(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリアミドを含む相溶化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240326BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240326BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L79/08 B
C08L81/06
(21)【出願番号】P 2020564338
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(86)【国際出願番号】 EP2019060972
(87)【国際公開番号】W WO2019219368
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】テイラー, ナルマンダフ
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム, ケリー ディー.
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00185237(EP,A1)
【文献】特開平04-258666(JP,A)
【文献】米国特許第05422398(US,A)
【文献】特表2016-514752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068679(US,A1)
【文献】特開2010-001446(JP,A)
【文献】V.A.Deimede et.al.,Miscibility behavior of polyamide 11/sulfonated polysulfone blends using thermal and spectroscopic techniques,Polymer,2000年,41,9095-9101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08L 79/08
C08L 81/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物(C)であって、
- 少なくとも1種のポリアミド(P1)、
- (C)の総重量に基づいて、1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)であって、P2は、
少なくとも1つの官能基(SO
3
-)、(M
p+)
1/p若しくは
官能基(SO
3
-
)、(M
p+
)
1/p
及び(COO
-)、(M
p+)
1/p(式中、M
p+は、p価の金属カチオンである
)を有するポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である官能化ポリマー(P2)を含み、
P1の繰り返し単位(R
PA)が、式(PA1):
(式中、
- 各炭素原子上の各R
i、R
j、R
k及びR
lは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、第4級アンモニウム及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
- mは、4~10の整数であり;
- nは、4~12の整数である)に一致する、ポリマー組成物(C)。
【請求項2】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される少なくとも1種のポリマー(P3)を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項3】
- 10~89重量%の少なくとも1種のポリアミド(P1)、
- 1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)、及び
- ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される89重量%までの少なくとも1種のポリマー(P3)を含む、請求項1又は2に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項4】
P2及び/又はP3は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリスルホン(PSU)から成る群から選択されるPAESである、請求項1~3の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項5】
P1は、
- 少なくとも1種のフタル酸(DA)又はその誘導体及び
- 少なくとも1つの脂肪族ジアミン(NN)
の縮合の結果として生じる少なくとも50モル%の繰り返し単位を含む芳香族ポリアミド(PPA)である、請求項1~4の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項6】
2分間中に340℃の処理温度で透過型電子顕微鏡法(TEM)下で測定して、1.0μm未満の平均サイズのドメインを提示する、請求項1~5の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項7】
- 10~89重量%の少なくとも1種のポリアミド(P1)、
- SO
3
-、Na
+
及びSO
3
-、K
+から成る群から選択される少なくとも1つの官能基若しくは
SO
3
-
、Na
+
及びSO
3
-
、K
+
から成る群から選択される少なくとも1つの官能基と、COO
-、Na
+及びCOO
-、K
+から成る群から選択される少なくとも1つの官能基
と
を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である、1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)、及び
- ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である、89重量%までの少なくとも1種のポリマー(P3)を含む、請求項1~6の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項8】
補強剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、成核剤及び酸化防止剤から成る群から選択される少なくとも1種の添加物(A)を更に含む、請求項1~7の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項10】
フィルム、積層体、自動車部品、エンジン部品、電気部品又は電子部品である、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
ポリマー組成物(C)中の、
- 少なくとも1種のポリアミド(P1)及び
- ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される少なくとも1種のポリマー(P3)の相溶剤としての
官能化ポリマー(P2)の使用であって、
ここでP2は、
少なくとも1つの官能基(SO
3
-)、(M
p+)
1/p若しくは官能基(SO
3
-)、(M
p+)
1/p及び(COO
-)、(M
p+)
1/p(式中、Mp+は、p価の金属カチオンである
)を有するポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である、使用。
【請求項12】
前記ポリマー組成物(C)は、前記ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて、
- 1~98重量%のP1、
- 1~98重量%のP3、
- 1~40重量%のP2、
- 任意選択的に、補強剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、成核剤及び酸化防止剤から成る群から選択される少なくとも1種の添加物を含有する、請求項11に記載のP2の使用。
【請求項13】
ポリマー組成物(C)であって、
- 少なくとも1種のポリアミド(P1)、
- (C)の総重量に基づいて、1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)であって、P2は、少なくとも1つの官能基(SO
3
-)、(M
p+)
1/p(式中、M
p+は、p価の金属カチオンである)を有するポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である官能化ポリマー(P2)、及び
- ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される少なくとも1種のポリマー(P3)を含む、
ポリマー組成物(C)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月18日出願の米国仮特許出願第62/673,272号及び2018年7月9日出願の欧州特許出願公開第18182460.8号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも1種のポリアミド(P1)及び(C)の総重量に基づいて1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)を含むポリマー組成物(C)に関し、ここでP2は、少なくとも1つの官能基(SO3
-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属カチオンである)を有するポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である。本発明は、ポリマー組成物(C)が組み込まれた物品及び2種の不混和性ポリマーを含むポリマー組成物(C)における相溶剤としての官能化ポリマー(P2)の使用にも更に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物は、例えばエンジン部品及び電子部品として、自動車、電気及び電子産業用物品を製造するために一般的に用いられている。高温に曝された時に、これらの物品は、例えば150℃超の高温の使用温度で優れた機械的特性を提示しなければならない。自動車市場では、燃料効率を改善するために、自動車製造業者は、自動車の重量を減少させる解決策を探し求めている。1つのアプローチは、金属部品をポリマーと取り替えることにある。アンダーフードの技術部品については、ポリマーは、一般に150℃を超える使用温度での高い弾性率及び強度を有していなければならない。しかし、大多数のエンジニアリングポリマー(例えば、ポリアミド)は、150℃未満のガラス転移温度を有しており、これは室温より低い使用温度での弾性率を意味する。このため高温での弾性率及び強度の損失を補填するためにより厚みがある部品製造されるが、その結果これは所望の重量減少を制限する傾向がある。
【0004】
ポリマーは、所望の機械的特性及び耐熱性を備える新規な組成物を達成するためにブレンドすることができる。しかしながら、数種の高性能ポリマーは、相互に不混和性であり、これは非均質な多層組成物を生じさせることが多い。これらの組成物は、幾つかの熱転移温度(Tg、Tm)を示し、通常は不良な機械的特性を示し、層間剥離及び/又は審美的欠陥に悩まされる。機械的特性は特に、ポリマーの適合度及び連続相と分散相との間に作り出されるドメインサイズに依存する。
【0005】
そこで適合性が増加した、それにより例えば150℃超の高い使用温度で高度の弾性率及び強度等の優れた機械的特性を提示する新規なポリマーのブレンドが必要とされている。
【0006】
更に、高温での優れた機械的特性だけではなく、部品の寸法安定性を改善するための更に満足できる表面形態及び長時間に渡る低吸水率を有する新規なポリマーのブレンドが必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】比較例1(
図1A)及び実施例1(
図1B)の組成物の透過型電子顕微鏡法(TEM)による顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及びポリエーテルイミド(PEI)ポリマーは、概してポリアミド(P1)とは不混和性である。これらのポリマーがブレンドされると、顕微鏡下で1.0μm超、例えば1.25μm超又は1.5μm超さえの平均粒径のドメインを観察することができ、これは層間剥離及び/又は審美的欠陥に悩まされる不良な機械的特性を備えるポリマーブレンドを生じさせる。
【0009】
本発明は、少なくとも1種のポリアミド(P1)及び少なくとも1種のポリマー(P2、任意選択的にP3を伴う)を含み、ここでP2が上述したポリマーブレンドの欠点に悩まされることのない、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である相溶化ポリマー組成物(C)に関する。
【0010】
本発明の組成物は、より正確には、必須成分として、少なくとも1つの官能基(SO3
-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属カチオンである)を有するPAES主鎖を備える官能化ポリマーを含む。
【0011】
本出願人は、そのような組成物が、透過型電子顕微鏡法(TEM)下で測定して平均粒径が1.0μm未満のドメインを提示するだけではなく、更に自動車、電気又は電子市場によって必要とされる上述した技術的制約に対する効果的な費用効果的解決策:高温での高い弾性率及び強度、機械的特性、低吸水率、表面形態も提供することを見出した。
【0012】
ポリアミド(P1)
ポリマー組成物(C)は、少なくとも1種のポリアミド(P1)を含む。
【0013】
本発明によれば、ポリアミド(P1)は、少なくとも1つのアミド基(-C(=O)N(H)-)を含む少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPA)を含む任意のポリマーを意味する。一部の実施形態では、ポリアミド(P1)は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも約99モル%又は100モル%の繰り返し単位(RPA)を含む。
【0014】
本発明のポリアミド(P1)は、任意の従来型方法、例えば、融液中又は溶液中、例えば水中でのポリアミドモノマーの重合重縮合によって調製することができる。
【0015】
一実施形態によれば、P1は、構造NH2-(CH2)n-COOH(式中、nは、3~12で変動し、優先的にはn=5、n=10、n=11(それぞれPA6、PA11、PA12)である)を有するラクタム若しくはアミノ酸の重合生成物である。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、P1は:
- 少なくとも1種の二酸(DA)(又はその誘導体)及び
- 少なくとも1種のジアミン(NN)(又はその誘導体)を含む混合物の縮合生成物である。
【0017】
P1は、例えば、1種以上の二酸(DA)及び1種以上のジアミン(NN)を含む混合物の縮合生成物であり得る。P1は更に、上述したラクタム又はアミノ酸の重合に由来する繰り返し単位並びに少なくとも1種の二酸及び1種のジアミンの縮合に由来する繰り返し単位を結合し得る。
【0018】
本発明によれば、二酸(DA)は、少なくとも2個の酸部分-COOHを含む極めて様々な脂肪族若しくは芳香族成分の中から選択することができ、これは特にヘテロ原子(例えばO、N又はS)を含み得る。この実施形態によれば、ジアミン(NN)は、少なくとも2個のアミン部分-NH2を含む極めて様々な脂肪族又は芳香族成分の中から選択することができ、これは特にヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を含むことができる。
【0019】
第一実施形態によれば、ポリマーP1の繰り返し単位(R
PA)は、式(PA1):
(式中、
- 各炭素原子上の各R
i、R
j、R
k及びR
lは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、第4級アンモニウム及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され
- mは、4~10の整数であり;
- nは、4~12の整数である)に一致する。
【0020】
第一実施形態によれば、P1は、例えば:
- 少なくとも1種の脂肪族二酸(DAal)又はその誘導体、及び
- 少なくとも1種の脂肪族ジアミン(NNal)又はその誘導体を含む混合物の縮合生成物であり得る。
【0021】
第二実施形態によれば、P1は:
- 少なくとも1種の脂肪族二酸(DAa1)又はその誘導体、及び
- 少なくとも1種の芳香族ジアミン(NNar)又はその誘導体を含む混合物の縮合生成物である。
【0022】
第三実施形態によれば、P1は:
- 少なくとも1種の芳香族二酸(DAar)又はその誘導体、及び
- 少なくとも1種の脂肪族ジアミン(NNal)又はその誘導体を含む混合物の縮合生成物である。
【0023】
芳香族ジアミン(NNar)の非限定的な例は、特に、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)p-キシリレンジアミン(PXDA)及びm-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0024】
