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▶ マテリアライズ・ナムローゼ・フエンノートシャップの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】レーザ焼結における熱制御
(51)【国際特許分類】
   G05D 23/19 20060101AFI20240326BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/357 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240326BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240326BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240326BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240326BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20240326BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240326BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G05D23/19 J
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/357
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/10
B22F3/105
B22F3/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020559382
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028800
(87)【国際公開番号】W WO2019209881
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】62/661,443
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510102122
【氏名又は名称】マテリアライズ・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MATERIALISE NV
【住所又は居所原語表記】Technologielaan 15,B-3001 Leuven,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】パヴァン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン エッカー,ピエ
(72)【発明者】
【氏名】クラーハス,トム
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0059493(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0300035(US,A1)
【文献】特開2004-284025(JP,A)
【文献】特表平09-504054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0252820(US,A1)
【文献】特開2013-096013(JP,A)
【文献】特表2009-544501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 23/19
B29C 64/153
B29C 64/268
B29C 64/357
B29C 64/393
B33Y 50/02
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B29C 64/10
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作製物の断面層を付加製造するための走査計画を準備するコンピュータ実行方法であって、
(1)演算装置内において、作製材料の熱特性を取得するステップであって、前記作製材料は、リサイクル粉末、または、リサイクル粉末とバージン粉末との混合粉末を含む、ステップと、
(2)前記演算装置内において、前記熱特性から、付加製造するための前記作製材料の処理に適切な温度範囲を導出するステップと、
(3)前記演算装置内において、付加製造装置の物理的仕様を取得するステップと、
(4)前記演算装置内において、前記作製物の前記断面層に係る走査計画を決定するステップと、を含み、
前記走査計画は、前記作製物の前記断面層の各点について、その点が最初に走査される時点から前記作製物の前記断面層のすべての点が走査されるまで、前記作製材料の処理に適切な温度範囲内の保持温度を保持するように構成され、前記保持温度は、溶融温度よりも低い上限値と、溶融後に前記作製材料が結晶化する結晶化温度よりも高い下限値とを含む範囲内にあり、
前記走査計画は、前記付加製造装置の前記物理的仕様に少なくとも部分的に基づいて決定され、
(5)前記断面層を作製するために、前記走査計画に従って前記付加製造装置を使用して前記作製材料の走査を制御するステップと、を含むコンピュータ実行方法。
【請求項2】
前記作製材料の前記熱特性は、前記作製材料が異なる状態に遷移する温度を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項3】
前記作製材料の前記熱特性は、前記作製材料が加熱または冷却する速度を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項4】
前記走査計画は、前記作製物における各点の温度を第2の保持温度まで上昇させるステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項5】
前記第2の保持温度は、前記作製材料が劣化する劣化温度付近の上限値と、前記作製材料の前記溶融温度よりも高い下限値とを含む範囲内にある、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項6】
前記付加製造装置の前記物理的仕様は、レーザ数、レーザビーム形状、レーザビームサイズ、最小レーザ出力、最大レーザ出力、走査遅延、及び最大走査速度のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項7】
前記走査計画は、選択されたレーザ、レーザ出力、レーザ形状、レーザビームスポットサイズ、走査時間、及び前記作製物の前記断面層上の複数の点を走査するための走査数のうちの少なくとも1つに関する命令を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項8】
前記走査計画は、前記作製材料を溶融するためのある点の少なくとも1つの走査を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項9】
前記走査計画は、前記作製物の前記断面層の第1の点または第1の複数の点のための第1の走査計画、及び、前記作製物の前記断面層の第2の点または第2の複数の点のための第2の走査計画を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項10】
前記第1の走査計画は前記第2の走査計画と異なる、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項11】
前記第1の複数の点は、空間的位置および時間的順序の少なくとも何れか一方において前記第2の複数の点と異なる、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項12】
前記第1の複数の点は、複数の点の第1のサブセットであり、
前記第2の複数の点は、複数の点の第2のサブセットであり、
前記第1のサブセット及び前記第2のサブセットはともに、前記作製物の前記断面層上の複数の点を形成する、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項13】
前記第1の走査計画は輪郭走査計画であり、前記第2の走査計画はハッチング走査計画である、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項14】
前記走査計画は、前記第1の走査計画および前記第2の走査計画の前に、予熱走査ステップをさらに含む、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項15】
前記予熱走査ステップは、前記断面層内のオブジェクトの境界の外側、及び、当該境界からオフセットされた位置に存在する複数の点を走査するステップを含む、請求項14に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項16】
前記走査計画は、前記第1の走査計画および前記第2の走査計画とそれぞれ異なる第3の走査計画をさらに含む、請求項に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項17】
前記作製物の前記断面層は1以上の部品の断面を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項18】
1以上の3D部品を共に形成する、前記作製物の複数の断面層を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項19】
前記作製物の前記断面層内の1以上の点は部品に対応しない、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項20】
前記走査計画に従って前記作製材料の走査を監視するステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、付加製造技術(3Dプリント技術)における粉末床溶融結合法に関する。本明細書に開示される内容は、例えばレーザ焼結のような、付加製造技術の粉末床融合結合プロセスに関連するパラメータを調整するための方法である。作製パラメータは、例えば、材料の熱的挙動を制御するために調整されてよい。また、作製パラメータは、例えば、レーザ焼結に適用するためにこれまでに試験あるいは使用されていなかった粉末から、または使用済みの粉末から、部品を作るために調整されてよい。本明細書に記載された方法は、作製物を最適化し、これら部品の品質および一貫性を改善する。
【背景技術】
【0002】
粉末床融合結合(PBF)プロセスは付加製造技術分野に属する。付加製造技術分野では、粉末の薄層が粉末の床上に敷き詰められ、化学物質またはエネルギーのいずれかが、パターン(例えば、オブジェクトの設計に対応する所定のパターン)に従って粉末材料の薄層を結合、連結、溶融、または融合するために使用される。パターンは部品(「オブジェクト」でもある)の断面層を表すことができ、粉末蒸着と化学物質またはエネルギーへの暴露とを反復した後、各層は、前後に形成された層に接着する。最終的に、部品全体が付加的な積層状態で形成される。代表的なPBF処理には、直接金属レーザ焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的熱焼結(SHS)、選択的レーザ溶融(SLM)、バインダー噴射、インクジェット3D印刷、および選択的レーザ焼結(SLS)があり、それぞれの方法は、異なる粉末材料、および、化学物質またはエネルギーを用いる異なる方法にそれぞれ適している。
【0003】
PBF処理の中で、選択的レーザ焼結(SLS)は、熱可塑性材料または複合材料から部品を作製するために広く使用されている。SLSでは、コンピュータ制御されるレーザ走査を用いて、レーザビームを粉体の層上に向ける。レーザ走査は、パターンを、ベクトル、ラスター、スプラインなどの曲線のセット、またはこれらの組み合わせとしてトレースする。典型的には、別の周囲熱源を使用するなどして粉末床全体が粉末材料の溶融温度に近い温度に保持され、レーザビームからの出力が粉末層上の所定のパターンの溶融点に短時間かつ正確に使用されうる。粉体床温度、ハッチング方法、レーザ走査速度、レーザ出力、レーザビームスポットサイズ、走査遅延などのSLS作製パラメータが正しく選択され、チューニングされると、SLSによって作製された部品は、良好な機械的・物理的特性および高い寸法精度を有する。
【0004】
逆に、SLS作製パラメータが最適でない場合、作製物の破損またはSLS機械の損傷、構造的欠陥や部品の歪みに至るまで複数の問題が発生しうる。多くの原料はSLSに利用できない。なぜなら、これらの原料に係る作製パラメータを最適化することができないためであり、その理由は、例えば、SLS中に作製材料の熱挙動を制御する方法が分かっていないか、または理解されていないためである。これはSLSの限界である。このことは、特に、所望の熱的または機械的特性のために原料を選択することが有利であり、SLS中で処理される能力のためではない場合に当てはまる。また、粉末床で予め予熱されているが、部品に焼結されていない使用済み粉末の試料では加工性が問題となることがある。不十分な表面仕上げのような構造上の問題は、使用済み粉末で作製された部品、または使用済み粉末と新しい粉末との混合粉末で作製された部品をもたらしうる。これらの問題のために、使用済み粉末はしばしば、処理に適さないとされ、廃棄される。
【0005】
