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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】無線信号の受信電力を推定する推定装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/318 20150101AFI20240326BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20240326BHJP
【FI】
H04B17/318
H04B17/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021000235
(22)【出願日】2021-01-04
(65)【公開番号】P2022105434
(43)【公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度総務省「令和2年度、総務省『第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発技術課題「ア 多様なサービス要求に応じた高信頼な高度5Gネットワーク制御技術の研究開発」』」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 慧司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217457(WO,A1)
【文献】特開2017-120992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0281526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/318
H04B 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の送信位置に設置された送信機が送信する無線信号の受信位置における受信電力を推定する推定装置であって、
前記送信位置及び前記受信位置を含む地理的範囲を示す第1画像であって、前記送信位置から前記受信位置に至る前記無線信号の1つ以上の伝搬経路と、前記1つ以上の伝搬経路それぞれについて、伝搬経路に沿って伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力と、を示す前記第1画像を生成する第1生成手段と、
前記地理的範囲を示す第2画像であって、前記受信電力を推定する推定タイミングにおいて前記地理的範囲内に存在すると判定された移動物体を示す前記第2画像を生成する第2生成手段と、
前記第1画像及び前記第2画像を入力として前記受信位置における前記受信電力を推定する推定手段と、
を備え
前記第1画像は、複数の第1画素を含み、
前記第2画像は、複数の第2画素を含み、
前記複数の第1画素それぞれは、第1画素に対応する前記地理的範囲内の位置の上を前記1つ以上の伝搬経路が通過しているか否かと、通過している場合にはその高さ、及び、通過している伝搬経路で伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力を示し、
前記複数の第2画素それぞれは、第2画素に対応する前記地理的範囲内の位置に、前記推定タイミングにおいて前記移動物体が存在するか否かと、存在する場合には、存在する前記移動物体の高さを示すことを特徴とする推定装置。
【請求項2】
前記第1画像が示す前記1つ以上の伝搬経路それぞれは、伝搬経路のフレネル半径に対応する幅を有することを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記第1画像は、前記1つ以上の伝搬経路が通過している高さを示す画像と、前記1つ以上の伝搬経路で伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力を示す画像と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記第1画素に対応する前記地理的範囲内の位置の上を前記1つ以上の伝搬経路が通過している場合、当該第1画素は、当該第1画素に対応する前記地理的範囲内の位置の上を通過している伝搬経路が前記第2画像によって示されている前記移動物体によって遮蔽されているか否かを示すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
前記第2画素に対応する前記地理的範囲内の位置に前記移動物体が存在する場合、当該第2画素は、当該第2画素に対応する前記地理的範囲内の位置に存在する前記移動物体が前記第1画像によって示されている前記1つ以上の伝搬経路の内の少なくとも1つを遮蔽しているか否かを示すことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記第1生成手段は、前記送信機がサービス提供する地理的範囲の3次元地図データを有し、前記受信位置と、前記送信位置と、前記3次元地図データとに基づき、前記1つ以上の伝搬経路と、前記1つ以上の伝搬経路それぞれに沿って伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力と、を判定することにより前記第1画像を生成することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記第1生成手段は、前記送信位置と前記受信位置とを結ぶ直線に沿って伝搬する直接経路が前記第2画像によって示されている前記移動物体により遮蔽されていない場合、前記1つ以上の伝搬経路を前記直接経路のみとすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記送信機がサービス提供する地理的範囲を全体としてカバーして撮像する複数のカメラをさらに備え、
