの動作に従い、アタッチメントの先端部(例えば、バケット6の作業部位としての爪先や背面等)を目標施工面(上り法面BS)の傾斜方向に沿って移動させることが可能な状態である。具体的には、ショベル100の上部旋回体3が目標施工面に正対している状態は、図4Bに示すように、ショベル100の旋回平面SFに鉛直なアタッチメントの稼動面(アタッチメント稼動面)AFが、円筒体CBに対応する目標施工面の法線を含む状態(換言すれば、当該法線に沿う状態)である。
【0088】
図4Aに示すように、ショベル100のアタッチメント稼動面AFが円筒体CBに対応する目標施工面の法線を含む状態にない場合、アタッチメントの先端部は、目標施工面を傾斜方向に移動させることができない。そのため、結果として、ショベル100は、目標施工面を適切に施工できない。これに対して、自動制御部54は、自動的に旋回油圧モータ2Aを回転させることで、図4Bに示すように、上部旋回体3を正対させることができる。これにより、ショベル100は、目標施工面を適切に施工することができる。
【0089】
自動制御部54は、正対制御において、例えば、バケット6の爪先の左端の座標点と目標施工面との間の鉛直距離(以下、「左端鉛直距離」)と、バケット6の爪先の右端の座標点と目標施工面との間の鉛直距離(以下、「右端鉛直距離」)とが等しくなった場合に、ショベルが目標施工面に正対していると判断する。また、自動制御部54は、左端鉛直距離と右端鉛直距離とが等しくなった場合(即ち、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差がゼロになった場合)ではなく、その差が所定値以下になった場合に、ショベル100が目標施工面に正対していると判断してもよい。
【0090】
また、自動制御部54は、正対制御において、例えば、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差に基づき、旋回油圧モータ2Aを動作させてもよい。具体的には、MCスイッチ等の所定のスイッチが押下された状態で旋回操作に対応するレバー装置26Cが操作されると、上部旋回体3を目標施工面に正対させる方向にレバー装置26Cが操作されたか否かを判断する。例えば、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が大きくなる方向にレバー装置26Cが操作された場合、自動制御部54は、正対制御を実行しない。一方で、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が小さくなる方向に旋回操作レバーが操作された場合、自動制御部54は、正対制御を実行する。その結果、自動制御部54は、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差が小さくなるように旋回油圧モータ2Aを動作させることができる。その後、自動制御部54は、その差が所定値以下或いはゼロになると、旋回油圧モータ2Aを停止させる。また、自動制御部54は、その差が所定値以下或いはゼロとなる旋回角度を目標角度として設定し、その目標角度と現在の旋回角度(具体的には、旋回状態センサS5の検出信号に基づく検出値)との角度差がゼロになるように、旋回油圧モータ2Aの動作制御を行ってもよい。この場合、旋回角度は、例えば、基準方向に対する上部旋回体3の前後軸の角度である。
【0091】
尚、上述の如く、旋回油圧モータ2Aの代わりに、旋回用電動機がショベル100に搭載される場合、自動制御部54は、旋回用電動機(アクチュエータの一例)を制御対象として、正対制御を行う。
【0092】
また、図3に示すように、マシンガイダンス部50は、更に、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56とを含んでもよい。
【0093】
旋回角度算出部55は、上部旋回体3の旋回角度を算出する。これにより、コントローラ30は、上部旋回体3の現在の向きを特定することができる。旋回角度算出部55は、例えば、測位装置P1に含まれるGNSSコンパスの出力信号に基づき、基準方向に対する上部旋回体3の前後軸の角度を旋回角度として算出する。また、旋回角度算出部55は、旋回状態センサS5の検出信号に基づき、旋回角度を算出してもよい。また、施工現場に基準点が設定されている場合、旋回角度算出部55は、旋回軸から基準点を見た方向を基準方向としてもよい。
【0094】
旋回角度は、基準方向に対するアタッチメント稼動面が延びる方向を示す。アタッチメント稼動面は、例えば、アタッチメントを縦断する仮想平面であり、旋回平面に垂直となるように配置される。旋回平面は、例えば、旋回軸に垂直な旋回フレームの底面を含む仮想平面である。コントローラ30(マシンガイダンス部50)は、例えば、アタッチメント稼動面が目標施工面の法線を含んでいると判断した場合に、上部旋回体3が目標施工面に正対していると判断する。
【0095】
相対角度算出部56は、上部旋回体3を目標施工面に正対させるために必要な旋回角度(相対角度)を算出する。相対角度は、例えば、上部旋回体3を目標施工面に正対させたときの上部旋回体3の前後軸の方向と、上部旋回体3の前後軸の現在の方向との間に形成される相対的な角度である。相対角度算出部56は、例えば、記憶装置47に記憶されている目標施工面に関するデータと、旋回角度算出部55により算出された旋回角度とに基づき、相対角度を算出する。
【0096】
自動制御部54は、MCスイッチ等の所定のスイッチが押下された状態で旋回操作に対応するレバー装置26Cが操作されると、上部旋回体3を目標施工面に正対させる方向に旋回操作されたか否かを判断する。自動制御部54は、上部旋回体3を目標施工面に正対させる方向に旋回操作されたと判断した場合、相対角度算出部56により算出された相対角度を目標角度として設定する。そして、自動制御部54は、レバー装置26Cが操作された後の旋回角度の変化が目標角度に達した場合、上部旋回体3が目標施工面に正対したと判断し、旋回油圧モータ2Aの動きを停止させてよい。これにより、自動制御部54は、図3に示す構成を前提として、上部旋回体3を目標施工面に正対させることができる。
【0097】
[ショベルの油圧システム]
次に、図5を参照して、本実施形態に係るショベル100の油圧システムについて説明する。
【0098】
図5は、本実施形態に係るショベル100の油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【0099】
尚、図5において、機械的動力系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系は、図2等の場合と同様、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。
【0100】
当該油圧回路により実現される油圧システムは、エンジン11により駆動されるメインポンプ14L,14Rのそれぞれから、センタバイパス油路C1L,C1R、パラレル油路C2L,C2Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0101】
センタバイパス油路C1Lは、メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁171,173,175L,176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0102】
センタバイパス油路C1Rは、メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁172,174,175R,176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0103】
制御弁171は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を走行油圧モータ1Lへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
【0104】
制御弁172は、メインポンプ14Rから吐出される作動油を走行油圧モータ1Rへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0105】
制御弁173は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0106】
制御弁174は、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0107】
制御弁175L,175Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0108】
制御弁176L,176Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させる。
【0109】
制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、それぞれ、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに給排される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り換えたりする。
【0110】
パラレル油路C2Lは、センタバイパス油路C1Lと並列的に、制御弁171,173,175L,176Lにメインポンプ14Lの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路C2Lは、制御弁171の上流側でセンタバイパス油路C1Lから分岐し、制御弁171,173,175L,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Lの作動油を供給可能に構成される。これにより、パラレル油路C2Lは、制御弁171,173,175Lの何れかによってセンタバイパス油路C1Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0111】
パラレル油路C2Rは、センタバイパス油路C1Rと並列的に、制御弁172,174,175R,176Rにメインポンプ14Rの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路C2Rは、制御弁172の上流側でセンタバイパス油路C1Rから分岐し、制御弁172,174,175R,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Rの作動油を供給可能に構成される。パラレル油路C2Rは、制御弁172,174,175Rの何れかによってセンタバイパス油路C1Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0112】
レギュレータ13L,13Rは、それぞれ、コントローラ30による制御下で、メインポンプ14L、14Rの斜板の傾転角を調節することによって、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節する。
【0113】
吐出圧センサ28Lは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することができる。
【0114】
センタバイパス油路C1L,C1Rにおいて、最も下流にある制御弁176L,176Rのそれぞれと作動油タンクとの間には、ネガティブコントロール絞り(以下、「ネガコン絞り」)18L,18Rが設けられる。これにより、メインポンプ14L,14Rにより吐出された作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rで制限される。そして、ネガコン絞り18L、18Rは、レギュレータ13L,13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」)を発生させる。
【0115】
ネガコン圧センサ19L,19Rは、ネガコン圧を検出し、検出されたネガコン圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0116】
コントローラ30は、吐出圧センサ28L,28Rにより検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御し、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、レギュレータ13Lを制御し、メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、吐出量を減少させてよい。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14L,14Rの吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14L,14Rの全馬力制御を行うことができる。
