(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】過敏性腸症候群の予防および処置のための組合せ製品
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20240326BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240326BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240326BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240326BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240326BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20240326BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240326BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240326BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240326BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K35/745
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/14
A61K47/46
A61K47/42
A61K9/19
A61P1/12
A61P1/00
C12N1/20 A
C12N1/20 E
A23L33/135
A23L29/00
(21)【出願番号】P 2020561945
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2019052144
(87)【国際公開番号】W WO2019145576
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520279649
【氏名又は名称】プリシジョンバイオティクス・グループ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】キーリー,バリー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,エイリーン・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】グロージャー,デビッド
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511708(JP,A)
【文献】特表2010-526055(JP,A)
【文献】特表2013-509204(JP,A)
【文献】特表2010-522246(JP,A)
【文献】国際公開第2017/035426(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/032897(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過敏性腸症候群(IBS)の予防または処置で使用するための、ビフィドバクテリウム属NCIMB41676の単離株およびビフィドバクテリウム属NCIMB41003の単離株を含む製品であって、IBSの予防または処置が、以下のこと:
IBSに関連する腸の症状を改善すること、
IBSに関連する気分を改善すること、
IBSに関連するストレスを低減すること、
IBSに関連する不安を低減すること、
IBSに関連する睡眠の質を改善すること、
IBSに関連するうつ病を処置すること、および
IBSに関連するコルチゾール覚醒反応の調節異常を正常化すること
の一つ以上を含む製品。
【請求項2】
ビフィドバクテリウム属株の少なくとも1つが、生存可能な細胞の形態である、および/または、生存可能ではない細胞の形態である、請求項1に記載の使用のための製品。
【請求項3】
ビフィドバクテリウム属株NCIMB41676が、10
6cfuより多くの量、10
7~10
10cfuの量、10
8~10
9cfuの量、または約5×10
8cfuの量で配合物中に存在する、請求項1または2に記載の使用のための製品。
【請求項4】
ビフィドバクテリウム属株NCIMB41003が、10
6cfuより多くの量、10
7~10
10cfuの量、10
8~10
9cfuの量、または約5×10
8cfuの量で配合物中に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項5】
細菌液体培地の形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項6】
凍結乾燥粉末の形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項7】
摂取可能な担体をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項8】
摂取可能な担体が、医薬的に許容される担体で
ある、請求項7に記載の使用のための製品。
【請求項9】
摂取可能な担体
が食品である、請求項7に記載の使用のための製品。
【請求項10】
摂取可能な担体が、乳児用食物である、請求項7に記載の使用のための製品。
【請求項11】
発酵食
品を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項12】
タンパク質および/またはペプチドをさらに
含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項13】
他のプロバイオティックをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項14】
プレバイオティックをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項15】
アジュバントをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための製品。
【請求項16】
担体がカプセル、錠剤または粉末である、請求項8に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
導入
過敏性腸症候群(IBS)は、慢性腹痛、不快感、膨満感、および排便習慣の変化を特徴とし、一般集団の10~15%が影響を受けている(Hunginら、2003)。多くの人々にとって、この状態は、衰弱性であり得る。IBSに寄与する根本的な要因は、様々な要素からなり、十分理解されていないが、消化管粘膜の免疫活性化の変化(O’Malley、2015)、認知機能(Kennedyら、2014)、心理的なストレス、脳と消化管との相互作用、加えて消化管の微生物叢の変化が、そのような状態の重大な誘因であるとみなされている(DrossmanおよびHasler、2016)。
【0002】
消化管は、腸内感染からの保護を提供すること、発酵によって食物から付加的な栄養価を供給すること、および免疫系の発達に寄与することによって人間の健康に非常に重要な無数の微生物を含有する(人体の全細胞のおよそ95%が腸内細菌である)。IBS患者は、健康な対照と比較して異なる消化管の微生物叢組成を有することを示唆する証拠が集まりつつあり(Jefferyら、2012、Tapら、2017)、この変更された微生物叢は、心理的なストレスによっても変化する可能性がある(Blanchardら、2008、Chitkaraら、2008)。実際に、消化管の微生物叢は、脳腸軸と相互作用するため、IBSの発達および永続性における将来性のある主役としての注目を集めている。
【0003】
プロバイオティック細菌は、消費されると健康上の利益を提供すると考えられる微生物であり、「十分な量で投与されると宿主に健康上の利益を付与する生きた微生物」(FAO/WHO、2001)と定義されている。近年の研究は、前臨床研究と臨床研究の両方において脳腸軸に対するプロバイオティックの有望な作用を示している(DinanおよびCryan、2017)。
【0004】
IBSに関して、特定のプロバイオティック株が、過敏性腸症候群の胃腸の症状の一部または全てを低減することが示されている(Fordら、2014、O’Mahonyら、2005、Whorwellら、2006)。35624(登録商標)株は、IBSに関連する主要な消化管の症状に影響を与えることが示された唯一のプロバイオティックである(Whorwellら、2006)。しかしながら、ストレス、不安およびうつ病の共存症の症状への取り組みはほとんどなされておらず、IBSにおける脳腸軸に対するプロバイオティックの作用についてはほとんどわかっておらず、IBSの胃腸の症状と、関連するストレス、不安およびうつ病の症状の両方を処理することが実証された利用可能なプロバイオティック株または株の組合せはない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】HUNGIN, A. P., WHORWELL, P. J., TACK, J. & MEARIN, F. 2003. The prevalence, patterns and impact of irritable bowel syndrome: an international survey of 40,000 subjects. Aliment Pharmacol Ther, 17, 643-50
【文献】O’MALLEY, D. 2015. Immunomodulation of enteric neural function in irritable bowel syndrome. World J Gastroenterol, 21, 7362-6
【文献】KENNEDY, P. J., CLARKE, G., O’NEILL, A., GROEGER, J. A., QUIGLEY, E. M., SHANAHAN, F., CRYAN, J. F. & DINAN, T. G. 2014. Cognitive performance in irritable bowel syndrome: evidence of a stress-related impairment in visuospatial memory. Psychol Med, 44, 1553-66
【文献】DROSSMAN, D. A. & HASLER, W. L. 2016. Rome IV-Functional GI Disorders: Disorders of Gut-Brain Interaction. Gastroenterology, 150, 1257-61
【文献】JEFFERY, I. B., O’TOOLE, P. W., OHMAN, L., CLAESSON, M. J., DEANE, J., QUIGLEY, E. M. & SIMREN, M. 2012. An irritable bowel syndrome subtype defined by species-specific alterations in faecal microbiota. Gut, 61, 997-1006
【文献】TAP, J., DERRIEN, M., TORNBLOM, H., BRAZEILLES, R., COOLS-PORTIER, S., DORE, J., STORSRUD, S., LE NEVE, B., OHMAN, L. & SIMREN, M. 2017. Identification of an Intestinal Microbiota Signature Associated With Severity of Irritable Bowel Syndrome. Gastroenterology, 152, 111-123.e8
【文献】BLANCHARD, E. B., LACKNER, J. M., JACCARD, J., ROWELL, D., CAROSELLA, A. M., POWELL, C., SANDERS, K., KRASNER, S. & KUHN, E. 2008. The role of stress in symptom exacerbation among IBS patients. J Psychosom Res, 64, 119-28
【文献】CHITKARA, D. K., VAN TILBURG, M. A., BLOIS-MARTIN, N. & WHITEHEAD, W. E. 2008. Early life risk factors that contribute to irritable bowel syndrome in adults: a systematic review. Am J Gastroenterol, 103, 765-74; quiz 775
【文献】DINAN, T. G. & CRYAN, J. F. 2017. The Microbiome-Gut-Brain Axis in Health and Disease. Gastroenterol Clin North Am, 46, 77-89
【文献】FORD, A. C., QUIGLEY, E. M., LACY, B. E., LEMBO, A. J., SAITO, Y. A. & SCHILLER, L. R. 2014. Efficacy of prebiotics, probiotics, and synbiotics in irritable bowel syndrome and chronic idiopathic constipation: Systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol, 109
【文献】O’MAHONY, L., MCCARTHY, J., KELLY, P., HURLEY, G., LUO, F., CHEN, K., O’SULLIVAN, G. C., KIELY, B., COLLINS, J. K., SHANAHAN, F. & QUIGLEY, E. M. 2005. Lactobacillus and bifidobacterium in irritable bowel syndrome: symptom responses and relationship to cytokine profiles. Gastroenterology, 128, 541-51.