作製パラメータが特定の材料に対して容易に調整され、最適化されうるならば、多くの新しい原材料、ならびに使用済み粉末の試料を部品作製のために使用することができる。しかしながら、最適パラメータの特定は困難である。SLS作製パラメータを選択するための現在の方法は、個々のオペレータによって実行される定性的、試行錯誤の試験に大きく依存する。場合によっては、オペレータは異なる条件下で試料部品を作製し、次に、部品の材料特性を試験して、最良の部品をもたらすパラメータの組み合わせを見つける。他の場合には、経験豊富なオペレータが以前の部品作製に関する知識に基づいてパラメータを設定し、調整する。文献中の様々な報告は、部品品質を改善するための一般的なアプローチを記載する。例えば、レーザビームのスポットサイズまたは形状の調整、粉末床の温度の監視、および粉末床全体にわたって均一な温度を達成するための是正措置、または低減されたエネルギーによる複数回のオブジェクト走査である。これらの一般的なアプローチは有益でありうるが、不正確であり、したがって、作製材料の特定の知識に基づいて、標的化方式で最適作製パラメータを決定する方法が当技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様は、作製物の断面層を付加製造するための走査計画を準備するコンピュータ実行方法に関し、当該方法は、(1)演算装置内において、作製材料の熱特性を取得するステップと、(2)前記演算装置内において、前記熱特性から、付加製造するための前記作製材料の処理に適切な温度範囲を導出するステップと、(3)前記演算装置内において、付加製造装置の物理的仕様を取得するステップと、(4)前記演算装置内において、前記作製物の前記断面層に係る走査計画を決定するステップと、を含み、前記走査計画は、前記作製物の前記断面層の各点について、その点が最初に走査される時点から前記作製物の前記断面層のすべての点が走査されるまで、前記作製材料の処理に適切な温度範囲内の保持温度を保持するように構成され、前記走査計画は、前記付加製造装置の前記物理的仕様に少なくとも部分的に基づいて決定され、(5)前記断面層を作製するために、前記走査計画に従って前記付加製造装置を使用して前記作製材料の走査を制御するステップと、を含んでよい。
【0007】
前記作製材料の前記熱特性は、前記作製材料が異なる状態に遷移する温度を含んでよい。前記作製材料の前記熱特性は、前記作製材料が加熱または冷却する速度を含んでよい。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記保持温度は、前記作製材料が劣化する劣化温度付近の上限値と、溶融後に前記作製材料が結晶化する結晶化温度よりも高い下限値とを含む範囲内にあってよい。前記保持温度は、前記作製材料が溶融する溶融温度よりも低い上限値と、溶融後に前記作製材料が結晶化する結晶化温度よりも高い下限値とを含む範囲内にあってよい。前記保持温度は、溶融温度よりも低い上限値と、例えば、溶融後に前記作製材料が結晶化する結晶化温度よりも高い下限値とを含む範囲内にあってよい。幾つかの実施形態において、前記溶融温度および前記結晶化温度は異なる。
【0009】
前記走査計画は、前記作製物における各点の温度を第2の保持温度まで上昇させるステップをさらに含んでよい。前記第2の保持温度は、前記作製材料が劣化する劣化温度付近の上限値と、前記作製材料の前記溶融温度よりも高い下限値とを含む範囲内にあってよい。
【0010】
前記付加製造装置の前記物理的仕様は、レーザ数、レーザビーム形状、レーザビームサイズ、最小レーザ出力、最大レーザ出力、走査遅延、及び最大走査速度のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0011】
前記走査計画は、選択されたレーザ、レーザ出力、レーザ形状、レーザビームスポットサイズ、走査時間、及び前記作製物の前記断面層上の複数の点を走査するための走査数のうちの少なくとも1つに関する命令を含んでよい。幾つかの実施形態において、前記作製材料を溶融するためのある点の少なくとも1つの走査を含んでよい。前記走査計画は、第1の点または第1の複数の点のための第1の走査計画、及び、第2の点または第2の複数の点のための第2の走査計画を含んでよい。例えば、前記第1の走査計画は前記第2の走査計画と異なってよい。幾つかの実施形態において、前記第1の複数の点は、空間的位置および時間的順序の少なくとも何れか一方において前記第2の複数の点と異なってよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記第1の複数の点は、複数の点の第1のサブセットであってよく、前記第2の複数の点は、複数の点の第2のサブセットであってよく、前記第1のサブセット及び前記第2のサブセットはともに、前記作製物の前記断面層上の複数の点を形成する。例えば、前記第1の走査計画は輪郭走査計画であり、前記第2の走査計画はハッチング走査計画であってよい。前記第1の走査計画は全体の走査計画の第1のステップであり、前記第2の走査計画は全体の走査計画の第2のステップであってよい。前記走査計画は、前記第1の走査計画および前記第2の走査計画の前に、予熱走査ステップをさらに含んでよい。前記走査計画は、後加熱走査ステップを含んでよく、後加熱走査ステップは他のすべての走査計画が終わった後に行われる。
【0013】
前記作製物の前記断面層は1以上の部品の断面を含んでよい。例えば、前記作製物の複数の断面層は共に1以上の3D部品を形成してよい。幾つかの実施形態において、前記作製物の前記断面層内の1以上の点は部品に対応しない。
【0014】
前記作製材料は、リサイクル粉末、または、リサイクル粉末とバージン粉末との混合粉末を含んでよい。
【0015】
幾つかの実施形態において、当該方法は、前記走査計画に従って前記作製材料の走査を監視するステップをさらに含んでよい。
【0016】
本開示の他の態様は、作製物の断面層をレーザ焼結するためのコンピュータ実行方法に関し、(1)演算装置において、前記断面層上の複数の点を走査するために必要とされる、前記複数の点を第1の温度まで上昇させる第1の電力レベルを決定するステップと、(2)演算装置において、前記複数の点を走査するための、前記第1の温度よりも低い第2の保持温度において前記複数の点を保持する第2の電力レベルを決定するステップと、(3)前記第1の電力レベルおよび前記第2の電力レベルに基づいて走査計画を決定するステップであって、前記複数の点に含まれるそれぞれの点を、当該点が最初に走査され、前記断面層内のすべての点が走査されるまで、前記第1の温度に到達させ、かつ、それぞれの点を前記第2の保持温度以上に維持するように構成された前記走査計画を決定するステップと、(4)前記断面層を作製するために、前記走査計画に従う付加製造装置を使用して作製材料の走査を制御するステップと、を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】3Dオブジェクトを設計および製造するためのシステムの一例を示す。
図2図1に示すコンピュータの一例の機能ブロック図を示す。
図3】使用する3Dオブジェクトを製造するためのハイレベルプロセスを示す。
図4A】リコータ機構を有する付加製造装置の実施例を示す。
図4B】リコータ機構を有する付加製造装置の他の実施例を示す。
図5A】現在のプラクティスに従った、部品を作製するための一般的なワークフローを示す。
図5B】本開示に従った、部品を作製するための一般的なワークフローを示す。
図6】作製材料、作製材料のプロセス挙動に関する情報、部品の所望の特徴、およびAM装置の物理的仕様を使用して、部品を作製するためのプロセスパラメータを設定するプロセスを示す。
図7】一連の追加的ステップを示し、これにより部品を作製するためのプロセスパラメータが使用される様子を示す。
図8】部品を作製するための走査計画を決定するために作製材料の熱特性を使用するためのプロセスを示す。
図9】作製物の断面層上のある点の熱曲線を示し、このとき、温度は時間の関数としてプロットされる。
図10】6つの異なる時点の各々における例示的な断面層についての走査計画のスナップショットを示す。
図11】2つの異なる例示的な断面層における点(複数)における熱曲線の変動を示す。
図12図12A図12Dは、例示的な走査計画におけるベクトルと、その走査計画におけるある点の温度プロファイルを示す。
図13図13A図12Bは、各々がベクトルのセットを表すデータのブロックが走査計画においてどのように順序付けられうるかを示す図である。
図14図14A~14Cは、重なり合う領域がどのようにして過熱されうるかを示す。
図15図15A~15Bは、アイランドを含む断面層における重なり合う領域の回避を示す。
図16図16A~16Cは、走査中のより均一な熱分布および/またはエネルギー密度、および/またはより速い走査に寄与しうる、オブジェクトにおけるゾーニングの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で開示されるシステムおよび方法は、付加製造技術(AM)によって部品(「オブジェクト(オブジェクト)」または「製品」)を作製するための技術、特に、作製材料、AM装置、および部品の所望のまたは意図される特徴に関する情報に基づいて、作製物の断面層のための走査計画を決定するための技術を含む。
【0019】
本明細書に記載される幾つかの実施形態は特定の作製材料(例えば、金属)を使用する特定の付加製造技術に関して記載されるが、記載されるシステムおよび方法はまた、当業者によって理解されるように、特定の他の付加製造技術および/または特定の他の作製材料とともに使用されてもよい。
[3Dオブジェクトの設計・製造]
本発明の実施形態は、3Dオブジェクトを設計および製造するためのシステム内において実施することができる。図1を参照すると、3Dオブジェクト設計および製造の実装に適したコンピュータ環境の一例が示されている。当該環境はシステム100を含む。システム100は、1つ以上のコンピュータ102a~102dを含んでおり、それらは、例えば、情報処理が可能な任意のワークステーション、サーバー、又はその他の計算機器であってもよい。幾つかの実施形態において、コンピュータ102a~102dの各々は、適切な通信技術(例えば、インターネットプロトコル)によってネットワーク105(例えば、インターネット)に接続することができる。したがって、コンピュータ102a~102dは、ネットワーク105を介して互いに情報(例えば、ソフトウェア、3Dオブジェクトのデジタル表現、付加製造装置を動作させるためのコマンドまたは命令など)を送受信することができる。
【0020】
システム100はさらに、1つ以上の付加製造装置(例えば、3Dプリンタ)106a~106bを含む。図示するように、付加製造装置106aは、コンピュータ102dに直接接続され(そして、ネットワーク105を経由して、コンピュータ102dを介してコンピュータ102a、102cに接続され)、付加製造装置106bはネットワーク105を介してコンピュータ102a~102dに接続される。したがって、当業者であれば、付加製造装置106をコンピュータ102に直接接続し、ネットワーク105を介してコンピュータ102に接続し、および/または別のコンピュータ102およびネットワーク105を介してコンピュータ102に接続することができることを理解するであろう。
【0021】
ネットワークおよび1以上のコンピュータに関してシステム100のことが説明されているが、本明細書で説明される技術は、付加製造装置106に直接接続することができる単一のコンピュータ102にも適用されることに留意されたい。
【0022】
図2は、図1のコンピュータの一例の機能ブロック図を示す。コンピュータ102aは、メモリ220とデータ通信するプロセッサ210、入力デバイス230、及び出力デバイス240を含む。ある実施形態では、プロセッサはさらに、任意選択のネットワーク・インターフェース・カード260とデータ通信する。別々に記載されているが、コンピュータ102aに関して記載されている機能ブロックは別々の構造要素である必要はないことを理解されたい。例えば、プロセッサ210およびメモリ220は単一チップに実装されてよい。
【0023】
プロセッサ210は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)またはその他プログラマブル論理デバイス、ディスクリート・ゲートまたはトランジスタ論理、ディスクリート・ハードウェア構成要素、または本明細書で説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の適切な組合せとすることができる。また、プロセッサは、例えば、DSP及びマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと結合した1つ以上のマイクロプロセッサ、又は他のこのような構成といった演算装置の組み合わせとして実現されてよい。
【0024】
プロセッサ210は、1以上のバスを介して、メモリ220から情報を読み出すか、または情報をメモリに書き込むように接続することができる。プロセッサは追加的に、または代替的に、プロセッサレジスタなどのメモリを含むことができる。メモリ220は、異なるレベルが異なる容量およびアクセス速度を有するマルチレベル階層キャッシュを含むプロセッサキャッシュを含むことができる。メモリ220はまた、ランダム・アクセス・メモリ、他の揮発性記憶装置、または不揮発性記憶装置を含むことができる。記憶装置には、ハードドライブ、コンパクトディスク(CD)またはデジタルビデオディスク(DVD)などの光学ディスク、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、およびZipドライブを含めることができる。
【0025】
プロセッサ210はまた、それぞれ、コンピュータ102aのユーザから入力を受信し、出力を供給するために、入力デバイス230及び出力デバイス240に接続されてよい。適切な入力デバイスは、キーボード、ボタン、キー、スイッチ、ポインティングデバイス、マウス、ジョイスティック、遠隔制御装置、赤外線検出器、バーコードリーダ、走査、ビデオカメラ(おそらく、例えば、手のジェスチャまたは顔のジェスチャを検出するためにビデオ処理ソフトウェアに結合される)、動き検出器、またはマイクロフォン(おそらく、例えば、音声コマンドを検出するためにオーディオ処理ソフトウェアに結合される)を含むが、これらに限定されない。適切な出力デバイスは、ディスプレイおよびプリンタを含む視覚出力デバイス、スピーカー、ヘッドホン、イヤホン、およびアラームを含むオーディオ出力デバイス、付加製造装置、触覚出力デバイスを含むが、これらに限定されない。
【0026】
プロセッサ210はさらに、ネットワーク・インターフェース・カード260に結合されてもよい。ネットワーク・インターフェース・カード260は、プロセッサ210によって生成されたデータを、1つ以上のデータ伝送プロトコルに従ってネットワークを介して伝送するために準備する。ネットワーク・インターフェース・カード260はまた、1つ以上のデータ伝送プロトコルに従って、ネットワークを介して受信されたデータを復号する。ネットワーク・インターフェース・カード260は、送信機、受信機、またはその両方を含むことができる。他の実施形態では、送信機及び受信機は2つの別個の構成要素であってよい。ネットワーク・インターフェース・カード260は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)または他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリート・ゲートまたはトランジスタ・ロジック、ディスクリート・ハードウェア・構成要素、または本明細書で説明する機能を実行するように設計されたそれらの任意の適切な組合せとして実施することができる。
【0027】