【0117】
また、コントローラ30は、ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されるネガコン圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することにより、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させる。
【0118】
具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図5に示す状態)の場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、センタバイパス油路C1L,C1Rを通ってネガコン絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンタバイパス油路C1L,C1Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0119】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。
【0120】
[ショベルの油圧システムにおけるマシンコントロール機能に関する構成の詳細]
次に、図6図6A図6C)を参照して、ショベル100の油圧システムにおけるマシンコントロール機能に関する構成の詳細について説明する。
【0121】
図6A図6Cは、本実施形態に係るショベル100の油圧システムにおけるブーム4、バケット6、及び上部旋回体3に関する操作系の構成部分の一例を概略的に示す図である。具体的には、図6Aは、ブームシリンダ7を油圧制御する制御弁175L,175Rにパイロット圧を作用させるパイロット回路の一例を示す図である。また、図6Bは、バケットシリンダ9を油圧制御する制御弁174にパイロット圧を作用させるパイロット回路の一例を示す図である。また、図6Cは、旋回油圧モータ2Aを油圧制御する制御弁173にパイロット圧を作用させるパイロット回路の一例を示す図である。
【0122】
例えば、図6Aに示すように、レバー装置26Aは、オペレータ等がブーム4に対応するブームシリンダ7を操作するために用いられる。レバー装置26Aは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、その操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
【0123】
シャトル弁32ALは、二つの入口ポートが、それぞれ、ブーム4の上げ方向の操作(以下、「ブーム上げ操作」)に対応するレバー装置26Aの二次側のパイロットラインと、比例弁31ALの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに接続される。
【0124】
シャトル弁32ARは、二つの入口ポートが、それぞれ、ブーム4の下げ方向の操作(以下、「ブーム下げ操作」)に対応するレバー装置26Aの二次側のパイロットラインと、比例弁31ARの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁175Rの右側のパイロットポートに接続される。
【0125】
つまり、レバー装置26Aは、シャトル弁32AL,32ARを介して、操作内容(例えば、操作方向及び操作量)に応じたパイロット圧を制御弁175L,175Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、レバー装置26Aは、ブーム上げ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32ALの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32ALを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用させる。また、レバー装置26Aは、ブーム下げ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32ARの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32ARを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用させる。
【0126】
比例弁31ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ALは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32ALの他方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁31ALは、シャトル弁32ALを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
【0127】
比例弁31ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ARは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32ARの他方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁31ARは、シャトル弁32ARを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
【0128】
つまり、比例弁31AL,31ARは、レバー装置26Aの操作状態に依らず、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
【0129】
比例弁33ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁33ALは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、レバー装置26Aのブーム上げ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、比例弁33ALは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、レバー装置26Aのブーム上げ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32ALの一方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁33ALは、レバー装置26Aでブーム上げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、ブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33ALは、レバー装置26Aでブーム上げ操作がされている場合であっても、シャトル弁32ALの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31ALからシャトル弁32ALの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31AL及び比例弁33ALを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用させることができる。
【0130】
比例弁33ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁33ARは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、レバー装置26Aのブーム下げ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、比例弁33ARは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、レバー装置26Aのブーム下げ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32ARの一方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁33ARは、レバー装置26Aでブーム下げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、ブーム下げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33ARは、レバー装置26Aでブーム下げ操作がされている場合であっても、シャトル弁32ARの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31ARからシャトル弁32ARの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31AR及び比例弁33ARを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに作用させることができる。
【0131】
このように、比例弁33AL,33ARは、レバー装置26Aの操作状態に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33AL,33ARは、シャトル弁32AL,32ARの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31AL,31ARのパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを通じて確実に制御弁175L,175Rのパイロットポートに作用するように補助することができる。
【0132】
尚、コントローラ30は、比例弁33ALを制御する代わりに、比例弁31ARを制御することによって、レバー装置26Aのブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、レバー装置26Aでブーム上げ操作が行われる場合に、比例弁31ARを制御し、比例弁31ARからシャトル弁32ARを介して制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、レバー装置26Aからシャトル弁32ALを介して制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁175L,175Rを強制的に中立位置に近づけて、レバー装置26Aのブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、比例弁33ARを制御する代わりに、比例弁31ALを制御することによって、レバー装置26Aのブーム下げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
【0133】
操作圧センサ29Aは、オペレータによるレバー装置26Aに対する操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、レバー装置26Aに対する操作内容を把握できる。
【0134】
コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Aに対するブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Aに対するブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに供給できる。即ち、コントローラ30は、ブーム4の上げ下げの動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
【0135】
また、図6Bに示すように、レバー装置26Bは、オペレータ等がバケット6に対応するバケットシリンダ9を操作するために用いられる。レバー装置26Bは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、その操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
【0136】
シャトル弁32BLは、二つの入口ポートが、それぞれ、バケット6の閉じ方向の操作(以下、「バケット閉じ操作」)に対応するレバー装置26Bの二次側のパイロットラインと、比例弁31BLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁174の左側のパイロットポートに接続される。