【文献】WHORWELL, P. J., ALTRINGER, L., MOREL, J., BOND, Y., CHARBONNEAU, D., O’MAHONY, L., KIELY, B., SHANAHAN, F. & QUIGLEY, E. M. 2006. Efficacy of an encapsulated probiotic Bifidobacterium infantis 35624 in women with irritable bowel syndrome. Am J Gastroenterol, 101, 1581-90
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、ビフィドバクテリウム属NCIMB41676の単離株およびビフィドバクテリウム属NCIMB41003の単離株を含む配合物が提供される。
ビフィドバクテリウム属株の少なくとも1つは、生存可能な細胞の形態であってもよい。
【0007】
ビフィドバクテリウム属株の少なくとも1つは、生存可能ではない細胞の形態であってもよい。
一部の場合において、ビフィドバクテリウム属株NCIMB41676は、106cfuより多くの量で配合物中に存在する。ビフィドバクテリウム属株NCIMB41676は、約5×108cfuの量で配合物中に存在していてもよい。
【0008】
ビフィドバクテリウム属株NCIMB41676は、106cfuより多くの量で、典型的には107~1010、典型的には108~109cfuの量で配合物中に存在していてもよい。1つの場合において、ビフィドバクテリウム属株NCIMB41676は、約1×109cfuの量で配合物中に存在する。
【0009】
一部の場合において、ビフィドバクテリウム属株NCIMB41003は、106cfuより多くの量で配合物中に存在する。ビフィドバクテリウム属株NCIMB41003は、約5×108cfuの量で配合物中に存在していてもよい。
【0010】
ビフィドバクテリウム属株NCIMB41003は、106cfuより多くの量で、典型的には107~1010、典型的には108~109cfuの量で配合物中に存在していてもよい。1つの場合において、ビフィドバクテリウム属株NCIMB41003は、約1×109cfuの量で配合物中に存在する。
【0011】
細菌の生存率は、サンプル中の培養可能な細菌の数、すなわち最適な条件下で増殖させる場合に複製する能力を保持する細菌の数(生存可能な細胞)を反映する。言い換えれば、生存率は、複製してより大きい細菌コロニーになる能力を保持する個々の細菌細胞の数(コロニー形成単位(CFU))を反映する。
【0012】
生存率は、一般的に、プレート計数方法を使用して決定され、この方法は、細菌サンプルを希釈し、次いで増殖に必須な栄養素を含有する寒天プレート上でインキュベートすることによる。次いでプレート上で確認された細菌コロニーの数から、生存率を計算する。このような方法は、Modern Food Biology 2005、第7版、James Monroe Jay、Martin J. Loessner、David A. Golden、Springer Science、New Yorkに要約されている。
【0013】
プレート計数は生存率の優れた指標を付与するが、サンプル中の全ての生きた細菌細胞を包含しない。(Kell, Douglas B., et al. 1998)。
サンプルはまた、代謝的に活性なままであるが、プレート計数による分析のときに複製する能力を失った「生存可能であるが培養できない」(VBNC)細胞も含有すると予想され、したがって生きているにもかかわらずCFUを形成しないと予想される。最終的に、サンプルは、死んだ細胞も含有することになる。これらの2つのグループは、一緒に「生存可能ではない細胞」として分類することができる。それゆえに生存可能ではない細胞は、生存可能な細胞の逆であり、すなわち試験のときに複製する能力を失った全ての細胞である。
【0014】
生存可能な細胞を含有する全てのサンプルはまた、生存可能ではない細胞も含有すると予想され、それゆえに生存可能な細胞培養の定義は、CFU測定を使用して明確化される。
【0015】
全ての生存可能ではないサンプルは、少なくともVNBC、および場合によっては少量の生存可能な細胞を含有すると予想される。業界標準であるより低いレベルの103CFU/gの生存可能な細胞の検出限界が、生存可能ではないサンプル中に所定数のVBNC/生存可能な細胞が存在することによって引き起こされる固有のプロセスの変動をもたらす。
【0016】
一部の実施態様において、例えば、これらに限定されないが、特殊な無菌の食品または医薬において、プロバイオティック株の複製できない形態が好ましい場合がある。例えば、組成物中、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%のビフィドバクテリウム属株が、複製できない。
【0017】
配合物は、細菌液体培地の形態であってもよいし、または凍結乾燥粉末の形態であってもよい。一部の場合において、配合物は、プレバイオティック材料をさらに含む。
一部の場合において、配合物は、摂取可能な担体をさらに含む。
【0018】
摂取可能な担体は、医薬的に許容される担体、例えばカプセル、錠剤または粉末であり得る。
摂取可能な担体は、酸性乳、ヨーグルト、凍結した食物、例えばフローズンヨーグルトもしくはアイスクリーム、ガム、キャンディー、粉乳、濃縮乳、チーズスプレッド、栄養組成物、栄養補給剤、シリアルバー、ドレッシングまたは飲料などの食品であり得る。
【0019】
1つの場合において、配合物は、乳児用食物である。
一部の場合において、配合物は、発酵食品または発酵乳製品の形態である。
一部の場合において、担体は、天然に存在しない。
【0020】
配合物は、タンパク質および/またはペプチドを含んでいてもよく、特定には、グルタミン/グルタミン酸塩、脂質、炭水化物、ビタミン、無機物および/または微量元素を多く含むタンパク質および/またはペプチドを含んでいてもよい。
【0021】
配合物は、アジュバントを含んでいてもよい。
配合物は、細菌の成分を含んでいてもよい。
配合物は、薬物原体を含んでいてもよい。
【0022】
配合物は、生物学的な化合物を含んでいてもよい。
また、本発明の配合物を含む食材も提供される。
また、本発明の配合物を含む医薬も提供される。
【0023】
本発明はまた、過敏性腸症候群(IBS)の予防または処置における、ビフィドバクテリウム属NCIMB41676の単離株の、ビフィドバクテリウム属NCIMB41003の単離株と組み合わせた使用も提供する。
【0024】
この組合せは、
IBSに関連する腸の症状を変更することができる;
IBSに関連する気分を改善することができる;
IBSに関連するストレスを低減することができる;
IBSに関連する不安を低減することができる;
IBSに関連する睡眠の質を改善することができる;
IBSに関連するうつ病を処置することができる;および/または
IBSに関連するコルチゾール覚醒反応の調節異常を正常化することができる。
【0025】
この使用は、本発明の配合物を投与することを含んでいてもよい。
また、過敏性腸症候群(IBS)の予防または処置で使用するための、ビフィドバクテリウム属NCIMB41676の単離株およびビフィドバクテリウム属NCIMB41003の単離株を含む組合せ製品も提供される。組合せ製品が本明細書に記載される。
【0026】
組合せ製品は、IBSに関連する胃腸の症状を改善すること、およびIBSに関連するコルチゾール覚醒反応の調節異常を正常化することによって、過敏性腸症候群(IBS)の予防または処置において使用することができる。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、菌株B.ロングム(B. longum)35624(登録商標)(NCIMB41003)およびB.ロングム1714(商標)(NCIMB41676)を取り込んだ組合せ製品が、供給を止めた後でさえも、驚くべき持続的なプラスの効果をもたらすことを見出した。
【0028】
IBSは、その病態生理学に関与する多くの要素を有する。胃腸の症状と抑うつ性/不安の症状の両方は、両方の症状をもたらすことがわかっている根底にある軽度の炎症との共存症である(Enckら、2016)。これらの他の共存症の全てに適切に対処する先行技術はないため、これら全ての要素に対処しようとすることは、IBSの全ての態様にとって有利な対処になると予想される。
【0029】
35624株を含有する組合せ製品の作製は、簡単ではない。35624は、繊細な株であり、他の株が存在すると容易に増殖しないか、またはそのような株を許容する。1714(商標)株およびDPC6315(実施例6)を含むPBMCアッセイで、15種の異なるB.ロングムのサイトカインプロファイルを評価した。以下のようなさらなる研究のために、1714およびDPC6315株を選択した。
【0030】
● DPC6315は、最大のIL-10/IL-12抗炎症性物質の比率を有しており、うつ病および不安などのうつ病および不安などの気分の変化は、炎症に関連する可能性がある。
【0031】
● 1714は、動物およびヒト試験の両方で、インビトロにおける抗炎症性サイトカインプロファイルおよび気分に対するプラスの効果を実証した。
35624は、増殖実験(実施例5)において、1714およびDPC6315の両方を許容することが示された。
【0032】