前記第2生成手段は、前記複数のカメラからの画像データに基づき、前記推定タイミングにおいて前記地理的範囲内に存在する1つ以上の移動物体を判定して前記第2画像を生成することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記第2生成手段は、前記推定タイミングにおいて前記地理的範囲内に存在する前記1つ以上の移動物体の内、前記第1画像によって示されている前記1つ以上の伝搬経路を遮蔽する移動物体のみを示す前記第2画像を生成することを特徴とする請求項に記載の推定装置。
【請求項10】
前記第2生成手段は、前記推定タイミングにおいて前記地理的範囲内に存在する前記1つ以上の移動物体の内、前記第1画像によって示されている前記1つ以上の伝搬経路の最小の高さより低い移動物体を除いた移動物体のみを示す前記第2画像を生成することを特徴とする請求項に記載の推定装置。
【請求項11】
前記第1生成手段は、複数の異なる前記受信位置それぞれについて生成する複数の前記第1画像それぞれにおいて、前記受信位置及び前記送信位置が、前記第1画像内の所定の線上にあり、かつ、前記送信位置から前記受信位置に向かう方向が同じとなる様に前記第1画像を生成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項12】
複数のセットの学習データに基づき、所定の送信位置に設置された送信機が送信する無線信号の受信電力を推定するための学習モデルを生成する推定装置であって、
前記複数のセットの各セットは、
前記送信位置及び受信電力を測定した受信位置を含む地理的範囲を示す第1画像であって、前記送信位置から前記受信位置に至る前記無線信号の1つ以上の伝搬経路と、前記1つ以上の伝搬経路それぞれについて、伝搬経路に沿って伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力と、を示す前記第1画像と、
前記地理的範囲を示す第2画像であって、前記受信電力を測定した測定タイミングにおいて前記地理的範囲内に存在すると判定された移動物体を示す前記第2画像と、
前記受信電力を示す情報と、
を有し、
前記第1画像は、複数の第1画素を含み、
前記第2画像は、複数の第2画素を含み、
前記複数の第1画素それぞれは、第1画素に対応する前記地理的範囲内の位置の上を前記1つ以上の伝搬経路が通過しているか否かと、通過している場合にはその高さ、及び、通過している伝搬経路で伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力を示し、
前記複数の第2画素それぞれは、第2画素に対応する前記地理的範囲内の位置に、前記測定タイミングにおいて前記移動物体が存在するか否かと、存在する場合には、存在する前記移動物体の高さを示し、
前記推定装置は、
前記複数のセットに基づき前記学習モデルを生成する手段を備えていることを特徴とする推定装置。
【請求項13】
前記複数のセットそれぞれの前記第1画像において、前記受信位置及び前記送信位置は、前記第1画像内の所定の線上にあり、かつ、前記送信位置から前記受信位置に向かう方向は同じであることを特徴とする請求項12に記載の推定装置。
【請求項14】
前記第1画像が示す地理的範囲の面積は、前記送信機がサービス提供する地理的範囲内の位置それぞれにおいて、当該位置における電力が所定値より大きい総ての伝搬経路を含む様に決定されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号の受信電力の推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム等、ミリ波を使用する無線通信システムによるサービス提供が行われている。非特許文献1及び非特許文献2は、この様なミリ波を使用する無線通信システムにおいて、機械学習により、無線装置(WD)(又は、移動機)が基地局から受信する無線信号の電力(以下、受信電力)を推定する技術を開示している。
【0003】
具体的には、WDを含む画像と、画像内におけるWDの位置と、当該WDの受信電力と、を学習データとして、ニューラルネットワーク(NN)等の推定装置の学習を行う。そして、画像と、画像内におけるWDの位置を推定装置の入力とすることで、当該WDでの受信電力を推定する構成を非特許文献1及び非特許文献2は開示している。なお、非特許文献1においては、基地局近傍からWDが位置する方向を撮像した画像を使用し、非特許文献2においては、衛星写真を使用している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Y.Koda,et.al.,"Handover Management for mmWave Networks With Proactive Performance Prediction Using Camera Images and Deep Reinforcement Learning",IEEE Trans.Cogn.Commun.Netw.,vol.6,no.2,pp.802-816,2020年6月