【0137】
シャトル弁32BRは、二つの入口ポートが、それぞれ、バケット6の開き方向の操作(以下、「バケット開き操作」)に対応するレバー装置26Bの二次側のパイロットラインと、比例弁31BRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁174の右側のパイロットポートに接続される。
【0138】
つまり、レバー装置26Bは、シャトル弁32BL,32BRを介して、操作内容に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。具体的には、レバー装置26Bは、バケット閉じ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32BLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32BLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに作用させる。また、レバー装置26Bは、バケット開き操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32BRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32BRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用させる。
【0139】
比例弁31BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32BLの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31BLは、シャトル弁32BLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
【0140】
比例弁31BRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32BRの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31BRは、シャトル弁32BRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
【0141】
つまり、比例弁31BL,31BRは、レバー装置26Bの操作状態に依らず、制御弁174を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
【0142】
比例弁33BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁33BLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、レバー装置26Bのバケット閉じ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、比例弁33BLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、レバー装置26Bのバケット閉じ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32BLの一方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁33BLは、レバー装置26Bでバケット閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、バケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33BLは、レバー装置26Bでバケット閉じ操作がされている場合であっても、シャトル弁32BLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31BLからシャトル弁32BLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31BL及び比例弁33BLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁174のバケット閉じ側のパイロットポートに作用させることができる。
【0143】
比例弁33BRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁33BRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、レバー装置26Bのバケット開き操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、比例弁33BRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、レバー装置26Bのバケット開き操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32BRの一方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁33BRは、レバー装置26Bでバケット開き操作が行われている場合であっても、必要に応じて、バケット開き操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33BRは、レバー装置26Bでバケット開き操作がされている場合であっても、シャトル弁32BRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31BRからシャトル弁32BRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31BR及び比例弁33BRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁174のバケット開き側のパイロットポートに作用させることができる。
【0144】
このように、比例弁33BL,33BRは、レバー装置26Bの操作状態に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33BL,33BRは、シャトル弁32BL,32BRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31BL,31BRのパイロット圧がシャトル弁32BL,32BRを通じて確実に制御弁174のパイロットポートに作用するように補助することができる。
【0145】
尚、コントローラ30は、比例弁33BLを制御する代わりに、比例弁31BRを制御することによって、レバー装置26Bのバケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、レバー装置26Bでバケット閉じ操作が行われる場合に、比例弁31BRを制御し、比例弁31BRからシャトル弁32BRを介して制御弁174のバケット開き側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、レバー装置26Bからシャトル弁32BLを介して制御弁174のバケット閉じ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁174のバケット開き側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁174を強制的に中立位置に近づけて、レバー装置26Bのバケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、比例弁33BRを制御する代わりに、比例弁31BLを制御することによって、レバー装置26Bのバケット開き操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
【0146】
操作圧センサ29Bは、オペレータによるレバー装置26Bに対する操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、レバー装置26Bの操作内容を把握できる。
【0147】
コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Bに対するバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Bに対するバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、バケット6の開閉動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
【0148】
また、例えば、図6Cに示すように、レバー装置26Cは、オペレータ等が上部旋回体3(旋回機構2)に対応する旋回油圧モータ2Aを操作するために用いられる。レバー装置26Cは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、その操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
【0149】
シャトル弁32CLは、二つの入口ポートが、それぞれ、上部旋回体3の左方向の旋回操作(以下、「左旋回操作」)に対応するレバー装置26Cの二次側のパイロットラインと、比例弁31CLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁173の左側のパイロットポートに接続される。
【0150】
シャトル弁32CRは、二つの入口ポートが、それぞれ、上部旋回体3の右方向の旋回操作(以下、「右旋回操作」)に対応するレバー装置26Cの二次側のパイロットラインと、比例弁31CRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁173の右側のパイロットポートに接続される。
【0151】
つまり、レバー装置26Cは、シャトル弁32CL,32CRを介して、その操作内容に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。具体的には、レバー装置26Cは、左旋回操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32CLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32CLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに作用させる。また、レバー装置26Cは、右旋回操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32CRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32CRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに作用させる。
【0152】
比例弁31CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32CLの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CLは、シャトル弁32CLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
【0153】
比例弁31CRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32CRの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CRは、シャトル弁32CRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
【0154】
つまり、比例弁31CL,31CRは、レバー装置26Cの操作状態に依らず、制御弁173を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
【0155】