ヒトIBSコホートが35624および1714の組合せを消費したところ、その組合せがIBSの胃腸の症状に対処するだけでなく、IBSの消化管と脳の側面も対処するという驚くべき作用があり、予想外の新しい相乗効果が見られた(実施例1~4)。供給期間中に、IBSの症状は改善され、コルチゾール覚醒反応(CAR)の調節異常は正常化されたが、これらの作用は供給後失われた。驚くべきことに、供給を止めた後でさえも、抗不安作用の持続性、およびうつ病、睡眠の質の改善に加えて、炎症促進性サイトカインTNF-αの低減が観察された。供給後におけるTNF-α低減の持続性(改善された抗炎症性状態)は、35624株単独を供給した場合、観察されなかった(
図11)。
【0033】
本発明者らはさらに、インビトロでB.ロングムDPC6315および35624の組合せを評価した(実施例6)。この組合せは、35624および1714と同様に、その高いIL-10シグナルを維持する。本発明者らは、抗炎症性物質のスクリーニングに通常使用される十分に確立された動物モデルで、DPC6315および35624の組合せを調査した(実施例7)。この組合せで相乗効果は見られず、極めて意外なことに、6315の存在は35624の作用を打ち消し、この組合せは、単一の35624株のみより悪かった。それゆえに、確立されたインビトロの免疫プロファイル試験であっても、B.ロングム株の全ての組合せが協同的に作用するかは明白ではなく、それゆえに前もって35624/1714の組合せの試験の転帰を予測することができなかったと予想される。
【0034】
睡眠に対する作用は、特に重要である。睡眠障害は、人生のあらゆる段階で観察されている。これらの障害は、典型的には、睡眠を開始させ維持する能力の減少、およびより深く、より回復に役立つ睡眠の比率の低減を特徴とする。このような変化を患っている個体において、生活の質は、実質的に損なわれる。
【0035】
乳児の睡眠は通常、月齢1か月を超えると、睡眠が夜間に長い途切れない期間にわたり続く日周リズムに従うように変化し、同様に睡眠状況も、生まれたときに等しく配分されたREM(活動)睡眠とNREM(休息)睡眠から、月齢8か月に3分の1のREMと3分の2のNREMに変化する。乳児期においてこれらの変化を何らかの理由でうまく切り抜けることができなかった場合、子供の睡眠パターンに長く続く作用をもたらす可能性もある。
【0036】
乳児および子供における最も一般的な睡眠障害は、不眠に関する障害(すなわち、就寝時刻に寝付けないか、または夜通し途切れることなく眠れないかのいずれか)である。これらの障害は、24か月未満の乳児の15~35%に影響を与えていると推測される。乳児および子供の睡眠障害は必然的に、子供と親の交流を不十分にする可能性がある親の睡眠障害およびストレスを引き起こし、順に乳児および子供の症状を悪化させ、悪循環に陥る。
【0037】
人生の対極において、正常な老化も、睡眠の質、量、および構成の変化を伴う。具体的には、健康な高齢者の睡眠を開始させ維持する能力の測定可能な減少と、それに伴うより深く、より回復に役立つNREM睡眠の比率の減少が起こる。
【0038】
睡眠は、年配の人において特に重要である。年を取るにつれて起こる身体的な変化と共に、睡眠パターンの変化は、正常な老化プロセスの一部である。人は、年を取るにつれて、若い時に比べて、眠りに落ちるのが難しい時間を有し、眠り続けるのがより困難になる傾向がある。睡眠は加齢に伴い減少させる必要があるというのは、よくある誤解である。実際に、人の睡眠は、成人期にわたり一定のままである必要があることが調査から実証されている。年を取ると、人の睡眠におけるパターン、すなわち「睡眠の構成」の変化が起こり、これは、睡眠の問題に寄与する可能性がある。睡眠は、浅い睡眠および深い睡眠の夢を見ない期間、ならびに時々の活性に夢を見る期間(レム睡眠)を含む複数の段階で起こる。睡眠サイクルは、夜の間に数回繰り返され、総睡眠時間が一定のままになる傾向があるが、年配の人は、深い睡眠より、より浅い睡眠の段階でより長い時間を過ごす。
【0039】
多くの年配の成人は、もちろん全てではないが、睡眠にそれほど満足しておらず、日中により疲れていることも報告している。年配の米国人の睡眠習慣の研究は、加齢に伴って、寝入るのにかかる時間(睡眠潜時)の増加、レム睡眠の全体的な衰退、および睡眠の断片化(夜の間に目を覚ますこと)の増加を示す。睡眠障害の罹患率も加齢に伴って増加する傾向がある。調査から、高齢者の睡眠障害は、身体的および精神的な疾患ならびにそれらを処置するのに使用される薬物療法が部分的に原因である可能性があることが示唆される。
【0040】
年を取るにつれて起こる睡眠の構成の変化に加えて、睡眠に影響を及ぼす他の要因は、睡眠を含む人の身体機能のタイミングを調整する概日リズムである。例えば、年配の人は、より若い成人と比較して、夕方に眠くなり始め、朝早く目覚める傾向がある。このパターンは、睡眠相前進症候群と呼ばれる。睡眠リズムは、なお7または8時間の睡眠が得られるように前方へシフトするが、個体は、極めて早く眠りにつくため、極端に早く目覚めることになる。このような加齢に伴う睡眠および概日リズムの変化の理由は、明確に理解されていない。
【0041】
環境のストレス要因も問題であり得る。ストレスへの曝露は、睡眠および睡眠/覚醒サイクルに悪影響を与える。例えば、社会的支援が低い仕事関連のストレス要因を経験すること、または外傷/戦闘への曝露はいずれも、睡眠および睡眠/覚醒サイクルを壊す可能性がある。
【0042】
睡眠医学における臨床試験は、様々な睡眠-覚醒の問題を網羅し、したがって、睡眠医学臨床試験における転帰尺度の選択は、検査対象の具体的な障害に合わせる必要がある。研究員は、相対的な長所を考察して、生理学的試験に対する自己報告質問票を選ぶことが必要である。驚くべきことに、自己報告の尺度は、より高価な生理学的試験と比較して、処置の作用に対してより高い感度を有することが多い。
【0043】
一部の場合において、組合せ製品は、イヌまたはネコなどのコンパニオンアニマルによる摂取に好適な配合物の形態で使用することができる。1つのこのような配合物は、乾燥ペットフードであり、これは、炭水化物源、タンパク質源および脂質源のいずれか1種またはそれより多くを含んでいてもよい。
【0044】
本発明は、以下のそれらの説明からより明確に理解されると予想されるが、これらは添付の図面を参照しながら単に一例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、非盲検の組合せIBS研究の概略図である。
【
図2】
図2は、処置の前および後におけるIBS患者のIBSの症状重症度スケール(IBS-SSS)のグラフである。
【
図3-1】
図3(a)~(e)は、処置の前および後におけるIBS患者のIBS-SSSの個々の症状(腹痛の(a)不快感および(b)頻度、(c)腹部膨満、(d)腸の満足な状態ならびに(e)IBSの生活の質)の一連のグラフである。
【
図3-2】
図3(a)~(e)は、処置の前および後におけるIBS患者のIBS-SSSの個々の症状(腹痛の(a)不快感および(b)頻度、(c)腹部膨満、(d)腸の満足な状態ならびに(e)IBSの生活の質)の一連のグラフである。
【
図4】
図4(a)~(c)は、処置の前および後におけるIBS患者のIBSの症状重症度スケール(IBS-SSS)(便秘(a)、混合型(b)および下痢(c))の一連のグラフである。
【
図5】
図5(a)~(c)は、処置の前および後におけるIBS患者のIBSの症状重症度スケール(IBS-SSS)(a)中程度から重度、(b)中程度および(c)重度)の一連のグラフである。
【
図6】
図6(a)および(b)は、処置の前および後におけるIBS患者の(a)HADSうつ病および(b)HADS不安スコアのグラフである。
【
図7】
図7(a)および(b)は、(a)IBSの症状重症度スケール対HADSうつ病、および(b)IBSの症状重症度スケール対HADS不安の相関のプロットである。
【
図8a】
図8(a)および(b)は、組合せ処置の前および後と比較した、Bif35624単独の前および後におけるIBS患者のHADSうつ病における減少%の棒グラフである。
【
図8b】
図8(a)および(b)は、組合せ処置の前および後と比較した、Bif35624単独の前および後におけるIBS患者のHADSうつ病における減少%の棒グラフである。
【
図9a】
図9(a)および(b)は、組合せ処置の前および後と比較した、Bif35624単独の前および後におけるIBS患者のHADS不安およびうつ病スコアにおける減少パーセントの棒グラフである。
【
図9b】
図9(a)および(b)は、組合せ処置の前および後と比較した、Bif35624単独の前および後におけるIBS患者のHADS不安およびうつ病スコアにおける減少パーセントの棒グラフである。
【
図10】
図10(a)および(b)は、健康対IBS患者、および処置の前および後におけるIBS患者の血漿TNFレベルのプロットである。
【
図11】
図11は、Bif35624処置の前および後におけるIBS患者の血漿TNFレベルのプロットである。
【
図12a】
図12は、処置の前および後におけるIBS患者(a)およびIBS患者(PSQIが5を超える)(b)のグローバルPSQIスコアのプロットである。
【
図12b】
図12は、処置の前および後におけるIBS患者(a)およびIBS患者(PSQIが5を超える)(b)のグローバルPSQIスコアのプロットである。
【
図13a】
図13は、処置の前および後におけるIBS患者(a)およびIBS患者(PSQIが5を超える)(b)の主観的な睡眠潜時のプロットである。
【
図13b】
図13は、処置の前および後におけるIBS患者(a)およびIBS患者(PSQIが5を超える)(b)の主観的な睡眠潜時のプロットである。
【
図14a】
図14は、処置の前および後におけるIBS患者の主観的な睡眠の質のプロット(a)および表(b)である。