図3は、3Dオブジェクトまたはデバイスを製造するためのプロセス300を示す。図示するように、ステップ305では、コンピュータ102aなどのコンピュータを使用して、オブジェクトのデジタル表現が設計される。例えば、3Dオブジェクトのデジタル表現を設計するために、2Dデータまたは3Dデータがコンピュータ102aに入力されてもよい。引き続きステップ310において、情報がコンピュータ102aから付加製造装置106のような付加製造装置に送信され、装置106は、受信した情報に従って製造プロセスを開始する。ステップ315において、付加製造装置106は、ポリマー又は金属粉末のような任意の適切な材料を用いて3次元オブジェクトを製造し続ける。さらに、ステップ320において、3Dオブジェクトが生成される。
【0028】
図4Aは、3次元(3D)オブジェクトを生成するための例示的な付加製造装置400を示す。この実施例において、付加製造装置400は、レーザ焼結装置である。レーザ焼結装置400は、1つ以上の3Dオブジェクトを層ごとに生成するために使用されてよい。レーザ焼結装置400は例えば、粉末414などの粉末(例えば、金属、ポリマーなど)を利用して、作製プロセスの一部としてある時間に一層を形成し、オブジェクトを作製する。
【0029】
連続する粉末層は例えば、リコータ機構415A(例えば、リコータブレード)を使用して、互いの上に広げられる。リコータ機構415Aは、例えば図示の方向に、作製領域を横切って移動するときに一層を形成するために粉末を堆積させる。あるいは、リコータ機構415Aは、例えば作成物の他の層を形成するために作製領域の他方の側から開始するときに、作製領域を横切って移動する際に一層を形成するために粉末を堆積させる。蒸着後、コンピュータ制御されたCOレーザ光線が表面を走査し、製品の対応する断面の粉末粒子を共に選択的に結合させる。幾つかの実施形態では、レーザ走査装置412はX-Y可動赤外レーザ源である。従って、レーザ源は、そのビームを粉体の最上層の特定の位置に向けるために、X軸に沿って、かつY軸に沿って移動させることができる。あるいは、幾つかの実施形態では、レーザ走査装置412が静止レーザ源からレーザビームを受け取り、そのビームを、移動可能なミラー上を偏向させて、装置の作業領域内の指定された位置に向けるレーザ走査を備えることができる。レーザ露光中、粉末温度は材料(例えば、ガラス、ポリマー、金属)転移点を超えて上昇し、その後、隣接する粒子が共に流れて3Dオブジェクトを生成する。また、装置400は任意に、放射ヒーター(例えば、赤外線ランプ)および/または雰囲気制御装置416を含んでもよい。放射ヒーターは、新しい粉体層のリコーティングとその層の走査との間の粉体を予熱するために使用されてもよい。幾つかの実施形態では、放射ヒーターは省略されてもよい。雰囲気制御装置は例えば粉末酸化のような望ましくないシナリオを回避するために、プロセス全体にわたって使用されてもよい。
【0030】
図4Bに示されるような幾つかの他の実施形態では、リコータ機構415Aの代わりに、リコータ機構415B(例えば、均しドラム/ローラー)を使用してもよい。したがって、粉末は、粉末容器428(a)および粉末容器428(b)から、成形されたオブジェクト424を保持するリザーバ426内に粉末を押し出す1以上の可動ピストン418(a)および可動ピストン418(b)を使用して分布されてよい。次に、リザーバの深さは、可動ピストン420によっても制御される。可動ピストン420は、追加の粉末が粉末容器428(a)および粉末容器428(b)からリザーバ426に移動するときに、下方への移動を介してリザーバ426を深くする。リコータ機構415Bは、粉末容器428(a)および粉末容器428(b)からリザーバ426内に粉末を押し込むか、または転がす。図4Aに示される実施形態と同様に、図4Bの実施形態では、層のリコーティングと走査との間で粉末を予熱するために、放射ヒーターを単独で使用してよい。
【0031】
[AM(Additive Manufacturing)装置での部品の作製]
図5Aは、付加製造技術(AM)装置(または「機械」)において部品を作製するために一般的に使用される一般的なワークフローを示す。ステップ500でワークフローが開始し、AM装置および作製すべき部品が選択される。作製物は、単一の部品又は複数の部品を含んでよい。典型的には、オペレータが、例えば、レーザ出力、ビームスポットサイズ、ビームスポット形状、パルス時間、パルス数、および走査速度などのレーザパラメータ、ハッチ間隔、ベクトル長、走査パターン、層厚さ、および層数などの幾何学的パラメータ、ならびに塗り重ね(リコート)速度、粉末床温度、加熱速度などの他のパラメータなどを含む1以上のプロセスパラメータから選択して、作製物を準備する。従来、任意の所定の作製物について、プロセスパラメータは、既知の材料、試行錯誤、希望、および/または以前の作製物からの個人的経験において使用される一般的または標準的パラメータに大まかに基づいて、主観的アプローチにより手動で選択される(501)。残念ながら、主観的アプローチは、特に、プロセスパラメータが変更されるたびに試験部品を作製し、評価しなければならない場合、通常は時間を要する。場合によっては、そのような作製物から得られる部品は、制限的な物理的および/または構造的特性(502)を有しうる。例えば、部品は、所望の多孔度を達成するために必要とされるプロセスパラメータが知られておらず、見つけることができないため、所望の多孔度を有していない場合がある。他の場合には、部品は、欠陥、作製物の破損、および物理的特性(特徴)/構造的欠陥なしに作製することができず、したがって、作製材料はAMに不適であると見なされる。
【0032】
別の見方では、作製材料から部品を作製するためのプロセスパラメータを容易に特定することができる場合には、多くの作製材料がAMに好適とみなされうる。例えば、プロセスパラメータは、作製材料の熱挙動(また、「熱進展」、「温度進展」、または「熱プロファイル」)を制御するために調整されてもよい。図5Bは、処理パラメータが作製材料の処理挙動に基づいて最適化されうる材料ドリブンの方法(材料を中心に置いた方法)を実施する、本開示の特定の実施形態による例示的なワークフローを示す。ワークフローは、演算装置上に実装されてもよい。ステップ503から開始して、部品の所望の特徴は、演算装置によって決定されてもよい。部品の例示的な特徴は、例えば、微細構造、表面仕上げ、多孔度、密度、延性、熱伝導率、脆性、強度、引張強度、圧縮強度、剪断強度、変形性、弾性、耐久性、およびそれ以上のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、物理的特徴および/または構造的特徴を含んでもよい。特定の処理条件下での作製材料の挙動が知られている場合(「プロセス挙動」504)、演算装置は、その条件を部品の物理的特徴および/または構造的特徴に関連付けることができる。例えば、作製材料が溶融し、結晶化し、劣化する温度が知られており、これらの温度と物理的または構造的特徴との間の関係が知られている場合、所望の物理的および/または構造的特徴を有する部品を製造するために、作製材料の処理中に温度を制御することができる。温度の制御は、AM装置のための最適化されたプロセスパラメータを決定する際に重要な考慮事項となりうる。ステップ505において、演算装置は、AM装置のための最適化された処理パラメータを設定するために、所望の特徴と処理挙動との間の関係を使用する。結果として得られる作製部品(ステップ506で得られる)は、所望の特徴を有する。
【0033】
図6は部品(「オブジェクト」または「印刷部品」)を作製するための例示的なワークフローの実施形態をより詳細に示し、作製材料の選択、部品の所望の特徴、およびオブジェクトが作製されるAM装置(「機械」)の特性から開始する。これらの入力は、様々な方法で得られ、または決定され、次いで、演算装置に入力されうる。ステップ600において、作製材料(「材料」)が選択される。作製材料は、液体樹脂、粉末、熱可塑性、金属または合金、または他の適切な3D印刷材料から選択されてもよい。幾つかの実施形態では、作製材料は、レーザ焼結に適した粉末調製物(または「ポリマー粉末」)に作製されたポリマーである。作製材料は、結晶性、半結晶性、または非晶質であってもよい。例示的なポリマー粉末は、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、熱可塑性ウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含む。作製材料は、以前に作製に使用されたことがない粉末(「未使用粉末」、「新しい粉末」、または「未使用粉末」)を含んでもよく、または、予め加熱されているが作製物中で焼結されていない粉末(「リサイクル粉末」、「使用済み粉末」、「再使用済み粉末」、「熟成粉末」、または「熱熟成粉末」)を含んでもよく、または、未使用粉末とリサイクル粉末との混合物を含んでもよい。例えば、作製材料は、約1:1の比率で新しいPA12およびリサイクルされたPA12を含むことができる。作製材料は、レーザ焼結に現在使用されていない新規なポリマー粉末、またはその化学的および/または物性のためにレーザ焼結の候補として同定されているポリマー粉末であってもよい。それらの化学的および物理的特性のために選択された例示的な作製材料は米国特許第9,782,932号に記載されており、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
候補作製材料を選択する場合、粒子形状、粉末分布、熱的、レオロジー的および光学的挙動のうちの1つ以上が考慮されうる。特性は、作製材料が示差走査熱量測定(DSC)、x線回折(XRD)、熱重量分析(TGA)のうちの1つ以上のような測定に供される場合、または作製材料がレーザ焼結プロセスのような作製条件に置かれる場合に決定されうる。例えば、作製材料の粘度はレオロジー測定によって決定されることができ、癒合(coalescence)は高温(ホットステージ)顕微鏡によって決定されうる。溶融温度、劣化温度、結晶化温度などの特徴は、例えば、DSC、flash-DSC、またはレーザ焼結中に、作製材料の温度曲線(または「熱プロファイル」)から得ることができる。他の例示的なポリマー特性には、結晶化度、溶融エンタルピー、ゼロ剪断粘度、分解温度、溶融温度、および結晶化温度が含まれるが、これらに限定されない。一般に、ポリマー特性は、実験条件下で測定することができるが、実生活環境において変動を示す。幾つかの実施形態では、ポリマー特性は、実験設定で近似され、実際の作製中に検証されてもよい。幾つかの実施形態では、ポリマー特性は、例えば、実験設定が実際の状態を正確に表さない場合、作製中にのみ決定されてもよい。
【0035】
ステップ601において、作製材料のプロセス挙動に関する情報が取得される。プロセス挙動は、加熱、冷却、溶融、焼結、および新しい化学環境への曝露など、1以上のさまざまな処理条件での作製材料の挙動に関連する。プロセス挙動は、処理中の作製材料に対する変化、例えば、作製材料の機械的、化学的、電気的、熱的、光学的、または磁気的特性の変化を反映しうる。プロセス挙動は、非線形であってもよく、以前の処理履歴に依存してもよい。
【0036】
ステップ602において、部品の所望の特徴が決定される。部品の例示的な特徴は、微細構造、表面仕上げ、多孔度、密度、延性、熱伝導率、脆性、強度、引張強度、圧縮強度、剪断強度、変形性、弾性、耐久性、およびそれ以上のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、物理的および/または構造的特徴を含む。
【0037】
ステップ603において、AM装置の物理的仕様(「物理的特性」、「機械パラメータ」、「技術的仕様」、「機械仕様」、または「物理的仕様」)が決定される。「機械パラメータ」、「技術的仕様」、または「機械仕様」としても知られる物理的仕様は、機械ハードウェアの構成要素、ならびに構成要素の機能および制限を含むことができる。AM装置の例示的な物理的仕様は、1以上のレーザ数、レーザビーム形状、レーザビームサイズ(「ビームスポットサイズ」または「直径」)、最小レーザ出力、最大レーザ出力、走査遅延、走査速度(例えば、「レーザ速度」、例えば、最大走査速度、走査アウトラインの速度、走査フィルの速度)、作製オブジェクト積、作製速度(例えば、mm/hr)、層厚さ範囲、粉末レイアウト、リコータタイプおよび速度、加熱システム、撮像システム、センサ、粉末リサイクルおよび取扱い、材料リフレッシュレート、起動時間などを含む。AM装置はそれぞれ、2つ、3つ、または4つ(またはそれ以上)のレーザなどの各物理的仕様についての値の範囲、複数のレーザビーム形状、レーザビーム直径サイズの範囲、AM装置が動作可能なレーザ出力および走査速度の範囲などを有することができる。物理的仕様のサブセットは、例えば、レーザの数、レーザビーム形状、レーザビームサイズ(例えば、直径またはスポットサイズ)、最小レーザ出力、最大レーザ出力、および走査速度などの、処理中の作製材料の熱的挙動に重要な影響を及ぼす物理的仕様から決定することができる。したがって、レーザ出力、レーザ走査速度、レーザビーム形状、およびレーザビームサイズ(例えば、ビーム直径またはビームスポットサイズ)のうちの1以上を調整および/または最適化して、処理中の作製材料の熱挙動に影響を与えることができる。物理的仕様は、AM装置にインストールされるソフトウェア機能、および/またはAM装置と共に使用するための推奨材料をさらに含むことができる。
【0038】
ステップ604において、作製材料(601)のプロセス挙動、部品(602)の所望の物理的および/または構造的特徴、およびAM装置(603)の物理的特性に関する入力が、新しいプロセスパラメータを設定するために演算装置によって使用される。新しいプロセスパラメータは、入力(例えば、入力のすべて)を反映し、組み込む。幾つかの実施形態では、演算装置が、最初に、所望の特徴を有する部品を作製するのに既に適している可能性がある新しいプロセスパラメータを決定する。幾つかの実施形態では、新しい処理パラメータは、所望の特徴を有する部品を作製するのに適した正確な処理パラメータではないが、試行錯誤のような他の方法で開始することによって、または同様の作製材料に基づき可能性のある処理パラメータを推測することによって得られる処理パラメータよりも近い近似値であってもよい。演算装置が、限定された範囲の、可能性を有する新しいプロセスパラメータを生成する場合、次に行われる限定された範囲内の試験は、試行錯誤による手法を使用したとしても、より広い範囲から開始するよりも、あるいは、情報を与えられていないプロセスパラメータ群から開始するよりも迅速に行われうる。
【0039】