【文献】T.Hayashi,et.al.,"A study on the variety and size of input data for radio propagation prediction using a deep neural network",2020 14th European Conference on Antennas and Propagation (EuCAP)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミリ波を使用する無線通信システムにおいて、WDでの受信電力は、建物等の構造物による反射のみならず、車両等の移動物体による遮蔽の影響も受ける。しかしながら、非特許文献1では建物等の構造物による反射の影響が考慮されておらず、非特許文献2では移動物体による遮蔽の影響が考慮されていない。したがって、非特許文献1及び非特許文献2の構成では、受信電力を精度良く推定することができない。
【0006】
本発明は、無線信号の受信電力を精度良く推定する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、所定の送信位置に設置された送信機が送信する無線信号の受信位置における受信電力を推定する推定装置は、前記送信位置及び前記受信位置を含む地理的範囲を示す第1画像であって、前記送信位置から前記受信位置に至る前記無線信号の1つ以上の伝搬経路と、前記1つ以上の伝搬経路それぞれについて、伝搬経路に沿って伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力と、を示す前記第1画像を生成する第1生成手段と、前記地理的範囲を示す第2画像であって、前記受信電力を推定する推定タイミングにおいて前記地理的範囲内に存在すると判定された移動物体を示す前記第2画像を生成する第2生成手段と、前記第1画像及び前記第2画像を入力として前記受信位置における前記受信電力を推定する推定手段と、を備え、前記第1画像は、複数の第1画素を含み、前記第2画像は、複数の第2画素を含み、前記複数の第1画素それぞれは、第1画素に対応する前記地理的範囲内の位置の上を前記1つ以上の伝搬経路が通過しているか否かと、通過している場合にはその高さ、及び、通過している伝搬経路で伝搬した前記無線信号の前記受信位置における電力を示し、前記複数の第2画素それぞれは、第2画素に対応する前記地理的範囲内の位置に、前記推定タイミングにおいて前記移動物体が存在するか否かと、存在する場合には、存在する前記移動物体の高さを示すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、無線信号の受信電力を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】学習時の推定装置の構成図。
図2】各画像が示す地理的範囲の面積の決定方法の説明図。
図3】各画像が示す地理的範囲の面積の決定方法の説明図。
図4】各画像が示す地理的範囲の面積の決定方法の説明図。
図5】1セットの学習データの生成方法の説明図。
図6図5(A)の状態に対応する第1伝搬経路データを示す図。
図7図5(A)の状態に対応する第2伝搬経路データを示す図。
図8図5(B)の状態に対応する移動物体データを示す図。
図9】予測時の推定装置の構成図。
図10図5(A)の状態に対応する第1伝搬経路データを示す図。
図11図5(A)の状態に対応する第2伝搬経路データを示す図。
図12図5(B)の状態に対応する移動物体データを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による推定装置の構成図である。なお、図1は、機械学習又はディープラーニングを行う際の推定装置の構成を示している。推定部14は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。推定部14は、学習データに基づき学習を行って学習モデルを生成する。学習データは、基地局(以下、送信機とも表記する。)毎に生成され、1つの基地局に対する学習データは、多数のセットを含む。以下では、1つの基地局に対する学習データの生成について説明する。したがって、以下の説明において"基地局(又は送信機)"とは、学習データの生成対象である基地局(又は送信機)を示すものとする。
【0012】
学習データの1つのセットは、基地局のサービス提供範囲(セル)内の、ある位置(受信位置)で基地局からの無線信号の受信電力を測定することにより生成される。学習データの1つのセットは、受信電力と、当該受信電力を測定した受信位置及び測定のタイミングに基づき生成した、移動物体画像及び伝搬経路画像と、を含む。なお、本実施形態において、伝搬経路画像は、第1伝搬経路画像と第2伝搬経路画像の2つの画像を含む。学習データの複数のセットは、セル内の様々な位置において様々なタイミングで受信電力を測定することにより生成される。より具体的には、セル内の同じ位置において1つ以上のタイミングで受信電力を測定することを、様々な位置において繰り返すことで、学習データの複数のセットは生成される。
【0013】
