(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】大腿骨頸部切除ガイド
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B17/15
(21)【出願番号】P 2020572952
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066612
(87)【国際公開番号】W WO2020002198
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アトキン・ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】ビバーランド・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブッシェル・サラ
(72)【発明者】
【氏名】コールトラップ・オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ダットン・グレイム
(72)【発明者】
【氏名】ネイラー・ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン・スティーブン
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0276866(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0236341(US,A1)
【文献】特開2004-202230(JP,A)
【文献】特開2017-042818(JP,A)
【文献】特開2008-188400(JP,A)
【文献】特表2018-520769(JP,A)
【文献】特表2016-506848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0122439(US,A1)
【文献】米国特許第04959066(US,A)
【文献】国際公開第2002/026145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行うための外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるよう
に構成されている、フレームと、
前記大腿骨
の前記頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を備え、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための
2つ以上の平坦な直線アライメント表面を含
み、
前記フレームが内側部分及び外側部分を有し、前記直線アライメント表面が前記内側部分上又は前記外側部分上のいずれかに設けられており、
前記アームが内側縁部及び外側縁部を有し、前記直線アライメント表面が前記内側縁部上又は前記外側縁部上のいずれかに設けられており、
前記フレーム上の前記直線アライメント表面及び前記アーム上の前記直線アライメント表面が同一直線上にあり、
前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間、前記内側部分及び前記内側縁部が正中面に向かって配置され、前記外側部分及び前記外側縁部が前記正中面から離れて配置される、
外科用装置。
【請求項2】
前記フレームが2つ以上の
平坦な直線アライメント表面を有し、前記内側部分上に
平坦な直線アライメント表面が設けられ、前記外側部分上に
平坦な直線アライメント表面が設けられている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項3】
前記アームが2つ以上の
平坦な直線アライメント表面を有し、前記アームの前記内側縁部上に
平坦な直線アライメント表面が設けられ、前記アームの前記外側縁部上に
平坦な直線アライメント表面が設けられている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項4】
前記フレームの前記内側部分上に
平坦な直線アライメント表面が設けられ、前記アームの前記内側縁部上に
平坦な直線アライメント表面が設けられている、請求項
1に記載の外科用装置。
【請求項5】
前記フレームの前記外側部分上に
平坦な直線アライメント表面が設けられ、前記アームの前記外側縁部上に
平坦な直線アライメント表面が設けられている、請求項
1に記載の外科用装置。
【請求項6】
前記切除ガイドが、前記大腿骨
の前記頸部上の
前記切除面の位置を示すためのガイドスロットを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項7】
前記ガイドスロットは、前記頸部の前記切除中に切断装置のブレードを受容するための切断スロットである、請求項6に記載の外科用装置。
【請求項8】
前記切除ガイドが先細になっている、請求項1~
7のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項9】
前記切除ガイドが第1の表面及び第2の対向する表面を有し、前記切除ガイドを前記大腿骨
の前記頸部から離間させるために、前記第1の表面上及び前記第2の対向する表面上の少なくとも一方にスペーサが設けられている、請求項1~
8のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項10】
前記スペーサは前記切除ガイド上に取り外し可能に取り付け可能である、請求項
9に記載の外科用装置。
【請求項11】
前記開口部
が楕円形である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項12】
股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行うための外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるように構成されている、フレームと、
前記大腿骨の前記頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を備え、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための平坦な直線アライメント表面を含み、
前記フレームが、前記大腿骨頭部上に前記フレームを取り外し可能に取り付けるための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含む、
外科用装置。
【請求項13】
股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行う際に使用するための外科用キットであって、
外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるよう
に構成されている、フレームと、
前記大腿骨
の前記頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアー
ムと、
を有する本体部分と、
を含
み、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための2つ以上の平坦な直線アライメント表面を含み、
前記フレームが内側部分及び外側部分を有し、前記直線アライメント表面が前記内側部分上又は前記外側部分上のいずれかに設けられており、
前記アームが内側縁部及び外側縁部を有し、前記直線アライメント表面が前記内側縁部上又は前記外側縁部上のいずれかに設けられており、
前記フレーム上の前記直線アライメント表面及び前記アーム上の前記直線アライメント表面が同一直線上にあり、
前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間、前記内側部分及び前記内側縁部が正中面に向かって配置され、前記外側部分及び前記外側縁部が前記正中面から離れて配置される、外科用装置と、
前記切除ガイド上に取り外し可能に取り付け可能なスペーサと、
を備える、外科用キット。
【請求項14】
股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行う際に使用するための外科用キットであって、
第1の外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるよう
に構成されている、フレームと、
前記大腿骨
の前記頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を含み、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための
2つ以上の平坦な直線アライメント表面を含
み、
前記フレームが内側部分及び外側部分を有し、前記直線アライメント表面が前記内側部分上又は前記外側部分上のいずれかに設けられており、
前記アームが内側縁部及び外側縁部を有し、前記直線アライメント表面が前記内側縁部上又は前記外側縁部上のいずれかに設けられており、
前記フレーム上の前記直線アライメント表面及び前記アーム上の前記直線アライメント表面が同一直線上にあり、
前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間、前記内側部分及び前記内側縁部が正中面に向かって配置され、前記外側部分及び前記外側縁部が前記正中面から離れて配置される、