ステップ605およびステップ606において、新しいプロセスパラメータがテストされる。ステップ605aでは、部品が、シミュレーションソフトウェアまたはモデル化された演算を使ってシミュレーションされるが、実際の物理的部品は作製されない。ステップ606aにおいて、演算装置は、シミュレートされた部品のシミュレートされたプロセス挙動を、所望の(「参照」または「モデル」でもある)プロセス挙動と比較する。シミュレートされたプロセス挙動が基準を満たす場合、例えば、測定されたプロセス挙動が所望のプロセス挙動に近い閾値内に入るため、このことは、新しいプロセスパラメータが、適切であり、部品を作製するために使用されうることを示す(607)。例えば、測定されたプロセス挙動は、作製材料が時間の経過とともに加熱または冷却するときの、作製材料の状態、位相、状態の変化などの熱挙動を含んでもよい。演算装置は、シミュレートされた熱的挙動を基準の熱的挙動と比較することができる。シミュレートされたプロセス挙動が基準を満たさない場合、このことは、新しいプロセスパラメータが部品を作製するのに適していないことを示し、プロセスはステップ604に戻り、演算装置はプロセスパラメータの新しいセットを決定しうる。プロセスパラメータに関する任意のデータは、それらが基準を満たすプロセス挙動を示す部品をもたらすか否かにかかわらず、コンピュータ記憶媒体に記憶され、後に演算装置によって使用されて、同じまたは異なる作製物を作製するための将来のプロセスパラメータを選択し、調整するために役立つ。
【0040】
ステップ605bにおいて、AM装置において試験部品が作製され、演算装置が、作製材料の実際のプロセス挙動と所望のプロセス挙動とを比較する。シミュレートされたプロセス挙動と同様に、実際のプロセス挙動が基準を満たす場合、例えば、所望のプロセス挙動に類似している場合、このことは、新しいプロセスパラメータが部品を作製するのに適していることを示し、部品は新しいプロセスパラメータを使用して作製されうる(607)。実際のプロセス挙動を参照モデルと比較する1つの例示的な方法は国際特許出願公報第2016/201390号に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。基準が満たされない場合、プロセスはステップ604に戻り、プロセスパラメータの新しいセットが決定される。処理パラメータに関する任意のデータは、それらが基準を満たす部品および/または処理挙動につながるか否かにかかわらず、コンピュータ記憶媒体に記憶され、同様のまたは異なる作製物を作製するための将来の処理パラメータを選択し、調整するために、後に演算装置によって使用されてもよい。
【0041】
試験および比較のステップは、シミュレートされたまたは実際のプロセス挙動が基準を満たし、部品が作製されるまで繰り返されてもよい。
【0042】
図7は、新しいプロセスパラメータの設定と部品作製の間に設けられる、例示的な追加のステップの実施形態を示す。ステップ700では、新しいプロセスパラメータが設定されている。ステップ701は、図6のステップ605aおよび/またはステップ605bでのシミュレーションまたは作製ステップ、ならびに、図6のステップ606aおよび/またはステップ606bの所望のプロセス挙動との比較を参照する。温度挙動および/または所望の物理的および/または構造的特徴などのプロセス挙動と新しいプロセスパラメータとの関係を反映するデータは、コンピュータ記憶媒体に記憶され、および/またはデータベースを構築するために収集されうる(702)。演算装置は、例えば、試験された第1のプロセスパラメータが適切でなかったとき、または、後で異なる作製物を作製するときに、新しいプロセスパラメータを設定することを目的にデータベース内の情報を使用することができる(604)。幾つかの実施形態において、既存のデータベース内の情報は、新しい処理パラメータの第1のセットを設定するために使用されてもよく、処理パラメータを選択するために演算装置によって使用される第1のおよび/または唯一のソースであってもよい。幾つかの実施形態では、部品を作製するのに適したプロセスパラメータを選択するために、演算装置が、データベース(702)からのプロセスパラメータ情報と、試験ステップおよび比較ステップ(701)からの値との組み合わせを使用する(703)。ステップ704において、演算装置は、部品を作製するための命令を生成する。ステップ705において、演算装置は、命令の監視および制御を提供する。演算装置は、作製開始前に監視でき、および/または、作製中にオンラインで監視することができる。演算装置は、ステップ704での命令の修正、または作製の停止などの是正措置をとるために制御機能を使用することができる。ステップ706において、AM装置にて部品が作製される。
【0043】
[走査計画の準備]
説明したように、走査計画の準備はコンピュータで実施される方法のいくつかのステップ、すなわち、第1に、ポリマー特性およびプロセス挙動をプロセスパラメータに変換し、第2に、プロセスパラメータをすべての要件を満たす走査パターンに変換するステップを含みうる。
【0044】
本開示の一態様は、部品を付加製造する走査計画を準備するためのコンピュータ実行方法に関する。具体的には、演算装置が、作製物の1以上の断面層を走査する方法を準備する。単一の作製物は、全てが同じ作製材料から作製された、および/または、全てが同じAM装置上の同じ作製チャンバ内にて作製された、1つ以上の部品を含んでもよい。部品はそれぞれ互いに入れ子にされてもよく、および/または、x、y、およびz方向の任意の方向において互いに離間していてもよい。作製物の断面層(また、「層の断面」または「オブジェクトの断面」)が走査される場合、走査される領域は、少なくとも1つの部分の断面に対応しうる。
【0045】
幾つかの実施形態において、作製物の断面層を付加製造するための走査計画を準備するコンピュータ実行方法は、演算装置内において、(1)作製材料の熱特性を取得するステップと、(2)熱特性から、付加製造するための作製材料の処理に適切な温度範囲を導出するステップと、(3)付加製造装置の物理的仕様を取得するステップと、(4)作製物の断面層に係る走査計画を決定するステップと、を含み、走査計画は、作製物の断面層の各点について、その点が最初に走査される時点から作製物の断面層のすべての点が走査されるまで、作製材料の処理に適切な温度範囲内の保持温度(maintenance temperature)を保持するように構成され、走査計画は付加製造装置の物理的仕様に少なくとも部分的に基づいて決定され、(5)断面層を作製するために、走査計画に従って付加製造装置を使用して作製材料の走査を制御するステップと、を含む。
【0046】
図8は、本明細書で説明されるコンピュータ実行方法の例示的な実施形態を示す。ステップ800において、演算装置は、作製材料のプロセス挙動に関する情報を取得する。例えば、プロセス挙動は、異なる温度に曝されたときの作製材料の熱特性を含みうる。熱特性は、作製材料が固相から液相に変化する溶融温度(T)、作製材料が硬いガラス状態から粘性状態に遷移するガラス転移温度(T)、作製材料が溶融後に結晶化する結晶化温度(T)、および/または作製材料が劣化する劣化温度(T)などの、作製材料が様々な状態、相、および/または条件に遷移する温度を含むことができる。熱特性は、作製材料が加熱または冷却する速度、例えば、温度に到達する速度のうちの1つ以上を含みうる。遷移は一定の温度範囲にわたって発生する可能性があり、加熱または冷却の速度は、異なる作製材料に対して変化する可能性がある。また、加熱および冷却の速度は、作製材料の熱履歴により変化する場合がある。さらに、粒子サイズまたは充填密度などの物理的特性、および作製材料の加熱/冷却速度などのプロセスパラメータが、遷移温度に影響を及ぼす可能性がある。したがって、作製材料が遷移する温度または温度範囲は、作製材料の特定の試料(サンプル)において変化しうる。
【0047】
熱特性に基づいて、演算装置は、作製材料の処理に適切な温度範囲を決定する(801)。例えば、作製材料は、分解温度ではなく、溶融温度まで加熱されてもよい。作製材料は、所定の期間、第1の温度に維持されてもよく、またはある温度範囲内の保持温度に保持されてもよい。幾つかの実施形態では、演算装置が作製材料内の各点について保持されなければならない保持温度を、その点が最初に走査された時点から断面層内のすべての点が走査された時点まで選択する(802)。
【0048】
幾つかの実施形態では、保持温度は溶融温度である。幾つかの実施形態では、最低温度は結晶化温度である。したがって、走査計画は、分解温度付近の上限値と、作製材料が溶融後に結晶化する結晶化温度を上回る下限とを含む範囲内に、各点について保持温度を維持するように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、上限は溶融温度付近であり、下限は結晶化温度より高い。
【0049】
演算装置は、AM装置の物理的仕様を取得し(803)、これらの物理的仕様を使用して、作製物のための走査計画を決定することができる。幾つかの実施形態では、演算装置が、AM装置の物理的仕様に少なくとも部分的に基づいて走査計画を決定する。例えば、走査計画は、選択されたレーザ、レーザ出力、レーザ形状、レーザビームスポットサイズ、走査時間、走査パターン、走査順序、及び作製物の断面層上の点を走査するための走査数に関する命令を含むことができる。幾つかの実施形態では、演算装置が、走査パターン、レーザ走査パラメータ、及び作製材料に熱挙動のようなプロセス挙動を呈させるように構成された走査順序を含む走査計画を決定することができる。これらの命令は、AM装置の利用可能な機能から、走査の組み合わせ(例えば、ハッチ、ラスター、塗りつぶし、境界、輪郭、エッジ、ブロックされた経路など、または湾曲した経路などのベクトル)および/または断面層を最も効率的に作製する走査の順序を選択するように構成された演算装置において決定されてもよい。演算装置はさらに、どのレーザを使用すべきか、および走査計画における走査のそれぞれについて使用するタイミングを決定することができる。
【0050】
演算装置は、命令の最適な組み合わせに到達するために、(例えば、すべての)要件および考慮事項をバランスさせることができる。例えば、走査計画が断面層内のある点で作製材料を溶融するための少なくとも1つの初期走査を含む場合、初期走査は、作製材料がその溶融温度に到達するがその分解温度には到達しないのに十分なエネルギーを提供することができる。走査のための命令は、走査の時間および/またはレーザビームの形状を調整することによって、この初期走査のためのレーザ出力を調整することができる。低レーザ出力は、露光時間が長くなるため、より遅い走査速度と組み合わせて使用することができる。同様に、ビームスポットが従来のガウスビームよりも均一なエネルギー密度を提供するフラットトップ(または「トップハット」)形状を有する場合、レーザ出力を減少させることができ、および/または走査速度を増加させることができる。したがって、最初の走査のために、演算装置は、所定のレーザビーム形状および走査速度によって媒介されるように、特定の時間期間の間、特定のレーザ出力を決定することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、走査計画は、作製物の断面層の各点について、その点が最初に走査されてから作製の断面層の全ての点が走査されるまで、作製材料の処理に適切な温度の範囲内の保持温度を維持するように構成される。ステップ804において、演算装置は、層が走査される全時間にわたって、AM装置が断面層の各点で保持温度を維持するための命令を含む走査計画を決定する。
【0052】
保持温度は、作製材料の劣化温度付近の上限値と、作製材料の結晶化温度を超える下限とを含む範囲内であってもよい。保持温度は、作製材料の溶融温度付近の上限値と、作製材料の結晶化温度を超える下限値とを含む範囲内であってもよい。一般に、保持温度は、作製チャンバ内のすべての作製材料が保持される予熱温度を上回っていてもよい。幾つかの実施形態では、任意の所定の時点での結晶化のプロセスは、冷却速度、加熱速度、断面層内の点を取り囲む環境、または最初の溶融後においても試料中に残存する結晶などの実験的、環境的、および動力学的因子に依存しうる。例えば、結晶化温度は、実際の作製条件において異なっていてもよく、例えば、近似または実験測定から予想されるよりも高くてもよい。従って、断面層のいくつかの点においては保持温度よりも低い温度で実際に結晶化する可能性があるものの、保持温度は、保守的な条件下での結晶化温度に基づいて選択される下限を有する範囲内であってよい。特定の実施形態では、保持温度は、DSCなどの実験条件下で決定された温度範囲に基づいてもよく、動力学的要因および環境要因を考慮してさらに調整されてもよい。
【0053】
演算装置によって決定される例示的な走査計画は、第1の出力で出力されるある点における1つの初期走査と、それに続く、走査時間、レーザ出力、ビームスポットサイズ、ビームスポット形状、または走査の数のうちの少なくとも1つが初期走査とは異なる前記点における後続走査とを含むことができる。複数のレーザを有するAM装置において、演算装置は、第1の点で作製材料を溶融するために、この第1の点の初期走査のために第1のレーザを使用する走査計画を決定することができる。次いで、第1のレーザは、第2および第3の点、そしてn番目までの点での初期走査に使用されてもよい。一方、第1の点が溶融温度から保持温度まで冷却するとき、第2のレーザを使用して、保持温度を維持するために、第1の点に対して少なくとも1つの後続の走査を提供することができる。したがって、演算装置は、任意の走査点がその初期走査を受け、その保持温度まで冷却する時間間隔を決定することができ、それによって、走査計画は、その点の後続の走査のための命令を提供する。幾つかの実施形態では、走査計画は、全ての走査に単一のレーザのみを使用することができるが、初期走査及び後続の全ての保持走査の両方に単一のレーザが使用される場合には部品を作製するための時間が増加しうる。図9は、時間の関数としてある点における温度を示す例示的な熱サイクルプロットである。プロット上で、3つの黒い矢印は、点が走査される3回を示す。第1の走査の後、温度は溶融温度(T)を超えて上昇するが、分解温度(T)未満のままである。温度が結晶化温度(Tc)まで冷却されると、後続の走査は、Tを上回る温度、この場合もTを上回る温度を維持する。予熱温度(Tpreheating)もプロットに示す。一般に、Tpreheatingは、例えば、作製物の表面に対する加熱ランプの作用によって、作製物の表面上の作製材料の全てが到達する全体予熱温度を指す。全体予熱は、作製物の表面上のオブジェクトの断面における点またはベクトルの任意の特定の組に向けられたものではない。
【0054】