比例弁33CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁33CLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、レバー装置26Cの左旋回操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、比例弁33CLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、レバー装置26Cの左旋回操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32CLの一方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁33CLは、レバー装置26Cで左旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33CLは、レバー装置26Cで左旋回操作がされている場合であっても、シャトル弁32CLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31CLからシャトル弁32CLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31CL及び比例弁33CLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁173の左旋回側のパイロットポートに作用させることができる。
【0156】
比例弁33CRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁33CRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、レバー装置26Cの右旋回操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、比例弁33CRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、レバー装置26Cの右旋回操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32CRの一方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁33CRは、レバー装置26Cで右旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、右旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33CRは、レバー装置26Cで右旋回操作がされている場合であっても、シャトル弁32CRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31CRからシャトル弁32CRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31CR及び比例弁33CRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁173の右旋回側のパイロットポートに作用させることができる。
【0157】
このように、比例弁33CL,33CRは、レバー装置26Cの操作状態に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、比例弁33CL,33CRは、シャトル弁32CL,32CRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31CL,31CRのパイロット圧がシャトル弁32CL,32CRを通じて確実に制御弁173のパイロットポートに作用するように補助することができる。
【0158】
尚、コントローラ30は、比例弁33CLを制御する代わりに、比例弁31CRを制御することによって、レバー装置26Cの左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、レバー装置26Cで左旋回操作が行われる場合に、比例弁31CRを制御し、比例弁31CRからシャトル弁32CRを介して制御弁173の右旋回側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、レバー装置26Cからシャトル弁32CLを介して制御弁173の左旋回側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁173の右旋回側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁173を強制的に中立位置に近づけて、レバー装置26Cの左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、比例弁33CRを制御する代わりに、比例弁31CLを制御することによって、レバー装置26Cの右旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
【0159】
操作圧センサ29Cは、オペレータによるレバー装置26Cに対する操作状態を圧力として検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、レバー装置26Cに対する操作内容を把握できる。
【0160】
コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Cに対する左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Cに対する右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、上部旋回体3の左右方向への旋回動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
【0161】
尚、ショベル100は、更に、アーム5を自動的に開閉させる構成、及び、下部走行体1を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、油圧システムのうち、アームシリンダ8の操作系に関する構成部分、走行油圧モータ1Lの操作系に関する構成部分、及び、走行油圧モータ1Rの操作系に関する構成部分は、ブームシリンダ7の操作系に関する構成部分等(図6A図6C)と同様に構成されてよい。これにより、コントローラ30は、対応する比例弁31や比例弁33に制御電流を出力することで、アーム5の動作や下部走行体1の走行動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
【0162】
[正対処理]
次に、図7図11を参照して、コントローラ30による上部旋回体3を目標施工面に正対させる制御処理(以下、「正対処理」)について説明する。
【0163】
<正対処理の一例>
図7は、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30による正対処理の一例を示すフローチャートである。図8図8A図8B)、図9は、正対処理が実行される際のショベルの動作工程の一例及び他の例を示す図である。具体的には、図8A図8Bは、ショベル100が正面の上り傾斜面ESの施工が完了した場合に、次の施工位置に向かうため、目標施工面の向き(つまり、目標施工面が延在する方向)に沿って、施工完了領域CSから未施工領域NSに面する位置に移動する動作工程(以下、「並行移動工程」)を示す図である。また、図9は、目標施工面の施工中に、ショベル100が目標施工面から離れる方向に旋回動作を行い、バケット6に収容した土砂等を施工対象の上り傾斜面ESから離れた位置に排土した後、目標施工面に近づく方向に旋回動作を行い、再度、目標施工面の施工を再開する動作工程(以下、「排土工程」)を示す図である。
【0164】
図7のフローチャートによる正対処理は、例えば、MCスイッチ等が押下されており、且つ、アタッチメントが目標施工面から離れる方向に、上部旋回体3が旋回していない場合に、所定の処理周期ごとに繰り返し実行される。このとき、コントローラ30は、例えば、上述の如く、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が大きくなる方向であるか否かにより、目標施工面に対してアタッチメントが近づく方向であるか離れる方向であるかを判定することができる。
【0165】
ステップST1にて、マシンガイダンス部50は、正対ずれが生じているか否かを判定する。例えば、マシンガイダンス部50は、記憶装置47に予め記憶されている目標施工面に関する情報と、向き検出装置としての測位装置P1の出力とに基づいて正対ずれが生じているか否かを判定する。目標施工面に関する情報は、目標施工面の向き(換言すれば、目標施工面が延在する方向)に関する情報を含む。測位装置P1は、上部旋回体3の向きに関する情報を出力する。具体的には、マシンガイダンス部50は、例えば、上述の図4Aに示すように、アタッチメント稼動面AFが目標施工面の法線を含んでいない状態である場合に、目標施工面とショベル100の上部旋回体3との正対ずれが生じていると判定する。換言すれば、目標施工面とショベル100の上部旋回体3との正対ずれが生じている状態は、目標施工面の向きを表す線分と上部旋回体3の向き、つまり、上部旋回体3の前後軸を表す線分との間に形成される角度が90度でない状態に対応する。よって、マシンガイダンス部50は、目標施工面の向きを表す線分と、上部旋回体3の向きを表す線分との間に形成される角度に基づき、正対ずれの有無を判定してもよい。マシンガイダンス部50は、正対ずれが生じている場合、ステップST2に進み、正対ずれが生じていない場合、今回の処理を終了する。
【0166】
ステップST2にて、マシンガイダンス部50は、ショベル100の周囲に障害物が存在しないか否かを判定する。例えば、マシンガイダンス部50は、撮像装置S6による撮像画像に対して所定の画像認識処理を施すことにより、撮像画像内に所定の障害物に関する画像が存在するか否かを判定する。このとき、所定の障害物は、例えば、人、動物、他の作業機械、建造物、現場資材等である。そして、マシンガイダンス部50は、ショベル100の周囲に設定される所定範囲に関する画像内に所定の障害物に関する画像が存在しないと判定した場合、ショベル100の周囲に障害物が存在しないと判定する。このとき、所定範囲は、例えば、上部旋回体3を目標施工面に正対させるためにショベル100を動作させた場合に、ショベル100に接触してしまう物体が存在し得る範囲であり、予め規定される。
【0167】
ステップST3にて、マシンガイダンス部50は、正対制御を実行する。例えば、上部旋回体3を左方向に旋回させることにより、上部旋回体3を目標施工面に正対させる場合、マシンガイダンス部50(自動制御部54)は、比例弁31CL(図6C参照)に対して制御指令(例えば、電流指令としての制御電流)を出力する。これに応じて、比例弁31CLは、パイロットポンプ15から供給される作動油を利用して、制御電流に対応するパイロット圧を生成し、シャトル弁32CLを介して、制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。左側パイロットポートでパイロット圧を受けた制御弁173は、右方向に変位し、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aの第1ポート2A1に流入させると共に、第2ポート2A2から流出する作動油を作動油タンクに流出させる。その結果、旋回油圧モータ2Aは、順方向に回転し、旋回軸回りに上部旋回体3を左方向に旋回させる。その後、自動制御部54は、ショベル100が正対していると判断すると、比例弁31CLに対する制御電流の出力を中止し、制御弁173の左側パイロットポートに作用しているパイロット圧を低減させる。制御弁173は、左側パイロットポートに作用するパイロット圧が低減されると、左方向に変位して中立位置に戻り、メインポンプ14Lから旋回油圧モータ2Aの第1ポート2A1に向かう作動油の流れを遮断すると共に、第2ポート2A2から作動油タンクに向かう作動油の流れを遮断する。その結果、旋回油圧モータ2Aは、順方向への回転を停止し、上部旋回体3の左方向への旋回を停止させる。上部旋回体3を右方向に旋回させる場合についても同様である。これにより、マシンガイダンス部50は、ショベル100の上部旋回体3を目標施工面に正対する状態にさせることができる。
【0168】
このように、本実施形態では、コントローラ30(マシンガイダンス部50)は、例えば、MCスイッチ等が押下されており、且つ、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向に旋回していない場合、正対処理を繰り返す。つまり、コントローラ30は、マシンコントロール機能が有効な状態で、且つ、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向に旋回していない場合、ショベル100が目標施工面に正対している状態を維持させる。これにより、コントローラ30は、各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等)を動作させていても、自動的に、上部旋回体3が目標施工面に正対する状態を維持させることができる。