第1の外科用装置と、
第2の外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるよう
に構成されている、フレームと、
前記大腿骨
の前記頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を含み、
前記本体部分は、前記フレームが前記大腿骨頭部上に取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための
2つ以上の平坦な直線アライメント表面を含み、
前記フレームが内側部分及び外側部分を有し、前記直線アライメント表面が前記内側部分上又は前記外側部分上のいずれかに設けられており、
前記アームが内側縁部及び外側縁部を有し、前記直線アライメント表面が前記内側縁部上又は前記外側縁部上のいずれかに設けられており、
前記フレーム上の前記直線アライメント表面及び前記アーム上の前記直線アライメント表面が同一直線上にあり、
前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間、前記内側部分及び前記内側縁部が正中面に向かって配置され、前記外側部分及び前記外側縁部が前記正中面から離れて配置される、
第2の外科用装置と、
を備え、
前記第1の
外科用装置の前記アームは、前記フレームと前記切除ガイドとの間で測定される第1の長さを有し、前記第2の
外科用装置の前記アームは、前記フレームと前記切除ガイドとの間で測定される第2の長さを有し、前記第1の長さと前記第2の長さとは異なる
、
外科用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行うための外科用装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節置換術は、股関節を人工関節インプラントに置換する外科的手技である。股関節全置換術において、患者の天然の股関節は、寛骨臼ソケットを置換する寛骨臼カップ構成要素と、大腿骨頭部を置換する大腿骨構成要素と、によって、置換される。
【0003】
このような外科手技の間、大腿骨の病変部分は、通常、カルカー面の粉砕前に大腿骨頭部を除去することによって切除される。人工大腿骨構成要素及び人工大腿骨頭部は、外科的に除去された天然の構造を置換する。人工大腿骨構成要素の位置決めは、そのソケット(すなわち、寛骨臼シェル)内で大腿骨頭部が適切にフィットし滑らかに回転できるようにするために重要である。
【0004】
外科医が切除段階で大腿骨を除去し過ぎた場合、外科手術後の段階で関節の張力を操作する必要が生じる。これを、頭部オフセットを大きくすることによって、又は高オフセットのネックトライアルに切り替えることによって行うことができる。これらのアプローチは双方ともに、最適な手術計画から逸脱し、手術後の生物学的構造及び患者の転帰が不良となるリスクを高める可能性がある。
【0005】
骨の除去が不十分であると、カルカー面を効果的に粉砕することが難しくなり、創傷空間内の骨断片を増加させ、カルカー粉砕器具の性能及び寿命が低減するおそれがある。また、外科的プロセス及び関連するコストの効率の低下や創傷空洞内の自由空間の減少にもつながる。
【0006】
股関節置換術などの関節再建を行う場合、手術前の骨構造の幾何学的形状が手術後構造に再現されることが重要である。天然の関節の生物学的構造を維持し、適切な関節及び軟組織バランスを確保することが重要である。これが達成されないと、関節力が大きくなり、関節全体が不安定となる可能性がある。
【0007】
したがって、整形外科用インプラント構造体を患者内に適切に配置することが必要である。人工股関節の場合、寛骨臼シェル内での大腿骨頭部の天然の解剖学的回転中心の位置を特定し、置換構造体の移植の間維持することが重要である。移植の間に人工股関節の大腿骨構成要素の回転中心を誤配置してしまうと、患者の脚の長さが影響を受け、患者にとって非常に不満足な結果となるおそれがある。
【0008】
一次人工股関節全置換術では、測定によって大腿骨頭部の天然のオフセット及び頸部長を求めることが重要である。オフセットは、大転子上の点から大腿骨頭部の中心まで測定することができる。頸部長は、小転子上の点から大腿骨頭部の中心まで測定することができる。
【0009】
米国特許第6,258,097号は、手術後関節形状を手術前関節形状と比較するための整形外科用器具を開示している。器具は、ボール継手のボールに固定することができる頭部チャックと、基準となる印が付けられたアームと、を含む。手術前関節形状を示すマークが、ボール継手の中心を基準として骨に付けられている。人工ボールとの置換後に、頭部チャックを人工ボールに固定し、骨のマークの位置をアームの基準印と比較することによって、手術後の幾何学的形状が確認される。必要に応じて、人工構成要素の調整が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
人工関節内で股関節の解剖学的な回転中心を再現するために、外科医が適切な切除面で大腿骨頸部を切除することを支援する外科用器具が依然として必要とされている。更に、現在の切除ガイドは、テンプレート化され得る様々な頭部オフセットを考慮していないため、外科手技のミスのリスクが大きい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴の組み合わせは、独立請求項の特徴と適宜組み合わせることができ、請求項に明示的に記載されるものだけに限定されない。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行うための外科用装置が提供され、この外科用装置は、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、大腿骨頭部の中心に対して本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
フレームと切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を備え、
本体部分は、大腿骨頭部上にフレームが取り付けられている間に大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント部分を含む。
【0013】
フレーム
フレームの中心点を通る仮想線が、フレームを内側部分と外側部分とに分割する。開口部内に大腿骨頭部を受容することによってフレームが大腿骨頭部上に取り付けられると、内側部分は解剖学的正中面に向かって配置される。
【0014】
外科用装置のいくつかの構成では、直線アライメント表面は、フレームの内側部分内に設けられている。例えば、フレームの外周縁部が概ね円形であってもよく、直線アライメント表面は、装置の内側部分の外周縁部の少なくとも一部分内に設けられている。
【0015】
外科用装置の他のいくつかの構成では、直線アライメント表面は、フレームの外側部分内に設けられている。例えば、フレームの外周縁部が概ね円形であってもよく、直線アライメント表面は、装置の外側部分の外周縁部の少なくとも一部分内に設けられている。装置の外側部分上に直線アライメント表面を設けることは、外科医が股関節形成術中に後方アプローチを使用する場合に、右大腿骨頭部又は左大腿骨頭部のいずれかに装置を正しく位置合わせするのに有利である。
【0016】
外科医が前方アプローチ又は後方アプローチのいずれを使用しているかに応じて、右大腿骨頭部又は左大腿骨頭部に取り付けられている時に外科用装置をいずれの向きで使用すべきかを外科医に知らせるマークがフレームに付けられていてもよい。マークは、例えば、「左前方」、「L-ANT」、「右後方」、又は「R-Post」などの形であってもよい。外科医は、後方アプローチで外科用装置を使用する際に、適切な向きマーク(例えば「左後方」など)が見えるように、フレームを左大腿骨頭部上に取り付ける。外科医は、後方アプローチで右大腿骨頭部に対して外科用装置を使用する際に、適切なマーク(例えば「右後方」など)が見えるように、フレームを右大腿骨頭部上に取り付ける。
【0017】
フレームは、大腿骨頭部上にフレームを取り外し可能に取り付けるための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成された少なくとも1つのピン穴を含んでもよい。
【0018】
フレームの内側部分内又は外側部分内に設けられた直線アライメント表面は、フレームを内側半分と外側半分とに分割する仮想線と平行であってもよい。
【0019】
フレームに、2つ以上の直線アライメント表面が設けられてもよい。例えば、フレームの内側部分上に第1の直線アライメント表面が設けられ、フレームの外側部分上に第2の直線アライメント表面が設けられてもよい。
【0020】
上述のように、第1の仮想線はフレームの中心点を通って延び、フレームを内側部分と外側部分とに分割する。第1の仮想線と直交する第2の仮想線がフレームの中心点を通って延び、フレームを上部と下部とに分割する。第1の仮想線及び第2の仮想線は、フレームを四分円、すなわち外側上部四分円、外側下部四分円、内側上部四分円及び外側下部四分円に分割する。
【0021】
いくつかの構成では、フレームの少なくとも1つの四分円の外周縁部は、2つの垂直な直線アライメント表面によって画定される。したがって、四分円は角部を含む。角部が設けられていることにより、外科用装置の位置合わせ及び保持が改善される。外側上部四分円、外側下部四分円、内側上部四分円及び外側下部四分円のうちの少なくとも1つが、角部を含む。いくつかの構成では、外側上部四分円及び内側下部四分円のそれぞれが角部を含む。