演算装置は、後続の走査(同じレーザからであろうと、異なるレーザからであろうと)が初期走査と同じ経路を遡る走査計画を決定することができ、あるいは、経路を変化させる走査計画を設定することができる。後続の走査は、初期走査に対して直角に、または90°未満の角度で角度付けされてもよい。幾つかの実施形態では、最初の走査によって走査されなかった点が後続の走査によって走査されてもよい。例えば、後続の走査においてより大きなレーザビームスポットが使用される場合、大きな面積が走査されてもよく、この大きな面積は、最初に走査されなかった点に加えて、最初に走査された1つ以上の点を含む。幾つかの実施形態では、走査された1以上の点は部品に対応しなくてもよい。別の例示的な走査計画では、ある点で作製材料を溶融する初期走査の前に、予熱レーザ走査を用いてある点を予熱することができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、演算装置は、個々の点ごとに走査計画を決定する。第1の点のための第1の走査計画は、第2の点のための第2の走査計画とは異なりうる。例えば、第1の点は第2の点の前に走査されてもよく、そのため、第1の点は、最初の走査と、断面層上の他の全ての点が走査される時間との間のより長い時間間隔を有する。その結果、第1の点は、より長い時間間隔にわたって保持温度に留まるために、より多くの数の後続走査を必要とする場合がある。対照的に、第2の点は、より短い間隔で保持温度に留まるために、後続の走査が少なくて済む場合がある。
【0056】
幾つかの実施形態では、演算装置は、複数の点についての走査計画を決定する。作製物内の点は、互いの近さに基づいて複数の点にグループ化することができる。例えば、作製物の断面層上の第1の空間的位置における第1の複数の点は全て、第1の走査計画に従って走査されてもよく、一方、断面層上の第2の空間的位置における第2の複数の点は全て、第2の走査計画に従って走査されてもよい。作製物内の点は、走査の時間的順序、例えば、点が走査される時間ビンに基づいて、複数の点にグループ化されうる。例えば、第1の時間ビンの間に、第1の複数の点(互いに近接して配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい)が、第1の走査計画に従って走査されてもよい。第2の時間ビンの間に、第2の複数の点が、第2の走査計画に従って走査されてもよい。第3の時間ビンの間、第1の複数の点は、第1の複数の点の各点で保持温度を維持する第3の走査計画に従って再走査されてよい。作製物内の点はベクトルの類似性(例えば、ハッチング、境界、塗りつぶし、またはエッジ)に従って、または類似点が一般化されうる任意のデータブロックに従って、複数の点にグループ化されうる。幾つかの実施形態では、断面層が全体的に見られる場合、層全体にわたる走査計画は不均一である。
【0057】
図10は、4つの正方形(1、2、3、および4)を含む作製物の断面層のための例示的な走査計画を示す。この実施例では、正方形内のすべての点が同じ正方形内の他の点と同じように扱われるが、各正方形の走査計画は異なる。6つの時点(t1、t2、t3、t4、t5、およびt6)の間、各正方形における走査計画のスナップショットが示されている。t1において、正方形1が走査される。t2において、正方形2が走査される。t3において、正方形1が再走査され、今度はt1における初期走査に直交し、また、正方形1よりも大きい面積をカバーする走査パターンを使用する。これは、より広いビームスポット及び/又はハッチ間のより広い間隔から生じる。t4において、正方形3が走査される。t5で、正方形2は再走査され、再度、t2における最初の走査に直交し、正方形2よりも大きい面積もカバーするパターンを使用する。t6において、正方形1が再走査される。このとき、t3における走査と直交するパターンになる。後の時点での後続の走査は示されていないが、スナップショットは各正方形についての走査パターンの変化を示している。
【0058】
演算装置によって決定される走査計画は、作製物の断面層内の点の全体的な構成に依存しうる。作製物が走査すべき複数の点を含む場合、走査される第1の点(または第1の複数の点)は、走査すべきより少ない点を含む作製物と比較して、より多くの後続の走査を行う。図11は、作製物の2つの例示的な断面層における走査パターンの相違を示す。図11Aの断面層は4つの正方形を含み、一方、図11Bの断面層は、6つの正方形を含む。簡単のために、各正方形の単一点からの熱サイクルを図示する。図11Aでは、正方形1の点を3回走査し、時間の関数としての温度を各走査後にプロットした(図9のように)。正方形2および3もまた、それぞれ3回走査した。正方形4を2回走査した。図11Bでは、正方形1、2、および3をそれぞれ4回走査した。正方形4および5をそれぞれ3回走査し、正方形6を2回走査した。したがって、図11Aの正方形1は図11Bの正方形1と類似しているか、または同一でさえあるが、全断面層のための走査計画は断面層内の他の正方形を説明し、演算装置は異なる走査パターンを決定する。
【0059】
幾つかの実施形態では、演算装置が、走査計画を決定し、断面層を作製するために、走査計画に従ってAM装置を使用して作製材料の走査を制御する。演算装置は、最適な走査計画を事前に決定することができる。それにより、作製中にさらなる監視または是正措置が必要とされない。特定の実施形態では、演算装置は、監視可能な走査計画の範囲を決定することができる。監視は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2016/201390号に記載されているように、作製中に熱プロファイルを取得し、それらを参照熱プロファイルと比較することを含んでよい。参照熱プロファイルからの偏差が検出された場合、例えば、偏差が閾値を超えた場合、演算装置は、走査計画を変更する、または作製を停止するなどの是正措置をとることができる。演算装置は、将来の使用のために、成功した走査計画および訂正された走査計画の両方の記録を記憶することができる。
【0060】
多くのレーザ焼結用途および付加製造技術のための他の粉末床溶融結合法において、走査のエネルギー密度は作製物の品質および成功に役割を果たす。エネルギー密度を決定し、表示し、調整するための方法は国際特許出願公開第2018/064066号に記載されており、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示のさらなる態様は、走査に必要なエネルギーを説明するレーザ焼結方法である。作製物の断面層をレーザ焼結するためのコンピュータ実施方法は、(1)演算装置において、前記断面層上の複数の点を走査するために必要とされる、前記複数の点を第1の温度まで上昇させる第1の電力レベルを決定するステップと、(2)演算装置において、前記複数の点を走査するための、前記第1の温度よりも低い第2の保持温度において前記複数の点を保持する第2の電力レベルを決定するステップと、(3)前記第1の電力レベルおよび前記第2の電力レベルに基づいて走査計画を決定するステップであって、前記複数の点に含まれるそれぞれの点を、当該点が最初に走査され、前記断面層内のすべての点が走査されるまで、前記第1の温度に到達させ、かつ、それぞれの点を前記第2の保持温度以上に維持するように構成された前記走査計画を決定するステップと、(4)前記断面層を作製するために、前記走査計画に従った付加製造装置を使用して作製材料の走査を制御するステップと、を含む。
[例示的な走査計画]
幾つかの実施形態では、作製物の断面層を付加製造するための走査計画を準備するコンピュータ実行方法は、演算装置内において、(1)作製材料の熱特性を取得するステップと、(2)熱特性から、付加製造するための作製材料の処理に適切な温度範囲を導出するステップと、(3)付加製造装置の物理的仕様を取得するステップと、(4)作製物の断面層に係る走査計画を決定するステップと、を含み、走査計画は、作製物の断面層の各点について、その点が最初に走査される時点から作製物の断面層のすべての点が走査されるまで、作製材料の処理に適切な温度範囲内の保持温度(maintenance temperature)を保持するように構成され、走査計画は付加製造装置の物理的仕様に少なくとも部分的に基づいて決定され、(5)断面層を作製するために、走査計画に従って付加製造装置を使用して作製材料の走査を制御するステップと、を含む。
【0061】
幾つかの実施形態では、演算装置によって決定される例示的な走査計画は、第1の出力で行われるある点の1つの初期走査を含み、その後、走査時間、レーザ出力、ビームスポットサイズ、ビームスポット形状、または走査の数/走査のパターンのうちの少なくとも1つが初期走査と相違する、前記点における後続の走査を含みうる。
【0062】
走査計画において、保持温度(維持温度)は、溶融温度に近い温度、または作製材料の任意の転移温度などの設定温度であってもよい。保持温度は、作製材料のほとんどまたはすべての物理的、機械的、および/または熱的特性が変化する温度範囲であってもよい。例示的な走査計画において、保持温度は、断面作製物内のある点が最初の走査中または走査後に到達する第1の温度またはその近辺の温度であってもよい。図12A~12Cは、オブジェクト(1200)の断面層のための走査計画を示す。図12Aでは、第1の複数の点を走査するために、第1の組のベクトル(1201)を使用してもよい。第1の複数の点は、オブジェクトの断面層内のすべての点を含むことができる。第1の複数の点は、オブジェクトの断面層内の点のサブセット、例えば、オブジェクトの境界からの距離(例えば、内部オフセット)内にあるオブジェクトの点を含むことができる。第1の複数の点は、オブジェクトの断面の外側境界(やはり「境界」または「輪郭」または「エッジ」)を取り囲むか、またはその外側にある外部オフセット部分(やはり「外部」)内の第2の複数の点によって取り囲まれてもよい。オブジェクトの外側境界は、図12Bのオフセット部分(1211)内に示される輪郭-境界ベクトル(1210)の近くに配置され、近似されてもよい。例えば、輪郭境界ベクトル(1210)は、外側境界から約0.01~0.1mmオフセットされてもよく、または0.1~0.5mm(例えば、0.3mm)オフセットされてもよい。いくつかの実施態様では、部品の実際の真の境界からの輪郭-境界ベクトル(1210)のオフセットがビーム補償の一例であってよく、それによって、オフセットは、レーザビーム直径を補償し、材料収縮を補償するために、実験的に決定されうる。
【0063】
総括して、第1の複数の点(および、存在する場合、オフセット内の第2の複数の点)の走査は、予熱走査と呼ばれうる。予熱走査は、すべての作製材料の全体的な予熱とは区別される場合がある。なぜならば、全体的な予熱は、作製物上のどの点にも特有でない場合があり、かつ、作製物表面をヒートランプにさらす効果を有しうるためである。対照的に、予熱走査は、作製物内のベクトルおよび点に特有であり、レーザを用いた走査から生じる場合がある。幾つかの実施形態では、後続の走査ステップの前に、予熱走査が作製物内の所望の点を予熱するのに十分でありうるため、全ての作製材料の全体的な予熱を減少させることができる。場合によっては、作製物内で全体的な予熱を軽減することで、作製材料の熱劣化が低減しうる。第1のベクトルセットの予熱走査は、第1の複数の点の温度を第1の温度まで上昇させることができる。第1の温度は、保持温度であってもよい。ポリアミド12(PA12)の試料については、保持温度は170~180℃の範囲内、例えば170~175℃でありうる。
【0064】
図12Bにおいて、第1の複数の点の第1のサブセット(1210)を走査するために第2のベクトルのセットを使用することができ、第1のサブセットは、オブジェクトの断面の輪郭に沿った点を含む。複数の点の第1のサブセットの走査は、輪郭走査と呼ぶことができる。図12Cにおいて、ベクトルの第3のセットを使用して、第1の複数の点の第2のサブセット(1220)を走査することができ、第2のサブセットは、輪郭内の塗りつぶし(やはり「ハッチング」または「ボリューム」)内の点を含む。複数の点の第2のサブセットの走査をハッチング走査(やはり「ハッチング」または「塗りつぶし走査」)と呼ぶことができる。一般に、ハッチ走査は、オブジェクトの断面の輪郭内に入る点を走査するために使用されてもよいが、ハッチ走査のプロセスでは、輪郭に沿った点が追加的に走査されてもよい。例えば、ハッチングベクトルの端部を走査するために使用されるビームスポットサイズが十分に広い場合、それは、輪郭上の近くの点上の作製材料を溶融することがある。
【0065】
保持温度は、予熱走査、輪郭走査、ハッチ走査の組み合わせにより、到達、維持される。幾つかの実施形態では、保持温度は、予熱走査の温度であってもよく、溶融温度に近くてもよいが、溶融温度に達しないか、またはそれを超えない。
【0066】
図12Dは、例示的オブジェクトの断面層の端部(例えば、輪郭上)における例示的な点のための温度プロファイルを示す。温度プロファイルにおいて、点の温度は、予熱走査中に保持温度に達し、続いて、その保持温度は、輪郭走査中およびハッチ走査中に維持される。例えば、輪郭走査およびハッチ走査によって作製材料が溶融温度よりも高い温度まで上昇すると、輪郭走査およびハッチ走査の後、作製材料の温度は保持温度よりも高くなりうる。点の温度を最高温度まで上昇させるため、この場合、ハッチ走査後、作製パラメータを変化させてもよい。幾つかの実施形態では、予熱走査及び輪郭走査と比較して、レーザ出力を増加させることができる、又は、ハッチ走査ステップにおいてレーザスポット寸法を増加させることができる。あるいは、予熱走査ステップは、輪郭走査ステップにおける第2の出力よりも低く、またハッチ走査ステップにおける第3の出力レベルよりも低い第1の出力レベルで走査することができる。輪郭走査ステップの第2の出力は、予熱走査ステップの第1の出力よりも高く、また、ハッチング走査ステップの第3の出力よりも高くしてもよい。幾つかの実施形態において、ハッチング走査によって走査された結果として生じる内部ゾーンの温度は、輪郭線におけるエネルギー密度と対照的に、複数のベクトルの累積効果のため、より高くなりうる。
【0067】
幾つかの実施形態では、走査された内部からの熱が輪郭線に伝達されてもよい。予熱走査、輪郭走査およびハッチ走査から蓄積された熱は、ハッチ走査が最後の走査ステップであったとしても、図12Dに示される高温まで、エッジ上のある点(例えば、輪郭上)における温度を上昇させるのに十分でありうる。
【0068】
走査計画は、追加の予熱走査ステップを含んでもよい。例えば、第1の予熱走査ステップは、オブジェクト内の全ての点を含む第1の複数の点のみを含むことができ、第2の予熱走査ステップは、第1の複数の点、及び、オブジェクトの境界周囲のオフセットに含まれる第2の複数の点を含むことができる。予熱走査ステップは、オブジェクトの境界を含む第1の複数の点と、境界の外側の点を含む外部オフセットと、境界の内側の選択点を含む内部オフセットとを含みうる。