【0169】
例えば、ショベル100は、マシンコントロール機能を用いて、オペレータによるアーム操作に応じて、目標施工面の施工のためにアタッチメントを動作させている場合に、下部走行体1の位置する地面の状態によっては、機体の姿勢がぶれる可能性がありうる。
【0170】
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、アタッチメントが動作している(つまり、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも一つにより、アタッチメントが駆動されている)場合に、上部旋回体3が目標施工面に正対する状態を維持するように、正対制御を行う。これにより、コントローラ30は、アタッチメントの動作時に、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させることができる。そのため、ショベル100は、より適切に目標施工面の施工を行うことができる。また、ショベル100は、オペレータ等による操作を要することなく、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させるため、オペレータ等が感じる煩わしさを低減できる。
【0171】
また、例えば、図8A図8Bに示すように、平面視で目標施工面が曲がっている、つまり、目標施工面の向きが場所によって異なる場合がありうる。このような場合、オペレータ等は、ショベル100の並列移動工程において、下部走行体1による移動方向を目標施工面の向きの変化に合わせるように手動操作をする必要がある。そのため、ショベル100の移動開始前の位置で目標施工面に対する上部旋回体3の正対状態が確立されていても、移動によって、その状態が解消されてしまう可能性が高くなる。また、目標施工面の向きが変化しない場合であっても、下部走行体1の移動方向を目標施工面の向きに完全に一致させるのは、容易ではなく、結果として、目標施工面に対する上部旋回体3の正対状態が解消されてしまう可能性もある。
【0172】
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、下部走行体1が動作している場合(つまり、一対の走行油圧モータ1A,1Bのうちの少なくとも一方により、下部走行体1が駆動されている場合)、具体的には、下部走行体1が目標施工面の向きに沿って並列移動(走行)している場合に、上部旋回体3が目標施工面に正対する状態を維持するように、正対制御を行う。これにより、コントローラ30は、下部走行体1の走行動作時に、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させることができる。そのため、ショベル100は、図8A図8Bに示すように、目標施工面の向きが場所によって変化する場合や、下部走行体1の移動方向を目標施工面の向きに合わせることができなかった場合等であっても、ある位置の施工完了後、並列移動を行い、再度、施工を開始するという工程の繰り返しの中で、常時、目標施工面に対する上部旋回体3の正対状態を維持させることができる。また、ショベル100は、ショベル100の並行移動工程中において、オペレータ等による操作を要することなく、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させるため、オペレータ等が感じる煩わしさを低減できる。
【0173】
また、例えば、並列移動後、次の施工場所に到着してから正対制御を行うような制御態様では、次の施工場所で正対制御が完了するまでの待ち時間が生じてしまう可能性があるところ、本実施形態では、そのような待ち時間を抑制することができる。
【0174】
また、図8Bに示すように、コントローラ30は、ショベル100の並列移動工程において、正対制御に加えて、ショベル100の走行軌道の制御を行ってもよい。
【0175】
コントローラ30は、目標施工面に基づき、下部走行体1の走行軌道の目標(以下、「走行目標軌道」)TTを生成してよい。下部走行体1の走行軌道は、下部走行体1の走行に伴って、下部走行体1の所定部位が描く軌道であってよい。具体的には、コントローラ30は、法肩TSから法尻FSまでバケット6の作業部位を目標施工面に沿って移動させることが可能なように、走行目標軌道TTを生成してよい。また、走行目標軌道TTは、施工対象の法面の作業開始位置から作業終了位置までの間に亘って生成されてよい。例えば、コントローラ30は、アタッチメントATの先端部(バケット6の作業部位)が目標施工面の傾斜に沿って稼動可能な範囲(以下、「Att稼動可能範囲」)ORの上限UL及び下限LLとの間に、目標施工面の法肩TS及び法尻FSが含まれるように、走行目標軌道TTを生成してよい。これにより、ショベル100は、どの施工場所に走行移動しても、法肩TSから法尻FSまでの全体に亘って、アタッチメントATの先端部(バケット6の作業部位)を目標施工面に沿って移動させることができる。そのため、ショベル100による法面施工の作業性を向上させることができる。
【0176】
コントローラ30は、例えば、施工対象の法面の作業開始位置から作業終了位置までの間に亘る走行目標軌道TT上に、ショベル100が施工を行う場所に対応する中間目標位置TP1~TP4を設定する。そして、コントローラ30は、例えば、オペレータの走行操作に応じて、現在の施工場所に対応する中間位置から次に施工場所に対応する中間位置まで、走行目標軌道TTに沿って走行移動するように、クローラ1CL,1CRを自動制御する。具体的には、コントローラ30は、走行油圧モータ2ML,2MRを駆動する制御弁171,172に対応する比例弁31を制御することにより、下部走行体1の自動運転機能(マシンコントロール機能)を実現する。
【0177】
また、コントローラ30は、走行目標軌道TTに対する誤差の許容範囲(以下、「許容誤差範囲」)TRを設定してよい。例えば、施工現場の路面は凹凸が相対的に大きく、相対的に高い精度で制御がなされても、走行目標軌道TTに沿って走行できるとは限らないからである。具体的には、コントローラ30は、走行目標軌道TTに対応するAtt稼動可能範囲ORと、目標施工面の法肩TS及び法尻FSとの位置関係に基づき、許容誤差範囲TRを設定してよい。これにより、コントローラ30は、走行目標軌道TTからのある程度の誤差を許容しつつ、Att稼動可能範囲ORの中に法肩TS及び法尻FSが収まるように、ショベル100の走行軌道を制御することができる。
【0178】
また、例えば、図9に示すように、ある場所の施工開始時に、目標施工面に対する上部旋回体3の正対状態が確立されていても、排土工程が行われると、その状態が解消される。そのため、オペレータ等は、排土工程の終了時に、再度、目標施工面に対して上部旋回体3を正対させる必要が生じる。
【0179】
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、バケット6の土砂等が排土された後、オペレータの旋回操作に応じて、上部旋回体3が目標施工面に近づく方向に旋回する(旋回動作を開始する)場合、つまり、上部旋回体3が目標施工面に近づく方向に上部旋回体3が旋回操作された場合、正対制御を開始する。換言すれば、ショベル100は、排土工程において、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向に旋回された場合や、その後、排土動作が行われる場合、つまり、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態の維持しない意図の操作が行われる場合を除き、上部旋回体3が目標施工面に対して正対している状態を維持させようとする。これにより、ショベル100は、図9のように、排土工程で、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向に旋回し、目標施工面に対する正対状態が解消される場合であっても、再度、上部旋回体3を目標施工面に対して正対する状態に戻すことができる。また、ショベル100は、上部旋回体3が目標施工面に近づく方向の旋回動作中において、オペレータ等による操作を支援する態様で、上部旋回体3を目標施工面に正対させるため、オペレータ等が感じる煩わしさを低減できる。
【0180】
また、例えば、排土工程の終了後、上部旋回体3の旋回動作が停止してから正対制御を行うような制御態様では、施工作業を再開させるまでの待ち時間が生じてしまう可能性があるところ、本実施形態では、そのような待ち時間を抑制することができる。
【0181】
<正対処理の他の例>
図10は、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30による正対処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる正対処理は、例えば、マシンコントロール機能が有効な状態で、且つ、ショベル100の並列移動工程が開始された場合に開始される。このとき、コントローラ30(マシンガイダンス部50)は、操作装置26に対する操作状態や、撮像装置S6の撮像画像等に基づき、ショベル100(下部走行体1)が目標施工面に沿って次の施工場所に移動を開始したことを判定してよい。
【0182】
ステップST11~ST13は、図7のステップST1~ST3の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0183】
ステップST13の処理の後、或いは、ステップST11,ST12の条件が成立しなかった場合(ステップST11のNO、或いは、ステップST12のNOの場合)に、ステップST14にて、マシンガイダンス部50は、マシンコントロール機能が有効な状態で、且つ、並列移動が継続中であるか否かを判定する。マシンガイダンス部50は、当該条件が成立する場合、ステップST11に戻り、本フローチャートによる処理を繰り返し、当該条件が成立しない場合、本フローチャートによる処理を終了する。
【0184】
このように、コントローラ30は、図7の場合と異なり、具体的に、ショベル100の目標施工面に沿った並列移動の開始の有無を判定した上で、並列移動工程の間、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させてもよい。つまり、コントローラ30は、下部走行体1が並列移動工程に対応する動作を行っている場合に、上部旋回体3が目標施工面に正対する状態を維持するように、正対制御を行う。これにより、ショベル100は、図7の正対処理が適用される場合と同様、ある位置の施工完了後、並列移動を行い、再度、施工を開始するという工程の繰り返しの中で、常時、目標施工面に対する上部旋回体3の正対状態を維持させることができる。また、ショベル100は、ショベル100の並行移動工程中において、オペレータ等による操作を要することなく、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させるため、オペレータ等が感じる煩わしさを低減できる。
【0185】
<正対処理の更に他の例>
図11は、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30による正対処理の更に他の例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、マシンコントロール機能が有効な状態で、且つ、上部旋回体3が目標施工面に近づく方向の旋回動作を開始した場合に開始される。
【0186】
ステップST21~ST23は、図7のステップST1~ST3と同じであるため、説明を省略する。
【0187】
ステップS23の処理の後、或いは、ステップST21,ST22の条件が成立しなかった場合(ステップST21のNO、或いは、ステップS22のNOの場合)に、ステップST24にて、マシンガイダンス部50は、マシンコントロール機能が無効になった、或いは、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向の旋回動作を開始したか否かを判定する。ステップST24にて、マシンガイダンス部50は、当該条件が成立しない場合(つまり、マシンコントロール機能が有効で、且つ、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向の旋回動作を開始していない場合)、ステップST21に戻り、本フローチャートによる処理を繰り返す。一方、マシンガイダンス部50は、当該条件が成立する場合(つまり、マシンコントロール機能が無効になった、或いは、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向の旋回動作を開始した場合)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0188】