脂肪族二酸(DAal)の非限定的な例は、特に、シュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH2-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH2)2-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH2)3-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH3)2-(CH2)2-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH2)4-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-CH2-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH2)5-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH2)6-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH2)7-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH2)8-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH2)9-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH2)10-COOH]、テトラデカン二酸[HOOC-(CH2)11-COOH]、1,4シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3シクロヘキサンジカルボン酸である。脂肪族二酸は、好ましくはアジピン酸である。
【0025】
脂肪族二酸は、それらの酸形態の下で、又は酸ハロゲン化物、特に塩化物、酸無水物、酸塩、酸アミド、アルキルエステルとして重縮合反応において使用することができる。
【0026】
脂肪族ジアミン(NNal)の非限定的な例は、特に、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンである。
【0027】
脂肪族ジアミン(NNal)は、更にポリエーテルジアミンの群の中で選択することもできる。ポリエーテルジアミンは、エトキシル化(EO)主鎖及び/又はプロポキシル化(PO)主鎖をベースとすることができ、それらは、エチレンオキシド末端、プロピレンオキシド末端又はブチレンオキシド末端ジアミンであり得る。そのようなポリエーテルジアミンは、例えば、商品名Jeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)(Hunstman)で販売されている。そのようなポリエーテルジアミンの特定の例は、式H2N-(CH2)3-O-(CH2)2-O-(CH2)3-NH2のジアミンである。
【0028】
芳香族二酸(DAar)の非限定的な例は、特に、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)等のフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。芳香族二酸は、好ましくはイソフタル酸及び/又はテレフタル酸である。
【0029】
一実施形態によれば、モル比n二酸/nジアミンは、0.8~1.2の範囲に及ぶ。本発明の状況では、用語「n二酸」は、例えば縮合プロセスに関与する二酸種の総モル数を意味する。同様に、用語「nジアミン」は、例えば縮合プロセスに関与するジアミン種の総モル数を意味する。本発明によれば、モル比n二酸/nジアミンは、0.85~1.15、0.9~1.1、0.95~1.05又は0.98~1.02の範囲に及んでよい。
【0030】
一実施形態によれば、P1が半結晶である場合、P1は、ASTM D3418に従って決定して、少なくとも約260℃の融点を有する。この実施形態によれば、P1は、例えば、少なくとも約270℃、少なくとも約280℃又は少なくとも約290℃の融点を有し得る。
【0031】
好ましい実施形態によれば、P1は:
- 1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,10-ジアミンデカン、H2N-(CH2)3-O-(CH2)2-O(CH2)3-NH2及びm-キシリレンジアミンから成る群から選択される少なくとも1種のジアミン(NN);及び
- アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸及び5-スルホフタル酸から成る群から選択される少なくとも1種の二酸(DA)を含む混合物の縮合生成物である。
【0032】
1種以上のエンドキャッピング剤を上述した縮合混合物に使用且つ添加することができる。キャッピング剤は、例えば1つのカルボキシル官能基のみを含む酸と、1つのアミン官能基のみを含むアミンとから成る群から選択することができる。エンドキャッピング剤の例は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ベンジルアミン、1-アミノヘキサン及び1-アミノドデカンである。
【0033】
P1は、好ましくは例えば、繰り返し単位、例えば
- イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)及びフタル酸(PA)若しくはその誘導体から成る群から選択される少なくとも1種のフタル酸、及び
- 少なくとも1種の脂肪族ジアミン(NN)
の縮合の結果として生じる、少なくとも50モル%の繰り返し単位を含む芳香族ポリアミド(PPA)である。
【0034】
IPA、TPA、PAの化学構造は、本明細書では下記に示す:
【0035】
好適なポリフタルアミドは、特に、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から商品名AMODEL(登録商標)ポリフタルアミドとして市販されている。
【0036】
官能化ポリマー(P2)
本発明によれば、組成物(C)は、1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)を含む。
【0037】
本発明による官能化ポリマー(P2)は、オリゴマー又はポリマーであってよく、少なくとも1つの官能基、好ましくは数個の官能基を有する。官能基は、ポリマー主鎖の重合中に官能性モノマーを共重合することにより、又は予備形成されたポリマー主鎖をグラフト化することにより、組み込むことができる。
【0038】
ポリマーP2は、スルホン酸、及び任意選択的に同様にカルボン酸、より正確にはスルホネート-SO3
-、及び任意選択的にカルボキシレート-COO-の塩の形態にあり、1つ又は数個の官能基:
- (SO3-)、(Mp+)1/p及び
- 任意選択的に(COO-)、(Mp+)1/p
(式中、Mp+は、p価の金属カチオンである)を含み得る。
【0039】
一実施形態によれば、Mは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、銀、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅、パラジウム、鉄及びセシウムから成る群から選択される。好ましくは、Mは、ナトリウム又はカリウムである。
【0040】
或いは、Mは、アルカリ金属(周期表のIA)又はアルカリ土類金属(周期表のIIA)のうちから特別に選択することができる。
【0041】
一実施形態によれば、P2の官能基は:
- スルホン酸及び任意選択的にカルボン酸のナトリウム塩、及び/又は
- スルホン酸及び任意選択的にカルボン酸のカリウム塩から選択される。
【0042】
官能化ポリマーP2は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である。本組成物は、官能化ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び/又はポリエーテルイミド(PEI)ポリマーも含み得る。言い換えれば、本発明によれば、P2は、官能化ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)であり、本組成物は、官能化ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び/又は官能化ポリエーテルイミド(PEI)も含み得る。
【0043】
本発明による官能化ポリマー(P2)は、ポリマー主鎖上に少なくとも1つの官能基、好ましくは数個の官能基を提示するが、そのような官能基はポリマー主鎖(PAES)の重合中に官能性モノマーを共重合することによって、又は予備形成されたポリマー主鎖(PAES)のグラフト化によって組み込まれる。