【
図14b】
図14は、処置の前および後におけるIBS患者の主観的な睡眠の質のプロット(a)および表(b)である。
【
図15a】
図15は、処置の前および後におけるIBS患者(PSQIが5を超える)の主観的な睡眠の質のプロット(a)および表(b)である。
【
図15b】
図15は、処置の前および後におけるIBS患者(PSQIが5を超える)の主観的な睡眠の質のプロット(a)および表(b)である。
【
図16】
図16は、健康対照対IBS患者の唾液のコルチゾールの棒グラフ(AUC
i)である。
【
図17】
図17は、処置の前および後におけるIBS患者(中程度から重度)の唾液のコルチゾールのプロット(AUC
i)である。
【
図18a】
図18(a)および(b)は、単独か、または1714、またはDPC6315と組み合わせるかのいずれかでの35624の一晩培養のチャートである;
【
図18b】
図18(a)および(b)は、単独か、または1714、またはDPC6315と組み合わせるかのいずれかでの35624の一晩培養のチャートである;
【
図19】
図19は、インビトロでBif35624、AH1714およびDPC6315で刺激したPBMCからのIL-10/IL-12の比率のプロットである。
【
図20】
図20は、インビトロでBif35624、もしくはDPC6315または両方の組合せで刺激したPBMCからのIL-10レベルの棒グラフである。
【
図21】
図21(a)および(b)は、Bif35624、DPC6315または両方の組合せを供給した後の臨床関節炎スコア-全肢(スコア0~5)のグラフである。
【
図22】
図22は、Bif35624、DPC6315または両方の組合せを供給した後の経時的な発生率パーセントのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)株UCC35624は、1999年1月13日に、国立工業海洋細菌収集機関(National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limited:NCIMB)、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen、AB21 9YA、英国スコットランドに寄託され、受託番号NCIMB41003が付与された。
【0047】
ビフィドバクテリウム・ロングム株UCC35624を、切除され洗浄されたヒト消化管から単離した。この株は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるWO00/42168Aに記載されている。
【0048】
B.ロングム35624(登録商標)株は、広範囲に研究されており、2つの十分制御された臨床研究で、IBS対象において、炎症性応答を調節し、(Groegerら、2013、Koniecznaら、2012)、腹痛、膨満感、ガスおよび予測不可能な排便習慣を低減する(O’Mahonyら、2005、Whorwellら、2006)ことが示されている。
【0049】
ビフィドバクテリウム・ロングム株AH1714は、2009年11月5日に、国立工業海洋細菌収集機関(NCIMB)、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen、AB21 9YA、英国スコットランドに寄託され、受託番号NCIMB41676が付与された。
【0050】
ビフィドバクテリウム・ロングム株AH1714を、健康なヒト対象からの結腸生検組織から単離した。この株は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるWO2011/058535Aに記載されている。
【0051】
B.ロングム1714(商標)株は、前臨床および臨床研究において不安およびストレスを和らげ、認知を改善することが示されている(Allenら、2016、Savignacら、2014、Savignacら、2015)。
【0052】
実施例
以下の実施例はさらに、本発明の範囲内の実施態様を説明し、実証する。実施例は、単に例証のために記載され、本発明の本質および範囲から逸脱することなくそれらの多くのバリエーションが可能であることから、本発明の限定として解釈されないものとする。
【0053】
配合物
上記株は、患者のコンプライアンスを確実にするのに好ましい単一の配合物で投与することができる。しかしながら、一部の場合において、上記株は、同一または異なる時間に、同一または異なる投与経路を使用して投与してもよい。
【0054】
上記株は、望ましい結果を達成するために、あらゆる好適な量で投与することができる。一部の場合において、同じ量の株が投与される。
好ましくは、上記株はそれぞれ、少なくとも106cfu/日/株の用量で、好ましくは、5×108cfu/日/株~1×109cfu/日/株の目標用量で投与される。
【0055】
上記株は、食品グレードの賦形剤とブレンドされ、小容器またはカプセルなどの形式に充填された凍結乾燥粉末の形態である。
5×108CFUのB.ロングム35624および1×109CFUのB.ロングム1714を含む凍結乾燥粉末を調製した。de Man、RogosaおよびSharpe培地中で株を発酵させた(第1の原理より)。各株の遠心分離後に収集した微粒子を洗浄し、その後凍結乾燥させた。
【実施例1】
【0056】
実施例1-非盲検の過敏性腸症候群(IBS)研究: 組合せB.ロングム製品は、成人におけるIBSの症状の低減を示す(組合せ)
ヒト試験を以下のように実行して、過敏性腸症候群(IBS)を有する成人における腸の症状に対するB.ロングム35624およびB.ロングム1714の組合せの作用を調査した。この実験は、非盲検研究からなっていた。腸の症状を、痛み、膨満、腸の障害および生活の質(包括的な満足のいく状態)を取り入れたIBSの症状重症度スケール(IBS-SSS)などの自己報告された尺度を使用して測定した。IBS-SSSは、以前に軽度、中程度または重度と分類された患者を確実にスコア付けするその能力が認められている。最大の達成可能なスコアは500であった。より均一な患者のグループ(軽度、中程度および重度のケース)の採用は、それぞれ75~175のスコア、175~300のスコア、および300を超えるスコアによって示された。また75未満とスコア付けされた対照およびこの範囲にスコア付けされる患者は、寛解の状態でもあり得る。≧50のIBS-SSSは、症状重症度における臨床的に有意な変化と定義されている(Francisら、1997)。このスケールは、IBSによりもたらされる多くの課題を満たすのを助ける有用な手段を提供する。
【0057】
この試験のための臨床プロトコールは以下の通りであった:ローマIII基準によって診断されたIBS、ならびに病院不安抑うつスケール(Hospital Anxiety and Depression scale:HADs)によって決定された軽度から中程度の不安および/またはうつ病を有する18~55歳の40人の女性対象を採用した。不安またはうつ病以外の精神医学診断、主要な炎症性障害を有していたか、または直近6か月に抗うつ、抗不安薬または抗精神病薬を受けた対象は、除外された。
【0058】
IBS-SSSスケールによって測定した場合のIBSの症状に対する組合せ試験の結果
IBSの症状を、IBS-症状重症度スケール(IBS-SSS)によって評価した。これは、8週間にわたる5×10
8CFUのB.ロングム35624および1×10
9CFUのB.ロングム1714(組合せ)を含む凍結乾燥粉末、それに続く8週間のウォッシュアウトを含む非盲検研究であった(
図1)。IBS-SSSを0、4、8、12および16週に測定した。
【0059】
IBS-SSSスコアは、組合せグループにおいて、ベースラインから介入終了まで(8週間)100±112.5の平均±SDで顕著に改善された。しかしながら、一旦供給が止まると、IBS-SSSは再び悪化し、16週目(供給後8週間)にはベースラインから35±97の改善のみであった。臨床的に重要な差は、IBS-SSSにおける≧50の変化として記載された(
図2)。本発明者らが、IBS-SSSスコアを構成する全ての個々の症状分析したところ、組合せ処置は、腹痛の不快感、腹痛の頻度、腹部膨満、腸の満足な状態ならびにIBS生活の質を含む、これらの全ての症状を改善した。その結果は、全てのプロバイオティックで同じはない(
図3(a)~(e))。組合せ製品は、便秘、下痢および混合型の患者を有する患者などのIBS患者の全てのサブタイプに利益をもたらす(
図4(a)~(c))。組合せ製品は、最も重度の患者にさえも、供給されている間は影響を与えるが、組合せがそれ以上消費されなくなると症状が戻り始める(
図5(a)~(c))。
【0060】
一般的にランダム化した二重盲検プラセボ対照研究は、臨床医学における最先端であるが、非盲検研究を使用して、本発明者らは、持ち越し効果を推測することに関する有用な情報を提供する、ウォッシュアウト期間を決定する、対象の特徴および測定されたパラメーターにおける変動に対する信頼できるデータ、加えてこの組合せ製品の治療上の可能性を示す信頼できるデータを提供することができた。
【0061】
HADsスケールによって測定した場合のIBSの症状に対する組合せ試験の結果