このように、コントローラ30は、図7と異なり、具体的に、ショベル100の上部旋回体3が目標施工面に近づく方向及び離れる方向の旋回動作(旋回操作)の開始の有無を判定する。コントローラ30は、その判定結果に基づき、アタッチメントが目標施工面に近づく方向に上部旋回体3が旋回操作された場合(即ち、アタッチメントが目標施工面に近づく方向に旋回動作を開始した場合)に、正対制御を開始する。そして、コントローラ30は、その後のアタッチメントによる施工工程を経て、アタッチメントが目標施工面から離れる方向に上部旋回体3が旋回操作されるまで(即ち、アタッチメントが目標施工面から離れる方向に上部旋回体3が旋回動作を開始するまで)の間、正対制御を継続し、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させてもよい。これにより、ショベル100は、図7の正対処理が適用される場合と同様、目標施工面の施工に際して、アタッチメントが動作している場合に、上部旋回体3の正対状態を維持させることができる。そのため、ショベル100は、より適切に目標施工面の施工を行うことができる。また、ショベル100は、オペレータ等による操作を要することなく、上部旋回体3の目標施工面に対する正対状態を維持させるため、オペレータ等が感じる煩わしさを低減できる。また、ショベル100は、図7の正対処理が適用される場合と同様、排土工程で、上部旋回体3が目標施工面から離れる方向に旋回し、目標施工面に対する正対状態が解消される場合であっても、再度、上部旋回体3を目標施工面に対して正対する状態に戻すことができる。また、ショベル100は、上部旋回体3が目標施工面に近づく方向の旋回動作中において、オペレータ等による操作を支援する態様で、上部旋回体3を目標施工面に正対させるため、オペレータ等が感じる煩わしさを低減できる。
【0189】
[ショベルの自律運転機能に関する構成]
次に、図12図12A図12C)を参照して、ショベル100の自律運転機能に関する構成について説明する。
【0190】
図12A図12Cは、ショベル100の自律運転機能に関する構成の一例を示す図である。具体的には、図12Aは、下部走行体1の自律運転機能に関する構成部分の一例を示す図である。図12B図12Cは、上部旋回体3及びアタッチメントATの自律運転機能に関する構成部分の一例を示す図である。
【0191】
本例では、コントローラ30は、姿勢検出装置、入力装置42、撮像装置S6、測位装置P1、及び異常検知センサ74等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31及び比例弁33等に制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回状態センサS5を含む。
【0192】
コントローラ30は、目標施工面設定部F1と、作業終了目標位置設定部F2と、走行目標軌道生成部F3と、異常監視部F4と、停止判定部F5と、姿勢検出部F6と、中間目標設定部F7、位置算出部F8と、比較部F9と、物体検知部F10と、移動指令生成部F11と、速度算出部F12と、速度制限部F13と、流量指令生成部F14とを含む。また、コントローラ30は、Att目標軌道更新部F15と、現在爪先位置算出部F16と、次爪先位置算出部F17と、爪先速度指令値生成部F18と、爪先速度指令値制限部F19と、指令値算出部F20と、ブーム電流指令生成部F21と、ブームスプール変位量算出部F22と、ブーム角度算出部F23と、アーム電流指令生成部F31と、アームスプール変位量算出部F32と、アーム角度算出部F33と、バケット電流指令生成部F41と、バケットスプール変位量算出部F42と、バケット角度算出部F43と、旋回電流指令生成部F51と、旋回スプール変位量算出部F52と、旋回角度算出部F53とを含む。
【0193】
目標施工面設定部F1は、入力装置42の出力、即ち、入力装置42で受け付けられる操作入力に応じて、目標施工面を設定する。目標施工面設定部F1は、通信装置T1を通じて外部装置(例えば、後述の管理装置300)から受信される情報に基づき、目標施工面を設定してもよい。
【0194】
作業終了目標位置設定部F2は、所定の作業の終了位置に対応するショベル100(下部走行体1)の自律走行に関する目標位置(以下、「作業終了目標位置」)を設定するように構成されている。例えば、作業終了目標位置設定部F2は、図8Bのように、ショベル100を目標施工面に並列して自律走行させながら、法面の施工作業を行う際の施工対象の法面における作業終了位置に対応する作業終了目標位置を設定してよい。作業終了位置は、入力装置42から取り込まれる目標施工面に関する情報に含まれていてもよいし、目標施工面に基づき、自動で生成されてもよい。
【0195】
走行目標軌道生成部F3は、目標施工面の形状と、作業終了目標位置とに基づき、ショベル100(下部走行体1)の自律走行に関する走行目標軌道(例えば、図8Bの走行目標軌道TT)を生成する。また、走行目標軌道生成部F3は、生成する走行目標軌道に対する許容誤差範囲(例えば、図8Bの許容誤差範囲TR)を設定してもよい。
【0196】
異常監視部F4は、ショベル100の異常を監視するように構成されている。本例では、異常監視部F4は、異常検知センサ74の出力に基づき、ショベル100の異常の度合いを決定する。異常検知センサ74は、例えば、エンジン11の異常を検知するセンサ、作動油の温度に関する異常を検知するセンサ、及びコントローラ30の異常を検知するセンサ等の少なくとも一つを含んでよい。
【0197】
停止判定部F5は、各種情報に基づきショベル100を停止させる必要があるか否かを判定するように構成されている。本例では、停止判定部F5は、異常監視部F4の出力に基づき、自律走行中のショベル100を停止させる必要があるか否かを判定する。具体的には、停止判定部F5は、例えば、異常監視部F4が決定したショベル100の異常の度合いが所定の閾値を上回った場合に、自律走行中のショベル100を停止させる必要があると判定する。この場合、コントローラ30は、例えば、走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mを制動制御し、走行油圧モータ2Mの回転を減速させ或いは停止させる。一方で、停止判定部F5は、例えば、異常監視部F4が決定したショベル100の異常の度合いが所定の閾値以下の場合、自律走行中のショベル100を停止させる必要がない、即ち、ショベル100の自律走行を継続させることができると判定する。また、ショベル100に人(オペレータ)が搭乗している場合には、停止判定部F5は、ショベル100を停止させる必要があるか否かに加え、自律走行を解除するか否かを判定してもよい。
【0198】
姿勢検出部F6は、ショベル100の姿勢に関する情報を検出するように構成されている。また、姿勢検出部F6は、ショベル100の姿勢が走行姿勢になっているか否かを判定してもよい。姿勢検出部F6は、ショベル100の姿勢が走行姿勢になっていると判定した場合に、ショベル100の自律走行の実行を許可するように構成されていてもよい。
【0199】
中間目標設定部F7は、ショベル100の自律走行に関する中間目標位置を設定するように構成されている(例えば、図8Bの中間目標位置TP1~TP4)。本例では、中間目標設定部F7は、姿勢検出部F6によってショベル100の姿勢が走行姿勢になっていると判定され、且つ、停止判定部F5によってショベル100を停止させる必要がないと判定された場合に、走行目標軌道上に一又は複数の中間目標位置を設定してよい。
【0200】
位置算出部F8は、ショベル100の現在位置を算出するように構成されている。本例では、位置算出部F8は、測位装置P1の出力に基づいてショベル100の現在位置を算出する。ショベルが法面作業を行っている場合には、作業終了目標位置設定部F2は、法面作業の終了位置を最終の目標位置として設定してもよい。そして、中間目標設定部F7は、法面作業の開始位置から終了位置までを複数の区間に分割し、各区間の終点を中間目標位置として設定してもよい。
【0201】
比較部F9は、中間目標設定部F7が設定した中間目標位置と、位置算出部F8が算出したショベル100の現在位置とを比較するように構成されている。
【0202】
物体検知部F10は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。本例では、物体検知部F10は、撮像装置S6の出力に基づき、ショベル100の周囲に存在する物体を検知する。そして、物体検知部F10は、自律走行中のショベル100の進行方向に存在する物体(例えば、人)を検知した場合、ショベル100の自律走行を停止させるための停止指令を生成する。
【0203】
移動指令生成部F11は、下部走行体1の走行移動に関する指令を生成するように構成されている。本例では、移動指令生成部F11は、比較部F9の比較結果に基づき、移動方向に関する指令や移動速度に関する指令(以下、「速度指令」)を生成する。例えば、移動指令生成部F11は、中間目標位置と、ショベル100の現在位置との差が大きいほど大きい速度指令を生成するように構成されてよい。また、移動指令生成部F11は、その差を零に近づける速度指令を生成するように構成されてよい。
【0204】
このようにして、コントローラ30は、例えば、それぞれの中間目標位置までショベル100を自律走行させると共にその場所で所定の作業を行わせ、次の中間位置に移動する態様を繰り返しながら、目標位置までの走行制御を実行する。また、移動指令生成部F11は、事前に入力された地形に関する情報と測位装置P1の検出値とに基づき、ショベル100が傾斜地に存在すると判断した場合、速度指令の値を変更してもよい。例えば、ショベル100が下り坂にいると判定した場合、移動指令生成部F11は、通常の速度よりも減速した速度に対応する速度指令値を生成してもよい。移動指令生成部F11は、撮像装置S6の出力に基づき、地面の傾斜等の地形に関する情報を取得してもよい。更に、撮像装置S6の出力に基づき、物体検知部F10により路面の凹凸が大きいと判定された場合(例えば、路面上に多数の石が存在していると判定された場合)も同様に、移動指令生成部F11は、通常の速度よりも減速した速度に対応する速度指令値を生成してもよい。このように、移動指令生成部F11は、走行ルート上における取得した路面に関する情報に基づき、速度指令の値を変更してもよい。例えば、河川敷において、ショベル100が砂地から砂利道へ移動する際にも、移動指令生成部F11は、自動的に速度指令の値を変更してもよい。これにより、移動指令生成部F11は、路面状況に対応して走行速度を変更できる。更に、移動指令生成部F11は、アタッチメントの動作に対応して速度指令値を生成してもよい。例えば、ショベル100が法面作業を行っている場合(具体的には、アタッチメントが法肩から法尻までの仕上げ作業を行っている場合)には、中間目標設定部F7は、バケット6が法尻に到達したと判定したときに、次の中間目標位置への移動開始を判定してよい。これにより、移動指令生成部F11は、次の中間目標位置までの速度指令を生成することができる。また、バケット6が法尻に到達した後で、ブーム4が所定高さまで上がったことを判定した場合に、中間目標設定部F7は、次の中間目標位置への移動開始を判定してもよい。そして、移動指令生成部F11は、次の中間目標位置までの速度指令を生成してもよい。このようにして、移動指令生成部F11は、アタッチメントの動作に対応して速度指令値を設定してもよい。
【0205】
更に、コントローラ30は、ショベル100の動作モードを設定するモード設定部を設け有していてもよい。この場合、ショベル100の動作モードとしてクレーンモードが設定された場合、或いは、低速高トルクモード等の低速モードが設定された場合には、移動指令生成部F11は、低速モードに対応した速度指令値を生成する。このように、移動指令生成部F11は、ショベル100の状態に応じて速度指令値(走行速度)を変更してもよい。
【0206】
速度算出部F12は、ショベル100の現在の走行速度を算出するように構成されている。本例では、速度算出部F12は、位置算出部F8が算出するショベル100の現在位置の推移に基づき、ショベル100の現在の走行速度を算出する。
【0207】
演算部CALは、移動指令生成部F11が生成した速度指令に対応する走行速度と、速度算出部F12が算出したショベル100の現在の走行速度との速度差を算出するように構成されている。
【0208】
速度制限部F13は、ショベル100の走行速度を制限するように構成されている。本例では、速度制限部F13は、演算部CALが算出した速度差が制限値を上回る場合に、その速度差の代わりに制限値を出力し、演算部CALが算出した速度差が制限値以下の場合に、その速度差をそのまま出力するように構成されている。制限値は、予め登録された値であってもよく、動的に算出される値であってもよい。