本実施形態においては、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像の3つの画像が示す画素当たりの面積を、学習データの総てのセットにおいて同じにする。さらに、3つの画像の形状及びサイズ、つまり、画素数を同じにする。本実施形態では、3つの画像の形状を方形とし、よって、3つの画像の互いに直交する2つの方向の画素数を、学習データの総てのセットにおいて同じにする。したがって、同じ学習データの総てのセットにおける3つの画像が示す地理的範囲の面積は同じとなる。以下では、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像の3つの画像のサイズ、つまり、3つの画像が示す地理的範囲の面積の決定方法について説明する。なお、3つの画像の互いに直交する方向の画素数の比(以下、縦横比)については事前に決定しておく。本例においては、縦横比を1:1、つまり、3つの画像を正方形とする。
【0014】
図2は、送信機の設置位置(以下、送信位置)50から、セル内の、ある受信位置51に至る複数の伝搬経路を示している。図2において、参照符号70、71、72は、建物等の構造物を示している。図2に示す様に、送信位置50から受信位置51に至る無線信号の伝搬経路には、送信位置50と受信位置51とを結ぶ直線に沿った経路(つまり、直接波)に加えて、建物等により反射して受信位置51に至る1つ以上の経路(つまり、反射波)が存在する。
【0015】
伝搬経路情報生成部11は、送信機がサービス提供するセルを少なくともカバーする3次元地図データと、当該送信機の送信位置50と、当該送信機による無線信号の送信電力及び指向性等の送信機パラメータを示す情報と、を有する。伝搬経路情報生成部11は、保持している上記情報に基づき、送信位置50から受信位置51に至る無線信号の伝搬経路の内、受信位置51での電力が所定値以上となる伝搬経路を判定する。なお、伝搬経路情報生成部11は、送信位置50と受信位置51とを結ぶ直線に沿った経路の場合、受信位置51での電力を、送信位置50と受信位置51との距離により判定することができる。また、伝搬経路情報生成部11は、建物等により反射して受信位置51に至る経路の場合、経路長と、建物の反射による減衰を考慮して受信位置51での電力を判定することができる。
【0016】
そして、伝搬経路情報生成部11は、判定した伝搬経路に基づき、以下の2つの条件を満たす、その形状及び縦横比が3つの画像と同じ地理的範囲の内、その面積が最小の地理的範囲を判定する。まず、条件1は、地理的範囲が判定した総ての伝搬経路を含むことである。条件2は、送信位置50及び受信位置51が当該地理的範囲内の所定の線上に位置し、かつ、送信位置50から受信位置51に向かう方向が当該線の方向に一致することである。図3は、所定の線の例を示している。図3(A)においては、所定の線80を、地理的範囲(本例では正方形)の一辺の中心と、当該一辺に対向する辺の中心とを結ぶ線とし、その方向を、図3(A)の下側から上側に向かう方向としている。図3(B)においては、所定の線80を、地理的範囲の対角線とし、その方向を、図3(B)の左下側から右上側に向かう方向としている。図3(C)においては、所定の線80を、地理的範囲の一辺を5:1に分割する点と、当該一辺と平行な一辺を1:1に分割する点とを結ぶ線とし、その方向を、1:1に分割した辺から5:1に分割した辺に向かう方向としている。なお、図3は例示であり、本発明は、図3に示す例に限定されない。
【0017】
例えば、所定の線80を図3(A)に示す様に設定した場合、図4に示す様に、伝搬経路情報生成部11は、受信位置51-1に対しては、参照符号90で示す様に地理的範囲を決定し、受信位置51-2に対しては、参照符号91で示す様に地理的範囲を決定する。なお、地理的範囲90及び地理的範囲91は、上記条件1及び条件2を満たすものとする。
【0018】
伝搬経路情報生成部11は、送信機がサービス提供するセル内の総ての位置を受信位置として上記地理的範囲の判定を行う。そして、伝搬経路情報生成部11は、判定した地理的範囲の内の最も大きい面積を、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像のサイズ、つまり、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像が示す地理的範囲の面積に決定する。したがって、決定した面積により、いずれの画像にも、送信位置50からセル内の任意の受信位置51に至る、受信位置51での電力が所定値以上となる伝搬経路を含めることができる。
【0019】
なお、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像の1つの画素当たりの面積については、移動物体画像生成部12において判定する移動物体の大きさより小さくなる様に設定する。以下の説明においては、図面の表記を簡略化するために、各画像の画素数を縦方向及び横方向共に13画素とする。しかしながら、より細かな表現を行うために、実際には、より大きな画素数が使用され得る。
【0020】
続いて、ある測定タイミングにおいて、ある受信位置で受信電力を測定した際の、1セットの学習データの生成について説明する。なお、推定装置には、受信位置と、受信電力と、受信電力の測定タイミングが入力される。なお、受信位置において受信電力を測定すると、測定した受信電力及びその測定位置を推定装置に直ちに送信する構成においては、推定装置が受信電力及び受信位置を受信したタイミングを測定タイミングとする構成とすることができる。以下では、まず、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像の生成について説明する。
【0021】