【0044】
任意選択的ポリマー(P3)
本発明の好ましい実施形態によれば、本組成物(C)は、更にポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される少なくとも1種のポリマー(P3)を含む。
【0045】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及びポリエーテルイミド(PEI)ポリマーの詳細な説明は、下記に記す。これらの定義は、本発明の官能化ポリマー(P2)並びに任意選択的ポリマー(P3)に同等に当てはまる。
【0046】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)
本発明の目的のためには、「ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)」は、式(K):
(式中、
- Rは、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
- hは、各Rについて、独立して、ゼロ若しくは1~4の範囲の整数であり;及び
- Tは、結合及び基-C(Rj)(Rk)-(式中、互いに等しいか又は異なるRj及びRkは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムから選択される)から成る群から選択される)
の繰り返し単位(R
PAES)を含む任意のポリマーを意味する。
【0047】
一実施形態によれば、Rj及びRkは、メチル基である。
【0048】
一実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PAEs)は、式(K’):
の単位である。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、PAES中の総モル数に基づいて、PAES中の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ての繰り返し単位は、式(K)若しくは式(K’)の繰り返し単位(RPAES)である。
【0050】
一実施形態によれば、PAESは、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定して、160℃~250℃、好ましくは170℃~240℃、より好ましくは180℃~230℃の範囲に及ぶTgを有する。
【0051】
一実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)又はポリスルホン(PSU)から成る群から選択される。
【0052】
一実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)である。
【0053】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマーは、ビフェニル部分を含むポリアリーレンエーテルスルホンである。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)としても知られており、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合の結果として得られる。
【0054】
本発明の目的のためには、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、式(L):
(式中:
- Rは、各位置において、独立してハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムから選択され;
- hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)の繰り返し単位(R
ppsu)を含む任意のポリマーを意味する。
【0055】
一実施形態によれば、Rは、上記の式(L)中での各位置において、独立して1個又は2個以上のヘテロ原子を任意選択的に含む、C1~C12部分;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から成る群から選択される。
【0056】
一実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PPSU)は、式(L’):
の単位である。
【0057】
別の実施形態によれば、繰り返し単位(R
PPSU)は、式(L’’):
の単位である。
【0058】
従って、本発明のPPSUポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。それがコポリマーである場合、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、PPSU中の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ての繰り返し単位は、式(L)、(L’)及び/又は(L’’)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0060】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)がコポリマーである場合、それは、繰り返し単位(R
PPSU)とは異なる、繰り返し単位(R
*
PPSU)、例えば、式(M)、(N’’)及び/又は(O):
の繰り返し単位から作製され得る。
【0061】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は又、PPSUホモポリマーと、上述した少なくとも1種のPPSUコポリマーとのブレンドであり得る。
【0062】
PPSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRadel(登録商標)PPSUとして市販されている。
【0063】
一実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリスルホン(PSU)ポリマーである。
【0064】
本発明のためには、ポリスルホン(PSU)は、式(N):
(式中、
- Rは、各位置において、独立してハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムから選択され;
- hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)の繰り返し単位(R
PSU)を含む任意のポリマーを意味する。
【0065】
一実施形態によれば、Rは、上記の式(N)における各位置において、独立して1個又は2個以上のヘテロ原子を任意選択的に含むC1~C12部分;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン並びに第四級アンモニウム基から成る群から選択される。
【0066】
一実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PSU)は、式(N’):
の単位である。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、PSU中の総モル数に基づいて、PSU中の少なくとも50モル%、(ポリマー中の総モル数に基づいて)少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ての繰り返し単位は、式(N)及び/又は(N’)の繰り返し単位(RPSU)である。
【0068】
別の実施形態によれば、ポリスルホン(PSU)は、少なくとも50モル%超の繰り返し単位が式(N’’):
の繰り返し単位(R
PSU)である任意のポリマーを意味しており、モル%は、ポリマー中の総モル数に基づく。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、PSU中の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ての繰り返し単位は、式(N’’)の繰り返し単位(RPSU)である。
【0070】
従って、本発明のPSUポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。コポリマーである場合、それは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0071】
ポリスルホン(PSU)がコポリマーである場合、それは繰り返し単位(RPSU)とは異なる繰り返し単位(R*
PSU)、例えば、上述した式(L’’)、(M)及び/又は(O)の繰り返し単位等から作成され得る。
【0072】