【0209】
流量指令生成部F14は、メインポンプ14から走行油圧モータ2Mに供給される作動油の流量に関する指令を生成するように構成されている。本例では、流量指令生成部F14は、速度制限部F13が出力する速度差に基づいて流量指令を生成する。基本的には、流量指令生成部F14は、その速度差が大きいほど大きい流量指令を生成するように構成されてよい。また、流量指令生成部F14は、演算部CALが算出した速度差を零に近づける流量指令を生成するように構成されてよい。
【0210】
流量指令生成部F14が生成する流量指令は、比例弁31,33に対する電流指令である。比例弁31,33は、その電流指令に応じて動作し、制御弁171のパイロットポートに作用するパイロット圧を変化させる。そのため、走行油圧モータ2MLに流入する作動油の流量は、流量指令生成部F14が生成した流量指令に対応する流量となるように調整される。また、比例弁31,33は、その電流指令に応じて動作し、制御弁172のパイロットポートに作用するパイロット圧を変化させる。そのため、走行油圧モータ2MRに流入する作動油の流量は、流量指令生成部F14が生成した流量指令に対応する流量となるように調整される。その結果、ショベル100の走行速度は、移動指令生成部F11が生成した速度指令に対応する走行速度となるように調整される。ショベル100の走行速度は、走行方向を含む概念である。ショベル100の走行方向は、走行油圧モータ2MLの回転速度及び回転方向と、走行油圧モータ2MRの回転速度及び回転方向とに基づき決定されるからである。
【0211】
尚、本例では、流量指令生成部F14が生成する流量指令が比例弁31,33へ出力される事例が示されたが、コントローラ30は、この構成に限られない。例えば、通常、ショベル100の走行動作の際、ブームシリンダ7等の、走行油圧モータ2M以外の他のアクチュエータは動作されない。そのため、流量指令生成部F14が生成する流量指令は、メインポンプ14のレギュレータ13へ出力されてもよい。この場合、コントローラ30は、メインポンプ14の吐出量を制御することで、ショベル100の走行動作を制御することができる。そして、コントローラ30は、レギュレータ13L,13Rのそれぞれを制御することで、即ち、メインポンプ14L,14Rのそれぞれの吐出量を制御することで、ショベル100の操舵を制御してもよい。更に、コントローラ30は、走行油圧モータ2ML,2MRのそれぞれへの作動油の供給量を比例弁31により制御して走行動作の操舵を制御し、レギュレータ13を制御することで走行速度を制御してもよい。
【0212】
このように、コントローラ30は、適宜、ショベル100に中間目標位置での作業を行わせながら、現在位置から作業終了目標位置までの間でショベル100の自律走行を実現させることができる。
【0213】
Att目標軌道更新部F15は、アタッチメントの先端部、即ち、バケット6の作業部位(例えば、爪先)の目標軌道を生成するように構成されている。具体的には、Att目標軌道更新部F15は、ショベル100の自律走行に伴う移動ごとに、移動後のショベル100の位置(中間目標位置)やその位置から見た目標施工面の相対的な形状等に合わせて、バケット6の作業部位の目標軌道を更新してよい。例えば、Att目標軌道更新部F15は、目標施工面の形状、ショベル100の現在位置、及び物体検知部F10の出力(物体データ)等に基づき、バケット6の爪先が辿るべき軌道を目標軌道として生成してよい。
【0214】
現在爪先位置算出部F16は、バケット6の現在の爪先位置を算出するように構成されている。本例では、現在爪先位置算出部F16は、姿勢検出部F6の出力(例えば、ブーム角度β、アーム角度β、バケット角度β、及び旋回角度α)及び位置検出部F8の出力(ショベル100の現在位置)に基づき、バケット6の爪先の座標点を現在の爪先位置として算出してよい。現在爪先位置算出部F16は、現在の爪先位置を算出する際に、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
【0215】
次爪先位置算出部F17は、バケット6の爪先の目標軌道上において、目標となる次の爪先位置を算出するように構成されている。本例では、次爪先位置算出部F17は、自律運転機能に対応する操作指令の内容と、Att目標軌道更新部F15が生成した目標軌道と、現在爪先位置算出部F16が算出した現在の爪先位置とに基づき、所定時間後の爪先位置を目標爪先位置として算出する。
【0216】
次爪先位置算出部F17は、現在の爪先位置とバケット6の爪先の目標軌道との間の乖離が許容範囲内に収まっているか否かを判定してもよい。本例では、次爪先位置算出部F17は、現在の爪先位置とバケット6の爪先の目標軌道との間の距離が所定値以下であるか否かを判定する。そして、次爪先位置算出部F17は、その距離が所定値以下である場合、乖離が許容範囲内に収まっていると判定し、目標爪先位置を算出する。一方で、次爪先位置算出部F17は、その距離が所定値を上回っている場合、乖離が許容範囲内に収まっていないと判定し、自律運転機能に対応する操作指令とは無関係に、アクチュエータの動きを減速させ或いは停止させるようにする。これにより、コントローラ30は、爪先位置が目標軌道から逸脱した状態で、自律制御の実行が継続されてしまうのを防止できる。
【0217】
爪先速度指令値生成部F18は、爪先の速度に関する指令値を生成するように構成されている。本例では、爪先速度指令値生成部F18は、現在爪先位置算出部F16が算出した現在の爪先位置と、次爪先位置算出部F17が算出した次の爪先位置とに基づき、所定時間で現在の爪先位置を次の爪先位置に移動させるために必要な爪先の速度を爪先の速度に関する指令値として算出する。
【0218】
爪先速度指令値制限部F19は、爪先の速度に関する指令値を制限するように構成されている。本例では、爪先速度指令値制限部F19は、現在爪先位置算出部F16が算出した現在の爪先位置と物体検知部F10の出力とに基づき、バケット6の爪先と所定の物体(例えば、ダンプトラック等)との間の距離が所定値未満であると判定した場合、爪先の速度に関する指令値を所定の上限値で制限する。これにより、コントローラ30は、爪先がダンプトラック等に接近したときに爪先の速度を減速させることができる。
【0219】
指令値算出部F20は、アクチュエータを動作させるための指令値を算出するように構成されている。本例では、指令値算出部F20は、現在の爪先位置を目標爪先位置に移動させるために、次爪先位置算出部F17が算出した目標爪先位置に基づき、ブーム角度βに関する指令値β1r、アーム角度βに関する指令値β2r、バケット角度βに関する指令値β3r、及び旋回角度αに関する指令値α1rを算出する。
【0220】
ブーム電流指令生成部F21、アーム電流指令生成部F31、バケット電流指令生成部F41、及び旋回電流指令生成部F51は、比例弁31,33に対して出力される電流指令を生成するように構成されている。本例では、ブーム電流指令生成部F21は、制御弁175に対応する比例弁31に対してブーム電流指令を出力する。また、アーム電流指令生成部F31は、制御弁176に対応する比例弁31に対してアーム電流指令を出力する。また、バケット電流指令生成部F41は、制御弁174に対応する比例弁31に対してバケット電流指令を出力する。また、旋回電流指令生成部F51は、制御弁173に対応する比例弁31に対して旋回電流指令を出力する。また、ブーム電流指令生成部F21、アーム電流指令生成部F31、バケット電流指令生成部F41、及び旋回電流指令生成部F51は、操作装置26から出力されるパイロット圧を減圧させる減圧指令を比例弁33に出力してよい。
【0221】
ブームスプール変位量算出部F22、アームスプール変位量算出部F32、バケットスプール変位量算出部F42、及び旋回スプール変位量算出部F52は、スプール弁を構成するスプールの変位量を算出するように構成されている。本例では、ブームスプール変位量算出部F22は、ブームスプール変位センサS7の出力に基づき、ブームシリンダ7に関する制御弁175を構成するブームスプールの変位量を算出する。アームスプール変位量算出部F32は、アームスプール変位センサS8の出力に基づき、アームシリンダ8に関する制御弁176を構成するアームスプールの変位量を算出する。バケットスプール変位量算出部F42は、バケットスプール変位センサS9の出力に基づき、バケットシリンダ9に関する制御弁174を構成するバケットスプールの変位量を算出する。旋回スプール変位量算出部F52は、旋回スプール変位センサS2Aの出力に基づき、旋回油圧モータ2Aに関する制御弁173を構成する旋回スプールの変位量を算出する。
【0222】
ブーム角度算出部F23、アーム角度算出部F33、バケット角度算出部F43、及び旋回角度算出部F53は、ブーム4、アーム5、バケット6、及び上部旋回体3の回動角度(姿勢角度)を算出するように構成されている。本例では、ブーム角度算出部F23は、ブーム角度センサS1の出力に基づき、ブーム角度βを算出する。アーム角度算出部F33は、アーム角度センサS2の出力に基づき、アーム角度βを算出する。バケット角度算出部F43は、バケット角度センサS3の出力に基づき、バケット角度βを算出する。旋回角度算出部F53は、旋回状態センサS5の出力に基づき、旋回角度αを算出する。即ち、ブーム角度算出部F23、アーム角度算出部F33、バケット角度算出部F43、及び旋回角度算出部F53は、姿勢検出部F6に含まれ、その算出結果(ブーム角度β、アーム角度β、バケット角度β、及び旋回角度α)を現在爪先位置算出部F16に出力してよい。
【0223】
ブーム電流指令生成部F21は、基本的に、指令値算出部F20が生成した指令値β1rとブーム角度算出部F23が算出したブーム角度βとの差がゼロになるように、比例弁31に対するブーム電流指令を生成する。その際に、ブーム電流指令生成部F21は、ブーム電流指令から導き出される目標ブームスプール変位量とブームスプール変位量算出部F22が算出したブームスプール変位量との差がゼロになるように、ブーム電流指令を調節する。そして、ブーム電流指令生成部F21は、その調節後のブーム電流指令を制御弁175に対応する比例弁31に対して出力する。
【0224】
制御弁175に対応する比例弁31(図6Aの比例弁31AL,31AR)は、ブーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。制御弁175は、パイロット圧に応じてブームスプールを移動させ、ブームシリンダ7に作動油を流入させる。ブームスプール変位センサS7は、ブームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30のブームスプール変位量算出部F22にフィードバックする。ブームシリンダ7は、作動油の流入に応じて伸縮し、ブーム4を上下動させる。ブーム角度センサS1は、上下動するブーム4の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30のブーム角度算出部F23にフィードバックする。ブーム角度算出部F23は、算出したブーム角度βをブーム電流指令生成部F21にフィードバックする。
【0225】
アーム電流指令生成部F31は、基本的に、指令値算出部F20が生成した指令値β2rとアーム角度算出部F33が算出したアーム角度βとの差がゼロになるように、比例弁31に対するアーム電流指令を生成する。その際に、アーム電流指令生成部F31は、アーム電流指令から導き出される目標アームスプール変位量とアームスプール変位量算出部F32が算出したアームスプール変位量との差がゼロになるように、アーム電流指令を調節する。そして、アーム電流指令生成部F31は、その調節後のアーム電流指令を制御弁176に対応する比例弁31に対して出力する。
【0226】
制御弁176に対応する比例弁31は、アーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。制御弁176は、パイロット圧に応じてアームスプールを移動させ、アームシリンダ8に作動油を流入させる。アームスプール変位センサS8は、アームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30のアームスプール変位量算出部F32にフィードバックする。アームシリンダ8は、作動油の流入に応じて伸縮し、アーム5を開閉させる。アーム角度センサS2は、開閉するアーム5の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30のアーム角度算出部F33にフィードバックする。アーム角度算出部F33は、算出したアーム角度βをアーム電流指令生成部F31にフィードバックする。