【0022】
いくつかの構成では、1つ以上の直線アライメント表面は、フレーム上にのみ設けられている。
【0023】
大腿骨オフセットは、大腿骨頭部の回転中心と大腿骨の長軸を二分する線との間の距離である。正常な大腿骨オフセットは、30mmから60mmの間で様々である。
【0024】
大腿骨オフセットが減少すると、大腿骨が骨盤の内側に近づく。このことは、大転子の衝突につながる可能性がある。内側への動きにより、軟組織が緩んでしまう可能性もある。これらの要因は双方ともに、インプラントを不安定にし、脱臼につながる可能性がある。オフセットが減少すると、骨盤のバランスをとるために外転筋がより大きな力を必要とし、股関節全体の合力も大きくなり、その結果、摩耗が大きくなる。
【0025】
大腿骨オフセットを増加させることで、大腿骨が横方向に移動して衝突の可能性が減少し、良好な張力が得られ安定性が向上する。大腿骨オフセットを増加させることで、骨盤のバランスをとるために外転筋が必要とする力が小さくなり、これにより歩行が改善され、経時的な摩耗及び緩みを低減させることができる。
【0026】
大腿骨オフセットの変更は、脚の長さに影響を及ぼさない。
【0027】
いくつかの構成では、フレームは、大腿骨オフセットを表す印を含む。
【0028】
印を、目盛りの形でフレーム上に配置してもよい。目盛りが複数の直線特徴を含んでもよく、各直線特徴は、特定の大腿骨オフセットを表す。
【0029】
各直線特徴は、フレームの表面にエッチングされた線又はレーザでマークされた線であってもよい。あるいは、各直線特徴は、フレームの内周の周りに設けられたスロットであってもよい。
【0030】
目盛りを一次印と称してもよい。
【0031】
一次印は、ミリメートル(mm)単位で測定された実際の大腿骨オフセットを表し、これを外科医に視覚的に知らせる方法で符号化されていてもよい。例えば、目盛りが色分けされていてもよい。赤色の線又はスロットの縁取りは第1の大腿骨オフセット(例えば、+15mm)を表し、一方、緑色の線又はスロットの縁取りは第2の大腿骨オフセット(例えば、-2mm)を表してもよい。
【0032】
選択された大腿骨オフセットを達成するために、外科医は、フレームを大腿骨頭部上に動かして、複数の一次印のうちの1つを大腿骨頭部の中心と位置合わせする。この位置合わせは、選択された大腿骨オフセットを達成する位置へと切除面を動かす効果を有する。
【0033】
外科医は、患者の解剖学的大腿骨オフセットと一致するように、最終的な股関節インプラントの大腿骨オフセットを選択することができる。
【0034】
フレームの開口部が実質的に円形又は実質的に楕円形であってもよい。楕円形の開口部は、目盛りの選択された直線特徴を大腿骨頭部中心と位置合わせする際に、フレームを大腿骨頭部上で動かすことを補助する。
【0035】
例えば、ミリメートル(mm)単位で測定された実際の大腿骨オフセットを表す数値形式の二次印が、一次印に(例えば隣接して設けられているなど)付随していてもよい。例えば、例示的なインプラントシステムでは、二次印は、-2mm、+1.5mm、+5mm、+8.5mm、+12mm、及び+15.5mmからなる群から選択されてもよい。
【0036】
印をフレームの両面に設けてもよい。これにより、外科的アプローチが(例えば後方又は前方などの)右股関節又は左股関節のいずれに対して行われるのかにかかわらず、大腿骨オフセットを考慮することが可能となる。このことは、必要なガイドの在庫を低減できる点で有利である。
【0037】
アーム
アームは、フレームと切除ガイドとの間にブリッジを形成する。アームは、フレームの下縁部から延在する。
【0038】
アームの長さは、外科用装置の異なる構造間で様々であってもよく、それにより、様々な切除面を示すための外科用装置を提供する。
【0039】
アームは、内側縁部及び外側縁部を有する。
【0040】
いくつかの構成では、アームは、直線アライメント表面を備えていない。代わりに、アームの内側縁部及び/又は外側縁部が湾曲した表面を有してもよい。
【0041】
いくつかの他の構成では、直線アライメント表面は、アームの内側縁部又は外側縁部のいずれかに設けられている。あるいは、アームが2つ以上の直線アライメント表面を有してもよい。例えば、アームの内側縁部上に第1の直線アライメント表面が設けられ、アームの外側縁部上に第2の直線アライメント表面が設けられている。
【0042】
いくつかの構成では、1つ以上の直線アライメント表面は、アーム上にのみ設けられている。
【0043】
しかしながら、フレーム及びアームがそれぞれ1つ以上の直線アライメント表面を含み得ることが想定されている。
【0044】
例えば、第1の直線アライメント表面がフレームの内側部分上に設けられ、第2の直線アライメント表面がアームの内側縁部上に設けられてもよい。これらの内側に位置する直線アライメント表面が同一直線上にあってもよい。
【0045】
また、外科用装置の他の構成では、第1の直線アライメント表面がフレームの外側部分上に設けられ、第2の直線アライメント表面がアームの外側縁部上に設けられてもよいことも更に想定されている。これらの外側に位置する直線アライメント表面が同一直線上にあってもよい。
【0046】
直線アライメント表面は、その位置が外科用装置上のどこにある場合であっても、大腿骨骨幹軸と位置合わせされる直線アライメント表面であることが外科医に容易に明らかとなるように、十分な長さであるべきである。
【0047】
切除ガイド
切除ガイドは、大腿骨頸部上の第1の切除面(すなわち、カルカー切断角度)の位置を示すための第1の切除ガイド表面を画定する第1の長手方向外側縁部を含んでもよい。
【0048】
切除ガイドは、大腿骨頸部上の第2の切除面(すなわち、カルカー切断角度)の位置を示すための第2の切除ガイド表面を画定する第2の長手方向外側縁部を含んでもよい。
【0049】
第1の切除ガイド表面が、第2の切除ガイド表面よりも上方に位置してもよい。第1の切除ガイド表面は標準オフセット頸部切除面に対応する切除面を表し、一方、第2の切除ガイド表面は高オフセット頸部切除面に対応する切除面を表してもよい。
【0050】
切除ガイドのいくつかの構成では、第1の切除ガイド表面と第2の切除ガイド表面とは平行である。これにより、大腿骨頸部が第1の切除面(第1の切除面に対応する)に沿って切除されたか、又は第2の切除面(第2の切除面に対応する)に沿って切除されたかにかかわらず、人工頸部骨幹軸と大腿骨骨幹軸との間に形成された大腿骨頸部骨幹角度は同一となる。例えば、約135°の大腿骨頸部骨幹角度は、第1の切除面又は第2の切除面に沿った大腿骨頸部の切除によって形成される。
【0051】
切除ガイドのいくつかの構成では、第1の切除ガイド表面と第2の切除ガイド表面とは平行ではなく、例えば、ある点に向かって先細になっている。切除ガイドのこの設計により、人工頸部骨幹軸と大腿骨骨幹軸との間に形成される大腿骨頸部骨幹角度は、使用された切除面によって異なる。例えば、大腿骨頸部が第1の切除面(第1の切除面に対応する)に沿って切除された場合、人工頸部と大腿骨骨幹軸との間に形成される大腿骨頸部骨幹角度はθX(例えば、約125°)であり得る。大腿骨頸部が第2の切除面(第2の切除面に対応する)に沿って切除された場合、第2の大腿骨頸部骨幹角度はθY(例えば、約135°)であり得る。
【0052】
外科用装置の切除ガイドはまた、大腿骨頸部上の切除面(例えば、標準オフセット頸部切除面又は高オフセット頸部切除面)の位置を示すためのガイドスロットを含んでもよい。切除ガイドは、2つ以上のガイドスロットを含んでもよい。例えば、標準オフセット頸部切除面を示すための第1のガイドスロット及び、高オフセット頸部切除面を示すための第2のガイドスロット。ガイドスロットは、大腿骨頸部上の頸部切除面にマークを付けるため、及び/又は切除面に沿って切断するための切断装置のブレードを受容するために使用することができる。
【0053】
切除ガイド上の(例えばSTD、HIなどの)マークは、標準頸部オフセット又は高頸部オフセットの切除のために、どの切除ガイド表面又はガイドスロットを使用してマーク付け及び/又は切断を行うべきかを外科医に示すために設けられてもよい。
【0054】
いくつかの構成では、外科用装置は、単一の切除ガイドへのブリッジを形成する単一のアームを含む。
【0055】
いくつかの他の構成では、外科用装置は、複数のアームと複数の切除ガイドとを備え、各アームは、フレームと各切除ガイドとの間にブリッジを形成する。この設計は、様々な大腿骨頭部オフセットの切除面の位置を、単一の外科用装置を使用して外科医に示すことを可能にする。
【0056】
装置は、第1の切除ガイドとの間にブリッジを形成する少なくとも第1のアームと、第2の切除ガイドとの間にブリッジを形成する第2のアームと、第3の切除ガイドとの間にブリッジを形成する第3のアームと、を含んでもよい。
【0057】
装置を回転させて第1のアーム上の直線アライメント表面を位置合わせすることで、第1の大腿骨頭部オフセットに対応する標準オフセット又は高オフセットの頸部切除面を示すことができる。
【0058】
装置を回転させて第2のアーム上の直線アライメント表面を位置合わせすることで、第2の大腿骨頭部オフセットに対応する標準オフセット又は高オフセットの頸部切除面を示すことができる。
【0059】