組合せ試験において、本発明者らは、0、4、8、12および16週に、病院不安抑うつスケール(HADs)と呼ばれる検証された質問票を使用して不安およびうつ病を測定した。本発明者らは、IBSにおいて、B.ロングム35624とB.ロングム1714との組合せが、IBS対象におけるうつ病および不安症状を低減させることによって非常に有効であることを見出した。HADsうつ病スコアは、組合せグループにおいて、ベースラインから介入終了まで(8週間)-1.6±3.122の平均±SDで顕著に改善された。驚くべきことに、一旦供給が止まると、HADsうつ病スコアは、12週目にさらに改善され(-2.0±2.63;平均±SD)、この改善は、16週目(-1.75±3.386;平均±SD)(供給後8週間)まで維持された(
図6(a))。HADs不安スコアは、組合せグループにおいて、ベースラインから介入終了まで(8週間)-1.375±3.012の平均±SDで顕著に改善された。驚くべきことに、一旦供給が止まると、HADs不安スコアはまた、12週目にさらに改善され(-2.275±3.637;平均±SD)、この改善は、参加者が組合せ製品の摂取をやめてから8週間後である16週目に維持された(-2.3±2.98;平均±SD)。(
図6(b))。臨床的に重要な差は、≧2のHADs改善として記載された。
【0062】
組合せ研究においてIBS患者でのHADSスコアと症状重症度スコアとのベースライン時における相関はない
IBSは、脳腸障害である。不安およびうつ病は、IBSの罹患者の間でよく見られる共存症であることがよく認識されている。しかしながら、これらの共存症およびそれらとIBSとの関連の正確な性質はほとんどわかっていない。目的は、不安およびうつ病が増しているIBSグループにおいて、IBSとこれらの精神医学上の共存症との関係を特徴付けて、これらが依存性のコファクターなのか、または独立したコファクターなのかを理解することである。これは、実施例1に記載された組合せ研究のベースラインの結果を利用することによって評価された。
【0063】
IBS-SSSスコア中央値は、250(IQR:190~315)であり、HADs不安スコアおよびHADsうつ病スコアは、それぞれ10.43±2.3および5.48±3.69であった。40人の対象のうち、95%および45%は、それぞれ>8のHADs不安スコアまたはうつ病スコアを有していたが、38%は、>8のHADs不安およびHADsうつ病スコアの両方を有していた。IBS-SSSとHADsうつ病およびHADs不安スコアとの相関分析から、HADsうつ病スコアについては弱い相関が示されたが(R2=0.3246;P=0.001)、HADs不安スコアについては相関は示されなかった(R2=0.3647;P=0.2378)(
図7(a)~(b))。軽度から中程度のレベルの不安およびうつ病を有するIBS対象のグループについて、IBSの重症度と不安およびうつ病のレベルとの間に弱い相関が観察されたか、または相関は観察されなかった。これらの結果は、IBSおよび共存症の不安/うつ病が独立した因子であり、組合せ35624/1714製品で使用されるような別の管理アプローチを必要とする可能性があることを示唆する。この仮説をさらに調べるために、組合せ試験の結果を、35624株を単独で使用して集められたデータを参照することにより評価した。
【0064】
組合せまたは35624単独の作用の比較はIBS患者のHADSスコアに対してなされた
組合せ製品は、気分を改善すること(不安およびうつ病を低減させること)における臨床的に有意な作用を有し、驚くべきことに、不安およびうつ病に対する作用は、参加者が組合せ製品を摂取しなかった8週間の期間中持続した。それゆえに、本発明者らの結果を、B.ロングム35624単独で処置したIBS患者において実行された以前の研究(Whorwellら、2006)と比較することに関心が寄せられた。この研究は、ランダム化二重盲検プラセボ対照多施設試験であり、共存症の不安/うつ病を有するかどうかにかかわらず全てのタイプのIBS患者が試験に承認された。単一の株としてB.ロングム35624を用いたプラセボ作用を超えるHADsスコアに対する作用はなかった。対象は、HADSスコアの重症度において一時的な減少を示したが、これは一旦供給が止まると見られなくなった(
図8(a)および9(a))。これは、供給を増した後にHADsスコアに対する有意な作用が見られ、供給中断後8週間にわたり作用が維持された組合せ製品と異なる(
図8(b)および9(b))。
【実施例2】
【0065】
実施例2-35624(登録商標)株を単独で、または1714(商標)株と組み合わせて供給することの、IBS患者における血漿TNF-aレベルに対する作用
本発明者らは、組合せ製品をIBS患者に供給した後、IBSと共に不安およびうつ病が低減され、これらの作用は供給中断後も持続したことを見出した。研究参加者の炎症性状態に変化があるかどうかを決定するために、血漿バイオマーカーである腫瘍壊死因子(TNF)-αを測定した。近年の研究において、TNF-α血清レベルは、IBS患者における症状の不快感および重症度との相関が示された(Choghakhoriら、2017)。数々の他の研究は、IBS患者が、健康対照と比較して、より高いレベルの血清中TNF-αを有していたことを確立した(Ranaら、2012;Seyedmirzaeeら、2016;Schmulsonら、2012)。さらに、ケースコントロール試験において、著者は、腫瘍壊死因子-αを含むサイトカインの異常なレベルが、IBSの症状、さらには抑うつ症状および不安な気分の症状の重症度と有意な相関を示すことを実証した(Zhenら、2018)。
【0066】
本発明者らは、0、4、8、12および16週に、IBSを有する成人における炎症性マーカーであるTNF-αに対するB.ロングム35624およびB.ロングム1714の組合せの作用を調査した。
【0067】
その結果を、不安およびうつ病の共存症を有し、同様に8週間製品を消費したIBS患者に対するB.ロングム35624単独の作用を研究するため行われた別の臨床試験と比較した。この研究のために、4週間のウォッシュアウト期間を設けた。試験グループは、プラセボ(n=31)およびビフィドバクテリウム・ロングム35624(1×1010cfu)(n=39)であった。
【0068】
血漿サンプルを末梢血液から収集し、分析まで-80℃で貯蔵した。血漿中のTNF-αを、メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery)(メリーランド州ゲイザースバーグ;カタログK15008B-1)からの96-ウェルアッセイキットを使用してアッセイし、定量化し、ベースラインからの変化としてピコグラム/ミリリットルで報告した。各サンプルを2連でアッセイした。
【0069】
以前の報告と一致して、本発明者らはまた、健康対照と比較して、本発明者らのIBS患者における血漿TNF-αにおける有意な増加も見出した(
図10(a))。組合せ製品は、IBSコホートにおいて経時的に血漿TNF-αを有意に減少させた。ここでも、本発明者らはHADsスコアで観察したものと同様に、供給を止めた後でさえも、供給後の改善の延長(8週間)、すなわちTNF-αの減少が生じた(
図10(b))。IBS患者にB.ロングム35624単独を供給した以前の研究では、8週間の供給期間中に、プラセボと比較して血漿TNF-αの有意な減少はなかったが、供給終了後の4週間、血漿TNF-αレベルは増加し、ベースラインレベルに戻った(
図11)。これは再び、本発明者らは、供給を止めた後、改善の延長が達成されたというB.ロングム35624およびB.ロングム1714の組合せの相乗効果を強調する。比較において、B.ロングム35624は、一旦供給を止めるとその抗炎症性作用を失う。
【実施例3】
【0070】
実施例3-ピッツバーグ睡眠の質指数によって測定した場合の睡眠の質における試験の結果
IBS患者の睡眠の質を、ピッツバーグ睡眠の質指数(PSQI)によって評価した。これは、「組合せ」(5×10
8CFU/日のB.ロングム35624+1×10
9CFU/日のB.ロングム1714)を用いた非盲検研究であり、マルトデキストリンおよび流動化剤、例えば二酸化ケイ素を含む小容器の形式を8週間にわたり摂取させ、続いて8週間ウォッシュアウトを設けた(
図1)。0、4、8、12および16週にPSQIを測定した。許容できる信頼度および有効性を有するものとして臨床集団において過去1ヶ月間の睡眠の質および障害を測定するように設計された改定PSQIを介して睡眠の質を評価した(Buysseら、1989)。PSQIは、7つの領域:1)睡眠の持続時間、(2)睡眠障害、(3)睡眠潜時、(4)眠気による昼間の障害、(5)睡眠効率、(6)全体的な睡眠の質、および(7)睡眠薬物療法の使用にわたり睡眠の質を評価する19項目の自己報告尺度である。睡眠の要素のそれぞれは、0~3の範囲のスコアをもたらし、3は最大の障害を示す。睡眠の要素のスコアを合計して、0~21の範囲の合計スコアを得る。合計スコア(グローバルスコアと称される)が高いほど、睡眠の質がよくないことを示す。睡眠が優れた人と劣った人との区別において、>5のグローバルPSQIスコアが、89.6%の感度および86.5%.1の特異度をもたらす(Buysseら、1991;Hermanら、2002;Fillingimら;2011、Portoら、2011)。本発明者らは、本発明者らの睡眠の質が劣ったIBS患者の部分集団を調査するために、この>5のグローバルPSQIカットオフを使用した。主観的な睡眠の質は、以下のようにスコア付けされる:「非常に優れた」(0)、「そこそこ優れた」(1)、「あまりよくない」(2)「非常によくない」(3)。
【0071】
組合せ製品の毎日の摂取は、4週目および8週目にPSQIグローバルスコアを有意に減少させた(
図12(a))。PSQIグローバルスコアの減少は、睡眠の質の改善を示す。睡眠の質が劣ったIBS患者(>5のグローバルPSQI)のサブグループを調査したところ、組合せは、供給後であっても、全てのタイムポイントでPSQIグローバルスコアを有意に減少させた(