伝搬経路情報生成部11は、受信電力を測定した受信位置51と、伝搬経路情報生成部11が保持している上述した情報に基づき、送信位置50から受信位置51に至る無線信号の伝搬経路を求めて、伝搬経路を示す情報を伝搬経路画像生成部13に出力する。なお、求める伝搬経路は、3つの画像のサイズを決定したときと同様に、受信位置51における電力が所定値以上となる経路とする。例えば、図5(A)に示す状態の場合、伝搬経路情報生成部11は、送信位置50と、受信位置51と、建物等の構造物を示す3次元地図データと、に基づき、送信位置50と受信位置51とを結ぶ直線に沿った直接経路52と、建物74で反射して受信位置51に至る反射経路53との2つの伝搬経路が存在することを判定し、送信位置50及び受信位置51を示す情報と、この2つの伝搬経路の3次元位置を示す情報と、各伝搬経路に沿って伝搬した無線信号の受信位置51での電力を示す情報と、を含む伝搬経路情報を伝搬経路画像生成部13に出力する。
【0022】
伝搬経路画像生成部13は、予め決定しておいた、生成する画像が示す地理的範囲の面積と、画像の形状と、画素数と、所定の線80及びその方向を示す情報とを保持している。そして、伝搬経路画像生成部13は、伝搬経路情報に基づき、第1伝搬経路画像と、第2伝搬経路画像の2つの画像データ(第1伝搬経路データ及び第2伝搬経路データ)を生成する。
【0023】
具体的には、伝搬経路画像生成部13は、送信位置50及び受信位置51が、画像のサイズを決定する際に使用した所定の線80上に位置し、かつ、送信位置50から受信位置51への方向が、当該所定の線80の方向に一致する様に2つの画像データを生成する。本例においては、図3(A)に示す線80を使用しているものとする。なお、第1伝搬経路画像と、第2伝搬経路画像の両方において、画像内における送信位置及び受信位置は同じとする。
【0024】
図6及び図7は、図5(A)の伝搬経路52及び53を示す第1伝搬経路データ及び第2伝搬経路データを示している。なお、上述した様に、画像の表記の簡略化を目的として、各方向の画素数を13と少なくしているため、図6及び図7のデータが示す画像における各伝搬経路は、図5(A)に示す状態を正確に示すものではない。しかしながら、画素数を大きくすることで、実際の伝搬経路をより正確に表すことができる。
【0025】
第1伝搬経路画像(図6)は、伝搬経路の高さを示す画像である。より具体的には、各画素は、地理的範囲内の2次元平面位置に対応し、画素値が0であることは、対応する平面位置上を伝搬経路が通過していないことを示している。また、画素値が0以外の値であることは、対応する平面位置上を伝搬経路が通過していることを示し、かつ、その値は、伝搬経路の高さに応じた値としている。なお、本例では、画素値が大きい程、伝搬経路の高さが高いものとする。第1伝搬経路画像内における送信位置50及び受信位置51は、図3(A)の線80上にあり、かつ、送信位置50が受信位置51より図の下側となるため、図6より、送信位置50の高さは"210"であり、受信位置51の高さは"100"であることが分かる。なお、本例では、3つの画像の画素値を8ビットで表現するものとするが、画素値を表現するためのビット数は8に限定されない。
【0026】
第2伝搬経路画像(図7)は、各伝搬経路に沿って伝搬した無線信号の受信位置51における計算上の電力を示す画像である。具体的には、第2伝搬経路画像の画素の画素値が0であることは、当該画素に対応する平面位置上を伝搬経路が通過していないことを示している。また、画素値が0以外の値であることは、対応する平面位置上を伝搬経路が通過していることを示し、かつ、その値は、対応する平面位置上を通過している伝搬経路に沿って伝搬した無線信号の受信位置51における電力を示す値とする。例えば、直接経路52による受信位置での電力が"200"であり、反射経路53による受信位置での電力が"50"の場合、各画素の画素値は、図7に示す通りとなる。
【0027】
続いて、移動物体画像の生成について説明する。撮像部10は、複数の異なる位置に設置されたカメラを有する。なお、個々のカメラが撮像する範囲は、送信機がサービス提供するセルの一部分であるが、個々のカメラが撮像する範囲を足し合わせると、送信機がサービス提供するセルの全体がカバーされる様に、複数のカメラは設置される。各カメラは所定周期毎に撮像を行い、撮像を行う度に画像データを移動物体画像生成部12に出力する。なお、カメラとしては、TOFカメラやステレオカメラ等、被写体までの距離を測定できるものを使用する。
【0028】
移動物体画像生成部12は、伝搬経路画像生成部13から、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像が示す地理的範囲を示す情報を取得する。そして、移動物体画像生成部12は、伝搬経路画像生成部13からの地理的範囲を示す情報と、受信電力の測定タイミングと、撮像部10からの画像データと、に基づき移動物体画像を生成する。図5(B)は、受信電力の測定タイミングにおいて、図5(A)と同じ地理的範囲内にある移動物体60~63を示している。なお、移動物体画像生成部12は、測定タイミング前の画像データが示す所定数の画像に基づき移動物体及びその位置(2次元平面における位置及び大きさ)を判定することができる。
【0029】
図8は、図5(B)に示す移動物体60~63が存在する場合に移動物体画像生成部12が生成する移動物体画像の画像データ(移動物体データ)を示している。上述した様に、画像表記の簡略化を目的として画素数を少なくしているため、図8の移動物体データが示す画像における各移動物体の大きさは、図5(B)に示す状態を正確に示すものではない。