装置を回転させて第3のアーム上の直線アライメント表面を位置合わせすることで、第3の大腿骨頭部オフセットに対応する標準オフセット又は高オフセットの頸部切除面を示すことができる。
【0060】
スペーサ
装置の切除ガイドが大腿骨頭部に対して実質的に垂直な位置にない(大腿骨冠状面に平行に位置する)場合、切除面の示された位置が不正確となり得ることが見出されている。したがって、有利には、スペーサを切除ガイド上に取り付けて、切除ガイドの下側を大腿骨頸部から離間させることができる。このスペーサは、頸部切断面を画定するのにも役立つことができる。
【0061】
切除ガイドは、第1の表面及び第2の対向する表面を有する。スペーサは、切除ガイドを大腿骨頸部から離間させるために、第1の表面及び第2の対向する表面の少なくとも一方に設けられる。
【0062】
スペーサを切除ガイド上に取り外し可能に取り付けてもよい。例えば、「クリップ式」スペーサ。あるいは、スペーサを切除ガイドに恒久的に取り付けてもよい。いくつかの場合には、スペーサを切除ガイドの一部として成形してもよい。
【0063】
スペーサが長方形のブロックの形であってもよい。
【0064】
スペーサの長さは様々であってもよい。いくつかの構成では、スペーサが切除ガイドと同じ長さを有してもよい。しかしながら、こうすると外科的プロセスを妨げるおそれがあり、また外科用装置の安定性が損なわれるおそれがある。スペーサの好適な長さは約10mmであることが見出されているが、これは非限定的な一例であり、スペーサの長さの制限として解釈されるべきではない。
【0065】
スペーサの深さは様々であってもよい。いくつかの構成では、スペーサが切除ガイドと同じ深さを有してもよい。スペーサの好適な深さは約6mmであることが見出されているが、これは非限定的な一例であり、スペーサの深さの制限として解釈されるべきではない。
【0066】
外科用装置を単一の一体型構成要素として製造してもよい。例えば、外科用装置を3Dプリンティングしてもよい。
【0067】
本発明の第2の態様によれば、股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行う際に使用するための外科用キットが提供され、この外科用キットは、
外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、大腿骨頭部の中心に対して本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
フレームと切除ガイド(the frame and the)との間に延在するアームであって、本体部分は、大腿骨頭部上にフレームが取り付けられている間に大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含む、アームと、
を有する本体部分と、
を含む外科用装置と、
切除ガイド上に取り外し可能に取り付け可能なスペーサと、
を備える。
【0068】
本発明の第3の態様によれば、股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行う際に使用するための外科用キットが提供され、この外科用キットは、
第1の外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、大腿骨頭部の中心に対して本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
フレームと切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を含み、
本体部分は、大腿骨頭部上にフレームが取り付けられている間に大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含む、
第1の外科用装置と、
第2の外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、大腿骨頭部の中心に対して本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
フレームと切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を含み、
本体部分は、フレームが大腿骨頭部上に取り付けられている間に大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含み、第1の装置のアームは、フレームと切除ガイドとの間で測定される第1の長さを有し、第2の装置のアームは、フレームと切除ガイドとの間で測定される第2の長さを有し、第1の長さと第2の長さとは異なる、
第2の外科用装置と、
を備える。
【0069】
本発明の第4の態様によれば、股関節部置換手技中に外科用装置を使用して大腿骨の頸部の制御された切除を行うための方法が提供され、この外科用装置は、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、大腿骨頭部の中心に対して本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
フレームと切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を備え、
本体部分は、大腿骨頭部上にフレームが取り付けられている間に大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含み、
方法が、
フレームを大腿骨頭部上に取り付けることと、
大腿骨の大腿骨骨幹軸に沿って本体部分上の直線アライメント表面を位置合わせすることと、
切除ガイドを使用して、
大腿骨の頸部上の切除面の位置をマークすること、又は
切断装置のブレードを案内して大腿骨の頸部を切除すること、
を行うことと、を含む、
方法。
【0070】
股関節置換手技中に大腿骨頸部の制御された切除を実施する際に、フレームは、大腿骨頭部の後面又は大腿骨頭部の前面に取り外し可能に取り付けられてもよい。
【0071】
本方法は、天然の大腿骨頭部及びトライアル人工大腿骨頭部の大腿骨頭部オフセットを測定する工程を更に含んでもよい。これには、大腿骨頭部中心から大転子上のマークされた点までの水平距離を測定することが含まれる。測定値の比較は、解剖学的大腿骨頭部中心がトライアルで復元されているかどうか、したがって人工股関節が正しく再建されているかどうかの指標となる。
【0072】
天然の大腿骨頭部オフセットを測定する方法は、
(a)フレームを天然の大腿骨頭部上に配置することと、
(b)天然の大腿骨頭部中心を示すために、天然の大腿骨頭部上に十字をマークすることであって、十字の垂直線が大腿骨骨幹軸に実質的に平行であることと、
(c)天然の大腿骨頭部上の十字の水平線に平行に定規を配置し、隣接する大転子上に更なる(位置合わせされた)水平線をマークする工程と、
(d)上記工程(c)でマークされた水平線に沿った任意の点に垂直線をマークする工程と、
(e)上記工程(b)でマークされた大腿骨頭部中心と上記工程(d)でマークされた垂直マークとの間の寸法D1を測定する工程と、
を含んでもよい。
【0073】
上記工程(b)、(c)及び(d)におけるマーク付けを、ペンを使用して行ってもよい。トライアル大腿骨頭部オフセットを測定する方法は、
(f)トライアル大腿骨頸部及び頭部アセンブリを、大腿骨骨幹内にin situで配置されたブローチの近位端上に配置する工程であって、好ましくは、アセンブリの頭部構成要素は、実質的に垂直な線及び実質的に水平の線によって画定される十字がマークされた平面部分を有する後面を備え、垂直線と水平線との交点が大腿骨頭部中心を示す、工程と、
(g)トライアル大腿骨頭部上の水平線が、上述の工程(c)で大転子上にマークされた水平線と位置合わせされていることを確認する工程と、
(h)上述の工程(d)でトライアル大腿骨頭部の大腿骨頭部中心から大転子上にマークされた垂直線までの距離D2を測定する工程と、
を含んでもよい。
【0074】
工程(g)で2本の水平線を位置合わせすることにより、トライアル大腿骨頭部の垂直高さは、天然の大腿骨頭部の解剖学的な垂直高さと一致する。
【0075】
上記工程(e)で測定されたD1の値を、上記工程(h)で測定されたD2の値と実質的に同じとすることにより、解剖学的な大腿骨頭部のオフセットがトライアル人工頭部によって復元される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
本発明の構成を、あくまで実例として、添付図面を参照しながら以下に説明する。なお、図中、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【
図1】本発明による外科用装置の第1の例示的な構成の概略図を示す。
【
図2】本発明による外科用装置の第2の例示的な構成の概略図を示す。
【
図3】本発明による外科用装置の第3の例示的な構成の概略図を示す。
【
図4】本発明による外科用装置の第4の例示的な構成の概略図を示す。
【
図5】本発明による外科用装置の第5の例示的な構成の概略図を示す。
【
図6】大腿骨上に取り付けられた装置の例示的な構成を示し、外科用装置はスペーサを含む。
【
図7】本発明による外科用装置の第6の例示的な構成の概略図を示す。
【
図8】本発明による外科用装置の第7の例示的な構成の概略図を示す。
【
図9】第1の大腿骨オフセット位置(
図9a)で大腿骨頭部上に取り付けられ、第2の大腿骨オフセット位置(
図9b)で大腿骨頭部上に取り付けられた外科用装置の第8の例示的な構成の概略図を示す。
【