ポリスルホン(PSU)は又、PSUホモポリマーと上述した少なくとも1種のPSUコポリマーとのブレンドであり得る。
【0073】
PSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUdel(登録商標)PSUとして市販されている。
【0074】
一実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリエーテルスルホン(PES)ポリマーである。
【0075】
本明細書で使用する「ポリエーテルスルホン(PES)」は、式(O):
の繰り返し単位(R
PES)を含む任意のポリマーを意味する。
【0076】
一実施形態によれば、PES中の総モル数に基づいて、PES中の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%及び最も好ましくは全ての繰り返し単位は、式(O)の繰り返し単位である。
【0077】
PESは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.CからVeradel(登録商標)PESUとして市販されている。
【0078】
ポリフェニレンスルフィドポリマー(PPS)
本発明によれば、「ポリフェニレンスルフィドポリマー(PPS)」は、式(Q):(モル%は、本明細書ではPPSポリマー中の総モル数に基づく):
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、水素、又はハロゲン原子、C
1~C
12アルキル基、C
7~C
24アルキルアリール基、C
7~C
24アラルキル基、C
6~C
24アリーレン基、C
1~C
12アルコキシ基及びC
6~C
18アリールオキシ基から成る群から選択される置換基であり得る)の繰り返し単位(R
PPS)を含む任意のポリマーを意味する。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、PPS中の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%の繰り返し単位は、式(L)の繰り返し単位(RPPS)である。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、ポリフェニレンスルフィドポリマーは、その内の少なくとも50モル%の繰り返し単位が、式(L)(式中、R1、R2、R3及びR4は水素原子である)の繰り返し単位(RPPS)である任意のポリマーを指す。例えば、PPSポリマーは、PPSポリマー中の総モル数に基づいて、PPS中の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%の繰り返し単位が、式(L)(式中、R1及びR2は、水素原子である)の繰り返し単位(RPPS)であるようなものである。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、約100モル%の繰り返し単位が、式(Q’)の繰り返し単位(R
PPS):
であるようなものである。
【0082】
この実施形態によれば、PPSポリマーは、式(Q’)の繰り返し単位(RPPS)から本質的に成る。
【0083】
PPSは、特にSolvay Specialty Polymers USA,LLC.により製造され、商品名Ryton(登録商標)PPSを付けて販売されている。
【0084】
ポリ(エーテルイミド)(PEI)
本明細書で使用するポリ(エーテルイミド)(PEI)は、少なくとも1つの芳香環、それ自体及び/又はそのアミド酸の形態にある少なくとも1つのイミド基並びに少なくとも1つのエーテル基を含む、ポリマー中の総モル数に基づいて、少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPEI)を含む任意のポリマーを示す。繰り返し単位(RPEI)は、イミド基のアミド酸の形態では含まれない少なくとも1つのアミド基を任意選択的に更に含み得る。
【0085】
一実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEI)は、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V):
(式中、
- Arは、四価の芳香族部分であり、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、飽和、不飽和若しくは芳香族の単環式及び多環式基から成る群から選択され、
- Ar’は、三価の芳香族部分であり、5~50個のC原子を有する置換、非置換、飽和、不飽和、芳香族単環式及び芳香族多環式基から成る群から選択され、
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそれらのハロゲン化誘導体、
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレンラジカル、
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル、及び
(d)式(VI):
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは1~6の整数である);
4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン:-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-から成る群から選択され、及び
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムから成る群から選択され、
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)から成る群から選択される、置換及び非置換の二価有機ラジカルから成る群から選択され、
但し、Ar、Ar’及びRの内の少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とする)及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0086】
一実施形態によれば、Arは、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’若しくは4,4’位に二価の結合を有する二価部分であり、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-から成る群から選択されるか、又はXは、式O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換、飽和、不飽和若しくは芳香族の単環式及び多環式基から成る群から選択される芳香族部分である)の基である)から成る群から選択される。
【0087】
一実施形態によれば、Ar’は、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’若しくは4,4’位に二価の結合を有する二価部分であり、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-から成る群から選択されるか、又はXは、式O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換、飽和、不飽和若しくは芳香族の単環式及び多環式基から成る群から選択される芳香族部分である)の基である)から成る群から選択される。
【0088】
本開示の一実施形態によれば、PEI中の総モル数に基づいて、PEI中の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ての繰り返し単位は、上記で定義した式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又はそれらの混合物の繰り返し単位(RPEI)である。
【0089】
一実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、ポリマー中の総モル数に基づいて、少なくとも50モル%の式(VII):
(式中、
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそれらのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;及び
(d)式(VI):
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である)、1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは1~6の整数である);