【0069】
走査計画は、1つ以上の加熱後走査ステップをさらに含んでもよい。加熱後走査ステップは、例えば、1つ以上の点の冷却速度を制御するために、層内の点が走査された後に、断面層内の1以上の点における温度を維持するために使用されてもよい。走査計画は、図12Aのジャンプ(1202aおよび1202b)などの遅延およびジャンプをさらに含むことができる。ジャンプは、レーザが第1の経路(例えば、第1のベクトル)の走査を終了し、第2の経路(例えば、第2のベクトル)の走査を開始するときの、空間的および時間的な遷移であってよい。第1および第2のベクトルは、互いに不連続であってもよく、空間において異なる方向および/または座標を有してもよい。レーザは、第1のベクトルの終点から第2のベクトルの始点までジャンプすることができ、ジャンプ中にオフにされてもよい。
【0070】
さらなる例示的な走査計画では、オブジェクトの断面層の各点で到達される保持温度は開始溶融温度よりも高い。開始溶融温度は、作製材料の溶融が開始する温度であってもよい。作製材料が十分に長い期間(例えば、不定の期間)にわたって溶融開始温度に保持された場合、作製材料のすべてが溶融することが予想される。しかしながら、レーザ焼結プロセスは走査ステップと温度変化の協調を必要とするため、作製材料は長期間にわたって開始溶融温度に保持することができない。したがって、幾つかの実施形態では、保持温度は、作製材料中の結晶の大部分またはすべてが溶融される温度であってもよい。この温度は、作製材料の溶融開始温度よりも高くてよい。
【0071】
場合によっては、保持温度は、作製材料が記憶効果を示す温度より高い温度であってもよい。メモリ効果は、ポリマーなどの作製材料がある物理的状態の間に記憶を保持し、その物理的状態に戻る傾向を指す。例えば、ポリマーは、結晶状態または形状、例えば、レーザによる溶融ステップ後に想定される形状についての記憶効果を示しうる。作製材料中の結晶は、格子などの規則的および/または周期的形態を有する作製材料(例えば、ポリマー)の任意の結晶構造または半結晶構造であってもよい。格子は、空間に配列された1以上の単位セルの繰り返しパターンを含むことができる。場合によっては、結晶状態または形状に対する記憶効果は、結晶構造を形成するためのシードとして作用する残留結晶の存在に起因しうるか、またはその存在によって高められうる。種結晶は、結晶構造の形成を容易にすることができる。場合によっては、結晶状態または形状の記憶効果は、作製材料のポリマー鎖、特にポリマー長鎖が互いにの間で緩い結合を形成することから生じるか、または高められうる。緩い結合は、作製材料の溶融温度(例えば、溶融開始温度)においてさえ、ポリマー長鎖を容易に分離できない構造に安定化させることができる。
【0072】
したがって、作製材料が互いに結合する種結晶および/または長鎖ポリマーを含む場合、作製材料のすべてが溶融され、ほとんどまたはすべての結晶が排除される実際の温度は、種結晶および/または長鎖ポリマーを含まない作製材料と比較して、増加されうる。例えば、PA12のような使用済み粉末の試料はバージン粉末の試料よりも多くのシード結晶および長鎖ポリマーを含むことができ、結晶を溶融し、結晶構造または緩く結合されたポリマー鎖を除去するために、より高い温度を必要としうる。
【0073】
この観点から、本明細書に記載されるような走査計画における作製材料の保持温度は、作製材料中の大部分もしくは全ての種結晶および/または長鎖間の大部分もしくは全ての結合を除去するのに十分に高くてもよい。特定の実施形態では、保持温度または作製材料は、例えば、作製材料中の大部分またはすべての結晶が除去される温度または温度範囲を決定することによって、実験的に測定されてもよい。保持温度は、走査計画中に超えられない最大温度とすることができる。保持温度は、劣化温度よりも低くてもよい。特定の実施形態では、連続する、予熱走査、輪郭走査、およびハッチ走査を使用して、1以上の点で温度を上昇させ、それによって保持温度に段階的に達することができる。溶融温度よりも高い保持温度は、第1の保持温度であってもよい。あるいは、保持温度は、第1の保持温度よりも高い第2の保持温度であってもよく、第1の保持温度に到達するよりも後の時間に各点で到達することができる。
【0074】
作製材料の試料(試料)が、加工履歴、組成物、長鎖対短鎖の割合において異なる場合、保持温度は、試料にわたって変化しうる。例えば、使用済み(または熱老化)粉末の試料は、一部には使用済み粉末が未使用粉末よりもポリマー長鎖および/またはより多くの種結晶を有しうるため、未使用粉末の試料よりも高い保持温度を有しうる。使用済みポリアミド12(PA12)の試料の場合、ほとんどまたはすべての結晶が除去される保持温度は210~230℃、例えば、210~215℃、215~220℃、220~225℃、または225~230℃の範囲内でありうる。
【0075】
従って、走査計画は、作製材料の溶融温度よりも高い保持温度に達するまで、断面層の各点で温度を上昇させるステップを含みうる。保持温度は、作製材料中の種結晶および長鎖ポリマーの結晶化に及ぼす効果が低減または排除される温度であってもよい。温度は、例えば、予熱走査ステップ、輪郭ハッチ走査ステップ組み合わせによって、任意の順序で段階的に上昇させることができる。
【0076】
保持温度は、断面層内の他の点が走査される間、所定の点において維持されてもよい。これは徐冷によって達成することができ、その結果、ある点の温度はその後の走査ステップの間、保持温度を下回らない。例えば、ある点が保持温度に達した場合、その点をさらに走査することなく冷却することが可能である。あるいは、近くの点を走査しなくてもよく、その結果、所定の点が冷却される。一部の実施形態では、断面層の第1の点を再走査することによって、保持温度を維持することができる。保持温度は、第1の点の近くの第2の点又は複数の点を走査(又は再走査)することによって維持することができる。特定の実施形態において、走査計画は、断面層内の全ての点又は点の一部が走査されるまで、第1の点を保持温度に保持するように構成されてもよい。
【0077】
特定の実施形態では、保持温度が限られた期間だけ維持されてもよい。時間は0.001秒~1秒の範囲内であってもよく、例えば、0.05秒、0.1秒、0.15秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、または1秒であってもよい。例示的な走査計画では、保守温度は、例えば、1つ以上の先行する走査ステップ(例えば、予熱走査ステップ、輪郭走査ステップ、ハッチ走査ステップ、他の走査ステップ)によって段階的に到達されてもよく、保守温度に到達した後、さらなる走査ステップは必要とされない。
【0078】
特定の実施形態では、走査計画は、断面層上の1つ以上の点における温度を制御するように構成された一連の走査ステップを含んでもよい。温度は、作製中において、オブジェクトの断面上の全ての点において、または点のサブセットにおいて、維持されてもよい。例えば、オブジェクトの臨界領域内の選択された点における温度は、オブジェクトの断面内の他の点が走査されている間、維持されてもよい。断面オブジェクトの境界に沿った点は、断面層の複数の境界が共に最終的な3Dオブジェクトの表面を形成するため、重要な場合がある。幾つかの実施形態では、オブジェクトの断面が走査される間、境界に沿った点は保持温度に保持される。境界に沿った点は、最終オブジェクトの高品質表面仕上げにとって重要であり、および/または、これらの点がオブジェクトの中心の点よりも多くの熱を失う可能性があるため、重要でありうる。
【0079】
走査計画は、例えば、複数の点を含むベクトルを走査することによって、またはベクトルのセットを走査し、続いて、点、ベクトル、またはベクトルのセットのうちのいくつかまたはすべての少なくとも第2の走査を行うことによって、複数の点に係る第1の走査を含むことができる。作製物内の点は、ベクトルの類似性(例えば、ハッチング、境界、塗りつぶし、またはエッジ)に従って、または類似点が一般化されうる任意のデータブロックに従って、複数の点にグループ化されうる。
【0080】
図13Aは、ベクトルのセットがブロック(また、「データブロック」)として表される例示的な走査計画(1300)を示す。ブロックは、類似性(例えば、ハッチベクトル、境界、塗りつぶし、またはエッジ)に従って、または類似の点またはベクトルを一般化することができる尺度に従ってグループ化された複数の点を含むことができる。ベクトルの各組は断面層内の点に対応し、各ブロックは、順番に走査されてよい。走査計画は、ベクトルを走査し、したがって断面層内の点を走査するタイミングを調整するために、どのようにブロックを構成することができるかを示す。
【0081】
走査計画(1300)の第1のステップは、第1の予熱走査ステップ(予熱パス1(1301))であってもよく、そこでは3つのブロック(a、b、およびcとマークされている)がそれぞれ順番に走査されてもよい。第2のステップでは、予熱パス2(1302)、3つのブロック(a、b、およびc)をそれぞれ順次走査することができる。予熱パス2のブロックは予熱パス1と同じブロックであってもよいし、異なるブロックであってもよい。例えば、予熱パス1はオブジェクトの断面の第1の部分をカバーするベクトルを含むことができ、予熱パス2は、第1の部分と同じではないオブジェクトの断面の第2の部分をカバーするベクトルを含むことができる。予熱パス1および予熱パス2は、オブジェクトの外側にある点(例えば、オブジェクトの境界の外側にあるオフセット内に位置する点)、ならびにオブジェクトの境界に沿った点およびオブジェクトの内側にある点の走査を含むことができる。予熱パス1および予熱パス2の一方または両方は、オブジェクトの境界に沿った点および/またはオブジェクトの内部にあるが、オブジェクトの外部にある点ではない点の走査を含むことができる。
【0082】
次のステップでは、ブロックのメインパス(1303)を走査することができる。ここで、a、b、c、d、およびeとマークされた5つのブロックのセットは連続して走査されうるが、任意の数のブロック(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が、連続して選択され、走査されうる。ブロックは、ベクトルをブロックにグループ化することを容易にする特性を有するベクトルを含むことができる。特定の実施形態では、ブロックは、互いに空間的位置が近いベクトルを含むことができ、または同じ方向を向くベクトルを含むことができる。ブロックは、輪郭ベクトルのみ、またはハッチベクトルのみを含むことができる。ベクトルのブロックは、全てが同じ処理パラメータ、例えば、ブロック内の全てのベクトルについて同じレーザ出力に従って処理されるベクトルを含みうる。幾つかの実施形態では、ブロックは、ベクトルを走査するために必要とされる時間に従って選択されてもよい。例えば、走査計画がブロック当たり1秒の走査時間に適合するように構成されたが、オブジェクトがその走査時間が合計5秒を必要とする複数のベクトルを含む場合、複数のベクトルは5つのブロックに分割されてもよく、その各々のブロックは走査に1秒を要する。走査計画における各ブロックは、走査に割り当てられた時間に適合するように順序付けられてもよく、走査を最適化するように順序付けられてもよい。
【0083】
5つのブロックは、オブジェクトの境界に沿った、および/またはオブジェクトの内部の点を含むベクトルを集合的に含むことができる。ブロックは、再走査されてもよい。ブロックbは2回再走査されうる(ブロックbおよびブロックbとして表示)。ブロックcも2回再走査されうる(ブロックcおよびブロックcとして表示)。ブロックbの再走査(例えば、bおよび/またはb2)は、ブロックbと同一の走査であってもよい。あるいは、ブロックbおよびブロックb2の一方または両方は、ベクトルの組、ベクトルの向き、ベクトル間の間隔、ならびに、レーザ出力、スピード、ビームスポットサイズ、ビーム形状等のレーザパラメータにおいてブロックbとは異なっていてもよい。ブロックcとブロックcのいずれかまたは両方がブロックcと同一の走査であってもよいし、ブロックcとは異なる場合もある。
【0084】
幾つかの実施形態では、ブロックの第1の後加熱パス(1304)および第2の後加熱パス(1305)を走査することができる。この実施例では、第1の後加熱パス(1304)および第2の後加熱パス(1305)のそれぞれは2つのブロックを含む。
【0085】
ブロックはモジュラーであってもよく、その結果、走査および再走査ならびに走査の順序付けは柔軟であってもよい。例えば、作製物内の点または複数の点の温度は、走査の順序を時間調整することによって改善されうる。例えば、予熱パス1(1301)および2(1302)は、オブジェクトの内部および外部の両方の点で、第1の温度まで作製材料を加熱するように構成されてもよい。次いで、メインパス(1303)は、作製材料の点を第2の温度、例えば、作製材料の溶融温度まで、または溶融温度よりも高い温度まで加熱するように構成されてもよい。これは、メインパス(1303)においてブロックa、b、c、d、およびeを走査することによって達成されうる。いくつかの点、例えば、ブロックbおよびブロックcの点については、ある温度を達成または維持するために再走査する必要がありうる。したがって、ブロックbは2回再走査され(ブロックbとブロックb)、ブロックcは2回再走査されてもよい(ブロックcとブロックc)。ある実施形態では、走査および再走査がブロックbおよびbが順序付けされうる。その結果、ブロックbおよびbブロックbおよびブロックcの後、しかしブロックcおよびcの前に走査されうる。あるいは、ブロックbおよびbは、ブロックbの後、しかしブロックc、d、e、c、およびcの前に走査されてもよい。ブロックを走査する他のシーケンスも可能である。走査計画の利点は、任意の所定の時間(例えば、時間-温度曲線またはプロファイル)においてブロック内およびオブジェクト内の点の温度を制御するために、ブロックを順序付け、走査、および再走査することができる柔軟性にある。一般に、走査計画は、ブロックの走査の間に遅延期間を組み込むことができ、遅延期間は、ブロックの走査を時間的に離間するように構成することができる。
【0086】
図13Bは、ある領域内のベクトルがブロック単位でどのように走査されうるかを示す。オブジェクト1310では、領域1311が、単一ブロックの走査を含む第1の予熱走査パスで走査される。続いて、領域1312は、あるブロックの走査を含む第2の予熱走査パスで走査される。この実施例では、領域1311および1312は重複していない。次に、領域1313を走査する。この領域はオブジェクトの断面の輪郭またはその近くにあり、単一ブロックのメインパス輪郭走査に従って走査される。最後に、領域1313の内部の塗りつぶし領域である領域1314を、単一ブロックの2つ目のメインパス走査(例えば、ハッチング走査)で走査する。この実施例では、各領域が1つのブロックで走査される。幾つかの実施形態では、ある領域は、重なり合わない領域1311および1312などの2つ以上の領域に分割されてもよい。ある領域は、輪郭領域1313および塗りつぶし領域1314のような、重なり合う領域または隣接する領域に分割されてもよい。領域は、重複していても、隣接していても、重複していなくても、ベクトルの単一のブロックとして、またはベクトルの2つ以上のブロックとして走査することができる。