図10】本発明による外科用装置の第9の例示的な構成の概略図を示す。
【
図11】本発明による外科用装置の第10の例示的な構成の概略図を示す。
【
図13】股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除の間に使用するための例示的なトライアル大腿骨頭部を示す。
【
図14-1】股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実施するための例示的な外科的方法を示す。
【
図14-2】股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実施するための例示的な外科的方法を示す。
【
図15】様々な大腿骨頭部オフセットに対応する切除面を示す際に使用する外科用装置の別の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、本発明による外科用装置10の第1の構成を示す。装置は、大腿骨頭部上に装置のフレームを取り付けるための開口部20を有するフレーム19を含む。装置は、アーム30及び切除ガイド40を更に含む。アームは、フレームの下縁部から切除ガイドまで延在する。
【0078】
外科用装置を様々な股関節システムに使用することができる。
【0079】
第1の例示的な股関節システム
第1の例示的な股関節システムでは、大腿骨ステム構成要素は、ステムサイズに基づいて3つにグループ化される。
【0080】
グループ1:ステムサイズ1~4
グループ2:ステムサイズ5~8
グループ3:ステムサイズ9~12
【0081】
頸部長は、標準オフセット頸部の場合、各グループ内の各ステムサイズごとに段階的に(例えば、約0.9mmずつ)増加する。頸部長は、高オフセット頸部の場合、各グループ内の各ステムサイズごとに段階的に(例えば、約1.2mmずつ)増加する。
【0082】
例えば、グループ1のサイズ1の標準オフセット頸部の大腿骨ステム構成要素は、約28.6mmの頸部長を有し、一方、グループ1のサイズ3の標準オフセット頸部の大腿骨ステム構成要素は、約30.2mmの頸部長を有する。
【0083】
例えば、グループ3のサイズ9の標準オフセット頸部の大腿骨ステム構成要素は、約35.8mmの頸部長を有し、グループ3のサイズ12の標準オフセット頸部の大腿骨ステム構成要素は、約38.2mmの頸部長を有する。
【0084】
したがって、システムは、「プログレッシブ」ネックシステムと呼ばれる。
【0085】
本発明による外科用装置の3つの構成を、この第1の例示的な股関節システムと共に使用するために提供することができる。
【0086】
外科用装置の第1の構成は、サイズ1~4の大腿骨ステム構成要素と組み合わせて使用するように構成されている。外科用装置の切除ガイド表面は、スタンダードオフセット135°切除面とハイオフセット135°切除面とを示す。
【0087】
外科用装置の第2の構成は、サイズ5~8の大腿骨頸部構成要素と組み合わせて使用するように構成されている。外科用装置の切除ガイド表面は、スタンダードオフセット135°切除面とハイオフセット135°切除面とを示す。
【0088】
外科用装置の第3の構成は、サイズ9~12の大腿骨頸部構成要素と組み合わせて使用するように構成されている。外科用装置の切除ガイド表面は、スタンダードオフセット135°切除面とハイオフセット135°切除面とを示す。
【0089】
これを以下で
図1~
図4を参照しながら更に詳細に説明する。
【0090】
第2の例示的な股関節システム
このシステムでは、大腿骨ステム構成要素の頸部長は、同じ頸部オフセットを有する全てのサイズのステムで一定である。4つの型、すなわち、スタンダードオフセット135°型、ハイオフセット135°型、ショートネックスタンダードオフセット135°型、及びスタンダードオフセット125°型の頸部が提供される。
【0091】
本発明による外科用装置の2つの構成を、この第2の例示的な股関節システムと共に使用するために提供することができる。
【0092】
外科用装置の第1の構成は、スタンダードオフセット135°型の頸部及びハイオフセット135°型の頸部と共に使用するように構成されている。
【0093】
外科用装置の第2の構成は、ショートネックスタンダードオフセット135°型及びスタンダードオフセット125°型と共に使用するように構成されている。
【0094】
これを以下で
図5を参照しながら更に詳細に説明する。
【0095】
図1を再び参照すると、外科用装置の構成は、第1の例示的な股関節システムと共に使用するように構成されている。フレームは、中心点を通る中心線(破線)によって内側部分21と外側部分22とに分割される。フレームはまた、股関節形成術中に異なる外科的アプローチ(例えば、前方又は後方)を使用する場合に、装置をどちらの大腿骨頭部(右又は左)に取り付けるべきかを外科医に示すマークも含む。フレームはまた、この装置が第1の例示的な股関節システムのグループ1の4つのサイズの大腿骨ステム構成要素と共に使用するためのものであることを外科医に示すマーク(サイズ1~4)も含む。
【0096】
アーム30は、内側縁部31及び外側縁部32を有する。
【0097】
切除ガイド40は、標準頸部オフセット(standard neck offset:STD)切除面に対応する第1の上方に位置する切除ガイド表面41を有する。切除ガイドはまた、高オフセット頸部(high offset neck:HI)切除面に対応する第2の下方に位置する切除ガイド表面42を有する。
【0098】
外科用装置10のこの第1の構成では、アームの内側縁部31の一部分が平坦であり、直線アライメント表面50を画定する。
【0099】
図2は、第1の例示的な股関節システムと共に使用するように構成された外科用装置100の第2の構成を示す。装置は、大腿骨頭部上にフレームを取り付けるための実質的に円形の開口部120を有するフレーム119を含む。装置は、アーム130及び切除ガイド140を更に含む。アームは、フレームの下縁部から切除ガイドまで延在する。
【0100】
フレームは、中心点を通る中心線(破線)によって内側部分121と外側部分122とに分割される。フレームは、この装置が第1の例示的な股関節システムのグループ2の大腿骨ステム構成要素と共に使用するためのものであることを外科医に示すマーク(サイズ5~8)も含む。
【0101】
アーム130は、内側縁部131及び外側縁部132を有する。外科用のこの第2の構成におけるアーム130の長さは、外科用装置の第1の構成におけるアーム30の長さよりも長い。これにより、比較的大きなステムサイズ(サイズ5、6、7又は8)を使用する場合に、正しい頸部長が得られる。
【0102】
切除ガイド140は、標準頸部オフセット(STD)切除面に対応する第1の上方に位置する切除ガイド表面141を有する。切除ガイドはまた、高オフセット頸部(HI)切除面に対応する第2の下方に位置する切除ガイド表面142を有する。切除ガイド表面141、142は、実質的に平行である。
【0103】
外科用装置110のこの第2の構成では、アームの内側縁部131の一部分が平坦であり、第1の直線アライメント表面150aを画定する。アームの外側縁部132の一部分も平坦であり、第2の直線アライメント表面150bを画定する。外科医は、直線アライメント表面150a、150bのいずれかを大腿骨骨幹軸と位置合わせすることができる。
【0104】
外科用装置200の第3の構成を
図3に示す。この装置もまた、第1の例示的な股関節システムと共に使用するように構成されている。装置は、大腿骨頭部上にフレームを取り付けるための実質的に円形の開口部220を有するフレーム219を含む。装置は、アーム230及び切除ガイド240を更に含む。アームは、フレームの下縁部から切除ガイドまで延在する。
【0105】
フレーム219は、第1の仮想線(破線)によって内側半分と外側半分とに分割される。フレームは、第2の仮想線(点線)によって上半分と下半分とに更に分割される。これにより、内側上部四分円221、外側上部四分円222、内側下部四分円223及び外側下部四分円224の4つの四分円が形成される。
【0106】
フレームは、マーク(サイズ9~12)を含み、このマークは、この装置が第1の例示的な股関節システムのグループ3の大腿骨ステム構成要素と共に使用するものであることを外科医に示す。
【0107】
アーム230は、内側縁部231及び外側縁部232を有する。外科用のこの第3の構成におけるアーム230の長さは、外科用装置の第1及び第2の構成におけるアーム30、130の長さよりも長い。これにより、9、10、11又は12の比較的大きなステムサイズを使用する場合に、保存的な切除を行うことができる。
【0108】
切除ガイド240は、標準頸部オフセット(STD)切除面に対応する第1の上方に位置する切除ガイド表面241を有する。切除ガイドはまた、高オフセット頸部(HI)切除面に対応する第2の下方に位置する切除ガイド表面242を有する。切除ガイド表面241、242は、実質的に平行である。
【0109】
外科用装置200のこの第3の構成では、内側下部四分円223の内側縁部の一部分が平坦であり、第1の直線アライメント表面250aを画定する。外側上部四分円222の外側縁部の一部分は平坦であり、第2の直線アライメント表面250bを画定する。アームの内側縁部232の一部分は平坦であり、第3の直線アライメント表面250cを画定する。アームの外側縁部231の一部分は平坦であり、第4の直線アライメント表面250dを画定する。外科医は、直線アライメント表面250a~250dのうちのいずれか1つを大腿骨骨幹軸と位置合わせすることができる。