【0030】
移動物体画像は、移動物体の有無と、移動物体が存在する場合にはその高さを示す画像である。より具体的には、各画素は、2次元平面の位置に対応し、画素値が0であることは、当該平面位置上に移動物体が存在していないことを示している。また、画素値が0以外の値であることは、当該平面位置上に移動物体が存在していることを示している。また、画素値は、当該移動物体の最大の高さに対応する値とし、本例では、画素値が大きい程、高さが高いものとする。なお、実際の高さと、画素値1~255(8ビット)との関係は、第1伝搬経路画像と同じにする。図8によると、移動物体61及び62の高さは"150"であり、移動物体60の高さは"200"であり、移動物体63の高さは"100"である。
【0031】
なお、本実施形態においては、同じセットの移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像が示す地理的範囲は同じである。つまり、ある測定タイミングで受信電力を測定した受信位置に基づき生成される、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像の地理的範囲は同じであり、よって、送信位置50及び受信位置51に対応する画素は、3つの画像において同じである。
【0032】
以上、推定装置は、ある測定タイミングにおける受信位置51及び受信電力に基づき、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像を生成する。そして、生成した移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像と、これら画像における受信位置での受信電力と、を1セットの学習データとする。なお、受信位置51は、第1伝搬経路情報及び第2伝搬経路情報において暗示的に示されているが、3つの画像における受信位置51に対応する画素を示す情報を学習データに加え、受信位置51に対応する画素を明示的に入力する構成とすることもできる。
【0033】
推定装置には、様々な測定タイミングにおいて様々な受信位置で測定した受信電力が入力され、これにより、推定装置は、学習データの複数のセットを生成する。なお、異なるセットにおいては、3つの画像が示す地理的範囲は異なり得る。例えば、図4に示す様に受信位置51-1に対して生成される移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像は、範囲90に対応するが、受信位置51-2に対して生成される移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像は、範囲91に対応する。なお、総てのセットにおいて、画像内における送信位置及び受信位置は、画像内における所定の線上(本例では、図3(A)に示す線上)に位置し、送信位置から受信位置に向かう方向は同じである。また、総てのセットにおいて、3つの画像のサイズ(画像が示す地理的範囲の面積)は同じである。
【0034】
上述した様に、推定部14は、生成した複数のセットの学習データに基づき学習を行って学習モデルを生成する。そして、当該学習モデルに基づき、ある受信位置におけるWDの受信電力を推定する。図9は、WDの受信電力を推定する際の推定装置の構成を示している。推定装置には、受信電力を推定したいWDの受信位置が入力される。例えば、WDはGPS等により、その位置を取得し、取得した位置を、基地局又はコアネットワーク内の装置に送信する。そして、基地局又はコアネットワーク内の装置は、WDの位置の履歴から、WDが将来的に移動する位置を予測し、この予測した位置を、受信位置として推定装置に入力する構成とすることができる。受信位置が入力されると、伝搬経路情報生成部11及び伝搬経路画像生成部13は、学習データを生成する際と同様の処理により、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像を示す第1伝搬経路データ及び第2伝搬経路データを生成する。同様に、移動物体画像生成部12は、学習データを生成する際と同様の処理により、移動物体画像を示す移動物体データを生成する。そして、推定部14は、学習により生成した学習モデルを使用して、移動物体データ、第1伝搬経路データ及び第2伝搬経路データに基づき入力された受信位置での受信電力を推定する。この構成により、WDの将来の受信電力を予測することができる。
【0035】
なお、移動物体画像が示す移動物体は、移動物体画像を生成するタイミングにおける移動物体を示すことになるが、WDが受信位置に移動するタイミングと、移動物体画像を生成するタイミングとの差が小さければ受信電力の予測に大きな影響はない。さらに、撮像部10の複数のカメラからの画像データに基づき、WDが受信位置に移動するタイミングにおける移動物体を予測して移動物体画像を生成する構成とすることもできる。また、基地局又はコアネットワーク内の装置がWDより受信するWDの位置に基づき、撮像部10の複数のカメラが撮像する画像から受信電力の推定対象のWDを判定し、受信電力の推定タイミングにおいて、複数のカメラが撮像する画像から推定対象のWDの位置(受信位置)を判定して当該WDの受信電力を判定する構成とすることもできる。当該構成において移動物体画像は、推定タイミングにおける移動物体を示すものとなり、精度良く受信電力を推定できる。
【0036】