4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-から成る群から選択され、及び
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムから成る群から選択され、及び
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)から成る群から選択される、置換及び非置換の二価有機ラジカルから成る群から選択され、
但し、Ar、Ar’及びRの内の少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とする、
- Tは、
-O-又は-O-Ar’’-O-
(式中、
- -O-又は-O-Ar’’-O-基の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’又は4,4’位にあり、
- Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式基、例えば、置換若しくは非置換のフェニレン、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のナフタレン基又は2つの置換若しくは非置換のフェニレン基を含む部位から成る群から選択される芳香族部分である)の何れかであってよい)の繰り返し単位(R
PEI)を含む任意のポリマーを示す。
【0090】
本開示の一実施形態によれば、Ar’’は、上述した、一般式(VI)のものであり;例えばAr’’は、式(XIX):
のものである。
【0091】
本発明において使用するポリエーテルイミド(PEI)は、式H
2N-R-NH
2(XX)(式中、Rは、前に定義された通りである)のジアミノ化合物と、式(XXI):
(式中、Tは前に定義された通りである)
の任意の芳香族ビス(エーテル無水物)との反応を含む、当業者には周知のいずれかの方法によって調製され得る。
【0092】
一般に、この調製は、20℃~250℃の範囲の温度で、溶媒中、例えばo-ジクロロベンゼン、m-クレゾール/トルエン、N,N-ジメチルアセトアミド中で実施することができる。
【0093】
或いは、これらのポリエーテルイミドは、式(XXI)の任意の二無水物と式(XX)の任意のジアミノ化合物とを、同時に混合してこれらの成分の混合物を高温で加熱しながら溶融重合することによって調製することができる。
【0094】
式(XXI)の芳香族ビス(エーテル無水物)としては、例えば:
2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;
2,2-ビス[4(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物;及びそのような二無水物の混合物が挙げられる。
【0095】
式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニル-メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、及びそれらの混合物から成る群から選択され、好ましくは式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミン並びにそれらの混合物から成る群から選択される。
【0096】
一実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、イミドの形態、又はこれらの相当するアミド酸の形態及びそれらの混合物での、ポリマー中の総モル数に基づいて、少なくとも50モル%の式(XXIII)又は(XXIV):
の繰り返し単位(R
PEI)を含む任意のポリマーを指す。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、PEI中の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ての繰り返し単位は、イミドの形態、又はこれらの対応するアミド酸の形態及びそれらの混合物での、式(XXIII)又は(XXIV)の繰り返し単位(RPEI)である。
【0098】
そのような芳香族ポリイミドは、特に、ULTEM(登録商標)ポリエーテルイミドとしてSabic Innovative Plasticsから市販されている。
【0099】
特定の実施形態では、PEIポリマーは、標準ポリスチレンを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、10,000~150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0100】
特定の実施形態では、PEIポリマーは、25℃のm-クレゾール中で測定した1グラム当たり0.2デシリットル(dl/g)超の、有利には0.35~0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0101】
本発明によれば、PEIのメルトフローレート又はメルトフローインデックス(MFR又はMFI)(ASTM D1238に従って337℃で6.6kgの荷重下において)は、0.1~40g/10分、例えば2~30g/10分又は3~25g/10分であり得る。
【0102】
特定の実施形態では、PEIポリマーは、ASTM D3418に従って示差走査熱量法(DSC)により測定して、160~270℃の範囲の、例えば170~260℃、180~250℃の範囲のTgを有する。
【0103】
本発明のポリマー組成物(C)は、少なくとも1種のポリアミド(P1)及び(C)の総重量に基づいて、1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)を含む。一実施形態によれば、Cは、Cの総重量に基づいて、少なくとも10重量%のP1、例えば少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%のP1を含む。別の実施形態によれば、Cは、Cの総重量に基づいて、2~40重量%のP2、例えば3~35重量%、4~30重量%、5~25重量%又は6~15重量%のP2を含む。
【0104】
本組成物(C)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される少なくとも1種のポリマー(P3)を更に含み得る。一実施形態によれば、Cは、Cの総重量に基づいて、少なくとも5重量%のP3、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%のP3を含む。CがP1及びP3の両方を含む場合は、P1及びP3は、C中に1/99~99/1、例えば10/90~90/10又は20/80~80/20の範囲のP1/P3重量比で存在し得る。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は、
- 少なくとも1種のポリアミド(P1)、
- (C)の総重量に基づいて、1~50重量%の少なくとも1種の官能化ポリマー(P2)であって、ここでP2は、(SO3
-)、(Mp+)1/p若しくは(COO-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属カチオンである)から成る群から選択される少なくとも1つの官能基を有するポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である官能化ポリマー、及び
- 任意選択的に、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリエーテルイミド(PEI)から成る群から選択される少なくとも1種のポリマー(P3)から本質的に成る。
【0106】
好ましい実施形態によれば、P2は、官能化PAES、例えばPPSU、PSU若しくはPESであり、及びP3は、PAES、例えばPPSU、PSU若しくはPESである。この実施形態によれば、P1は、好ましくはPPAである。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、組成物(C)は、2分間中に340℃の処理温度で透過型電子顕微鏡法(TEM)下で測定して、1.0μm未満、好ましくは0.8未満又は0.6μm未満の平均サイズのドメインを提示する。
【0108】
好ましい実施形態によれば、P2は、例えば、ポリマーP2中の総モル数に基づいて、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、少なくとも3モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%又は少なくとも95モル%さえの式(L1):
の繰り返し単位を含む。この実施形態によれば、P2は、上述したように、本質的に式L1及びL’の繰り返し単位から成り得る。