図12(b))。グローバルPSQIスコアは、7つの要素のスコア(睡眠障害、全体的な睡眠の質、睡眠潜時(寝入るまでの時間)、睡眠の持続時間、眠気による昼間の障害、睡眠効率、および睡眠のための薬必要性)の合計である。それらのなかでも、組合せは、4週目および8週目に、さらに供給後8週間、PSQI-睡眠潜時スコアを有意に減少させた(
図13(a))。ここでも、本発明者らが「睡眠がよくない人」の部分集団で調査したところ、本発明者らは、供給後8週間でPSQI-睡眠潜時の減少を観察した(
図13(b))。別の留意すべき結果は、対象が「過去1ヶ月間において、あなたの睡眠の質を全体としてどのように評価しますか?)と質問されたとき、結果は、組合せ製品の投与が、PSQIグローバルスコアと一致して睡眠の質を有意に改善したことを示したことであった。主観的な睡眠の質のスコアは、組合せグループにおいてベースラインから介入終了まで(8週間)改善され、供給を止めた後(16週間)もそれらの作用は維持された(
図14(a))。睡眠をとる患者の異なるカテゴリーのパーセンテージを調査したところ、組合せ処置は、睡眠を「優れた」と説明する患者の数を増加させ、「あまりよくない」睡眠を有する対象の数を減少させた。これは、供給を止めた後でさえも維持される(
図14(b))。本発明者らはまた、ベースライン時に、5より大きいPSQIのグローバルスコアで表される「よくない」睡眠を有していたと報告したIBS患者のサブグループも分析した。このグループ(グローバルPSQIスコアが5より大きい)において、主観的な睡眠の質のスコアは、ベースラインから介入終了まで(8週間)改善され、それらの作用は供給を止めた後も維持された(16週間)(
図15(a))。睡眠をとる患者の異なるカテゴリーのパーセンテージを調査したところ、組合せ処置は、睡眠を「そこそこ優れた」と説明する患者の数を増加させ、「あまりよくない」睡眠を有する対象の数を減少させた。これは、供給を止めた後でさえも維持される(
図15(b))。睡眠の質に対する組合せ製品の有益な作用は、健康増進に関するこの株の組合せの見込みのある利益を示す。
【0072】
このIBS研究において、40人の患者のうち33人が、5以上のグローバルPSQIスコアを有することから、睡眠がよくない人として特徴付けられ、これは、IBS患者の睡眠の質が劣っていることを示す文献と一致していた。組合せ投与の後、これらのIBS患者において、PSQIによって測定した場合のよくない睡眠の質が有意に低減され、この作用は、組合せ投与後8週間維持された。これらの結果は、本発明者らがHADsスコアで観察したものと一致しており、IBSの症状と劣った睡眠の質との間に相互作用があることから、作用が供給中断後8週間維持された。
【実施例4】
【0073】
実施例4-IBS患者における唾液のコルチゾールに対する35624株を1714株と組み合わせて供給することの作用
非盲検試験(実施例1に記載)の一部として、本発明者らは、0、4、8、12および16週におけるIBSを有する成人におけるストレスホルモンであるコルチゾールに対するB.ロングム35624および1714株の組合せの作用を調査した。唾液コルチゾールおよびコルチゾール覚醒反応は、非侵襲的で実行が簡単であり、HPA軸の機能を評価するためのよく検証された方法である。唾液のコルチゾールは24時間周期であるため、本発明者らは、4つの異なるタイムポイント(15分、30分、45分、60分)で覚醒時のコルチゾールを測定する。午前中のコルチゾールにおけるダイナミックな上昇は通常、覚醒後30~45分以内に起こり、その後、1日の残りの時間にわたり次第に落ちる。これは、コルチゾール覚醒反応(CAR)として公知である。正常なCAR応答は、30分における寿命の短いピークを特徴とする。IBS患者において、このダイナミックな応答が鈍くなっており、覚醒時のコルチゾールレベルの変化がほとんどない。これはIBS状態に関連する慢性的なストレス要因に起因し、「疲労」またはCAR応答における負のフィードバックループを誘発するという仮説が立てられている。CAR応答の正常化は、対象の脳腸軸の正常な機能に対するIBSの影響において有益な低減を示す可能性がある。
【0074】
唾液サンプルの衛生的な収集のために、サリベット(Salivette)スワブを使用し、次いでサンプルをアッセイまで-80℃で凍結したままにした。サリベットサンプリングデバイスは、綿棒からなっており、この綿棒を患者が2分間噛み、次いでそれをデバイスのプラスチックチューブに移す。患者は、サンプリングの15分前、食事、喫煙、茶もしくはコーヒーを飲むこと、または歯みがきが制限され、サンプル収集前の24時間は歯科処置を受けないように指示される。唾液サンプルは、それらを研究所に送るまで、室温で貯蔵してもよいし、または参加者の自宅の冷蔵庫または冷凍庫で貯蔵してもよい。コルチゾール酵素免疫検査法キットを製造元(エンゾライフサイエンス(Enzo Life Sciences)、英国)の説明書に従って使用して、コルチゾール濃度を決定した。アッセイ検出限界は0.16nmol/lであった。アッセイ間およびアッセイ内の変動係数(CV)は、それぞれ11.24%および8.2%であった。
【0075】
文献から、IBSを有する対象は、覚醒時に高いコルチゾールレベルを呈し、CARが鈍く、すなわち覚醒後の30分でコルチゾールの増加が最小であるかまたは増加しないため、60分でそれに続く減少が起こらない。CARに対する介入の作用を最もよく可視化するために、「濃度曲線下面積」(AUCi)の増加をグラフ化し、計算する。AUCiは、ゼロ時間から60分の時間までの応答曲線下の測定可能な面積である。これは、最初の値を参照して計算され、それにより経時的な変化が強調される。
【0076】
IBSの特徴は、午前中の覚醒時におけるコルチゾール生産の鈍い増加を示し、これは、IBS対象における基礎となる午前中の唾液のコルチゾールレベルに関して、健康対照と比較してより低いAUCiをもたらす(
図16)。このグラフは、Suarez-Hitzら、2012の論文に提供されるデータから再現された。
【0077】
B.ロングム35624およびB.ロングム1714の組合せ(組合せ)の使用は、中程度および重度のIBSの症状を有する成人におけるにおいて、覚醒コルチゾールの生産に対して正常化作用を有し、覚醒後30分において一時的な増加をもたらした。0週目、4週目、8週目、12週目、および16週目にAUCi(n=33)を測定したところ、AUCiは増加したことから、供給中にIBS対象においてCAR応答の鈍化が回復したことが示される。この作用は、それに続く供給後の8週間(9~16週目)にわたり失われた(
図17)。それゆえに、組合せの供給は、コルチゾール覚醒反応の調節異常を正常化した。この作用は、睡眠の質、不安およびうつ病に対する作用とは異なり、供給後、持続しなかった。本発明者らが知る限り、プロバイオティックまたはプロバイオティックの組合せが、この有益な様式でIBS対象におけるCARを変更することは観察されなかった。
【実施例5】
【0078】
実施例5-インビトロにおける株の適合性の実証:単独か、または1714(商標)株またはDPC6315株と組み合わせるかのいずれかでの35624の一晩培養
ヒトの試験を行う前に、2つの共培養実験を行って、増殖実験においてB.ロングム35624と別のB.ロングムDPC6315または1714株との組合せの作用を調査した。35624株を増殖させる全ての過去の実験から、それが慎重な管理を必要とする敏感な株であることが示された。インビトロでの実験(実施例6)で、その抗炎症性状態のためにB.ロングムDPC6315が選ばれた。
【0079】
AH1714/35624、およびDPC6315/35624を、全ての100ml培養物を植え付けるために正確な同じ細胞数を使用して、100mlスケールで共培養した。ODで標準化した接種材料を、100mlのアレルゲン非含有培地、4.5%スクロース、0.05%システインに添加し、これを全ての株に使用した。株のみのインキュベーションと株の組合せのインキュベーションを37℃で24時間行った。この実験の結果から、これらの株のより優れた共培養の性能が本発明者らに示された。35624のリファンピシン耐性バリアントを使用して、回収時の株の検出を可能にした。このバリエーションは、リファンピシン抗生物質耐性遺伝子における点突然変異からなる。35624を培養し、リファンピシン含有寒天培地上の生菌計数を実行して、培養実験における35624の正確な細胞数を得た。
【0080】
【0081】
AH1714/35624共培養実験:いずれの株も目立った阻害はなく、それぞれのCFU/mlまたは増殖は、両方の株を一緒に共培養した増殖に類似していた(35624rifは7.9×10
8CFU/ml、およびAH1714は7.2×10
8CFU/ml)(
図12(a))。
【0082】
DPC6315/35624の共培養実験:いずれの株も目立った阻害はなく、それぞれのCFU/mlは、両方の株を一緒に共培養した場合と類似していた(35624rifは9.4×10
8CFU/ml、およびAH1714は8.5×10
8CFU/ml)(
図12(b))。
【0083】
この結果から、35624と1714との間に有害な相互作用がなかったことが示された。
【実施例6】
【0084】
実施例6-35624、AH1714およびDPC6315の抗炎症性(IL-10/IL-12の比率の)PBMCプロファイル