【0110】
図3から分かるように、外側上部四分円222及び内側下部四分円223はそれぞれ、正方形の外側角部を備えている。いくつかの構成では、1つの四分円のみが正方形の外側角部を有する。任意選択的に、正方形の外側角部がフレームの四分円のうちの少なくとも2つに設けられてもよい。これら2つの四分円が直径方向に対向していてもよい。任意選択的に、フレームの四分円のうちの少なくとも3つに正方形の外側角部が設けられてもよい。任意選択的に、フレームの全ての四分円に正方形の外側角部が設けられてもよい。角部を設けることで、装置の安定性が改善され、また外科医が装置を保持するための表面積がより大きくなる。
【0111】
図4は、外科用装置300の第4の構成を示す。この装置もまた、第1の例示的な股関節システムと共に使用するように構成されている。装置は、大腿骨頭部上にフレームを取り付けるための実質的に円形の開口部320を有するフレーム319と、アーム330と、切除ガイド340と、を含む。アームは、フレームの下縁部から切除ガイドまで延在する。
【0112】
フレーム319は、中心点を通る中心線(破線)によって内側部分321と外側部分322とに分割される。フレームは、一対の対向する垂直な矢印(323)と、一対の対向する水平な矢印(324)とを含む。これらの矢印は、外科医が大腿骨頭部中心を見分けるのを助ける。
【0113】
アーム330は、内側縁部331及び外側縁部332を有する。
【0114】
切除ガイド340は、標準頸部オフセット(STD)切除面に対応する第1の上方に位置する切除ガイド表面341を有する。切除ガイドはまた、高オフセット頸部(HI)切除面に対応する第2の下方に位置する切除ガイド表面342を有する。切除ガイド表面341及び342は、実質的に平行である。
【0115】
外科用装置300の第4の構成は、大腿骨骨幹軸と位置合わせするための3つの直線アライメント表面を含む。フレームの外側部分322の外側縁部の一部分は平坦であり、第1の直線アライメント表面350aを画定する。アーム330の外側縁部332の一部分は平坦であり、第2の直線アライメント表面350bを画定する。アーム330の内側縁部331の一部分は平坦であり、第3の直線アライメント表面350cを画定する。外科医は、直線アライメント表面350a~350cのうちのいずれか1つを大腿骨骨幹軸と位置合わせすることができる。
【0116】
外科用装置400の第5の構成を
図5に示す。この装置は、第2の例示的な股関節システムと共に使用するように構成されている。装置は、大腿骨頭部上にフレームを取り付けるための実質的に円形の開口部420を有するフレーム419を含む。装置は、アーム430及び切除ガイド440を更に含む。アームは、フレームの下縁部から切除ガイドまで延在する。
【0117】
フレーム419は、中心点を通る中心線(破線)によって内側部分421と外側部分422とに分割される。
【0118】
アーム430は、内側縁部431及び外側縁部432を有する。
【0119】
切除ガイド440は、標準頸部オフセット(STD)切除面に対応する第1の上方に位置する切除ガイド表面441を有する。切除ガイドはまた、高オフセット頸部(HI)切除面に対応する第2の下方に位置する切除ガイド表面442を有する。切除ガイド表面441及び442は、端点443に向かって先細になっている。
【0120】
外科用装置300の第5の構成は、大腿骨骨幹軸と位置合わせするための3つの直線アライメント表面を含む。フレームの外側部分422の外側縁部の一部分は平坦であり、第1の直線アライメント表面350aを画定する。アーム430の外側縁部432の一部分は平坦であり、第2の直線アライメント表面450bを画定する。アーム430の内側縁部431の一部分は平坦であり、第3の直線アライメント表面450cを画定する。外科医は、直線アライメント表面450a~450cのうちのいずれか1つを大腿骨骨幹軸と位置合わせすることができる。
【0121】
図6は、本発明の第1、第2、第3、及び第4の構成による外科用装置のスペーサと組み合わせた使用を示す。スペーサ500aは、フレームの前面に取り付けられている。スペーサ500bは、フレームの後面に取り付けられている。両方の表面に取り付けられている場合には、外科用装置を反転させて、反対側の大腿骨頭部上で使用することができる。しかしながら、スペーサを1つの表面のみに取り付けてもよい。
図6に示す各ブロックは、10mmの長さ及び6mmの深さを有するが、これは限定的なものとして解釈されるべきではない。スペーサは、切除ガイドを大腿骨頸部から離間させるために使用され、したがって、装置の向きのずれによって引き起こされる切除面の位置決めの誤差を最小限に抑える。これにより、外科医が大腿骨頸部切除を過度に近位又は遠位に行ってしまうリスクが最小限に抑えられる。
【0122】
図7は、外科用装置600の第6の構成を示す。ブリッジ610が、フレームの対向する両側の間に延在する。ブリッジは、フレームを大腿骨頭部中心に固定するための固定手段(例えば、骨ピン又は骨ねじ)を受容するように構成された穴612を含む。図示の構成のブリッジは、大腿骨頭部と接触するための概ね凹状の内表面と、概ね凸状の外表面とを有する。したがって、右股関節の後面に取り付けられた場合(
図7a)及び、その代わりに左股関節の前面に取り付けられた場合(
図7b)の頸部切除ガイドの第6の構成の向きが示されている。ブリッジがこのような設計となっているために、この装置のこの構成は、簡単に裏返して右股関節及び左股関節の前面上で、又は右股関節及び左股関節の双方の後面上で使用することはできない。
【0123】
外科用装置700の第7の構成を
図8に示す。この装置もまた、第1の例示的な股関節システムと共に使用するように構成されている。装置は、大腿骨頭部上にフレームを取り付けるための実質的に円形の開口部720を有するフレーム719を含む。装置は、アーム730及び切除ガイド740を更に含む。アームは、フレームの下縁部から切除ガイドまで延在する。
【0124】
フレームは、マーク(サイズ5~8)を含み、このマークは、この装置が第1の例示的な股関節システムのグループ2の大腿骨ステム構成要素と共に使用するものであることを外科医に示す。
【0125】
フレームは、第1の仮想線(破線)によって内側半分と外側半分とに分割される。フレームは、第2の仮想線(点線)によって上半分と下半分とに更に分割される。これにより、内側上部四分円721、外側上部四分円722、内側下部四分円723及び外側下部四分円724の4つの四分円が形成される。
【0126】
フレーム719は、一対の対向する垂直な矢印752a及び752bを含む。これらの矢印は、外科医が大腿骨頭部中心を見分けることを視覚的に補助する。
【0127】
フレームは、大腿骨オフセットを表す印を含む。印は、フレームの内側部分及び外側部分の両方に設けられている。
【0128】
この構成では、印は、フレームの外側半分の内周に沿って配置された複数のスロット754a~754fによって画定される目盛りの形で設けられている。複数のスロットの各スロットは、異なる大腿骨頭部オフセットを表す。
【0129】
各スロット(一次印)に、数値(二次印)が付随している。数値は、ミリメートル単位で測定された大腿骨頭部オフセットを表す。
【0130】
最も上方に位置するスロット754aは、+15.5mmの大腿骨頭部オフセットを表す。スロット754aの下方に配置された隣接するスロット754bは、+12mmの大腿骨頭部オフセットを表す。次の下方に配置されたスロット754cは、+8mmの大腿骨頭部オフセットを表す。次の下方に配置されたスロット754dは、+5mmの大腿骨頭部オフセットを表す。次の下方に配置されたスロット754eは、+1.5mmの大腿骨頭部オフセットを表す。最後に、次の下方に配置されたスロット754fは、-2mmの大腿骨頭部オフセットを表す。
【0131】
フレームの両面に同じ印を設けてもよい。これにより、装置を簡単に裏返すことができるため、右股関節及び左股関節の前面上に取り付けられている時、又は右股関節及び左股関節の後面上に取り付けられている時に、大腿骨頭部オフセットを測定するために使用することができる。
【0132】
図8から分かるように、内側上部四分円721には正方形の外側角部が設けられている。これは任意の特徴である。正方形の外側角部を設けることで、装置の安定性が改善され、また外科医が装置を保持するための表面積がより大きくなる。加えて、この角部は、一対の矢印756a及び756bを含み、第1の矢印756aは上内側方向を指し、第2の矢印756bは下外側方向を指している。矢印756a、756bは、複数のスロット754a~754fのうちの1つを大腿骨頭部中心と位置合わせする際に、ガイドが大腿骨頭部中心に対して移動されるべき方向を外科医に示す。
【0133】
切除ガイド740は、標準頸部オフセット(STD)切除面に対応する第1の上方に位置する切除ガイド表面741を有する。切除ガイドはまた、高オフセット頸部(HI)切除面に対応する第2の下方に位置する切除ガイド表面742を有する。切除ガイド表面741、742は、実質的に平行である。
【0134】