【0087】
作製物の断面層は、1つ以上の部品の断面を含みうる。例えば、作製物の複数の断面層が共に1以上の3D部品を形成してもよい。幾つかの実施形態では、作製物の断面層内の1以上の点が部品に対応しなくてもよい。特定の実施形態では、1つの部分の断面のすべての走査が層内の別の部分に進む前に完了してよい。作製物の断面層は、1つの部分の断面を示してもよく、または層中の2つ以上の部分を示してもよい。第1の走査計画は、第1の部分の断面を含む断面層の第1の部分を走査するように構成することができ、第2の走査計画は、第2の部分の断面を含む断面層の第2の部分を走査するように構成することができる。断面層内の第1および第2の部分は、別個のオブジェクトであってもよく、または同じオブジェクトの2つの領域であってもよい。
【0088】
[ゾーニング]
本開示のさらなる態様は、オブジェクトの断面における複数の区域(ゾーン)のための複数の走査計画を含む走査計画に関する。幾つかの実施形態では、オブジェクトの断面または断面の部分が、複数のゾーンおよび/または複数のサブゾーンに分割されてもよい。ゾーンは、大きさ及び形状が均一であってもよく、または1つ以上のゾーンは他のゾーンとは異なる大きさ及び形状を有してもよい。ゾーンは、互いに連続していてもよく(例えば、互いに接続されていてもよく)、または、ゾーンが互いに非連続であってもよい(例えば、互いに接続されていなくてもよい)。1以上のベクトルおよび/または走査パラメータ(例えば、レーザ速度、レーザ出力、ビームスポットサイズ、ビームスポット形状などのレーザパラメータ)を含み、第1のゾーンを走査するために使用される第1の走査計画は、特にゾーンのサイズおよび/または形状が異なる場合に、第2のゾーンを走査するために使用される第2の走査計画とは異なることがある。オブジェクトの断面内における他のオブジェクトまたはオブジェクトの一部と接触しないオブジェクトまたはオブジェクトの一部は、オブジェクトの断面内のアイランドであると考えることができる。断面は、2つ以上のアイランドを有することができ、第1のアイランドは、断面層内の他のアイランドが他の走査計画に従って走査される前に、第1の走査計画に従って完全に走査されうる。
【0089】
幾つかの実施形態では、各アイランドの走査計画は、該アイランド内の1以上の点で温度を制御するように構成されうる。例えば、2つ以上の走査ブロックを用いて、アイランド内の1つ以上の点の温度を段階的に上昇させることができる。アイランド内の点の温度は、保持温度であってもよい。
【0090】
アイランドについては、様々な異なる走査計画を選択することができる。コア・ハル(core-hull)走査計画では、内側領域(例えば、コア)は第1の計画に従って走査されてもよく、一方、周囲領域(例えば、ハル)は第2の計画に従って走査されてもよい。例えば、コア領域は3層ごとに走査されてもよいが、より高い出力の下ではより大きなビームスポットを用いて、3層すべての作製材料が一度に走査されるようにしてもよい。一方、コアとオブジェクトの境界との間のオブジェクトの領域であるハル領域は、各層で走査することができる。幾つかの実施形態では、コアがオブジェクトの内部の任意の領域であってもよく、オブジェクトの大半を含んでもよいが、ハルは、例えば、コアを取り囲み、境界を含む、部品のエッジに近い任意の領域である。より高いレーザ出力でコアを走査し、より低いレーザ出力でハルを走査することができる。
【0091】
別の走査計画では、アイランドは、内部ゾーンと輪郭ゾーンとに分割されてもよい。輪郭ゾーンは、ハルのように、オブジェクトの輪郭に加えオフセットのような内部領域を囲む領域であってもよく、一方、内部ゾーンは、輪郭ゾーンに対して内部である任意の領域であってもよい。幾つかの実施形態では、輪郭ゾーンは、オブジェクトの断面の輪郭(例えば、境界)であってもよい。内部ゾーンは、断面の任意の部分であってもよく、その部分は輪郭に対して内部である。幾つかの実施形態では、内部ゾーンと輪郭ゾーンとの間に非常にわずかなオフセット(例えば、1mm未満、または0.5mm未満)があってもよい。ビームスポットの大きさ及び形状のために、レーザ走査が輪郭ゾーン及び内部ゾーンの走査中に重複するとき、内部ゾーンと輪郭ゾーンとの間のわずかなオフセットが十分に走査されうる。輪郭ゾーンは、例えば、レーザ出力、レーザ走査速度、レーザビームスポットサイズ(例えば、直径)および/または形状、ベクトル間の間隔、ならびにベクトル間のジャンプおよび遅延のパターンなどのパラメータがアイランドの輪郭内の点の温度を制御するように最適化されている第1の走査計画に従って走査されてもよい。アイランドの内部ゾーンは、第1の走査計画とは異なる第2の走査計画に従って走査することができる。走査計画は、第1の走査計画および/または第2の戦略とは異なる予熱走査計画をさらに含むことができる。予熱走査計画は、アイランド(例えば、オフセット)の外側にある走査点を含んでもよい。幾つかの実施形態では、走査計画は、後加熱走査ステップをさらに含む。
【0092】
例えば、アイランドのための走査計画は、予熱走査、輪郭走査、及びハッチ走査を含んでよい。予熱走査では、アイランド内の第1の複数の点およびアイランドの外側の第2の複数の点が走査される。輪郭走査では、第1の複数の点の第1のサブセットが走査され、第1のサブセットは、アイランドの周りの輪郭(例えば、境界)に対応する。ハッチ走査では、第1の複数の点の第2のサブセットが走査され、第2のサブセットは、境界の内側のアイランドの点に対応する。予熱走査、輪郭走査、及びハッチ走査の各ステップは、他のステップとは異なる一組のベクトル及び走査パラメータを含むことができる。例えば、予熱走査ステップは、第1の複数の点及び第2の複数の点の両方を含むベクトルを走査するのに対して、輪郭走査ステップは、アイランドの輪郭に沿ってのみベクトルを走査し、ハッチ走査ステップ、アイランドの境界の内側のみベクトルを走査する。さらに、予熱走査ステップ後に到達すべき所望の温度が輪郭走査ステップ及びハッチ走査ステップ(例えば、図12Dを参照)後に到達すべき温度よりも低い場合には、予熱走査ステップにおける走査パラメータを輪郭走査ステップ及びハッチ走査ステップと比較して変化させることができる。例えば、予熱走査ステップでは、より低いレーザ出力及び/又はより低いレーザ速度を使用することができる。走査計画はさらに、後加熱走査ステップを含んでもよい。後加熱走査ステップは、例えば、1つ以上の点の冷却速度を制御するために、断面層の1つ以上の点の温度を維持するために使用されてもよい。
【0093】
幾つかの実施形態では、断面層内のアイランドが特定されてもよく、各アイランドは自身の走査計画に従って走査されてもよい。さらに、アイランドは複数のゾーンにさらに分割されてもよく、各ゾーンは、少なくとも1つの他のゾーンの走査計画とは異なる走査計画を有してよい。一例では、オブジェクトの断面におけるベクトルのエネルギー密度及び/又は作製中又は作製後のオブジェクトの断面の熱測定を評価することができる。オブジェクトの断面にわたるエネルギー密度または熱分布のいずれかまたは両方が異質かつ不均一である場合、不均一なそれぞれの領域が一つのゾーンとなるように走査計画を調整することができる。より高い温度および/またはより高いエネルギー密度を有するホットスポットは、より低いレーザ走査速度またはより低いレーザ出力が使用されうる第1のゾーンになりうる。より低い温度および/またはより低いエネルギー密度を有するコールドスポットは、より高いレーザ走査速度またはより高いレーザ出力が使用されうる第2のゾーンになりうる。
【0094】
図16A~16Cは、オブジェクトの例示的な断面のゾーニングを示す。図16Aでは、オブジェクト1601、1602、および1603がゾーンに分割されている。オブジェクト1601は2つのゾーン(aおよびb)に分割されており、オブジェクト1602およびオブジェクト1603の各々は3つのゾーン(a、bおよびc)に分割されている。ゾーンは、例えば、オブジェクトの境界で開始し、オブジェクトの内部に移動する(例えば、内部オフセットを生成する)ことによって決定されてもよい。それぞれが3つのゾーンに分割されているオブジェクト1602およびオブジェクト1603によって示されるように、ゾーンのサイズを変更することができる。オブジェクト1603のゾーンcは、オブジェクト1602のゾーンcよりもオブジェクトの割合が大きい。幾つかの実施形態では、オブジェクト内の熱の分布および/またはエネルギー密度を使用して、ゾーンを決定することができる。例えば、1603のようなオブジェクトでは比較的大きな中心は熱を保持するが、オブジェクトの外縁は熱を放散する。したがって、中心はゾーンcになることができ、ゾーンcは、より少ない熱およびより少ないエネルギー密度が適用される走査計画に従って走査されてよい。エッジは、ゾーンcよりも多くの熱及び多くのエネルギー密度で走査されるゾーンaになりうる。中間ゾーンbは、ゾーンaとゾーンcとの間にあるレベルの熱及びエネルギー密度で走査することができる。特定の実施例では、各ゾーンにわたるエネルギー密度の差のために、レーザ出力、レーザ走査速度、ビームスポットサイズ及びビーム形状を各ゾーンの走査中に変化させうる。ゾーニングおよび作製パラメータの差の結果として、オブジェクトのゾーン全体の温度および/またはエネルギー密度は、互いに類似しうる。
【0095】
図16Bは、コア領域(b)およびハル領域(a)にゾーン化されたオブジェクト1610を示す。ビームスポットサイズは、2つの領域にわたって変化する。この実施例において、コア領域(b)は、ハル領域(a)を走査するために使用されるレーザビーム直径とは異なるレーザビーム直径で走査されてもよい。例えば、コア領域(b)はレーザ直径1.0mmで走査され、ハル領域(a)はレーザ直径0.6mmで走査される。このアプローチの1つの結果は、オブジェクトを作製する際の速度の増大(例えば、走査時間の短縮)である。図16Cは、走査された層の関数としての走査時間のプロットを示す。約80層のオブジェクトが走査された後、ハル領域(1621)よりも大きなビーム直径でコア領域が走査されるゾーニングアプローチを用いた走査時間は、ビーム直径(1620)を変化させることのない走査に対して少ない。
【0096】
[過熱]
予熱および/または後加熱走査は、アイランドの境界を取り囲む外部オフセットなどのオフセット領域内の点またはベクトルの走査を含んでよい。作製物の断面層に2つ以上のアイランドがあり、アイランドが互いに近接して配置されている場合に問題が生じることがある。この場合、各アイランドの外部にあるオフセットは互いに重なり合うことがあり、2回以上走査される重なり合う領域において過熱につながる。図14Aは、各々がオフセット(1402)を有する複数のアイランド1401(番号1~8)を含む作製物(1400)の例示的な断面層において重なり合う領域を示す。重複領域1410a、1410b、および1410cが示されており、領域1410cは、アイランド2、3、および4の各オフセットが予熱走査ステップで走査されるときに走査され、再走査されるため、過熱について最大の影響を示す可能性が高い。重複領域での局所的な過熱は、作製物内のオブジェクトの品質に影響を及ぼす可能性がある。例えば、過熱は温度が高すぎる局所領域を生じさせ、その結果、局所領域の傍のアイランドは溶融または焼結の後に均等に冷却できない。場合によっては、重複領域内の温度が作製材料の溶融温度に達すると、重複領域が溶融および焼結し、それによってアイランドの間に焼結された作製材料のブリッジを生成しうる。
【0097】
重なり合うオフセットでの局所的な過熱に対処するために、演算装置は、互いに近く、重なり合うオフセットを有する可能性が高いアイランドを特定することができる。例示的なオフセットは、0.5mm未満、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、または6.5mmを超える値に設定することができる。作製開始前、演算装置は、2つ以上のアイランドの位置をチェックし、アイランドが重複するオフセットを有するのに十分に近いときを特定することができる。次いで、演算装置は、アイランドをさらに離して空間を空けるように作製物を再構成することができ、その結果、アイランド間の重なりが低減または排除される。幾つかの実施形態では、2つのオフセット領域の重複は認められうるが、3つ以上のオフセット領域の重複は認められず、重複を排除するためにアイランドのうちの少なくとも1つを入れ替えなければならなくする。
【0098】
特定の実施形態では、演算装置は、アイランドを再配置することなく、重複領域のための新しい走査計画を生成する。走査計画は、隣接するまたは重なり合うオフセット領域を有する隣接するアイランドが存在する各アイランドに対して幾何学的形状の領域(例えば、領域は多角形領域であってもよいし、円または楕円であってもよい)を設定することを含む。図14Bはオブジェクトの断面を示し、この断面は、互いに近接して配置された複数のアイランド(1421、1422、1423、および1424)を有する。図14Aのように外部オフセットが生成される場合、アイランドのオフセットは重なり合う。図14Cは、アイランド1421、1422、1423、および1423(マークされていない)のそれぞれの周りに設定された幾何学的形状の領域(多角形領域1431、1432、1433、および1434)を示す。多角形領域は多角形を含むことができ、多角形内のほとんどまたはすべての点は、他の任意のアイランドよりも前記アイランドに近い。空間のこの分割は修正ボロノイ図として記述することができ、与えられた点までの最小距離に基づいて空間が分割される。従って、走査計画は、各幾何学的形状の領域の境界を検出するように構成することができ、また、オフセットの走査を幾何学的形状の領域の境界内の空間に制限することができる。各アイランドはそれ自体の幾何学的形状の境界を有するため、オフセット領域もはや重複しない。
【0099】