【0109】
好ましい実施形態によれば、P2は、例えば、ポリマーP2中の総モル数に基づいて、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、少なくとも3モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%又は少なくとも95モル%さえの式(N1):
の繰り返し単位を含む。この実施形態によれば、P2は、上述したように、本質的に式N1及びN’の繰り返し単位から成り得る。
【0110】
別の好ましい実施形態によれば、P2は、例えば、ポリマーP2中の総モル数に基づいて、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、少なくとも3モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%又は少なくとも95モル%さえの式(O1):
の繰り返し単位を含む。この実施形態によれば、P2は、上述したように、本質的に式O1及びOの繰り返し単位から成り得る。
【0111】
補強剤
本組成物(C)は、少なくとも1種の補強剤、組成物(C)の総重量に基づいて、例えば65重量%までの補強剤を更に含み得る。
【0112】
補強繊維若しくは充填剤と呼ばれる補強剤は、繊維状及び粒子状の補強剤から選択され得る。繊維補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。
【0113】
補強充填剤は、鉱物充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0114】
繊維充填剤の中ではガラス繊維が好ましい;ガラス繊維には、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのchapter5.2.3,p.43~48に記載されているようなチョップドストランドであるA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填剤は、繊維充填剤から選択される。充填剤は、より好ましくは、高温の用途に耐えられる補強繊維である。
【0115】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて、25重量%超、30重量%超、35重量%超又は40重量%超の総量で組成物(C)中に存在していてよい。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて、65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満、又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在していてよい。
【0116】
補強充填剤は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて、10~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在していてよい。
【0117】
任意選択的成分
組成物(C)は、例えば、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシン等の黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、直鎖低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、強化剤(エラストマー)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、成核剤及び酸化防止剤から成る群から選択される少なくとも1種の任意選択的成分を更に含むことができる。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、組成物(C)は、10重量%までの少なくとも1種の任意選択的成分、例えば、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、強化剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、成核剤及び酸化防止剤から成る群から選択される、0.1~4重量%、0.2~3重量%、0.3~2.5重量%の少なくとも1種の任意選択的成分を含有する。
【0119】
官能化ポリマー(P2)の調製
本発明による官能化ポリマー(P2)は、オリゴマー又はポリマーであってよく、少なくとも1つの官能基、好ましくは幾つかの官能基を有する。官能基は、ポリマー主鎖の重合中に官能性モノマーを共重合することにより、又は予備形成されたポリマー主鎖のグラフト化によって組み込むことができる。
【0120】
P2がPAESである場合、P2を調製するためのプロセスは、例えば:
- 少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー(a1)、
- 少なくとも2つのハロゲン置換基を含む少なくとも1種の芳香族スルホンモノマー(a2)、
- 少なくとも1種の芳香族モノマー(a3)、例えば、スルホネート-SO3
-、例えば(SO3
-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属カチオンである)である少なくとも1つの置換基を含む芳香族スルホンモノマーを縮合するステップを含み得る。一実施形態によれば、モノマー(a3)は、少なくとも2つのハロゲン置換基又は2つのヒドロキシル-OH置換基を含む。一実施形態によれば、モノマー(a1)は、モノマー(a1)の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)若しくは少なくとも50重量%の4,4’-ジヒドロキシフェニルスルホン若しくは少なくとも50重量%の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を含む。一実施形態によれば、モノマー(a2)は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)、好ましくはDCDPSの内の少なくとも1つを含む4,4-ジハロスルホンである。一実施形態によれば、モノマー(a3)は、上述したスルホネート-SO3
-である少なくとも1つの置換基を含む、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)、好ましくはDCDPSの内の少なくとも1つを含む4,4-ジハロスルホンである。例えば、モノマー(a3)は、二ナトリウムジフェニルスルホン-4,4’-ジクロロ-3,3’-ジスルホネート又は二カリウムジフェニルスルホン-4,4’-ジクロロ-3,3’-ジスルホネートである。反応混合物のモノマーは、一般に同時に反応させられる。反応は、好ましくは1段階で実施される。これは、モノマー(a1)の脱プロトン化並びにモノマー(a1)、(a2)及び(a3)の間の縮合反応が中間生成物を単離せずに単一反応段階で発生することを意味する。一実施形態によれば、縮合は、極性非プロトン性溶媒及び水と共に共沸混合物を形成する溶媒の混合物中で実施される。水と共に共沸混合物を形成する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。それは、好ましくはトルエン又はクロロベンゼンである。共沸混合物形成溶媒及び極性非プロトン性溶媒は、典型的には約1:10~約1:1、好ましくは約1:5~約1:1の重量比で用いられる。水は、共沸混合物形成溶媒とともに共沸混合物として反応塊から継続的に除去されるので、重合中は実質的無水条件が維持される。共沸混合物形成溶媒、例えば、クロロベンゼンは、反応混合物から、極性非プロトン性溶媒中に溶解したP2を残して反応中に形成された水が除去された後に、典型的には蒸留によって除去される。反応混合物の温度は、約1~15時間に渡り、約150℃~約350℃、好ましくは約210℃~約300℃で維持される。無機成分、例えば塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム又は過剰の塩基は、例えば溶解する及び濾過する、スクリーニングする若しくは抽出する等の好適な方法によってP2を単離する前若しくは後に除去することができる。その調製反応の終了時に、P2は、P2溶液を得るために、他の成分(塩、塩基、...)から分離される。濾過は、例えば、P2ポリマーを他の成分から分離するために使用することができる。次いでP2は、例えば、溶媒の凝固若しくは蒸気液化によって溶媒から回収することができる。
【0121】
組成物(C)の調製
本発明は、更に、ポリマーP1及びP2、任意選択的にP3、補強剤並びに任意の他の成分若しくは添加剤を溶融混合するステップを含む、上述した組成物(C)の製造方法にも関する。