【0227】
バケット電流指令生成部F41は、基本的に、指令値算出部F20が生成した指令値β3rとバケット角度算出部F43が算出したバケット角度βとの差がゼロになるように、制御弁174に対応する比例弁31に対するバケット電流指令を生成する。その際に、バケット電流指令生成部F41は、バケット電流指令から導き出される目標バケットスプール変位量とバケットスプール変位量算出部F42が算出したバケットスプール変位量との差がゼロになるように、バケット電流指令を調節する。そして、バケット電流指令生成部F41は、その調節後のバケット電流指令を制御弁174に対応する比例弁31に対して出力する。
【0228】
制御弁174に対応する比例弁31(図6Bの比例弁31BL,31BR)は、バケット電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。制御弁174は、パイロット圧に応じてバケットスプールを移動させ、バケットシリンダ9に作動油を流入させる。バケットスプール変位センサS9は、バケットスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30のバケットスプール変位量算出部F42にフィードバックする。バケットシリンダ9は、作動油の流入に応じて伸縮し、バケット6を開閉させる。バケット角度センサS3は、開閉するバケット6の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30のバケット角度算出部F43にフィードバックする。バケット角度算出部F43は、算出したバケット角度βをバケット電流指令生成部F41にフィードバックする。
【0229】
旋回電流指令生成部F51は、基本的に、指令値算出部F20が生成した指令値α1rと旋回角度算出部F53が算出した旋回角度αとの差がゼロになるように、制御弁173に対応する比例弁31に対する旋回電流指令を生成する。その際に、旋回電流指令生成部F51は、旋回電流指令から導き出される目標旋回スプール変位量と旋回スプール変位量算出部F52が算出した旋回スプール変位量との差がゼロになるように、旋回電流指令を調節する。そして、旋回電流指令生成部F51は、その調節後の旋回電流指令を制御弁173に対応する比例弁31に対して出力する。
【0230】
制御弁173に対応する比例弁31(図6Cの比例弁31CL,31CR)は、旋回電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。制御弁173は、パイロット圧に応じて旋回スプールを移動させ、旋回油圧モータ2Aに作動油を流入させる。旋回スプール変位センサS2Aは、旋回スプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の旋回スプール変位量算出部F52にフィードバックする。旋回油圧モータ2Aは、作動油の流入に応じて回転し、上部旋回体3を旋回させる。旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の旋回角度算出部F53にフィードバックする。旋回角度算出部F53は、算出した旋回角度αを旋回電流指令生成部F51にフィードバックする。
【0231】
このように、コントローラ30は、作業体ごとに、3段のフィードバックループを構成している。即ち、コントローラ30は、スプール変位量に関するフィードバックループ、作業体の回動角度に関するフィードバックループ、及び、爪先位置に関するフィードバックループを構成している。そのため、コントローラ30は、バケット6の作業部位(例えば、爪先)の動きを高精度に制御し、それぞれの中間目標位置における所定の作業(例えば、目標施工面としての法面の施工作業)をショベル100に行わせる自律運転機能を実現することができる。
【0232】
[ショベル管理システム]
次に、図13を参照して、ショベル管理システムSYSについて説明する。
【0233】
図13は、ショベル管理システムSYSの一例を示す概略図である。
【0234】
図13に示すように、ショベル管理システムSYSは、ショベル100と、支援装置200と、管理装置300とを含む。ショベル管理システムSYSは、1台又は複数台のショベル100を管理するシステムである。
【0235】
ショベル100が取得する情報は、ショベル管理システムSYSを通じ、管理者及び他のショベルのオペレータ等と共有されてもよい。ショベル管理システムSYSを構成するショベル100、支援装置200、及び管理装置300のそれぞれは、1台であってもよく、複数台であってもよい。本例では、ショベル管理システムSYSは、1台のショベル100と、1台の支援装置200と、1台の管理装置300とを含む。
【0236】
支援装置200は、典型的には携帯端末装置であり、例えば、施工現場にいる作業者等が携帯するラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、或いはスマートフォン等である。支援装置200は、ショベル100のオペレータが携帯する携帯端末であってもよい。支援装置200は、固定端末装置であってもよい。
【0237】
管理装置300は、典型的には固定端末装置であり、例えば、施工現場外の管理センタ等に設置されるサーバコンピュータ(いわゆるクラウドサーバ)である。また、管理装置300は、例えば、施工現場に設定されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置300は、可搬性の端末装置(例えば、ラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、或いはスマートフォン等の携帯端末)であってもよい。
【0238】
支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方は、モニタと遠隔操作用の操作装置とを備えていてもよい。この場合、支援装置200や管理装置300を利用するオペレータは、遠隔操作用の操作装置を用いつつ、ショベル100を操作してもよい。遠隔操作用の操作装置は、例えば、近距離無線通信網、携帯電話通信網、又は衛星通信網等の無線通信網を通じ、ショベル100に搭載されているコントローラ30に通信可能に接続される。
【0239】
また、キャビン10内に設置された表示装置40に表示される各種情報画像(例えば、ショベル100の周囲の様子を表す画像情報や各種の設定画面等)が、支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に接続された表示装置で表示されてもよい。ショベル100の周囲の様子を表す画像情報は、撮像装置S6の撮像画像に基づき生成されてよい。これにより、支援装置200を利用する作業者、或いは、管理装置300を利用する管理者等は、ショベル100の周囲の様子を確認しながら、ショベル100の遠隔操作を行ったり、ショベル100に関する各種の設定を行ったりすることができる。
【0240】
例えば、ショベル管理システムSYSにおいて、ショベル100のコントローラ30は、自律走行スイッチが押されたときの時刻及び場所、ショベル100を自律的に移動させる際(自律走行の際)に利用された目標ルート、並びに、自律走行の際に所定部位が実際に辿った軌跡等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。その際、コントローラ30は、撮像装置S6等の空間認識装置の出力(例えば、撮像装置S6の撮像画像)を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。撮像画像は、自律走行中に撮像された複数の画像であってもよい。更に、コントローラ30は、自律走行中におけるショベル100の動作内容に関するデータ、ショベル100の姿勢に関するデータ、及び掘削アタッチメントの姿勢に関するデータ等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。これにより、支援装置200を利用する作業者、又は、管理装置300を利用する管理者は、自律走行中のショベル100に関する情報を入手することができる。
【0241】
このように、ショベル管理システムSYSは、自律走行中に取得されるショベル100に関する情報を管理者及び他のショベルのオペレータ等と共有できるようにする。
【0242】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0243】
例えば、上述した実施形態において、コントローラ30は、入力装置42に含まれる、所定のスイッチが操作された場合に、正対制御を実行してもよい。具体的には、コントローラ30は、例えば、MCスイッチが操作された場合、或いは、その操作が継続している場合、つまり、MCスイッチが押された状態が継続している場合に、正対制御を実行してもよい。この場合、オペレータ等、マシンコントロール機能を開始させるために、MCスイッチを操作するだけで、上部旋回体3を目標施工面に自動的に正対させることができる。すなわち、コントローラ30は、マシンコントロール機能の一環として正対制御を行うことができる。そのため、コントローラ30は、マシンコントロール機能による目標施工面の施工開始時に、ショベル100の上部旋回体3を目標施工面に正対させる際のオペレータ等が感じる煩わしさを低減させることができると共に、ショベル100の作業効率を向上させることができる。
【0244】
また、上述した実施形態及び変形例において、コントローラ30は、正対制御を行っている場合であっても、上部旋回体3の旋回動作に対応するレバー装置26Cが操作された場合、正対制御を中止してもよい。これにより、オペレータ等による手動操作を優先させることができる。
【0245】
また、上述した実施形態及び変形例において、コントローラ30は、ステップST1,ST11,ST12において正対ずれが生じていると判定した場合であっても、その正対ずれが大きい場合には、正対制御を実行しないようにしてもよい。具体的には、自動制御部54は、正対ずれが生じていると判定した時点におけるずれ量に相当する角度が所定の閾値よりも大きい場合、正対制御を実行しないようにしてもよい。これにより、操作装置26が操作されていないにもかかわらず、マシンコントロール機能によるショベル100の動作量(上部旋回体3の旋回量)が大きくなり過ぎてオペレータ等に不安感を抱かせてしまうような事態を抑制することができる。
【0246】
また、上述した実施形態及び変形例において、コントローラ30は、旋回油圧モータ2Aに代えて、他のアクチュエータを動作させることで、上部旋回体3を目標施工面に正対させてもよい。例えば、コントローラ30は、走行油圧モータ1L,1R(アクチュエータの一例)を自動的に動作させることにより、上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。走行油圧モータ1L,1Rは、相互に、異なる方向に回転することにより、上部旋回体3の向きを変化させることができるからである。具体的には、上部旋回体3の向きを左方向に変化させる必要がある場合、コントローラ30は、右側のクローラに対応する走行油圧モータ1Rを順回転させ且つ左側のクローラに対応する走行油圧モータ1Lを逆回転させる。これにより、ショベル100は、下部走行体1による超信地旋回(即ち、スピンターン)を行い、上部旋回体3の向きを左方向に変化させて、目標施工面に正対させることができる。
【0247】
最後に、本願は、2018年11月14日に出願した日本国特許出願2018-214162号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0248】
1 下部走行体
1L,1R 走行油圧モータ(アクチュエータ、走行モータ)
2 旋回機構
2A 旋回油圧モータ(アクチュエータ、旋回駆動部)
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
26 操作装置
26A~26C レバー装置
29,29A~29C 操作圧センサ
30 コントローラ(制御装置)
31,31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CR 比例弁
32,32AL,32AR,32BL,32BR,32CL,32CR シャトル弁
33,33AL,33AR,33BL,33BR,33CL,33CR 比例弁
50 マシンガイダンス部
54 自動制御部
100 ショベル
S1 ブーム角度センサ
S2 アーム角度センサ
S3 バケット角度センサ
S4 機体傾斜センサ
S5 旋回状態センサ
S6 撮像装置(空間認識装置)
S6B,S6F,S6L,S6R カメラ
P1 測位装置
T1 通信装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13