以上、本実施形態では、同じ地理的範囲を示す移動物体画像と、伝搬経路画像(第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像)と、を入力として受信電力を予測する。移動物体画像は、移動物体が存在する2次元平面上の位置と、その高さを示す画像(情報)である。また、伝搬経路画像は、建物等の構造物に基づき判定した送信機から受信機に至る複数の伝搬経路が通過する3次元位置及び受信位置での電力を示す画像(情報)である。したがって、建物等の構造物による反射の影響と、移動物体の存在により遮蔽される伝搬経路とを考慮した精度の良い受信電力の推定を行うことができる。また、学習データの総てのセットの画像において、送信位置から受信位置への方向を一定とし、かつ、送信位置及び受信位置を同じ線上に位置させる。実際の受信位置に拘わらず、各セットの画像において送信位置及び受信位置を同じ線上に位置させ、かつ、送信位置から受信位置への方向を同じとすることで学習効率が向上する。また、受信電力の推定に使用する画像においても、送信位置から受信位置への方向を学習データの画像と同じとし、かつ、送信位置及び受信位置を学習データの画像と同じ線上に位置させる。推定に使用する画像における送信位置及び受信位置を、学習データの画像と同様とすることで、精度良く受信電力を推定することができる。また、画像のサイズを、受信位置に拘わらず、計算上の電力が所定値以上となる伝搬経路が常に含まれるように決定することで、受信電力に影響を与える伝搬経路が画像の範囲外となることによる推定精度の劣化を抑え、精度良く受信電力を推定することができる。
【0037】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像に、移動物体による遮蔽の有無の情報を明示的に加える。図10図12は、本実施形態による第1伝搬経路データ、第2伝搬経路データ及び移動物体データを示している。なお、第一実施形態と同様に、図10図12は、図5(A)及び図5(B)の状態に対応するデータである。
【0038】
第一実施形態においては、各画像の1つの画素は、1つの画素値を有するものであった。本実施形態では、1つの画素は、第1画素値と第2画素値の2つの画素値を有する。図10図12においては、第1画素値がAであり、第2画素値がBであることを"A,B"と表記している。第1画素値及び第2画素値の少なくとも1つは0である。具体的には、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像において、その上を伝搬経路が通過していない画素の画素値は(0,0)であり、移動物体画像において、移動物体が存在しない画素の画素値は(0,0)である。
【0039】
一方、第1伝搬経路画像において、高さX1の位置に伝搬経路が通過している画素の画素値は(X1,0)又は(0,X1)である。ここで、画素値が(X1,0)であることは、当該画素に対応する伝搬経路が移動物体による遮蔽の影響を受けていないことを示し、画素値が(0,X1)であることは、当該画素に対応する伝搬経路が移動物体による遮蔽の影響を受けていることを示している。図6及び図8に示す様に、直接経路52は、移動物体61(高さ150)の位置において、高さが150となっている。つまり、直接経路52は、移動物体61によって遮蔽されている。一方、反射経路53は、移動物体によって遮蔽されていない。したがって、図10に示す様に、直接経路52に対応する画素の画素値は(0,X1)の形式であり、反射経路53に対応する画素の画素値は(X1,0)の形式となっている。
【0040】
同様に、第2伝搬経路画像において、受信位置での電力がX2となる伝搬経路が通過している画素の画素値は(X2,0)又は(0,X2)である。ここで、画素値が(X2,0)であることは、当該画素に対応する伝搬経路が移動物体による遮蔽の影響を受けていないことを示し、画素値が(0,X2)であることは、当該画素に対応する伝搬経路が移動物体による遮蔽の影響を受けていることを示している。上述した様に、直接経路52は、移動物体61によって遮蔽され、反射経路53は、移動物体によって遮蔽されていない。したがって、図11に示す様に、直接経路52に対応する画素の画素値は(0,X2)の形式であり、反射経路53に対応する画素の画素値は(X2,0)の形式となっている。
【0041】
同様に、移動物体画像において、高さX3の移動物体が存在する画素の画素値は(X3,0)又は(0,X3)である。ここで、画素値が(X3,0)であることは、当該画素に対応する移動物体が、いずれの伝搬経路も遮蔽していないことを示し、画素値が(0,X3)であることは、当該画素に対応する移動物体が少なくとも1つの伝搬経路を遮蔽していることを示している。上述した様に、移動物体61は、直接経路52を遮蔽し、移動物体60、62及び63は、伝搬経路を遮蔽していない。したがって、図12に示す様に、移動物体61に対応する画素の画素値は(0,X3)の形式であり、移動物体60、62及び63に対応する画素の画素値は(X3,0)の形式となっている。
【0042】
移動物体画像生成部12及び伝搬経路画像生成部13は、それぞれ、移動物体の位置及び高さと、各伝搬経路が通過する位置及び高さに関する情報を交換することで、図10図12に示す移動物体画像、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像を生成する。
【0043】