【0122】
任意の溶融混合する方法は、本発明との関連ではポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために使用することができる。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリューニーダー又はバンバリーミキサー等の溶融ミキサーへ供給することができ、添加するステップは、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部がまず添加され、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形を用いて補強された組成物を調製することができる。
【0123】
物品
本発明は、上記の本発明のポリマー組成物(C)を含む物品にも関する。
【0124】
物品の例は、フィルム、積層体、自動車部品、エンジン部品、電気部品及び電子部品である。
【0125】
本発明によれば、本発明のポリマー組成物(C)から製造された物品は、製作後には優れた機械的特性を提示する。それらは、より優れた表面形態及びより低い吸水率も提示する。
【0126】
本発明は、本発明の組成物(C)を成形することにより物品を製造するための方法にも関する。物品は、例えば、押出し成形法、射出成形法、熱成形法、圧縮成形法、ブロー成形法又は溶融フィラメント製造法(FFF)若しくは選択的レーザー焼結法(SLS)といった付加製造法等の任意の成形技術に従って製造することができる。本発明の物品は、例えば射出成形法によって成形することができる。
【0127】
ポリマー組成物(C)及び物品の使用
本発明のポリマー組成物(C)は、150℃等の高温で高度の弾性率及び強度を提示する必要がある、アンダーフードの技術部品等の物品を製造するために使用することができる。
【0128】
従って、上記で開示した組成物(C)は、組成物(C)から製造された物品の重量を減少させるのに有用である。
【0129】
本発明は更に、フィルム、積層体、自動車部品、エンジン部品、電気部品又は電子部品を調製するための上記で開示した組成物(C)の使用に関する。
【0130】
相溶剤としての官能化ポリマー(P2)の使用
本発明は更に、2種の不混和性ポリマーを含む組成物の相溶剤(相溶化剤とも呼ばれる)としてのP2の使用に関する。本発明の状況では、「相溶剤」は、少なくとも2種の不混和性ポリマーのポリマーブレンドの平均ドメインサイズを有意に減少させる成分であると定義することができる。より正確には、P1又はP1及びP3を含むポリマーブレンド中でのP2の使用は、下記の実施例及び図面において示すように、平均ドメインサイズを1μm未満に有意に減少させる。本発明はそれにより、更に少なくとも2種の不混和性ポリマーを含む組成物を相溶化するためのP2の使用に関するが、ここで生じたポリマー組成物は、2分間中に340℃の処理温度で透過型電子顕微鏡法(TEM)下で測定して、1.0μm未満の平均サイズのドメインを提示する。P2がP1及びP3を含む組成物の相溶剤として使用される場合、P2は、本組成物の総重量に基づいて、好ましくは20重量%未満、例えば15重量%未満、10重量%未満、9重量%未満又は8重量%未満さえの量で使用される。
【0131】
参照により本明細書中に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び公開資料の開示が、これがある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0132】
原材料
P1: Solvay Specialty Polymersから市販されているPPA Amodel(登録商標)A8002
P2: 下記のプロセス:
に従って調製された、5モル%のジスルホン化繰り返し単位を含有するスルホン化PPSU(S-PPSU)
【0133】
機械的スターラー、ディーンスタークトラップ、コンデンサー及び窒素流入口を装備した4Lの4つ口フラスコ内に、360gの4,4’-ビフェノール(BP)、559.04gの4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)、50.34gの二ナトリウムジフェニルスルホン-4,4’-ジクロロ-3,3’-ジスルホネート(s-DCPPS)及び288.57gの炭酸カリウム(K2CO3)を1,806gのスルホラン中に装填した。微量の窒素流を、コンデンサーの上方のバブラーを通る出口を備えるフラスコの口の1つに通して反応混合物の上方に適用した。反応混合物はオーバーヘッド式機械的攪拌器を用いて撹拌し、適切な温度に調節した油浴を用いて加温した。浴温度は60分間をかけて室温から215℃へ上昇させ、この反応温度で4時間保持した。反応混合物を150℃へ冷却し、1,000gのスルホランで希釈し、更に100℃へ冷却して濾過した。PPSUは、次に凝固によって回収した。スルホラン溶液中のPPSUは、沈殿を誘導するために、全部を同時に水とメタノールの50/50(体積/体積)混合液を含有するワーリング・ブレンダー内に注入した。生じたオフホワイトの固体を次にろ過によって単離し、各洗浄間にろ過を行いながら高温脱イオン水(70℃)を含むワーリング・ブレンダー内で3回及びメタノールを用いて2回洗浄した。DMF中でのGPCは、Mn=13,838、Mw=33,247g/モルを生じさせた。
【0134】
P3: Solvay Specialty Polymersから市販されているPPSU Radel(登録商標)R-5600
【0135】
ガラス繊維OCV983は、Owens Corning Vetrotexから市販されている。
【0136】
溶融押出し
表1及び2に記載したように、様々な調製物を調製した。
各調製物は、48:1のL/D比を有する直径26mmのCoperion(登録商標)ZSK-26共回転部分噛合二軸スクリュー押出機を用いて溶融混錬した。バレルセクション2~12及びダイを以下の通りの設定点温度に加熱した。
バレル2~9:340℃
バレル10~12:320℃
ダイ:360℃
【0137】
溶融温度は、約340℃に達した。
【0138】
各場合において、樹脂ブレンドは、30~35ポンド/時の範囲のスループット速度で重量測定フィーダーを使用してバレルセクション1で供給した。押出機は、およそ200RPMのスクリュー速度で作動した。約27インチの水銀の真空レベルを用いてバレルゾーン10に真空を適用した。単一孔ダイを化合物の全てに対して用いて、直径およそ2.6~2.7mmのフィラメントを生じさせ、ダイから出てくるポリマーフィラメントを水中で冷却し、ペレタイザーに供給して長さおよそ2.7mmのペレットを生成した。ペレットは、射出成形(IM、比較例)の前に真空下で16時間に渡り140℃で乾燥させた。
【0139】
射出成形法を使用して、155℃に調節した金型内で引張ASTMのI型バー及びASTMフレックスバーを生成した。
【0140】
試験方法
引張特性特性(ASTM D638)及びアイゾット衝撃強さ(ASTM D256)は、表に報告した。
【0141】
吸水率試験は、バーを室温の脱イオン水中に浸漬することによって実施した。水中に浸漬する前のバーの重量は、w(t0)である。時間(t)での吸水率を測定するために、バーを水から取りだし、重量w(t)を迅速に測定し、吸水率は、式(w(t)-w(t0))/w(t0))を使用して計算した。
【0142】
【0143】
実施例1及び比較例1の両方の組成物は、PPSU(Tg=220℃)が存在するおかげで、ニートAmodel(登録商標)A8002(100MPa)と比較して、180℃でより高い貯蔵弾性率(180MPa)を有する(本明細書には結果を示していない)。
【0144】
s-PPSUの親水性の性質にもかかわらず、実施例1の組成物は、更に驚くべきことに、比較例1の組成物と比較して、より低い吸水率を示す。
【0145】
比較例1(
図1A)及び実施例1(
図1B)の組成物の透過型電子顕微鏡法(TEM)写真は、更に本組成物中にs-PPSUが存在する場合は、ドメインサイズにおける有意な減少を示す。S-PPSUは、分散相のサイズを200nm未満に減少させることによって、ブレンドPPA/PPSU中の相溶剤として作用する(
図1B)。
【0146】
【0147】
表面形態に関する限り、比較例2の組成物を用いて調製されたバーの表面は表面上に時々出現する何本かの細長い縞と共に一部の非相溶性ゾーンを示すが、実施例2の組成物を用いて調製されたバーの表面は均一である。
【0148】
実施例2の組成物の機械的特性は、更に、s-PPSUを含まない同一組成物と比較して、全体的に改良されている。
【0149】
全体として、PPA、PPSU及びGFを含む組成物中のs-PPSUの添加は、相溶性を改善し、吸水率を減少させ、且つブレンドPPA/PPSU/GFの表面形態を改善する。