外科用装置700のこの第7の構成は、大腿骨骨幹軸と位置合わせするための5つの直線アライメント表面を含む。内側上部四分円721の内側縁部の一部分は平坦であり、第1の直線アライメント表面750aを画定する。外側上部四分円722の外側縁部の一部分は平坦であり、第2の直線アライメント表面750bを画定する。内側下部四分円724の外側縁部の一部分は平坦であり、第3の直線アライメント表面750cを画定する。アーム730の内側縁部731の一部分は平坦であり、第4の直線アライメント表面750dを画定する。アーム730の外側縁部732の一部分は平坦であり、第5の直線アライメント表面750eを画定する。外科医は、直線アライメント表面750a~750eのうちのいずれか1つを大腿骨骨幹軸と位置合わせすることができる。
【0135】
図9は、様々な大腿骨頭部オフセットに対応する切除面を示すために使用される装置の第8の構成を示す。開口部は、概ね楕円形である。
図9Aでは、ガイドは、スロット754(すなわち、+15.5mmの大腿骨オフセットを表す)が大腿骨頭部の中心(十字線として示される)と位置合わせされるように、大腿骨頭部上に配置されている。
図9Bでは、同じガイドが、スロット754f(すなわち、-2mmの大腿骨オフセットを表す)が大腿骨頭部の中心(十字線として示される)と位置合わせされるように、大腿骨頭部上に再配置されている。
図9Bでは、切除ガイド740が
図9Aの切除ガイドよりも上方に配置されていることは容易に明らかである。
【0136】
図10に示す外科用装置800の第9の構成は、
図1及び
図2に示す第1及び第2の構成と設計が類似している。装置は、フレーム819が実質的に楕円形の開口部820を有するという点で異なる。これにより、装置が大腿骨頭部上で移動する能力が改善される。
【0137】
加えて、装置は、大腿骨オフセットを表す印を含む。この構成では、印は、フレームの内周と外周との間に延在する複数の線854a~854cによって画定される目盛りの形で設けられている。複数の線の各線は、異なる大腿骨頭部オフセットを表す。
【0138】
各線(一次印)に、数値(二次印)が付随している。数値は、ミリメートル単位で測定された大腿骨頭部オフセットを表す。
【0139】
ガイドを、カルカー面での保存的な切除のために使用してもよい。したがって、例示的なインプラントシステムでは、大腿骨頭部オフセットは、装置上の「-2mm」によって示される第1の大腿骨オフセットが-2mm及び+1.5mmの大腿骨頭部オフセットの両方を表し、装置上の「+5mm」によって示される第2の大腿骨オフセットが+5mm及び+8mmの大腿骨頭部オフセットの両方を表し、「+12mm」で示される第3の大腿骨オフセットが+12mm及び+17.5mmの大腿骨頭部オフセットの両方を表すようにグループ化されてもよい。
【0140】
図示のように、最も上方に位置する線854aは、「12mm」の大腿骨頭部オフセットを表す。スロット854aの下方に配置された隣接するスロット854bは、「+5mm」の大腿骨頭部オフセットを表す。次の下方に配置されたスロット854cは、「-2mm」の大腿骨頭部オフセットを表す。
【0141】
図11は、外科用装置の第10の構成を示す。装置900は、大腿骨頭部を受容するための実質的に円形の開口部904を有するフレーム902を含む。
【0142】
第1のアーム906は、フレーム902の下縁から、「-2」とラベル付けされた第1の切除ガイド908まで延在する。
【0143】
第1のアーム906の内側縁部の一部分は平坦であり、第1の直線アライメント表面910aを画定する。第1のアームの外側縁部の一部分は平坦であり、第2の直線アライメント表面910bを画定する。
【0144】
切除ガイド908は、標準頸部オフセットの切除面に対応する第1の切除ガイド表面912を有する。切除ガイドはまた、高頸部オフセットの切除面に対応する第2の切除ガイド表面914を有する。切除ガイド表面912、914は、実質的に平行である。
【0145】
第1及び第2の直線アライメント表面910a、910bを大腿骨骨幹軸と位置合わせする際に、第1の切除ガイド908を使用して、-2mm又は+1.5mmの大腿骨頭部オフセットを達成するための保存的な(切除ガイド表面912に沿った)標準頸部オフセットの切除面又は(切除ガイド表面914に沿った)高頸部オフセットの切除面の位置を示してもよい。
【0146】
装置は、フレーム902の周囲に第1のアームに対して横方向に配置され、フレームの下縁部から延在する第2のアーム916を更に含む。第2のアームは、フレーム902と第2の切除ガイド918との間にブリッジを形成する。第2の切除ガイドには、「5」というラベルが付けられている。第2のアームの内側縁部の一部分は平坦であり、第3の直線アライメント表面910cを画定する。第2のアームの外側縁部の一部分は平坦であり、第4の直線アライメント表面910dを画定する。
【0147】
第2の切除ガイド918は、標準頸部オフセットの切除面に対応する第3の切除ガイド表面920を有する。切除ガイドはまた、高頸部オフセットの切除面に対応する第4の切除ガイド表面922を有する。切除ガイド表面920、922は、実質的に平行である。
【0148】
第3及び第4の直線アライメント表面910c、910dを大腿骨骨幹軸と位置合わせする際に、第2の切除ガイド918は、+5mm又は+8mmの大腿骨頭部オフセットを達成するための保存的な標準オフセット又は高オフセットの頸部切除面を示す。
【0149】
装置は、フレーム902の周囲に第2のアームに対して横方向に配置され、フレームの下縁部から延在する第3のアーム924を更に含む。第3のアーム924は、フレーム902と第3の切除ガイド926との間にブリッジを形成する。第3の切除ガイドには、「12」というラベルが付けられている。第3のアームの内側縁部の一部分は平坦であり、第5の直線アライメント表面910eを画定する。第3のアームの外側縁部の一部分は平坦であり、第6の直線アライメント表面910fを画定する。
【0150】
切除ガイド926は、標準頸部オフセットの切除面に対応する第5の切除ガイド表面928を有する。切除ガイドはまた、高頸部オフセットの切除面に対応する第6の切除ガイド表面930を有する。切除ガイド表面928、930は、実質的に平行である。
【0151】
第5及び第6の直線アライメント表面を大腿骨骨幹軸と位置合わせする際に、第3の切除ガイド926は、+12mm及び+17.5mmの大腿骨頭部オフセットを達成するための保存的な標準オフセット又は高オフセットの頸部切除面の位置を示す。
【0152】
図12は、大腿骨頭部上に取り付けられた
図11の装置900を示す。「+5mm」の大腿骨頭部オフセットを達成するのに必要な切除面を特定するために、外科医は、装置が大腿骨頭部上に取り付けられている間に、第2のアーム912上の第3及び第4の直線アライメント表面910c、910dが大腿骨骨幹軸と位置合わせされるまで装置を回転させることができる。外科医は次いで、切除ガイド918を使用して、高オフセット又は標準オフセットの切除面のいずれかを大腿骨頸部上にマークすることができる。
【0153】
図13は、股関節形成術で使用するための例示的なトライアル大腿骨頭部1700を示す。トライアル大腿骨頭部は、その後面1704上に設けられた平面部分1702を含む。平面部分1702には、垂直線1708及び水平線1710によって画定される十字1706が設けられている。垂直線1708と水平線1710との交点は、トライアル大腿骨頭部の大腿骨頭部中心1712を示す。
【0154】
図14に示す外科的技法は、以下の工程を含む:
工程1:股関節の画像を提供する。
工程2:適切な頸部切除ガイドを選択する。本明細書に示すガイド300は、本発明による外科用装置の第4の例示的な構成である。
工程3:左側の天然大腿骨頭部1800及び頸部1802の後面上に、直線アライメント表面350a、350b、350cが大腿骨骨幹軸1804と平行となるように注意しながら頸部切除ガイド300を配置する。
工程4:フレームを天然の大腿骨頭部1800上の中央に位置決めし、マーカーペンを使用して、大腿骨頭部中心1812で交差する垂直線1808と水平線1810とを天然の大腿骨頭部上に引く。
工程5:骨刀1900を使用して、標準オフセット又は高オフセットの頸部切除レベルをマークする。
工程6:頸部切除ガイドを取り去る。
工程7:天然の大腿骨頭部上の水平線1810に平行に配置された定規を使用して、隣接する大転子上に更なる水平線1814を引く。
工程8:大転子上の水平線1814上の選択された点で垂直マーク1816を引く。大腿骨頭部中心1812から大転子上の垂直マーク1816までの寸法D
1を記録する。
工程9:天然の大腿骨頭部を切除する。
工程10:ブローチ1000を使用して、選択されたサイズ及び深さまで大腿骨の準備を行う。
工程11:トライアルの頸部及び頭部2000をブローチ上に配置する。有利には、
図8のトライアル大腿骨頭部が使用される。
工程12:トライアル大腿骨頭部の水平線1706が、大転子上の水平線1814と位置合わせされるようにする。2本の水平線1706、1814を位置合わせすることにより、トライアル大腿骨頭部の垂直高さが、天然の大腿骨頭部の垂直高さと一致する。次いで、トライアル大腿骨頭部の大腿骨頭部中心1712から大転子上の垂直線1816までの距離D
2を測定する。D
1がD
2と実質的に同じである場合には、解剖学的大腿骨頭部オフセットが選択されたトライアル人工頭部によって効果的に復元されていることが外科医に分かる。
【0155】
外科的処置の実施は、上記に列挙された外科的工程に限定されるものではなく、またこれらの工程のいかなる特定の実施順序にも限定されない。工程を、外科医の好みに応じた順序で実行してもよい。
【0156】
図15は、様々な大腿骨頭部オフセットに対応する切除面を示す際に使用する外科用装置1000の別の構成を示す。装置は、大腿骨頭部を受容するための実質的に円形の開口部1004を有するフレーム1002を含む。