本発明者らはこれまでに、B.ロングム35624は、インビトロで抗炎症性プロファイルを有すること、およびこのタイプのプロファイルは、IBSにおいて関連性を有する可能性があることを実証した。それゆえに、この研究の目的は、本発明者らが、本発明者らが、抗炎症性が強化された組合せを作製するためにB.ロングム35624と組み合わせることができる類似の抗炎症性ビフィドバクテリウム・ロングム株を発見できるかどうかを決定することであった。本発明者らは、B.ロングムDPC6315とB.ロングム1714の両方を含む15種の異なるB.ロングムを、それらの抗炎症性株のプロファイルに関してスクリーニングした。これを決定するために、本発明者らは、インビトロにおいてこれらの菌株で刺激されたPBMCからのIL-10とIL-12の両方を測定する。
【0085】
インターロイキン-10(IL-10)は、単球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞およびリンパ球(調節性T細胞)を含む多くの細胞型によって生産される抗炎症性サイトカインである。IL-10は、抗原提示細胞上での炎症促進性Th1サイトカイン、MHCクラスII抗原、および共刺激分子の発現を下方調節する。これはまた、B細胞の生存、増殖、および抗体産生も強化する。このサイトカインは、NF-κB活性をブロックでき、JAK-STATシグナル伝達経路の調節に関与する。マウスのノックアウト研究は、IL-10KOマウスが重度の大腸炎を発症するため、免疫調節におけるIL-10に関する必須の役割を実証した。加えて、IL-10の有力な誘導物質である細菌は、インビボにおいて調節性T細胞の分化を促進することが示されており、したがって、免疫学的なホメオスタシスに寄与する(O’Mahonyら、AJP 2006; O’Mahonyら、2008)。
【0086】
インターロイキン-12(IL-12)は、Th1エフェクターT細胞応答の分極に関連する炎症促進性サイトカインであり、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞からの他の炎症促進性Th1サイトカイン、例えばインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)の生産を刺激する。高いレベルのIL-12発現は、自己免疫に関連する。自己免疫疾患に罹っている人へのIL-12の投与は、疾患症状を悪化させることが示された。対照的に、IL-12ノックアウトマウスまたはIL-12中和抗体でのマウスの処置は、疾患を緩和した。
【0087】
細胞型に対するサイトカインの作用よりもサイトカインカスケードおよびネットワークが炎症性応答を制御する。2つのサイトカイン(例えばIL-10およびIL-12)の発現の相対レベルまたはバランスは、単一のサイトカインの発現より情報量が多い。これらの研究において、本発明者らは、ヒトPBMCを様々な菌株で刺激した。全ての株がIL-10を誘導し、全ての株がIL-12を誘導した。しかしながら、IL-10誘導とIL-12誘導との比率の検査から、一部の菌株は、他の株と比較してより高い比率(すなわちより多くのIL-10とより少ないIL-12)を誘導したことが解明された。これは、最終的に免疫学的な転帰を決定するこれらの対立するシグナルのそれぞれの間のバランスであるため、有意義な観察である。高いIL-10:IL-12の比率は、適切な免疫調節性の活性に関連する抗炎症性応答を促進し、一方で低いIL-10:IL-12の比率は、免疫応答のTh1分極に寄与することが予期される。したがって、PBMCのIL-10:IL-12の比率は、免疫調節性の特性を有する菌株の同定のための重要な選択基準である。
【0088】
アッセイを後述するようにして実行した:
末梢血単核細胞(PBMC)を、BDバキュテナー(Vacutainer)CPTチューブ(BD、カタログ362761)を製造元の説明書に従って使用して、新鮮な健康なヒト末梢血液から単離した。PBMCを洗浄し、ダルベッコ改変イーグル培地-グルタマックス(Glutamax)(商標)(グルタマックス(グルタミンの代用品)+ピルビン酸塩+4.5g/lグルコース(ギブコ(Gibco)、カタログ10569-010)10%ウシ胎児血清(シグマ(Sigma)、カタログF4135)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ、カタログP0781)に再懸濁した。200μLのPBMCを、細胞1×106個/mLの濃度(すなわち細胞2×105個)で平底96-ウェルプレートに添加し、20μLの細菌(1×107CFU/mLの濃度で)を、すなわち200mLの細胞当たり20μLの刺激薬で必要なウェルに添加する。インキュベーター中で、37℃/5%CO2で、必要に応じてプレートをインキュベートする。
【0089】
細菌を以下のように生成した:
新鮮な培養液のために、細菌をディフコ(Difco)のMRS培地中で増殖させ、固定相に入った直後に回収した。全ての細胞を、嫌気性条件下、37℃で増殖させた。凍結乾燥製品のために、細菌をディフコのMRS培地中で増殖させ、固定相に入った直後に回収した。細胞を、嫌気性条件下、37℃で増殖させた。次いでこれらの細菌のそれぞれにつき、凍結乾燥粉末を生成し、本発明者らによって、事前にアリコートにした100mgバイアル中で、使用直前まで-80Cで貯蔵した。それらを冷凍庫から取り出したら、単一のバイアルを室温に融解させ、10mlのリンゲル液で3回洗浄し、続いて遠心分離した。各回につき新しいバイアルを使用した。総細菌数は、後述するように得られた。滅菌チューブにアリコートにした凍結乾燥した細菌は、10mlの培養培地(RPMIまたはDMEM)で希釈されることとなった。このチューブから1mlを取り、4.5mlの培養培地(RPMIまたはDMEM)に添加し、これが1.0E+09の濃度での最も高い用量になり、次いでこれを、1:1(培地の用量)または1:9(より低い用量)のいずれかになるように希釈することになる。20μlの細菌溶液を200μlのPBMC懸濁液(細胞2×105個)に添加するか、または50μlの細菌溶液を500μlのPBMC懸濁液(細胞5×105個)または100μlに添加するかのいずれかを行う。選択された通常の希釈液は1.0E+08であり、これは、100:1(細菌:PBMC)に相当する。陰性対照は、凍結防止剤のみであり、刺激されていない細胞に添加されると予想されるが、細菌アリコートと同じ方法で希釈されると予想される。全てのアッセイを3連で行った。37℃で1日インキュベートした後、プレートを300×gで回転させ、上清を除去し、分析まで-80℃で凍結貯蔵した。培養上清中のサイトカインを、メソスケールディスカバリー(メリーランド州ゲイザースバーグ;カタログK15008B-1)からの96-ウェルアッセイキットを使用してアッセイし、インターロイキン10(Il-10)、およびインターロイキン12p70(Il12p70)を定量化し、ピコグラム/ミリリットルとして報告した。各サンプルを2連でアッセイした。図は、代表的な実験の結果を示す。
【0090】
試験された15株のうち、3つのビフィドバクテリウム・ロングム株をアッセイしたところ、B.ロングム35624およびB.ロングム1714が、非常に類似した望ましいIL-10/IL-12の比率を誘導する。B.ロングムDPC6315は、35624または1714のいずれよりも高い比率をもたらし、これは同様に望ましい特色であった(
図19)。
【0091】
加えて、さらに株を組み合わせることの負の作用があるかどうかを決定する試みにおいて、本発明者らは、35624およびDPC6315で、ならびにこれら2株の組合せとして刺激したPBMCのIL-10生産を評価した。インビトロにおいて両方の株を組み合わせて使用する負の作用は観察されず、単独で使用された株と類似したIL-10生産が達成された(
図20)。35624を1714と組み合わせて使用する場合、類似の結果が達成される。それゆえに、本発明者らは、文献中の全ての利用可能な情報およびこれらの結果から、B.ロングムDPC6315とB.ロングム35624との組合せはまた、強力な組合せの抗炎症性製品であるという仮説を立てた。
【実施例7】
【0092】
実施例7-抗炎症性コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおける株の比較
35624/DPC6315の組合せをさらに試験するために、炎症のマウスモデルにおいて株を組み合わせた。本発明者らはこれまでに、特定のプロバイオティック細菌株の消費は、粘膜の炎症性疾患を調節できることを実証した。この研究の目的は、十分に確立された抗炎症性の株スクリーニングモデルにおいて、単独または組合せのいずれかで使用されるマウス関節炎モデルにおけるプロバイオティックビフィドバクテリウム・ロングム株の経口投与の作用を決定することであった。IBSは、より高いレベルの炎症に関連する。抗炎症性作用を評価するIBSのマウスモデルは十分に確立されていないため、よく検証された抗炎症性モデルを使用した。これらの新規のビフィドバクテリウム属株は、インビトロで抗炎症性プロファイルを有することが確認された。
【0093】
本発明者らのPBMCスクリーニング(実施例5)から、本発明者らはB.ロングムDPC6315を選択して、公知のプロバイオティックB.ロングム35624の治療作用が、抗炎症性B.ロングムDPC6315と共に使用される場合、強化できるかどうかを決定した。これらの株は、共培養実験で互いの増殖を阻害しなかった。
【0094】
マウスにB.ロングム35624、B.ロングムDPC6315または両方の組合せを経口で供給した。関節炎のCIAモデルにおける関節炎の発症および疾患重症度は、疾患および肢の膨潤の臨床徴候などのエンドポイントを使用して測定された主要なパラメーターであった。
【0095】