以上、本実施形態では、移動物体画像においては、少なくとも1つの伝搬経路を遮蔽している移動物体を明示し、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像においては、移動物体により遮蔽されている伝搬経路を明示する。伝搬経路に影響を与える移動物体や、移動物体からの影響を受ける伝搬経路を特徴量として明示することで、予測精度を向上させることができる。なお、移動物体画像のみを図12の様にし、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像については、第一実施形態と同様とすることもできる。同様に、移動物体画像については第一実施形態と同様とし、第1伝搬経路画像及び/又は第2伝搬経路画像を本実施形態で述べた様にすることもできる。
【0044】
<その他の形態>
続いて、第一実施形態又は第二実施形態に適用可能な変更について説明する。第二実施形態では、伝搬経路に影響を与える移動物体や、移動物体からの影響を受ける伝搬経路を特徴量として明示していた。ここで、伝搬経路に影響を与えない、図5の移動物体60、62及び63については、移動物体画像から削除しても受信電力の予測精度に影響を与えない。したがって、移動物体画像生成部12が、伝搬経路を遮蔽しない移動物体を削除した移動物体画像を生成する構成とすることもできる。また、移動物体画像生成部12が、伝搬経路の高さの最小値よりも、高さの低い移動物体を削除した移動物体画像を生成する構成とすることもできる。
【0045】
また、直接経路52が移動物体により遮蔽されていない場合、受信位置での受信電力は、直接経路52によるものが支配的となる。したがって、直接経路52が移動物体により遮蔽されていない場合、伝搬経路画像生成部13は、直接経路52のみを示す第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像を生成する構成とすることもできる。
【0046】
また、第一実施形態及び第二実施形態において、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像が示す伝搬経路は、伝搬経路の中心を表すものであった。しかしながら、移動物体がフレネル半径内の一部に存在する場合、受信電力に影響を与える。したがって、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像については、フレネル半径を表すものとすることができる。具体的には、伝搬経路に直交する方向において、伝搬経路の中心からフレネル半径に対応する距離内の画素に、伝搬経路の中心と同じ画素値(第1伝搬経路画像の場合には高さであり、第2伝搬経路画像の場合には電力)を設定することによりフレネル半径を示す構成とすることができる。この構成により、受信電力に影響を与えるフレネル半径を考慮した精度の良い予測を行うことができる。
【0047】
また、第一実施形態及び第二実施形態において、伝搬経路画像は、第1伝搬経路画像及び第2伝搬経路画像の2つの画像を含むものであった。つまり、第一実施形態及び第二実施形態においては、伝搬経路の高さを示す画像と、伝搬経路に沿って伝搬された無線信号の受信位置での電力を示す画像とを、それぞれ、生成していた。しかしながら、伝搬経路の高さを示す画像と、伝搬経路に沿って伝搬された無線信号の受信位置での電力を示す画像とを1つの画像に纏める構成とすることができる。例えば、第一実施形態においては、伝搬経路画像の1つの画素が、第二実施形態の様に2つの画素値を含むものとする。そして、一方の画素値により高さを示し、他方の画素値により電力を示す構成とすることができる。また、第二実施形態においても同様に、1つの画素が3つの画素値を含むものとすれば良い。
【0048】
本発明による推定装置は、移動物体による遮蔽により大きな影響を受けるミリ波の無線信号の受信電力の推定において有用である。しかしながら、本発明による推定装置は、ミリ波以外の無線信号の受信電力の推定にも適用することができる。また、学習により推定部14が生成した学習モデルは、同じ推定装置で使用する必要はなく、学習モデルを生成する推定装置と、生成された学習モデルを使用して受信電力を推定する推定装置は異なっていても良い。
【0049】
なお、本発明による推定装置は、例えば、移動通信システムの基地局装置に実装することができる。さらに、本発明による推定装置は、移動通信システム内の装置とすることができる。さらに、本発明は、上記推定装置が実行する無線電力の推定方法としても実現され得る。さらに、本発明は、上記学習データを生成する生成方法や、生成装置としても実現され得る。さらに、本発明は、コンピュータの1つ以上のプロセッサで実行されると、当該コンピュータを上記推定装置として機能させる、或いは、当該コンピュータに上記推定方法又は生成方法を実行させるコンピュータプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0050】
以上の構成により、例えば、移動通信システムにおいて無線装置が受信する受信電力を精度良く推定することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0051】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
12:移動物体画像生成部、13:伝搬経路画像生成部
図1
図2
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図5
図6
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図12