【0157】
装置1000は、「-2mm」とラベル付けされた第1の切除ガイド表面1006を含む。この表面には、大腿骨骨幹軸と位置合わせするための位置合わせ基準マーカ1008が付随している。図示の構成では、位置合わせ基準マーカは、装置の表面上に印刷することの可能な黒線の形態である。
【0158】
「-2mm」の大腿骨頭部オフセットを達成するために必要な切除面を特定するために、外科医は、装置が大腿骨頭部上に取り付けられている間に、位置合わせ基準マーカ1008が大腿骨骨幹軸と位置合わせされるまで装置を回転させることができる。外科医は次いで、切除ガイド表面1006を使用して、標準オフセット切除面を大腿骨頸部上にマークすることができる。
【0159】
装置は、「+5mm」とラベル付けされた第2の切除ガイド表面1010を更に含む。この表面には、大腿骨骨幹軸と位置合わせするための位置合わせ基準マーカ1012が付随している。図示の構成では、位置合わせ基準マーカは、装置の表面上に印刷することの可能な黒線の形態である。
【0160】
「+5mm」の大腿骨頭部オフセットを達成するために必要な切除面を特定するために、外科医は、装置が大腿骨頭部上に取り付けられている間に、位置合わせ基準マーカ1012が大腿骨骨幹軸と位置合わせされるまで装置を回転させることができる。外科医は次いで、切除ガイド表面1010を使用して、標準オフセット切除面を大腿骨頸部上にマークすることができる。
【0161】
装置は、「+12mm」とラベル付けされた第3の切除ガイド表面1014を含む。この表面には、大腿骨骨幹軸と位置合わせするための位置合わせ基準マーカ1016が付随している。図示の構成では、位置合わせ基準マーカは、装置の表面上に印刷することの可能な黒線の形態である。
【0162】
「+12mm」の大腿骨頭部オフセットを達成するために必要な切除面を特定するために、外科医は、装置が大腿骨頭部上に取り付けられている間に、位置合わせ基準マーカ1016が大腿骨骨幹軸と位置合わせされるまで装置を回転させることができる。外科医は次いで、切除ガイド表面1014を使用して、標準オフセット切除面を大腿骨頸部上にマークすることができる。
【0163】
この構成が、上面及び下面の両方に同様にマークされていてもよい。したがって、装置を簡単に裏返して他方の股関節に使用することができる。本発明の特定の構成を説明したが、特許請求される発明の範囲内で多くの変更/追加及び/又は置換を行ってもよいことが認識される。
【0164】
〔実施の態様〕
(1) 股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行うための外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
前記大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を備え、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含む、
外科用装置。
(2) 前記フレームが内側部分及び外側部分を有し、前記直線アライメント表面が前記内側部分上又は前記外側部分上のいずれかに設けられている、実施態様1に記載の外科用装置。
(3) 前記フレームが2つ以上の直線アライメント表面を有し、前記内側部分上に直線アライメント表面が設けられ、前記外側部分上に直線アライメント表面が設けられている、実施態様1又は2に記載の外科用装置。
(4) 前記アームが内側縁部及び外側縁部を有し、前記直線アライメント表面が前記内側縁部上又は前記外側縁部上のいずれかに設けられている、実施態様1に記載の外科用装置。
(5) 前記アームが2つ以上の直線アライメント表面を有し、前記アームの前記内側縁部上に直線アライメント表面が設けられ、前記アームの前記外側縁部上に直線アライメント表面が設けられている、実施態様1に記載の外科用装置。
【0165】
(6) 前記フレームの前記内側部分上に直線アライメント表面が設けられ、前記アームの前記内側縁部上に直線アライメント表面が設けられている、実施態様4又は5に記載の外科用装置。
(7) 前記フレームの前記外側部分上に直線アライメント表面が設けられ、前記アームの前記外側縁部上に直線アライメント表面が設けられている、実施態様4又は5に記載の外科用装置。
(8) 前記フレーム上の前記直線アライメント表面及び前記アーム上の前記直線アライメント表面が同一直線上にある、実施態様6又は7に記載の外科用装置。
(9) 前記切除ガイドが、前記大腿骨頸部上の切除面の位置を示すためのガイドスロットを含む、実施態様1~8のいずれかに記載の外科用装置。
(10) 前記ガイドスロットは、前記頸部の前記切除中に切断装置のブレードを受容するための切断スロットである、実施態様6に記載の外科用装置。
【0166】
(11) 前記切除ガイドが先細になっている、実施態様1~10のいずれかに記載の外科用装置。
(12) 前記切除ガイドが第1の表面及び第2の対向する表面を有し、前記切除ガイドを前記大腿骨頸部から離間させるために、前記第1の表面上及び前記第2の対向する表面上の少なくとも一方にスペーサが設けられている、実施態様1~11のいずれかに記載の外科用装置。
(13) 前記スペーサは前記切除ガイド上に取り外し可能に取り付け可能である、実施態様12に記載の外科用装置。
(14) 前記開口部が実質的に楕円形である、実施態様1~13のいずれかに記載の外科用装置。
(15) 前記フレームが、前記大腿骨頭部上に前記フレームを取り外し可能に取り付けるための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含む、実施態様1~14のいずれかに記載の外科用装置。
【0167】
(16) 股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行う際に使用するための外科用キットであって、
外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
前記大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームであって、前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含む、アームと、
を有する本体部分と、
を含む外科用装置と、
前記切除ガイド上に取り外し可能に取り付け可能なスペーサと、
を備える、外科用キット。
(17) 股関節置換手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を行う際に使用するための外科用キットであって、
第1の外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
前記大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を含み、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含む、
第1の外科用装置と、
第2の外科用装置であって、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
前記大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を含み、
前記本体部分は、前記フレームが前記大腿骨頭部上に取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含み、前記第1の装置の前記アームは、前記フレームと前記切除ガイドとの間で測定される第1の長さを有し、前記第2の装置の前記アームは、前記フレームと前記切除ガイドとの間で測定される第2の長さを有し、前記第1の長さと前記第2の長さとは異なる、
第2の外科用装置と、
を備える、外科用キット。
(18) 股関節置換手技中に外科用装置を使用して大腿骨の頸部の制御された切除を行うための方法であって、前記外科用装置が、
本体部分であって、
開口部を含むフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記大腿骨頭部の中心に対して前記本体部分を位置付けるような寸法である、フレームと、
前記大腿骨頸部上の切除面の位置を示すための切除ガイドと、
前記フレームと前記切除ガイドとの間に延在するアームと、
を有する本体部分を備え、
前記本体部分は、前記大腿骨頭部上に前記フレームが取り付けられている間に前記大腿骨の大腿骨骨幹軸と位置合わせするための直線アライメント表面を含み、
前記方法が、
前記フレームを前記大腿骨頭部上に取り付けることと、
前記大腿骨の前記大腿骨骨幹軸に沿って前記本体部分上の前記直線アライメント表面を位置合わせすることと、
前記切除ガイドを使用して、
前記大腿骨の前記頸部上の前記切除面の前記位置をマークすること、又は
切断装置のブレードを案内して前記大腿骨の前記頸部を切除すること、を行うことと、を含む、
方法。
(19) 前記フレームが前記大腿骨頭部の後面に取り外し可能に取り付けられている、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記フレームが前記大腿骨頭部の前面に取り外し可能に取り付けられている、実施態様18に記載の方法。
【0168】
(21) 前記方法が、前記大腿骨頸部のオフセットを測定するステップを更に含む、実施態様18~20のいずれかに記載の方法。