図15A~15Bは、幾何学的形状の領域によって境界付けられたアイランドおよびオフセット領域において走査されたベクトルを示す。図15Aは、1501、1502a、1502b、1503a、1503b、1504、1505a、1505b、1506a、1506b、1507a、および1507bと番号付けされた12個のアイランドを含むオブジェクトの断面を示す。図15Bは、アイランドの各々を取り囲むオフセット領域(幾何学的形状の領域1511、1512a、1512b、1513a、1513b、1514、1515a、1515b、1516a、1516b、1517a、および1517b)を示す。各アイランドはまた、輪郭を有する(例えば、アイランド1501の周りの輪郭1521がマークされる)。図15Bでは、オフセット領域のいずれも重なり合わない。各アイランド及び各オフセット領域におけるベクトルの組(集合)は、斜線で示されている。オブジェクト1500の断面を走査するための走査計画は、各オフセット領域、各輪郭、及び各アイランド塗りつぶし領域に対する複数の走査計画を含む。オフセット領域1511内のハッチング線は、アイランド1501内のハッチング線とは異なる間隔で配置されている。さらに、オフセット領域1511が走査されるとき、アイランド1501と比較して、レーザ出力、レーザ速度、ビームスポットサイズ、およびビーム形状のうちの少なくとも1つ以上が異なってもよい。
【0100】
[複数のレーザおよびレーザアレイ]
走査のために、1以上のレーザを使用して、オブジェクトの断面内の複数の点を走査することができる。幾つかの実施形態では、すべての走査ステップに単一のレーザを使用することができる。単一のレーザは、2つ以上のビームスポットサイズおよび/または形状を有するように構成されてもよい。走査ステップは逐次的であってもよい。その結果、ベクトルまたはブロックは、輪郭走査ステップおよびハッチ走査ステップなどの後続の走査ステップの前に予熱走査を受けることができる。幾つかの実施形態では、レーザが第1のビームスポットサイズで1以上の点を走査することができ、第2のビームスポットサイズで同じ1以上の点を直ちに走査することができる。
【0101】
走査ステップでは2つ以上のレーザを使用することができる。各レーザは、各々のフィールドを走査するように構成されてもよく、あるいは、同じフィールドを走査するように構成されてもよい。したがって、第1のレーザは、例えば、オブジェクト内の第1の複数の点に外部オフセット領域内の第2の複数の点を加えた予熱走査のために、オブジェクトの断面の第1の部分を走査するように構成されてもよい。第2のレーザは第1の複数の点における点の第1のサブセットを走査するように構成されてもよく、第1のサブセットは、オブジェクトの境界に沿った点に対応する。第1のレーザは第1の複数の点における複数の点の第2のサブセットを走査するように構成されてもよく、第2のサブセットは、オブジェクトの境界内の点に対応する。あるいは、第3のレーザが複数の点の第2のサブセットを走査するように構成されてもよい。オフセットまたはアイランドなどの異なる領域を走査するために2つ以上のレーザを使用することにより、より高速な走査が可能になり、および/または、順序付けられたブロックの走査の時間調整を容易にすることができる。
【0102】
特定の実施形態では、2つ以上のレーザが、オブジェクト内の同じ点、同じベクトル、同じブロック、同じ領域、および/または、ある走査計画内の同じタイプの走査を走査し、再走査するように構成されてもよい。例えば、1つのレーザを使用して、第1の予熱パス内の第1のブロックセットを予熱し、第2のレーザを使用して、第2の予熱パス内の同じ第1のブロックセットを予熱することができる。あるいは、2つ以上のレーザが、異なる点、ベクトル、ブロック、領域、および走査を順次走査するように構成されてもよい。例えば、第1のレーザを使用して予熱パス内の第1のブロックセットを予熱し、第2のレーザを使用してメインパス内の第2のブロックセットを走査することができる。
【0103】
本明細書に記載される走査計画における走査ステップのためにレーザアレイが使用されてもよい。1つの例示的なシステムでは、数千のレーザがオブジェクトの断面または断面の一部に照射されるように構成されてもよい。レーザは、オブジェクトまたはオブジェクトの部分断面に対応するパターンで照射することができ、順序付けられた順序でレーザを照射するように調整されうる。幾つかの実施形態では、レーザアレイの少なくとも一部が、予熱走査、輪郭走査、ハッチ走査、及びオプションとして、後熱走査に使用することができる。レーザの出力は、輪郭走査またはハッチ走査と比較して、予熱走査または後加熱走査中により少ない出力を提供するために変調されてもよい。さらに、幾つかの実施形態では、熱カメラが走査断面の温度を判定し、レーザパラメータを変調するためのフィードバックを提供するように構成されてもよい。例えば、温度が予想よりも低いことを熱カメラが示した場合、より多くのレーザを照射することができ、又は、レーザ速度又はレーザ出力が高められる。
【0104】
別の例示的なシステムでは、マルチビーム光ファイバレーザレイを使用して、作製物中の時間-温度曲線を形成することができる。例えば、作製物上のある領域上のパス数、1つ以上のレーザの出力、及び/又はアレイの走査速度を変化させて、ある点又はベクトルでの温度を制御することができる。
【0105】
作製材料の熱吸収を変更するためにインクまたは結合剤を使用するAMシステムにおいては、結合剤の強度の変化、結合剤またはディテーリングエージェントの量の変化、結合剤が塗布された後に作製材料を融合させるために使用される熱ランプ(例えば、IRランプ)の出力の変化、および/または、作製材料上でランプが作るパスの数またはパスのタイミングの制御によって、時間-温度曲線が調節されてもよい。
【0106】
特定の実施形態では、単一の走査からの2つのレーザビームを互いに重ねることができる。予熱は、2つのビームの同期作用によって1回の走査で行うことができる。
【0107】
[作製材料としてのリサイクル粉末]
特定の態様において、作製材料は、任意のポリマー粉末、例えば、本明細書に開示されるポリマー粉末であってもよい。作製材料はPA12であってもよい。幾つかの実施形態において、作製材料は、リサイクル粉末を含むか、またはリサイクル粉末と未使用の粉末との混合物を含む。リサイクル粉末は、単独であろうと混合物であろうと、特にプロセスパラメータが主観的アプローチを用いて試験される場合、処理することが困難でありうる。本開示の一態様では、リサイクル粉末は、リサイクル粉末を最小保持温度に保持する走査計画を使用して効果的に処理することができる。リサイクル粉末の場合、最小保持温度は、リサイクル粉末の結晶化温度であってもよい。
【0108】
最近の研究において、種々の予め選択されたエネルギーで多重走査を使用することによって、得られる部品の機械的特性および寸法精度が改善されることが報告された(米国特許第7,569,174号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。改善された特性のメカニズムは、離散的な増分ステップで共に流れる溶融材料に起因し、これは前記材料をその融点よりわずかに高く加熱された状態に保つように走査を調整した場合に実現された。低温での複数回の走査により、粉末に加えられる熱を制限することができ、各粒子の溶融量を制限できる。これにより、粉末が低粘度状態に置かれる時間を軽減することができた。粘性材料は、制御された方法で流動し、部品の望ましくない歪みが発生する前に冷却しうる。そのような歪みは、例えば、過剰溶融および結果として生じる膨らみ(growth)により生ずる。複数回の走査は、部品の密度の増加につながることも報告されている。
【0109】
米国特許第7,569,174号に記載されているような複数回の走査は未使用粉末を処理するのに適しているが、この方法はリサイクル粉末に関する問題に対処することができない。場合によっては、リサイクル粉末、特にリサイクルPA12はバージン粉末よりもポリマー長鎖の割合が高く、これにより、リサイクル粉末はバージン粉末よりも溶融状態でより粘性が高く、同時に、リサイクル粉末はより結晶性になると考えられる。多くのポリマーは結晶化度と粘度との間に逆相関を示し、その両方はポリマー鎖長に依存する。短鎖ポリマーはしばしば「結晶性」または「半結晶性」と考えられ、高度の結晶性(すなわち、材料体積の高い割合が結晶性である)および低粘度を有する。逆に、長鎖ポリマーはしばしば「非晶質」と考えられ、低結晶性(すなわち、材料体積の低い割合が結晶性である)および高粘度を有する。リサイクル粉末は、高結晶性、高粘性である。
【0110】
リサイクル粉末では、例えば、作製材料の予熱中の高温への暴露、および/または、近くの焼結粉末から放散される熱などに伴う熱エージングによってポリマー長鎖が増加する。リサイクル粉末を処理するためには、焼結中の低流動性と遅い高密度化をもたらす高粘度、及び、遅い溶融あるいは不完全な溶融をもたらす結晶化度の両方を考慮することが重要になる。さらに、本願発明者らは、文献には以前に報告されていないが、リサイクル粉末の高結晶性試料を使用すると、リサイクル粉末は、カール、反り、および表面欠陥を起こしやすくなるという現象を観察した。リサイクル粉末を使用する場合の共通の問題はオレンジピール効果と呼ばれる表面欠陥であり、これは、孔食および粗い表面テクスチャを特徴とする。オレンジピール効果は、以前はリサイクル粉末の高い粘性からのみ生じると考えられていた。結晶化度と表面欠陥との間の関係性は、リサイクル粉末が未使用粉末よりも低いTを有することを示唆し、リサイクル粉末が未使用粉末ほど容易に結晶化しないことを示唆する研究によって不明瞭にされていた可能性がある。これらの研究では、試料を穏やかに加熱、冷却するDSC実験でTを測定されているが、これにより、結晶は完全に溶融する時間を与えられたであろう。しかしながら、試料が急速に加熱される典型的なレーザ焼結状態では、リサイクル粉末は完全には溶融せず、溶融した粉末中に種結晶を残す可能性がある(European Polymer Journal 92(2017)250-262)。リサイクル粉末では、種結晶の数が未使用粉末よりも多い可能性がある。これらの種結晶は部品の早期再結晶を促し、カール及びオレンジピール効果をもたらしうる。この種結晶の効果は、例えば、種結晶が粘性材料中で移動または溶融する自由度が制限されている場合には、高粘度によってより強くなりうる。
【0111】
したがって、本方法は、リサイクル粉末を処理するのに適した走査計画を決定する演算装置を提供し、走査計画は、高結晶化および高粘度という2つの問題に対処する。まず、高結晶化に目を向けると、走査計画は、リサイクル粉末を溶融し、種結晶を低減または排除するように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、走査計画は、再結晶化を防ぐために、結晶化温度より高い保持温度にリサイクル粉末を保持する走査と組み合わせて、できるだけ多くの結晶を除去するためにリサイクル粉末の均一な溶融を促す。この走査計画は作製物の断面層の各点に適用されてもよい。これにより、断面層の後の部分よりも早く走査される断面層の第1の部分において生じる冷却および結晶化を回避することができる。同時に、例えば、初期走査に続く追加の走査を伴う、均一な溶融と結晶化温度よりも高い温度の維持を促すように構成された走査計画もまた、断面層の全ての点にわたって平均温度を上昇させ、それによって粘度を低下させうる。演算装置は、両方の目標を達成するように構成された走査計画を決定することができる。
【0112】
したがって、リサイクル粉末のための走査計画は、リサイクル粉末を溶融させ、それを溶融温度よりわずかに高い温度に長期間保持するための1以上の初期走査を含むことができる。その後、断面層の全ての点が走査されるまで、断面層の各点の温度を保持温度に保持するために、1回以上の走査が行われてもよい。保持温度は、溶融温度付近またはそれを超える上限値と、結晶化温度を超える下限とを含む範囲内であってもよい。
【0113】
幾つかの実施形態において、リサイクル粉末を含む作製材料から作製された作製物の断面層を付加製造するための走査計画を準備するコンピュータ実行方法は、演算装置内において、(1)リサイクル粉末を含む作製材料の熱特性を取得するステップと、(2)熱特性から、付加製造するための作製材料の処理に適切な温度範囲を導出するステップと、(3)付加製造装置の物理的仕様を取得するステップと、(4)作製物の断面層に係る走査計画を決定するステップと、を含み、走査計画は、作製物の断面層の各点について、その点が最初に走査される時点から作製物の断面層のすべての点が走査されるまで、リサイクル粉末を含む作製材料の処理に適切な温度範囲内の保持温度(maintenance temperature)を保持するように構成され、走査計画は付加製造装置の物理的仕様に少なくとも部分的に基づいて決定され、(5)断面層を作製するために、走査計画に従って付加製造装置を使用して作製材料の走査を制御するステップと、を含む。
【0114】
幾つかの実施形態では、保持温度は、リサイクル粉末の溶融温度未満の温度であってもよい。リサイクルされたポリアミド12(PA12)の試料については、保持温度は、170~180℃の範囲内、例えば170~175℃であってよい。保持温度は、予熱走査ステップによって到達することができる。
【0115】
特定の実施形態では、保持温度は、リサイクル粉末の溶融温度を超える温度であってもよい。使用済みポリアミド12(PA12)の試料の場合、保持温度は210~230℃、例えば210~215℃、215~220℃、220~225℃、または225~230℃の範囲内であってよい。このような保持温度に到達するには、例えば、予熱走査ステップ、輪郭走査ステップ、ハッチ走査ステップを含む走査計画を用いて、段階的にある点で温度を上昇させる。
【0116】
リサイクル粉末の例示的な走査計画は、作製物の断面層の各点について、その点が最初に走査されてから作製物の断面層のすべての点が走査されるまで、リサイクル粉末を処理するのに適した温度範囲内の第1の保持温度を維持するように構成されてもよく、第1の保持温度は、リサイクル粉末の溶融温度に近いがそれ未満である。走査計画はさらに、断面層内の各点の温度を、リサイクル粉末の溶融温度よりも高いが分解温度よりも低い第2の保持温度まで上昇させるように構成されてもよい。第2の保持温度は、作製材料中に形成される種結晶および/または結晶の大部分またはすべてを排除するのに十分に高くてもよい。走査計画は、断面層内の各点が第2の保持温度に到達するように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、断面層内のアイランドが識別されてもよく、各アイランドは、それ自身の走査計画に従って走査されてもよい。さらに、アイランドは、複数のゾーンにさらに分割されてもよく、各ゾーンは少なくとも1つの他のゾーンの走査計画とは異なる走査計画を有しうる。
[関連出願のクロスリファレンス]
本出願は、2018年4月23日に出願された米国仮出願第62/661,443号の優先権を主張し、当該米国仮出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A-15B】
図16A
図16B
図16C