リウマチ様関節炎(RA)は、慢性自己免疫疾患であり、コーカソイドの人口の1~2%が罹患している。RAは、関節の滑膜の炎症、軟骨の分解および骨侵食を特徴とする。関節の傷害は、RAの早期に起こり、一度起こると、多くの場合回復できない。炎症促進性サイトカインTNF、IL-6およびIFN-γおよび抗炎症性IL-10の調節異常の発現が報告されており(Fieldmanら、1996、Annu Rev Immunol 14;397~440)、例えば高いレベルのIL-15(McInnes IBら、1996)、およびIL-17(McInnes IBら、2000)を有する。TNF-αおよびIL-1βの疾患病因への関連性が、TNF-αまたはIL-1βを中和する治療戦略の臨床的な成功によって強調されてきた(Elliott MJら、1994、Moreland LWら、1997、Feldmann M:2002)。コラーゲン誘導関節炎は、周知のヒトRAのマウスモデルであり、RAで見出されるもののような体液性および細胞性免疫メカニズムの両方の多くの特徴を有する(Durie FHら、1994)。II型コラーゲン関節炎を有するマウスおよびラットにおける炎症性浸潤は、好中球およびマクロファージからなり、病変が急性から亜急性期にある場合、リンパ球はより少数である。関節腔内の組織浮腫および好中球滲出物は、急性から亜急性期において共通している。炎症が慢性に進行するにつれて、単核炎症細胞(単球、リンパ球)が優勢になり、線維芽細胞の増殖は、しばしば異染色性のマトリックスの堆積を伴い、滑膜および関節周囲組織で起こる。滲出物は、関節腔中でそれほど多くみられない。
【0096】
コメント欄で別段の指示がない限り、炎症のタイプは、急性から亜急性である。
アッセイを後述するようにして実行した。
実験の設計
動物(関節炎のための15匹のDBA/1マウス/グループ)をイソフルランで麻酔し、尾の付け根の毛を剃り、ウシII型コラーゲン(Bolder BioPATH、バッチ番号5)(1mg/ml)を含有する150μlのフロイント完全アジュバント(ディフコ)を尾の付け根に、0日目に、さらに21日目に再び皮内注射した。研究14日目に、マウスを体重によって処置グループにランダム化した。登録の後に処置を開始させ、研究34日目まで示された通りに毎日続けた(24時間のインターバルでQD)(陽性対照であるデキサメタゾンでの処置を18日目に開始させた)。研究24~35日目に、関節炎の発症が起こった。研究35日目にマウスを屠殺した。18~35日目に、肢のそれぞれ(右前、左前、右後、左後)に対して臨床スコアを付与した。
【0097】
観察、測定、および試料
疾患が誘導されたら、マウスを疾患の臨床徴候に関して観察する。研究18~35日目に、肢のそれぞれ(右前、左前、右後、左後)に対して毎日の臨床スコアを以下の基準を使用して付与した。
【0098】
0=正常。
1=1本の後肢または前肢の関節が影響を受けるか、または最小のびまん性紅斑および腫脹。
【0099】
2=2本の後肢または前肢の関節が影響を受けるか、または軽度のびまん性紅斑および腫脹。
3=3本の後肢または前肢の関節が影響を受けるか、または中程度のびまん性紅斑および腫脹。
【0100】
4=4本の後肢または前肢の関節が影響を受けるか、または著しいびまん性紅斑および腫脹。
5=全肢が影響を受け、重度のびまん性紅斑および重度の腫脹、関節を曲げることができない。
【0101】
炎症のスコア付け
0=正常。
0.5=1つの関節のみに極めて最小の影響を与えるか、または最小の多病巣性の関節周囲の炎症細胞浸潤。
【0102】
1=影響を受けた関節の滑膜および関節周囲組織における最小の炎症細胞浸潤。
2=軽度の炎症細胞浸潤。肢に言及する場合、一般的に、影響を受けた関節(1~3の影響を受けた関節)に限定される。
【0103】
3=中程度の浮腫を伴う中程度の浸潤。肢に言及する場合、影響を受けた関節、一般的に3~4の関節および手首または足首に限定される。
4=著しい浮腫を伴うほとんどの領域に影響を及ぼす著しい浸潤であり、1または2の影響を受けていない関節が存在していてもよい。
【0104】
5=全ての関節(ある程度まで)および関節周囲組織に影響を及ぼす、重度の浮腫を伴う重度のびまん性浸潤。
肢のスコアに関する臨床データ(動物ごとの平均)を、18~35日目の用量曲線下面積(AUC)を決定することによって分析した。AUCの計算のために、各マウスの毎日の平均スコアをマイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)に入力し、処置日と最終日との間の面積をコンピューターで計算した。各グループの平均を決定し、処置動物および正常な動物の値を比較することによって、関節炎対照からの%阻害を計算した。一元配置分散分析(一元配置ANOVA)またはクラスカル-ウォリス検定(ノンパラメトリック)を適切な多重比較事後検定と共に使用して、データを分析した。スチューデント両側t検定を使用して正常な対照を疾患対照と比較することによって、モデルを検証した。統計的検定は、データの規定度および分散の均一性に関する特定の仮定を作製し、これらの仮定に反する結果が試験により生じた場合、さらなる分析が必要な場合がある。全ての試験の有意性はp<0.05に設定された。
【0105】
B.ロングム35624の供給は、疾患対照グループ(
*p<0.05)(
図21(a))またはDPC6315および35624の組合せを供給したグループ(
図21(b))と比較して、疾患の炎症および臨床徴候の低減をもたらした。これと一致して、B.ロングム35624の消費は、疾患の発生率のパーセントによって測定した場合、疾患の発症および重症度を遅延させたが、2種のビフィドバクテリウム・ロングムの組合せまたはDPC6315単独は、DPC6315が35624に類似の傾向を示したにもかかわらず、遅延させなかった(
図22)。結論として、プロバイオティックであるB.ロングム35624の経口投与は、関節スコアおよび発生率による炎症の低減に関して組合せ製品より明らかに優れており、コラーゲン誘導関節炎モデルにおける関節炎の視覚的評価において有意な改善をもたらした。これは、これらはインビトロにおけるPBMC試験からの最良の2つの候補株であったため予想外の結果であり、共培養実験で増殖の阻害はなかった。B.ロングムDPC6315は、組み合わせた場合、関節炎(CIA)のマウスモデルにおいて35624の抗炎症性作用を阻害し、この組合せは、いずれかの株単独より悪かった。この研究は、ビフィドバクテリウム・ロングム株の組合せの作用は、インビボにおいて予測不可能であり得ることを実証する。
【0106】
本発明の株は、経口的に摂取可能な形態で、カプセル剤、マイクロカプセル、錠剤、顆粒剤、粉剤、トローチ、丸剤、坐剤、懸濁液およびシロップ剤などの従来の製剤で動物(ヒトを含む)に投与することができる。好適な配合物は、一般的に採用される方法によって、従来の有機および無機添加剤を使用して調製することができる。医薬組成物における活性成分の量は、望ましい治療作用を与えると予想されるレベルであり得る。
【0107】
配合物はまた、細菌の成分、薬物原体または生物学的な化合物を含んでいてもよい。
加えて、本発明の株を含むワクチンは、あらゆる好適な公知の方法を使用して調製でき、医薬的に許容される担体またはアジュバントを含んでいてもよい。
【0108】
プロバイオティック生物の導入は、好適な担体中での微生物の摂取によって達成される。大腸においてこれらのプロバイオティック株の増殖を促進すると予想される培地を提供することが有利であると予想される。1種またはそれより多くのオリゴ糖、多糖、または他のプレバイオティックの添加は、消化管における乳酸菌の増殖を強化する。プレバイオティックは、プラスの価値があると考えられる常在菌によって結腸で特異的に発酵する、あらゆる生存可能ではない食物成分を指し、例えばビフィドバクテリウム属、乳酸杆菌である。プレバイオティックのタイプとしては、フルクトース、キシロース、ダイズ、ガラクトース、グルコースおよびマンノースを含有するものを挙げることができる。プロバイオティック株と1種またはそれより多くのプレバイオティック化合物との組合せ投与は、インビボにおいて投与されたプロバイオティックの増殖を強化することができ、結果としてより顕著な健康上の利益をもたらし、これはシンバイオティクスと呼ばれる。
【0109】
プロバイオティック株は、それらのみで、または上述したような他のプロバイオティックおよび/またはプレバイオティック材料との併用のいずれかで、予防的に、または処置方法として投与されてもよいことが理解されると予想される。加えて、細菌は、炎症または他の障害、特に免疫学的に関与するものを処置するために使用されるものなどの他の活性材料を使用して、予防または処置計画の一部として使用することができる。このような組合せは、単一の配合物で投与されてもよいし、または同一または異なる時間に、同一または異なる投与経路を使用して投与される別々の配合物として投与されてもよい。
【0110】
本発明の株は、株の制御放出、例えば遅延放出を容易にするように製剤化されてもよい。例えば、配合物は、小腸または結腸などの消化管中の特定の場所で株を放出するように適合させることができる。このような制御放出を達成するために、株は、特定の場所で株を放出するように適合させたコーティングを有するカプセル中に製剤化することができる。このような制御放出を容易にするために、様々なコーティングが利用可能である。このようなコーティングの1つの種類は、オイドラギット(Eudragit)という商標で入手可能なものである。
【0111】
本発明は、上記に記載した実施態様に限定されず、これらは様々に変更することができる。
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